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特許7030244タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルとその構築方法、及び予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルとその構築方法、及び予測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/04 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
G01N19/04 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021520595
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(86)【国際出願番号】 CN2020141633
(87)【国際公開番号】W WO2021121434
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】202010576789.0
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517283640
【氏名又は名称】雲南中煙工業有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】楊継
(72)【発明者】
【氏名】劉志華
(72)【発明者】
【氏名】朱瑞芝
(72)【発明者】
【氏名】張涛
(72)【発明者】
【氏名】劉春波
(72)【発明者】
【氏名】司暁喜
(72)【発明者】
【氏名】何沛
(72)【発明者】
【氏名】張鳳梅
(72)【発明者】
【氏名】蒋薇
(72)【発明者】
【氏名】李振杰
(72)【発明者】
【氏名】蘇鐘璧
(72)【発明者】
【氏名】楊晨
(72)【発明者】
【氏名】蒋昆明
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104483252(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110747691(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107490541(CN,A)
【文献】米国特許第6308560(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/00-19/04
G06F 30/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルの構築方法であって、
前記予測モデルは、
前記タバコのチップペーパーの厚さが(0.069mm、0.112mm)の範囲内である場合、Y唇付着力=0.205+1.038×M摩擦係数であり、
前記タバコのチップペーパーの厚さが(0.069mm、0.112mm)の範囲内ではない場合、Y唇付着力=-0.335+1.181×M摩擦係数+0.005×D定量であり、
式中、Y唇付着力は予測される前記タバコのチップペーパーの唇付着力であり、M摩擦係数は前記タバコのチップペーパーの動摩擦係数であり、D定量は前記タバコのチップペーパーの定量、つまり単位面積当たりのグラム重量であり、
前記構築方法は、
様々なブランドのチップペーパーの印刷面と人工唇皮とが人工唾液によって付着されている付着力を、試験器を用いて測量し、単位面積当たりの付着力を計算して、前記タバコのチップペーパーの唇付着力の実測値とするステップ(1)であって、前記試験器が剥離強度試験器、引張機、又は動摩擦係数測定器である、ステップ(1)と、
前記タバコのチップペーパーの動摩擦係数を測定する、ステップ(2)と、
前記タバコのチップペーパーの厚さを測定する、ステップ(3)と、
前記タバコのチップペーパーの定量を測定する、ステップ(4)と、
前記タバコのチップペーパーの前記動摩擦係数(M)、前記定量(D)、及び前記厚さ(H)を変量とし、前記チップペーパーの前記唇付着力を反応変量(Y)として回帰分析を実施し、前記タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルを得る、ステップ(5)とを含み
