(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20220228BHJP
【FI】
C09J175/06
(21)【出願番号】P 2017248370
(22)【出願日】2017-12-25
【審査請求日】2020-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】出原千智
(72)【発明者】
【氏名】門田昌久
(72)【発明者】
【氏名】前田諭志
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/117886(WO,A1)
【文献】特開2012-184283(JP,A)
【文献】特開2003-041230(JP,A)
【文献】国際公開第2012/144329(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0096110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 167/00,175/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを含有する接着剤であって、
下記条件(1)~(4)の全ての条件を満た
し、且つ、下記条件(5)~(7)の全ての条件をさらに満たす、接着剤。
(1)前記ポリオール成分100質量%中、数平均分子量が4000~15000であるポリエステルポリオール(A)を70質量%以上含む。
(2)ポリエステルポリオール(A)は、カルボキシル基成分100モル%中に芳香族二塩基酸成分を40~90モル%含むカルボキシル基成分と水酸基成分との反応生成物(a1)中の水酸基の一部に、酸無水物を反応させてなるもの(A1)であるか、もしくは
前記反応生成物(a1)中の水酸基の一部とジイソシアネートとの反応生成物(a2)中の水酸基の一部に、さらに酸無水物を反応させてなるもの(A2)である。
(3)前記酸無水物が、無水トリメリット酸もしくはトリメリット酸エステル無水物の少なくとも一方である。
(4)ポリイソシアネート成分が2種以上の脂肪族系ポリイソシアネート成分を含
み、前記脂肪族系ポリイソシアネート成分は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、および芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる。
(5)ポリオール成分100質量%中、数平均分子量が4000~15000であるポリエステルポリオール(A)を70~95質量%含み、数平均分子量が500~3000であるポリエステルポリオール(B)を5~30質量%を含み、
前記ポリオール成分は、ポリエステルポリオール(A)およびポリエステルポリオール(B)のみからなる。
(6)ポリエステルポリオール(B)の酸価は5mgKOH/g以下である。
(7)ポリエステルポリオール(B)は、カルボキシル基成分100モル%中に芳香族二塩基酸成分を40~70モル%含むカルボキシル基成分と水酸基成分との反応生成物(B1)であるか、もしくは前記反応生成物(B1)中の水酸基の一部とジイソシアネートとの反応生成物(B2)である。
【請求項2】
脂肪族系ポリイソシアネート成分が、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのビュレット体、イソホロンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体、キシリレンジイソシアネートのヌレート体、キシリレンジイソシアネートのビュレット体、およびキシリレンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体からなる群から選ばれる2種以上である、請求項1記載の接着剤。
【請求項3】
脂肪族系ポリイソシアネート成分が、
ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体とヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体との組合せ、または
ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体とイソホロンジイソシアネートのヌレート体との組合せ、または
キシリレンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体とイソホロンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体との組合せのいずれかである、請求項2記載の接着剤。
【請求項4】
外層側樹脂フィルム層(11)、接着剤層、金属箔層(13)、内層側接着剤層、ヒートシール層(14)がこの順に配置された積層体であって、
前記接着剤層が、請求項1~
3いずれか1項に記載の接着剤を用いてなる積層体。
【請求項5】
請求項1~
3いずれか1項に記載の接着剤を用いてなる軟包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤に関し、より詳細には食品、医療品、化粧品等の包装用積層体の形成に好適な接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医療品、化粧品等の内容物を包装する軟包装材料は、各種プラスチックフィルム同士の貼り合わせや、プラスチックフィルムと金属蒸着フィルムや金属箔との貼りあわせを、接着剤層を介して製造される積層体が利用されており、接着剤層としては主に水酸基/イソシアネート系の接着剤を用いることにより行われている。
