(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】情報記録装置、時刻特定装置、時刻特定システム、及び時刻特定方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/91 20060101AFI20220228BHJP
H04N 5/76 20060101ALI20220228BHJP
B62J 99/00 20200101ALI20220228BHJP
【FI】
H04N5/91
H04N5/76
B62J99/00
(21)【出願番号】P 2016203008
(22)【出願日】2016-10-14
【審査請求日】2019-07-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】道関 隆国
(72)【発明者】
【氏名】田中 亜実
【審査官】鈴木 順三
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-110117(JP,A)
【文献】特開2009-022018(JP,A)
【文献】特開2009-267445(JP,A)
【文献】特開2004-282471(JP,A)
【文献】特開2005-142975(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145493(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/76 - 5/956
B62J 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送を受信する受信部と、
記憶部と、
前記受信部により受信された放送の信号から放送データを取得するとともに所定の時系列データを取得し、同一の時点で取得された前記時系列データと前記放送データとを対応付けた状態で、前記時系列データと前記放送データとを前記記憶部に記憶させる制御部と、を備え、
前記受信部、前記記憶部、及び前記制御部が
、前記時系列データを発生させる運動エネルギーにより発電する発電機からの電力で作動する、情報記録装置。
【請求項2】
前記運動エネルギーは、車両における車輪の回転により発生するものであり、
前記時系列データは、前記発電機の出力信号を用いて求められる前記車両の速度データである、請求項
1に記載の情報記録装置。
【請求項3】
前記放送データは、アナログ放送から取得される、請求項1又は2に記載の情報記録装置。
【請求項4】
放送を受信する受信部と、
記憶部と、
受信した放送の信号から放送データを取得するとともにこの放送データを放送時刻と対応付けた状態で前記記憶部に記憶させ、請求項1~
3のいずれか1項に記載の情報記録装置から外部放送データとして提供された、前記情報記録装置により記録された放送データと、前記記憶部に記憶された前記放送データとを照合して前記外部放送データの放送時刻を特定する制御部と、を備えていることを特徴とする時刻特定装置。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の情報記録装置と、
前記情報記録装置により記録された放送データが外部放送データとして提供される請求項
4に記載の時刻特定装置と、を備えている、時刻特定システム。
【請求項6】
放送を受信するステップと、
前記放送の信号から放送データを取得するステップと、
前記放送データを放送時刻と対応付けて記憶部に記録するステップと、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の情報記録装置から外部放送データをとして提供された、前記情報記録装置により記録された放送データと、前記記録するステップによって前記記憶部に記憶された前記放送データとを照合するステップと、
前記外部放送データと一致する前記放送データに対応付けられた放送時刻を特定するステップと、を含む時刻特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列データとともにその発生時刻を記録するために用いられる情報記録装置に関し、さらに、時刻特定装置、時刻特定システム、及び時刻特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因となり得る二酸化炭素の排出量問題や健康意識の高まり等のため、自動車の利用を控え自転車を利用する人が増えている。その一方で、自転車による事故も目立ち始め、その規模も次第に大きくなってきている。