前記ステップ(1)において、前記タバコのチップペーパーの幅の範囲は1~1000mmであり、長さの範囲は1~1000mmであり、前記人工唇皮は前記タバコのチップペーパーと同じサイズの長方形に切断され、切断された前記人工唇皮と前記タバコのチップペーパーの片面同士を前記人工唾液によって付着させ、付着面積を測定し、一定重量になるまで静置してから、前記チップペーパーと前記人工唇皮とが剥離して離れる瞬間の最大剥離力を前記試験器を用いて測量して、前記最大剥離力を付着力とする、
ことを特徴とする、
構築方法。
【請求項2】
静置時間が1~1800秒であることを特徴とする、請求項に記載のタバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルの構築方法。
【請求項3】
一定重量になるまで静置した後に、接着されていない前記チップペーパーの他端と前記人工唇皮の他端とを前記試験器の2つのクランプでそれぞれ挟み、前記2つのクランプ間の距離と相対移動速度とを設定して、前記チップペーパーと前記人工唇皮とが剥離して離れた瞬間の最大剥離力を取得し、前記試験器の前記2つのクランプは、前記タバコのチップペーパーと前記人工唇皮とを完全にクランプすることが可能であり、前記試験器の負荷範囲は0~200Nであり、識別率は≧0.01Nであり、前記試験器の前記2つのクランプの前記距離は5~500mmであり、前記移動速度は1~500mm/分である、ことを特徴とする、請求項に記載のタバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析検査測定の技術分野に属しており、具体的には、タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルとその構築方法、及び予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タバコのフィルタは主に、アセテート繊維と、成形紙と、チップペーパーという3層で構成される。この中で、チップペーパー(水解紙と称されることもある)は、フィルタの外側を包み、フィルタをタバコスティックの端部に接合するために使用される。チップペーパーは、チップ原紙に印刷塗装やその他の加工を施すことによって得られる装飾紙であり、コルク色又は不透明な白色であることが多く、外観を改良する効果を有する。チップペーパーは喫煙者の唇と直接接触するものであり、チップペーパーには一般に、塗料やインクだけを使用して印刷が施される。天気が乾燥している時に消費者がタバコを吸う際、少量の唾液がチップペーパーを湿らせてから、喫煙プロセス中に徐々に乾燥し、唇に残った唾液のたんぱく質がチップペーパーと粘着するよう作用して、フィルタのチップペーパーを唇の皮膚に付着させ、ひどい場合には唇を引っ張って破り、出血を起こすこともあり、喫煙終了後にフィルタをスムーズに口から出すことができなくなるので、タバコの消費体感に深刻な影響を与える。
【0003】
現在、国内外でのタバコのフィルタのチップペーパーについての研究の関心の多くは、その熱分解特性、低発火性、有害元素含有量、タバコのチップペーパーの特性変更と特性変更後の一酸化炭素放出能力、毒性、及び安全性評価などの点に集中している。しかし、チップペーパーの唇付着力又は唇付着度については関連研究がなく、唇への付着に関する領域は、チップペーパーの製法及び配合に改良を加えることばかりであり、具体的な検査測定方法の確立に関するものはない。例えば、李峰の発明特許である「
」には水解紙の加工と配合が記載されているが、効果の検査測定では、原紙の縦方向引張強度及び通気性のみが検査測定されており、唇付着力の検査測定には触れられていない。チップペーパーの外部コーティング上に保護フィルムを有する「
」の実用新案でも、実際に有益な結果は証明されていない。
の実用新案「
」の目的は唇付着防止、香り付け、燃焼防止などであり、水解紙の外層では、フルーツの香りの防水層と防護フィルム層とが合成されているが、唇付着防止の試験結果には触れられないままである。業界内にも規制を行う対応標準がなく、各大手企業は、多大な主観性と不確実性とを有する、専門家による吸引評価判断にのみ依存している。加工も種類も様々なチップペーパーの唇に対する付着性/付着力を正確に測定するために、対応する客観的な分析試験方法を確立することが喫緊に必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の欠点を解決するために、タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルとその構築方法、及び予測方法を提供することである。かかる方法では、タバコのチップペーパーの通常の物理的指標である動摩擦係数及び定量値の測定を要するだけで、タバコのチップペーパーの唇付着力が良好に予測可能である。方法は簡単に実行可能であり、応用の推進が容易である。モデルの精度を検証したところ、予測値と測定値とは基本的に1:1ラインに近いところにあり、R2指数は0.99であり、正規化二乗平均平方根誤差(nRMSE)は2.64%であることが確認された。本発明は、タバコのチップペーパーの唇への付着力を正確に予測でき、従来的には人工官能吸引評価によってもたらされる主観的要素の影響及び表現の差異を十分に回避することが可能であり、タバコ業界の材料承認、品質管理、製品のアップグレードにおいて利点を有する。
