(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】折り畳み可能な箱
(51)【国際特許分類】
B65D 6/18 20060101AFI20220228BHJP
B65D 6/14 20060101ALI20220228BHJP
B65D 25/28 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
B65D6/18 D
B65D6/14 C
B65D25/28 107
(21)【出願番号】P 2016107150
(22)【出願日】2016-05-30
【審査請求日】2019-05-08
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】392030324
【氏名又は名称】株式会社アパックス
(74)【代理人】
【識別番号】100098741
【氏名又は名称】武蔵 武
(72)【発明者】
【氏名】町野 智彦
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】塩治 雅也
【審判官】石井 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-2524(JP,A)
【文献】特開2003-62917(JP,A)
【文献】特開2010-260246(JP,A)
【文献】特開2008-37475(JP,A)
【文献】実開昭50-4073(JP,U)
【文献】特開2004-358702(JP,A)
【文献】特開昭51-125595(JP,A)
【文献】特開平6-135440(JP,A)
【文献】特開平8-337243(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0365587(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 6/18
B65D 6/14
B65D25/28
B31F 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも側板と底板で囲われた上面開口状の箱本体と、
前記箱本体の上部外側に設けられた把手部材と、
前記把手部材の下部に前記側板側に向けて突設されると共に下面にテーパ面を有する爪片と、
前記箱本体の下部に固定的に設けられていて前記爪片に係合し得る引掛孔を有する受板と、を備え、
前記箱本体は、前記側板を起立させた組立状態と、その側板をヒンジ部によって揺動又は折曲させてほぼ扁平形態に高さを低くした折畳状態と、に変形可能であり、
一方、前記把手部材の爪片は、前記箱本体が組立状態から折畳状態に変化するとき前記テーパ面が前記受板の上端面に当接しそのテーパ面のテーパに沿って外方に開いて前記引掛孔に到達し得るようになっており、
さらに前記受板は、二枚の合成樹脂製の基板間に合成樹脂製の芯部材を貼り合わせるか又は一体成形してなるプラスチック段ボール製であって前記芯部材の向きが上下方向に向かう向きに設定されている折り畳み可能な箱において、
前記受板の前記上端面の少なくとも前記爪片が当接する部位に、
外側の前記基板
又は内側の前記基板を前記爪片のテーパ面と対向する向きに曲げてなる爪受部を設け
て、前記箱本体が組立状態から折畳状態に変化するとき、前記把手部材の前記爪片を前記爪受部で前記外側の基板の外面に誘導するようにしたことを特徴とする折り畳み可能な箱。
【請求項2】
前記受板の爪受部は、プラスチック段ボールの外側の基板と内側の基板の夫々を厚さの中央に向けて湾曲させた断面略半円状であることを特徴とする請求項1記載の折り畳み可能な箱。
【請求項3】
前記側板は、二枚の合成樹脂製の基板間に合成樹脂製の芯部材を貼り合わせるか又は一体成形してなるプラスチック段ボールで形成され、
前記ヒンジ部は、前記プラスチック段ボールの一方の基板を他方の基板に向けて熱変形させたV溝状の熱罫線であることを特徴とする請求項1又は2に記載の折り畳み可能な箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側板を起立させた組立状態から、その側板を揺動又は折曲させてほぼ扁平形態に高さを減少させた折畳状態とに変形させ得る折り畳み可能な箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の折り畳み可能な箱100は、
