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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】扇風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 25/08 20060101AFI20220225BHJP
   F04D 25/16 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
F04D25/08 305K
F04D25/08 305G
F04D25/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020568444
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2018123810
(87)【国際公開番号】W WO2020010809
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】201821084637.3
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810751046.5
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516285032
【氏名又は名称】広東美的環境電器制造有限公司
【氏名又は名称原語表記】GD MIDEA ENVIRONMENT APPLIANCES MFG CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.28 East District Hesui Industrial Park,Dongfu Road,Dongfeng Zhongshan,Guangdong 528425,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】512237419
【氏名又は名称】美的集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MIDEA GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】B26-28F, Midea Headquarter Building, No.6 Midea Avenue, Beijiao, Shunde, Foshan, Guangdong 528311 China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】張煥明
(72)【発明者】
【氏名】梁麗
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106968973(CN,A)
【文献】特開2014-238059(JP,A)
【文献】中国実用新案第207229425(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0174011(US,A1)
【文献】特開2006-342795(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107218237(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102705269(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104776043(CN,A)
【文献】特開2001-050191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 25/08
F04D 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体に取り付けられる電気モータであって、第一回転軸を有し、且つ前記第一回転軸の両端が何れも前記電気モータから突出している電気モータと、
前記第一回転軸の一端に取り付けられている第一羽根と、
前記支持体に取り付けられて、且つ前記第一回転軸の他端に接続されている伝動機構であって、第二回転軸を含み、前記第二回転軸の回転方向は前記第一回転軸の回転方向とは逆である伝動機構と、
前記第二回転軸に取り付けられている第二羽根と、を含み、
前記第一羽根のブレード傾斜方向は前記第二羽根のブレード傾斜方向とは逆であ
