(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】オメガ-3ポリ不飽和および中鎖脂肪酸を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A23K 20/158 20160101AFI20220225BHJP
A23K 50/40 20160101ALI20220225BHJP
【FI】
A23K20/158
A23K50/40
(21)【出願番号】P 2020527105
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(86)【国際出願番号】 US2017062133
(87)【国際公開番号】W WO2019099015
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】502329223
【氏名又は名称】ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ジュエル、デニス
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-539102(JP,A)
【文献】国際公開第2015/013678(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0044487(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 20/158
A23K 50/40
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパニオン動物における炎症または炎症性障害を治療または予防するためのペットフード組成物であって、
少なくとも一つの中鎖トリグリセリド(MCT)であって、前記少なくとも一つのMCTは、カプリル酸およびカプリン酸を含み、前記少なくとも1つのMCTは、前記ペットフード組成物の総重量に基づいて、1重量%~7重量%の量で存在する、少なくとも1つのMCTと、
0.2重量%
~3重量%
の量で存在するDHAおよびEPAのうちの少なくとも一つ
と、を含み、
前記
少なくとも1つのMCTと、前記DHAおよびEPAのうちの少なくとも一つとが、前記コンパニオン動物が前記ペットフード組成物を摂取した後、前記コンパニオン動物内の循環サイトカインの量の相乗的減少を提供
し、
前記循環サイトカインが、Fas、GM-CSF、IL-2、IL-13、IL-8、SDF-1、およびTNF-αのうちの少なくとも一つを含む、ペットフード組成物。
【請求項2】
前記コンパニオン動物がネコである、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項3】
前記
少なくとも一つのMCTが、前記ペットフード組成物の総重量に基づい
て7重量
%量で存在する、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項4】
前記DHAおよびEPAのうちの少なくとも一
つが、前記ペットフード組成物の総重量に基づい
て2重量%
~3重量%の
量で存在する、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項5】
DHAのEPAに対する比が少なくと
も7:1である、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項6】
前記
少なくとも一つのMCTが、ココナッツ油、パーム油、およびパーム核油から選択される油の形態で前記組成物に添加される、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項7】
前記DHAおよびEPAのうちの少なくとも一つが、魚油の形態で前記組成物に添加される、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項8】
それを必要とするコンパニオン動物における炎症を治療または予防するための方法であって、
それを必要とする前記コンパニオン動物に対して、
少なくとも一つの中鎖トリグリセリド(MCT)と、DHAおよびEPAのうちの少なくとも一つ
と、を含むペットフード組成物を投与することを含み、
前記少なくとも一つのMCTは、カプリル酸およびカプリン酸を含み、前記少なくとも1つのMCTは、前記ペットフード組成物の総重量に基づいて、1重量%~7重量%の量で存在し、
前記DHAおよびEPAのうちの少なくとも一つは、前記ペットフード組成物の総重量に基づいて、0.2重量%~3重量%の量で存在し、
前記ペットフード組成物を前記投与が、前記コンパニオン動物内のサイトカインの量の相乗的減少をもたら
し、
前記サイトカインは、Fas、GM-CSF、IL-2、IL-13、IL-8,SDF-1、およびTNF-αのうちの少なくとも一つを含む、方法。
【請求項9】
前記炎症が慢性炎症である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記炎症が急性炎症である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記
少なくとも一つのMCTが、前記ペットフード組成物の総重量に基づいて
、1.1%
~7%の
量で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物の前記投与が、前記コンパニオン動物のカルニチン、およびN-アセチルL-カルニチンのうちの少なくとも一つの量の相乗的増加をもたらす、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物の前記投与が、前記コンパニオン動物のインドール、ホロゲノミック硫酸塩、およびフェノール類から選択される少なくとも一つのポストバイオティックの量の相乗的な減少をもたらす、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
炎症およびその関連する炎症促進性物質は、疾患または侵入した病原体などの課題に対する動物の免疫反応の一部である。内部、外部、またはその両方でありうる炎症は、時には動物の健康に悪影響を及ぼすレベルで執拗に生じることがある。時々、サイトカインなどの炎症促進性物質の持続的および/または高い産生は、炎症を身体の組織に対して作用させ、損傷を生じさせる場合がある。
【0002】
炎症は、急性または慢性のいずれかとして分類されうる。急性炎症は、有害な刺激に対する初期反応であり、血漿および白血球の血液から損傷組織への移動の増加によって達成される。生化学的事象のカスケードは、局所血管系、免疫系および損傷した組織内の様々な細胞を含む炎症反応を伝播および成熟させる。慢性炎症、または長期の炎症、は、炎症部位に存在する細胞のタイプにおいて、進行性の変化を引き起こし、また炎症プロセスから同時に起こる組織の破壊および治癒によって特徴付けられる。
【0003】
一つの炎症性障害は、例えば、炎症性腸疾患である。「炎症性腸疾患」または「IBD」という用語は、胃腸管のラミナプロピア(lamina propia)内の炎症性浸潤によって特徴付けられる慢性突発性胃腸障害の群を指す。IBDは、分節性の肉芽腫性腸炎、リンパ形質細胞性腸炎、好酸球性胃腸炎、リンパ球性胃腸炎、化膿性腸炎、および組織球性大腸炎などの障害を包含する。IBDの特定のタイプは、ラミナプロピア(lamina propia)に見られる炎症性浸潤のタイプに基づいて特徴付けられる。炎症性浸潤は、重症度および細胞タイプの観点から非常に可変でありうるが、リンパ球および血漿細胞が最も一般的な細胞型である。炎症性浸潤は、胃、小腸および結腸に関与しうる。ネコでは、例えば、胃および小腸が最も頻繁に影響を受ける。多くの場合、腸の複数のセグメントが関与し、臨床徴候は粘膜病変の広範な分布を反映して混合されうる。IBDの重症度は、軽度の臨床徴候から生命にかかわるタンパク質漏出性腸症まで変化する。
【0004】
粘膜炎症は正常な吸収プロセスを妨害する。このような破壊は、吸収不全および浸透圧性下痢をもたらす。腸管透過性の変化によって、体液、タンパク質、および血液の腸管内腔への漏れが生じることがある。吸収不全の脂肪、炭水化物、および胆汁酸が分泌性下痢をもたらす。胃および小腸の炎症は、嘔吐を起こす受容体を刺激する。ネコでは、例えば、IBDの最も一般的な臨床徴候は、慢性嘔吐、下痢、および重量減少である。
【0005】
胃腸管が関与する特定の炎症反応は、腸内毒素症、または常在微生物の不均衡の結果として発生する可能性がある。宿主免疫反応のいくつかの態様が関与する一連の事象では、リポ多糖類(LPS)などの細菌毒素は、サイトカイン、プロスタノイド、プロテアーゼおよび/または活性酸素種などの炎症促進性物質の産生を含む防御プロセスを刺激しうる。これらの物質は、微生物侵入者に対する防御に関する機能を持つが、付随的組織損傷も引き起こす可能性があり、全身の炎症性プロセスおよび組織破壊に関連する物質の負荷に寄与する。したがって、動物のサイトカインレベルは、目下の炎症状態を示すことがあり、動物のサイトカインなどの炎症促進性物質の管理および/または減少は、動物の健康に有益でありうる。
