(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】DC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20220228BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
H02M3/28 H
(21)【出願番号】P 2018119552
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】中原 将吾
(72)【発明者】
【氏名】中山 大禎
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-027201(JP,A)
【文献】特開2017-051082(JP,A)
【文献】特開2014-075944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0020702(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0229225(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄生容量であるキャパシタ、または、並列接続された外付けのキャパシタを含む、4つのスイッチング素子を有する第1フルブリッジ回路と、
寄生容量であるキャパシタ、または、並列接続された外付けのキャパシタを含む、4つのスイッチング素子を有する第2フルブリッジ回路と、
前記第1フルブリッジ回路に接続された第1巻線と、前記第2フルブリッジ回路に接続され、前記第1巻線と磁気結合する第2巻線とを有するトランスと、
前記第1巻線または前記第2巻線に直列接続されたインダクタンス成分と、
前記第1フルブリッジ回路および前記第2フルブリッジ回路それぞれの各スイッチング素子をソフトスイッチング制御する制御回路と、
を備え、
スイッチング素子のターンオンとターンオフとの切り替えタイミングで、前記トランスおよび前記インダクタンス成分の等価インダクタに流れるインダクタ電流は、閾値電流以上であり、
前記制御回路は、
前記第1フルブリッジ回路および前記第2フルブリッジ回路それぞれの出力電圧が異なる場合、前記第1フルブリッジ回路の出力と、前記第2フルブリッジ回路の出力とが極性反転する極性反転期間の開始タイミングにおける前記インダクタ電流と、前記極性反転期間の終了タイミングにおける前記インダクタ電流と、を近づける、
DC-DCコンバータ。
【請求項2】
請求項1に記載のDC-DCコンバータであって、
前記制御回路は、
前記第1フルブリッジ回路の入力電圧に基づき、前記第1フルブリッジ回路の電圧出力期間を調整し、前記第2フルブリッジ回路の入力電圧に基づいて、前記第2フルブリッジ回路の電圧出力期間を調整する、
DC-DCコンバータ。
【請求項3】
請求項2に記載のDC-DCコンバータであって、
前記制御回路は、
前記第1フルブリッジ回路の出力と、前記第2フルブリッジ回路の出力とが極性反転する極性反転期間をτ
c、前記第1
フルブリッジ回路の電圧出力期間をτ
1、前記第2
フルブリッジ回路の電圧出力期間をτ
2、前記第1フルブリッジ回路の入力電圧をVx、前記第2フルブリッジ回路の入力電圧をVy、で表した場合、τ
1、τ
2、τ
cはラジアン表記であるとすると、
(τ
2-τ
c)Vy=(τ
1-τ
c)Vx
を満たす、τ
1、τ
2に調整する、
DC-DCコンバータ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載のDC-DCコンバータであって、
前記閾値電流は、前記等価インダクタに蓄積されるエネルギーが、2つの前記キャパシタに蓄積されるエネルギー以上となるように、設定されている、
DC-DCコンバータ。
【請求項5】
請求項4に記載のDC-DCコンバータであって、
前記閾値電流をI
ref、前記第1フルブリッジ回路の入力電圧をVx、前記キャパシタのキャパシタンスをC、前記等価インダクタのインダクタンスをL、補正係数をαで表した場合、
I