【0005】
上述した目的を実現するために本発明が採用する技術的解決策は、
タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルであって、
タバコのチップペーパーの厚さが(0.069mm、0.112mm)の範囲内である場合、Y唇付着力=0.205+1.038×M摩擦係数であり、
タバコのチップペーパーの厚さが(0.069mm、0.112mm)の範囲内ではない場合、Y唇付着力=-0.335+1.181×M摩擦係数+0.005×D定量であり、
式中、Y唇付着力は予測されるタバコのチップペーパーの唇付着力であり、M摩擦係数はタバコのチップペーパーの動摩擦係数であり、D定量はタバコのチップペーパーの定量(つまり単位面積当たりのグラム重量)である、モデルである。
【0006】
本発明はまた、上述したタバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルの構築方法であって、
様々なブランドのチップペーパーの印刷面と人工唇皮とが人工唾液によって付着されている付着力を、試験器を用いて測量し、単位面積当たりの付着力を計算して、タバコのチップペーパーの唇付着力の実測値とするステップ(1)であって、この試験器が剥離強度試験器、引張機、又は動摩擦係数測定器である、ステップ(1)と、
タバコのチップペーパーの動摩擦係数を測定する、ステップ(2)と、
タバコのチップペーパーの厚さを測定する、ステップ(3)と、
タバコのチップペーパーの定量を測定する、ステップ(4)と、
タバコのチップペーパーの動摩擦係数(M)、定量(D)、及び厚さ(H)を変量とし、チップペーパーの唇付着力を反応変量(Y)として回帰分析を実施し、タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルを得る、ステップ(5)とを含む、
方法も提供する。
【0007】
更に、好ましくは、ステップ(1)において、タバコのチップペーパーの幅の範囲は1~1000mmであり、長さの範囲は1~1000mmであり、人工唇皮はタバコのチップペーパーと同じサイズの長方形に切断され、切断された人工唇皮とタバコのチップペーパーの片面同士を人工唾液によって付着させ、付着面積を測定し、一定重量になるまで静置してから、チップペーパーと人工唇皮とが剥離して離れる瞬間の最大剥離力を試験器を用いて測量し、それを付着力とする。
【0008】
更に、好ましくは、静置時間は1~1800秒である。
【0009】
更に、好ましくは、一定重量になるまで静置した後に、接着されていないチップペーパーの他端と人工唇皮の他端とを試験器の2つのクランプでそれぞれ挟み、2つのクランプ間の距離と相対移動速度とを設定して、チップペーパーと人工唇皮とが剥離して離れた瞬間の最大剥離力を取得するが、試験器の2つのクランプは、タバコのチップペーパーと人工唇皮とを完全にクランプすることが可能であり、試験器の負荷範囲は0~200Nであり、識別率(
)は≧0.01Nであり、試験器の2つのクランプの距離は5~500mmであり、移動速度は1~500mm/分である。
【0010】
更に、好ましくは、ステップ(1)において、人工唾液には塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム、尿素、ブドウ糖、ムチン、アミラーゼ、酸性ホスファターゼ、及びリゾチームが含有され、そのpH値は5.5~7.5であり、使用される人工唾液の体積の範囲は1~1000μLである。
【0011】
更に、好ましくは、ステップ(1)において、人工唾液中には、1.40mmol/Lの塩化ナトリウム、0.5mmol/Lの塩化カリウム、0.1mmol/Lの塩化カルシウム、0.15mmol/Lのリン酸二水素ナトリウム、0.025mmol/Lの塩化マグネシウム、0.09mmol/Lの尿素、0.2mmol/Lのブドウ糖、2.7mmol/Lの牛顎下腺唾液ムチン、2.5units/mLのアミラーゼ、0.004units/mLの酸性ホスファターゼ、0.7units/mLのリゾチームが含有されている。
【0012】