【0006】
炎症、および組織損傷または疾患進行における炎症促進性物質の役割を理解することを目的とした継続的な研究にもかかわらず、炎症状態の効果的な管理は難しいままである。多くの従来的治療が存在するが、このような治療は副作用を含む欠点を持ち、実際には有害であるか、または状態を悪化させる可能性がある。例えば、ステロイドは、炎症性化学物質の産生を減少させることによって炎症と戦うことができ、また喘息、炎症性腸疾患、および炎症性関節炎を含む状態に対して処方されることが多い。しかしながら、ステロイドはかなりの副作用を有することがあり、獣医およびヒト医薬品において最も頻繁に乱用される薬物の一つである。したがって、炎症状態を治療または予防するための新しいまたは代替的な方法および組成物の必要性が残っている。
【0007】
上述のように、炎症はジバイオシス(dybiosis)の結果でありうる。動物の微生物叢は、動物の胃腸管内に常在する細菌および微生物を含み、動物の健康に影響を与える。腸内毒素症は、有益な細菌の比率が減少し、および胃腸管中の有害細菌が増加する。この細菌不均衡は、動物の身体における有毒微生物代謝産物の蓄積を引き起こす可能性があり、これは炎症、ならびに酸化的ストレスおよびその他様々な疾患につながりうる。したがって、動物の微生物叢において有害細菌から産生される様々なポストバイオティクスまたは代謝誘導体のレベルを低下させることは、動物の健康に有益であり得る。ポストバイオティクスは、例えば、微生物叢由来インドール誘導体、硫酸化ホロゲノミック代謝産物、およびフェノール系誘導体を含みうる。
【0008】
炎症性および変化した微生物状態に加えて、例えば、老化動物の脂肪を代謝する能力の低下を含む、動物の老化を包含する動物に対する健康上の懸念も存在する。カルニチンは、脂肪酸の酸化による脂肪の代謝に関与する化合物であり、したがってカルニチンとその代謝産物N-アセチルL-カルニチン(ALCAR)は、コンパニオン動物における年齢関連の健康問題の治療または予防に有用であると考えられる。したがって、動物のカルニチンおよびALCAR誘導体レベルは、脂肪の代謝能力、ならびにその他の年齢に関連する懸念の管理および/または減少を示しうる。したがって、動物のカルニチンおよびALCAR誘導体レベルを増加させるための新しいまたは代替的な方法および組成物の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0009】
少なくとも一つの中鎖トリグリセリド(MCT)の有効量、および少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸の有効量を含む、コンパニオン動物における炎症または炎症性障害を治療または予防するためのペットフード組成物であって、少なくとも一つのMCT、および少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸の量が、コンパニオン動物がペットフード組成物を摂取した後、コンパニオン動物内の循環サイトカインの量の相乗的減少を提供する、ペットフード組成物が本明細書に開示される。
【0010】
特定の実施形態では、ペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも1重量%、例えば約1重量%~約7重量%の範囲、の量で存在するカプリル酸およびカプリン酸のうちの少なくとも一つ、およびペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.2重量%、例えば約0.2重量%~約3重量%の範囲、の量で存在するドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエン酸(EPA)のうちの少なくとも一つの有効量を含む、コンパニオン動物における炎症または炎症性障害を治療または予防するためのペットフード組成物であって、カプリル酸およびカプリン酸のうちの少なくとも一つ、およびDHAおよびEPAのうちの少なくとも一つの量が、コンパニオン動物がペットフード組成物を摂取した後、コンパニオン動物内の循環サイトカインの量の相乗的減少を提供する、ペットフード組成物が本明細書に開示される。
【0011】
本明細書に開示される特定の実施形態では、カプリル酸およびカプリン酸のうちの少なくとも一つの有効量は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、約7重量%である。特定の実施形態では、DHAおよびEPAのうちの少なくとも一つの有効量は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、約2重量%~約3重量%の範囲であり、特定の実施形態では、ペットフード組成物中のDHAのEPAに対する比は少なくとも約7:1である。特定の実施形態では、コンパニオン動物はネコである。
【0012】
本開示の様々な実施形態によると、カプリル酸およびカプリン酸のうちの少なくとも一つは、ココナッツ油、パーム油、およびパーム核油から選択される油の形態でペットフード組成物に添加することができ、特定の実施形態によると、DHAおよびEPAのうちの少なくとも一つが、魚油の形態でペットフード組成物に添加されてもよい。
【0013】
さらに、それを必要とするコンパニオン動物の炎症を治療または予防するための方法であって、この方法がカプリル酸およびカプリン酸のうちの少なくとも一つの有効量、およびDHAおよびEPAのうちの少なくとも一つの有効量を含むペットフード組成物をコンパニオン動物に投与する工程を含み、組成物の投与が、コンパニオン動物内のサイトカインの量の相乗的減少をもたらす、方法が本明細書に開示される。特定の実施形態では、コンパニオン動物はネコである。
【0014】
本明細書に開示される炎症を治療または予防するための方法の特定の実施形態によれば、炎症は慢性炎症であり、また特定の実施形態では、炎症は急性炎症である。
【0015】
本明細書に開示される方法の特定の実施形態では、カプリル酸およびカプリン酸のうちの少なくとも一つの有効量は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも約1.1%、例えば約1.1%~約7%の範囲、であり、また特定の実施形態では、DHAおよびEPAのうちの少なくとも一つの有効量は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.2%、例えば約0.2%~約3%の範囲、である。
【0016】
本明細書に開示される方法の別の実施形態では、サイトカインは、Fas、GM-CSF、IL-2、IL-13、IL-8、およびSDF-1のうちの少なくとも一つから選択され、特定の実施形態によると、炎症は慢性炎症である。本開示のその他の実施形態によると、サイトカインは、Fas、GM-CSF、IL-2、IL-13、SDF-1、およびTNF-αのうちの少なくとも一つから選択され、特定の実施形態では、炎症は急性炎症である。
【0017】
本明細書に開示される方法の様々な実施形態では、ペットフード組成物の投与は、コンパニオン動物のカルニチンおよびN-アセチルL-カルニチンのうちの少なくとも一つの量の相乗的増加をもたらす。さらに、本明細書に開示される方法の様々な実施形態では、ペットフード組成物の投与は、コンパニオン動物のインドール、ホロゲノミック硫酸塩、およびフェノール類から選択される少なくとも一つのポストバイオティックの量の相乗的な減少をもたらす。
【0018】
本開示が適用可能である更なる領域は、以下で行う詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明及び特定の実施例は、本開示の好ましい実施形態を示しているものの、説明の目的のみとして意図されており、本開示の範囲を限定することを意図していないと理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好適な実施形態の以下の説明は、性質において単に例示的であり、かつ、いかなる点においても本発明、その用途、または使用を制限することは意図されていない。
【0020】
明細書および特許請求の範囲全体を通して、以下の用語は、文脈が別様を明確に規定しない限り、本明細書に明示的に関連する意味を取る。本明細書で使用される場合、「一部の実施形態では」および「実施形態では」という語句は、同じ実施形態を指してもよいが、必ずしも同じ実施形態を指す必要はない。さらに、本明細書で使用される場合、「別の実施形態では」および「一部の他の実施形態では」という語句は、異なる実施形態を指してもよいが、必ずしも異なる実施形態を指す必要はない。以下に説明するように、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、様々な実施形態を容易に組み合わせることができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「または」という用語は、包括的演算子であり、文脈が別様を明確に規定しない限り、「および/または」と同等である。「に基づく」という用語は、文脈が別様を明確に規定しない限り、排他的ではなく、記述されていない追加的な要因に基づくことを許す。本明細書では、「A、B、およびCのうちの少なくとも一つ」の列挙は、A、B、またはC、A、B、またはCの複数の実施例、あるいはA/B、A/C、B/C、A/B/B/ B/B/C、A/B/C、などの組み合わせ、を含有する実施形態を含む。さらに、本明細書全体では、「a」、「an」、および「the」の意味は複数の参照を含む。「in」の意味は、「の中に(in)」および「の上に(on)」を含む。