ref=α・Vx√(2C/L)、
を満たす、DC-DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトスイッチングを行うDC-DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
DC-DCコンバータなどの電力変換装置では、スイッチング損失を低減して、高効率で電力伝送を行うため、また、ノイズを低減して、スイッチングサージを抑えて、耐圧の低い安価な素子を用いるために、ゼロボルトスイッチング(以下、ZVSと言う)が用いられている。特許文献1には、1次側直流電圧と2次側直流電圧の電圧差が大きい場合に、ZVS動作を成立させて、高効率な電力伝送を可能としたDC-DCコンバータが開示されている。特許文献1に記載のDC-DCコンバータでは、1次側および2次側それぞれで電力を検出し、それら2つの電力差が最小となるように、1次側スイッチのデューティと2次側スイッチのデューティとを増減させている。これにより、ZVS動作が成立するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、1次側スイッチおよび2次側スイッチそれぞれを、デューティ制御している。この場合、オンデューティが短いと、ZVSをするために十分な電流を流すことができないことがある。一方で、十分な電流を流すためにデューティを変更すると、過度な電流が流れて、損失が増大し、電力伝送効率の低下を招くおそれがある。
複雑となり、生産性の向上およびコストダウンを図ることが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、大電流が流れることによる損失増大を抑制し、ZVS制御を可能にするDC-DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願の第1発明のDC-DCコンバータは、寄生容量であるキャパシタ、または、並列接続された外付けのキャパシタを含む、4つのスイッチング素子を有する第1フルブリッジ回路と、寄生容量であるキャパシタ、または、並列接続された外付けのキャパシタを含む、4つのスイッチング素子を有する第2フルブリッジ回路と、前記第1フルブリッジ回路に接続された第1巻線と、前記第2フルブリッジ回路に接続され、前記第1巻線と磁気結合する第2巻線とを有するトランスと、前記第1巻線または前記第2巻線に直列接続されたインダクタンス成分と、前記第1フルブリッジ回路および前記第2フルブリッジ回路それぞれの各スイッチング素子をソフトスイッチング制御する制御回路と、を備え、スイッチング素子のターンオンとターンオフとの切り替えタイミングで、前記トランスおよび前記インダクタンス成分の等価インダクタに流れるインダクタ電流は、閾値電流以上であり、前記制御回路は、前記第1フルブリッジ回路および前記第2フルブリッジ回路それぞれの出力電圧が異なる場合、前記第1フルブリッジ回路の出力と、前記第2フルブリッジ回路の出力とが極性反転する極性反転期間の開始タイミングにおける前記インダクタ電流と、前記極性反転期間の終了タイミングにおける前記インダクタ電流と、を近づける。
【0007】
本願の第2発明は、第1発明のDC-DCコンバータであって、前記第1フルブリッジ回路の入力電圧に基づき、前記第1フルブリッジ回路の電圧出力期間を調整し、前記第2フルブリッジ回路の入力電圧に基づいて、前記第2フルブリッジ回路の電圧出力期間を調整する。
【0008】
本願の第3発明は、第2発明のDC-DCコンバータであって、前記制御回路は、前記第1フルブリッジ回路の出力と、前記第2フルブリッジ回路の出力とが極性反転する極性反転期間をτc、前記第1フルブリッジ回路の電圧出力期間をτ1、前記第2フルブリッジ回路の電圧出力期間をτ2、前記第1フルブリッジ回路の入力電圧をVx、前記第2フルブリッジ回路の入力電圧をVy、で表した場合、τ1、τ2、τcはラジアン表記であるとすると、(τ2-τc)Vy=(τ1-τc)Vx、を満たす、τ1、τ2に調整する
【0009】
