(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】仮想現実を生成し、かつ、表示するためのVR装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20220225BHJP
A63F 13/28 20140101ALI20220225BHJP
A63F 13/25 20140101ALI20220225BHJP
A63F 13/52 20140101ALI20220225BHJP
A63F 13/213 20140101ALI20220225BHJP
A63F 13/95 20140101ALI20220225BHJP
A63G 31/00 20060101ALN20220225BHJP
【FI】
G06F3/01 590
G06F3/01 510
A63F13/28
A63F13/25
A63F13/52
A63F13/213
A63F13/95 Z
A63G31/00
(21)【出願番号】P 2020518729
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2018077209
(87)【国際公開番号】W WO2019081183
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-03-31
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517168875
【氏名又は名称】ファオエル コースター ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】VR Coaster GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ゴルト、デニス
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-515130(JP,A)
【文献】特開平11-232012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0229508(US,A1)
【文献】Hunter G. Hoffman,"Physically Touching Virtual Objects Using Tactile Augmentation Enhances the Realism of Virtual Environments.",Proceedings. IEEE 1998 Virtual Reality Annual International Symposium,1998年03月14日,p.1-5,https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?arnumber=658423
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
A63F 13/28
A63F 13/25
A63F 13/52
A63F 13/213
A63F 13/95
A63G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想現実を生成し、かつ、表示するためのVR装置であって、
VRセグメント(12)を備え、前記VRセグメント(12)の中で少なくとも1人の利用者(16)及び少なくとも1つの物体(18)が自由に動くことができ、
前記VR装置は、前記VRセグメント(12)内の前記利用者(16)の位置と動きに応じて前記VRセグメント(12)内の前記利用者(16)と前記物体(18)の位置と動きに対応する仮想現実を生成可能であるとともに、前記利用者(16)に割り当てられたヘッドマウントディスプレイ(21)上で該仮想現実を表示可能である手段を有し、
前記VR装置は、前記VRセグメント(12)内における前記利用者(16)と前記物体(18)の位置と動きを感知するための位置感知装置(24)を有し、
前記物体(18)は、少なくともその幾何学形状と大きさの点で、
一の仮想現実
又は別の仮想現実に基づいて想定される外形に適合する外形を有
し、
前記VR装置(10)は、前記物体(18)に取り外し可能に取り付けることができるとともに前記仮想現実に基づいて想定される外形に適合する外形を有する複数の形成要素(30)を備え、
前記物体(18)は表面を有し、その触感は前記仮想現実に基づいて想定される触感に適合し、
前記形成要素(30)は膨張式スリーブ(32)として構成され、
前記表面は前記形成要素(30)により形成されるVR装置。