更に、好ましくは、人工唇皮の材料は、医療用シリコーンゴムの軟質皮膚、表皮細胞層を有する活性複合皮膚、ポリ塩化ビニルの人工皮革、ポリウレタン乾燥法による人工皮革、又はポリオレフィンの人工皮革である。
【0013】
更に、好ましくは、ステップ(2)において、GB10006-88の「
」に基づいて、タバコのチップペーパーに動摩擦係数の測定が実施され、
ステップ(3)において、GB/T451.3-2002の「
」に基づいて、タバコのチップペーパーに厚さの測定が実施され、
ステップ(4)において、GB/T451.2-2002の「
」に基づいて、タバコのチップペーパーに定量の測定が実施される。
【0014】
本発明は更に、上述したタバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルを採用するか、又は、上述したタバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルの構築方法で構築されたタバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルを採用する、タバコのチップペーパーの唇付着力の予測方法であって、具体的には、
タバコのチップペーパーの厚さと、動摩擦係数と、単位面積当たりのグラム重量とを取得した後に、これらをタバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルに入力して計算を行うことで、タバコのチップペーパーの唇付着力を得る、方法を提供する。
【0015】
本発明を従来技術と比較すると、その有益な効果は、
1.本発明は、タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルとその構築方法、及び予測方法を提供するものであり、客観的かつ正確にチップペーパーの唇付着力を定量化することができ、従来的には官能評価によって得ていた唇に付着する感じや口から出しにくい感じなどの漠然とした概念、及び、主観的な要素の影響が大きくなり、結果的な味わいが大きく異なり、人体の健康に有害であるといった欠点を、効果的に回避することが可能である。
【0016】
2.本発明の方法は、タバコのチップペーパーの唇付着力、及び動摩擦係数と定量という2つの値に逐次回帰分析を実施して、タバコのチップペーパーの唇付着力を予測するモデルを得る。
かかる方法では、タバコのチップペーパーの通常の物理的指標である動摩擦係数及び定量値の測定を要するだけで、タバコのチップペーパーの唇付着力が良好に予測されうる。方法は簡単に実行可能であり、応用の推進が容易である。
【0017】
3.本発明のモデルの精度を検証したところ、予測値と測定値とは基本的に1:1ラインに近いところにあり、R指数は0.99であり、正規化二乗平均平方根誤差(nRMSE)は2.64%であることが確認された。かかる方法は、タバコのチップペーパーの唇付着力を正確に定量化することが可能であり、検査測定コストを大幅に削減し、客観的で効率が良く、タバコ業界における材料承認、品質管理、製品のアップグレードにおいて相当な利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】試験器1の概略図である。
図2】試験器2の概略図である。
図3】厚さとタバコのチップペーパーの唇付着力との相関関係を示す点分布図である。
図4】定量とタバコのチップペーパーの唇付着力との相関関係を示す点分布図である。
図5】タバコのチップペーパーの唇付着力の予測値と実測値との対比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明について、実施例と併せて更に詳しく説明する。
【0020】
下記の実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではないと、当業者には理解されよう。実施例は、その中に具体的な技術又は条件が明記されていなければ、本分野における文献に記載された技術若しくは条件に基づいて、又は製品の仕様書に基づいて実施される。
使用される材料又は設備は、製造供給者が明記されていなければ、いずれも購入により取得可能な通常製品である。
【0021】
以下の実施例において、特段の記載がなければ、パーセントは全て重量パーセントである。
【0022】
実施例1
タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルであって、
タバコのチップペーパーの厚さが(0.069mm、0.112mm)の範囲内である場合、Y唇付着力=0.205+1.038×M摩擦係数であり、
タバコのチップペーパーの厚さが(0.069mm、0.112mm)の範囲内ではない場合、Y唇付着力=-0.335+1.181×M摩擦係数+0.005×D定量であり、