本願の第4発明は、第1発明から第3発明のDC-DCコンバータであって、前記閾値電流は、前記等価インダクタに蓄積されるエネルギーが、2つの前記キャパシタに蓄積されるエネルギー以上となるように、設定されている。
【0010】
本願の第5発明は、第4発明のDC-DCコンバータであって、前記閾値電流をIref、前記第1フルブリッジ回路の入力電圧をVx、前記キャパシタのキャパシタンスをC、前記等価インダクタのインダクタンスをL、補正係数をαで表した場合、Iref=α・Vx√(2C/L)、を満たす。
【発明の効果】
【0011】
本願の第1発明~第5発明によれば、極性反転期間の開始タイミングのインダクタ電流と、終了タイミングのインダクタ電流と、を近づける。これにより、開始タイミングと、終了タイミングとにおけるインダクタ電流は、等しくなる。これにより、一方のタイミングでのインダクタ電流を大きくすることで、他方のタイミングでのインダクタ電流が大きくなることを抑制できる。そして、過度な電流が流れないようにして損失増大を防止し、DC-DCコンバータの電力伝送効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るDC-DCコンバータの回路図である。
【
図2】DC-DCコンバータのタイミングチャートを示す図である。
【
図3】DC-DCコンバータでの電流経路を説明するための図である。
【
図4】DC-DCコンバータでの電流経路を説明するための図である。
【
図5】DC-DCコンバータでの電流経路を説明するための図である。
【
図6】DC-DCコンバータでの電流経路を説明するための図である。
【
図7】DC-DCコンバータでの電流経路を説明するための図である。
【
図8】DC-DCコンバータでの電流経路を説明するための図である。
【
図9】
図2のV1、V2、I
Lの波形を重ねて表わした図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、本発明の「DC-DCコンバータ」について、デュアルアクティブブリッジ(DAB)コンバータ(以下、DC-DCコンバータと称す)を例に挙げて説明する。
【0014】
<1.DC-DCコンバータの回路構成>
図1は、本実施形態に係るDC-DCコンバータ1の回路図である。
【0015】
DC-DCコンバータ1は、一対の入出力端子IO11および入出力端子IO12と、一対の入出力端子IO21および入出力端子IO22と、を備えている。一対の入出力端子IO11、IO12には直流電源E1が接続されている。一対の入出力端子IO21、IO22には直流電源E2が接続されている。本実施形態では、直流電源E2の電源電圧Vyは、直流電源E1の電源電圧Vxより低い。つまり、Vx>Vyである。
【0016】
DC-DCコンバータ1は、入出力端子IO11、IO12から入力される直流電源E1の電源電圧を変圧し、入出力端子IO21、IO22から出力する。また、DC-DCコンバータ1は、入出力端子IO21、IO22から入力される、直流電源E2の電源電圧を変圧し、入出力端子IO11、IO12から出力する。つまり、DC-DCコンバータ1は、双方向に電力伝送が可能なコンバータである。
【0017】
DC-DCコンバータ1は、第1フルブリッジ回路10と、第2フルブリッジ回路20と、トランスTと、を備えている。
【0018】
トランスTは、第1巻線n1と、第2巻線n2とを備えている。第1巻線n1と第2巻線n2とは磁気結合する。第1巻線n1は、第1フルブリッジ回路10を介して、入出力端子IO11、IO12に接続されている。第2巻線n2は、第2フルブリッジ回路20を介して、入出力端子IO21、IO22に接続されている。
【0019】
第1フルブリッジ回路10は、スイッチング素子Q11とスイッチング素子Q12とが直列接続された第1レグと、スイッチング素子Q13とスイッチング素子Q14とが直列接続された第2レグと、を有している。スイッチング素子Q11、Q12、Q13、Q14には、ダイオードD11、D12、D13、D14、および、キャパシタC11、C12、C13、C14が並列に接続されている。スイッチング素子Q11~Q14はMOS-FETである。ただし、スイッチング素子Q11~Q14は、IGBTまたはJFET等であってもよい。ダイオードD11~D14は、実素子であってもよいし、寄生ダイオードであってもよい。また、キャパシタC11~C14は、実素子、寄生容量、または、寄生容量と実素子との組み合わせであってもよい。