【0022】
第一、第二などの用語は、本明細書では様々な要素を記述するために使用されてもよいが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないこともまた、理解されるであろう。これらの用語は、一つの要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。例えば、第一のオブジェクト、構成成分、または工程を第二のオブジェクト、構成成分、または工程と呼ぶことができ、同様に、第二のオブジェクト、構成成分、または工程は、本発明の範囲を逸脱することなく、第一のオブジェクト、構成成分、または工程と呼ぶことができる。第一のオブジェクト、構成成分、または工程、および第二のオブジェクト、構成成分、または工程は共に、それぞれオブジェクト、構成成分、または工程であるが、同じオブジェクト、構成成分、または工程とみなされるべきではない。本明細書で使用される場合、「含む(includes)」、「含む(including)」、「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」という用語は、記述された特徴、工程、作業、要素、および/または構成成分の存在を指定するが、一つ以上のその他の特徴、工程、作業、要素、構成成分、および/またはその群の、存在または付加を除外しないことをさらに理解されたい。さらに、本明細書で使用される場合、「if」という用語は、文脈に応じて「時に(when)」または「と同時に(upon)」または「判定に応答して」または「検出に応答して」を意味すると解釈されうる。
【0023】
以下に定義されるすべての物理的特性は、別段の指定がない限り、20~25℃で測定される。
【0024】
本明細書の値の数値範囲を参照する時、このような範囲は、それぞれおよびすべての数、および/または表記した範囲の最小と最大との間の画分および端点を含むことが理解される。例えば、0.5~6%の範囲は、多くの中から、例えば、0.6%、0.7%、および0.9%など、5.95%、5.97%、および5.99%を含む上限値までなど、すべての中間値を明示的に含むことになる。文脈が別様を明確に規定しない限り、本明細書に記載される他の数値特性および/または要素的範囲の各々に同じものが適用される。
【0025】
さらに、数値は、示された値の「約」または「およそ」であり、当業者によって予想される実験誤差および変形を考慮に入れる。本明細書に開示されているすべての数値および範囲は、「約」がそれと併せて使用されるかどうかおおよその値および範囲であることを理解されるべきである。
【0026】
特に断らない限り、本明細書内及び本明細書の他の箇所で表現される割合及び量はすべて、重量パーセントを指すものと理解されるべきである。与えられている量は材料の活性重量に基づく。別途指定されない限り、すべての構成成分または組成物の量は、その構成成分または組成物の活性量に関連しているが、市販されているソースに存在する場合がある不純物または副産物を除外する。
【0027】
さらに、本明細書内で引用される参照文献は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示における定義と、引用された参照文献における定義に矛盾がある場合、本開示が支配する。
【0028】
本明細書において、コンパニオン動物の血液中など、コンパニオン動物内の循環サイトカインの量の相乗的な減少を提供するのに有効な量の少なくとも一つのMCTおよび少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸を含むペットフード組成物が開示される。また、少なくとも一つのMCTの有効量、および少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸の有効量を投与することを含む、コンパニオン動物における炎症または炎症性障害を治療または予防するための方法であって、少なくとも一つのMCT、および少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸の量が、コンパニオン動物の血液中など、コンパニオン動物内の循環サイトカインの量の相乗的減少に充分である、方法が本明細書に開示される。さらに本明細書において、リポ多糖類(LPS)による刺激の際に生成されるサイトカインのレベルを低減するための方法が開示されており、それによって、例えば、腸細菌微生物叢の腸内毒素症由来でありうる炎症が減少される。
【0029】
本明細書において「炎症性障害」という用語は、炎症状態、障害、または疾患それ自体を指すだけでなく、炎症性障害の結果として発症または進行する任意の状態、障害、または疾患をも指す。例示上、炎症性障害には、歯肉炎、歯周炎、関節リウマチ、滑液包炎、骨関節炎、全身性狼瘡、喘息、肝炎、気管支炎、急性痛風性関節炎、乾癬性関節炎、大腸炎、クローン病、アレルギー状態(例えば、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、薬剤性皮膚炎、接触およびアトピー性皮膚炎)、慢性的皮膚状態(例えば、ヘルペス状皮膚炎、天疱瘡、重度の乾癬および重度の脂漏性皮膚炎、目のぶどう膜、虹彩、結膜、および視神経の慢性的なアレルギーならびに炎症状態、急性冠状動脈症候群(例えば、不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓性突然死、冠動脈プラーク破裂、血栓症)炎症性腸疾患、およびそれらの組み合わせを含むが限定されない。
【0030】
炎症性障害は急性または慢性でありうる。炎症性障害、特に慢性状態はまた、癌、悪液質、心血管疾患、糖尿病、骨粗鬆症、およびアルツハイマー病などの神経変性障害を含むがこれらに限定されない、他の状態、障害、または疾患の発症または進行に寄与しうる、またはリスク因子となりうる。
【0031】
炎症促進性物質は、例えば、熱、炎症、および組織破壊などの動物の炎症反応を増強すると知られているサイトカインなどのシグナル伝達分子である。様々な炎症促進性物質が当業者に公知である。動物内の炎症促進性物質のレベルは、LPSなどの炎症促進性刺激によって増加しうる。LPSはグラム陰性細菌の膜に位置し、動物の免疫反応を誘発することが知られている。この免疫反応の一部として、LPSは様々な炎症促進性物質の産生を誘発しうる。
【0032】
炎症促進性物質は、例えば、プロスタグランジン(例えば、PGE2)およびロイコトリエン(例えば、LTB4)などのエイコサノイド;ガス(例えば、酸化窒素(NO));酵素(例えば、ホスホリパーゼ、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、COX-1およびCOX-2);ならびに例えばインターロイキン(例えば、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、およびIL-18)、腫瘍壊死因子ファミリーのメンバー(例えば、TNF-α、TNF-βおよびリンフォトキシンβ)、インターフェロン(例えば、IFN-βおよびIFN-γ)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、形質転換成長因子(例えば、TGF-β1、TGF-β2およびTGF-β3、白血病抑制因子(LIF)、Fasリガンド(Fas)、間質細胞由来因子1(SDF-1)、繊毛様神経栄養因子(CNTF)、遊走阻害因子(MIF)、単球走化性タンパク質(MCP-1)、マクロファージ炎症性タンパク質(例えば、MIP-1α、MIP-1βおよびMIP-2)、およびRANTESなどのサイトカインを含みうるが限定されない。一実施形態では、炎症促進性物質はサイトカインである。別の実施形態では、炎症促進性物質は、Fas、GM-CSF、IL-2、IL-13、IL-8、SDF-1、およびTNF-αからなる群から選択される。
【0033】
動物における循環サイトカインのレベルを相乗的に減少させることに加えて、本明細書に開示されるペットフード組成物は、動物の循環代謝産物にさらなる効果を持ちうる。例えば、特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、循環カルニチンのレベル、およびその血液脳関門透過性代謝物ALCARを相乗的に増加させることができ、かつ/または例えば、インドール誘導体、硫酸化ホロゲノミック代謝産物などの様々なポストバイオティクス、およびフェノール系誘導体のレベルを相乗的に減少させうる。