近年、省資源、省エネルギーの観点から、軟包装材料の使用範囲は増えており、従来の金属缶容器やプラスチックボトル容器で使用されていた内容物についても、軟包装材料を使用することが多くなってきている。
例えば、特許文献1には、ポリオールと無水トリメリット酸およびトリメリット酸エステル無水物とを、無水トリメリット酸10~70質量%、トリメリット酸エステル無水物90~30質量%の割合で反応させてなる部分酸変性ポリオールならびにポリイソシアネートを含有する接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軟包装材料には、長期にわたり内容物を保管するための耐久性が必要であるほか、使い勝手の面からは、容易に開封できるように積層体の引き裂き性が必要である。
しかしながら、使用範囲の拡大により、内容物によっては、充填後や保管時にデラミネーションの発生や、破袋、引き裂き性の低下が発生するリスクが高くなってきている。
特許文献1に開示される接着剤から形成される積層体は、引き裂き性が十分ではなかった。
本発明は上記背景を鑑みてなされたものであり、接着力(初期、および内容物の充填、保管後)、引き裂き性に優れ、包装用材料として有用な積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、成されたものであって、下記[1]~[4]の接着剤に関する。
[1] ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを含有する接着剤であって、下記(1)~(4)の全ての条件を満たす接着剤。
(1)前記ポリオール成分100質量%中、数平均分子量が4000~15000であるポリエステルポリオール(A)を70質量%以上含む。
(2)ポリエステルポリオール(A)は、カルボキシル基成分100モル%中に芳香族二塩基酸成分を40~90モル%含むカルボキシル基成分と水酸基成分との反応生成物(a1)中の水酸基の一部に、酸無水物を反応させてなるもの(A1)であるか、もしくは
前記反応生成物(a1)中の水酸基の一部とジイソシアネートとの反応生成物(a2)中の水酸基の一部に、さらに酸無水物を反応させてなるもの(A2)である。
(3)前記酸無水物が、無水トリメリット酸もしくはトリメリット酸エステル無水物の少なくとも一方である。
(4)ポリイソシアネート成分が2種以上の脂肪族系ポリイソシアネート成分を含む。
【0006】
[2] 脂肪族系ポリイソシアネート成分が、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのビュレット体、イソホロンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体、キシリレンジイソシアネートのヌレート体、キシリレンジイソシアネートのビュレット体、およびキシリレンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体からなる群から選ばれる2種以上である、[1]記載の接着剤。
【0007】
[3] 脂肪族系ポリイソシアネート成分が、
ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体とヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体との組合せ、または
ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体とイソホロンジイソシアネートのヌレート体との組合せ、または
キシリレンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体とイソホロンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体との組合せのいずれかである、[2]記載の接着剤。
【0008】
[4] 下記条件(5)~(7)の全ての条件をさらに満たす[1]~[3]いずれかに記載の接着剤。
(5)ポリオール成分100質量%中、数平均分子量が4000~15000であるポリエステルポリオール(A)を70~95質量%含み、数平均分子量が500~3000ポリエステルポリオール(B)を5~30質量%を含む。
(6)ポリエステルポリオール(B)の酸価は5mgKOH/g以下である。
(7)ポリエステルポリオール(B)は、カルボキシル基成分100モル%中に芳香族二塩基酸成分を40~70モル%含むカルボキシル基成分と水酸基成分との反応生成物(B1)であるか、もしくは前記反応生成物(B1)中の水酸基の一部とジイソシアネートとの反応生成物(B2)である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の接着剤を使用することにより、接着力(初期、および内容物の充填、保管後)、引き裂き性に優れ、包装用材料として有用な積層体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の接着剤はポリオール成分とポリイソシアネート成分とを含有する。
本発明におけるポリオール成分について説明する。
ポリオール成分はポリオール成分100質量%中、ポリエステルポリオール(A)70~100質量%とポリエステルポリオール(B)0~30質量%とを含有する。
【0011】
