(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】超音波ソナー装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/52 20060101AFI20220228BHJP
G01S 15/96 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
G01S7/52 E
G01S15/96
(21)【出願番号】P 2017189206
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174757
【氏名又は名称】岡田 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 重雄
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和樹
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-166698(JP,A)
【文献】特開昭60-115884(JP,A)
【文献】実開平01-093580(JP,U)
【文献】特開昭55-126876(JP,A)
【文献】特開2015-042947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 5/30
G01S 7/52 - 7/64
G01S 15/00 - 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載され、1つの方向に送信される超音波の送信方向を変化させながら、
所定の範囲にわたり水中の探知を行う超音波ソナー装置であって、
超音波を水中に送信し、その反射波を受信可能な振動子と、
その振動子を駆動してその振動子における超音波の送受信可能な方向を変化させる駆動手段と、
を備え、
その駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を第1方向に変化させ、前記振動子より超音波を送信
し、
前記振動子により前記第1方向に超音波を送信した後、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を第2方向に変化させ、前記振動子より超音波を送信
し、
前記振動子により前記第2方向に超音波が送信された後、前記第1方向において前記所定の範囲の場所からの反射波が帰来するより前に、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を前記第1方向に変化させ、前記振動子により前記所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信
し、
前記振動子により前記第1方向の反射波を受信した後、前記第2方向において前記所定の範囲の場所からの反射波が帰来するより前に、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を前記第2方向に変化させ、前記振動子により前記所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する
、ことを特徴とする超音波ソナー装置。
【請求項2】
前記
振動子により
前記第2方向に超音波が送信された後
、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を第3方向に変化させ、前記振動子より超音波を送信
し、
前記
振動子により
前記第3方向に超音波が送信された後
、前記第2方向において前記所定の範囲の場所からの反射波が帰来するより前に、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を前記第2方向に変化させ、前記振動子により前記所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信
し、
前記
振動子により前記第2方向の反射波を受信した後、前記第3方向において前記所定の範囲の場所からの反射波が帰来するより前に、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を前記第3方向に変化させ、前記振動子により前記所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する
、ことを特徴とする請求項1に記載の超音波ソナー装置。
【請求項3】
前記振動子による前記第3方向への超音波の送信は、前記
振動子により
前記第2方向に超音波が送信されてから前記第1方向の反射波を受信した後
に行う、ことを特徴とする請求項2に記載の超音波ソナー装置。
【請求項4】
前記
振動子により前記第1方向の反射波を受信した後
、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を新たな第1方向に変化させ、前記振動子より超音波を送信
し、その後、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を、それまで超音波が送信された前記第2方向のうち直近に送信された前記第2方向に変化させ、前記振動子により前記所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信し、
前記振動子により前記第2方向の反射波を受信した後
、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を新たな第2方向に変化させ、前記振動子より超音波を送信
し、その後、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を
、それまで超音波が送信された前記第1方向のうち直近に送信された前記第1方向に変化させ、前記振動子により前記所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する、ことを特徴とする請求項1記載の超音波ソナー装置。
【請求項5】
前記振動子が前記第1方向に送信する超音波の周波数と、
前記振動子が前記第2方向に送信する超音波の周波数とが非同一であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の超音波ソナー装置。
【請求項6】
前記船舶からの位置とその位置からの反射波の強度に基づく探知結果とを視認可能に示した探知画像を表示する表示手段を備え、
その表示手段は、
前記所定の範囲内の位置における探知結果を、対応する位置からの反射波の強度に基づいて表示する一方、前記所定の範囲外の位置を、前記探知結果を表示する表示態様とは異なる表示態様で表示することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の超音波ソナー装置。
【請求項7】
前記所定の範囲は、前記振動子からの距離が所定の距離の範囲であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の超音波ソナー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に搭載され、1つの方向に送信される超音波の送信方向を変化させながら、特定範囲にわたり水中の探知を行う超音波ソナー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波の送受信によって水中の魚群などの探知対象物を探知する装置の一種として超音波ソナー装置が広く知られている(例えば、特許文献1)。超音波ソナー装置は、船舶の船底などに配置される振動子から細いビーム状の超音波を送信(照射)し、そのビーム状の超音波の反射波を振動子が受信するように構成されている。1回の超音波の送受信で、その船舶の全周囲360度のうち1つの方向における所定角度範囲を探知することができる。
【0003】
また、超音波ソナー装置は超音波を送受信する振動子のチルト角(俯角)及びスキャン角(方位角)を自由に変更できる機構を有している。超音波ソナー装置は、例えば、振動子のチルト角を設定した状態で、その振動子のスキャン角を変化させることで、自船を中心として所定角度毎に振動子を回転させながら超音波の送受信を順次行い、結果としてあらかじめ設定された範囲にわたって水中を探知している。このようにして行われる水中の探知結果は、探知画像として順次表示装置に表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した超音波ソナー装置は、ある1つの方向を探知方向として探知する際に、振動子により超音波を送信してから所定の探知距離の反射エコーが帰来するまでの間、振動子をその方向に指向させている。このため、超音波ソナー装置によって自船からの距離が遠い位置を探知距離とした場合、全周囲360度の探知を行うには、長い時間がかかってしまう。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、距離が遠い位置の探知に要する時間を短縮することができる超音波ソナー装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために請求項1記載の超音波ソナー装置は、船舶に搭載され、1つの方向に送信される超音波の送信方向を変化させながら、所定の範囲にわたり水中の探知を行うものであって、超音波を水中に送信し、その反射波を受信可能な振動子と、その振動子を駆動してその振動子における超音波の送受信可能な方向を変化させる駆動手段と、を備え、その駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を第1方向に変化させ、前記振動子より超音波を送信し、前記振動子により前記第1方向に超音波を送信した後、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を第2方向に変化させ、前記振動子より超音波を送信し、前記振動子により前記第2方向に超音波が送信された後、前記第1方向において前記所定の範囲の場所からの反射波が帰来するより前に、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を前記第1方向に変化させ、前記振動子により前記所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信し、前記振動子により前記第1方向の反射波を受信した後、前記第2方向において前記所定の範囲の場所からの反射波が帰来するより前に、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を前記第2方向に変化させ、前記振動子により前記所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する。
