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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】樹脂混練用添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20220225BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20220225BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C08F2/44 B
C08J3/22 CER
C08L101/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021572614
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2021033243
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2020153318
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】福原 和城
(72)【発明者】
【氏名】大島 純治
(72)【発明者】
【氏名】黒川 徳明
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/042999(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/010492(WO,A1)
【文献】特開昭58-015502(JP,A)
【文献】特開平07-292009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00- 2/60
6/00-246/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08J 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤と、前記有機紫外線吸収剤および/または前記ラジカル捕捉剤を分散するポリマーとを含有する樹脂混練用添加剤であり、
前記樹脂混練用添加剤は、粉体粒子であり、
1μm以上、100μm以下のメジアン径を有し、
前記樹脂混練用添加剤における前記有機紫外線吸収剤および前記ラジカル捕捉剤の総量の百分率が、20質量%以上、70質量%以下であり、
前記ポリマーは、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に1つのみ含有する単官能ビニルモノマーと、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に2つ以上含有する多官能ビニルモノマーとを含有するビニルモノマー成分の共重合体であり、
前記単官能ビニルモノマーと前記多官能ビニルモノマーとの総量における前記単官能ビニルモノマーの百分率が、10質量%以上、95質量%以下であることを特徴とする、樹脂混練用添加剤。
【請求項2】
前記単官能ビニルモノマーの百分率が、55質量%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂混練用添加剤。
【請求項3】
前記メジアン径が、5μm以上、30μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂混練用添加剤。
【請求項4】
前記メジアン径が、5μm以上、30μm以下であることを特徴とする、請求項2に記載の樹脂混練用添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂混練用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線吸収剤と、それを分散する重合体とを有する粒子が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。特許文献1の粒子は、水に分散されて水性重合体分散液として調製される。特許文献1の粒子は、1000nm未満の平均粒径を有する。特許文献1の紫外線吸収剤は、例えば、常温(25℃)で固形状であり、具体的には、2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールを含む。さらに、特許文献1の粒子は、塗料に添加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-091980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1に記載の水性重合体分散液を乾燥して粒子を得ようとすると、粒子の平均粒径が1000nm未満であるため、乾燥中に粒子同士が強固に凝集してしまう。乾燥後の凝集した粒子を樹脂に添加しても、その凝集が解消されにくい。そのため、樹脂成形体の耐光性を十分に高められないという不具合がある。
【0005】
一方、粒子の平均粒子径を大きくすることが試案される。しかし、そのような粒子を樹脂に添加して樹脂成形体を成形しようすると、樹脂成形体の強度が不十分になるという不具合がある。
【0006】
また、粒子における紫外線吸収剤の所定の濃度が求められる。
【0007】
さらに、粒子を樹脂に添加してそれらを混練して樹脂成形体を成形するときに、粒子の変形に起因する紫外線吸収剤のブリードの抑制が求められる。ブリードは、紫外線吸収剤が、樹脂成形体外に漏れ出る(放出される)現象である。
【0008】
本発明は、凝集が抑制され、樹脂成形体の紫外線吸収性および/または劣化抑制性に優れ、樹脂成形体の強度の低下およびブリードを抑制できる樹脂混練用添加剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(1)は、有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤と、前記有機紫外線吸収剤および/または前記ラジカル捕捉剤を分散するポリマーとを含有する樹脂混練用添加剤であり、前記樹脂混練用添加剤は、粉体粒子であり、1μm以上、100μm以下のメジアン径を有し、前記樹脂混練用添加剤における前記有機紫外線吸収剤および前記ラジカル捕捉剤の総量の百分率が、20質量%以上、70質量%以下であり、前記ポリマーは、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に1つのみ含有する単官能ビニルモノマーと、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に2つ以上含有する多官能ビニルモノマーとを含有するビニルモノマー成分の共重合体であり、前記単官能ビニルモノマーと前記多官能ビニルモノマーとの総量における前記単官能ビニルモノマーの百分率が、10質量%以上、95質量%以下である、樹脂混練用添加剤を含む。
【0010】
本発明(2)は、前記単官能ビニルモノマーの百分率が、55質量%以上である、(1)に記載の樹脂混練用添加剤を含む。
