(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】屋外構造ユニット
(51)【国際特許分類】
E04B 1/343 20060101AFI20220225BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
E04B1/343 W
E04H1/12 308
(21)【出願番号】P 2020173431
(22)【出願日】2020-10-14
(62)【分割の表示】P 2016148586の分割
【原出願日】2016-07-28
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】長田 久
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-317205(JP,A)
【文献】特開2001-020447(JP,A)
【文献】特開昭60-023536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 - 1/36
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に対して屋外側に構築される床用基礎と、
前記外壁に隣接して前記床用基礎上に配置される屋外構造物と、を備え、
前記床用基礎は、前記外壁から隙間を空けて構築され、
前記隙間を上側から覆う蓋体を備え、
前記屋外構造物は、前記蓋体を下側から支持する蓋用ベースフレームを備え
、
前記蓋体は、パネル体を備
え、
前記パネル体は、長尺体である複数のパネル構成材を用いて構成されるパネル部を備え、
前記パネル体には、柱フレームとの干渉を避けるための切欠が形成され、
前記切欠は、一の前記パネル構成材の長手寸法を他の前記パネル構成材の長手寸法より短くすることで形成さ
れることを特徴とする屋外構造ユニット。
【請求項2】
建物の外壁に対して屋外側に構築される床用基礎と、
前記外壁に隣接して前記床用基礎上に配置される屋外構造物と、を備え、
前記床用基礎は、前記外壁から隙間を空けて構築され、
前記隙間を上側から覆う蓋体を備え、
前記屋外構造物は、前記蓋体を下側から支持する蓋用ベースフレームを備え
、
前記屋外構造物は、床体を支持する床用ベースフレームを備え、
前記蓋用ベースフレームは、前記床用ベースフレームに取り付けられる前側ベースフレームを含
むことを特徴とする屋外構造ユニット。
【請求項3】
前記屋外構造物は、
床体と、
前記床体に対して前記外壁側において前記床体が当接可能な位置に配置される位置決め部と、を備え、
前記前側ベースフレームは、前記外壁側に向けて突き出る突出部を有し、
前記位置決め部は、前記突出部と上下方向に重なる位置に設けられる請求項
2に記載の屋外構造ユニット。
【請求項4】
前記屋外構造物は、
床体と、
前記床体に対して前記外壁側において前記床体が当接可能な位置に配置される位置決め部と、を備え、
前記前側ベースフレームは、
前記床用ベースフレームに取り付けられる取付部と、
前記取付部から前記外壁側に向けて突き出る突出部と、を有し、
前記取付部、前記突出部及び前記位置決め部は同じ部材により構成される請求項
2または
3に記載の屋外構造ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋外に配置される屋外構造ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガーデンルームのような、建物の外壁に隣接して配置され、屋根体の下方に雨除け可能な屋根下空間が形成された屋外構造物が提案されている。この種の屋外構造物として、特許文献1には、地盤中の基礎に一部が埋設された鳥居部材を組み込んだものが開示されている。この屋外構造物では、建物の外壁ではなく鳥居部材にビスを用いて屋根体が接続されている。これにより、建物の外壁にビス用の孔を空けずに屋外構造物を構築できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物の外壁に対して屋外側に土間コンクリート等の床用基礎を構築し、その床用基礎上に屋外構造物を配置する場合がある。この床用基礎は温度変化に伴い熱膨張する場合があり、建物の外壁には床用基礎の熱膨張に伴う外力が付与される可能性がある。建物は、通常、建物の屋外に付加的に配置される屋外構造物がない前提のもとで設計されている。よって、建物の強度等の諸性能に関して所期の品質を確保するうえでは、建物の外壁に対して床用基礎から外力が付与されるのを防止できるとよい。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、建物の屋外に屋外構造物とともに床用基礎を配置する場合に、建物の外壁に対する外力の付与を防止するのに適した屋外構造ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明の第1の態様は屋外構造ユニットである。第1態様の屋外構造ユニットは、建物の外壁に対して屋外側に構築される床用基礎と、前記外壁に隣接して前記床用基礎上に配置される屋外構造物と、を備え、前記床用基礎は、前記外壁から隙間を空けて構築されることを特徴とする。