【0008】
請求項2記載の超音波ソナー装置は、請求項1記載の超音波ソナー装置において、前記振動子により前記第2方向に超音波が送信された後、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を第3方向に変化させ、前記振動子より超音波を送信し、前記振動子により前記第3方向に超音波が送信された後、前記第2方向において前記所定の範囲の場所からの反射波が帰来するより前に、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を前記第2方向に変化させ、前記振動子により前記所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信し、前記振動子により前記第2方向の反射波を受信した後、前記第3方向において前記所定の範囲の場所からの反射波が帰来するより前に、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を前記第3方向に変化させ、前記振動子により前記所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する。
【0009】
請求項3記載の超音波ソナー装置は、請求項2記載の超音波ソナー装置において、前記振動子による前記第3方向への超音波の送信は、前記振動子により前記第2方向に超音波が送信されてから前記第1方向の反射波を受信した後に行う。
【0010】
請求項4記載の超音波ソナー装置は、請求項1記載の超音波ソナー装置において、前記振動子により前記第1方向の反射波を受信した後、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を新たな第1方向に変化させ、前記振動子より超音波を送信し、その後、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を、それまで超音波が送信された前記第2方向のうち直近に送信された前記第2方向に変化させ、前記振動子により前記所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信し、前記振動子により前記第2方向の反射波を受信した後、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を新たな第2方向に変化させ、前記振動子より超音波を送信し、その後、前記駆動手段により前記振動子における超音波の送受信可能な方向を、それまで超音波が送信された前記第1方向のうち直近に送信された前記第1方向に変化させ、前記振動子により前記所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する。
【0011】
請求項5記載の超音波ソナー装置は、請求項1から4のいずれかに記載の超音波ソナー装置において、前記振動子が前記第1方向に送信する超音波の周波数と、前記振動子が前記第2方向に送信する超音波の周波数とが非同一である。
【0012】
請求項6記載の超音波ソナー装置は、請求項1から5のいずれかに記載の超音波ソナー装置において、前記船舶からの位置とその位置からの反射波の強度に基づく探知結果とを視認可能に示した探知画像を表示する表示手段を備え、その表示手段は、前記所定の範囲内の位置における探知結果を、対応する位置からの反射波の強度に基づいて表示する一方、前記所定の範囲外の位置を、前記探知結果を表示する表示態様とは異なる表示態様で表示する。
【0013】
請求項7記載の超音波ソナー装置は、請求項1から6のいずれかに記載の超音波ソナー装置において、前記所定の範囲は、前記振動子からの距離が所定の距離の範囲である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の超音波ソナー装置によれば、船舶に搭載され、駆動手段により振動子が駆動されると、振動子から水中に対して1つの方向に送信される超音波の送信方向が変化する。振動子から送信された超音波は、魚等の探知対象物や海底(湖底)等により反射され、その反射波が振動子にて受信される。
【0015】
上記超音波ソナー装置では、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を第1方向に変化させ、振動子が超音波を送信する。次いで、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を第2方向に変化させ、振動子が超音波を送信する。次いで、第1方向において所定の範囲の場所からの反射波が帰来するより前に、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を第1方向に変化させ、振動子が所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する。次いで、第2方向において所定の範囲の場所からの反射波が帰来するより前に、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を第2方向に変化させ、振動子が所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する。
【0016】
これにより、第2方向において超音波を送信後、所定の範囲の場所からの反射波が帰来する前に、振動子は第1方向で超音波を送受信可能な方向を向く。そして、第1方向において所定の範囲の場所からの反射波が到達すると、振動子はそれを受信することができる。また、第2方向において所定の範囲の場所からの反射波が帰来する前に、振動子は第2方向で超音波を送受信可能な方向を向く。よって、第2方向においても所定の範囲の場所からの反射波を受信することができる。従って、第2方向における反射波を受信するために待機する時間を第1方向における反射波を受信することに使用することができるため、探知に要する時間を短縮することができる。即ち、第1方向において超音波を送信してから第2方向において反射波を受信し終えるまでの時間を短縮することができる。よって、距離が遠い位置の探知に要する時間を短縮することができるという効果がある。
【0017】
請求項2記載の超音波ソナー装置によれば、請求項1記載の超音波ソナー装置の有する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を第2方向に変化させ、振動子が超音波を送信した後、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を第3方向に変化させ、振動子が超音波を送信する。振動子が第3方向に超音波を送信した後、第2方向において所定の範囲の場所からの反射波が帰来するより前に、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を第2方向に変化させ、振動子が所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する。そして、第2方向の反射波を受信した後、第3方向において所定の範囲の場所からの反射波が帰来するより前に、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を第3方向に変化させ、振動子が所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する。
【0018】
これにより、第3方向において超音波を送信した後、所定の範囲内の場所からの反射波が帰来する前に、振動子は第2方向で超音波を送受信可能な方向を向く。そして、第2方向において所定の範囲の場所からの反射波が到達すると、振動子はそれを受信することができる。次いで、第3方向において所定の範囲の場所からの反射波が帰来する前に、振動子は第3方向で超音波を送受信可能な方向を向く。よって、第3方向においても所定の範囲の場所からの反射波を受信することができる。従って、第3方向における反射波を受信するために待機する時間を第2方向における反射波を受信することに使用することができるため、探知に要する時間を短縮することができる。即ち、第1方向において超音波を送信してから第2方向において反射波を受信し終えるまでの時間を短縮することができることに加えて、第2方向において超音波を送信してから第3方向において反射波を受信し終えるまでの時間を短縮することができる。つまり、第1方向において超音波を送信してから第3方向において反射波を受信し終えるまでの時間を短縮することができるという効果がある。
【0019】