【0020】
トランスTの第1巻線n1は、第1レグおよび第2レグそれぞれの中点に接続されている。トランスTの第1巻線n1と、第1レグの中点との間には、インダクタL1が設けられている。ただし、インダクタL1は、第1巻線n1または第2巻線n2に直列接続されていればよく、その配置場所は適宜変更可能である。例えば、インダクタL1は、第1巻線n1と第2レグの中点との間に設けられていてもよい。また、インダクタL1は、実素子、トランスTの漏れインダクタンス、または、実素子と漏れインダクタンスとの組み合わせであってもよい。
【0021】
第2フルブリッジ回路20は、スイッチング素子Q21とスイッチング素子Q22とが直列接続された第3レグと、スイッチング素子Q23とスイッチング素子Q24とが直列接続された第4レグと、を有している。スイッチング素子Q21、Q22、Q23、Q24には、ダイオードD21、D22、D23、D24、および、キャパシタC21、C22、C23、C24が並列に接続されている。スイッチング素子Q21~Q24はMOS-FETである。ただし、スイッチング素子Q21~Q24は、IGBTまたはJFET等であってもよい。ダイオードD21~D24は、実素子であってもよいし、寄生ダイオードであってもよい。また、キャパシタC21~C24は、実素子、寄生容量、または、寄生容量と実素子との組み合わせであってもよい。
【0022】
トランスTの第2巻線n2は、第3レグおよび第4レグそれぞれの中点に接続されている。前記のインダクタL1は、第2巻線n2と、第3レグまたは第4レグの中点との間に設けられていてもよい。
【0023】
スイッチング素子Q11~Q14およびスイッチング素子Q21~Q24それぞれのゲート端子は、制御回路30に接続されている。制御回路30は、DC-DCコンバータ1の出力電力が設定される目標電力となるように、スイッチング素子Q11~Q14、Q21~Q24それぞれをスイッチング制御する。本実施形態では、制御回路30は、スイッチング損失を低減するために、スイッチング素子Q11~Q14、Q21~Q24それぞれをソフトスイッチングする。
【0024】
<2.ソフトスイッチング動作について>
以下に、各スイッチング素子Q11~Q14、Q21~Q24のソフトスイッチング動作について説明する。なお、本実施の形態では、3-LEVEL方式のDAB制御が採用されている。
【0025】
DC-DCコンバータ1は、入出力端子IO11、IO12および入出力端子IO21、IO22の一方から他方、または、他方から一方への電力伝送を行う。以下では、入出力端子IO11、IO12を入力側(1次側)とし、入出力端子IO21、IO22を出力側(2次側)として説明する。
【0026】
図2は、DC-DCコンバータ1のタイミングチャートを示す図である。
図3、
図4、
図5、
図6、
図7および
図8は、DC-DCコンバータ1での電流経路を説明するための図である。
図3~
図8では、第2フルブリッジ回路20の図示は簡略し、
図1のインダクタL1およびトランスTは、等価的なインダクタLで表す。
【0027】
図2では、第1フルブリッジ回路10の各スイッチング素子Q11~Q14についてのみ、そのタイミングチャートを示す。また、
図2のV1は、
図1に示す、スイッチング素子Q11とスイッチング素子Q12との中点と、スイッチング素子Q13とスイッチング素子Q14との中点との間の電圧である。V2は、スイッチング素子Q21とスイッチング素子Q22との中点と、スイッチング素子Q23とスイッチング素子Q24との中点との間の電圧である。I
Lは、インダクタL(
図3~
図8参照)に流れるインダクタ電流である。
【0028】
制御回路30は、位相差を設けて、第1フルブリッジ回路10と、第2フルブリッジ回路20とをスイッチング制御する。以下では、第1フルブリッジ回路10と、第2フルブリッジ回路20との位相差を、δで表す。制御回路30は、第1フルブリッジ回路10および第2フルブリッジ回路20それぞれにおいて、スイッチング周波数f(周期1/f)で、フェーズシフトPWM制御を行う。