図11、
図12に示したように、側板101a~101dと底板102で囲われた上面開口直方体形状の箱本体103と、箱本体103の上部外側に設けられた二個一対の把手部材104,104と、その把手部材104,104の下部に側板101a,101c側に向けて突設されると共に下面にテーパ面105を有する爪片106と、箱本体103の下部に固定的に設けられていて把手部材104の前記爪片106に係合し得る引掛孔107を有する受板108と、を備えている(特許文献1参照)。
【0003】
前記箱本体103は、
図12(a)に示したように側板101a~101dを起立させた組立状態と、同図(b)に示したように側板101a~101dをヒンジ部109a~109dによって揺動又は折曲させてほぼ扁平形態に高さを減少させた折畳状態と、に変形可能になっている。図示した側板101a~101dは、対向する一組の側板101a,101cが上部のヒンジ部109aを中心として蹴り上げ状態に揺動自在で、残りの側板101b,101dが上下のヒンジ部109b,109cと高さ方向の中央のヒンジ部109dとで内向きくの字状に折曲し得るようになっており、折畳状態では、側板101a,101cがヒンジ部109aを中心として略水平状態に揺動し、側板101b,101dがヒンジ部109b,109c,109dを中心として二つ折り状態に折曲して底板102上に折り重なる。
【0004】
なお、箱本体103を構成する側板101a~101dと底板102は、二枚の合成樹脂製の基板110a,110b間に合成樹脂製の芯部材110cを貼り合わせるか又は一体成形してなるいわゆるプラスチック段ボール110で形成されており、各側板101a~101dの上縁に、水平方向に連続する角筒の底面にプラスチック段ボール110挿通用の開口部を設けてなるモール部材111,111…が装着され、さらにそのモール部材111,111…同士の端部が、平面視L字形のコーナージョイント112,112…で連結されている。
【0005】
一方、前記把手部材104は、側板101a,101cに対応するモール部材111のほぼ中央に側板101a,101cと一緒に装着されている。この把手部材104の下部両端には、前記のように側板101a,101c側に向けて一対の鉤状の爪片106が設けられているのであって、箱本体103が
図12(a)の組立状態から同図(b)の折畳状態に変化するとき、
図12(a)に想像線で示したように爪片106のテーパ面105が受板108の上端面108tに当接し、そのテーパ面105のテーパに沿って爪片106が外方に押されて最終的に引掛孔107に係合する。このように把手部材104の爪片106が引掛孔107に係合することで箱本体103の上部(モール部材111)と下部(受板108)が連結されて折畳状態が維持され、この状態から把手部材104を強制的に外方に押し広げて爪片106を引掛孔107から外すことで箱本体103を組立状態に変化させることができる。
【0006】
しかして把手部材104の爪片106が係合する受板108は、プラスチック段ボール110製の底板102の両端を直角上向きに熱変形させたものであり、芯部材110cが受板108の上下方向に向かうようにプラスチック段ボール110の向きが設定されている。プラスチック段ボール110の引張り強度は、その構造上、芯部材110cの向きに直交する方向より芯部材110cの向きに沿う方向の方が大きいため、プラスチック段ボール110の向きと受板108の関係を前記のように設定することで、爪片106の引掛に対する受板108の強度を最大にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した折り畳み可能な箱100は、組立状態にして部品等の荷物を運搬し、コンパクトな折畳状態に変形させて回送する、というように繰り返し利用可能なコンテナとして長期間使用される。