式中、Y唇付着力は予測されるタバコのチップペーパーの唇付着力であり、M摩擦係数はタバコのチップペーパーの動摩擦係数であり、D定量はタバコのチップペーパーの定量(つまり単位面積当たりのグラム重量)である、
モデル。
【0023】
実施例2
タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルの構築方法であって、
様々なブランドのチップペーパーの印刷面と人工唇皮とが人工唾液によって付着されている付着力を、試験器を用いて測量し、単位面積当たりの付着力を計算して、タバコのチップペーパーの唇付着力の実測値とするステップ(1)であって、この試験器が剥離強度試験器である、ステップ(1)と、
タバコのチップペーパーの動摩擦係数を測定する、ステップ(2)と、
タバコのチップペーパーの厚さを測定する、ステップ(3)と、
タバコのチップペーパーの定量を測定する、ステップ(4)と、
タバコのチップペーパーの動摩擦係数(M)、定量(D)、及び厚さ(H)を変量とし、チップペーパーの唇付着力を反応変量(Y)として回帰分析を実施し、タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルを得る、ステップ(5)とを含む、
方法。
【0024】
実施例3
タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルの構築方法であって、
様々なブランドのチップペーパーの印刷面と人工唇皮とが人工唾液によって付着されている付着力を、試験器を用いて測量し、単位面積当たりの付着力を計算して、タバコのチップペーパーの唇付着力の実測値とするステップ(1)であって、この試験器が引張機であり、
具体的には、人工唇皮はタバコのチップペーパーと同じサイズの長方形に切断され、切断された人工唇皮とタバコのチップペーパーの片面同士を人工唾液によって付着させ、付着面積を測定し、一定重量になるまで静置してから、チップペーパーと人工唇皮とが剥離して離れる瞬間の最大剥離力を試験器を用いて測量して、それを付着力とし、タバコのチップペーパーの幅は1mmであり、長さは1mmであり、静置時間は1秒であり、人工唾液には塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム、尿素、ブドウ糖、ムチン、アミラーゼ、酸性ホスファターゼ、及びリゾチームが含有され、そのpH値は5.5であり、使用される人工唾液の体積は1μLであり、塗布面積は0.5×1=0.5mmであり、人工唇皮の材料は医療用シリコーンゴムの軟質皮膚である、ステップ(1)と、
タバコのチップペーパーの動摩擦係数を測定する、ステップ(2)と、
タバコのチップペーパーの厚さを測定する、ステップ(3)と、
タバコのチップペーパーの定量を測定する、ステップ(4)と、
タバコのチップペーパーの動摩擦係数(M)、定量(D)、及び厚さ(H)を変量とし、チップペーパーの唇付着力を反応変量(Y)として回帰分析を実施し、タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルを得る、ステップ(5)とを含む、
方法。
【0025】
実施例4
タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルの構築方法であって、
様々なブランドのチップペーパーの印刷面と人工唇皮とが人工唾液によって付着されている付着力を、試験器を用いて測量し、単位面積当たりの付着力を計算して、タバコのチップペーパーの唇付着力の実測値とするステップ(1)であって、この試験器が引張機であり、
具体的には、人工唇皮はタバコのチップペーパーと同じサイズの長方形に切断され、切断された人工唇皮とタバコのチップペーパーの片面同士を人工唾液によって付着させ、付着面積を測定し、一定重量になるまで静置してから、チップペーパーと人工唇皮とが剥離して離れる瞬間の最大剥離力を試験器を用いて測量して、それを付着力とし、タバコのチップペーパーの幅は1000mmであり、長さは1000mmであり、静置時間は1800秒であり、人工唾液中には、1.40mmol/Lの塩化ナトリウム、0.5mmol/Lの塩化カリウム、0.1mmol/Lの塩化カルシウム、0.15mmol/Lのリン酸二水素ナトリウム、0.025mmol/Lの塩化マグネシウム、0.09mmol/Lの尿素、0.2mmol/Lのブドウ糖、2.7mmol/Lの牛顎下腺唾液ムチン、2.5units/mLのアミラーゼ、0.004units/mLの酸性ホスファターゼ、0.7units/mLのリゾチームが含有されており、使用される人工唾液の体積は1000μLであり、塗布面積は500×1000=500000mmであり、人工唇皮の材料は、表皮細胞層を有する活性複合皮膚であり、試験器の負荷範囲は0~200Nであり、識別率は≧0.01Nであり、試験器の2つのクランプの距離は500mmであり、移動速度は500mm/分である、ステップ(1)と、