請求項3記載の超音波ソナー装置によれば、請求項2記載の超音波ソナー装置の有する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、第2方向に超音波を送信してから第1方向の反射波を受信した後、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を第3方向に変化させ、振動子が超音波を送信する。つまり、第3方向に超音波を送信するのは、第2方向に超音波を送信し、第1方向の反射波を受信した後となる。換言すると、第2方向に超音波が送信されてから、第3方向に超音波が送信されるまでの間に、第1方向の反射波を受信するための時間が設けられる。
【0020】
これによって、第1方向の反射波を受信する前に第3方向に超音波を送信する場合よりも、第1方向の反射波を受信するための時間の分だけ、第3方向の反射波を受信し始める時間を遅らせることができる。よって、第2方向の反射波を受信し始めてから第3方向の反射波を受信し始めるまでの時間を長くすることができ、第2方向の反射波を受信することができる時間を長くすることができる。即ち、反射波を受信する所定の範囲を長くできるという効果がある。
【0021】
また、第2方向の反射波の受信が終わった後、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を第3方向に変化させ始めるまでの時間に新たな方向に超音波を送信するような構成とすることもできる。そうすることで、第3方向の反射波の受信が終わるのを待って、新たな方向に超音波を送信する必要がなくなる。従って、第3方向の反射波の受信が終わってから、新たな方向の反射波を受信し始めるまでの時間を短縮することができるという効果がある。
【0022】
請求項4に記載の超音波ソナー装置によれば、請求項1記載の超音波ソナー装置の有する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、振動子が第1方向の反射波を受信した後、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を新たな第1方向に変化させ、振動子により超音波を送信する。その後、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を、それまで超音波が送信された第2方向のうち直近に送信された第2方向に変化させ、振動子により所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する。また、振動子が第2方向の反射波を受信した後、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を新たな第2方向に変化させ、振動子により超音波を送信する。その後、駆動手段が振動子における超音波の送受信可能な方向を、それまで超音波が送信された第2方向のうち直近に送信された第2方向に変化させ、振動子により所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する。
【0023】
これにより、第1方向で反射波を受信した後、第2方向で反射波を受信する前に、新たな第1方向へ超音波を送信することができ、更に、第2方向で反射波を受信した後、新たな第1方向で反射波を受信する前に、新たな第2方向へ超音波を送信することができる。また、新たな第1方向で反射波を受信した後、新たな第2方向で反射波を受信する前に、別の新たな第1方向に超音波を送信することができ、更に、新たな第2方向で反射波を受信した後、別の新たな第1方向で反射波を受信する前に、別の新たな第2方向へ超音波を送信することができる。即ち、第1方向又は第2方向のどちらか一方だけが反射波の受信を待機している状態になると、待機している方向とは別の方向に超音波が送信される。そして、これが交互に繰り返される。そのため、超音波が送信されて、常に反射波の受信を待機している方向が存在する。つまり、一の方向に送信した超音波の反射波が帰来するまでの待機時間を使って、先に別方向で送信した超音波の反射波を受信することにより、反射波の受信を待機していない状態に伴う時間の損失をなくすことができる。その結果、特定範囲にわたり水中の探知を行う際に要する時間を短縮することができるという効果がある。
【0024】
請求項5記載の超音波ソナー装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の超音波ソナー装置の有する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、振動子が第1方向に送信する超音波の周波数と、振動子が第2方向に送信する超音波の周波数とが非同一である。第1方向における所定の範囲の場所からの反射波を受信している場合に、第2方向における所定の範囲に達しない場所からの反射波が振動子に到達しても、超音波の周波数が非同一であるため、第1方向からの反射波であるか、第2方向からの反射波であるかを区別することができる。よって、第1方向からの反射波と第2方向からの反射波との混信を防ぐことができるという効果がある。
【0025】
請求項6に記載の超音波ソナー装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の超音波ソナー装置の有する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、船舶からの位置とその位置からの反射波の強度に基づく探知結果とが、表示手段によって視認可能に表示される。そして、所定の範囲内の位置における探知結果は、対応する位置からの反射波の強度に基づいて表示される一方、所定の範囲外の位置は探知結果を表示する表示態様とは異なる表示態様で表示される。これにより使用者は、どの範囲が実際に探知をした範囲で、どの範囲が探知をしていない範囲であるかを認識することができる。また、実際には探知していないにもかかわらず、探知していると使用者が誤認することを防ぐことができるという効果がある。
【0026】
請求項7に記載の超音波ソナー装置によれば、請求項1から6のいずれかに記載の超音波ソナー装置の有する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、振動子からの距離が所定の距離の範囲にある場所の反射波を受信することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態である超音波ソナー装置の構成を概略的に表す概略図である。
【
図2】超音波ソナー装置が搭載された船舶によって水中の探知を行う場合の状態を側面より示す模式図である。
【
図3】超音波ソナー装置が搭載された船舶によって水中の探知を行う場合の状態を斜視した模式図である。
【
図4】送受波ユニットの断面を模式的に示した断面図である。
【
図5】超音波ソナー装置の電気的構成を示したブロック図である。
【
図6】制御装置において実行されるソナー処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明における各方向での超音波送受信と時間との関係を模式的に示した図である。
【
図8】第2実施形態において制御装置で実行されるソナー処理の一部を示すフローチャートである。
【
図9】制御装置で実行されるソナー処理の一部を示すフローチャートである。
【
図10】制御装置で実行されるソナー処理の一部を示すフローチャートである。
【
図11】各方向での超音波送受信と時間との関係を模式的に示した図である。
【
図12】所定の範囲を750m~975mとした場合の各方向での超音波送受信と時間との関係を模式的に示した図である。
【
図13】所定の範囲を1200m~1425mとした場合の各方向での超音波送受信と時間との関係を模式的に示した図である。
【
図14】従来技術における各方向での超音波送受信と時間との関係を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1~
図3を参照して、本発明の第1実施形態である超音波ソナー装置12の概略について説明する。
図1は、その超音波ソナー装置12の構成を概略的に示す概略図であり、
図2は、超音波ソナー装置12が搭載された船舶11によって水中の探知を行う場合の状態を側面より示す模式図であり、
図3は、同探知を行う場合の状態を斜視した模式図である。
【0029】
図1~
図3に示す通り、超音波ソナー装置12は、船舶11に搭載され、該船舶11の周囲の特定範囲にわたり、水中の魚群などの探知対象物Gの探知を行うものである。超音波ソナー装置12は、本体13と、本体13に設けられた操作ボタン14と、本体13に一体形成された表示装置15と、超音波ビームTBを送受信する送受波ユニット16と、送受波ユニット16を昇降させる昇降装置17とを備えている。
【0030】
本体13と、操作ボタン14と、表示装置15とは、船舶11の操舵室内に配置されるとともに、送受波ユニット16と昇降装置17とは、船舶11の船底内に配置されている。そして、送受波ユニット16は、昇降装置17によって昇降されることで、船舶11の船底から水中に対して出没自在となっている。
【0031】
超音波ソナー装置12は、送受波ユニット16を船舶11の船底から突出させた状態で、送受波ユニット16から細いビーム状の超音波ビームTBを1つの方向に送信(照射)し、探知対象物Gや海底又は湖底などから反射された超音波ビームTBの反射波を送受波ユニット16にて受信する。
【0032】
図2に示すように、超音波ソナー装置12は、操作ボタン14によって使用者により設定されたチルト角に対して、超音波ビームTBを送信する。チルト角とは、水平面と後述する振動子31の向く方向(超音波ビームTBの送信方向)とがなす角度である。また、