【0007】
第1態様の屋外構造ユニットによれば、建物の外壁から隙間を空けて床用基礎が構築されるため、建物の外壁に床用基礎から外力が付与されるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の屋外構造ユニットを示す側面図である。
【
図2】第1実施形態の門型フレームを示す前面図である。
【
図3】第1実施形態のフレームユニットの一部を概略的に示す平面図である。
【
図4】第1実施形態の床体や蓋体を概略的に示す平面図である。
【
図8】
図4のC-C線断面の一部とともにパネル体を示す図である。
【
図9】第2実施形態の屋外構造ユニットを示す側面図である。
【
図10】第2実施形態のフレームユニットの一部を概略的に示す平面図である。
【
図11】第2実施形態の床体や蓋体を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態、変形例では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、構成要素の寸法を適宜拡大、縮小して示す。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の屋外構造ユニット10を示す側面図である。屋外構造ユニット10は、住宅等の建物12の外壁14に対して屋外側に配置される。本実施形態の屋外構造ユニット10は、既設の建物12に付加的に用いられる。屋外構造ユニット10は、後述する屋根体26の下方に雨除け可能な屋根下空間を形成する。建物12の外壁14には建具(不図示)により開閉可能な開口部13が形成され、この屋根下空間は、開口部13を通して、建物12の屋内空間との間で行き来可能である。本実施形態の屋根下空間は、後述する屋外構造物18の周囲の屋外空間から区画され、ガーデンルームとして用いられる。以下、建物12の外壁14に沿った第1水平方向を左右方向Y、その左右方向Yに直交する第2水平方向を前後方向Xとする。また、前後方向Xに沿った二方向のうち、建物12の外壁14とは反対側に向かう方向を前側とし、建物12の外壁14側に向かう方向を後側とする。
【0011】
屋外構造ユニット10は、床用基礎16と、屋外構造物18と、蓋体(
図1では不図示)とを備える。本実施形態の床用基礎16は土間コンクリートである。床用基礎16は、屋外構造物18の床の一部として用いられ、本実施形態では後述する屋外構造物18の床体(
図1では不図示)を支持する床用ベース94の一部として用いられる。床用基礎16は、建物12の外壁14に対して屋外側に構築される。床用基礎16は、建物12の周囲の地盤22の地表面22a上に構築される。床用基礎16は、コンクリート等の経時硬化性固化材を用いて構成される。床用基礎16の詳細は後述する。
【0012】
屋外構造物18は、建物12の外壁に隣接して床用基礎16上に配置される。屋外構造物18は、フレームユニット24と、フレームユニット24により支持される屋根体26と、屋根下空間の前側に配置される前壁部28と、屋根下空間の左右両側に配置される側壁部30と、床用基礎16上に敷設される床体(
図1では不図示)とを備える。
【0013】
フレームユニット24は、柱フレーム34と、梁フレーム36と、桁フレーム38とを備える。柱フレーム34は、地盤22から立ち上がるように設けられ、左右方向Yに間隔を空けて配置される。本実施形態の柱フレーム34は、左右の前柱フレーム34-Aと、左右の前柱フレーム34-Aの後側に配置される補助柱フレーム34-Bとを含む。
【0014】
梁フレーム36は、前後に延びるとともに左右に間隔を空けて配置される。梁フレーム36は、前柱フレーム34-Aの上端部と補助柱フレーム34-Bの上端部との間に架設される。
【0015】