前記伝動機構はさらに逆方向ホイールセットと取付板を含み、前記取付板は前記支持体に固定され、前記逆方向ホイールセットは駆動輪、出力輪、及び伝動ホイールセットを含み、前記第一回転軸は前記駆動輪に接続され、前記第二回転軸は前記出力輪に接続され、前記出力輪と前記駆動輪の回転方向が逆になるように、前記伝動ホイールセットは前記駆動輪と前記出力輪とを接続しており、
前記逆方向ホイールセットは歯車セットであり、前記伝動ホイールセットは前記駆動輪及び前記出力輪とそれぞれ噛み合っており、
前記伝動ホイールセットは第四歯車、第五歯車、及び前記第四歯車と前記第五歯車とを接続する第四回転軸を含み、前記駆動輪は前記第四歯車と噛み合って且つ前記取付板の一方側に取り付けられ、前記第五歯車は前記出力輪と噛み合って且つ前記取付板の他方側に取り付けられ、前記駆動輪、前記第四歯車、前記第五歯車が何れも外歯歯車であり、前記出力輪が内歯歯車である、
扇風機。
【請求項2】
【請求項3】
【請求項4】
前記扇風機はさらに電気制御ボードを含み、前記電気モータは前記電気制御ボードに電気的に接続され、前記電気制御ボードは前記電気モータの回転速度を調節する調速モジュールと前記電気モータの回転方向を調節する方向調節モジュールとを含む、請求項1に記載の扇風機。
【請求項5】
前記扇風機はさらに第三羽根を含み、前記第三羽根は前記第一回転軸に取り付けられている、請求項1に記載の扇風機。
【請求項6】
前記第三羽根は第一羽根の外側に設置されて、且つ前記第三羽根のブレード長さは前記第一羽根のブレード長さより短い、請求項に記載の扇風機。
【請求項7】
前記扇風機はさらに第四羽根を含み、前記第四羽根は前記第二回転軸に取り付けられている、請求項に記載の扇風機。
【請求項8】
前記第四羽根は前記第一羽根と前記第二羽根の間に設置されており、且つ前記第四羽根のブレード長さは前記第二羽根のブレード長さより短い、請求項に記載の扇風機。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は2018年7月9日に提出された、出願番号201810751046.5、発明名称「扇風機」及び出願番号201821084637.3、発明名称「扇風機」である中国特許出願の優先権を主張し、その全文を参考としてここに援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は家庭電器の分野に関し、特に扇風機に関する。
【背景技術】
【0003】
電気扇風機は異なる機能と形態により天井扇、卓上扇風機、床置き扇風機、壁掛け扇風機、換気扇、冷風扇などの複数種類に分けられ、吸気と送風方法の違いにより、軸流式扇風機、貫流式扇風機、遠心式扇風機と横流式扇風機などの複数種類に分けられる。家庭用卓上扇風機と床置き扇風機の多くは軸流式扇風機であり、通常では家庭用卓上扇風機と床置き扇風機の風量が比較的小さく、強段階時の風量が比較的大きめではあるが、強段階で大風量時には比較的大きい騒音が生じて、使用環境は通常室内であるため、騒音の影響はより大きいものになる。また、軸流式扇風機の送風モードは単一であり、比較的遠い送風距離が必要とされる場合及び比較的近い送風距離が必要とされる場合には向いていない。例えば、客間の面積が比較的大きい場合、普通の家庭用床置き扇風機の送風距離では、客間の端から端まで送風することが難しく、特にスイング送風の場合、その送風距離はより近くなる。寝室の面積が比較的小さく、高齢者や幼児に送風する必要がある場合、距離が近すぎることで体感風速が比較的速くなりやすく、高齢者や幼児の健康には不利になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の主な目的は、従来の家庭用扇風機の送風量が比較的大きい場合に生じる騒音が大きくて使用者の生活と休息に影響してしまう問題を解決するための扇風機を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を実現するために、本願が提案する扇風機は支持体、電気モータ、第一羽根、伝動機構、及び第二羽根を含み、電気モータは前記支持体に取り付けられ、前記電気モータは第一回転軸を有し、且つ前記第一回転軸の両端は何れも前記電気モータから突出している。前記第一羽根は前記第一回転軸の一端に取り付けられている。前記伝動機構は前記支持体に取り付けられて且つ前記第一回転軸の他端に接続されている。前記伝動機構は第二回転軸を含み、前記第二回転軸の回転方向は前記第一回転軸の回転方向とは逆である。前記第二羽根は前記第二回転軸に取り付けられ、前記第一羽根と前記第二羽根が逆方向に回転する時に同一側に送風するように、前記第一羽根のブレードの傾斜方向は前記第二羽根のブレードの傾斜方向とは逆である。