【0011】
本発明(3)は、前記メジアン径が、5μm以上、30μm以下である、(1)または(2)に記載の樹脂混練用添加剤を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂混練用添加剤は、凝集が抑制され、樹脂成形体の紫外線吸収性および/または劣化抑制性に優れ、樹脂成形体の強度の低下およびブリードを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1の樹脂混練用添加剤のSEM写真の画像処理図である。
図2図2は、比較例6の樹脂混練用添加剤のSEM写真の画像処理図である。
図3図3は、比較例7の樹脂混練用添加剤のSEM写真の画像処理図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の樹脂混練用添加剤は、粉体粒子である。つまり、水に分散している水分散性粒子ではない。具体的には、樹脂混練用添加剤は、水分散性粒子が分散された水分散液を乾燥して得られる粉体粒子である。
【0015】
樹脂混練用添加剤の形状は、特に限定されない。樹脂混練用添加剤の形状は、例えば、略球形状および異形状を含む。略球形状は、例えば、真球形状および回転楕円形状を含む。球形状は、表面に凹凸がある形状を含む。
【0016】
樹脂混練用添加剤は、1μm以上、100μm以下のメジアン径を有する。樹脂混練用添加剤のメジアン径は、好ましくは、3μm以上、より好ましくは、5μm以上、さらに好ましくは、10μm以上、とりわけ好ましくは、15μm以上である。樹脂混練用添加剤のメジアン径は、好ましくは、90μm以下、より好ましくは、75μm以下、さらに好ましくは、50μm以下、とりわけ好ましくは、30μm以下である。
【0017】
樹脂混練用添加剤のメジアン径が上記した下限に満たなければ、凝集し易い。凝集した樹脂混練用添加剤を樹脂に添加しても、凝集が解消されにくい。そのため、樹脂成形体の耐光性を十分に高められない。
【0018】
一方、樹脂混練用添加剤のメジアン径が上記した上限を越えれば、かかる樹脂混練用添加剤を樹脂に添加すると、樹脂成形体に加えられた応力が極端に集中し、そのため、樹脂成形体の強度が不十分になる。
【0019】
樹脂混練用添加剤のメジアン径は、粒子径分布測定装置で測定される。具体的には、樹脂混練用添加剤を含む水分散液(懸濁液を含む)をレーザー回折散乱式粒子径分布測定装置で測定することにより、樹脂混練用添加剤のメジアン径が求められる。または、樹脂混練用添加剤のメジアン径を、水を使用せず測定することもでき、例えば、粒子画像解析システムにより測定される。
【0020】
この樹脂混練用添加剤は、有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤と、ポリマーとを含有する。
【0021】
有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤は、例えば、重合性官能基を有しない。具体的には、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤のそれぞれは、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に含有しない。有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤が、重合性官能基を有する場合には、それが、後述するビニルモノマー成分と共重合して、ポリマー鎖に組み込まれ、放出性が低下する場合がある。しかし、本実施形態では、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤が重合性官能基を有しないので、上記したようなポリマー鎖に組み込まれることに起因する放出性の低下を抑制できる。
【0022】
有機紫外線吸収剤は、紫外線を吸収して、樹脂に直接照射される紫外線の量を低減する。有機紫外線吸収剤の25℃における性状は、特に限定されない。有機紫外線吸収剤の25℃における性状としては、例えば、固形状、および、液状が挙げられる。有機紫外線吸収剤の25℃における性状としては、有機紫外線吸収剤の樹脂に対する過度な放出を抑制して、樹脂成形体の長期間における耐光性を向上させる観点から、好ましくは、固形状が挙げられる。有機紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、および、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。
【0023】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクチロキシベンゾフェノン(アデカスタブ1413、ADEKA社製)、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-オクチロキシベンゾフェノン、および、2,2’-ジヒドロキシ-4-ブチルオキシベンゾフェノンが挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、好ましくは、汎用性が高い観点から、アデカスタブ1413が挙げられる。
【0024】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチルー1-フェニルエチル)フェノール、C7-C9-アルキル-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオンエーテル(Tinuvin99-2、BASF社製)、および、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(JF-79、城北化学工業社製)が挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、好ましくは、汎用性が高い観点から、Tinuvin99-2、JF-79が挙げられる。
【0025】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキサロイルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオイキシ)エトキシ]フェノール、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチロキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(Tinuvin 460、BASF社製)、および、2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジン(Tinuvin477、BASF社製)が挙げられる。トリアジン系紫外線吸収剤として、好ましくは、汎用性が高い観点から、Tinuvin 460、Tinuvin477が挙げられる。
【0026】
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、4-オクチルフェニルサリシレート、ビスフェノールA-ジサリシレート、4-t-ブチルフェニルサリシレート、および、フェニルサリシレートが挙げられる。