自転車による事故の原因は、安全の不確認、一時不停止や信号無視等の交通ルールの不遵守が主であるが、これに加えてスピードの出し過ぎかが事故の大規模化に到る一因となっている。そのため、事故後の検証にあたっては、事故が生じたときの自転車のスピードを把握することが非常に重要となる。
【0003】
自転車のスピードを検出する車速センサは、従来より広く一般に普及している。例えば、従来の車速センサには、車輪のスポークに取り付けられる磁石と、フロントフォークに取り付けられる磁気センサと、ハンドルの近傍等に取り付けられる表示部とを備え、磁気センサが単位時間当たりに磁石を検出する回数(すなわち回転数)から自転車の速度を求め、その速度を表示部に表示させるものがある(下記特許文献1参照)。しかし、この速度センサは、走行中の自転車のスピードを検出することができるものの、事故が発生したとき等の自転車のスピードを事後的に把握することはできない。また、磁気センサに電力を供給するためにバッテリが必要であり、利用者自身がバッテリ残量を管理しなければならないので管理が不十分になり易く、バッテリ切れのため必要なときに速度センサが機能していない可能性が高くなる。
【0004】
以上のような問題を解消するため、本願の発明者は、事故が発生したとき等に事後的に自転車の速度を把握することができ、しかもバッテリを不要とする自転車用の車速情報記録装置を従前に提案している(特許文献2参照)。
この技術は、自転車の車輪の回転で発電する発電機によって交流電力を生成し、その交流電力を整形部で整形し、整形した出力信号から求められる車速情報を記憶部に記録するものである。そのため、事故等が発生したときに記憶部に記録された車速情報から自転車に車速を事後的に把握することができ、発電機の電力によって整形部や記憶部を機能させることができる点で有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-55930号公報
【文献】特開2015-212108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自転車による事故が発生した場合、その時点又はその前後の自転車の速度だけでなく事故が発生した時刻が事故後の検証等のために有効な情報となる。しかしながら、特許文献2に記載された技術は、自転車の車速を把握することができるだけで、時刻についての定量的な情報を事後的に把握することができない。
【0007】
なお、時刻の情報を外部から取得可能な既知の技術として、標準電波から時刻情報を取得する電波時計や、カーナビゲーションに用いられるGPS等が存在するが、定期的な時刻補正のために時刻の提供が停止してしまうことがある。また、電力供給されてから実際に時刻を取得できるまである程度の時間が必要である。そのため、特許文献2のような走行時のみに電力が供給される車速情報記録装置に適用した場合、事故発生時等の特定の時点で時刻を取得できないことがある。
【0008】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、時系列データを記録するとともに、その時系列データを取得した時刻に関する情報をも取得することができる情報記録装置を提供し、併せて時刻特定装置、時刻特定システム、及び時刻特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る情報記録装置は、
放送を受信する受信部と、
記憶部と、
前記受信部により受信された放送の信号から放送データを取得するとともに所定の時系列データを取得し、同一の時点で取得された前記時系列データと前記放送データとを対応付けた状態で、前記時系列データと前記放送データとを前記記憶部に記録させる制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
ここで、放送とは、公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信をいう。放送は、日本全国又は特定の地域において音声又は映像等の情報を広く同時に伝達する手段として用いられるため、異なる場所で同一時刻に同一内容の放送を受信することができる。したがって、情報記録装置に記録した放送データと同一内容の放送データを、異なる場所において同一時刻に記録することができる。そのため、情報記録装置に所定の時系列データとともに所定の放送データを記録しておき、この放送データを、別の場所で放送時刻とともに記録された同一の放送データと照合することによって、情報記録装置に記録された放送データの放送時刻を事後的に特定し、放送データの取得時点に対応付けられた時系列データの取得時刻を取得することが可能となる。