【0006】
好ましくは、前記伝動機構はさらに逆方向ホイールセットと取付板を含み、前記取付板は前記支持体に固定され、前記逆方向ホイールセットは駆動輪、出力輪、及び伝動ホイールセットを含み、前記第一回転軸は前記駆動輪に接続され、前記第二回転軸は前記出力輪に接続され、前記出力輪と前記駆動輪の回転方向が逆になるように、前記伝動ホイールセットは前記駆動輪と前記出力輪とを接続している。
【0007】
好ましくは、前記逆方向ホイールセットは歯車セットであり、前記伝動ホイールセットは前記駆動輪及び前記出力輪とそれぞれ噛み合っている。
【0008】
好ましくは、前記伝動ホイールセットは第一歯車、第二歯車、第三歯車、及び前記第一歯車と前記第二歯車とを接続する第三回転軸を含み、前記駆動輪は前記第一歯車と噛み合って且つ前記取付板の一方側に取り付けられ、前記第三歯車は前記第二歯車及び前記出力輪とそれぞれ噛み合い、且つ前記第二歯車、前記第三歯車及び前記出力輪は前記取付板の他方側に取り付けられ、前記駆動輪、前記第一歯車、前記第二歯車、前記第三歯車、及び前記出力輪は何れも外歯歯車である。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
好ましくは、前記伝動ホイールセットは第四歯車、第五歯車、及び前記第四歯車と前記第五歯車とを接続する第四回転軸を含み、前記駆動輪は前記第四歯車と噛み合って且つ前記取付板の一方側に取り付けられ、前記第五歯車は前記出力輪と噛み合って且つ前記取付板の他方側に取り付けられ、前記駆動輪、前記第四歯車、前記第五歯車は何れも外歯歯車であり、前記出力輪は内歯歯車である。
【0015】
【0016】
【0017】
好ましくは、前記扇風機はさらに電気制御ボードを含み、前記電気モータは前記電気制御ボードに電気的に接続され、前記電気制御ボードは前記電気モータの回転速度を調節する調速モジュールと前記電気モータの回転方向を調節する方向調節モジュールとを含む。
【0018】
好ましくは、前記扇風機はさらに第三羽根を含み、前記第三羽根は前記第一回転軸に取り付けられている。
【0019】
好ましくは、前記第三羽根は第一羽根の外側に設置されて、且つ前記第三羽根のブレード長さは前記第一羽根のブレード長さより短い。
【0020】
好ましくは、前記扇風機はさらに第四羽根を含み、前記第四羽根は前記第二回転軸に取り付けられている。
【0021】
好ましくは、前記第四羽根は前記第一羽根と前記第二羽根の間に設置されており、且つ前記第四羽根のブレード長さは前記第二羽根のブレード長さより短い。
【0022】
本願の技術案では、シングル電気モータによりダブル羽根の反対回転を駆動する送風方式を採用することで、扇風機の送風能力を向上させて、比較的大きい送風量への需要を低い回転速度で満たし、さらには送風量を保つ前提で電気モータの回転速度を下げて、扇風機の騒音を低減する目的を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本願実施例及び従来技術の技術案をより明確に説明するため、以下では、実施例或いは従来技術の説明に必要とされる添付図面を簡単に紹介する。下記説明における添付図面は本願の一部の実施例に過ぎないことは明らかであって、当業者にとって、創造的な労働を行わないことを前提に、これらの添付図面が示す構造により他の添付図面を得ることができる。
図1】本願の扇風機の全体構造模式図である。
図2】本願の扇風機の羽根構造模式図である。
図3】本願の扇風機の一実施例の構造模式図である。
図4】本願の扇風機の一実施例の伝動機構の内部構造模式図である。
図5】本願の扇風機のもう一つの実施例の構造模式図である。
図6】本願の扇風機のもう一つの実施例における伝動機構の部分分解構造模式図である。
図7】本願の扇風機のもう一つの実施例における羽根の構造模式図である。添付図面を参照して、実施例と組み合わせて本願目的の実現、機能特徴及び長所をさらに説明する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本願実施例における添付図面と組み合わせ、本願実施例における技術案を明確且つ完全に説明する。説明される実施例は本願の全ての実施例ではなく、本願の一部の実施例に過ぎないことは明らかである。本願における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行わないことを前提に得られた全ての他の実施例は、本願の保護する範囲に属す。