桁フレーム38は、左右に延びており、左右の柱フレーム34の上端部の間に架設される。桁フレーム38は、左右の前柱フレーム34-Aの間に架設される前桁フレーム38-Aと、左右の補助柱フレーム34-Bの間に架設される補助桁フレーム38-Bとを含む。桁フレーム38の左右の両端部は左右の柱フレーム34の上端部にビス、金具等を用いて接続される。
【0016】
図2は、左右の補助柱フレーム34-Bと補助桁フレーム38-Bとが構成する門型フレーム40を示す前面図である。門型フレーム40は、
図1、
図2に示すように、門型をなし、床用ベース94に対して外壁14側にて建物12の外壁14から間隔を空けて配置される。補助柱フレーム34-Bの下端部は、地盤22中に構築された柱用基礎42内に埋設されることで柱用基礎42に固定される。前柱フレーム34-Aの下端部も同様に、地盤22中に構築された柱用基礎42内に埋設されることで柱用基礎42に固定される(
図1参照)。本実施形態の前柱フレーム34-Aや補助柱フレーム34-Bの下端部は、地盤22に掘削された孔の底部に敷設した割石44上に配置される。柱用基礎42は、コンクリート等の経時硬化性固化材を用いて構成され、地盤22の地表面22aより低位置に構築される。門型フレーム40の補助柱フレーム34-Bや前柱フレーム34-Aは、それぞれの下端部を柱用基礎42に固定することにより、地盤22に対する固定度が高められる。
【0017】
図3は、フレームユニット24の一部を概略的に示す平面図である。フレームユニット24は、
図1、
図3に示すように、更に、複数の床用ベースフレーム46と、複数の蓋用ベースフレーム48とを備える。複数の床用ベースフレーム46は、床体54を支持する床用ベース94の一部として用いられる。複数の床用ベースフレーム46は矩形状に枠組みして構成される。複数の床用ベースフレーム46は、複数の柱フレーム34のそれぞれにビス、金具等を用いて接続される。複数の床用ベースフレーム46は床用基礎16内に埋設され、床用基礎16に対する位置が固定される。
【0018】
複数の蓋用ベースフレーム48は、後述する蓋体56を支持している。蓋用ベースフレーム48には、前側ベースフレーム48-Aと、左右の横側ベースフレーム48-Bと、後側ベースフレーム48-Cとが含まれる。前側ベースフレーム48-Aは、左右に延びる長尺体であり、アルミニウム等の金属を素材とする型材を用いて構成される。本実施形態の前側ベースフレーム48-Aは、左右の補助柱フレーム34-B間に配置される。前側ベースフレーム48-Aの詳細は後述する。
【0019】
左右の横側ベースフレーム48-Bは、前後に延びる長尺体であり、左右に間隔を空けて配置される。後側ベースフレーム48-Cは左右に延びる長尺体であり、前側ベースフレーム48-Aより後方に間隔を空けて配置される。横側ベースフレーム48-B及び後側ベースフレーム48-Cは、アルミニウム等の金属を素材とする中空構造をもつ型材を用いて構成される。左右の横側ベースフレーム48-Bの前端部は左右の補助柱フレーム34-Bのそれぞれにビス、金具等を用いて接続される。後側ベースフレーム48-Cの両端部は左右の横側ベースフレーム48-Bにビス、金具等を用いて接続される。後側ベースフレーム48-Cは後側ベースフレーム48-Cの下方に配置される束柱52を介して地盤22に支持される。束柱52は、地盤22中に少なくとも一部が埋設される基礎石等の束柱用基礎53に対して、不図示のセルフタップアンカー、金具等の組み合わせにより固定される。
【0020】
屋根体26は、
図1に示すように、前側に配置される前屋根体26-Aと、後側に配置される後屋根体26-Bとが含まれる。前屋根体26-Aは、前桁フレーム38-Aと門型フレーム40との間に架け渡されている。後屋根体26-Bは、門型フレーム40上に前端部がビス(不図示)を用いて接続され、門型フレーム40から建物12の外壁14側に向かって延びるように設けられる。
【0021】
屋外構造物18の前壁部28は、屋根下空間を前側から覆うように配置される。屋外構造物18の側壁部30は、屋根下空間を左右両側のそれぞれから覆うように配置される。側壁部30には、前側に配置される前側壁部30-Aと、後側に配置される後側壁部30-Bとが含まれる。前側壁部30-Aは補助柱フレーム34-Bに対して前側に配置され、後側壁部30-Bは補助柱フレーム34-Bに対して後側に配置される。本実施形態の前壁部28と前側壁部30-Aは、透光性のあるガラスパネルを含む開閉可能な障子(折戸)である。本実施形態の後側壁部30-Bは透光性のあるガラスパネルを含むFIXパネルである。後側壁部30-Bは、補助柱フレーム34-Bにビス(不図示)を用いて接続され、門型フレーム40から建物12の外壁14側に向かって延びるように設けられる。