【0011】
(2)前記放送データは、アナログ放送から取得されることが好ましい。
アナログ放送は、簡単な受信回路によって受信することができる。したがって、受信部を簡素な構造で安価に構成することができる。
【0012】
(3)前記時系列データは、前記放送データの一部と対応付けて前記記憶部に記憶されることが好ましい。
放送データ、例えば音声データは、再現するためにその周波数の2倍のサンプリング周波数でサンプリングしなければならない。一方、時系列データ、例えば自転車の走行速度のようなデータは、微小時間(例えば数msオーダー)でそれほど大きく変化しないため、音声データに比べて小さいサンプリング周波数でサンプリングすることができる。上記のように、より数の少ない(取得間隔の長い)時系列データを、より数の多い(取得間隔の短い)放送データの一部に対応付けることによって、放送データの取得時刻から時系列データの取得時刻をも特定することができる。
【0013】
(4)前記制御部は、前記放送データのチャンネル情報を取得するとともに、前記放送データと同一の時点で取得された前記チャンネル情報を、当該放送データと対応付けた状態で前記記憶部に記憶させることが好ましい。
このような構成によって、情報記録装置に記録された放送データを別の場所で取得された同一の放送データと照合する際に、チャンネル情報をもとにして迅速な処理を行うことが可能となる。
【0014】
(5)前記受信部、前記記憶部、及び前記制御部が、前記時系列データを発生させる運動エネルギーにより発電する発電機からの電力で作動することが好ましい。
このような構成によって、放送の受信、時系列データ及び放送データの取得、及び記憶部への記録等の動作のために別途バッテリを備える必要がなく、バッテリ切れのために必要な時系列データ及び放送データが記録されなくなるという不都合を回避することができる。また、放送は、発電機の起動後まもなく受信することができるので、時系列データの取得時刻を特定するために放送データを用いることがより有効となる。
【0015】
(6)前記運動エネルギーは、車両における車輪の回転により発生するものであり、前記時系列データは、前記発電機の出力信号を用いて求められる前記車両の速度データであることが好ましい。
このような構成によって、車両の走行に伴って発電機を起動することができ、起動後すぐに車両の速度データを取得することができる。
【0016】
(7)前記車両は、自転車であることが好ましい。
このような構成によって、自転車の速度データを適切に取得することができる。
【0017】
(8)本発明の時刻特定装置は、
放送を受信する受信部と、
記憶部と、
受信した放送の信号から放送データを取得するとともにこの放送データを放送時刻と対応付けた状態で前記記憶部に記憶させ、外部から提供された外部放送データを、前記記憶部に記憶された放送データとを照合して前記外部放送データの放送時刻を特定する制御部と、
を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明の時刻特定装置は、例えば、前述の情報記録装置によって記録された放送データが外部放送データとして提供されたとき、この外部放送データと、時刻特定装置の記憶部に記録された放送データと照合し、外部放送データに一致する放送データの放送時刻を外部放送データの放送時刻として特定することができる。したがって、外部放送データの放送時刻から、情報記録装置に記録された時系列データの取得時刻をも特定することが可能となる。
【0019】
(9)本発明の時刻情報取得システムは、
上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の情報記録装置と、
前記情報記録装置により記録された放送データが外部放送データとして提供される上記(8)に記載の時刻特定装置と、を備えていることを特徴とするものである。
このような構成によって情報記録装置の記憶部に記録された放送データを、時刻特定装置の記憶部に記録された放送データと照合し、情報記録装置の記憶部に記録された放送データの放送時刻及び時系列データの取得時刻を特定することが可能となる。
【0020】
(10)本発明の時刻特定方法は、
放送を受信するステップと、
前記放送の信号から放送データを取得するステップと、
前記放送データを放送時刻と対応付けて記憶部に記録するステップと、
外部から提供された外部放送データを、記憶された放送データとを照合するステップと、
前記外部放送データと一致する放送データに対応付けられた放送時刻を特定するステップと、を含むものである。
【0021】