【0034】
したがって、ペットフード組成物を消費するコンパニオン動物中の循環カルニチンのレベルおよび/またはALCAR誘導体レベルの相乗的増加に有効な少なくとも一つのMCTおよび少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸を含むペットフード組成物が本明細書にさらに開示される。理論に束縛されるものではないが、循環カルニチンおよび/またはALCAR誘導体レベルのこのような増加は、若々しい状態に対して脂肪代謝が頻繁に減少する様々な老化条件に利益をもたらすと考えられる。また、それを必要とするコンパニオン動物に、少なくとも一つのMCTおよび少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸を含むペットフード組成物を投与することによって、年齢関連障害を治療または予防する方法が本明細書に開示されており、ペットフード組成物はコンパニオン動物の循環カルニチン誘導体レベルおよび/またはALCAR誘導体レベルを相乗的に増加させ、結果としてのグローバルカルニチン代謝に対して有益な効果が得られる。
【0035】
例示的な非限定的カルニチンおよびALCAR誘導体は、ドコサヘキサノイルカルニチン、ドコサペンタノイルカルチニン、デカノイルカリチン、ジホモ‐リノレノイルカルニチン、オクタデセンジオイルカルニチン、ブチリルアカルニチン、ラウリルカルニチン、ネルボノイルカルニチン、5-ドデセノイルカルニチン、ミリストイレオイルカルニチン、マルガロイルカルニチン、メロトイルカルニチン、アラキドノイルカルニチン、パルミトレオイルカルニチン、リノレノイルカルニチン、サクシニルカルニチン、デオキシカルニチン、オクトノイルカルニチン、cis-4-デセノイルカルニチン、ベンゾイルカルニチン、リグノセロイルカルニチン、アジポイルカルニチン、カルニチン、ジホモ-リノレオイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、プロピオニルカルニチン、アドレノイルカルニチン、オクタデカンジオイルカルニチン、ベヘノイルカルニチン、グルタロイルカルニチン、アラキドイルカルニチン、リノレオイルカルニチン、ステアロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ピメロイルカルニチン/3-メチルアジポイルカルニチン、フェニルアセチルカルニチン、エイコセノイルカルニチン、オレオイルカルニチン、スベロイルカルニチン、ヘキサノイルカルニチン、チグリルカルニチン、イソブチリルカルニチン、3-ヒドロキブチリルカルニチン、イソバレリルカルニチン、アセチルカルニチン、2-メチルブチロイルカルニチン、およびエルコイルカルニチンを含みうる。
【0036】
また、ペットフード組成物は、種々の腎臓、胃腸、および皮膚科学的状態を治療または予防するためのペットフード組成物が本明細書に開示されており、ペットフード組成物は、循環微生物叢由来インドール誘導体、循環宿主、および微生物叢由来硫酸化ホロゲノミック代謝産物、ならびに循環微生物叢由来フェノール系誘導体などの、様々な代謝産物のポストバイオティック産生を相乗的に減少させるための微生物叢ディマースイッチとして作用しうる少なくとも一つのMCTおよび少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸を含む。さらに、少なくとも一つのMCTおよび少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸を含むペットフード組成物を、それを必要とするコンパニオン動物に投与することを含む、種々の腎臓、胃腸、および皮膚科学的状態を治療または予防するための方法が本明細書に開示されており、ペットフード組成物は、循環微生物叢由来インドール誘導体、循環宿主、および微生物叢由来硫酸化ホロゲノミック代謝産物、ならびに循環微生物叢由来フェノール系誘導体のレベルを、相乗的に減少させる。
【0037】
例示的な、非限定的な、微生物叢由来インドール誘導体は、2-オキシインドール-3-アセテートT-28-2-オキシインドール-3-アセテートP-14;3-ヒドロキシインドリン2-オン硫酸T-28-3-ヒドロキシインドール-2-オン硫酸P-14;5-ヒドロキシインドール硫酸T-28-5-ヒドロキシインドール硫酸P-14;6-ヒドロキシインドール硫酸T-28-6-ヒドロキシインドール硫酸P-14;7-ヒドロキシインドール硫酸T-28-7-ヒドロキシインドール硫酸P-14;インドール-3-カルボン酸T-28-インドール-3-カルボン酸P-14;インドールアセテートT-28-インドールアセテートP-14;インドールアセチルグルタミンT-28-インドールアセチルグルタミンP-14;インドールアセチルグルグリシンT-28-インドールアセチルグリシンP-14;インドールアクリレートT-28-インドールアクリレートP-14;インドールアセテートT-28-インドールアセテートP-14;インドールプロピオネートT-28-インドールプロピオネートP-14;およびインドール-2-オン T-28-インドール-2-オン P-14を含みうる。
【0038】
例示的な、非限定的な、宿主および微生物叢由来硫酸化ホロゲノミック代謝産物は、2-アミノフェノール硫酸T-28-2-アミノフェノール硫酸P-14;3-(3-ヒドロキシフェノール)プロピオネート硫酸T-28-3-(3-ヒドロキシフェノール)プロピオネート硫酸P-14;4-アセチルフェニル硫酸T-28-4-アセチルフェニル硫酸P-14;3-メトキシカテコール硫酸(2)T-28-3-メトキシカテコール硫酸(2)P-14;4-エチルフェニル硫酸T-28-4-エチルフェニル硫酸P-14;4-ヒドロキシシンナマート硫酸T-28-4-ヒドロキシシンナマート硫酸P-14;4-メチルカテコール硫酸T-28-4-メチルカテコール硫酸P-14;4-ビニルグアイアコール硫酸T-28-4-ビニルグアイアコール硫酸P-14;4-ビニルフェノール硫酸T-28-4-ビニルフェノール硫酸P-14;ヒドロキノン硫酸T-28-ヒドロキノン硫酸P-14;イソオイゲノール硫酸T-28-イソオイゲノール硫酸P-14;エクオール硫酸T-28-エクオール硫酸P-14;およびo-メチルカテコール硫酸T-28-O-メチルカテコール硫酸P-14を含みうる。
【0039】
例示的な、非限定的な、微生物叢由来フェノール系誘導体は、2-ヒドロキシフェニルアセテートT-28-2-ヒドロキシフェニルアセテートP-14;3-(3-ヒドロキシフェニル)プロピオネートT-28-3-(3-ヒドロキシフェニル)プロピオネートP-14;3-(4-ヒドロキシフェニル)ラクテート(HPLA)T-28-3-(4-ヒドロキシフェニル)ラクテート(HPLA)P-14;3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートT-28-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートP-14;3-ヒドロキシ-3-フェニルプロピオネートT-28-3-ヒドロキシ-3-フェニルプロピオネートP-14;3-フェニルプロピオネート(ヒドロシンナマート)T-28-3-フェニルプロピオネート(ヒドロシンナマート)P-14;4-ヒドロキシフェニルアセチルグリシンT-28-4-ヒドロキシフェニルアセチルグリシンP-14;4-ヒドロキシフェニルピルビン酸T-28-4-ヒドロキシフェニルピルビン酸P-14;フェニルアセテートT-28-フェニルアセテートP-14;フェニルアセチルアラニンT-28-フェニルアセチルアラニンP-14;フェニルアセチルカルニチンT-28-フェニルアセチルカルニチンP-14;フェニルアセチルグルタメートT-28-フェニルアセチルグルタメートP-14;フェニルアセチルグルタミンT-28-フェニルアセチルグルタミンP-14;フェニルアセチルグリシンT-28-フェニルアセチルグリシンP-14;フェニルアセチルセリンT-28-フェニルアセチルセリンP-14;フェニル乳酸(PLA)T-28-フェニル乳酸P-14;フェニルプロピオニルグリシンT-28-フェニルプロピオニルグリシンP-14;およびフェニルピルビン酸T-28-フェニルピルビン酸P-14を含みうる。
【0040】
本明細書で使用される場合、一物質または物質のレベルでの「相乗的増加」という語句は、その一物質または物質のレベルにおいて薬剤が独立して示す効果を考慮して、二つ以上の薬剤の組み合わせから予想される相加効果よりも高いレベルの増加を意味する。いくつかの実施形態では、相乗的増加は、例えば、望ましい結果に影響を及ぼすために必要な薬剤または薬剤(複数)のより低い量によって、および/または望ましい結果を達成するためのより速い速度によって現れうる。
【0041】