【0029】
また、以下では、第1フルブリッジ回路10の各スイッチング素子Q11~Q14についてのスイッチング制御について、説明する。第2フルブリッジ回路20については、電圧V2が、
図2に示す波形となるように、スイッチング制御され、その説明は、第1フルブリッジ回路10と同様に説明することができる。したがって、
図3~
図8では、説明を簡易にするために、第1フルブリッジ回路10側の電流経路についてのみ示す。なお、各図では、各スイッチング素子は簡略化した回路記号で示している。
【0030】
(t0~t1)
t0~t1期間では、スイッチング素子Q11、Q14がオン、スイッチング素子Q12、Q13がオフである。
【0031】
この場合、
図3に示すように、直流電源E1から、スイッチング素子Q11、インダクタL、第2フルブリッジ回路20、スイッチング素子Q14、直流電源E1の順に電流が流れる。この期間の電圧V1はHiである。
【0032】
タイミングt1では、スイッチング素子Q11がターンオフされた後、デッドタイムを挟んで、スイッチング素子Q12がターンオンされる。このデッドタイムでは、スイッチング素子Q11、Q12は共にオフとなる。このとき、インダクタLには、その性質上、インダクタ電流ILが流れ続けるため、
図4に示すように、キャパシタC11およびキャパシタC12それぞれから、インダクタLに電流が流れる。そして、キャパシタC11は
充電し、キャパシタC12は
放電される。キャパシタC12が
放電されると、スイッチング素子Q12のドレイン・ソース間電圧はゼロである。このときに、スイッチング素子Q12をターンオンすると、ZVSとなる。
【0033】
(t1~t2)
t1~t2期間では、スイッチング素子Q12、Q14がオン、スイッチング素子Q11、Q13がオフである。この場合、
図5に示すように、スイッチング素子Q14、スイッチング素子Q12からインダクタLの経路に電流が流れる。このときの電圧V1はゼロである。
【0034】
タイミングt2では、スイッチング素子Q14がターンオフされた後、デッドタイムを挟んで、スイッチング素子Q13がターンオンされる。このデッドタイムでは、
図4での説明と同様、キャパシタC14は
充電し、キャパシタC13は
放電される。キャパシタC13が
放電されることで、スイッチング素子Q13のドレイン・ソース間電圧はゼロである。このときに、スイッチング素子Q13をターンオンすると、ZVSとなる。
【0035】
(t2~t3)
t2~t3期間では、スイッチング素子Q12、Q13がオン、スイッチング素子Q11、Q14がオフである。タイミングt2で、スイッチング素子Q13をターンオンした直後は、
図6に示すように、直流電源E1、スイッチング素子Q12、インダクタL、第2フルブリッジ回路20、スイッチング素子Q13、直流電源E1の経路に電流が流れる。この電流は、直流電源E1に逆流することになり、その結果、
図7に示すように、直流電源E1、スイッチング素子Q13、第2フルブリッジ回路20、インダクタL、スイッチング素子Q12、直流電源E1の経路に電流が流れるようになる。この期間の電圧V1は、t0~t1期間と逆極性となる。
【0036】
また、タイミングt3では、スイッチング素子Q12がターンオフされた後、デッドタイムを挟んで、スイッチング素子Q11がターンオンされる。そして、
図4での説明と同様、キャパシタC12は
充電し、キャパシタC11は
放電される。そして、キャパシタC11が
放電されることで、スイッチング素子Q11のドレイン・ソース間電圧はゼロである。このときに、スイッチング素子Q11をターンオンすると、ZVSとなる。
【0037】
(t3~t0)
t3~t0期間では、スイッチング素子Q11、Q13がオン、スイッチング素子Q12、Q14がオフである。この場合、
図8に示すように、インダクタL、スイッチング素子Q11、スイッチング素子Q13の経路に電流が流れる。このときの電圧V1はゼロである。
【0038】