【請求項2】
仮想現実を生成し、かつ、表示するためのVR装置であって、
VRセグメント(12)を備え、前記VRセグメント(12)の中で少なくとも1人の利用者(16)及び少なくとも1つの物体(18)が自由に動くことができ、
前記VR装置は、前記VRセグメント(12)内の前記利用者(16)の位置と動きに応じて前記VRセグメント(12)内の前記利用者(16)と前記物体(18)の位置と動きに対応する仮想現実を生成可能であるとともに、前記利用者(16)に割り当てられたヘッドマウントディスプレイ(21)上で該仮想現実を表示可能である手段を有し、
前記VR装置は、前記VRセグメント(12)内における前記利用者(16)と前記物体(18)の位置と動きを感知するための位置感知装置(24)を有し、
前記物体(18)は、少なくともその幾何学形状と大きさの点で、前記仮想現実に基づいて想定される外形に適合する外形を有し、
前記VR装置(10)は、前記物体(18)が前記VRセグメント(12)内で予め決められた経路に沿って移動するように構成された経路特定手段(42)を備えることを特徴とする、VR装置。
【請求項3】
仮想現実を生成し、かつ、表示するためのVR装置であって、
VRセグメント(12)を備え、前記VRセグメント(12)の中で少なくとも1人の利用者(16)及び少なくとも1つの物体(18)が自由に動くことができ、
前記VR装置は、前記VRセグメント(12)内の前記利用者(16)の位置と動きに応じて前記VRセグメント(12)内の前記利用者(16)と前記物体(18)の位置と動きに対応する仮想現実を生成可能であるとともに、前記利用者(16)に割り当てられたヘッドマウントディスプレイ(21)上で該仮想現実を表示可能である手段を有し、
前記VR装置は、前記VRセグメント(12)内における前記利用者(16)と前記物体(18)の位置と動きを感知するための位置感知装置(24)を有し、
前記物体(18)は、少なくともその幾何学形状と大きさの点で、前記仮想現実に基づいて想定される外形に適合する外形を有し、
前記VR装置(10)は、前記物体(18)が前記VRセグメント(12)内で無軌道な経路に沿って移動するように構成された経路特定手段(42)を備えることを特徴とする、VR装置。
【請求項4】
前記物体(18)は可動部分(36)を有し、前記位置感知装置(24)は複数の位置センサ(38)を有し、該位置センサ(38)は、前記物体(18)に取り付けることができるとともに前記可動部分(36)の動きを感知できることを特徴とする、請求項1~
3の何れか一項に記載のVR装置。
【請求項5】
前記VR装置(10)は、前記仮想現実に基づいて想定される匂いに適合する匂いを発生させるための匂い発生器(40)を備えることを特徴とする、請求項1~
4の何れか一項に記載のVR装置。
【請求項6】
前記物体(18)はロボット(34)又は人間(34)であることを特徴とする、請求項1~
5の何れか一項に記載のVR装置。
【請求項7】
前記VR装置(10)は、前記物体(18)が前記VRセグメント(12)内で予め決められた経路に沿って移動するように構成された経路特定手段(42)を備えることを特徴とする、請求項
1に記載のVR装置。
【請求項8】
前記VR装置(10)は、前記物体(18)が前記VRセグメント(12)内で無軌道な経路に沿って移動するように構成された経路特定手段(42)を備えることを特徴とする、請求項
1に記載のVR装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想現実を生成し、かつ、表示するためのVR装置に関する。
【背景技術】
【0002】
とりわけ、コンピュータの処理能力の拡大と無線伝送可能なデータ量の増大により、仮想現実(VR)の概念はますます多くの利用分野へと広がりつつある。VRのコンセプトは、テーマパーク、フィットネススタジオ、又はレクリエーション及びゲームセンターの脱出ゲームで利用でき、このことは例えば特許文献1において説明されている。テーマパーク、フィットネススタジオ、及び脱出ゲームはそれぞれ、利用者が仮想現実に入ることのできるVRセグメントを表している。VRめがね等のヘッドマウントディスプレイは典型的にこの目的のために使用される。このようなヘッドマウントディスプレイは、特許文献2において開示されている。
【0003】
仮想現実の魅力を高めるために、仮想物体を仮想現実に取り込むことができる。これらの物体は、騎士やモンスター等の架空の肖像の形態であり得る。より完全な没入感、すなわちできるだけ現実として感じられる仮想現実の印象を実現するためには、利用者が物体に触れたときに、その物体の外形及び/又は触感が仮想現実に基づいて利用者が想定する外形及び/又は触感と一致しなければならない。利用者が知覚する物体の外形と触感が、仮想現実に基づいて想定される触感からかけ離れていると、没入感は損なわれる。