【0027】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、および、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートが挙げられる。
【0028】
有機紫外線吸収剤として、好ましくは、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、および、トリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0029】
ラジカル捕捉剤は、樹脂が紫外線を受光することに起因して生成するアルキルラジカルおよび/またはペルオキシラジカルを捕捉する。ラジカル捕捉剤の25℃における性状は、特に限定されない。ラジカル捕捉剤の25℃における性状としては、例えば、固形状、および、液状が挙げられる。ラジカル捕捉剤の25℃における性状としては、ラジカル捕捉剤の樹脂に対する過度な放出を抑制して、樹脂成形体の長期間における耐光性を向上させる観点から、好ましくは、固形状が挙げられる。ラジカル捕捉剤としては、例えば、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤(HALS)(Hindered amine light stabilizers)、および、ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤が挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。
【0030】
ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤としては、例えば、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよびβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ [5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールとのエステル(アデカスタブLA-63P、ADEKA社製)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)(Tinuvin292、BASF社製)、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)(JF-90、城北化学工業社製)、(テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート(アデカスタブLA-52、ADEKA社製)、および、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート(アデカスタブLA-57、ADEKA社製)が挙げられる。ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤として、好ましくは、汎用性が高い観点から、アデカスタブLA-63P、Tinuvin292、JF-90が挙げられる。
【0031】
ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤としては、例えば、2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェノール(別名:ジブチルヒドロキシトルエン、以下、BHTと略する場合がある。)、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](Irganox1010、BASF社製)、および、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(Irganox1076、BASF社製)が挙げられる。ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤として、好ましくは、汎用性が高い観点から、Irganox1010が用いられる。
【0032】
樹脂混練用添加剤における有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の百分率は、20質量%以上、70質量%以下である。また、樹脂混練用添加剤における有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の百分率は、好ましくは、22.5質量%以上、より好ましくは、25質量%以上であり、好ましくは、65質量%以下、より好ましくは、60質量%以下、さらに好ましくは、55質量%以下、とりわけ好ましくは、50質量%以下である。また、ポリマー100質量部に対する有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総質量部は、例えば、25質量部以上、好ましくは、33質量部以上であり、また、例えば、233質量部以下、好ましくは、200質量部以下である。
【0033】
有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の百分率および/または総質量部が上記した下限に満たなければ、樹脂成形体における紫外線吸収能、および/または、ラジカル捕捉能を確保するために、多量の樹脂混練用添加剤を樹脂に添加せざるを得ない。そうすると、樹脂成形体における樹脂の割合が低下する。すると、樹脂成形体が樹脂固有の性能を十分に発揮できない。性能は、強度を含む。
【0034】
一方、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の百分率および/または総質量部が上記した上限に越える樹脂混練用添加剤を製造するには困難がある。具体的には、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤が25℃で液状であれば、多量の有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤に基づく粒子同士の融着に起因して、粉体粒子としての樹脂混練用添加剤を得ることが困難である。他方、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤が25℃で固形状であれば、それらが次に説明するビニルモノマー成分と十分に相溶できず、そのため、重合安定性が低く、共重合体を生成できない。そのため、樹脂混練用添加剤を得ることができない。
【0035】
有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の百分率は、樹脂混練用添加剤から有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量を溶媒を用いて抽出して、これを定量して、求められる。抽出および定量の操作は、後の実施例で詳述する。
【0036】