【0022】
後屋根体26-Bは、建物12の外壁から僅かに前側に間隔を空けて配置されており、ビスを用いて建物12の外壁14に接続されていない。屋外構造物18の後側壁部30-Bは、ビスを用いて建物12の外壁14に接続されていない。このように、屋外構造物18は、ビスを用いて建物12の外壁に接続されておらず、建物12の強度等の諸性能に関して所期の品質を確保し易くなる。なお、屋外構造物18の後側壁部30-Bや後屋根体26-Bは、建物12の外壁14にシール材(不図示)を介して当接しており、これらの間の隙間はシール材により塞がれている。
【0023】
図4は、床体54や蓋体56を概略的に示す平面図である。床体54は、一対の補助柱フレーム34-Bより建物12の外壁14とは反対側に配置される。本実施形態の床体54は、複数のタイル材58を組み合わせて構成される。本実施形態の床体54は、複数のタイル材58を前後方向X及び左右方向Yに行列状に並べて配置するとともに、床用ベース94となる床用基礎16や床用ベースフレーム46に貼り付けることで構成される。本実施形態の床体54は、平面視において、四辺のそれぞれが前後方向X及び左右方向Yに沿って延びる矩形状をなす。
【0024】
図5は、
図1のA-A線断面の一部を示す図である。床用基礎16は、建物12の外壁14から隙間60を空けて構築される。これは、床用基礎16は、建物12の外壁14に接触していないことを意味する。前述の床用ベース94は、床用基礎16と床用ベースフレーム46とを有するものであるが、この床用ベース94も外壁14から隙間60を空けて構築される。
【0025】
隙間60は、上向きに開くとともに左右方向Yに延びる溝状をなす。隙間60は、その左右方向Y両側の開口端60aを通して、屋外構造物18の周囲の屋外空間62に連通されている。隙間60の開口端60aは、隙間60への動物等の侵入を防止するため、覆い64により覆われる(
図1も参照)。覆い64は、屋外空間62と隙間60との間での通気性を確保するため、メッシュ材等の通気性のある素材を用いて構成される。
【0026】
建物12の外壁14には、床用基礎16に対して隙間60を挟んだ位置に、建物12の内部空間(不図示)に連通する通気孔66が形成される(
図1も参照)。通気孔66は、建物12の内部空間に屋外空間62の外気を取り込むためのものであり、本実施形態では建物12の内部空間として床下空間に連通される。通気孔66は、建物12の建具により開閉可能な開口部13より低位置に形成される。通気孔66は、建物12の外壁14と床用基礎16との間の隙間60を通して屋外空間62に連通される。
【0027】
図6は、
図4のB-B線断面図である。蓋体56は、
図4、
図6に示すように、建物12の外壁14と床用基礎16との隙間60を上側から覆う。蓋体56は、その上を通る歩行者が踏める踏み板として機能する。蓋体56は、一対の補助柱フレーム34-B間に一部が位置するように配置される。蓋体56は、複数のパネル体68を組み合わせて構成される。複数のパネル体68は左右方向Yに並べて配置される。パネル体68の詳細は後述する。
【0028】
複数のパネル体68は前後方向の両端辺部のそれぞれが後側ベースフレーム48-Cと前側ベースフレーム48-Aとに載せられる。複数のパネル体68は、後側ベースフレーム48-Cや前側ベースフレーム48-Aに対して着脱自在に支持される。複数のパネル体68のうち、左右方向Yの両端側のパネル体68は、左右方向Yの外側にある端辺部が横側ベースフレーム48-Bに載せられる。これらパネル体68は、横側ベースフレーム48-Bに対しても着脱自在に支持される。蓋体56は、蓋用ベースフレーム48に対して着脱自在に支持されることになる。
【0029】
以上の屋外構造ユニット10の構築方法を説明する。
まず、フレームユニット24を組み立てる。このとき、門型フレーム40の補助柱フレーム34-Bの下端部や前柱フレーム34-Aの下端部が埋設されるように柱用基礎42の素材となる固化材を打設する。この後、門型フレーム40や前柱フレーム34-Aに他のフレームを接続する。ここでの他のフレームとは梁フレーム36、床用ベースフレーム46、蓋用ベースフレーム48等である。この後、門型フレーム40の補助柱フレーム34-Bの一部や床用ベースフレーム46が埋設されるように床用基礎16の素材となる固化材を打設する。床用基礎16は、床用基礎16を構築すべき位置を囲むように型枠を配置したうえで、型枠内に床用基礎16の素材となる固化材を打設する。この後、床用基礎16上への床体54の敷設、床用ベースフレーム46上への蓋体56の配置、各壁部28、30及び屋根体26の構築を進める。