【0025】
なお、本願実施例で方向性指示(例えば上、下、左、右、前、後...)に関わる場合、当該方向性指示はある特定の姿勢(添付図面に示す)における各部品間の相対的位置関係、運動状況等を説明するためだけに用いられ、もし当該特定の姿勢が変わる場合、当該方向性指示もそれ相当に変わることは説明すべきである。
【0026】
また、本願実施例において「第一」、「第二」等の説明に関わる場合、当該「第一」、「第二」等の説明は、説明のために利用されるだけであって、その相対的重要性を提示又は暗示する、或いは提示される技術的特徴の数を暗示的に指定するように理解すべきではない。これにより、「第一」、「第二」に限定されている特徴は明示的或いは暗示的に少なくとも一つの当該特徴を含んでもよい。また、各実施例の技術案はお互いに組み合わせることができる。ただし、当業者が実現できることはその前提である。技術案の組み合わせに矛盾が生じるか、実現できない場合には、このような技術案の組み合わせが存在しない、且つ本願が請求する保護範囲にないと理解すべきである。
【0027】
家庭用床置き扇風機、卓上扇風機などの軸流扇風機では、一つの電気モータにより電気モータの回転軸に固定された傾斜のある羽根の回転を駆動することで、電気モータの軸方向に空気を駆動する送風方式を採用している。このような扇風機は構造が簡単で、送風方式が直接であり、最も一般的に応用されている。しかしながら、このような扇風機の羽根により直接駆動された空気には、軸方向の運動量に加えて、羽根と空気との摩擦で気体に生じた回転軸と垂直な運動量がある。回転軸と垂直な気流の運動量は気流を拡散させ、気流が拡散してから、気流束の横断面が拡大して、軸方向に運動する時に受ける抵抗力が急激に増大して、軸方向の有効送風距離を比較的近くしてしまう。特に、扇風機の首ふりスイング送風の場合、軸方向の有効送風距離は単一方向の送風の場合の送風距離に比べて近くなる。
【0028】
「美的FS40-12DR」床置き扇風機を対象に風量測定スタンドによる風速測定テストを行った結果、美的FS40-12DRの最大送風速度は4m/s前後であり、他の床置き扇風機と大体同一である。扇風機を起動して、最高段階に調節し、風量測定スタンドを扇風機軸線の前方の異なる距離に置いて、風速を測定した結果、データは以下のようになる。
【表1】
【0029】
実験データからわかるように、扇風機の減衰は非線形減衰であり、速度が大きいほど減衰が速くなり、且つ3mのところで1.65m/sまで減衰するが、風があると人の体に感じさせるためには、風速を1.6m/s前後にする必要がある。
【0030】
上記テストデータにより、普通の床置き扇風機の有効送風距離は3m前後であるという結論を導くことができ、日常使用の経験と一致している。
【0031】
通常では、3mの有効送風距離では、多くの応用場面の要求を満たせるが、床置き扇風機などの軸流扇風機を高い段階にした場合に生じる騒音は比較的大きい。同様に「美的FS40-12DR」を持って段階と騒音の対照テストを行う(段階が高いほど風速が速い)。「美的FS40-12DR」は同類の製品で機械騒音に対する制御が比較的よく、運転中に部品の機械的振動或いは摩擦による騒音がほとんどないため、測定される騒音を全て羽根により気流を生じさせる時に生じた騒音による騒音とみなすことが可能である。FS40-12DRは三つの段階を持ち、扇風機から2メートル離れた箇所で各段階に対応する騒音の大きさを測定した結果、データは以下になる。
【表2】
【0032】
昼間で騒音が50デシベル、夜で45デシベルを超えた場合、正常な睡眠と休息を邪魔してしまう。音環境品質の基準により、第0種音環境区域(リハビリ療養区域など特に静穏を必要とする区域を指す)に対する要求は、昼間の騒音が50デシベル以下で、夜間の騒音が40デシベル以下であり、第1種音環境区域(住宅、医療衛生、文化教育、科学研究や設計、行政事務などを主要機能として、静穏の保持を必要とする区域を指す)に対する要求は、昼間の騒音が55デシベル以下で、夜間の騒音が45デシベル以下である。
【0033】
これによりわかるように、一般的な床置き扇風機を夜で使用する場合、その最大段階の場合に生じる騒音は比較的著しく睡眠や休息に影響してしまう。たとえ昼間でも、その最大段階の場合に生じる騒音は第0類音環境区域の要求を満たさない。
【0034】