本出願人は、そのような箱100の製造・販売・メンテナンスを永年行っているが、メンテナンスを行う中で、長期間使われた箱100は、受板108の上端から引掛孔107に至る部分のプラスチック段ボール110の傷みが激しく、その部位の劣化が他の部位の劣化に比べて大きいことが確認できた。
その理由として、次のようなことが考えられる。
まず、箱本体103を折り畳むとき把手部材104の爪片106は、受板108の上端面108tにテーパ面105が当接し、その後、プラスチック段ボール110の外側の基板110aに摺接して引掛孔107に到達し係合する。
プラスチック段ボール110の外側の基板110aは、上端に爪片106のテーパ面105が当たる度にその衝撃で芯部材110c側に撓み、さらに爪片106が下に移動する間、芯部材110cに向けた内向きの力を受け続け、爪片106が引掛孔107に係合するとその力から解放される、という衝撃と変形のサイクルを長期間に亘って繰り返す。
これによりプラスチック段ボール110の外側の基板110aに亀裂等が発生するなどして劣化する。
【0009】
本発明は上記に鑑みなされたもので、その目的は、耐久性に優れた折り畳み可能な箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため本発明は、
少なくとも側板と底板で囲われた上面開口状の箱本体と、
前記箱本体の上部外側に設けられた把手部材と、
前記把手部材の下部に前記側板側に向けて突設されると共に下面にテーパ面を有する爪片と、
前記箱本体の下部に固定的に設けられていて前記爪片に係合し得る引掛孔を有する受板と、を備え、
前記箱本体は、前記側板を起立させた組立状態と、その側板をヒンジ部によって揺動又は折曲させてほぼ扁平形態に高さを低くした折畳状態と、に変形可能であり、
一方、前記把手部材の爪片は、前記箱本体が組立状態から折畳状態に変化するとき前記テーパ面が前記受板の上端面に当接しそのテーパ面のテーパに沿って外方に開いて前記引掛孔に到達し得るようになっており、
さらに前記受板は、二枚の合成樹脂製の基板間に合成樹脂製の芯部材を貼り合わせるか又は一体成形してなるプラスチック段ボール製であって前記芯部材の向きが上下方向に向かう向きに設定されている折り畳み可能な箱において、
前記受板の前記上端面の少なくとも前記爪片が当接する部位に、外側の前記基板又は内側の前記基板を前記爪片のテーパ面と対向する向きに曲げてなる爪受部を設けて、前記箱本体が組立状態から折畳状態に変化するとき、前記把手部材の前記爪片を前記爪受部で前記外側の基板の外面に誘導するようにした折り畳み可能な箱を提供する。
【0011】
また、請求項2に記載したように、前記受板の爪受部は、プラスチック段ボールの外側の基板と内側の基板の夫々を厚さの中央に向けて湾曲させた断面略半円状である請求項1記載の折り畳み可能な箱を提供する。
【0012】
また、請求項3に記載したように、前記側板は、二枚の合成樹脂製の基板間に合成樹脂製の芯部材を貼り合わせるか又は一体成形してなるプラスチック段ボールで形成され、
前記ヒンジ部は、前記プラスチック段ボールの一方の基板を他方の基板に向けて熱変形させたV溝状の熱罫線である請求項1又は2に記載の折り畳み可能な箱を提供する。
ここで「V溝状の熱罫線」とは、プラスチック段ボールに一方の基板側から加熱した断面V字状の成形刃を押し付け、当該一方の基板と中の芯部材とをほぼ溶融状態に軟化させて直線状のV溝を形成し、そのV溝の底の薄い部分から折り曲げ得るようにしたものをいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明の折り畳み可能な箱は以上のように構成されているため、組立状態にある箱本体を折り畳むとき、爪片のテーパ面が、まず受板の爪受部に当接する。この受板の爪受部は、プラスチック段ボールの基板を爪片のテーパ面と対向する向きに曲げてなるものであって、その曲げ自体によって爪片から受ける力に対する剛性が向上し、しかも基板の端面に爪片が直に当たらないため、爪片が勢いよく繰り返し当たっても、プラスチック段ボールが受けるダメージは比較的小さい。したがって、従来、ほかの部位に比べて傷みやすかった受板の上端から引掛孔に至る部分が傷み難くなるため、折り畳み可能な箱の耐久性が向上する。