タバコのチップペーパーの動摩擦係数を測定する、ステップ(2)と、
タバコのチップペーパーの厚さを測定する、ステップ(3)と、
タバコのチップペーパーの定量を測定する、ステップ(4)と、
タバコのチップペーパーの動摩擦係数(M)、定量(D)、及び厚さ(H)を変量とし、チップペーパーの唇付着力を反応変量(Y)として回帰分析を実施し、タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルを得る、ステップ(5)とを含む、
方法。
【0026】
実施例5
タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルの構築方法であって、
様々なブランドのチップペーパーの印刷面と人工唇皮とが人工唾液によって付着されている付着力を、試験器を用いて測量し、単位面積当たりの付着力を計算して、タバコのチップペーパーの唇付着力の実測値とするステップ(1)であって、この試験器が剥離強度試験器であり、
具体的には、人工唇皮はタバコのチップペーパーと同じサイズの長方形に切断され、切断された人工唇皮とタバコのチップペーパーの片面同士を人工唾液によって付着させ、付着面積を測定し、一定重量になるまで静置してから、接着されていないチップペーパーの他端と人工唇皮の他端とを試験器の2つのクランプでそれぞれ挟み、2つのクランプ間の距離と相対移動速度とを設定し、チップペーパーと人工唇皮とが剥離して離れた瞬間の最大剥離力を取得して、それを付着力とし、タバコのチップペーパーの幅は200mmであり、長さは100mmであり、静置時間は300秒であり、人工唾液中には、1.40mmol/Lの塩化ナトリウム、0.5mmol/Lの塩化カリウム、0.1mmol/Lの塩化カルシウム、0.15mmol/Lのリン酸二水素ナトリウム、0.025mmol/Lの塩化マグネシウム、0.09mmol/Lの尿素、0.2mmol/Lのブドウ糖、2.7mmol/Lの牛顎下腺唾液ムチン、2.5units/mLのアミラーゼ、0.004units/mLの酸性ホスファターゼ、0.7units/mLのリゾチームが含有されており、使用される人工唾液の体積は100μLであり、塗布面積は90×200=18000mmであり、人工唇皮の材料は、ポリオレフィンの人工皮革であり、試験器の負荷範囲は0~200Nであり、識別率は≧0.01Nであり、試験器の2つのクランプの距離は5mmであり、移動速度は1mm/分である、ステップ(1)と、
タバコのチップペーパーの動摩擦係数を測定する、ステップ(2)と、
タバコのチップペーパーの厚さを測定する、ステップ(3)と、
タバコのチップペーパーの定量を測定する、ステップ(4)と、
タバコのチップペーパーの動摩擦係数(M)、定量(D)、及び厚さ(H)を変量とし、チップペーパーの唇付着力を反応変量(Y)として回帰分析を実施し、タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルを得る、ステップ(5)とを含む、
方法。
ステップ(2)において、GB10006-88の「
」に基づいて、タバコのチップペーパーに動摩擦係数の測定が実施され、ステップ(3)において、GB/T451.3-2002の「
」に基づいて、タバコのチップペーパーに厚さの測定が実施され、ステップ(4)において、GB/T451.2-2002の「
」に基づいて、タバコのチップペーパーに定量の測定が実施される。
【0027】
実施例6
上述したタバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルを採用するか、又は、上述したタバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルの構築方法で構築されたタバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルを採用する、タバコのチップペーパーの唇付着力の予測方法であって、具体的には、タバコのチップペーパーの厚さと、動摩擦係数と、単位面積当たりのグラム重量とを取得した後に、これらをタバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルに入力して計算を行うことで、タバコのチップペーパーの唇付着力を得る、