図3の矢印で示すように超音波ソナー装置12は、操作ボタン14によって使用者により設定された方位の範囲であるスキャン角の範囲(以下「特定範囲」という)にわたり、超音波ビームTBの送信方向を順次変化させる。なお、スキャン角は、自船の前方先端方向を0度とし、そこから水面上視方向において時計回りにA度回転した方向のスキャン角をA度、水面上視方向において反時計回りにA度回転した方向のスキャン角を-A度としている。
【0033】
そして、超音波ソナー装置12は、各々の送信方向に対して送信した超音波ビームTBの反射波を受信することで、特定範囲にわたり水中の探知を行う。即ち、超音波ソナー装置は、使用者により設定されたチルト角に対して、特定範囲にわたりスキャン角を変化させることにより水中の探知を行う。この水中の探知結果は、反射波の受信により生じる受信信号に基づいて形成される探知画像を表示装置15に表示することで、使用者に示される。
【0034】
このとき、超音波ソナー装置12は超音波ビームTBの反射波のうち、超音波ソナー装置からの距離が使用者によって設定された範囲(以下「所定の範囲」という)にあるものだけを受信する。なお、本実施形態では所定の範囲を525mから750mとしているが、これに限定されるものではなく、所定の範囲は使用者により変更することができる。これにより、使用者は特定範囲の中で所定の範囲における水中の状況を知ることができるため、自船を進めるべき方向を大まかに把握することができる。
【0035】
探知画像表示15aは、水中の探知結果である探知画像であり、表示装置15に表示される。探知画像表示15aは、特定範囲における所定の範囲の探知画像を表示するとともに、所定の範囲より近距離の探知をしていない範囲を非探知範囲として表示している。即ち、非探知範囲を表示する部分は例えば青色で表示する(
図1ではハッチングを施して表示した)のに対して、探知した範囲にはそのような処理を施さないため、非探知範囲と探知した範囲とを区別できるように構成されている。これにより、使用者は探知画像表示15aの中で、どの範囲が実際に探知を行った範囲であるかを認識することができる。また、探知を行っていない非探知範囲について、探知した範囲であると使用者が誤認することを防止することができる。
【0036】
次いで、
図4を参照して、送受波ユニット16の詳細構成について説明する。
図4は、送受波ユニット16の断面を模式的に示した断面図である。送受波ユニット16は、上端が開口され下端部が半球状をなす有底円筒状の下ケース21と、下端が開口され上端部が円板状をなす有蓋円筒状の上ケース22と、上ケース22の下端開口及び下ケース21の上端開口を閉塞する円板状の蓋体23とにより構成される。蓋体23の上面と上ケース22とで上側収納空間24が形成され、蓋体23の下面と下ケース21とで下側収納空間25が形成されている。
【0037】
蓋体23の中央部には、貫通孔26が形成されている。蓋体23上の中央部にはステッピングモータによって構成されたスキャンモータ27が固着され、スキャンモータ27の下面からはスキャンモータ27の出力軸27aが、貫通孔26に回転可能に挿通された状態で真下に向かって延びている。出力軸27aの先端(下端)は、下側収納空間25の上部まで達している。
【0038】
出力軸27aの先端には、円板上の支持板28が設けられており、支持板28の上面の中心部が出力軸27aの先端に接続されている。支持板28の下面には、略逆U字状をなす支持フレーム29が設けられており、支持フレーム29の下端部間には、水平に延びる回転軸30が回転可能に架設されている。
【0039】
回転軸30の中央部には、細いビーム状の超音波ビームTB(
図2参照)を1つの方向に送信し、その送信した超音波ビームTBの反射波を受信可能な振動子31が固着されている。回転軸30における振動子31と隣り合う位置には、略半円状のチルト歯車32が固着されており、回転軸30、振動子31及びチルト歯車32は、互いに一体して回転するように構成されている。
【0040】
支持フレーム29の上端部には、ステッピングモータによって構成されたチルトモータ33が固着されている。チルトモータ33は、チルト歯車32側に向かって延びる出力軸33aを備えている。出力軸33aの先端には、小歯車33bが設けられ、小歯車33bは、チルト歯車32と噛合している。
【0041】
スキャンモータ27が駆動されると、出力軸27aが回転し、それに伴って支持板28、支持フレーム29、及び、回転軸30が出力軸27aを軸として一体して回転することで、回転軸30に固着された振動子31が、やはり出力軸27aを軸として回転する。このとき、スキャンモータ27は、後述するスキャン角データ53aが示すスキャン角となるように振動子31の向きを変更する。
【0042】
これにより、振動子31による超音波ビームTBの送信方向は、船舶11が浮かぶ水面を上面視した場合に時計回り又は反時計回りに変化させることができる。即ち、スキャンモータ27を駆動することにより、振動子31によって送信される超音波ビームTBのスキャン角(方位角)が変更される。
【0043】
一方、チルトモータ33が駆動されると、出力軸33aが回転し、それに伴って小歯車33bが回転して、その小歯車33bと噛合するチルト歯車32が回転することで、チルト歯車32が固着された回転軸30がチルト歯車32の回転に合わせて回転し、その回転軸30に固着された振動子31が回転軸30を軸として回転する。このとき、チルトモータ33は、後述するチルト角データ53bが示すチルト角となるように振動子31の向きを変更する。
【0044】
これにより、振動子31の向く方向(振動子31から送信される超音波ビームTBの送信方向)と船舶11が浮かぶ水面とのなす角度であるチルト角(俯角)が、チルトモータ33を駆動することによって、変更される。
【0045】
次いで、
図5を参照して、超音波ソナー装置12の電気的構成について説明する。
図5は、超音波ソナー装置12の電気的構成を示したブロック図である。
【0046】
超音波ソナー装置12の本体13(
図1参照)は、制御装置50を有している。制御装置50は、超音波ソナー装置12の動作を制御するものである。制御装置50は、
図5に示す通り、CPU(Central Proccesing Unit)51と、ROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)53とを有しており、それらがバスライン55を介して入出力ポート54に接続されている。
【0047】
入出力ポート54には、上述した操作ボタン14、表示装置15、及び、昇降装置17(
図1参照)が接続されている。また、上述のスキャンモータ27及びチルトモータ33(
図4参照)は、モータドライバ61を介して入出力ポート54と接続され、振動子31(
図4参照)は、送受信回路62を介して入出力ポート54と接続される。
【0048】
CPU51は、ROM52に記憶されたプログラムデータ52aに従って、超音波ソナー装置12の動作を制御するための各種演算を実行する演算装置であり、例えば、次のような制御を実行する。
【0049】
まず、CPU51は、電源がオンされると昇降装置17を駆動して、船舶11の船底から水中に送受波ユニット16を突出させる。また、電源がオフされると昇降装置17を駆動して、水中に出された送受波ユニット16を船底内に戻す。
【0050】
また、CPU51は、使用者による操作ボタン14の操作があったことを、操作ボタン14から入力される信号によって判断すると、その操作ボタン14の操作に応じた制御を実行する。例えば、操作ボタン14によって超音波ビームTBのチルト角が使用者により設定されると、モータドライバ61を介してチルトモータ33を駆動し、超音波ビームTBが設定されたチルト角で送信されるように制御する。
【0051】
更に、CPU51は超音波ビームTBを送信してから発生したクロック数や反射波を受信し終えてから発生したクロック数をカウントすることにより、超音波ビームTBを送信してから経過した時間や反射波を受信し終えてから経過した時間を測定するように構成されている。
【0052】
ROM52は、CPU51によって実行されるプログラムデータ52aを記憶するほか、固定値データ等を記憶するための書き換え不能な不揮発性のメモリである。なお、書き換え不能なROMに代えて、書き換え可能な不揮発性のメモリ(例えば、フラッシュメモリ)を用いてもよい。
図6に示すソナー処理を実行するプログラムは、このROM52にプログラムデータ52aの一部として記憶される。
【0053】
RAM53は、書き換え可能な揮発性のメモリであり、CPU51によるプログラムの実行時に各種のデータを一時的に記憶する。RAM53は、スキャン角データ53a、チルト角データ53b、表示画像データ53cを少なくとも記憶する。
【0054】
スキャン角データ53aは、超音波ビームTBの送受信方向として次に向くべきスキャン角を示すデータである。また、このスキャン角データ53aを使うことで、特定範囲における探知が終了したか否かを判断する。
【0055】
チルト角データ53bは、超音波ビームTBの送信方向のチルト角を示すデータである。電源がオンされるタイミング、又は、水中の探知が開始されるタイミングで、スキャン角データ53a及びチルト角データ53bは、既に記憶された値(ROM52に記憶された初期値や、制御装置50に別途設けられたフラッシュメモリに記憶された設定値など)、又は、使用者による操作ボタン14の操作により設定された角度で初期化される。
【0056】
例えば、スキャン角データ53aの初期化は、使用者による操作ボタン14の操作により設定された特定範囲(水中の探知を行うスキャン方向の範囲)におけるスキャン角を特定範囲における最小値に設定することにより行う。
【0057】