本明細書で使用される場合、一物質または物質のレベルでの「相乗的減少」という語句は、その一物質または物質のレベルにおいて薬剤が独立して示す効果を考慮して、二つ以上の薬剤の組み合わせから予想される相加効果よりも高いレベルの減少を意味する。いくつかの実施形態では、相乗的減少は、例えば、望ましい結果に影響を及ぼすために必要な薬剤または薬剤(複数)のより低い量によって、および/または望ましい結果を達成するためのより速い速度によって現れうる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「中鎖トリグリセリド」(MCT)という用語は、三つの脂肪酸分子にエステル結合したグリセロール分子を示し、各脂肪酸分子は6~12個の炭素を有する。任意のMCTの供給源が、本明細書に開示される実施形態によるペットフード組成物で使用されてもよい。例示的なMCTには、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、またはラウリン酸が含まれる。
【0043】
MCTの供給源には、例えば、ココナッツ油、パーム油、およびパーム核油が含まれる。ココナッツ油は、成熟ココナッツの種または果肉から抽出された油である。パーム核油は、オイルやしの種に由来し、パーム油はオイルやしの果肉自体に由来しています。ココナッツ油、パーム油、およびパーム核油はすべて、飽和脂肪の高い含有量を含む。高飽和脂肪含有量のため、ココナッツ油、パーム油、およびパーム核油は、食品および医薬品の栄養補助食品として使用される場合があり、ならびにその他の産業用途もありうる。本明細書に開示されるMCTは、当該技術分野で既知の任意のプロセスによって調製されてもよい。本明細書に開示される特定の実施形態では、MCTは、カプリル酸およびカプロン酸のうちの少なくとも一つから選択されてもよく、また特定の実施形態では、MCTの供給源はココナッツ油および/またはパーム核油であってもよい。特定の実施形態では、MCTは、Captex(登録商標)355MCTなどのココナッツ油およびパーム核油のうちの少なくとも一つから生じるグリセリンおよび脂肪酸のエステル化によって製造される。特定の実施形態では、Captex(登録商標)355MCTなどのMCTの供給源は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、およびラウリン酸の分布など、様々な脂肪酸の分布を含みうる。特定の実施形態では、分布は、カプリル酸がMCTの供給源内の脂肪酸の総分布の約50%~約75%を含み、カプリン酸はMCTの供給源内の脂肪酸の総分布の約20~約45%を含む。
【0044】
本明細書で使用される場合、「オメガ-3脂肪酸」という用語は、ポリ不飽和脂肪酸カルボン酸の一群のメンバーを意味する。一般に、オメガ-3脂肪酸は、メチレン中断二重結合を有する12~26個の炭素原子を含有し、メチレン中断二重結合うちの一つは、脂肪酸分子のメチル末端から数えて3番目と4番目の炭素原子の間である。生理学的により重要なオメガ-3脂肪酸は長さにおいて18~22個の炭素であり、直鎖である。例示的に、オメガ-3脂肪酸は、限定されないが、EPA、DHA、α-リノレン酸(ALA)、およびその誘導体を含む。特定の実施形態では、オメガ-3脂肪酸は、トリグリセリドの構成成分として食品組成物中に含まれうる。誘導体の追加的な非限定的な例には、オメガ-3脂肪酸の分岐または非分枝状および/あるいは飽和または不飽和C1-C30アルキルおよびシクロアルキルエステルなどの、塩およびエステルが含まれる。
【0045】
任意のオメガ-3脂肪酸の供給源の供給源は、本明細書に開示される組成物および方法に従って使用されてもよい。例えば、オメガ-3脂肪酸の供給源には、魚類(例えば、メンハーデン、イワシ、ニシン、マグロ、サケ)、魚油、魚粉、植物油、藻類、藻類油、亜麻、亜麻油、キャノーラ、キャノーラ油、大豆、大豆油、クルミ、クルミ油、およびこれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、「魚油」という用語は、オメガ-3脂肪酸を比較的豊富に含む脂肪または油性抽出物を示す。魚油は生または精製されてもよく、限定されないが、サケ、マグロ、サバ、ニシン、シーバス、シマスズキ、オヒョウ、ナマズ、イワシ、およびそれらの組み合わせなど、様々な魚から取得されてもよい。
【0046】
オメガ-3脂肪酸はまた、化学合成によって得られ得る。オメガ-3脂肪酸は、遊離酸の形態で、または薬学的にまたは栄養的に許容可能な塩として、調剤に組み込むことができる。少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸は、高精製の、実質的に精製された、部分的に精製された、または未精製の形態であり得る。一実施形態では、少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸は、EPA、DHA、およびその組み合わせからなる群から選択される。本明細書に開示される特定の実施形態では、オメガ-3脂肪酸はDHAおよびEPAの混合物を含む。特定の実施形態では、DPAおよびEPAの混合物の供給源は魚油であり、特定の実施形態では、DPAおよびEPAの混合物は、DPAのEPAに対する比が少なくとも約7:1である。
【0047】
少なくとも一つのMCTおよび少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸の投薬量を体重基準で調節することができ、したがって、そのサイズにかかわらず任意の動物に適するように適合され得る。
【0048】
一実施形態では、少なくとも一つのMCTは、ペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも約1.1重量%、例えば少なくとも約2重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約7重量%、または約7重量%の量でペットフード組成物中に存在する。特定の実施形態では、少なくとも一つのMCTは、ペットフード組成物の総重量に基づいて、約7重量%未満、例えば約5重量%未満、約2重量%未満の量でペットフード組成物中に存在する。特定の実施形態では、少なくとも一つのMCTは、ペットフード組成物の総重量に基づいて、約1.1重量%~約7重量%、例えば約2重量%~約5重量%の範囲の量でペットフード組成物中に存在する。
【0049】
一実施形態では、少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.2重量%、例えば少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約1.5重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約2.5重量%、または少なくとも約3重量%の量でペットフード組成物中に存在する。特定の実施形態では、少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、約3重量%未満、例えば約2重量%未満、または約1.5重量%未満の量でペットフード組成物中に存在する。特定の実施形態では、少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、約0.2重量%~約3重量%、例えば約1重量%~約3重量%の量で、または約1.5重量%~約2.5重量%の範囲の量でペットフード組成物中に存在する。
【0050】
特定の実施形態では、少なくとも一つのMCTは、ペットフード組成物の総重量に基づいて、約1.1重量%~約7重量%、例えば、約2重量%~約5重量%、または約5重量%~15重量%の範囲の量で存在し、および少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、約0.2重量%~約5重量%、例えば、約1重量%~約2.5重量%、または約2重量%~約3重量%の範囲の量で存在する。特定の実施形態では、少なくとも一つのMCTは、ペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも約1.1重量%、例えば、少なくとも約2重量%、少なくとも約5重量%、または少なくとも7重量%の量で存在し、およびオメガ-3脂肪酸は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.2重量%、例えば、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約1.5重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約2.5重量%、または約3重量%の量で存在する。一実施形態では、ペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも一つのMCTは約7重量%の量で存在し、少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸は、約2重量%~約3重量%の範囲の量で存在する。
【0051】