【0014】
また、請求項2に記載したように、受板の爪受部を断面略半円状に形成することにより、爪片のテーパ面が爪受部のアールに載って円滑に摺動するため、爪受部に加えられる爪片からの負荷がさらに軽減される。
【0015】
また、請求項3に記載したように、側板をプラスチック段ボールで形成し且つ折り畳みのためのヒンジ部をV溝状の熱罫線で形成した場合には、ヒンジ部を一方の基板を残して他方の基板と芯部材を切断するいわゆるハーフカットの切断線で形成した場合に比べて、切れ目無く上下方向に連続する二枚の基板が側板に加わる引張荷重を一緒に支えるため、重い荷物にも対応可能な箱が提供できる。
一方、ヒンジ部をV溝状の熱罫線で形成した場合には、V溝の谷の部分で二枚の基板が重なっていることから基板一枚のヒンジ部に比べて柔軟性に劣るため、折畳状態から組立状態に戻ろうとする復元力が生じやすい。そのため、把手部材の爪片と受板の引掛孔との係合による折畳状態のロックがきわめて有効であり、したがって側板のヒンジ部を熱罫線にした上記効果と、請求項1又は2による受板の爪受部と把手部材の爪片による上記効果とにより、強度と耐久性に優れた折り畳み可能な箱が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図6】組立状態と折畳状態の中間の状態を示す
図2のX-X矢示方向に相当する箱の断面図である。
【
図10】(a)、(b)は側板と底板の連結部分を示す部分断面図である。
【
図11】従来の折り畳み可能な箱を示す斜視図である。
【
図12】従来の折り畳み可能な箱を示すもので、(a)は組立状態を示す要部の断面図、(b)は折畳状態を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
実施形態の箱1は、図示したように、長方形の側板2a~2dと長方形の底板3で囲われた上面開口直方体形状の箱本体4と、箱本体4の上部外側に設けられた二個一対の把手部材5,5と、各把手部材5,5の下部両端に側板2a,2c側に向けて突設されると共に下面に弧状のテーパ面6aを有する爪片6と、箱本体4の下部に固定的に設けられていて把手部材5の爪片6に係合し得る引掛孔7を有する受板8と、を備えている。
【0018】
[箱本体]
箱本体4は、
図1~
図3に示したように側板2a~2dを起立させた直方体形状の組立状態と、
図4、
図5に示したように側板2a~2dをヒンジ部9a~9d(その詳細は後述する。)によって揺動又は折曲させて全高を低くした折畳状態と、に変形可能になっている。
箱本体4は、主要構成要素たる側板2a~2dと底板3が、図示したように二枚の合成樹脂(例えばポリプロピレン)製の基板10a,10b間に合成樹脂製で仕切り状の芯部材10cを一体成形してなる断面略梯子状の周知のプラスチック段ボール10で形成されている。なお、プラスチック段ボール10は、二枚の基板10a,10bと波板状の芯部材10cを別々に成形し、その基板10a,10b間に芯部材10cを貼り合わせるようにしたものでもよい。
【0019】
[側板]
前記側板2a~2dは、対向する一組の側板2a,2cが、上部のヒンジ部9aを中心として蹴り上げ状態に揺動自在に形成され(以下、側板2a,2cを「揺動側板2a,2c」ともいう。)、残りの一組の側板2b,2dが、上下のヒンジ部9b,9cと高さ方向の中央のヒンジ部9dとで内向きくの字状に折曲し得るように形成されている(以下、側板2b,2dを「折曲側板2b,2d」ともいう。)。そして、
図4、
図5の折畳状態では、揺動側板2a,2cがヒンジ部9aを中心として略水平状態に揺動すると共に、残りの折曲側板2b,2dがヒンジ部9b~9dを中心として二つ折り状態に折れ曲がり、その状態で底板3上に折り重なっている。
【0020】
側板2a~2dは、前記のように二枚の合成樹脂製の基板10a,10b間に合成樹脂製の芯部材10cを一体成形してなるプラスチック段ボール10で形成されており、その向きは、箱本体4が組立状態にあるとき芯部材10cが上下方向に向かうように設定されている。なお、