本発明の時刻特定方法は、例えば、前述の情報記録装置によって記録された放送データが外部放送データとして提供されたとき、この外部放送データを、記憶部に記録された放送データと照合し、外部放送データに一致する放送データの放送時刻を外部放送データの放送時刻として特定することができる。したがって、外部放送データの放送時刻から、情報記録装置に記録された時系列データの取得時刻をも特定することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の情報記録装置によれば、時系列データを記録するとともに、その時系列データを取得した時刻に関する情報をも取得することができる。
本発明の時刻特定装置及び方法によれば、外部から提供された外部放送データの放送時刻を特定することができる。
本発明の時刻特定システムによれば、情報記録装置に記録された放送データの放送時刻を特定し、当該放送データに対応付けられた時系列データの取得時刻を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る時刻特定システムの概略的な構成図である。
【
図3】情報記録装置が搭載される自転車の側面図である。
【
図4】(a)は、制御部で取得された速度と自転車の走行時間との関係を示すグラフ、(b)は、自転車の速度に対応させて受信した放送の音声信号の波形図である。
【
図5】速度データと音声データとのサンプリング周期を比較して示す図である。
【
図6】情報記録装置の記憶部に記録された各種データのデータ構造を示す説明図である。
【
図7】情報記録装置に速度データ及び放送データを記録する手順を示すフローチャートである。
【
図8】時刻特定装置のサーバコンピュータの構成を示すブロック図である。
【
図9】サーバコンピュータの記憶部に記録された各種データのデータ構造を示す説明図である。
【
図10】処理装置と時刻特定装置との処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る時刻特定システムの概略的な構成図である。
時刻特定システムは、情報記録装置1と、時刻特定装置2とを備えている。そして、本実施形態の時刻特定システムは、自転車の走行速度を取得するとともに、その速度を取得した時刻を事後的に特定するために用いられる。
【0025】
[情報記録装置の構成]
図2は、情報記録装置1の構成図である。
情報記録装置1は、所定の時系列データと放送データとを記録するレコーダにより構成されている。情報記録装置1は、発電機10、AC-DCコンバータ11、整形部12、制御部13、記憶部14、及び受信機15を備えている。
本実施形態の発電機10は、自転車の車輪の回転によって発電するものである。例えば発電機10は、
図3に示すように、自転車20の照明器具21を点灯させるために発電するものが兼用されており、前輪22のハブ23に内蔵されている。また、情報記録装置1の他の構成も前輪22のハブ23に内蔵されていてもよい。
【0026】
発電機10は、図示しないコイルと磁石とを備えており、車輪22の回転に伴ってコイルと磁石とを相対回転させ、コイル内を通る磁束を変化させることによって誘導起電力を発生させる交流発電機(ハブダイナモ)とされている。具体的に、発電機10は、車輪22の一回転当たりに複数個(例えば、15個)のパルスを有する交流電圧を出力する。そのため、発電機10が出力する電圧信号の周波数と車輪22の回転数との間には比例関係がある。発電機10が電圧信号は、電力供給ラインAと信号伝送ラインBとに分岐して出力される。
【0027】
図2に示すように、AC-DCコンバータ11は、発電機10から電力供給ラインAを介して出力された交流電圧を、安定化した直流電圧に変換する。具体的に、AC-DCコンバータ11は、交流を直流に整流するダイオードブリッジ等の整流回路や、直流の電圧を安定化させるレギュレータ等を含む安定化回路を備えている。そして、AC-DCコンバータ11によって所定の電圧で安定化された電力は、それぞれ整形部12、制御部13、記憶部14、及び受信機15に供給され、これらを作動させる。したがって、整形部12、制御部13、記憶部14、及び受信機15は、自転車20が走行しているときのみ作動する。
【0028】
整形部12は、信号伝送ラインBを介して発電機10で生成された電圧の交流信号が供給され、ダイオード等からなる整流素子によって交流を直流に全波整流し、さらに全波整流された直流をシュミットトリガインバータ等のインバータ回路により交流のデジタル信号に変換するパルス変換器によって構成されている。そして、整形部12は、発電機10のアナログ信号から変換されたデジタル信号を制御部13に出力する。車輪22の一回転当たり複数個(例えば15個)のパルスは、整形部12における整流素子で全波整流されることによって倍の数のパルスに変換される。