よって、通常のシングル電気モータシングル羽根構造の床置き扇風機では、十分な静穏を保つ前提で、十分な有効送風距離を保証することは不可能である。それとともに、通常の床置き扇風機では、いくつかの比較的大きい空間での送風需要、例えば面積が比較的大きい客間などの需要の場面を満たすことはできない。
【0035】
それに、いくつかの特殊の応用場面、例えば面積が比較的小さい寝室内で幼児或いは高齢者に送風するなどの場合では、比較的大きい有効送風距離の代わりに、比較的大きい風速で直接幼児或いは高齢者の体に吹き付けるのを避けるように、できるだけはやく気流を拡散させるやさしい風が必要とされる。現在では、通常のやり方としては、扇風機を壁に向けて、壁の気流に対する反動により、気流を迅速に拡散させる目的を達成しているが、直接扇風機を調節することで目的を達成することはできない。
【0036】
そのために、本願では扇風機を提案する。本願で提案する扇風機は、一つの電気モータと電気モータに接続された一つの伝動機構で二つの羽根の逆方向回転をそれぞれ制御し、二つの羽根の傾斜方向も逆なので、二つの羽根が逆方向に回転する場合、それらの送風方向も同じになる。
【0037】
具体的に、本願の実施例では、図1乃至図4を参照し、本願が提案する扇風機は支持体100、電気モータ200、第一羽根202、伝動機構300と第二羽根311とを含み、電気モータ200は前記支持体100に取り付けられ、前記電気モータ200は第一回転軸201を有し、且つ前記第一回転軸201の両端は何れも前記電気モータ200から突出している。前記第一羽根202は前記第一回転軸201の一端に取り付けられている。前記伝動機構300は前記支持体100に取り付けられて且つ前記第一回転軸201の他端に接続されている。前記伝動機構300は第二回転軸309を含み、前記第二回転軸309の回転方向は前記第一回転軸201の回転方向とは逆である。前記第二羽根311は前記第二回転軸309に取り付けられて、前記第一羽根202のブレードの傾斜方向は前記第二羽根311のブレードの傾斜方向とは逆である。これにより、前記第一羽根202と前記第二羽根311が逆方向に回転する時に同一側に送風するようにする。
【0038】
シングル羽根軸流扇風機の電気モータの回転軸は一端が突出し且つ羽根に接続されているが、本願が提案する扇風機の回転軸は両端が何れも電気モータ200から突出し、第一羽根202の回転を駆動するように一端が第一羽根202に接続されて、他端が伝動機構300に接続されて、伝動機構300を通して第二回転軸309を駆動することで第二羽根311の回転を駆動する。伝動機構300は取付板301と逆方向ホイールセットを含み、前記逆方向ホイールセットは駆動輪302、出力輪303と伝動ホイールセットを含む。前記第一回転軸201は前記駆動輪302に接続されて、前記駆動輪302の回転を駆動する。前記駆動輪302は前記逆方向ホイールセットに接続されて、前記逆方向ホイールセットの回転を駆動する。前記逆方向ホイールセットは前記出力輪303に接続されて、前記出力輪303の回転を駆動する。前記出力輪303は第二回転軸309に接続されて、前記第二回転軸309の回転を駆動する。前記出力輪303の回転方向は前記駆動輪302の回転方向とは逆であり、且つ前記第一回転軸201は前記第二回転軸309と同軸上に設置されている。
【0039】
逆方向ホイールセットはベルト車を採用し、ベルトを利用して摩擦により伝動してもよいし、歯車を採用して歯車間の相互噛み合いを利用して伝動してもよい。以下では、歯車による伝動を例として詳しく説明する。
【0040】
本実施例の伝動ホイールセットの各歯車は何れも外歯歯車である。前記伝動ホイールセットは具体的に第一歯車304、第二歯車305と第三歯車306を含む。第一歯車304と第二歯車305とは第三回転軸310を通して接続され、第三回転軸310は軸スリーブを通して取付板301上に回転可能に取り付けられ、第一歯車304と第二歯車305には何れも軸孔が開けられており、且つ軸孔を通して第三回転軸310の両端に固定されている。第一歯車304は駆動輪302と噛み合い、第三歯車306は第二歯車305と出力輪303とそれぞれ噛み合う。駆動輪302、第一歯車304は取付板301の一方側に位置し、第二歯車305、第三歯車306と出力輪303は取付板301の他方側に位置する。
【0041】