図7の分解斜視図において符合11は、組立状態のときの揺動側板2a,2cの座屈強度を高めるために、その揺動側板2a,2cの両横の縁に取り付けられた断面コ字状の合成樹脂製又は金属製の補強帯である。また、符合12は、揺動側板2a,2cの下端を外向きほぼ直角に熱変形させて形成した係止片であり、前記受板8に形成された側板係止孔14に係合して組立状態の揺動側板2a,2cと受板8とを連結するものである。
【0021】
各側板2a~2dの上部は、一方の基板10a又は10bを残して切断したいわゆるハーフカットのヒンジ部9eで下向きの折返し部15が形成されており、その折返し部15で二重になった上縁に、水平方向に連続する合成樹脂製の角筒の底面にプラスチック段ボール10挿通用の開口部16を設けた形状のモール部材17,17…が装着され、さらにそのモール部材17,17…同士の端部が、平面視L字形のコーナージョイント18,18…で連結されている。
【0022】
[底板]
前記底板3は、
図7の分解斜視図に示したように二枚の底構成板3a,3bを接着剤で接着したものであって、各底構成板3a,3bは、それぞれのプラスチック段ボール10の芯部材10c同士が直交するように互いの向きが設定されており、底構成板3aの両端に前記折曲側板2b,2dが一体に連設され、また、底構成板3bの両端に直角上向きの受板8が熱変形により形成されている。なお、
図7の分解斜視図は、作図の便宜上、底構成板3a,3bが上下逆に配置されているのであって、実際は折曲側板2b,2dと一体の底構成板3aの上に、受板8と一体の底構成板3bが貼り付けられている。
【0023】
[ヒンジ部]
前記揺動側板2a,2cを揺動させ又折曲側板2b,2dを折曲させるヒンジ部9a~9dは、プラスチック段ボール10の一方の基板10a又は10b側から加熱した成形刃(図示せず)を押し付け、当該基板10a又は10bと中の芯部材10cとをほぼ溶融状態に軟化させつつ他方の基板10b又は10aに向けてV溝状に熱変形させたいわゆる熱罫線である。したがってヒンジ部9a~9dは、基板10a,10bが共に切断されずに連続し露出する切り口もない点でプラスチック段ボール10の基板10a又は10bの一方が切断されて切り口が露出するハーフカットのヒンジ部とは異なる。
【0024】
[把手部材]
前記把手部材5は、揺動側板2a,2cの上部中央に形成された凹状の切欠部19(
図7参照)に後述する取付部20が嵌まった状態で、その揺動側板2a,2cと一緒にモール部材17のほぼ中央に装着されている。
把手部材5は、合成樹脂の成形品であって、
図8に示したように、上半部を構成する取付部20と、下半部を構成する把手本体部21と、から構成される。
【0025】
上半部を構成する取付部20は、上記した折返し部15で二つ折りになっている揺動側板2a,2cの上縁と断面略同形状のモール内嵌部22と、そのモール内嵌部22の下端後方に形成された上向きの鉤片23と、からなり、揺動側板2a,2cの前記切欠部19に嵌まった状態で前記モール内嵌部22と、揺動側板2a,2cの折返し部15を含む上縁とが形状的に連続する。したがって、取付部20のモール内嵌部22が揺動側板2a,2cの切欠部19を埋める状態でモール部材17の内部に抜けない状態に収まる。
【0026】
下半部を構成する把手本体部21は、上半部のモール内嵌部22の下端に外向き水平に突設された連接部24を介して連設されており、その下部両端に、下面に弧状のテーパ面6aを有する鉤状の爪片6が、揺動側板2a,2c側に向けて突設されている。
この把手本体部21は、爪片6の外側を含む全体がほぼ凹凸のない滑らかな形状になっていて、両端から爪片6の外側にかけて緩やな面取り部25(実施形態はアール状の面取りになっているが、テーパ状の面取りでもよい。)が形成されている。そうすることにより、例えば隙間無く平置きされている多数の同じ箱1,1…の中から一つの箱1を、把手部材5を有するモール部材17と平行な方向に移動させる際、外側に張り出す把手部材5が隣接する他の箱1の把手部材5に衝突する事態に至っても、面取り部25,25同士がすり合って互いの滑らかな外面に乗り上げて衝突を回避するため、把手部材5が他の箱1の把手部材5に引っ掛かって動かせない、という事態に至らない。なお、把手部材5は、前記取付部20のモール内嵌部22とモール部材17の嵌め合いに僅かな遊びを設けると共にモール内嵌部22後方の鉤片23とモール部材17の間にも僅かな遊びを設けて若干のガタツキが生じるようになっており、その遊びによって上記衝突回避の動作がより円滑に行われるようになっている。また、このガタツキによる把手部材5のモール部材17に対する回動が大きくなり過ぎた場合には、上半部の前記鉤片23がモール部材17の下辺に引っ掛かることにより過回動を抑制するようになっている。