【0029】
制御部13は、整形部12から出力されたパルス信号から自転車20の速度データを取得し、記憶部14に記録する。整形部12の出力信号は発電機10が出力する電圧信号と同期し、発電機10の電圧信号の周波数は車輪22の回転数と比例している。したがって、整形部12の出力信号の周波数及び周期を用いて自転車20の速度を求めることができる。具体的に、自転車20の速度Vは、車輪22の半径をr、一回転当たりのパルス数をN、パルスの周期をTとしたとき、次の式によって求めることができる。
V=2πr/(N×T)
【0030】
図4(a)は、制御部13で求められた速度と自転車20の走行時間との関係を示す。
制御部13は、一定の期間に求められた複数の速度を移動平均することで記憶部14に書き込むことができる時系列の速度データを得る。本実施形態では、制御部13は、20ms毎に求められた速度を50個、移動平均することで時系列の速度データを得ており、得られた速度データを周期100ms毎(サンプリング周波数10kHz)に記憶部14に記憶させる。
図6は、情報記録装置1の記憶部14に記録された各種データのデータ構造を示す説明図である。
図6の例では、速度データS
1,S
2,S
3,S
4は、サンプリング周期毎の取得時間(取得時点)t
1,t
2,…で取得され記憶部14に記録されている。
【0031】
このように、記憶部14には、自転車20の速度データが記録されるので、記憶部14に記録された速度データを参照することによって自転車20の速度を事後的に把握することが可能となっている。
【0032】
記憶部14は、MRAM(磁気抵抗メモリー)等の不揮発性のメモリーによって構成されている。したがって、情報を記録するときには電力供給が必要であるが、電力供給が行われていない状態でも記録された情報を保持可能である。また、記憶部14は、記録できる容量に限りため、当該容量を超える記録要求があった場合には、古い情報から消去して新たな情報を記録(上書き)するように制御部13によって記録制御される。
【0033】
記憶部14は、SDメモリーカード等のフラッシュメモリーやその他のメモリーを採用することができる。また、記憶部14として、可搬型の媒体を用いることができ、この場合、自転車20から取り外し可能に構成してもよい。ただし、誰でもが容易に設置場所を把握し取り外すことができないように、自転車20のフレーム内やサドル内等に設けることが好ましい。
【0034】
図2に示すように、受信機(受信部)15は、放送局50(
図1参照)から送信された放送を受信する。本実施形態では、AM放送局又はFM放送局から放送されるアナログラジオ放送の音声信号を受信する。
図4(b)は、自転車の速度(
図4(a)参照)に対応させて受信した放送の音声信号の波形図である。アナログラジオ放送は、ほぼ日本全国においていずれかの放送局50から受信することができ、受信するための回路構成も簡素である。したがって、安価に受信機15を構成することができる。また、受信機15は、音声信号の信号強度に基づいて放送局(チャンネル)を選択する機能(チューニング機能)を有している。具体的に、受信機15は、最も信号強度が強い放送局を選択し、そのチャンネルデータとともにアナログの音声信号を制御部13に出力する。受信したチャンネルデータによって受信した地域をある程度特定することが可能となる。
【0035】
制御部13は、受信機15から出力されたアナログの音声信号をデジタルの音声信号(音声データ)に変換する。具体的に、制御部13は、アナログの音声信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングし、離散データであるデジタルの音声データを取得する。本実施形態では、10kHzのサンプリング周波数(0.1msのサンプリング周期)でデジタル音声データを取得する。
【0036】
図6に示すように、取得された音声データ(放送データ)は、サンプリング周期毎の取得時間t
1,t
11,t
12,…,t
2、t
21,t
22,…で取得され記憶部14に記録される。同様に、チャンネルデータも、音声データの一部と同一の取得時間t
1,t
4,…で取得され記憶部14に記録される。なお、チャンネルデータは、頻繁に切り替わることがないため、音声データのサンプリング周期よりも長い周期で取得される。例えば、チャンネルデータは、1秒の周期で取得される。これによって、記憶部14に記憶されるデータ量を少なくすることができる。
【0037】