電気モータ200の第一回転軸201は駆動輪302を駆動して且つ駆動輪302と同じ方向に且つ同じ速度で回転する。駆動輪302は第一歯車304を駆動して且つ第一歯車304と逆方向に回転する。第二歯車305と第一歯車304とは第三回転軸310を通して同じ方向に且つ同じ速度で回転する。第二歯車305は第三歯車306を駆動して且つ第三歯車306と逆方向に回転する。第三歯車306は出力輪303を駆動して且つ出力輪303と逆方向に回転する。出力輪303は第二回転軸309を駆動して且つ第二回転軸309と同じ方向に且つ同じ速度で回転する。第一回転軸201と第二回転軸309との間は三つの逆方向駆動と三つの同方向駆動を通して逆方向且つ同軸の回転を実現し、第一電気モータ200はさらに第一回転軸201、逆方向ホイールセット及び第二回転軸309を通して第一羽根202と第二羽根311の同軸且つ逆方向の回転を駆動する。
【0042】
本実施例において、第一回転軸201の角速度は駆動輪302の角速度と等しく、駆動輪302の外周の線速度は第一歯車304の外周の線速度と同じで、第一歯車304の角速度は第二歯車305の角速度と同じで、第二歯車305の外周の線速度は第三歯車306の外周の線速度と同じで、第三歯車306の外周の線速度は出力輪303の外周の線速度と同じである。
【0043】
【0044】
本願の技術案によれば、逆方向ホイールセットを採用し、扇風機の一つの電気モータ200により回転方向もブレード傾斜方向も反対する第一羽根202と第二羽根311を同時に駆動できるようにする。第一羽根202と第二羽根311が同じ方向に移動するように空気を駆動することで、扇風機がより大きい送風能力を持つようにし、さらには扇風機の送風需要を満たす前提で電気モータ200の回転速度を下げることで、これにより生じる比較的大きい騒音を低減することが可能である。
【0045】
なお、図5図6を参照し、歯車駆動により第二回転軸309と第一回転軸201の同軸逆方向回転を実現する方法は、上記実施例の具体的構造に限らず、他の実施例では、内歯歯車と外歯歯車の組み合わせで第二回転軸309と第一回転軸201の同軸逆方向回転を実現してもよい。内歯歯車と外歯歯車の組み合わせを採用する方法では、前記伝動ホイールセットは第四歯車307と第五歯車308、及び前記第四歯車307と前記第五歯車308を接続する第四回転軸を含み、前記駆動輪302は前記第四歯車307と噛み合って且つ前記取付板301の一方側に取り付けられている。前記第五歯車308は前記出力輪303と噛み合って且つ前記取付板301の他方側に取り付けられている。前記駆動輪302、前記第四歯車307、前記第五歯車308は何れも外歯歯車であり、前記出力輪303は内歯歯車である。
【0046】
本実施例では、第一回転軸201は駆動輪302を駆動して且つ駆動輪302と同じ方向に且つ同じ速度で回転する。駆動輪302は第四歯車307を駆動して且つ第四歯車307と逆方向に回転する。第五歯車308は第四回転軸を通して第四歯車307と同じ方向に且つ同じ速度で回転する。第五歯車308は出力輪303を駆動して且つ出力輪303と同じ方向に回転する。出力輪303は第二回転軸309を駆動して且つ第二回転軸309と同じ方向に且つ同じ速度で回転する。第一回転軸201と第二回転軸309との間は一つの逆方向駆動と三つの同方向駆動を通して逆方向且つ同軸の回転を実現し、第一電気モータ200はさらに第一回転軸201、逆方向ホイールセット及び第二回転軸309を通して第一羽根202と第二羽根311の同軸、同時且つ逆方向の回転を駆動する。
【0047】
本実施例において、第一回転軸201の角速度は駆動輪302の角速度と等しく、駆動輪302の外周の線速度は第四歯車307の外周の線速度と同じで、第四歯車307の角速度は第五歯車308の角速度と同じで、第五歯車308の外周の線速度は出力輪303の外周の線速度と同じである。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
シングル電気モータシングル羽根の通常の扇風機にとって、電気モータ200の出力パワーが決まった場合、扇風機の送風能力(主に送風量と有効送風距離を含む)に影響する要因は、羽根のブレード数、一つのブレードの面積、ブレードのねじれ角(ブレードが回転する時、ブレードの幅方向とブレードの線速度方向との角度)、ブレード長さ、ブレード幅とブレード回転速度など複数種類を含む。これらの要因の扇風機送風能力への貢献は単なる重ね合わせではなく、互いに一定の影響をするものである。例えば、ブレードを矩形に等価化する場合、一つのブレードの面積はブレードの長さと幅の積である。一つのブレードの面積が決まった場合、ブレードの長さが大きいほど、扇風機の総送風量は大きくなる。しかしながら、ブレードの長さと扇風機の有効送風距離との間の関係には一致性がなく、ブレードの長さが大きいすぎても小さすぎても扇風機の有効送風距離の減少を招いてしまう。