方法。
【0028】
応用実例1
ステップ(1)
雲南中煙の様々なブランドのタバコのチップペーパーを25枚用意し、幅15mm、長さ50mmに正確に切断した。表1に従って人工唾液を準備した。人工唇皮として厚さ1mmの医療用シリコーンゴムの軟質皮膚を用意し、この人工唇皮を幅15mm、長さ50mmに切断した。マイクロインジェクション針(
)を使用して正確に10μLの人工唾液を取り、人工唇皮上に均一に塗布し(塗布面積は10×15=150mm)、タバコのチップペーパーの印刷面と人工唇皮とを人工唾液により付着させ、2分間静置した。ドイツのKARL社の引張機M250-2.5CTを試験設備として選択した。図1に示しているように、付着したチップペーパーと人工唇皮の付着されていない両端部分を、引張機のクランプの2つのクランプヘッドの間にそれぞれ挟み、クランプヘッドの距離を50mm、移動速度を50mm/分に設定した。
2つのクランプは力センサと変位センサとを内蔵したスマートボード(既存の設備)に取り付けられ、力値/変位収集器(通常はコンピュータ)が力センサと変位センサとを内蔵したスマートボードに連結されており、力値と変位の変化データをリアルタイムで収集することができた。チップペーパーと人工唇皮とが引っ張られて離れる瞬間に取得された最大力を付着力とした。F=付着力(N)/付着面積(mm)という公式に基づいて、唇付着力を計算した。
ステップ(2)
GB10006-88の「
」に基づいて、25枚のサンプルに動摩擦係数の測定を実施した。
ステップ(3)
GB/T451.3-2002の「
」に基づいて、25枚のサンプルに厚さの測定を実施した。
ステップ(4)
GB/T451.2-2002の「
」に基づいて、25枚のサンプルに定量の測定を実施した。
ステップ(5)
試験結果は表2に示している通りであった。
表3から、4つの指標(摩擦係数、厚さ、定量、及び唇付着力)の間には一様に比較的高次の相関関係があり、中でも摩擦係数と唇付着力との相関関係が比較的高い(0.897**)ことが確認できる。その他に、図3及び図4から、厚さと定量と唇付着力との間ではサンプルの厚さと定量の勾配における凝集性が強いので、主に厚さ範囲(0.04~0.047、0.069~0.112)の2つのレベル及び定量範囲(36.34~42.4、53.7~92)の2つのレベルになるように分けることができ、厚さ範囲(0.04~0.047)のレベルと定量範囲(36.34~42.4、83.7~92)のレベルにおける相関関係は大きくないが、厚さ範囲(0.069~0.112)のレベルでは一定の相関関係があることから、厚さ範囲(0.069-0.112)のレベルにおける厚さと定量と唇付着力との間の相関関係を更に考察しうることが、確認できる。
(1)摩擦係数、厚さ、定量、及び唇付着力に対して逐次回帰方程式を実施することで、厚さと定量の間に強い相関関係があり、かつ厚さと摩擦係数の間に多重共線形関係があることが確認された。これにより、確立された逐次回帰方程式中の厚さという選択肢は除去されて、摩擦係数と定量だけが代表的な選択肢として残り、これらと唇付着力との間に確立される二元回帰方程式のモデルが次の公式(1)となる。
Y=-0.335+1.181×M+0.005×D (1)
式中、
Yはチップペーパーの唇付着力であり、単位はニュートン/平方ミリメートル(N/mm)であり、
Mは動摩擦係数(無次元)であり、
Dはチップペーパーの定量であり、単位はグラム/平方メートル(g/m)である。
(2)厚さ範囲(0.069~0.112)のレベルにおいて摩擦係数、厚さ、定量、及び唇付着力に対して逐次回帰方程式を実施することで、厚さと定量の間に強い相関関係があり、かつ厚さと定量と摩擦係数との間に多重共線形関係があることが確認された。これにより、確立された逐次回帰方程式中の厚さと定量という2つの選択肢は除去されて、摩擦係数だけが代表的な選択肢として残り、これと唇付着力との間に確立される一元回帰方程式のモデルが下記の公式(2)となる。つまり、チップペーパーが比較的厚い場合には、動摩擦係数と唇付着力とは非常に強い相関関係を有する。
Y=0.205+1.038×M (2)
式中、
Yはチップペーパーの唇付着力であり、単位はニュートン/平方ミリメートル(N/mm)であり、
Mは動摩擦係数(無次元)である。
ステップ(6)
チップペーパーの唇付着力のモデルを使用し、検証した。
印刷加工及びブランドが様々な10枚のチップペーパーを選択し、チップペーパーの動摩擦係数を測定して、公式(1)に基づいてチップペーパーの唇付着力を予測した。通常のチップペーパーの定量は一般的に0.069mmを超えることはないので、ここではモデル(2)の使用及び検証は行わない。また、剥離強度試験器が同一サンプルに対して実施した疑似的唇付着力試験に基づく比較結果は、表4に示す通りであった。