ポリエステルポリオール(A)は、カルボキシル基成分と水酸基成分とから構成される数平均分子量4000~15000のポリエステルポリオールであって、カルボキシル基成分100モル%中に芳香族二塩基酸成分を40~90モル%含むカルボキシル基成分と水酸基成分との反応生成物(a1)中の水酸基の一部に、酸無水物を反応させてなるもの(A1)であるか、もしくは前記反応生成物(a1)中の水酸基の一部とジイソシアネートとの反応生成物(a2)中の水酸基の一部に、さらに酸無水物を反応させてなるもの(A2)である。
【0012】
カルボキシル基成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸およびそのエステル化合物などを挙げることができる。これらは単独で使用したり2種以上を併用したりできる。
【0013】
水酸基成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオールなどを挙げることができる。これらは単独で使用したり2種以上を併用したりできる。
【0014】
酸無水物としては、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物としては、エチレングリコールアンヒドロトリメリテートが挙げられる。酸無水物を反応させることを、以下酸変性ということがある。
【0015】
反応生成物(a1)中の水酸基の一部と反応させるジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。これらジイソシアネートを反応させることを、以下ウレタン変性ということがある。
【0016】
ポリエステルポリオール(A1)の数平均分子量は4000~15000であり、6000~12000であることが好ましい。また、構成成分であるカルボキシル基成分(変性用の酸無水物を除く)100モル%中、芳香族二塩基酸成分の含有量は40~90モル%であり、50~80モル%とすることが好ましい。このようなポリエステルポリオールを用いることによって、引き裂き性と耐内容物性が良好で、初期接着力が良好な軟包装材料を得ることができる。
【0017】
本発明の接着剤は、ポリオール成分100質量%中、ポリエステルポリオール(A)の他に、下記ポリエステルポリオール(B)0~30質量%を含有することができ、ポリエステルポリオール(B)を5~30質量%を含有することが好ましい。下記ポリエステルポリオール(B)を併用することによって、引き裂き性が向上する。
ポリエステルポリオール(B)は、ポリエステルポリオール(A)と同様にカルボキシル基成分と水酸基成分とから構成されるものであり、カルボキシル基成分100モル%中に芳香族二塩基酸成分を40~70モル%含むカルボキシル基成分と水酸基成分との反応生成物(B1)であるか、もしくは前記反応生成物(B1)中の水酸基の一部とジイソシアネートとの反応生成物(B2)である。
ポリエステルポリオール(B)の数平均分子量は500~3000であり、1000~2000であることが好ましい。また、酸価は5mgKOH/g以下であり、3mgKOH/gであることが好ましい。
このようなポリエステルポリオールを用いることによって、引き裂き性と初期接着力がより向上する。
【0018】
カルボキシル基成分、水酸基成分、ジイソシアネートは、ポリエステルポリオール(A)の場合に例示したものが同様に例示できる。
【0019】
質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いた。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0020】
本発明の接着剤は、ポリイソシアネート成分として2種類以上の脂肪族系ポリイソシアネート成分を含むことが重要である。2種類以上の脂肪族系ポリイソシアネート成分を含むことによって、引き裂き性、初期および内容物充填保管後の接着力が向上する。
脂肪族系ポリイソシアネート成分としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、
1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート、
1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、
上記ポリイソシアネート単量体から誘導された、ダイマー、トリマー(別名、ヌレート体)、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネートが挙げられる。
【0021】
また、以下に示す種々のグリコール成分を上記ポリイソシアネート単量体に付加させた付加体(別名、アダクト体)が挙げられる。
付加体の形成に用いられるグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3′-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子ポリオール等の付加体、或いは、分子量200~20,000のポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオール等が挙げられる。
【0022】
本発明の接着剤は、2種類以上の脂肪族系ポリイソシアネート成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、トルエンジイソシアネート、ジフェニニルメタンジイソシアネートのような芳香族系ジイソシアネートや、その誘導体もさらに含むことができる。
【0023】
本発明の接着剤には、その他、接着剤用として公知の添加剤を、主剤、即ちポリオール成分に、もしくは硬化剤、即ちポリイソシアネート成分に配合することができる。