タイミングt0では、スイッチング素子Q13がターンオフされた後、デッドタイムが設けられて、スイッチング素子Q14がターンオンされる。そして、
図4での説明と同様、キャパシタC13は
充電し、キャパシタC14は
放電される。キャパシタC14が
放電されることで、スイッチング素子Q14のドレイン・ソース間電圧はゼロである。このときに、スイッチング素子Q14をターンオンすると、ZVSとなる。そして、
図3の状態に遷移する。
【0039】
上記のようにスイッチング制御することで、電圧V1は、
図2に示す波形のように、遷移する。また、制御回路30が、第2フルブリッジ回路20をスイッチング制御することで、電圧V2は、
図2に示す波形のように遷移する。上記のように、第1フルブリッジ回路10と、第2フルブリッジ回路20とは、位相差δでスイッチング制御されるため、電圧V1の立ち上がりと、電圧V2の立ち上がりとの位相差は、δである。
【0040】
<3.DC-DCコンバータの出力電力について>
制御回路30は、各スイッチング素子の駆動信号の位相を制御して、DC-DCコンバータ1の出力電力を制御する。
【0041】
本実施形態では、Vx>Vyである。つまり、HiのV1と、HiのV2とは、それぞれ異なる。インダクタLには、V1とV2との電圧差により電流が流れている。本実施の形態に係る制御回路30は、各スイッチング素子のZVSを可能にするため、以下の通り、この期間でのインダクタ電流ILを制御する。
【0042】
ここで、電圧V1と電圧V2とが、互いに逆極性となる極性反転期間を、τcで表す。また、第1フルブリッジ回路10の電圧出力期間を、τ1で表す。第2フルブリッジ回路20の電圧出力期間を、τ2で表す。τ1、τ2、τcは、時間を角度(ラジアン)表記したものである。
【0043】
制御回路30は、極性反転期間τcを一定に保ち、かつ、V1、V2から算出した電圧出力期間τ1、τ2を用いて、DC-DCコンバータ1からの出力電力を制御する。τ1は、第1フルブリッジ回路10の各スイッチング素子の駆動信号の位相を制御することで、変更できる。また、τ2は、第2フルブリッジ回路20の各スイッチング素子の駆動信号の位相を制御することで、変更できる。
【0044】
固定値であるτ
cは、各スイッチング素子をZVSできるように設定される。そのために、τ
cは、以下の式(1)の条件を満たす必要がある。
【数1】
【0045】
上記の式(1)において、Lは、
図3などのインダクタLのインダクタンスである。Vxは、上記のように、直流電源E1の電源電圧を(
図1参照)である。
【0046】
また、Irefは、ZVSを実現するために必要なインダクタ電流ILの電流値である。上記のように、例えば、タイミングt2のデッドタイムにおいて、キャパシタC14が充電し、キャパシタC13が放電した後に、スイッチング素子Q13のドレイン・ソース間電圧がゼロであれば、スイッチング素子Q13のターンオンはZVSとなる。つまり、インダクタLのエネルギーは、少なくとも、キャパシタC13、C14それぞれに蓄積されるエネルギー以上であれば、スイッチング素子Q13をZVSできる。このためには、以下の式(2)が成り立つ必要がある。
【0047】
式(2)において、I
LはインダクタLに流れるインダクタ電流である。Cは、キャパシタC11~C14、C21~C24それぞれのキャパシタンスである。そして、式(2)は、以下の式(3)に変換される。なお、式(3)のαは補正係数であり、必要に応じて適宜値が設定される。ここでは、α=1とする。
【数3】
【0048】
式(3)のα・Vx√(4C/L)を閾値電流Irefとする。タイミングt0、t2でのデッドタイムにおいて、|IL|≧|Iref|であれば、スイッチング素子Q13のZVSが可能となる。同様に、各スイッチング素子をターンオンするタイミングにおいて、上記の式(3)の条件を満たせば、各スイッチング素子をZVSできる。
【0049】
制御回路30は、各スイッチング素子のZVSを可能にするために、V1とV2とが互いに逆極性となる期間のインダクタ電流ILを制御する。
【0050】
図9は、
図2のV1、V2、I
Lの波形を重ねて表わした図である。
図9の破線はV1、一点鎖線はV2、実線はI
Lの波形を示す。