水中の探知が行われる間、スキャンモータ27により振動子31の向きが変更されると、CPU51によって振動子が次に向くべきスキャン角になるようスキャン角データ53aが更新される。そして、その更新されたスキャン角データ53aに基づいて、CPU51の制御によってモータドライバ61を介してスキャンモータ27が駆動される。これにより、超音波ビームTBを送信すべき方向や反射波を受信すべき方向に振動子31を向けることができる。
【0058】
チルト角データ53bは、使用者による操作ボタン14の操作によってチルト角の設定が変更された場合に限り、その変更後の設定値に変更され、それ以外は値が維持される。チルト角データ53bの値が変更された場合は、超音波ビームTBの送信方向のチルト角が、その更新後のチルト角データ53bで示されるチルト角となるように、CPU51の制御によってモータドライバ61を介してチルトモータ33が駆動される。
【0059】
スキャンモータ27が駆動され、超音波ビームTBの送受信方向のスキャン角がスキャン角データ53aで示されるスキャン角となると(チルト角が変更される場合は、スキャン角に加えて更に、チルトモータ33が駆動され、超音波ビームTBの送信方向のチルト角がチルト角データ53bで示されるチルト角となると)、CPU51の制御によって振動子31から超音波ビームTBが送信又は超音波ビームTBの反射波が受信される。
【0060】
表示画像データ53cは、表示装置15に表示する画像の画像データである。超音波ビームTBの反射波を振動子31が受信することにより生じる受信信号に基づいて形成された探知画像を表示装置15に表示するための画像データが、この表示画像データ53cとしてRAM53に格納される。そして、表示画像データ53cに従って、表示装置15に画像が表示される。
【0061】
次に
図6を参照して制御装置において実行されるソナー処理について説明する。
図6は、そのソナー処理を示すフローチャートである。ソナー処理は、電源がオンされた場合、又は水中の探知が開始される場合にCPU51によって実行が開始される。このソナー処理は、使用者による操作ボタン14の操作などによって水中の探知を終了するまで、継続して実行される。
【0062】
ソナー処理では、まず、昇降装置17を駆動し、送受波ユニット16を降下させる(S1)。これにより、送受波ユニット16が船舶11の船底から水中に突出され、振動子31による超音波ビームTBの送受信が可能となる。
【0063】
次いで、チルト角データ53bを、使用者による操作ボタン14の操作により設定された角度に設定し(S2)、スキャン角データ53aを、使用者により設定された特定範囲(水中の探知を行うスキャン方向の範囲)におけるスキャン角が最も小さい値を設定することで初期化する(S3)。
【0064】
次いで、S4の処理へ移行し、スキャン角データ53a及びチルト角データ53bの値に従って、モータドライバ61を介してスキャンモータ27及びチルトモータ33を駆動する(S4)。これにより、振動子31が回転され、振動子31から送信される超音波ビームTBの送信方向が、スキャン角データ53a及びチルト角データ53bにて設定されたスキャン角及びチルト角となる。
【0065】
その後、S5の処理では次に振動子を向けるべきスキャン角になるようにスキャン角データ53aを更新する。
【0066】
スキャン角データ53aの更新は、次のように行われる。例えば、スキャンモータ27により振動子31の向きが変更された後、次に水面上視方向において時計回りに20ステップ(36度)スキャンモータ27を駆動させたい場合は、スキャン角データ53aに「36」を加算する。一方、スキャンモータ27により振動子31の向きが変更された後、次に水面上視方向において反時計回りに10ステップ(18度)スキャンモータ27を駆動させたい場合は、スキャン角データ53aに「18」を減算する。
【0067】
S5の処理において、次に駆動すべきスキャン方向のステップ数が、水面上視方向において反時計回りに10ステップ(18度)である場合は、スキャン角データ53aに「18」を減算する。ここで、スキャン角データ53aに「18」を減算するのは、S7の処理にてスキャンモータ27を水面上視方向において反時計回りに10ステップ(18度)駆動するためである。
【0068】
次いで、S6の処理では送受信回路62を介して振動子31から超音波ビームTBを送信する(以下、この超音波ビームTBを送信した方向を「N方向」という)。その後、S7の処理へ移行し、スキャンモータ27を水面上視方向において反時計回りに10ステップ駆動する(以下、N方向からスキャンモータ27を水面上視方向において反時計回りに10ステップ駆動し、振動子31が向く方向を「N-1方向」という)。即ち、S6の処理において振動子31から超音波ビームTBを送信した後、振動子31はN方向を向いたままの状態でその超音波ビームTBの反射波を受信し続けるのではなく、異なる方向(N-1方向)に向けられるのである。
【0069】
次いで、スキャン角データ53aを上述した方法で更新する(S8)。即ち、次に駆動すべきスキャン方向のステップ数が水面上視方向において時計回りに20ステップ(36度)である場合は、スキャン角データ53aに「36」を加算する。ここで、スキャン角データ53aに「36」を加算するのは、S17の処理にてスキャンモータ27を水面上視方向において時計回りに20ステップ(36度)駆動するためである。
【0070】
S9の処理では、S6の処理にてN方向に超音波ビームTBが送信されてから100msが経過したか否かが判断される。詳細は
図7を参照して後述するが、これはS5の処理にてN方向に超音波ビームTBが送信されるよりも前にN-1方向に送信された超音波ビームTBが所定の範囲の内、振動子31からの距離が最短の場所(本実施形態では525m)に到達し、その反射波が帰来し始める時間を測定するための処理である。なお、詳細は後述するが、本実施形態ではN-1方向に超音波ビームTBを送信してから600ms経過後にN方向に超音波ビームTBを送信している。そのため、N方向に超音波ビームTBを送信してから100ms経過後にN-1方向からは反射波を受信し始めているが、これに限定されるものではない。例えば、N-1方向に超音波ビームTBを送信してから500ms経過後にN方向に超音波ビームTBを送信し、その200ms経過後にN-1方向で反射波を受信するようにしても良い。
【0071】
S9の処理において、N方向に超音波ビームTBを送信してから100ms経過していないと判断した場合(S9:No)は、N-1方向における所定の範囲の内、振動子31からの距離が最短の場所(本実施形態では525m離れた場所)からの反射波がまだ帰来していないものとして、S9の処理を繰り返す。一方、S9の処理において、N方向に超音波ビームTBを送信してから100ms経過したと判断した場合(S9:Yes)は、N-1方向における所定の範囲の内、振動子31からの距離が最短の場所(本実施形態では525m離れた場所)からの反射波が帰来し始めるものとして、その超音波ビームTBに対して探知対象物Gや海底又は湖底などから反射された反射波を該振動子31にて受信する(S10)。
【0072】
S10の処理の後、S11の処理では、S6の処理においてN方向に超音波ビームTBを送信してから400msが経過したか否かが判断される。詳細は
図7を参照して後述するが、これはN-1方向に送信された超音波ビームTBの所定の範囲の内、振動子31からの距離が最長の場所(本実施形態では750m離れた場所)からの反射波が帰来する時間を測定するための処理である。
【0073】
S11の処理において、N方向に超音波ビームTBを送信してから400ms経過していないと判断した場合(S11:No)は、N-1方向における所定の範囲の内、振動子31からの距離が最長の場所(本実施形態では750m離れた場所)からの反射波がまだ帰来していないものとして、S10の処理を繰り返す。一方、S11の処理においてN方向に超音波ビームTBを送信してから400ms経過したと判断した場合(S11:Yes)は、N-1方向における所定の範囲の内、振動子31からの距離が最長の場所(本実施形態では750m離れた場所)からの反射が帰来したものとして、反射波の受信(S10)を終了する。これにより、N-1方向における所定の範囲からの反射波を過不足なく受信することができる。
【0074】
そして、反射波の受信によって生じる受信信号に基づいて、水中の探知結果である探知画像を形成する(S12)。所定の範囲外(本実施形態では0m~525m)を非探知範囲として、その非探知範囲にはハッチングを形成する(S13)。その画像データを表示画像データ53cとして上書きし、記憶する(S14)。
【0075】
そして、表示画像データ53cに基づいて画像を表示装置15に表示する(S15)。このとき、所定の範囲外は非探知範囲としてハッチングが施された状態で表示されるため、使用者はどの範囲が実際に探知を行った範囲で、どの範囲が探知を行っていない範囲であるかを認識することができる。また、実際に探知を行っていないにも関わらず、探知をしているかのように使用者が誤認することを防止することができる。
【0076】
次いで、S8の処理により更新したスキャン角データ53aが、使用者により設定された特定範囲(水中の探知を行うスキャン方向の範囲)を超えており、1回のスキャンが終了したか否かを判断する(S16)。その結果、スキャン角データ53aが特定範囲を超えていないと判断した場合、即ち特定範囲内のスキャンが終了していないと判断される場合(S16:No)は、S17の処理を行う。
【0077】
S17の処理ではS8の処理で更新されたスキャン角データ53aに基づき、スキャンモータ27を水面上視方向において時計回りに20ステップ駆動する(以下、これにより振動子31が向けられた方向を「N+1方向」という)。
【0078】
次いで、S18の処理では、N-1方向における反射波の受信(S10)が終了してから200msが経過したか否かを判断する。詳細は