ポリマーは、ビニルモノマー成分の共重合体である。ビニルモノマー成分は、単官能ビニルモノマーと、多官能ビニルモノマーとを含有する。
【0037】
単官能ビニルモノマーは、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に1つのみ含有する。単官能ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族ビニルモノマー、ニトリルモノマー、ビニルエステルモノマー、マレイン酸エステルモノマー、および、ハロゲン化ビニルが挙げられる。単官能ビニルモノマーは、単独または併用できる。単官能ビニルモノマーとして、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、および、芳香族ビニルモノマーが挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、メタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルである。以下、「(メタ)」の定義および使用は、上記と同じである。(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、直鎖状、分岐状または環状の炭素数1~20のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは、炭素数1~6のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0039】
具体的には、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸iso-ノニル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、および、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチルが挙げられ、より好ましくは、メタクリル酸メチル(MMA)が挙げられる。
【0040】
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、および、α-メチルスチレンが挙げられる。芳香族ビニルモノマーとして、好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0041】
ニトリルモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、および、メタクリロニトリルが挙げられる。
【0042】
ビニルエステルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、および、プロピオン酸ビニルが挙げられる。マレイン酸エステルモノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、および、マレイン酸ジブチルが挙げられる。ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル、および、フッ化ビニルが挙げられる。
【0043】
単官能ビニルモノマーと多官能ビニルモノマーとの総量における単官能ビニルモノマーの百分率は、10質量%以上、95質量%以下である。また、単官能ビニルモノマーと多官能ビニルモノマーとの総量における単官能ビニルモノマーの百分率は、好ましくは、55質量%以上、より好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、70質量%以上、とりわけ好ましくは、75質量%以上である。単官能ビニルモノマーと多官能ビニルモノマーとの総量における単官能ビニルモノマーの百分率は、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、85質量%以下である。
【0044】
単官能ビニルモノマーの百分率が上記した下限に満たなければ、架橋度が過度に高くなる。そのため、重合初期にポリマー鎖の自由度が失われ、空隙を生成し易くなる。そのため、樹脂成形体における有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の放出速度が過度に高くなる。なお、単官能ビニルモノマーの百分率が0質量%である場合は、ビニルモノマー成分は、単官能ビニルモノマーを含有せず、多官能ビニルモノマーのみを含有する。そのため、架橋度が過度に高くなり、樹脂成形体における有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の放出速度が過度に高くなる。
【0045】
一方、単官能ビニルモノマーの百分率が上記した上限を越えれば、架橋度が過度に低くなる。そのため、樹脂組成物(後述)の成形において樹脂混練用添加剤が変形または崩壊する。つまり、樹脂成形体の成形において、有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤が樹脂混練用添加剤外に放出される。つまり、有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤のブリードを生じる。その結果、樹脂成形体が紫外線吸収性および/または劣化抑制性を発現できない。
【0046】
なお、単官能ビニルモノマーの百分率が100質量%である場合は、ビニルモノマー成分は、多官能ビニルモノマーを含有せず、単官能ビニルモノマーのみを含有する。そのため、架橋せず、有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤がブリードし易くなる。
【0047】
多官能ビニルモノマーは、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に2つ以上含有する。好ましくは、多官能ビニルモノマーは、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に2つ含有する。多官能ビニルモノマーは、架橋性ビニルモノマーと称呼することができる。多官能ビニルモノマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ジビニルモノマー、および、アリルモノマーが挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。
【0048】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジ(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリレートを3つ以上有するポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0049】
ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、および、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)が挙げられる。
【0050】