【0052】
一方、本願で提案するシングル電気モータダブル羽根反対回転の扇風機の場合、二つの羽根は互いに影響し、二つの羽根間の各要因の比例関係も扇風機の送風能力に大きく影響する。第一回転軸201が送風方向の回転軸である場合を例として以下に説明する。
【0053】
第二羽根311の回転により生じた気流が第一羽根202を通過する時、軸方向の運動量の他、さらに軸方向に垂直な方向の運動量を有し、つまり、さらに周方向に回転する慣性モーメントを有する。周方向の慣性モーメントは、第一羽根202の反発により方向を変えて、主として軸方向に沿った運動量に変わる。理想な状況では、第一羽根202と第二羽根311の回転速度との間の関係及びねじれ角の間の関係を制御することで慣性モーメントを全部軸方向運動量に変換する目的を達成できる。第二羽根311に駆動される気流の軸方向運動量は第一羽根202を通過する時さらに加速するが、同時に軸方向に垂直な一部の成分も生じて、これにより扇風機の軸方向送風能力をある程度弱くしてしまう。
【0054】
羽根に駆動される気流には比較的大きい攪乱があるが、羽根の各パラメータは固定されている。よって、実際では、第一羽根202では、第二羽根311に駆動される気流の慣性モーメントを全て軸方向運動量に変換することは不可能である。しかしながら、パラメータの設定により実際に最大の変換効果を実現できる。即ち、第一羽根202と第二羽根311の具体的なパラメータの設定により、気流を集中させて、最大限の軸方向送風の効果を実現して、扇風機の送風能力を強化できる。それとともに、第一羽根202と第二羽根311の具体的なパラメータを調整することで、扇風機による送風の軸方向運動をより多く周方向運動量に変換して、扇風機に気流が迅速に拡散できる軟風モードを持たせることができ、空間が狭い寝室や乳児、幼児或いは高齢者に送風する場面に適用できる。
【0055】
第二羽根311に駆動される気流の軸方向成分が第一羽根202に駆動されて生じた軸方向風力と軸方向に垂直な成分との間の比の値は第一羽根202のブレードのねじれ角に関係する。ねじれ角が小さいほど、この比の値が小さいが、同時に第一羽根202の気流への駆動作用が小さい。
【0056】
軸流扇風機の送風能力に影響する羽根の要因は回転速度ω、ブレード長さl、羽根のブレード総面積S、羽根のブレード数n、羽根のブレードねじれ角θを含む。シングル羽根軸流扇風機にとって、上記の各影響要因は基本的に何れも送風能力と正の相関関係にあるが、ダブル羽根の軸流扇風機にとって、各要因の比例及び二つの羽根の間隔Lも扇風機の送風能力に著しく影響する。
【0057】
扇風機の送風能力に影響する各要因間の関係を調べるために、制御変量法を採用する上で、変量縮減置換法を利用して一連のテストを設計する。具体的に、以下になる。
【0058】
二つの羽根のブレード数、ねじれ角と回転速度との間の関係が扇風機の最終送風時の軸方向成分と軸方向に垂直な成分との間の比例に比較的大きく影響することが考えられる。よって、第一差異係数kを、前記第一羽根202のブレード数と第二羽根311のブレード数との比、前記第一羽根202のねじれ角と前記第二羽根311のねじれ角との比、及び前記第一羽根202の回転速度と前記第二羽根311の回転速度との比の三者の積として定義する。第二差異係数kを前記第一羽根202のブレード総面積と前記第二羽根311の総面積の比と、前記第一差異係数との積として定義する。前記第一羽根202のねじれ角をθ、前記第二羽根311のねじれ角をθとする。前記第一羽根202のブレード数をn、前記第二羽根311のブレード数をnとする。前記第一羽根202のブレード総面積をS、前記第二羽根311のブレード総面積をSとする。前記第一羽根202のブレード長さをl、前記第二羽根311のブレード長さをlとする。前記第一羽根202と前記第二羽根311の間隔をLとする。第一羽根202と第二羽根311との回転速度の比は逆方向ホイールセットの各歯車の半径に関係し、前記駆動輪302の半径をr、前記第一歯車304の半径をr、前記第二歯車305の半径をr、前記搬送輪の半径をRとすると、
伝動ホイールセットの各歯車が何れも外歯歯車である場合のテストは以下になる。
【0059】
【0060】
第1グループ:kを唯一の変量とする。
【表3】
【0061】
第2グループ:kを唯一の変量とする。
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