【0030】
以上の屋外構造ユニット10の作用効果を説明する。
床用基礎16は、建物12の外壁14から隙間60を空けて構築される。よって、床用基礎16が温度変化に伴い熱膨張した場合に、床用基礎16から建物12の外壁14に熱膨張に伴う外力が付与されるのを防止できる。また、床用基礎16の構築時、未硬化状態の硬化性固化材の液圧が建物12の外壁14に付与されるのを防止できる。
【0031】
屋外構造ユニット10は、建物12の外壁14と床用基礎16との間の隙間60を上側から覆う蓋体56を備える。よって、蓋体56を歩行者が踏める踏み板として利用したり、蓋体56上に物品を配置したりと、蓋体56を床として利用できる。このため、建物の外壁14と床用基礎16との間を離しつつも、これらの間の隙間60の上側の空間を有効活用できる。
【0032】
建物12の通気孔66は、建物12の外壁14と床用基礎16との間の隙間60を通して屋外空間62に連通される。よって、建物12の外壁14の前側に床用基礎16を構築する場合に、建物12の通気孔66が床用基礎16により塞がれず、その通気孔66の通気性を確保できる。
【0033】
次に、屋外構造ユニット10の他の特徴を説明する。
図7は、
図6の拡大図である。前側ベースフレーム48-Aは、床用ベースフレーム46の後側面にビス等の留め具70により取り付けられる取付部48aと、取付部48aから後方に向けて突き出る突出部48bと、突出部48bの前側部分から上方に向けて突き出る位置決め部48cとを有する。蓋体56は、前側ベースフレーム48-Aの突出部48b上に載せられる。
【0034】
図4、
図7に示すように、前側ベースフレーム48-Aの位置決め部48cは、床体54に対して建物12の外壁14側において床体54が当接可能な位置に配置される。より詳しくは、位置決め部48cの床体54との当接部位48caは、門型フレーム40の補助柱フレーム34-Bの前側の端面34aに対して、前後方向Xでの位置が揃えられている。なお、左右の一対の補助柱フレーム34-Bそれぞれの前側の端面34aも前後方向Xでの位置が揃えられている。
【0035】
位置決め部48cは、床体54と蓋体56との間に配置され、蓋体56が位置決め部48cの後側から当接可能な位置に配置される。つまり、位置決め部48cは、床体54と蓋体56との間において、床体54と蓋体56とのそれぞれが当接可能な位置に配置される。位置決め部48cは、床用基礎16に埋設される床用ベースフレーム46の一部として設けられており、床用基礎16、つまり、床用ベース94に対する位置が固定される。
【0036】
前側ベースフレーム48-Aの位置決め部48cは、床体54を床用基礎16上に敷設するとき、床体54の後端面が前側から当接することにより、床体54を前後方向Xに位置決め可能である。このとき、床体54は、門型フレーム40より前側に配置されるように位置決めされる。また、位置決め部48cは、蓋体56を蓋用ベースフレーム48上に載せるとき、蓋体56の前端面が後側から当接することにより、蓋体56を前後方向Xに位置決め可能である。
【0037】
このような前側ベースフレーム48-Aの位置決め部48cは、床体54と蓋体56との間の隙間を埋める見切り材として機能している。位置決め部48cの上壁面は、床体54の上壁面と蓋体56の上壁面と面一に並ぶように設けられる。なお、床体54の上壁面と蓋体56の上壁面とは同じ鉛直位置に配置されるように設けられる。
【0038】
(A)本実施形態では、建物12の外壁14から隙間60を空けて床用基礎16が構築されるため、外壁14から床体54も離れた位置に配置される。この結果、従来のように、外壁14を用いて床体54を前後方向Xに位置決めできない状況になる。ここで、本実施形態の屋外構造物18は、床体54に対して外壁14側において床体54が当接可能な位置に配置され、床用基礎16に対する位置が固定される位置決め部48cを有する。よって、この状況においても、床用基礎16に対する位置が固定された位置決め部48cを用いることで、床体54を前後方向Xに位置決めできる。
【0039】
(B)また、本実施形態の位置決め部48cは、床体54と蓋体56との間において床体54と蓋体56とのそれぞれが当接可能な位置に配置される。よって、この位置決め部48cを用いることで、床体54のみでなく蓋体56も前後方向Xに位置決めできる。
【0040】