(メタ)アクリレートを3つ以上有するポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、および、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0051】
ジビニルモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン(DVB)が挙げられる。
【0052】
アリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、および、トリアリル(イソ)シアヌレートが挙げられる。
【0053】
多官能ビニルモノマーとして、好ましくは、均一な架橋性の観点から、ポリ(メタ)アクリレート、および、ジビニルモノマーが挙げられる。
【0054】
単官能ビニルモノマーと多官能ビニルモノマーとの総量における多官能ビニルモノマーの百分率は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、15質量%以上である。単官能ビニルモノマーと多官能ビニルモノマーとの総量における多官能ビニルモノマーの百分率は、例えば、90質量%以下、好ましくは、45質量%以下、より好ましくは、40質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下、とりわけ好ましくは、25質量%以下である。また、単官能ビニルモノマー100質量部に対する多官能ビニルモノマーの質量部数は、例えば、5質量部以上であり、また、例えば、90質量部以下、好ましくは、50質量部未満である。多官能ビニルモノマーの百分率および/または質量部数が上記した下限以上であれば、架橋度が過度に低くなることを抑制でき、有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤のブリードを抑制できる。多官能ビニルモノマーの百分率および/または質量部数が上記した上限以下であれば、架橋度が過度に高くなることを抑制でき、樹脂成形体における有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の放出速度の過度の上昇を抑制できる。
【0055】
樹脂混練用添加剤の製造方法は、特に限定されない。具体的には、重合方法としては、例えば、懸濁重合が挙げられる。懸濁重合における操作と、それに用いられる重合開始剤、分散剤および乳化剤とは、例えば、特開2012-207012号公報、特開2012-207013号公報、および、特開2016-011299号公報に詳細に記載される。
【0056】
例えば、有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤と、ビニルモノマー成分と、重合開始剤とを含む疎水性溶液を調製する。別途、分散剤と、乳化剤と、水とを含む液を調製する。その後、疎水性溶液を液に水分散させる。これにより、水分散液を調製する。その後、水分散液を加熱する。これにより、懸濁重合を実施する。その後、反応液を冷却する。その後、反応液を乾燥させる。
【0057】
上記した疎水性溶液の水分散では、例えば、ホモミキサー(ホモミクサー)、超音波ホモジナイザー、加圧式ホモジナイザー、マイルダー、多孔膜圧入分散機などの分散機が用いられ、好ましくは、ホモミキサーが用いられる。
【0058】
乾燥としては、例えば、スプレードライ(噴霧乾燥)、真空乾燥、および、常温(25℃)放置が挙げられる。好ましくは、スプレードライが挙げられる。
【0059】
また、真空乾燥および常温放置の前に、固形分取り出し工程を実施できる。固形分取り出し工程では、例えば、遠心脱水、フィルタープレスなどが実施される。
【0060】
また、真空乾燥および常温放置の後に、解砕工程を実施できる。解砕工程では、凝集した樹脂混練用添加剤をほぐす。
【0061】
なお、真空乾燥、および、常温乾燥は、流動乾燥を含むことができる。流動乾燥を実施した後には、解砕工程を実施しなくてもよい。
【0062】
これにより、樹脂混練用添加剤が粉体粒子として得られる。
【0063】
樹脂混練用添加剤は、樹脂に添加され、樹脂成形体に成形される。樹脂は、特に限定されない。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂およびエラストマー、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、および、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂およびエラストマーが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)、高密度ポリエチレン、パラフィン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合樹脂などのポリオレフィン樹脂、エチレンプロピレンジエン共重合樹脂、ブタジエン共重合熱可塑性エラストマー(SBS、SEBSを含む)、イソプレン共重合熱可塑性エラストマー(SIS、SEPSを含む)などのオレフィンとジエンとの共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン塩ビ共重合樹脂、アイオノマー樹脂などのオレフィンとビニルモノマーとの共重合樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂およびエラストマーとして、好ましくは、ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0064】
樹脂成形体における樹脂用添加剤の百分率は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下である。樹脂に対する有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の質量部数は、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0065】
樹脂組成物を調製するには、例えば、樹脂用添加剤と樹脂とをドライブレンド(配合)して、それらを溶融混練して、樹脂組成物をコンパウンドとして調製する。または、一旦、樹脂用添加剤と樹脂とを溶融混練して、樹脂に対して樹脂用添加剤の比率の高いマスターバッチを調製し、その後、マスターバッチと樹脂とを溶融混練して、樹脂組成物を調製してもよい。
【0066】