【表7】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
伝動ホイールセットは内歯歯車セットであり、内歯歯車と外歯歯車を採用し、そして第二羽根311側を送風方向とした場合のテストは以下になる。
【0069】
【0070】
上記テストとの差異は主として回転速度比であり、回転速度比が第一差異係数と第二差異係数に影響する。上記テストでは、第一差異係数と第二差異係数には比較的高い一致性があるので、本グループのテストでは回転速度比と第一差異係数について比較し、データが以下になる。
【0071】
【表8】
【0072】
第7グループ:kを唯一の変量とする。
【表9】
【0073】
【0074】
以上の2グループのテストを前の5グループのテストと比べると、同じ送風量の場合、送風距離が明らかに短くなり、この場合、扇風機の送風気流が迅速に拡散して、送風がやさしくなることがわかる。
【0075】
【0076】
上記実施例はダブル羽根を採用する扇風機の具体的な実施例であり、扇風機の送風距離をさらに上げるために、本願では、ダブル羽根をもとに、さらにもう一つの実施例を提案する。
【0077】
図7を参照し、本実施例の扇風機はさらに第三羽根400を含む。ダブル羽根反対回転送風をもとに第三羽根400を追加することで、さらなる整流調節を行って、最大送風距離を大きくできる。具体的に、前記第三羽根400は前記第一回転軸201に取り付けられ、前記第三羽根400は前記第一羽根202の前記第二羽根311と反対するもう一側に設置されて、且つ前記第三羽根400のブレード長さは前記第一羽根202のブレード長さより短い。
【0078】
羽根は気流の流速と流向を変え、2セットの羽根を採用する場合、気流に対して二次調整を行い、そして2セットの羽根に対して特定の設定及び調整を行うことで、送風効果に対して人為的な調節を行う目的を達成できるので、本願では上記の2セット羽根の扇風機の実施例を提案する。気流が流れる時、周囲の空気に阻まれるので、気流の境界には、比較的大きい不安定性がある。気流は等価化して気流束中心区と気流束境界区に区分でき、比較すると、気流束中心区の流速が送風距離に与える影響がより大きく、気流束境界区が送風の角度に与える影響が比較的大きい。よって、本願では、上記のダブル羽根をもとに整流羽根を追加する実施例を提案する。
【0079】
第三羽根400は整流羽根であり、整流羽根は主として気流束中心区の区域比例と流速を調整するためのものであり、総パワーが変わらない状態で、気流束中心区と境界区の範囲と比例を調節することで、より遠い送風距離を獲得する。
【0080】
これを踏まえて、扇風機の運転時の安定性を向上させるためにそして整流羽根の整流能力をさらに向上させるために、本願ではもう一つの実施例を提案する。本実施例では、扇風機はさらに第四羽根500を含み、前記第四羽根500は前記第二回転軸309に取り付けられて且つ前記第一羽根202と前記第二羽根311の間に設置されている。同様に、前記第四羽根500のブレード長さは前記第二羽根311のブレード長さより短い。整流羽根としては、第三羽根400或いは第四羽根500の中の一方だけを採用してもよく、同時に第三羽根400と第四羽根500を設置してもよいことは、説明しておく必要がある。
【0081】
整流羽根を第一羽根202と第二羽根311と組み合わせることで、気流の調整可能性をより強くできる一方、整流羽根の気流に対する追加の駆動作用及びその追加の駆動作用が風束中心区域に集中することにより、扇風機により生じられる気流束の中心区と境界区の区域比例及び流速比例を調整して、より遠い送風距離を得ることが可能となる。
【0082】
以上に述べたことは本願の好ましい実施例に過ぎず、それによって本願の特許の範囲を制限するわけではない。本願の発明構想の下で、本願の明細書及び添付図面の内容を利用してなされた等価構造変換、或いは他の関連する技術分野への直接/間接的な応用は、何れも本願の特許の保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
100 支持体
200 電気モータ
201 第一回転軸
202 第一羽根
300 伝動機構
301 取付板
302 駆動輪
303 出力輪
304 第一歯車
305 第二歯車
306 第三歯車
307 第四歯車
308 第五歯車
309 第二回転軸
310 第三回転軸
311 第二羽根
400 第三羽根
500 第四羽根
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7