(C)また、位置決め部48cの床体54との当接部位48caは、門型フレーム40の補助柱フレーム34-Bの前側の端面34aに対して、前後方向Xでの位置が揃えられている。よって、床体54のレイアウトに関して、門型フレーム40の内側を通るレイアウトにせずともよくなる。よって、門型フレーム40のある屋外構造物18と、門型フレーム40のない屋外構造物18との間で床体54を共用でき、これらに用いられる専用品の部品点数を抑えられる。
【0041】
次に、蓋体56を構成するパネル体68の詳細を説明する。
図8は、
図4のC-C線断面の一部とともにパネル体68を示す図である。
図7、
図8に示すように、パネル体68は、複数のパネル構成材72を用いて構成されるパネル部74と、パネル部74の上面部に設けられる滑り止め部76と、パネル部74の下面部に接続される連結材78とを有する。
【0042】
本実施形態のパネル部74は4つのパネル構成材72を用いて構成される。複数のパネル構成材72は、前後方向Xに並べて配置されるとともに、後述のように連結材78を用いて一体化される。パネル構成材72は、左右に延びる長尺体であり、アルミニウム等の金属を素材とする型材を用いて構成される。
【0043】
滑り止め部76は、パネル部74の上面部に載る物体の滑り止めとして機能する。本実施形態の滑り止め部76はパネル部74とは別部材により構成される。滑り止め部76は、パネル部74の上面部に形成される溝部に装着されることで、パネル部74に対する上下方向での位置が保持される。本実施形態の滑り止め部76は、滑り止めとして機能を発揮するのに適した摩擦係数をもつ素材により構成される。
【0044】
連結材78は、前後に延びる長尺体であり、アルミニウム等の金属を素材とする型材を用いて構成される。連結材78は、パネル部74の下側にて左右方向Yに間隔を空けて複数配置され、パネル部74を構成する全てのパネル構成材72に跨がる範囲でパネル部74に突き当てられる。連結材78は、複数のパネル構成材72にビス等の留め具80を用いて接続され、複数のパネル構成材72を連結する役割を果たす。
【0045】
パネル体68の上面部は前後方向Xに向かってフラット状をなすように設けられる。ここでのフラット状とは前後方向Xに向かって1.0mm超の段差がなく前後方向に延びることをいう。本実施形態のパネル体68の上面部はパネル部74の上面部と滑り止め部76の上面部とにより形成される。
【0046】
図7に示すように、複数のパネル構成材72は中空部72aを有する。複数のパネル構成材72は、隣り合うパネル構成材72の突き合わせ箇所が嵌合構造84を介して繋げられる。嵌合構造84は、第1嵌合構造84-Aと第2嵌合構造84-Bとを含む。第1嵌合構造84-Aは、たとえば、
図7中の最も左側のパネル構成材72と右側のパネル構成材72との突き合わせ箇所に用いられる。第2嵌合構造84-Bは、たとえば、
図7中の最も右側のパネル構成材72と左側のパネル構成材72との突き合わせ箇所に用いられる。
【0047】
第1嵌合構造84-Aは、隣り合うパネル構成材72の突き合わせ箇所に形成される二つの第1凹部86と、二つの第1凹部86に跨がるように配置される継ぎ材88とを有する。本実施形態の継ぎ材88は、左右に延びる長尺体であり、アルミニウム等の金属を素材として構成される。本実施形態の継ぎ材88は中空構造をもち、第1嵌合構造84-Aの二つの第1凹部86内に嵌め込まれる二つの嵌込部88aを有する。第1嵌合構造84-Aの第1凹部86の上内面部は、他の第1凹部86から離れる方向(前後方向X)に向かって、第1凹部86の上下方向での内幅寸法が小さくなるような段状に形成される。継ぎ材88の嵌込部88aの上面部は、嵌込先となる第1凹部86の奥側に近づく方向(前後方向X)に向かって、継ぎ材88の上下方向での外幅寸法が小さくなるような段状に形成される。継ぎ材88は、パネル構成材72の突き合わせ箇所の下面部とともに、継ぎ材88の下面部を貫通するビス等の留め具70により、パネル構成材72に接続される。第1嵌合構造84-Aは、二つの第1凹部86内に継ぎ材88を嵌め込んで構成され、二つのパネル構成材72は、その継ぎ材88を用いて継ぎ合わされる。
【0048】
第2嵌合構造84-Bは、隣り合うパネル構成材72の一方の突き合わせ箇所に形成される凸部90と、他方の突き合わせ箇所に形成される第2凹部92とを有する。第2嵌合構造84-Bの凸部90は第2嵌合構造84-Bの第2凹部92内に嵌め込まれて構成される。第2嵌合構造84-Bの凸部90の上面部と下面部とは、第2嵌合構造84-Bの第2凹部92の奥側に近づく方向(前後方向)に向かって、凸部90の上下方向での外幅寸法が小さくなるような段状に形成される。第2嵌合構造84-Bの凸部90は、パネル構成材72に形成される中空部72aと隣り合う位置に形成される中空構造である。