本明細書に開示されるペットフード組成物は、全ての動物の通常の栄養要求を満たすことができ、当業者であれば動物の種、年齢、性別、体重、およびその他の因子に基づいて決定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、意図された受け手動物のための実質的に栄養的に完全な食物を提供する。「栄養的に完全な食物」とは、この食物が実質的にその動物の食餌全てであった場合、健康な動物の通常の健康を維持するのに十分な栄養素を含む食物である。
【0052】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、少なくとも一つのタンパク質源をさらに含みうる。適切なタンパク質源は、任意の適切な動物性または植物性源から選択されうる。例えば、適切なタンパク質源は、家禽ミール、家禽副産物ミール、鶏肉粉、鶏肉副産物ミール、ラムミール、肉および肉骨、魚粉、大豆ミール、大豆タンパク質濃縮物、牛乳タンパク質、コーングルテンミール、小麦グルテン、およびグルテンのうちの少なくとも一つを含んでもよい。デンプン源もまたタンパク質の供給源でもよい。
【0053】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、少なくとも一つの繊維源をさらに含み得る。繊維源は、例えば、セルロース、ビートパルプ、落花生殻、および大豆繊維などの少なくとも一つの野菜繊維源から選択されうる。
【0054】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、栄養バランス剤をさらに含み得る。栄養バランス剤は、当業者に知られている様々な供給源、例えば、ビタミンおよびミネラルサプリメントおよび食物成分から取得されうる。ビタミンおよびミネラルは、栄養素欠乏を回避し、健康を維持するために必要な量で含めることができる。これらの量は当該技術分野で容易に利用可能である。アメリカ飼養検査官協会(AAFCO)は、イヌおよびネコのためのかかる栄養素の推奨量を提供する。ビタミンは一般的に食品添加物として有用であり、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンD12、ビタミンD、ビオチン、ビタミンK、葉酸、イノシトール、ナイアシン、およびパントテン酸を含む。食品添加物として有用なミネラルおよび微量要素には、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、銅、亜鉛、塩化物、鉄、セレン、ヨウ素、および鉄が含まれる。
【0055】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、充填剤、嗜好性エンハンサー、結合剤、風味剤、安定剤、乳化剤、甘味料、着色剤、緩衝剤、塩、コーティング材等の追加的成分を含みうる。安定剤には、防腐剤、協力剤および捕捉剤、包装ガス、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、および湿潤剤などの組成物の貯蔵寿命を増加させる傾向がある物質が含まれる。乳化剤および/または増粘剤の例としては、ゼラチン、セルロースエーテル、デンプン、デンプンエステル、デンプンエーテル、および加工デンプンが挙げられる。各組成物構成成分に対する特定の量は、組成物に含まれる特定の構成成分、動物の種、動物の年齢、体重、全体的な健康状態、性別、および食餌、動物の消費速度、治療される疾患または状態のタイプなど、様々な因子に依存する。
【0056】
別の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、補助食品の形態で、少なくとも一つのMCTおよび/または少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸を含む。補助食品として、例えば、全体の栄養バランスまたは性能を改善するために別の餌または食物と共に使用される餌または食物が含まれる。補助食品として、他の餌または食物に補助食品として無希釈に与えられ、別個に使用可能な動物の配給量の他の部による自由選択を提供し、あるいは動物の通常の餌または食物で希釈し、混合して完全な餌または食物を作製する組成物が挙げられうる。補助食品は、例えば、粉末、液体(ゲルを含む)、シロップ、ピル、カプセルに入れられた組成物などを含む様々な形態でありうる。
【0057】
本明細書に開示されるペットフード組成物は、湿潤組成物であってもよく、または乾燥組成物であってもよく、少なくとも一つのMCTおよび/または少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸は、食物組成物の中に組み込まれるか、あるいは、例えば、表面上へ噴霧する、凝集させる、振りかける、または析出させることによって、任意の組成物構成成分の表面上にあってもよい。
【0058】
ペットフード産業では、例えば、食物は一般的に「ウェット」または「ドライ」として分類される。湿った食物は比較的高い量の水分を持ち、通常は、空気が実質的にまたは完全に除外された缶または容器内に存在する。こうした食物の例は、液体グレービー、または一般的に容器の形状を取るローフタイプの材料の存在下の個々の固体粒子である、「ぶつ切りおよびグレービー」である。乾燥食物は一般的に焼き付けられたまたは押し出された材料であり、後者は次に個別の形状の部分に切断され、通常キブルとして知られる。少なくとも一つのMCTおよび/または少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸は、従来的な手段を通して湿潤食物または乾燥食物に容易に組み込むことができる。
【0059】
湿潤形態、または缶に詰めた形態で本明細書に開示されたペットフード組成物を調製する場合、通常任意成分を、例えば配合物の加工中、例えば組成物の他の構成成分の混合中および/または後に、組成物中に導入してよい。これらの構成成分を組成物中に入れることは、従来の方法により達成されてよい。一実施形態では、動物および家禽の粉砕したタンパク質組織を、魚油、穀物、他の栄養バランス成分、特別目的の添加剤(例えばビタミンとミネラルの混合物、無機塩、セルロースおよびビートパルプ、充填剤等)を含む他の成分と混合し、加工に十分な量の水もまた加える。これらの成分は、構成成分のブレンド中に加熱を行うのに好適な容器中で混合するのが好ましい。例えば直接蒸気注入、又は熱交換器を備えた容器を使用する等の、任意の好適な方法を使用して、混合物の加熱を行ってよい。最後の成分を加えた後、混合物を約50°F(10℃)~約212°F(100℃)の温度範囲で加熱する。いくつかの実施形態では、混合物を約70°F(21℃)~約140°F(60℃)の温度範囲で加熱する。これら範囲外の温度は概して許容されるが、他の加工助剤を使用しなければ、商業的に非実用的となる場合がある。適切な温度まで加熱をすると、材料は通常、粘性液体の形態となるであろう。粘性液体を缶に詰める。蓋を付け、容器を密閉する。次いで、密閉した缶を、内容物を滅菌するために設計した従来の装置の中に配置する。これは、約230°F(110℃)を超える温度まで、適切な時間加熱することにより達成することができ、この時間は例えば、使用する温度および組成物に依存する。
【0060】
あるいは、本明細書に開示されるペットフード組成物は、従来のプロセスを使用して、乾燥形態で調製することができる。特定の実施形態では、例えば、動物タンパク質、植物タンパク質、穀物などを含む乾燥成分は、粉砕され、まとめて混合されうる。次に、脂肪、油、動物性タンパク質、水等を含む湿性又は液体の成分を加え、乾燥混合物と混合する。次に、混合物をキブル又は類似の乾燥片に加工してもよい。このプロセスでは、乾燥成分と湿性成分との混合物を、高圧及び高温にて機械操作にかけ、小径の開口部から押し出して、回転ナイフによりキブルに切断する。次に、湿性キブルを乾燥させて、所望により、例えばフレーバー、脂肪、油類、粉末等を含んでよい、一種以上の局所コーティング材でコーティングする。キブルはまた、押出成形ではなくベーキング法を用いてドウより作製することができ、この方法では、ドウをモールド内に配置した後、乾燥加熱プロセスを行う。
【0061】
ペットフード組成物は、ペットフード組成物を摂取するコンパニオン動物に、少なくとも一つのサイトカインなどの少なくとも一つの炎症促進性物質を相乗的に減少させるのに効果的な周期および期間で投与されうる。特定の実施形態では、組成物は少なくとも一日一回投与され、特定の状況では、組成物は週に二回、または週に一回など、より少ない頻度で投与される。特定の実施形態では、投与は、少なくとも約1週間、例えば少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約2年、または少なくとも約3年間継続しうる。一実施形態では、投与は、実質的に動物の寿命の残りの開始の時から継続される。一般に、ペットフード組成物は、コンパニオン動物がペットフード組成物を摂取するときに、コンパニオン動物に投与される。
【0062】