図7を参照して後述するが、これはN+1方向に向けて超音波ビームTBを送信するタイミングを合わせるための処理である。即ち、本実施形態では、N-1方向における反射波を受信し終えてから200ms後にN+1方向に超音波ビームTBを送信すると、その100ms後にN方向における所定の範囲からの反射波が帰来する。そうなるように、この後行われるS6の処理にて超音波を送信するタイミングを合わせるためにS19の処理が行われる。
【0079】
S18の処理において、S10の処理で反射波を受信し終えてから200msが経過していないと判断した場合(S18:No)は、S18の処理を繰り返す。一方、S18の処理において、S10の処理で反射波を受信し終えてから200msが経過したと判断した場合は、S5の処理に戻り、スキャン角データ53aを更新する。
【0080】
S16の処理において、スキャン角データ53aが特定範囲を超えていると判断した場合、即ち特定範囲内のスキャンが終了したと判断される場合(S16:Yes)は、S19の処理を行う。S19の処理では、使用者による操作ボタン14の操作によってチルト角の設定が変更されたか否かを判断する。その結果、チルト角の設定に変更がないと判断される場合は(S19:No)、S3の処理に戻る。これにより、チルト角は維持されたまま、超音波ビームTBの送信方向のスキャン角が、使用者により設定された特定範囲における最も小さい値に戻されたうえで超音波ビームTBが送受信され、それに基づき探知画像が表示装置15に表示される。
【0081】
一方、S19の判断の結果、チルト角の設定に変更があると判断される場合(S19:Yes)は、S2の処理に戻る。これにより、超音波ビームTBの送信方向のチルト角は使用者により設定されたチルト角に変更され、スキャン角は使用者により設定された特定範囲における最も小さい値に戻されたうえで、超音波ビームTBが送受信され、それに基づき探知画像が表示装置15に表示される。
【0082】
次に、
図7と
図14とを参照して振動子31から超音波ビームTBが送信されてから、その反射波が振動子31により受信されるまでの時間の経過について説明する。
図7は、本実施形態における各方向での超音波送受信と時間との関係を模式的に示した図である。
図14は、従来技術における各方向での超音波送受信と時間との関係を模式的に示した図である。
【0083】
図7では、振動子31がN方向に超音波ビームTBが送信されたタイミングを0msとして、それより前をマイナス、それよりも後をプラスで時間の経過を表示している。なお、超音波の水中での速度を1500m/sとし、振動子31が反射波を受信する所定の範囲は525mから750mとしている。また、N-1方向とN方向とのスキャン角の差、N方向とN+1方向とのスキャン角の差は、ともに18度(10ステップ)である。N-1方向とN+1方向とのスキャン角の差は36度(20ステップ)である。また、本実施形態において使用するスキャンモータ27は1ステップ駆動するのに2msの時間を要する。
【0084】
図6において説明した通り、本実施形態では、N方向に超音波ビームTBを送信し、振動子31の向きをN-1方向に変える。N方向に超音波ビームTBを送信してから100ms経過後に、N-1方向においてN方向の超音波ビームTBより前に送信された超音波ビームTBの反射波の受信を開始する。そして、N方向に超音波ビームTBを送信してから400ms経過後にN-1方向での反射波の受信を終了する。その後、振動子31の向きをN+1方向に変え、N-1方向における反射波の受信を終了してから200ms経過後にN+1方向に超音波ビームTBを送信する。これを繰り返すことで、特定範囲にわたり探知を行う。以下、詳細を説明する。
【0085】
図7に示した通り、N方向に振動子31が超音波ビームTBを送信してから、超音波ビームTBが525m先に到達しその反射波が振動子31に帰来するまでに要する時間は、次式(1)によって表される。
【0086】
(525(m)×2)/1500(m/s)=700(ms)・・・(1)
【0087】
即ち、N方向に振動子31が超音波ビームTBを送信してから、超音波ビームTBが525m先に到達し、その反射波が振動子31に帰来するまでに700msの時間を要する。
【0088】
そして、N方向に振動子31が超音波ビームTBを送信してから、超音波ビームTBが750m先に到達し、その反射波が振動子31に帰来するまでに要する時間は、次式(2)によって表される。
【0089】
(750(m)×2)/1500(m/s)=1000(ms)・・・(2)
【0090】
即ち、N方向に振動子31が超音波ビームTBを送信してから、超音波ビームTBが750m先に到達し、その反射波が振動子31に帰来するまでに1000msの時間を要する。従って、振動子31が超音波ビームTBを送信してから700ms後から1000msまでの期間に振動子31が所定の範囲からの反射波を受信することとなる。これは、N-1方向、N+1方向においても同様である。
【0091】
ここで、振動子31がN方向に超音波ビームTBを送信する600ms前(-600ms)に、振動子31はN-1方向に超音波ビームTBを送信する。すると、振動子31がN方向に超音波ビームTBを送信してから100ms後に、N-1方向の超音波ビームTBの反射波が525m先から振動子31に帰来する。また、振動子31がN方向に超音波ビームTBを送信してから400ms後には、N-1方向の超音波ビームTBの反射波が750m先から振動子31に到達する。即ち、N方向に超音波ビームTBを送信してから100ms後から400ms後までの間に、N-1方向における所定の範囲からの反射波が帰来する。
【0092】
一方、N方向からN-1方向に振動子31の向きを変えるためには、スキャンモータ27を水面上視方向において反時計回りに10ステップ(18度)駆動する必要がある。本実施形態において使用するスキャンモータ27は1ステップ駆動するのに2msの時間を要する。よって、N方向からN-1方向に振動子31の向きを変えるためにスキャンモータ27を駆動する時間は、次式(3)によって表される。
【0093】
10(ステップ)×2(ms/ステップ)=20(ms)・・・(3)
【0094】
即ち、N方向からN-1方向に振動子31の向きを変えるためにスキャンモータ27を駆動する時間は20msである。そのため、N方向で超音波ビームTBを送信した後、N-1方向における反射波が到達するまでの時間(100ms)に、スキャンモータ27を駆動し振動子31の向きをN方向からN-1方向に変えることができる。これにより、N方向で超音波ビームTBを送信してから、その超音波ビームTBの所定の範囲からの反射波が帰来するまでの時間に、N-1方向において所定の範囲からの反射波を受信することができる。よって、N方向で超音波ビームTBを送信してから、その超音波ビームTBの所定の範囲からの反射波が帰来するまでの時間を有効に活用することができる。これは、本実施形態における所定の範囲を525m~750mとしたことで、0m~525mまでの距離からの反射波を受信する必要がなくなったことによるものである。即ち、超音波ビームTBをN方向に送信してから525m先からの反射波が帰来するまでの時間に、先に超音波ビームTBを送信したN-1方向で所定の範囲からの反射波を受信する時間を確保することができるようにしたことによるものである。
【0095】
更に、N-1方向において超音波ビームTBの反射波を受信終了した後(N方向への超音波ビームTB送信から400ms後)、振動子31はN-1方向からN+1方向へと向けられる。N-1方向からN+1方向に振動子31の向きを変えるためには、スキャンモータ27を水面上視方向において時計回りに20ステップ(36度)駆動する必要がある。このとき、N-1方向からN+1方向に振動子31の向きを変えるためにスキャンモータ27を駆動する時間は、次式(4)によって表される。
【0096】
20(ステップ)×2(ms/ステップ)=40(ms)・・・(4)
【0097】
即ち、N-1方向からN+1方向に振動子31の向きを変えるためにスキャンモータ27を駆動する時間は40msである。よって、N-1方向において超音波ビームTBの反射波を受信した後(N方向への超音波ビームTB送信から400ms後)、振動子31はN-1方向からN+1方向へと向け、N方向への超音波ビームTB送信から600ms経過後にN+1方向に超音波ビームTBを送信することができる。そして、N方向からN-1方向に振動子31の向きを変えたのと同様に、N+1方向に超音波ビームTBを送信後N+1方向からN方向に振動子31の向きを変え、N方向において所定の範囲から帰来する超音波ビームTBの反射波を受信することができる。これらの動作を繰り返すことで、特定範囲にわたり探知を行うことができる。
【0098】
これにより、N方向において超音波ビームTBを送信後、所定の範囲の場所からの反射波が帰来する前に、振動子31はN-1方向で超音波を送受信可能な方向を向く。そして、N-1方向において所定の範囲の場所からの反射波が到達すると、振動子31はそれを受信することができる。また、N方向において所定の範囲の場所からの反射波が帰来する前に、振動子31はN方向で超音波を送受信可能な方向を向く。よって、N方向においても所定の範囲の場所からの反射波を受信することができる。従って、N方向における反射波を受信するために待機する時間をN-1方向における反射波を受信することに使用することができるため、探知に要する時間を短縮することができる。即ち、N-1方向において超音波ビームTBを送信してからN方向において反射波を受信し終えるまでの時間を短縮することができる。
【0099】