【0049】
第1嵌合構造84-Aを介して繋がる二つのパネル構成材72は互いの継ぎ目が継ぎ材88により内側から塞がれる。また、これら二つのパネル構成材72の第1凹部86内に継ぎ材88の嵌込部88aが嵌め込まれることで、二つのパネル構成材72の突き合わせ箇所が補強される。第2嵌合構造84-Bを介して繋がる二つのパネル構成材72は互いの継ぎ目が凸部90により塞がれる。また、一つのパネル構成材72の第2凹部92内に他のパネル構成材72の凸部90が嵌め込まれることで、二つのパネル構成材72の突き合わせ箇所が補強される。これにより、複数のパネル構成材72の継ぎ目を塞げるうえ、複数のパネル構成材72の突き合わせ箇所を補強できる。
【0050】
図4に示すように、複数のパネル体68のうち左右方向Yの両端側にあるパネル体68には、補助柱フレーム34-Bとの干渉を避けるための切欠82が形成される。切欠82は、パネル体68の角部に形成される。切欠82は、パネル体68を構成するパネル構成材72のうち、最も前側にあるパネル構成材72の長手寸法を他のパネル構成材72の長手寸法より短くすることにより形成される。このような切欠82は、最も前側にあるパネル構成材72の長手方向の一部を切断することで得られる。
【0051】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態の屋外構造ユニット10を示す側面図である。
図10は、第2実施形態のフレームユニット24の一部を概略的に示す平面図である。
図11は、第2実施形態の床体54や蓋体56を概略的に示す平面図である。第1実施形態の床用ベース94には床用基礎16が含まれており、この床用ベース94の主要部(床用基礎16)が経時硬化性固化材を用いた湿式工法により構築される例を説明した。第2実施形態の床用ベース94には床用基礎16が含まれていない。第2実施形態の床用ベース94は、経時硬化性固化材を用いない乾式工法により主要部が構築される点で、第1実施形態と異なる。
【0052】
床用ベース94は、複数の床用ベースフレーム46の他に、床用ベースフレーム46の下方に配置される束柱50を有する。複数の床用ベースフレーム46は、束柱50を介して地盤22に支持される。束柱50は、地盤22中に埋設される基礎石等の束柱用基礎53に対して、セルフタップアンカー、金具等の組み合わせにより固定される。
【0053】
本実施形態の床体54は、複数のデッキ材96を組み合わせて構成される。デッキ材96は、前後方向Xに延びる長尺体である。本実施形態の床体54は、複数のデッキ材96を左右方向Yに並べて配置するとともに、左右方向Xに隣り合うデッキ材96を接続することで構成される。本実施形態のデッキ材96は、アルミニウム等の金属を素材とする中空構造をもつ型材を用いて構成される。
【0054】
本実施形態の屋外構造ユニット10でも、建物12の外壁14から隙間60を空けて床用ベース94が構築され、外壁14を用いて床体54を前後方向Xに位置決めできない状況になる。本実施形態によれば、第1実施形態の(A)の記載内容と同様、床体54に対して外壁14側において床体54が当接可能な位置に位置決め部48cが配置されるため、この状況においても、床体54を前後方向Xに位置決めできる。また、この他にも、前述の(B)や(C)の記載内容と同様の作用効果も得られる。
【0055】
なお、本実施形態のように、乾式工法により床用ベース94を構築する場合でも、床用ベース94上に敷設される床体54として、複数のデッキ材96ではなく複数のタイル材58を用いてもよい。
【0056】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0057】
屋外構造物18は前壁部28と側壁部30とを有する例を説明したが、これらがなくともよいし、前壁部28及び側壁部30の何れか一方のみを有していてもよい。また、屋外構造物18の前壁部28や側壁部30は開閉不能な固定壁でもよいし、透光性の有無は特に問わない。
【0058】
屋外構造物18は門型フレーム40を有する例を説明したが、門型フレーム40を有していなくともよい。門型フレーム40の補助柱フレーム34-Bの下端部は、地盤22中の柱用基礎42内に埋設されることで、柱用基礎42に固定される例を説明した。この補助柱フレーム34-Bの下端部は、柱用基礎42に対する固定方法について特に限られない。たとえば、地盤22中の柱用基礎42にアンカーで固定してもよい。
【0059】