開始時期は、投与を開始するための上限または下限がないため、動物の寿命の任意の段階でありうる。例えば、イヌおよびネココンパニオン動物の場合、動物が少なくとも約0.25、少なくとも約0.5、少なくとも約0.75、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、または少なくとも約10歳であるときに投与を開始できる。一実施形態では、投与は、出生時またはその付近で開始される。
【0063】
また、それを必要とするコンパニオン動物の炎症、または炎症性障害を治療または予防するための方法であって、この方法が、カプリル酸およびカプリン酸などの、少なくとも一つのMCTの有効量、およびDHAおよびEPAなどの、少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸の有効量を含むペットフード組成物をコンパニオン動物に投与する工程を含み、ペットフード組成物の投与が、コンパニオン動物内のサイトカインの量の相乗的減少をもたらす、方法が本明細書に開示される。
【0064】
さらに、それを必要とするコンパニオン動物の年齢関連障害を治療または予防するための方法であって、この方法が、カプリル酸およびカプリン酸などの、少なくとも一つのMCTの有効量、およびDHAおよびEPAなどの、少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸の有効量を、それを必要とするコンパニオン動物に投与する工程を含み、ペットフード組成物の投与が、コンパニオン動物の循環カルニチンのレベルおよび/またはALCAR誘導体レベルの相乗的増加をもたらす、方法が本明細書に開示される。
【0065】
さらに、それを必要とするコンパニオン動物の腎臓、胃腸、および皮膚科学的障害を治療または予防するための方法であって、この方法が、カプリル酸およびカプリン酸などの、少なくとも一つのMCTの有効量、およびDHAおよびEPAなどの、少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸の有効量を、それを必要とするコンパニオン動物に投与する工程を含み、ペットフード組成物の投与が、例えば、インドール誘導体、硫酸化ホロゲノミック代謝産物、およびフェノール系誘導体などのポストバイオティクスのレベルの相乗的減少をもたらす、方法が本明細書に開示される。
【0066】
本明細書における、障害を「予防」という用語は、障害を発症する可能性を予防または減少させることを指し、「治療する」という用語は、障害の症状の減少、改善、または除去を指す。
【0067】
また、動物における炎症状態の存在または不在を評価し、評価に基づいて組成物を選択することを含む、動物に投与するための組成物を選択するための方法であって、評価が炎症状態の存在を示唆する場合、選択されたペットフード組成物は、少なくとも一つのMCTの有効量、および炎症状態を予防、改善、または治療するために有効な量で存在する少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸を含むペットフード組成物である、方法が本明細書に開示される。
【0068】
本明細書に開示される一実施形態では、評価することは、動物がこうした炎症状態の症状を有するかどうかを判断することを含む。別の実施形態では、評価することは、動物の組織または体液における炎症促進性物質のレベルを判定することを含む。例えば、動物から取られた体液サンプルを使用してレベルを決定することができる。実例として、血液サンプルを動物から採取することができ、およびサンプルからの血液または血清で判定された炎症促進性物質のレベル。
【0069】
炎症促進性物質のレベルは、当技術分野で公知の標準アッセイを使用して、体液サンプルで判定することができる。例えば、アッセイは、判定される炎症促進性物質のタイプ、ならびに特定のサンプル中の物質のレベルを定量化することに対するアッセイの適合性に基づいて選択されてもよい。例えば、ポリペプチド上の一つ以上のエピトープに反応するモノクローナル抗体を活用した市販の免疫アッセイまたは競合結合アッセイを用いて、タンパク質である炎症促進性物質の血清レベルを判定することができる。あるいは、こうした炎症促進性物質のレベルは、体液サンプル中に存在して、mRNAを発現する細胞内の、そのmRNAのレベルを定量化することによって判定されてもよい。あるいは、炎症促進性物質のレベルは、物質の活性レベルを測定することによって判定され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、酵素免疫アッセイ(EIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ(IFS)、放射免疫アッセイ(RIA)、ウェスタンブロットアッセイ、ノーザンブロット、生化学アッセイ、酵素試験、および比色分析アッセイからなる群から独立して選択される一つ以上のアッセイを用いてレベルが判定される。様々なラベルおよびコンジュゲーション技術が当業者に既知であり、様々な生化学、核酸およびアミノ酸アッセイで使用されうる。特定の実施形態では、循環サイトカインはELISAによって評価されうる。
【0071】
炎症促進性物質のレベルは、特定の炎症促進性物質にとって基準レベルと比較される「観察される」レベルであり得る。例えば、基準レベルは、炎症状態を持たないことが知られている基準動物で決定され得る。基準動物(すなわち、炎症促進性物質の基準レベルを決定するために使用される動物は、一般的に、観察されたレベルが得られる動物と同じ種の、随意に同じ血統の、および/またはほぼ同じ年齢のものとなる。特定の実施形態では、基準高レベルは、炎症促進プロセスを強化するために知られているグラム陰性細菌からLPSのサンプルを組み込むことによって決定されうる。動物の臨床的に健康な集団でさえ、炎症促進プロセスに関係することが知られている測定可能なレベルのサイトカインを持ちうることが知られている。臨床的に健康な集団におけるサイトカインのレベルの減少を評価しうる。さらに、慢性炎症状態または急性炎症状態を患う動物集団中のサイトカインのレベルも評価されうる。
【0072】
いくつかの実施形態では、少なくとも一つのMCTおよび少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸を含むペットフード組成物を動物に投与するのに適したキットが本明細書に開示される。キットは、一つのパッケージ内の別々の容器内、またはバーチャルパッケージ内の別々の容器内に、適切に、少なくとも一つのMCTと、少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸と、(1)一つ以上の動物に摂取されるのに適した成分、(2)動物の組織または体液中に高いレベルで存在する炎症促進性物質の量を減少させるために有用な組成物を提供するための、少なくとも一つのMCT、少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸、およびほかのキット構成成分の組み合わせ方の指示、ならびに(3)少なくとも一つのMCT、少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸、および本発明の他の、特に動物に有益な、構成成分、のうちの少なくとも一つと、を含む。キットがバーチャルパッケージを含む場合、キットは、一つ以上の物理的なキット構成成分を組み合わせるバーチャル環境内の指示に限定されうる。キットは、少なくとも一つのMCTと、少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸と、動物組織または体液中に高いレベルで存在する炎症促進性物質の量を減少させるために有用なペットフード組成物を製造するのに十分な量のその他の構成成分と、を含んでもよい。キットはさらに、少なくとも一つのMCT、少なくとも一つのオメガ-3脂肪酸、および原料を混合するための装置、または混合物を入れるための、食料用の器などの、装置などの追加的な品目を含みうる。
【実施例】
【0073】
実施例1
食餌は押出成形を介して処方、および製造され、MCTおよび魚油を一緒に含有することが、慢性炎症状態にだけでなく、腸内毒素症が誘発する炎症の体外モデルにも利益を提供するかを判定した。
【0074】
食餌は、アメリカ飼料検査官協会(AAFCO)および米国学術研究会議(NRC)の栄養勧告に従って処方された。できあがったキブルは、押出成形で製造され、乾燥され、美味剤でコーティングされた。実験的魚油および/またはMCTを含む食餌において、油は乾燥キブルの外側に美味剤と共にコーティングされた。すべての食餌はネコメンテナンス処方であった。対照食餌は、実験的油なしの処方の栄養構成成分のみを含有した(魚もMCTも含有しないものを、「食餌なし(None Diet)」と称した)。MCTまたは魚油のいずれかを含有する二つの追加的な対照食餌はそれぞれ「MCT食餌(MCT Diet)」および「FO食餌(FO Diet)」と表示された。対照的に、試験用食餌(「両食餌(Both Diet)を称される」)は、MCT対照食餌およびFO対照食餌で個別に見出されるのと同一レベルで実験的油の両方を含有した(すなわち、それぞれ7%および2.85%)。すべての食餌は以下の表1で特徴付けられる。