【0004】
仮想物体の外形と触感は触覚グローブを使って再現され、これらは「フィードバック装置」とも呼ばれ、仮想現実の利用者により装着される。外形と触感とは密接な関係がある。完全な没入感のためには、利用者は、仮想現実の中のある仮想物体の表面を触ったときに、触覚グローブを介してそれに対応するフィードバックを受けるべきである。目標は、利用者が、自分はその表面に触れているというフィードバックを受けることであり、これは例えば抵抗感という印象により実現できる。しかしながら、それに加えて、触感は仮想現実から想定されるであろうものに対応すべきである。
【0005】
しかし、本願の優先権日現在入手可能な触覚グローブを使って実現可能な触感は、仮想現実から想定される触感と限定的な程度にしか一致しない。さらに、触覚グローブの使用に必要な技術的及び金銭的投資は非常に高く、これは触覚グローブがあまり使用されていない理由である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/050473号
【文献】米国特許出願公開第2013/0083003号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の1つの実施態様の目的は、物体を統合すること、特に自由に動くことができる物体を仮想現実に簡単かつ費用対効果の高い方法で統合することが可能であり、前記物体の外形と触感が仮想現実に基づいて想定されるであろう外形及び触感に対応するようなVR装置を提供することである。
【0008】
この目的は、特許請求項1に明記されている特徴により達成される。有利な実施態様は従属項の主旨である。
本発明の1つの実施態様は、仮想現実を生成し、かつ、表示するためのVR装置に関し、該VR装置は、VRセグメントを備え、該VRセグメントの中では少なくとも1人の利用者及び少なくとも1つの物体が自由に動くことができ、VR装置は、VRセグメント内の利用者の位置と動きに応じてVRセグメント内の利用者と物体の位置と動きに対応する仮想現実を生成可能であるとともに利用者に割り当てられたヘッドマウントディスプレイ上で表示可能である手段を有し、また、セグメント内の利用者と物体の位置と動きを感知するための位置感知装置を有し、物体は、少なくともその幾何学形状と大きさの点で、仮想現実に基づいて想定されるであろう外形に適合する外形を有する。
【0009】
手段は、VRセグメント内の利用者の位置と動きに応じてVRセグメント内の利用者と物体の位置と動きに対応する仮想現実を生成可能であるとともに、利用者に割り当てられたヘッドマウントディスプレイ上で該仮想現実を表示可能であり、該手段は、典型的には、位置感知装置からの信号を処理し、それを使って仮想現実を生成する処理ユニットを備える。このようにして生成された仮想現実は、送信機によってヘッドマウントディスプレイに無線で送信され、該ヘッドマウントディスプレイが利用者に仮想現実を表示する。
【0010】
VRセグメント内の利用者と物体の位置と動きを感知するために、位置感知装置は複数のセンサを備え、該複数のセンサはVRセグメント内に配置されるとともに、例えば光学的に位置と動きを感知し、感知した位置と動きをそれらに対応する信号に変換する。
【0011】
少なくとも1つの物体は、少なくともその幾何学形状と大きさの点で、仮想現実に基づいて想定されるであろう外形に適合する外形を有する。冒頭に記したように、物体は騎士やモンスターとして構成されることができ、これらが仮想現実に取り込まれる。したがって、これらは現実世界内に物理的に存在する物体であり、仮想現実の中にのみ存在する仮想物体ではない。したがって、例えば、利用者が騎士の武器から想定するであろう外形を具備した移動物体を提供することが可能である。特に、騎士は剣や盾の少なくとも一方を持つことができる。物体の外形は、その幾何学形状と大きさの点でこれに適合させることができる。
【0012】
この提案によれば、没入感を高め、利用者に対して仮想現実の強烈な体験を提供するための簡単かつ費用対効果の高い選択肢がこのように作られる。