なお、上記した樹脂がパラフィンである場合に、樹脂組成物に含まれる樹脂混練用添加剤中の有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の溶脱率は、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、35質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下、とりわけ好ましくは、20質量%以下であり、また、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上である。溶脱率が上記した上限以下であれば、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の樹脂に対する過度な放出を抑制できる。そのため、樹脂成形体は、長期間、耐光性に優れる。溶脱率が上記した下限以上であれば、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の樹脂に対して放出できる。そのため、樹脂成形体は、耐光性に優れる。有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の溶脱率の測定方法は、実施例で記載する。
【0067】
その後、樹脂組成物から樹脂成形体を作製する。成形方法は、特に限定されない。成形方法として、例えば、パイプ、チューブ、被覆電線、シート、フィルム、ロッド、ロープ、糸などを成形する押出成形、射出成形、トランスファー成形、真空成形、ブロー成形、インフレーション成形、プレス成形、カレンダー成形、発泡成形、粉末成形、異形成形、および、注型成形が挙げられる。
【0068】
樹脂成形体は、特に限定されない。樹脂成形体として、例えば、家電機器の筐体、電子機器の筐体、画像表示装置の筐体、および、自動車内装品などが挙げられる。また、樹脂成形体として、例えば、外装材(とくに、住宅用外装材)、内装材(壁紙などを含む)、天井材、床材などの建材、例えば、紙製品、例えば、木質材料、例えば、木質製品、例えば、プラスチック製品、例えば、フィルム、シート、例えば、ケーブル、パイプ、例えば、容器、包装体、例えば、糸、ロープ、パルプ、ネット、衣料品、不織布などの繊維材料、例えば、フィルター、例えば、ディスク、例えば、レンズ、例えば、ファスナ、例えば、医療機器、例えば、化粧板などが挙げられる。
【0069】
なお、粉体粒子は、樹脂混練用添加剤以外の用途にも適用できる。例えば、粉体粒子を、樹脂に混練せずに、樹脂成形体以外の工業製品に直接添加することができる。そのような工業製品としては、例えば、塗料、例えば、接着剤、例えば、インキ、例えば、シーリング剤、コーキング剤などの充填剤、例えば、樹脂エマルション、例えば、コーティング剤などが挙げられる。
【0070】
[樹脂混練用添加剤の効果]
【0071】
そして、この樹脂混練用添加剤は、凝集が抑制され、樹脂成形体の紫外線による劣化抑制性に優れ、樹脂成形体の強度の低下およびブリードを抑制できる。
【0072】
詳しくは、樹脂混練用添加剤のメジアン径が1μm以上であるので、凝集しにくい。そのため、樹脂成形体の耐光性を十分に高められる。樹脂混練用添加剤のメジアン径が100μm以下であるので、樹脂混練用添加剤を樹脂に添加しても、樹脂成形体に加えられた応力が極端に集中することを抑制できる。そのため、樹脂成形体の強度が優れる。
【0073】
樹脂混練用添加剤における有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の百分率は、20質量%以上であるので、樹脂成形体における紫外線吸収能、および/または、ラジカル捕捉能を確保するために、少量の樹脂混練用添加剤を樹脂に添加すればよい。そうすると、樹脂成形体における樹脂の割合が低下することを抑制できる。そのため、樹脂成形体が樹脂固有の性能を十分に発揮できる。
【0074】
また、この樹脂混練用添加剤では、単官能ビニルモノマーと多官能ビニルモノマーとの総量における単官能ビニルモノマーの百分率が10質量%以上である。そのため、架橋度の過度の増大を抑制できる。そのため、重合初期にポリマーの自由度を確保できる。すると、空隙の生成を抑制できる。その結果、樹脂成形体における有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の放出速度の過度の増大を抑制できる。この樹脂混練用添加剤では、単官能ビニルモノマーと多官能ビニルモノマーとの総量における単官能ビニルモノマーの百分率が95質量%以下である。そのため、樹脂組成物を組成した後の成形において樹脂混練用添加の変形および崩壊を抑制できる。その結果、有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤のブリードを抑制できる。
【実施例
【0075】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、%については、特段の記載がない限り、質量%を意味する。
【0076】
各実施例および比較例で用いる成分の詳細を次に記載する。
【0077】
・アデカスタブ1413:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、25℃で固形状、ADEKA社製
・Tinuvin99-2:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、純度95%、25℃で液状、BASF社製
・Tinuvin460:トリアジン系紫外線吸収剤、25℃で固形状、BASF社製
・アデカスタブLA-63P:ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、25℃で固形状、アデカ社製
・Tinuvin292:ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、25℃で液状、BASF社製
・Irganox1010:ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤、25℃で固形状、BASF社製
・MMA:メタクリル酸メチル、単官能性ビニルモノマー、商品名「ライトエステルM」(ライトエステルは登録商標)、共栄社化学社製
スチレン:スチレンモノマー、単官能性ビニルモノマー、和光特級試薬、富士フイルム和光純薬社製
・EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート、多官能性ビニルモノマー、商品名「ライトエステルEG」(ライトエステルは登録商標)、共栄社化学社製
・DVB:ジビニルベンゼン、多官能ビニルモノマー、異性体混合物、純度93%以上、富士フイルム和光純薬社製
・パーロイルL:商品名、ジラウロイルパーオキシド、重合開始剤、日油社製
・パーヘキシルO:商品名、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエイト、重合開始剤、日油社製
・プロノン208:商品名、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、乳化剤、日油社製
・ポバール22―88:商品名、部分鹸化ポリビニルアルコール、分散剤、クラレ社製
・デモールNL:商品名、β-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩の41%水溶液、分散剤、花王社製
【0078】
実施例1
【0079】
容器に、アデカスタブ1413 15.63質量部、アデカスタブLA-63P 15.63質量部、MMA25.00質量部、EGDMA6.25質量部およびパーロイルL 0.25質量部を仕込み、室温(25℃)で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0080】