【表1】
【0075】
施設内動物配慮利用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)承認の食餌介入プロトコルは、年齢、重量、および性別に基づき四つのグループにランダム化された登録された健康なネコの被験動物を用いて実施された。ネコは、生化学的および臨床的健康のマーカーによって健康と評価された。この研究は、2x2デザイン(+/-FO、+/-MCT)における、ケアテイカーブラインデッド(caretaker-blinded)の、縦断的研究であった。
【0076】
サイトカインレベルに対する食餌効果
循環サイトカインは、マルチプレックス形式で酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって評価され、ミリリットルあたりのピコグラムで表された(pg/ml)。全血体外培養が、食餌を与えられたネコから採取された血液で実施された。二つの血液培養チューブを、28日間にわたり四つの実験的食餌の一つを与えられてきた各ネコから採取した。一つのチューブは、血液細胞活性を維持するために血液培養培地を含有した(慢性チューブ)。第二のチューブは、この同じ培地と、腸内微生物叢腸内毒素症および腸障壁完全性の喪失の間に血液中で増加することが知られているグラム陰性細菌の構成成分の添加とを含有した(腸内毒素症チューブ)。慢性チューブでは、血液採取前にネコの栄養状態によってしかるべく設定された代謝および免疫プロセスを継続するために、全血が落ち着いた状態におかれた。非常に臨床的に健康な集団であるが、全てのネコが、炎症促進プロセスに関係することが知られている測定可能なレベルのサイトカインを有していた。落ち着いた状態の慢性チューブでのサイトカインレベルの減少は、ネコにおける慢性炎症促進状態の減少を示した。細菌腸内毒素症を模倣する産物を含有する腸内毒素症チューブでサイトカインのレベルが減少したとき、これは微生物叢不均衡に反応してネコに起こる炎症が減少したことを示した。慢性および急性の両方の例において食餌が炎症を減少させたことを示すものとして、慢性および腸内毒素症チューブの両方において食餌がサイトカインを減少させた場合の例は特に注目すべきである。
【0077】
対照食餌および試験用食餌の両方は、同じ過剰な栄養素質を保持しており、EPA/DHAおよびカプリル酸およびカプリン酸の供給源である魚油および/またはMCTの包含においてはそれぞれ異なっている。全ての食餌は、同じ下記の予測値(水分を除く、乾燥物質基準)に従って処方された:脂肪(22.2g/100g)、タンパク質(35.1g/100g)、窒素非含有抽出物(33.7g/100g)、繊維(7g/100g)、灰分(7.4g/100g)、および水分(7.5g/100g)、アトウォーターエネルギー(4300kcal/kg)で。多量栄養素構成に予測可能な差異も、実験的油以外の成分における定性的な差異もなかったため、本明細書に記載されるすべての抗炎症効果はこれらの油の特異的性質によるものであることが提案された。
【0078】
以下の表2は、慢性炎症に対する場合における魚油とMCTの組み合わせ(両食餌)の抗炎症効果を概説する。これらの油を与えられたネコから採取された慢性チューブのサイトカインレベルを、食餌なし、またはFO食餌またはMCT食餌を個別に与えたネコから採取されたチューブのサイトカインレベルと比較すると、MCTおよび魚油を組み合わせること(両食餌)は、FO食餌またはMCT食餌のいずれかを個別に超える効果を有していたことを示す。報告された7つのサイトカインのうちの6つで、すなわち、Fas、GM-CSF、IL-2、IL-13、IL-18、およびSDF-1で、相乗効果が観察された。両食餌は、FO食餌またはMCT食餌のどちらかを与えられたネコで見られたレベルより低く、サイトカインのレベルを低下させた。さらに、表2はまた、これら同じ6つのサイトカインについては、観察されたレベルが、FO食餌およびMCT食餌の個別の効果を一緒にすることによって計算されたレベルよりも低いことを示しており、そのため相乗的抗炎症効果は慢性状態において現れることを示す。
【表2】
【0079】
表3は、腸障壁完全性の喪失および微生物叢腸内毒素症の増加によって誘発されうる炎症に関する場合の、魚油およびMCTの組み合わせ(両食餌)の抗炎症効果を概説する。これらの油を与えられたネコから採取された腸内毒素症チューブのサイトカインレベルを、食餌なし、またはFO食餌またはMCT食餌を個別に与えられたネコからのサイトカインレベルと比較すると、魚油およびMCTの組み合わせは、各油個別を超える効果を有することを示す。報告された7つのサイトカインのうちの6つで、すなわち、Fas、GM-CSF、IL-2、IL-13、SDF-1、およびTNFα。両食餌は、FO食餌またはMCT食餌のどちらかを与えられたネコで見られたレベルより低く、サイトカインのレベルを低下させた。さらに、表3はまた、全ての7つのサイトカインについては、観察されたレベルが、FO食餌およびMCT食餌の個別の効果を一緒にすることによって計算されたレベルよりも低かったことを示しており、そのため相乗的抗炎症効果は、慢性状態に対して観察されたように、腸内毒素症状態でもまた現れることを示す。
【表3】
【0080】
要するに、多量栄養素プロファイル、ならびに二つの実験的油の個別および相加効果と照らし合わせるための三つの他の対照食餌と合わされた試験用食餌は、いずれかの実験的油単独で予測されうるより大きく炎症促進性サイトカインの相乗的減少を引き起こす。この効果は驚くべきことであり、予想外であり、慢性および腸内毒素症両方のモデルの炎症に影響を及ぼした。
【0081】
循環ポストバイオティクスに対する食餌効果
28日間にわたり四つの実験的食餌のうちの一つを与えられてきた各ネコから採取された血清サンプルで、グローバルメタボロミクススクリーニングを実施した。簡潔に述べると、血清を凍結乾燥し、メタノール:水で抽出し、血清マトリクスから代謝産物を遊離させた。メタボロミクスは、相対倍率定量化でLC-MSによって実施された。提示された値は、特定の食物を与えられたネコで循環する所与の代謝産物の相対的レベルの自然対数変換を示す。
【0082】
両食餌は、28日後にネコにおける循環ポストバイオティクスのレベルを著しく低下させた。多変量分散解析(MANOVA)による統計的解析により、グループ間で観察された差異はa=0.05(P<0.05)で有意であった。ポストバイオティクスの様々なタイプのクラス分析により、両食餌が、インドール、ホロゲノミック硫酸塩(微生物およびネコ宿主の両方の代謝産物)、およびフェノール類を含む各クラスを有意に減少させたことが示された。表4~6は示される相乗作用を定量化するものであり、各表の右端の列は、合計された個々の油(FO食餌+MCT食餌)の差異と比較した両食餌による効果の差異を提供する。両食餌が安定して著しく(これは自然対数スケールである)相乗作用を与え、FO食餌およびMCT食餌の別個の相加効果によって再生されない方法で、インドール、ホロゲノミック硫酸塩およびフェノール類を含む循環ポストバイオティクスを減少させることが容易に明らかである。
【0083】
まとめると、多量栄養素プロファイル、ならびに二つの実験的油の個別および相加効果と照らし合わせるための三つの他の対照食餌と合わされた試験用食餌は、腎臓、胃腸および皮膚科学的疾患に影響を及ぼすと知られているいくつかのクラスの循環ポストバイオティクスのレベルにおける着実で有意な低下を引き起こす。
【表4】
【表5】
【表6】
【0084】
循環カルニチンに対する食餌効果
28日間にわたり四つの実験的食餌のうちの一つを与えられてきた各ネコから採取された血清サンプルで、グローバルメタボロミクススクリーニングを実施した。簡潔に述べると、血清を凍結乾燥し、メタノール:水で抽出し、血清マトリクスから代謝産物を遊離させた。メタボロミクスは、相対倍率定量化でLC-MSによって実施された。提示された値は、特定の食物を与えられたネコで循環する所与の代謝産物の相対的レベルの自然対数変換を示す。
【0085】
両食餌は劇的におよび統計的に有意に循環カルニチンを増加させた。対照的に、MCT食餌およびFO食餌は、カルニチンを調節する能力を持たなかった。さらに、血液脳関門透過性カルニチン誘導体ALCARは、両食餌では同様に増加したが、MCT食餌でもFO食餌でも増加しなかった。多変量分散解析(MANOVA)による統計的解析により、グループ間で観察された差異はa=0.05(P<0.05)で有意であった。表7は、観察された相乗効果を定量化する。右端の列は、合計された個々の油(MCT食餌+FO食餌)の差異と比較した両食餌による効果の差異を提供する。両食餌が、MCT食餌およびFO食餌の別個の相加効果によって再生されない様式で循環カルニチン結合体を増加させるために相乗作用を与えることが容易に明らかである。
【0086】
まとめると、多量栄養素プロファイル、ならびに二つの実験的油の個別および相加効果と照らし合わせるための三つの他の対照食餌と合わされた試験用食餌は、代謝機能に影響を及ぼすと知られているいくつかのクラスの循環カルニチン結合体のレベルの向上を引き起こした。
【表7】