さらなる実施態様によれば、VR装置は1つ以上の形成要素を備え、該形成要素は物体に取付け可能であり、該形成要素の外形は仮想現実に基づいて想定されるであろう外形に適合する。没入感は、ある物体が仮想現実に基づいて想定される場合には、ある物体に実際に遭遇する、という事実により向上する。例えば、モンスターが外向きに延びるひれを有する場合、形成要素はひれを模した形状とすることが可能である。形成要素は、発泡材又は容易に成形できるその他の材料から製作されることができ、もって物体の外形は仮想現実に基づいて想定される外形に容易に適合させることができる。特に、形成要素がある物体に取外し可能に取り付けられる場合には、この物体の外形はたやすく別の仮想現実に適合させることができる。例えば、物体の外形は、1つの仮想現実ではモンスターについて、他の仮想現実では騎士についてシミュレートできる。盾と剣はおもちゃとして入手可能であり、これは安価な形成要素として使用できる。
【0013】
さらなる実施態様によれば、物体の表面は、仮想現実に基づいて想定されるであろう触感に適合する触感を有する。前述のように、物体は騎士又はモンスターとして構成されることができ、それが仮想現実の中に取り込まれる。この提案によれば、利用者が騎士の武器から予想するであろう触感を有する金属面を具備する物体が提供され得る。モンスターのデザインに応じて、移動物体は毛むくじゃらの、及び/又は湿っぽい表面を有し得る。このような表面は、スーツやケープを使って容易に実現できる。
【0014】
さらに改良された実施態様において、形成要素は膨張式スリーブとして構成できる。膨張式スリーブは、物体に容易に着脱できる。複数の膨張式スリーブは複数の小空間を有することができ、これらは物体の外形に応じて膨張させても、させなくてもよい。これによって、物体の外形は、仮想現実に基づいて想定されるモンスター又は騎士の外形に素早く適合させることが可能となる。さらに、膨張式スリーブは、より大きい程度まで、又はより小さい程度まで膨張させることができ、それによって圧力が加えられたときにスリーブがへこむ程度を調節できる。それゆえ、仮想現実による利用者の予想に応じて、より大きくへこむ、又はそれほどへこまない形成要素を提供できる。
【0015】
他の改良された実施態様において、表面は形成要素により形成できる。上述のように、形成要素は主として、物体の外形を仮想現実に基づいて想定される外形に適合させる役割を果たす。すでに説明したように、膨張式スリーブとしての形成要素の実施態様により、へこむ程度をそれによって調節することが可能となる。この実施態様によれば、形成要素はまた外面も形成し、それによって外形及びへこみの程度を特定することに加えて、形成要素は表面の触感も特定する。これによって、特に、物体を様々な仮想現実に適合させやすくなる。
【0016】
さらなる実施態様において、物体は可動部分を有することができ、位置感知装置は、物体に取付け可能で、可動部分の動きを感知するために使用できる位置センサを有することが可能である。冒頭に記したように、位置感知装置は、それがVRセグメント内の利用者と物体の位置と動きを感知することができるように構成される。この目的のために、位置感知装置はVRセグメント内に配置された複数のセンサを有するが、これらは物体上又は利用者上には配置されない。それに対して、この実施態様によれば、位置センサは物体の可動部分の上又は中に配置される。これによって、可動部分のわずかな移動も正確に感知でき、没入感が向上する。
【0017】
他の改良された実施態様は、VR装置が仮想現実に基づいて想定されるであろう匂いに適合する匂いを発生させるための匂い発生器を備えることを特徴とする。例えば、モンスターが湿っぽい表面を有していれば、匂い発生器により提供されるかび臭い腐敗したような匂いは没入感をさらに高めることができる。
【0018】
さらなる実施態様によれば、物体はロボット又は人間であり得る。物体がロボットである場合、その位置と動きの感知は、それがVRセグメント内で初めて使用される前に決まるという点で、又はロボットが自分の現在位置を位置感知装置に通信することができるという点で、より容易である。人間の場合、位置と動きの感知はより複雑である。人間の位置や動きを事前に特定できる程度は、非常に限られているからである。したがって、物体に取り付けることのできる位置センサは、人間の場合に特に適している。この目的のために、能動的又は受動的「モーションキャプチャマーカ」を使用できる。「モーションキャプチャマーカ」は人間にピン留めすることができ、動きを位置感知装置が読み取れるフォーマットに変換できる。位置センサはまた、人間の口の動きを感知するために使用でき、しかも、感知した動きに対応する、仮想現実に基づいて想定されるであろう音声を生成するためにも使用できる。人間をVRセグメント内で動くことができる物体として用いることには、人間が利用者の反応によりよく応答し、それゆえ、VRセグメント内の利用者の体験を強化できるという利点がある。それに加えて、人間は一般に、より柔軟に使用でき、異なる仮想現実により素早く適合させることができる。