床用基礎16は、実施形態において、屋外構造物18の床体54を支持する下地材として用いられる例を説明した。床用基礎16は、屋外構造物18の床の一部として用いられていればよく、この他にも、床体54を敷設せずに打ち離しのままで用いられてもよい。
【0060】
蓋体56は複数のパネル体68を用いて構成される例を説明したが、その具体的構造は特に限られない。
【0061】
床体54を位置決めするための位置決め部48cは、フレームユニット24の構成部材となる蓋用ベースフレーム48と同部材により構成される例を説明した。この位置決め部48cは、床用基礎16に対する位置が固定されていればよく、床用基礎16と同部材により構成されてもよい。また、フレームユニット24の構成部材として、蓋用ベースフレーム48ではなく床用ベースフレーム46と同部材により構成されてもよい。
【0062】
位置決め部48cの床体54との当接部位48caは、前述の作用効果(C)を得る観点からは、補助柱フレーム34-Bの前側の端面34aよりも、建物12の外壁14とは反対側(前側)に設けられていてもよい。
【0063】
建物12の外壁14には通気孔66が形成される例を説明したが、この通気孔66が形成されていなくともよい。本実施形態の通気孔66は建物12の内部空間として、建物12内の床部の下側に形成される床下空間に連通しているが、その連通先はこれに限られない。たとえば、建物12の内部空間は、建物12の外壁の裏側に形成される通気層でもよい。
【0064】
以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の技術的思想が導かれる。以下、発明が解決しようとする課題に記載の態様を用いて説明する。
【0065】
第2態様の屋外構造ユニットは、第1態様において、前記隙間を上側から覆う蓋体を備えてもよい。
この態様によれば、蓋体を床として利用できるため、建物の外壁から床用基礎を隙間を空けて構築しつつも、これらの隙間より上側の空間を有効活用できる。
【0066】
第3態様の屋外構造ユニットは、第1態様または第2態様において、前記屋外構造物は、前記床用基礎上に敷設される床体と、前記床体に対して前記外壁側において前記床体が当接可能な位置に配置され、前記床用基礎に対する位置が固定される位置決め部と、を有してもよい。
この態様によれば、建物の外壁を用いて床体を前後方向に位置決めできない状況においても、床用基礎に対する位置が固定された位置決め部を用いることで、床体を前後方向に位置決めできる。
【0067】
第4態様の屋外構造ユニットは、第3態様において、前記隙間を上側から覆う蓋体を備え、前記位置決め部は、前記床体と前記蓋体との間において前記床体と前記蓋体とのそれぞれが当接可能な位置に配置されてもよい。
この態様によれば、床用基礎に対する位置が固定された位置決め部を用いることで、床体のみでなく蓋体も前後方向に位置決めできる。
【0068】
第5態様の屋外構造ユニットは、第3態様又は第4態様において、前記屋外構造物は、前記外壁に沿った第1水平方向に間隔を空けて配置され、地盤中の基礎に下端部が固定される一対の柱フレームを含む門型フレームを有し、前記位置決め部の前記床体との当接部位は、前記柱フレームの前記外壁とは反対側の端面に対して、前記第1水平方向に直交する第2水平方向での位置が揃えられている、又は、前記端面より前記外壁とは反対側に設けられていてもよい。
この態様によれば、門型フレームのある屋外構造物と、門型フレームのない屋外構造物との間で床体を共用でき、これらに用いられる専用品の部品点数を抑えられる。
【0069】
また、以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の項目に記載の発明が含まれているともいえる。
(項目)
建物の外壁に隣接して配置される屋外構造物を備える屋外構造ユニットであって、
建物の外壁から隙間を空けて構築される床用ベースを備え、
前記屋外構造物は、
前記床用ベース上に敷設される床体と、
前記床体に対して前記外壁側において前記床体が当接可能な位置に配置され、前記床用ベースに対する位置が固定される位置決め部と、を有することを特徴とする屋外構造ユニット。
【0070】
この項目の発明によれば、建物の外壁を用いて床体を前後方向に位置決めできない状況においても、床用ベースに対する位置が固定された位置決め部を用いることで、床体を前後方向に位置決めできる。
【符号の説明】
【0071】
10…屋外構造ユニット、12…建物、14…外壁、16…床用基礎、18…屋外構造物、24…フレームユニット、26…屋根体、40…門型フレーム、48c…位置決め部、54…床体、56…蓋体、60…隙間、62…屋外空間、66…通気孔。