また、N+1方向において超音波ビームTBを送信した後、所定の範囲の場所からの反射波が帰来する前に、振動子31はN方向で超音波ビームTBを送受信可能な方向を向く。そして、N方向において所定の範囲の場所からの反射波が到達すると、振動子31はそれを受信することができる。また、N+1方向において所定の範囲の場所からの反射波が帰来する前に、振動子31はN+1方向で超音波ビームTBを送受信可能な方向を向く。よって、N+1方向においても所定の範囲の場所からの反射波を受信することができる。従って、N+1方向における反射波を受信するために待機する時間をN方向における反射波を受信することに使用することができるため、探知に要する時間を短縮することができる。即ち、N-1方向において超音波ビームTBを送信してからN方向において反射波を受信し終えるまでの時間を短縮することができることに加えて、N方向において超音波を送信してからN+1方向において反射波を受信し終えるまでの時間を短縮することができる。つまり、N-1方向において超音波を送信してからN+1方向において反射波を受信し終えるまでの時間を短縮することができる。
【0100】
なお、
図7ではN+1方向までしか記載していないが、
図6に示すようにS5の処理からS18の処理を繰り返すこともできる。即ち、N方向の反射波を受信した後、振動子31における超音波ビームTBの送受信可能な方向をN+1方向に変化させ始める前に、振動子31における超音波ビームTBの送受信可能な方向をN+2方向に変化させ、振動子31より超音波ビームTBを送信するなど、超音波ビームTBの送信方向を順次変化させても良い。
【0101】
この場合、N-1方向の反射波を受信した後、振動子31における超音波ビームTBの送受信可能な方向をN方向に変化させ始める前に、振動子31における超音波ビームTBの送受信可能な方向をN+1方向に変化させ、振動子31により超音波ビームTBを送信する。そして、N+1方向に超音波ビームTBを送信した場合、N方向の反射波を受信した後に、振動子31における超音波ビームTBの送受信可能な方向をN+1方向に変化させ、振動子31により所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する。また、N方向の反射波を受信した後、振動子31における超音波ビームTBの送受信可能な方向をN+1方向に変化させ始める前に、振動子31における超音波ビームTBの送受信可能な方向をN+2方向に変化させ、振動子31より超音波ビームTBを送信する。そして、N+2方向に超音波ビームTBを送信した場合、N+1方向の反射波を受信した後に、振動子31における超音波ビームTBの送受信可能な方向をN+2方向に変化させ、振動子31により所定の範囲の場所から帰来した反射波を受信する。
【0102】
これにより、N-1方向の反射波を受信した後にN+1方向に超音波ビームTBを送信する場合は、N-1方向の反射波を受信する前にN+1方向に超音波ビームTBを送信する場合よりも、N-1方向の反射波を受信するための時間の分だけ、N+1方向の反射波を受信し始める時間を遅らせることができる。よって、N方向の反射波の受信が終わった後、振動子31における超音波の送受信可能な方向をN+1方向に変化させ始めるまでの時間を長くすることができ、N方向で反射波を受信する時間を長くすることができる。即ち、所定の範囲を長くすることができるという効果がある。更に、その時間中に新たな方向に超音波ビームTBを送信することが可能となる。そうすることで、N+1方向の反射波の受信が終わるのを待って、新たな方向に超音波ビームTBを送信する必要がなくなる。従って、N+1方向の反射波の受信が終わってから、新たな方向の反射波を受信し始めるまでの時間を短縮することができる。
【0103】
また、N-1方向で反射波を受信した後、N方向で反射波を受信する前に、N+1方向へ超音波ビームTBを送信することができ、更に、N方向で反射波を受信した後、N+1方向で反射波を受信する前に、N+2方向へ超音波ビームTBを送信することができる。また、N+1方向で反射波を受信した後、N+2方向で反射波を受信する前に、N+3方向に超音波ビームTBを送信することができ、更に、N+2方向で反射波を受信した後、N+3方向で反射波を受信する前に、N+4方向へ超音波ビームTBを送信することができる。即ち、1つの方向だけが反射波の受信を待機している状態になると、待機している方向とは異なる方向に超音波が送信される。そして、これが順次繰り返される。そのため、超音波が送信されて、常に反射波の受信を待機している方向が存在する。つまり、一の方向に送信した超音波の反射波が帰来するまでの待機時間を使って、先に別方向で送信した超音波の反射波を受信することにより、反射波の受信を待機していない状態に伴う時間の損失をなくすことができる。
【0104】
例えば、船舶の周囲360度について探知しようとする場合、N方向とN+1方向とのスキャン角は18度なので、全部で20回反射波を受信する必要がある。ここで、N方向に超音波ビームTBを送信してから、その反射波を受信し終えるまでに要する時間は
図7によると1000msである。一方、N方向の反射波を受信し終えてからN+1方向の反射波を受信し終えるまでに要する時間は600msである。よって、360度について探知するのに要する時間は、次式(5)で示される。
【0105】
1000(ms)+600(ms)×19(回)=12400(ms)・・・(5)
【0106】
即ち、本実施形態によれば、船舶の周囲360度について探知しようとすると12400msの時間を要することになる。
【0107】
一方で、
図14の従来の方法では、N方向に超音波ビームTBを送信してから所定の範囲からの反射波を受信し終えるまで、振動子31の向きは変えられない。そのためN方向の送受信が終了してから、次にN+1方向で送受信を行うことになる。このとき、N方向に超音波ビームTBを送信してから、その反射波を受信し終えるまでに要する時間は1000msである。一方、N方向の反射波を受信し終えてからN+1方向の反射波を受信し終えるまでに要する時間は1100msである。よって、船舶の周囲360度について探知するのに要する時間は、次式(6)で示される。
【0108】
1000(ms)+1100(ms)×19(回)=21900(ms)・・・(6)
【0109】
即ち、従来の方法では、船舶の周囲360度について探知しようとすると、21900msの時間を要する。つまり、本実施形態によれば、船舶の周囲360度について探知するのに要する時間が、従来の方法の約57%で済む。即ち、本発明は、探知に要する時間を短縮することができるものである。これにより、使用者が認識する探知画像と、実際の水中の状況との差を小さくすることができ、使用者は実際の水中の状況に近い探知画像を見ることができる。
【0110】
次いで、
図8から
図11を参照して第2実施形態のおける超音波ソナー装置について説明する。第1実施形態における超音波ソナー装置では、N-1方向、N方向に超音波ビームTBを順次送信し、N-1方向において反射波を受信する。そして、N+1方向に超音波ビームTBを送信し、その後、N方向において反射波を受信し、これを繰り返す。これに対し、第2実施形態における超音波ソナー装置では、N-1方向とN方向に超音波ビームTBを順次送信し、それらの反射波をそれぞれ受信した後にN+1方向に超音波ビームTBを送信する。なお、その他の超音波ソナー装置12の構成、及びソナー処理におけるS1~S4の処理は第1実施形態と同一であり、第1実施形態におけるS12~S16の処理と第2実施形態におけるS12a~S16aの処理、S12b~S16bの処理は同一であり、第1実施形態におけるS19の処理と第2実施形態におけるS19aの処理、S19bの処理は同一であるのでその説明を省略する。
【0111】
図8から
図10は第2実施形態において制御装置で実行されるソナー処理の一部を示すフローチャートである。ソナー処理においてS1~S4の処理が行われると、続いてS30の処理が行われる。
【0112】
S30の処理では次に振動子を向けるべきスキャン角になるようにスキャン角データ53aを更新する。次に駆動すべきスキャン方向のステップ数が、水面上視方向において時計回りに10ステップ(18度)である場合は、スキャン角データ53aに「18」を加算する。ここで、スキャン角データ53aに「18」を加算するのは、S32の処理にてスキャンモータ27を水面上視方向において時計回りに10ステップ(18度)駆動するためである。
【0113】
次いで、S31の処理では送受信回路62を介して振動子31から超音波ビームTBを送信する(以下、この超音波ビームTBを送信した方向を「N-1方向」という)。その後、S32の処理へ移行し、スキャンモータ27を水面上視方向において時計回りに10ステップ駆動する(以下、N-1方向からスキャンモータ27を水面上視方向において時計回りに10ステップ駆動し、振動子31が向く方向を「N方向」という)。
【0114】
次いで、スキャン角データ53aを上述した方法で更新する(S33)。次に駆動すべきスキャン方向のステップ数が、水面上視方向において反時計回りに10ステップ(18度)である場合は、スキャン角データ53aに「18」を減算する。ここで、スキャン角データ53aに「18」を減算するのは、S36の処理にてスキャンモータ27を水面上視方向において反時計回りに10ステップ(18度)駆動するためである。
【0115】
次いで、S31の処理にて超音波ビームTBが送信されてから400msが経過したか否かが判断する(S34)。これはS31の処理にてN-1方向に超音波ビームTBが送信されてから400ms経過後にN方向に超音波ビームTBを送信するために行う処理である。なお、N-1方向に超音波ビームTBを送信してから400ms経過後にN方向に超音波ビームTBを送信することで、N方向に超音波ビームTBを送信してから、N方向で反射波を受信し始める前にN-1方向で反射波を受信するための時間を確保することができる。
【0116】