【0019】
さらなる実施態様によれば、VR装置は経路特定手段を備え、該経路特定手段は、物体がVRセグメント内で予め決められた経路に沿って移動するように構成される。この経路特定手段は、物体がロボットの形態である場合に特に有益である。しかしながら、経路特定手段は、物体が人間の形態であっても使用できる。何れの場合も、VRセグメント内の物体の存在をおおむね均等に分散させることができ、VRセグメント内の全利用者がこの物体に接触する蓋然性を最大化できる。
【0020】
VR装置は経路特定手段をさらに備えることができ、該経路特定手段は、物体がVRセグメント内で無軌道な経路に沿って移動するように構成される。換言すれば、物体は、VRセグメント内でランダムに移動することができる。VRセグメント内での物体のランダムな移動は通常、人間の場合に当然起こる。物体がロボットとして設計された場合、経路は典型的に、例えばロボットがVRセグメントから出ないように事前に設定しなければならない。前述のように、これによってロボットの存在がVRセグメント全体を通じておおむね均等で、特定の区域が飛ばされないようにすることが可能である。しかしながら、それによりロボットの柔軟性が制限される。他方で、経路特定手段が、物体がVRセグメント内で無軌道な経路に沿って移動するように構成されていれば、ロボットは例えば、より長い時間にわたって利用者とやり取りし、利用者の移動を調節できる。これによって没入感がさらに向上する。
【0021】
本発明の例示的実施態様は、添付の図面に関して以下により詳しく説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明によるVR装置10を基本的な平面図で示す。VR装置10は、VRセグメント12を備え、該VRセグメント12は仮想上の壁により、及び/又は実際の壁14により境界が定められる。少なくとも1人の利用者16と少なくとも1つの物体18がVRセグメント12内で自由に動くことができる。VR装置10は、VRセグメント12内の利用者16と物体18の位置と動きに応じてVRセグメント12内の利用者16と物体18の位置と動きに対応する仮想現実を生成可能であるとともに利用者16に割り当てられたヘッドマウントディスプレイ21上に表示できる手段20をさらに有する。図の例において、手段20は中央処理ユニット22を備える。VR装置10には、VRセグメント12内の利用者16と物体18の位置と動きを感知するための位置感知装置24がさらに併設される。図の例において、位置感知装置24は、VRセグメント内に配置された4つのセンサ26を備え、該センサ26によってVRセグメント12内の利用者16と物体18の位置と動きを感知し、感知した位置と動きに対応する信号に変換できる。これらの信号は、例えばデータ線(図示せず)を介して中央処理ユニット22に送信される。
【0024】
物体18は、VRセグメント12内で自由に動くことができ、表面28を有し、これは
図2に概略的に示されており、それには仮想現実に基づいて想定される触感に適合する触感が付与される。
【0025】
それに加えて、全部で3つの形成要素301~303が物体18に取外し可能に取り付けられ、形成要素30の外形は、仮想現実に基づいて想定される外形に適合する。真ん中の形成要素30は、膨張式スリーブ32として構成される。
【0026】
物体18は、ロボット34としても、人間としても具現化され得る。図の例では、物体18はロボット34として具現化されているが、以下の説明は人間にも同様に当てはまる。
【0027】
ロボット34は、VRセグメント12内で駆動手段(図示せず)により移動することができる。ロボット34には2つの可動部分36が併設され、該可動部分36は半径方向に外側に向かい、少なくとも
図1の図の平面に直角に動くことができる。形成要素30
2、30
3のうちの一方が各可動部分36の自由端に位置付けられる。また、可動部分38の各々に位置センサ38も取り付けられ、これらのセンサは位置感知装置24と通信し、可動部分36の動きを感知する。
【0028】
VR装置10は、仮想現実にしたがって想定される匂いに適合する匂いを発生させるための匂い発生器40をさらに備える。
VR装置10は以下のように動作する。最初に、仮想現実のテーマが決定される。例えば、仮想現実は、少なくとも1つのモンスターが出没する古い廃墟で起こる。対応する仮想現実は、中央処理ユニット22に保存される。仮想現実のデザインに基づいて、完全な没入感を得るためにモンスターの表面28が持たなければならない外形と触感が推測可能である。