図5は、速度データと音声データ(放送データ)とのサンプリング周期を比較して示すグラフである。音声データV
1,V
11,V
12…,V
2は、少なくとも一部の取得時間t
1,t
2が速度データS
1,S
2の取得時間と一致している。音声データのサンプリング周期Tsは速度データのサンプリング周期Tvよりも短いため、速度データの数は音声データの数よりも少なくなる。そして、全ての速度データS
1,S
2が音声データV
1,V
2と同一の時点で取得されるように両データの取得時間が同期されている。
以上より、記憶部14には、速度データS
1,S
2とチャンネルデータC
1とが、それぞれ同一の時点で取得された音声データV
1,V
2と対応付けられた状態で記録される。
【0038】
図7は、情報記録装置1に速度データ及び音声データ(放送データ)を記録する手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS1において自転車20が走行を開始すると、発電機10が発電を開始する。発電機10によって発電された電力は、
図2に示すように、AC-DCコンバータ11を介して整形部12、制御部13、記憶部14、及び受信機15に供給される(ステップS2)。
【0039】
発電機10で生成された交流信号は、整形部12でデジタル信号に変換されて制御部13に出力され、制御部13において速度データが取得される(ステップS3)。
一方、受信機15では、ラジオ放送のチャンネルが選択されたのちに音声信号が受信される(ステップS4)。そして、受信された音声信号は、制御部13に出力され、制御部13において音声データが取得される(ステップS5)。
【0040】
その後、ステップS6において、速度データと音声データとが記憶部14に記録される。
したがって、自転車20の走行中に事故等が発生したときは、記憶部14に記憶された速度データを用いることで事故の際又はその前後の自転車20の速度を把握することが可能となる。そして、次に説明する時刻特定装置2によって自転車20の速度が記録された時刻(日時)を特定することが可能となる。
【0041】
自転車20の速度が記録(取得)された時刻を特定するため、
図1に示すように、情報記録装置1の記憶部14に記録された各種データは、パーソナルコンピュータ等の処理装置31に取り込まれる。例えば、記憶部14が可搬型である場合には、情報記録装置1から取り外した記憶部14を処理装置31に接続し、各種データが処理装置31に取り込まれる。また、処理装置31は、公衆通信網としてのインターネット32を経由して外部のコンピュータ、特に、時刻特定装置2のサーバコンピュータ41にデータ通信可能に接続される。
【0042】
[時刻特定装置]
時刻特定装置2は、
図1に示すように、受信機(受信部)42とサーバコンピュータ41とを備えている。受信機42は、情報記録装置1における受信機42と同様に放送を受信する。本実施形態では、AM放送局又はFM放送局から放送されるアナログラジオ放送の音声信号を受信する。また、受信機42は、全国又は特定の地域における全てのチャンネルの音声信号を受信する。受信機42は、チャンネルデータとともに受信した放送の音声信号をサーバコンピュータ41に出力する。
【0043】
図8は、時刻特定装置2のサーバコンピュータ41の構成を示すブロック図である。サーバコンピュータ41は、受信機42から出力されたアナログの音声信号をデジタルの音声信号(音声データ)に変換する制御部43を備えている。制御部43は、アナログの音声データを所定のサンプリング周波数でサンプリングし、離散データであるデジタルの音声データを取得する。本実施形態では、前述した情報記録装置1で取得される音声データと同様に、10kHzのサンプリング周波数でデジタル音声データを取得する。
【0044】
また、サーバコンピュータ41は、デジタル音声データを記録する記憶部14を備えている。制御部43は、取得した音声データを記憶部14に記録させる。また、制御部43は、放送時刻と対応付けた状態で音声データを記憶部44に記憶させる。放送時刻は、例えばサーバコンピュータ41が備えている時計から取得することができる。また、外部から正確な時刻を取得し、記憶部44に記憶させてもよい。
【0045】
制御部43は、チャンネル毎に放送時刻と音声データとを記憶部44に記録させる。
図9は、サーバコンピュータ41の記憶部44に記録された各種データのデータ構造を示す説明図である。
図9の例では、チャンネルC
1の音声データV
A1,V
A2,V
A3…が放送時刻T
A1,T
A2,T
A3…と対応付けられた状態で記憶されている。
【0046】