別途、ビーカーに、脱イオン水161.23質量部、デモールNL 0.15質量部、プロノン208の1%水溶液0.63質量部、ポバール22-88の10%水溶液25.00質量部を仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を調製した。
【0081】
次いで、疎水性溶液をビーカーの水溶液に加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数3500min-1で5分間攪拌することにより、疎水性溶液を水溶液中に分散させて、水分散液を調製した。
【0082】
その後、水分散液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した4口フラスコに移し、窒素気流下、6cm径の攪拌器により、周速18.9m/分で攪拌しながら、4口フラスコをウォーターバスを用いて昇温して、懸濁重合した。懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で4時間、連続して実施した。続いて、ウォーターバスを昇温して、反応液の温度を80±2℃に昇温し、2時間熟成した。その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、樹脂混練用添加剤を含有する懸濁液を得た。
【0083】
その後、懸濁液を、スプレードライヤー(大川原化工機製L-8i)を用いてスプレードライして、粉体粒子としての樹脂混練用添加剤を得た。スプレードライヤーの設定条件のアトマイザー回転数が24000min-1であり、入り口温度が120℃である。
【0084】
実施例2から実施例11と比較例1から比較例8
実施例1と同様に処理して、樹脂混練用添加剤を得た。但し、配合処方および処理は、表1および表2の記載に従って変更した。比較例1では、懸濁液の乾燥時に、樹脂混練用添加剤が凝集して融着した。この樹脂混練用添加剤をほぐしても、後述する樹脂との配合に適する粉体粒子として調製することができなかった。また、比較例4では、アデカスタブ1413およびアデカスタブLA-63Pがビニルモノマー成分に溶解せず、疎水性溶液を調製できなった。そのため、懸濁重合を実施できず、粉体粒子を得ることができなかった。比較例5では、液状のTinuvin99-2に起因する樹脂同士の融着により、粉体粒子を得ることができなかった。
【0085】
[評価]
各実施例および比較例の樹脂混練用添加剤と、それを含む樹脂成形体とのそれぞれについて、下記評価を実施した。それらの結果を表1および表2に記載する。
【0086】
[樹脂混練用添加剤の評価]
<重合性>
比較例4は、疎水性溶液を調製できなった。そのため、懸濁重合を実施できなかった。そのため、重合性を「×」と評価した。一方、それ以外の比較例と、全ての実施例は、懸濁重合を実施できた。そのため、重合性を「○」と評価した。
【0087】
<樹脂混練用添加剤のメジアン径>
懸濁液をレーザー回折散乱式粒子径分布測定装置LA-960V2(堀場製作所社製)で測定して、樹脂混練用添加剤のメジアン径を求めた。
【0088】
<粉体粒子における有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の割合>
粉体粒子における有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の割合を求めた。具体的には、テトラヒドロフランで粉体粒子の有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量を抽出し、HPLC、GPCおよびGCMSのうちから選択される少なくとも1つを用いて、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の質量百分率をそれぞれ測定した。移動相および測定装置の条件は、以下の通りである。
【0089】
<HPLC>
移動相:アセトニトリル/水=8/2(質量基準)
カラム:YMC-Pack ODS-A(ワイエムシィ社製)
カラム温度:40℃
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(SPD-M20A、島津製作所社製)
【0090】
<GPC>
移動相:テトラヒドロフラン
カラム:KF-801(昭和電工社製)
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率検出器(RID-M20A、島津製作所社製)
【0091】
<GCMS>
移動相:高純度He
カラム:Rtx-5 Amine(Restek社製)
カラム温度:300℃
検出器:質量分析計(GCMS-QP2010Ultra、島津製作所社製)
【0092】
<放出性>
樹脂混練用添加剤0.1gを1Kビンに測り取り、そこへ流動パラフィン(モレスコホワイトP-70、平均分子量:323、動粘度:12.56mm/s(40℃)、密度:0.843g/cm(15℃)、MORESCO社製)を2.5g加えた。1日静置後、0.45μmフィルターでろ過し、流動パラフィン中に放出された有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の合計量をHPLC、GPCおよびGCMSのうちから選択される少なくとも1つを用いて測定した。これにより、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の合計の溶脱率を求めた。
【0093】
[樹脂成形体の評価]
ペレットを評価するために、まず、樹脂混練用添加剤と樹脂とを配合した。配合は、以下の通りである。
【0094】
樹脂混練用添加剤と、低密度ポリエチレン樹脂(「ノバテックLD」LF441MD1、MFR:2.0g/10min、密度:0.924g/cm、日本ポリエチレン社製)とをドライブレンドして、樹脂組成物を得た。低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対する、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の合計質量部数を1.0質量部とした。その後、樹脂組成物を、二軸押出機(サーモサイエンティフィック社製プロセス11卓上二軸スクリューエクストルーダー)を用いて160℃で混練して、ペレット(樹脂成形体)を成形した。
【0095】
<混練耐性>
樹脂成形体における樹脂添加剤を、簡易卓上SEM(日立ハイテクノロジーズ社製Miniscope TM-3000)で状態を観察した。図1から図3のそれぞれに、実施例1、比較例6および比較例7のSEM写真の画像処理図を示す。
【0096】
<有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の残存率測定>