たとえば、反応促進剤を使用することができる。
反応促進剤としては、たとえば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の反応促進剤を使用できる。
【0024】
金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、シランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤としては、たとえばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基を有するトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシジル基を有するトリアルコキシシランが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、または2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
シランカップリング剤の添加量は、ポリオール成分(A)の固形分100重量部に対し、0.1~5重量部であることが好ましく、0.2~3重量部であることがより好ましい。上記範囲のシランカップリング剤を添加することによって金属箔に対する接着強度を向上できる。
【0025】
同様に、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、リン酸又はリン酸誘導体を使用することができる。リン酸またはその誘導体の内、リン酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。また、リン酸の誘導体としては、上記のリン酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リン酸またはその誘導体は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。リン酸またはその誘導体の添加量は、接着剤の固形分を基準として0.01~10重量%であることが好ましく、0.05~5重量%であることがより好ましく、0.05~1重量%であることが特に好ましい。
【0026】
積層体の外観を向上させる目的で、公知のレベリング剤または消泡剤を、主剤に配合することもできる。レベリング剤としては、たとえば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンなどが挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物などの公知のものが挙げられる。
【0027】
本発明の接着剤を使用して得られる、軟包装材料は、例えば、通常用いられている方法により製造することができる。
たとえば、外層側樹脂フィルム層(11)と金属箔層(13)とを本発明の接着剤を用いて積層し、中間積層体を得る。次いで、内層側接着剤を用いて中間積層体の金属箔層(13)面にヒートシール層(14)を積層することができる。
あるいは、内層側接着剤を用いて金属箔層(13)とヒートシール層(14)とを積層し、中間積層体を得る。次いで、本発明の接着剤を用いて、中間積層体の金属箔層(13)と外層側樹脂フィルム層(11)とを積層することができる。
前者の場合、本発明の接着剤は、外層側樹脂フィルム層(11)もしくは金属箔層(13)いずれか一方の基材の片面に塗布し、溶剤を揮散させた後、接着剤層に他方の基材を加熱加圧下に重ね合わせ、次いで常温~100℃未満でエージングし、接着剤層を硬化するのが好ましい。100℃以上のエージングでは外層側樹脂フィルム層(11)が熱収縮することで成型に影響を及ぼす破断伸度や破断応力が低下したり、熱収縮によるカールで成型生産性が低下する。接着剤総量は、1~15g/m2程度であることが好ましい。
後者の場合も同様に、本発明の接着剤は、外層側樹脂フィルム層(11)もしくは中間積層体の金属箔層(13)面のいずれかに塗布すればよい。
【0028】
接着剤を基材に塗工する際、塗液を適度な粘度に調整するために、乾燥工程において基材への影響がない範囲内で溶剤が含まれてもよい。
溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族化合物、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール等のアルコール類、水等が挙げられる。これら溶剤は単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
本発明においてポリウレタン系接着剤を塗工する装置としては、コンマコーター、ドライラミネーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の%は総て質量%を意味する。
【0031】
また、酸価、水酸基価は以下のようにして求めた。
<酸価(AV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオール溶液)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。酸価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0032】
<水酸基価(OHV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオール溶液)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