図2に示されるように、モンスターは魚のような、うろこ状の、湿っぽい、ぬるぬるした表面28を有することにする。物体18の表面28は相応に設計され、物体18の触感は、その仮想現実に基づいて想定されるであろう、そのモンスターの触覚に適合する。図の例において、形成要素30の表面28にこれらの触覚が提供される。
【0029】
前述のように、膨張式スリーブ32は真ん中の形成要素301を形成する。膨張式のスリーブ32は、それに触れたときにより大きく、又はより小さくへこむように膨張させることができる。図の例は、魚のような、湿っぽい、ぬるぬるした表面28を有するモンスターに関わるため、膨張式スリーブ32は、触ったときに大きくへこむのに十分なだけ膨張される。
【0030】
形成要素30はまた、仮想現実に基づいて想定されるであろう外形にも適合する。可動部分36は、例えばモンスターのひれを表すこともあり、可動部分38上に配置された形成要素302、303が相応の形状とされる。
【0031】
前述のように、仮想現実は廃墟で起こり、モンスターは魚のような、湿っぽい、ぬるぬるした表面28を有する。したがって、匂い発生器40はかび臭い腐敗したような匂いを発生させる。
【0032】
少なくとも1人の利用者16は、VRセグメント12に入る前に、ヘッドマウントディスプレイ21の1つが与えられ、それをめがねのように装着する。その後、VRセグメント12に入ることができる。利用者はその廃墟の廊下を行き来し、階段を上り下りするように案内され、その中でロボット34として具現化される物体18に遭遇する。物体18はVRセグメント12内で動くことができ、ヘッドマウントディスプレイ21の中では利用者にモンスターとして表示される。利用者16の位置と動きが位置感知装置24により感知され、中央処理ユニット22に送信される。中央処理ユニット22は、感知された位置と動きを使ってそれらに対応する仮想現実を生成して、ヘッドマウントディスプレイ21に送信し、ヘッドマウントディスプレイ21が仮想現実を利用者16に対して表示する。
【0033】
ロボット34は、VRセグメント12の床に沿って移動できる歩行ロボットとして具現化されても、又はVRセグメント12の天井又は壁14から、それに沿ってロボット34が移動できるようなレールシステムによって吊り下げられてもよい。ロボット34は経路特定手段42と併設され、経路特定手段42が1つ以上の経路を特定し、ロボット34はVRセグメント12内でそれに沿って移動する。経路特定手段42は、少なくとも部分的に、中央処理ユニット22の中のアルゴリズムの形態で実装できる。経路は、一定の、予め決定されたものであっても、又は少なくとも部分的にVRセグメント12の中のある状況に柔軟に適合されてもよい。ロボット34には、当該ロボット34が利用者16の位置を特定できるようにする検出手段(図示せず)を併設することができる。経路特定手段42が一定の経路を特定する場合、これは、ロボット34が利用者16に近付きすぎて、怪我をさせる可能性をなくすことができる。このような状況が想定される場合、ロボット34は該当する利用者16が遠ざかるまで、又はロボット34が代替的な、しかし予め決定された経路を取るまで止まっている。それでもなお、ロボット34は、接触でき、利用者16がロボット34の外形と触覚を感知できる程度まで利用者16に近付くことができるべきである。
【0034】
経路特定手段42が一定の経路を特定しない場合、ロボット34は利用者16がロボット34と接触せざるを得ないような方法で利用者16に向かって移動できる。その結果、利用者16は表面28の触覚と外形を感知する。ロボット34は、関係する利用者16と長時間やり取りすることができ、例えば利用者16がVRセグメント12内で移動速度に合わせてその後について行くことができる。
【0035】
ロボット34は音を出すこともできる。この目的のために、顎に似せて設計された可動部分(図示せず)を提供でき、これはロボット34が音を出すときに動く。これらの音もまた、仮想現実に基づいて予想されるものに対応して設計される。
【0036】
利用者16は、VRセグメント12内をくまなく通り終わると、そこから出て、ヘッドマウントディスプレイ21を返却する。
【符号の説明】
【0037】
10 VR装置
12 VRセグメント
14 壁
16 利用者
18 物体
20 手段
21 ヘッドマウントディスプレイ
22 中央処理ユニット
24 位置感知装置
26 センサ
28 表面
30,301~303 形成要素
32 スリーブ
34 ロボット
36 可動部分
38 位置センサ
40 匂い発生器
42 経路特定手段