ペレットにおける有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量をテトラヒドロフランで抽出した。抽出液中の有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の合計をHPLC、GPCおよびGCMSのうちから選択される少なくとも1つを用いて測定し、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の残存率を評価した。具体的な抽出条件は、以下の通りである。
【0097】
ペレット秤取量:0.5g
テトラヒドロフラン量:5mL
抽出時間:3日間
【0098】
図2から分かるように、比較例6の樹脂混練用添加剤は、崩壊していた。図3から分かるように、比較例7の樹脂混練用添加剤は、一部が崩壊していた。
【0099】
対して、図1から分かるように、実施例1の樹脂混練用添加剤は、粉体粒子の形状を保っていた。図示しないが、実施例3の樹脂混練用添加剤も、粉体粒子の形状を保っていた。
【0100】
<樹脂成形体のアイゾット衝撃性試験>
【0101】
ペレットを再度上記二軸押出機を通して溶融し、同社の射出成形機MiniJet Proで、長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの棒状の樹脂成形体に成形した。樹脂成形体をノッチ加工機(安田精機製作所製)でノッチを形成した。ノッチは、長手方向中央部に、切り込み深さ2mmのサイズであった。JIS K7110に準拠して、-40℃で、アイゾット衝撃強度を測定した。下記の基準に基づいて、樹脂成形体の耐衝撃性を評価した。
【0102】
○:アイゾット衝撃強度が35.0J/m以上であった。
×:アイゾット衝撃強度が35.0J/m未満であった。
【0103】
<樹脂成形体の耐光性試験>
ペレットと、低密度ポリエチレン樹脂(「ノバテックLD」LF441MD)とをドライブレンドし、二軸押出機(サーモサイエンティフィック社製MiniCTW)を通して溶融し、同社の射出成形機MiniJetで、長さ50mm、幅10mm、厚み1mmの試験片を成形した。有機紫外線吸収剤と、ラジカル捕捉剤との質量部数を、低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対して、それぞれ、0.2質量部に調整した。各試験片を、スーパーキセノンウェザーメーターSX75(スガ試験機社製)で180W/m、1600時間の耐光促進試験を実施し、下記の基準で、耐光性を評価した。
【0104】
○:目視にて試験片にひび割れを確認できなかった。
×:目視にて試験片にひび割れを確認できた。
【0105】
<比較例の考察>
【0106】
比較例1は、樹脂混練用添加剤のメジアン径が小さいと考えられる。そのため、乾燥の際に粒子同士が強固に凝集してしまう。その結果、樹脂に配合しても樹脂成形体の耐光性を十分に高められないと推測する。
【0107】
比較例2は、樹脂混練用添加剤のメジアン径が100μmを超過する。そのため、樹脂成形体に加えられた応力が極端に集中し、そのため、耐衝撃性が過度に低下した。
【0108】
比較例3は、樹脂混練用添加剤における有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の百分率は、20質量%未満である。そのため、樹脂成形体における紫外線吸収能、および、ラジカル捕捉能を確保するために、多量の樹脂混練用添加剤を低密度ポリエチレン樹脂に添加せざるを得ない。そうすると、樹脂成形体における低密度ポリエチレン樹脂の割合が低下し、低密度ポリエチレン樹脂固有の強度を十分に発揮できない。
【0109】
比較例4は、ビニルモノマー成分、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量に対する、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の割合が百分率80質量%を越える。そのため、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤がモノマー成分と十分に相溶しない。その結果、重合安定性が低く、共重合体であるポリマーを生成できない。そのため、樹脂混練用添加剤を得ることができなかった。
【0110】
さらに、比較例5は、ビニルモノマー成分、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量に対する、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の割合が百分率80質量%を越え、かつ、有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤が25℃で液状である。そのため、多量の有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤に基づく粒子同士の融着に起因して、粉体粒子としての樹脂混練用添加剤を得ることができない。
【0111】
比較例6および比較例7は、単官能ビニルモノマーと多官能ビニルモノマーとの総量における単官能ビニルモノマーの百分率が95質量%を越える。そのため、架橋度が低い。
その結果、樹脂組成物を組成した後の混練成形において変形または崩壊する。従って、樹脂成形体においてブリードを生じる。
【0112】
比較例8は、単官能ビニルモノマーと多官能ビニルモノマーとの総量における単官能ビニルモノマーの百分率が10質量%未満である。そのため、架橋度が過度に高くなる。その結果、重合初期にポリマー鎖の自由度が失われ、空隙を生成し易くなる。従って、樹脂成形体における有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の放出速度が過度に高い。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
樹脂混練用添加剤は、樹脂に添加され、樹脂成形体に成形される。
【要約】
樹脂混練用添加剤は、有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤と、有機紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を分散するポリマーとを含有する。樹脂混練用添加剤は、粉体粒子である。樹脂混練用添加剤は、1μm以上、100μm以下のメジアン径を有する。樹脂混練用添加剤における有機紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の総量の百分率が、20質量%以上、70質量%以下である。ポリマーは、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に1つのみ含有する単官能ビニルモノマーと、重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に2つ以上含有する多官能ビニルモノマーとを含有するビニルモノマー成分の共重合体である。単官能ビニルモノマーと多官能ビニルモノマーとの総量における単官能ビニルモノマーの百分率が、10質量%以上、95質量%以下である。
図1
図2
図3