上述した10枚の代表的な試験セットを選択して、モデルの精度を検証した。図5は予測値と実測値との比較であるが、この図から、データポイントが1:1ラインに近いところにあり、Rは0.99であり、nRMSEは2.64%であることが確認できる。各サンプルの唇付着力の予測値と実測値とは基本的に一致していることから、本発明はタバコのチップペーパーの唇付着力の予測に使用可能であることが分かる。
【0029】
応用実例2
ステップ(1)
雲南中煙の様々なブランドのタバコのチップペーパーを10枚用意し、幅15mm、長さ50mmに正確に切断した。表1に従って人工唾液を準備した。人工唇皮として厚さ1mmの医療用シリコーンゴムの軟質皮膚を用意し、この人工唇皮を幅15mm、長さ50mmに切断した。マイクロインジェクション針を使用して正確に10μLの人工唾液を取り、人工唇皮上に均一に塗布し(塗布面積は10×15=150mm)、タバコのチップペーパーの印刷面と人工唇皮とを人工唾液により付着させ、2分間静置した。試験設備として動摩擦係数測定器を選択した。図2に示しているように、付着したチップペーパーと人工唇皮の付着されていない両端部分を、動摩擦係数測定器のクランプの2つのクランプヘッドの間にそれぞれ挟み、クランプヘッドの距離を50mm、移動速度を50mm/分に設定した。2つのクランプは力センサと変位センサとを内蔵したスマートボード(既存の設備)に取り付けられ、力値/変位収集器(通常はコンピュータ)が力センサと変位センサとを内蔵したスマートボードに連結されており、力値と変位の変化データをリアルタイムで収集することができた。図2の人工唇皮は、クランプによって測定プラットフォームに固定された。チップペーパーと人工唇皮とが引っ張られて離れる瞬間に取得された最大力を付着力とした。F=付着力(N)/付着面積(mm)という公式に基づいて、唇付着力を計算した。
ステップ(2)
GB10006-88の「
」に基づいて、25枚のサンプルに動摩擦係数の測定を実施した。
ステップ(3)
GB/T451.3-2002の「
」に基づいて、25枚のサンプルに厚さの測定を実施した。
ステップ(4)
GB/T451.2-2002の「
」に基づいて、25枚のサンプルに定量の測定を実施した。
ステップ(5)
試験結果は表5に示す通りであった。
【0030】
これにより、本発明は、タバコのチップペーパーの唇への付着力を迅速かつ容易に定量化しうる方法を提供するものであり、従来的には人工官能吸引評価によってもたらされる主観的要素の影響及び表現の差異を十分に回避することが可能であると共に、検査測定コストを大幅に削減し、効率を大いに向上させることが分かる。
【0031】
ここまで、本発明の基本原理、主要な特徴、および本発明の利点について示し、説明してきた。本発明は上述した実施例によって限定されるものではなく、上述した実施例及び明細書内の記載は本発明の原理を説明するものにすぎず、本発明の精神及び範囲から逸脱しなければ、本発明には様々な変更および改変が加えられてもよく、かかる変更及び改変はいずれも、権利保護を求める本発明の範囲に含まれることが、当業者には理解されよう。本発明が求める権利保護の範囲は、付随する特許請求の範囲及びその均等物によって規定される。
【符号の説明】
【0032】
1 クランプヘッド
2 クランプ
3 タバコのチップペーパー
4 塗布された人工唾液
5 人工唇皮
6 力センサと変位センサとを内蔵したスマートボード
7 力値/変位収集器
【要約】
タバコのチップペーパーの唇付着力の予測モデルとその構築方法、及び予測方法は、分析検査測定の技術分野に属している。かかる方法は、タバコのチップペーパーの唇付着力、及び動摩擦係数と定量という2つの値に逐次回帰分析を実施して、タバコのチップペーパーの唇付着力を予測するモデルを得る。モデルの精度を検証したところ、予測値と測定値とは基本的に1:1ラインに近いところにあり、R2指数は0.99であり、正規化二乗平均平方根誤差(nRMSE)は2.64%であることが確認された。タバコのチップペーパーの唇への付着力を迅速かつ容易に定量化することができる方法は、従来的には人工官能吸引評価によってもたらされる主観的要素の影響及び表現の差異を十分に回避することが可能であると共に、検査測定コストを大幅に削減し、効率を大いに向上させる。更に、客観的で効率が良い上に再現性に優れ、使用が容易であり、タバコ業界における材料承認、品質管理、製品のアップグレードにおいて利点を有する。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5