【0027】
[受板]
受板8は、前記のように底構成板3bの両端を直角上向きに熱変形させたものであり、したがって箱本体4の底板3に固定的に設けられている。受板8は、底構成板3bと一体であって言うまでもなくプラスチック段ボール10製であり、その向きは前記芯部材10cが上下方向に向かうように設定されている。
受板8は、箱本体4を折畳状態にしたときその上端面8tが前記モール部材17の下縁に近接する高さに設定されており、その折畳状態のときの把手部材5の爪片6に対応する位置に引掛孔7が貫設されている。なお、この引掛孔7と、前記側板係止孔14は、縦に並んだ状態にして受板8に設けられている。
【0028】
また、受板8には、上端面8tの少なくとも前記爪片6が当接する部位に爪受部26が設けられている。この爪受部26は、プラスチック段ボール10の基板10a又は10bを爪片6のテーパ面6aと対向する向きに曲げたものであり、具体的には、プラスチック段ボール10の外側の基板10aと内側の基板10bの夫々を芯部材10cと共にほぼ溶融状態に軟化させると共に厚さの中央に向けて成形用の型で湾曲させ、そのまま硬化させて断面略半円状に成形してなる。なお、受板8の上端面8tの全てを爪受部26と同形状に成形してももちろんよい。
【0029】
実施形態の折り畳み可能な箱1は、以上な構成を有するため、
図1~
図3の組立状態から揺動側板2a,2cをヒンジ部9aを中心に
図2想像線のように蹴り上げ方向に揺動させ、さらに
図6のように折曲側板2b,2dをヒンジ部9b~9dを中心にくの字状に折り曲げて最終的に
図4、
図5の折畳状態に変形させ、また、その逆を辿って折畳状態から組立状態に変形させ得る。
【0030】
しかして、箱1を組立状態から折畳状態に変化させるとき、
図2の想像線に示したように爪片6のテーパ面6aが受板8の爪受部26に当接し、さらに爪片6がテーパ面6aのテーパと爪受部26の曲面に沿って外方に移動して最終的に
図5のように引掛孔7に係合する。このように把手部材5の爪片6が引掛孔7に係合することで箱本体4のモール部材17と受板8が近接位置で連結されるため折畳状態が確実に維持され、逆にこの状態から把手部材5を強制的に外方に押し広げて把手部材5の爪片6を引掛孔7から抜くことで箱本体4を組立状態に変化させることができる。
【0031】
なお、実施形態の箱1のヒンジ部9a~9dは、V溝状の熱罫線で形成されていて二枚の基板10a,10bが重なっているため、一枚の基板10a又は10bで支えるハーフカットのヒンジ部に比べて柔軟性に劣る。したがって折曲側板2b,2dに折畳状態から組立状態に戻ろうとする復元力が生じやすいため、把手部材5の爪片6と受板8の引掛孔7との係合による折畳状態のロックがほぼ必須であり、受板8に爪受部26を設けて得られる利益、すなわち受板8の耐久性が向上する利益、惹いては箱1の耐久性が向上する利益はきわめて大きい。
【0032】
ところで実施形態の箱1は、上記のように揺動側板2a,2cの下端に設けた係止片12を受板8に穿設された側板係止孔14に係合させることによって揺動側板2a,2cと受板8とを連結し、そうして揺動側板2の起立姿勢を維持するようにしている。そのため組立状態において揺動側板2a,2cが不用意に揺動しないようにするため、係止片12と側板係止孔14に次のような抜け止め手段が施されている。
【0033】
まず、
図9、