水酸基価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)
=[{(b-a)×F×28.05}/S]+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0033】
(合成例1)ポリエステルポリオールA-1の合成
イソフタル酸425.6g(2.6mol)、アジピン酸160.4g(1.1mol)、エチレングリコール81.8g(1.3mol)、ネオペンチルグリコール228.5g(2.2mol)、1,6-ヘキサンジオール103.7g(0.88mol)、を仕込み、200~230℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.01gを添加して徐々に減圧し、1.0~2.7hPa、230~250℃で6時間加熱し、グリコール成分の一部を留去し、エステル交換反応を行い、ポリエステルポリオール中間体を得た。
次いで、得られたポリエステルポリオール中間体300gに、無水トリメリット酸4.5gを加え、160℃で2時間保持し、数平均分子量10,000、酸価8.1mg/KOHのポリエステルポリオールA-1を得た。
過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、カルボン酸成分と水酸基成分をそれぞれ100モル%とすると、得られたポリエステルポリオールA-1の組成は、表1に示すようにイソフタル酸:アジピン酸=70:30(mol%)、エチレングリコール:ネオペンチルグリコール:1,6-ヘキサンジオール=30:50:20(mol%)となる。
更にこのポリエステルポリオールを酢酸エチルにて不揮発分50%に調整し、ポリオールA-1の溶液を得た。
【0034】
(合成例2~5、7~11)
生成物が表1に示す組成(mol%)になるようにカルボン酸成分と水酸基成分とを仕込み、エステル交換反応の圧力と時間を変更する以外は合成例1と同様にして、不揮発分50%に調整し、ポリエステルポリオールA-2~5、7~11の溶液を得た。
【0035】
(合成例6)
表1に示す組成になるようにカルボン酸成分と水酸基成分とを仕込み、エステル交換反応の圧力と時間を変更する以外は合成例1と同様にして得らえたポリステルポリオール中間体500gに対して、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIという)5gを徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。
このポリエステルポリウレタンポリオール300gに、無水トリメリット酸4.5gを添加し、160℃で約2時間反応させ、酢酸エチルにて不揮発分50%に調整し、ポリオールA-6の溶液を得た。
【0036】
(合成例12)
合成例1におけるポリステルポリオール中間体を、酢酸エチルにて不揮発分50%に調整し、ポリオールA-12の溶液とした。
【0037】
【0038】
(合成例101)ポリエステルポリオールB-1の合成
テレフタル酸308.9g(1.9mol)、セバシン酸307.6g(1.5mol)、エチレングリコール109.1g(1.8mol)、ネオペンチルグリコール274.5g(2.6mol)を仕込み、200~230℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.01gを添加して徐々に減圧し、20~130hPa、230~250℃で3時間加熱し、グリコール成分の一部を留去しながら、エステル交換反応を行い、酸価1mg/KOH、分子量1500ポリエステルポリオールB-1を得た。
過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、カルボン酸成分と水酸基成分をそれぞれ100モル%とすると、得られたポリエステルポリオールB-1の組成は、表2に示すようにテレフタル酸:セバシン酸=55:45(mol%)、エチレングリコール:ネオペンチルグリコール=40:60(mol%)となる。
このポリエステルポリオールを酢酸エチルにて不揮発分50質量%に調整しポリオール溶液B-1の溶液を得た。
【0039】
(合成例102~105、107~110)
生成物が表2に示す組成になるようにカルボン酸成分と水酸基成分とを使用し、エステル交換反応の圧力と時間を変更する以外は合成例101と同様にして、不揮発分50質量%に調整し、ポリエステルポリオールB-2~B-5、B-7~10の溶液を得た。
【0040】
(合成例106)
合成例101で得られたポリエステルポリオールB-1:300gに対し、IPDI:1.5gを加え、150℃で約2時間反応を行い、不揮発分50質量%に調整し、ポリエステルポリウレタンポリオールB-6の溶液を得た。
【0041】
(合成例111)
合成例101で得られたポリエステルポリオールB-1:300gに対し、無水トリメリット酸3.6gを加え、160℃で2時間保持し、不揮発分50質量%に調整し、酸価7mg/KOHのポリエステルポリオールB-11の溶液を得た。
【0042】
【0043】
(調整例1)ポリイソシアネート溶液C-1の調整
ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(以下、HDI-ビウレットという)と、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(以下、HDI-ヌレートという)とを60:40(質量比)で混合し、酢酸エチルにて希釈し、不揮発分50質量%のポリイソシアネートC-1の溶液を得た。