【0051】
図9に示すように、V1およびV2それぞれのHiとLoとが切り替わる各タイミングt4~t11では、インダクタLに流れるインダクタ電流I
Lは異なる。そして、V1とV2とが互いに逆極性となる期間t4~t5、t8~t9それぞれでは、インダクタLの両端の電圧差が最も大きいため、この期間のインダクタ電流I
Lの傾きは、他の期間の傾きより急峻である。
【0052】
この期間の開始タイミングt4、t8と、終了タイミングt5、t9とに流れる、インダクタ電流ILの向きは逆となる。タイミングt5、t9でのインダクタ電流ILは、タイミングt4、t8でのインダクタ電流ILより小さい。そして、V1およびV2それぞれのHiとLoとが切り替わる各タイミングt4~t11のなかで、タイミングt5、t9でのインダクタ電流ILが最も小さい。したがって、タイミングt5、t9でのインダクタ電流ILが、上記の式(3)の条件を満たせば、各スイッチング素子のZVSが可能となる。
【0053】
しかしながら、タイミングt5、t9でのインダクタ電流ILを大きくすると、他のタイミングでのインダクタ電流ILも大きくなり、過度な電流が流れることで、損失が増大し、DC-DCコンバータ1の電力伝送効率の低下を招く。そこで、制御回路30は、タイミングt5、t9でのインダクタ電流ILと、タイミングt4、t8でのインダクタ電流ILとを、近づける制御を行う。
【0054】
タイミングt5、t9でのインダクタ電流I
Lは、以下の式(4)で表される。
【数4】
【0055】
タイミングt4、t8でのインダクタ電流I
Lは、以下の式(5)で表される。
【数5】
【0056】
式(4)で表されるI
Lと、式(5)で表されるI
Lと、が等しくなるための条件は、以下の式(6)となる。
【数6】
【0057】
式(6)に示すように、τ1と、τ2とは、Vxと、Vyとの比に基づいて算出される。制御回路30は、τ1と、τ2が、式(6)から算出された値となり、DC-DCコンバータ1の出力電力が目標値となるように、スイッチング制御する。これにより、タイミングt5、t9でのインダクタ電流ILと、タイミングt4、t8でのインダクタ電流ILとが、等しくなり、大電流が流れることを防ぎつつ、各スイッチング素子のZVSが可能となる。この結果、大電流が流れることによる損失増大を抑制することができる。
【0058】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0059】
上記の実施形態では、Vx>Vyとして説明したが、Vx<Vyであってもよい。また、上記の実施形態において、τ1=τ2であってもよいし、τ1≠τ2であってもよく、τ1、τ2は、式(6)の条件を満たせばよい。さらに、式(6)において、左辺と右辺は完全に一致してなくてもよい。
【0060】
また、上記の実施形態では、入出力端子IO11、IO12を入力側とし、入出力端子IO21、IO22を出力側として説明した。しかしながら、DC-DCコンバータ1は双方向に電力伝送可能である。したがって、入出力端子IO11、IO12を出力側とし、入出力端子IO21、IO22を入出力側とすることが可能である。この場合、上記の実施形態と同様に説明することができため、その説明を省略する。なお、DC-DCコンバータ1は、双方向型でなくてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態または変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 :DC-DCコンバータ
10 :第1フルブリッジ回路
20 :第2フルブリッジ回路
30 :制御回路
C11、C12、C13、C14:キャパシタ
C21、C22、C23、C24:キャパシタ
D11、D12、D13、D14:ダイオード
D21、D22、D23、D24:ダイオード
E1、E2:直流電源
IL :インダクタ電流
IO11、IO12:入出力端子
IO21、IO22:入出力端子
L :インダクタ
L1 :インダクタ
Q11、Q12、Q13、Q14:スイッチング素子
Q21、Q22、Q23、Q24:スイッチング素子
T :トランス