サーバコンピュータ41の制御部43は、外部から与えられた音声データ(以下、「外部音声データ」ともいう)を、記憶部44に記録した音声データと照合(マッチング)する処理と、外部音声データと一致する音声データから外部音声データの放送時刻を特定する処理とを行う。本実施形態では、処理装置31から送信された音声データ、すなわち情報記録装置1に記録された音声データが外部音声データとしてサーバコンピュータ41に受信され、制御部43が上記の照合処理と、時刻特定処理とを実行するように構成されている。
【0047】
図10は、処理装置31と時刻特定装置2との処理の流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS11において、処理装置31によってチャンネルデータとともに外部音声データが時刻特定装置2のサーバコンピュータ41へ送信される。そして、ステップS21において、サーバコンピュータ41によって外部音声データ及びチャンネルデータが受信される。
【0048】
サーバコンピュータ41の制御部43は、処理装置31から受信したチャンネルデータに対応する音声データの中から、外部音声データと一致するものを探索する(ステップS22)。制御部43は、記憶部44に記録された音声データの中に外部音声データと一致するものが見つかると、その放送データに対応する放送時刻を特定する(ステップS23)。
その後、サーバコンピュータ41の制御部43は、処理装置31へ放送時刻データを送信する(ステップS24)。処理装置31は、サーバコンピュータ41の制御部43から送信された放送時刻データを受信し(ステップS12)、その放送時刻データを速度データに対応付ける処理を行う(ステップS13)。
【0049】
したがって、本実施形態においては、情報記録装置1において、速度データとともに音声データを記録し、音声データを用いることによって速度データを記録した時刻を特定することができる。そのため、例えば、自転車20の走行中に事故が起きた場合には、そのときの自転車20の速度だけでなくその時刻をも把握することができる。速度やその時刻のデータは、事故の状況を示す重要な証拠となり、警察による検証作業や、事故当事者の過失割合等の判断するうえでの材料として用いることができる。
【0050】
本実施形態では、速度データを取得(記録)した時刻を得るために、アナログラジオ放送を受信している。アナログラジオ放送は、ほぼ日本全国で受信することが可能である。したがって、情報記録装置1も日本全国で利用可能である。また、アナログラジオ放送を受信する受信機15の回路は、デジタル放送を受信する回路よりも簡素な構成であり、復調処理も短時間で行うことができる。また、受信機15に電力が供給されると即座にアナログラジオ放送を受信することができる。そのため、自転車20が走行を開始した後、即座に放送データを取得することができる。したがって、自転車20の走行中における特定の時点の放送データをもれなく取得することが可能となる。
【0051】
[他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において変更することができる。
例えば、情報記録装置1の記憶部14に記録される時系列データは、速度データに限らず、時間の経過に伴って取得されるものであれば特に限定されない。例えば、監視カメラ等のカメラによって撮影された動画データであってもよい。
【0052】
発電機10は、前輪のハブ以外の場所に設けられていてもよい。また、発電機10は、照明器具を点灯させるものでなくてもよい。
また、記憶部14には、速度データだけでなく、自転車20の運転に関する他の情報を併せて記録してもよい。
【0053】
放送は、アナログ放送に限らずデジタル放送であってもよく、また、放送は、音声に限らず映像の送信であってもよい。また、放送は、無線による送信に限らず、有線による送信であってもよい。ただし、無線による放送を用いることによって屋外を移動する車両等に好適に情報記録装置を適用することができる。
【0054】
情報記録装置1は、自転車20以外の車両に設けられるものであってもよい。また、情報記録装置1は、車両以外の移動体や建物等の不動産に設けられるものであってもよい。また、情報記録装置1は、発電機10からの給電によって動作するものに限らず、バッテリ(一次電池又は二次電池)や商用交流電源からの給電で動作するものであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 :情報記録装置
2 :時刻特定装置
10 :発電機
13 :制御部
14 :記憶部
15 :受信機(受信部)
42 :受信機(受信部)
43 :制御部
44 :記憶部