【0044】
(調整例2~9、13、14)
HDIにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体(以下、HDI-TMP)、
IPDIのヌレート体(以下、IPDI-ヌレート)、
キシリレンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体(以下、XDI-TMP)、
トルエンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体(以下、TDI-TMP)
ジフェニニルメタンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体(以下、MDI-TMP)を、
それぞれ表3に示す割合にて混合し、酢酸エチルにて希釈し、不揮発分50質量%のポリイソシアネートC-2~9、13、14の溶液を得た。
【0045】
(調整例10~12)
HDI-ビウレット、HDI-TMP、IPDI-TMPをそれぞれ酢酸エチルにて希釈し、不揮発分50質量%のポリイソシアネートC-10~C-12の溶液とした。
【0046】
【0047】
(実施例1)
不揮発分50質量%のポリオールA-1溶液:100質量部、不揮発分50質量%のポリイソシアネート溶液C-1:10質量部、シランカップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび酢酸エチルを表4に示す割合(質量部)で配合し、不揮発分30質量%の接着剤溶液を得た。
得られた接着剤溶液を使用し、下記の方法で積層体を作成した後、得られた各積層体について、接着強度(初期、耐内容物試験後)、引き裂き性試験を下記の通り行った。それらの結果を表4に示す。
【0048】
(実施例2~7)、(比較例1~3)
表4に示す組成に従い、実施例1と同様にして接着剤溶液を得、同様に評価した。結果を合わせて表4に示す。
【0049】
(実施例8)
不揮発分50質量%のポリオールA-1溶液:85質量部、不揮発分50質量%のポリオールB-1溶液:15質量部、不揮発分50質量%のポリイソシアネート溶液C-1:17質量部を用いた以外は、表5に示す組成に従い、実施例1と同様にして接着剤溶液を得、同様に評価した。結果を合わせて表5に示す。
【0050】
(実施例9~29)、(比較例4~19)
表4~7に示す組成に従い、実施例1と同様にして接着剤溶液を得、同様に評価した。結果を合わせて表4~7に示す。
【0051】
(3層積層体の作成)
ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルム(厚さ12μm)/アルミニウム(以下、AL)箔(厚さ9μm)/未延伸ポリエチレン(以下、PE)フィルム(厚さ50μm、表面コロナ放電処理)の3層複合積層体を以下に記載の方法で作成した。
すなわち、PETフィルムに印刷層を設けた後、該印刷層上に接着剤溶液を常温にてPETフィルムに塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面をアルミニウム箔表面と貼り合せ、中間積層体を得た。
さらに、その中間積層体のアルミニウム箔面に同様に接着剤溶液を塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面をPEフィルムと貼り合せ、40℃で4日間保温し、3層積層体を作成した。
【0052】
(接着強度試験-初期、耐内容物性試験後)
<初期>
上記のようにして作成した3層積層体から15mm×300mmの大きさの試験片を作り、引張り試験機を用い、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、T型剥離により、剥離速度30cm/分で、AL箔/PEフィルム間のラミネート強度(N/15mm)を測定した。表4~7の数値は、5個の試験片の平均値である。ラミネート強度の実用範囲は4N/15mm以上とする。
【0053】
<耐内容物性試験後>
各々の3層積層体を使用して、9cm×13cmの大きさのパウチ(PEフィルム同士が内側に位置する)を作成し、内容物としてケチャップ、コンディショナーをそれぞれ充填した。
このパウチを60℃で2週間保存した後、内容物を空け、各パウチから試験片を切り出し、初期と同様、AL箔/PEフィルム間の接着強度(N/15mm)を測定した。
試験後のラミネート強度の実用範囲は3N/15mm以上とする。
【0054】
(引き裂き試験用積層体の作成)
ナイロン(NY)フィルム(厚さ15μm)/印刷/未延伸ポリエチレン(PE)フィルム(厚さ50μm、表面コロナ放電処理)の積層体を以下に記載の方法で作成した。
すなわち、NYフィルムに印刷層を設けた後、該印刷層上に接着剤溶液を常温で塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面をPEフィルムと貼り合せ、40℃で4日間保温し、積層体を作成した。
【0055】
(引き裂き性試験)
上記積層体の端部にカッターで切れ目を入れ、手で引き裂いた際の引き裂きやすさで評価を行った。
(評価基準)
◎:抵抗なく引き裂ける
〇:若干抵抗はあるが引き裂ける
△:PEフィルムの伸びが若干あるが何とか引き裂ける
△×:引き裂き始めおよび/または途中で明らかなPEフィルムの伸びを生じる。
×:全く引き裂けない
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】