図10(a),(b)に拡大して示したように、受板8の側板係止孔14は四角く切り込まれているが、その縦辺14aがプラスチック段ボール10の芯部材10cと芯部材10cの間を通るように設定されており、したがって側板係止孔14は、左右方向の横幅が基板10a,10bの開口部分の横幅(以下「間口幅」という。)より芯部材10cに対応する奥の方が広くなっている。
一方、係止片12には、その先端から受板8を構成するプラスチック段ボール10のほぼ厚さ相当の長さ分だけ揺動側板2a,2c側に入った位置に係止段部27が形成されるように両横に係止翼片28が延設されており、したがって全体として係止片12の横幅は側板係止孔14の間口幅より大きくなっている。この係止翼片28は、プラスチック段ボール10の基板10a,10bで翼のような状態に形成されているため、プラスチック段ボール10の面方向には撓みやすく、一方、芯部材10cの長さ方向には撓みにくい、つまり前記係止段部27が側板係止孔14の縁に引っ掛かると抜けにくい。
【0034】
揺動側板2a,2cの係止片12と受板8の側板係止孔14は、以上のように形成されているため、係止片12が側板係止孔14に入るときには係止片12の係止翼片28が適度に撓んで一方の基板10a又は10bを通過し、係止翼片28が芯部材10cの空間に入るとプラスチック段ボール10の弾性により元に戻る。したがって係止片12は、上下二枚の係止翼片28の係止段部27が、側板係止孔14の縁に基板10a又は10bの内側から引っ掛かるため抜けにくい。
一方、係止片12の先端は、反対側の基板10b又は10aにぎりぎり到達するか或は若干外部に突出する程度であって外部から押されにくい。
斯かる係止片12と側板係止孔14の抜け止め手段によって、実施形態の箱1は、組立状態において揺動側板2a,2cが不用意に揺動し難いようになっている。
【0035】
以上の実施形態には、次のような技術的思想が含まれている。
「少なくとも側板と底板で囲われた上面開口状の箱本体と、
前記箱本体の下部に固定的に設けられた受板と、を備え、
前記箱本体は、前記側板を起立させた組立状態と、前記側板をヒンジ部によって蹴り上げ方向に揺動させてほぼ扁平形態に高さを低くした折畳状態と、に変形可能であり、
一方、前記受板は、前記揺動可能な側板の下端に設けた爪状の係止片を、その側板が起立状態のときに受け入れる側板係止孔を有するものであり、
さらに少なくとも前記受板及び揺動可能な前記側板は、二枚の合成樹脂製の基板間に合成樹脂製の芯部材を貼り合わせるか又は一体成形してなるプラスチック段ボール製であって前記芯部材の向きが前記組立状態のときに上下方向に向かうように設定されている折り畳み可能な箱において、
前記受板の側板係止孔は、その縦辺がプラスチック段ボールの芯部材と芯部材の間を通るように設定されており、
一方、前記係止片には、先端側両横に前記基板による上下二枚の係止翼片を延設することにより、その先端から前記受板のほぼ厚さ相当の長さ分だけ側板側に入った位置に係止段部が形成されるようにしたことを特徴とする折り畳み可能な箱。」
【0036】
以上本発明を実施の形態について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば実施形態では、全てのヒンジ部9a~9dをV溝状の熱罫線で形成したが、これらの全部又は一部をハーフカットの罫線で形成してもよい。
また、実施形態では揺動側板2a,2cと折曲側板2b,2dの組合せにより箱本体4を折り畳み得るようにしたが、例えば揺動側板2a,2cも折曲側板2b,2dと同様の折曲構造にするなど、折り畳むための構造はどのようなものであってもよい。
また、実施形態では、爪片6のテーパ面6aを弧状にしたが平面状であってもよい。さらにまた、実施形態では、爪受部26を断面略半円状に形成したが、三角の屋根形にするなどしてもよい。
また、実施形態では、箱本体4が上面開口状になっているが、かかる開口に開閉自在な蓋を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 …箱
2a~2d …側板
3 …底板
4 …箱本体
5 …把手部材
6 …爪片
6a …テーパ面
7 …引掛孔
8 …受板
8t …上端面
9a~9d …ヒンジ部
10 …プラスチック段ボール
10a,10b …基板
10c …芯部材
26 …爪受部