S34の処理でS31の処理において超音波ビームTBがN-1方向に送信されてから400msが経過していないと判断した場合(S34:No)は、S34の処理を繰り返す。一方、S31の処理において超音波ビームTBがN-1方向に送信されてから400msが経過したと判断した場合(S34:Yes)は、N方向に超音波ビームTBを送信する(S35)。
【0117】
次にスキャンモータ27を水面上視方向において反時計回りに10ステップ駆動し、振動子31をN-1方向に向け(S36)、その後スキャン角データ53aを更新する(S37)。次に駆動すべきスキャン方向のステップ数が、水面上視方向において時計回りに10ステップ(18度)である場合は、スキャン角データ53aに「18」を加算する。ここで、スキャン角データ53aに「18」を加算するのは、S41の処理にてスキャンモータ27を水面上視方向において時計回りに10ステップ(18度)駆動するためである。
【0118】
続いてS38の処理では、S31の処理にて超音波ビームTBが送信されてから700msが経過したか否かが判断される。これは、N-1方向に送信された超音波ビームTBが所定の範囲(本実施形態では525m)に到達し、その反射波が帰来し始める時間を測定するための処理である。S38の処理において、N-1方向に超音波ビームTBを送信してから700ms経過していないと判断した場合(S38:No)は、N-1方向における所定の範囲の内、振動子31からの距離が最短の場所(本実施形態では525m離れた場所)からの反射波がまだ帰来していないものとして、S38の処理を繰り返す。一方、S38の処理において、N-1方向に超音波ビームTBを送信してから700ms経過したと判断した場合(S38:Yes)は、N-1方向における所定の範囲の内、振動子31からの距離が最短の場所(本実施形態では525m離れた場所)からの反射波が帰来し始めたものとして、反射波を該振動子31にて受信する(S39)。
【0119】
次にS40の処理では、N-1方向への超音波ビームTBを送信してから1000msが経過したか否かが判断される。これはN-1方向に送信された超音波ビームTBの所定の範囲(本実施形態では750m)からの反射波が帰来する時間を測定するための処理である。
【0120】
S40の処理において、N-1方向に超音波ビームTBを送信してから1000ms経過していないと判断した場合(S40:No)は、N-1方向における所定の範囲の内、振動子31からの距離が最長の場所(本実施形態では750m離れた場所)からの反射波がまだ帰来していないものとして、S39の処理を繰り返す。一方、S40の処理においてN-1方向に超音波ビームTBを送信してから1000ms経過したと判断した場合(S40:Yes)は、N-1方向における所定の範囲の内、振動子31からの距離が最長の場所(本実施形態では750m離れた場所)からの反射が帰来したものとして、反射波の受信(S39)を終了する。これにより、N-1方向における所定の範囲からの反射波を過不足なく受信することができる。
【0121】
その後、
図9に示す通りS12aの処理からS16aの処理を実行する。S16aの処理では、特定範囲における探知が終了したか否かを判断する。これにより、既に特定範囲における探知が終わっていた場合には、特定範囲よりも広い範囲での探知をしなくて済む。S16aの処理においてスキャン角データ53aが特定範囲を超えたと判断された場合(S16a:Yes)は、S19aの処理がなされる。一方、S16aの処理においてスキャン角データ53aが特定範囲を超えていないと判断した場合(S16a:No)は、スキャンモータ27を水面上視方向において時計回りに10ステップ駆動し(S41)、振動子31をN方向に向け、スキャン角データ53aを更新する(S42)。次に駆動すべきスキャン方向のステップ数が、水面上視方向において時計回りに10ステップ(18度)である場合は、スキャン角データ53aに「18」を加算する。ここで、スキャン角データ53aに「18」を加算するのは、S46の処理にてスキャンモータ27を水面上視方向において時計回りに10ステップ(18度)駆動するためである。
【0122】
続いてS43の処理では、S35の処理にて超音波ビームTBが送信されてから700msが経過したか否かが判断される。これは、N方向に送信された超音波ビームTBが所定の範囲(本実施形態では525m)に到達し、その反射波が帰来し始める時間を測定するための処理である。S43の処理において、N方向に超音波ビームTBを送信してから700ms経過していないと判断した場合(S43:No)は、N方向における所定の範囲の内、振動子31からの距離が最短の場所(本実施形態では525m離れた場所)からの反射波がまだ帰来していないものとして、S43の処理を繰り返す。一方、S43の処理において、N方向に超音波ビームTBを送信してから700ms経過したと判断した場合(S43:Yes)は、N方向における所定の範囲の内、振動子31からの距離が最短の場所(本実施形態では525m離れた場所)からの反射波が帰来し始めるものとして、反射波を振動子31にて受信する(S44)。
【0123】
次にS45の処理では、S35の処理にてN方向への超音波ビームTBを送信してから1000msが経過したか否かが判断される。これはN方向に送信された超音波ビームTBの所定の範囲(本実施形態では750m)からの反射波が帰来する時間を測定するための処理である。
【0124】
S45の処理において、N方向に超音波ビームTBを送信してから1000ms経過していないと判断した場合(S45:No)は、N方向における所定の範囲の内、振動子31からの距離が最長の場所(本実施形態では750m離れた場所)からの反射波がまだ帰来していないものとして、S44の処理を繰り返す。一方、S45の処理においてN方向に超音波ビームTBを送信してから1000ms経過したと判断した場合(S45:Yes)は、N方向における所定の範囲の内、振動子31からの距離が最長の場所(本実施形態では750m離れた場所)からの反射が帰来したものとして、反射波の受信(S44)を終了する。これにより、N方向における所定の範囲からの反射波を過不足なく受信することができる。
【0125】
その後、
図10に示す通り、S12bの処理からS16bの処理を実行する。S16bの処理においてスキャン角データ53aが特定範囲を超えたと判断された場合(S16b:Yes)は、S19bの処理がなされる。一方、S16bの処理においてスキャン角データ53aが特定範囲を超えていないと判断した場合(S16b:No)は、S46の処理において、スキャンモータ27を水面上視方向において時計回りに10ステップ駆動する(以下、N方向からスキャンモータ27を水面上視方向において時計回りに10ステップ駆動し、振動子31が向く方向を「N+1方向」という)。
【0126】
次いで、S47の処理では、N方向における反射波の受信(S44)が終了してから100msが経過したか否かを判断する。詳細は
図11を参照して後述するが、これはN+1方向に向けて超音波ビームTBを送信するタイミングを合わせるための処理である。
【0127】
S47の処理において、S44の処理で反射波を受信し終えてから100msが経過していないと判断した場合(S47:No)は、S47の処理を繰り返す。一方、S47の処理において、S44の処理で反射波を受信し終えてから100msが経過したと判断した場合は、S30の処理に戻り、スキャン角データ53aを更新する。以下、同様に処理が繰り返される。
【0128】
次に、
図11を参照して第2実施形態において振動子31から超音波ビームTBが送信されてから、その反射波が振動子31により受信されるまでの時間の経過について説明する。
図11は、第2実施形態における各方向での超音波送受信と時間との関係を模式的に示した図である
【0129】
図11では、振動子31がN-1方向に超音波ビームTBが送信されたタイミングを0msとして、その時点からの時間の経過を表示している。なお、超音波の水中での速度を1500m/sとし、振動子31が反射波を受信する所定の範囲は(525mから700m)としている。また、N-1方向とN方向とのスキャン角、N方向とN+1方向とのスキャン角は、ともに18度(10ステップ)である。また、本実施形態において使用するスキャンモータ27は1ステップ駆動するのに2msの時間を要する。
【0130】
上述の通り、振動子31が超音波ビームTBを送信してから700ms後から1000msまでの期間に振動子31が所定の範囲からの反射波を受信することとなる。これは、N方向、N+1方向においても同様である。
【0131】
ここで、振動子31がN方向に超音波ビームTBを送信する400ms前に、振動子31がN-1方向に超音波ビームTBを送信すると、振動子31がN方向に超音波ビームTBを送信してから300ms後(N-1方向に超音波ビームTBを送信してから700ms後)に、N-1方向の超音波ビームTBの反射波が525m先から振動子31に帰来する。また、振動子31がN方向に超音波ビームTBを送信してから600ms後(N-1方向に超音波ビームTBを送信してから1000ms後)には、N-1方向の超音波ビームTBの反射波が750m先から振動子31に到達する。即ち、N方向に超音波ビームTBを送信してから300ms後から600ms後までの間に、N-1方向における所定の範囲からの反射波が帰来する。また、N-1方向で750m先からの反射波が到達した100ms後には、N方向において反射波が525m先から振動子に到達する。なお、N方向での反射波の受信が終了した100ms後には、N+1方向に超音波ビームTBが送信される。
【0132】
一方、N方向からN-1方向又はN-1方向からN方向に振動子31の向きを変えるためには、スキャンモータ27を水面上視方向において反時計回り又は時計回りに10ステップ(18度)駆動する必要がある。本実施形態において使用するスキャンモータ27は1ステップ駆動するのに2msの時間を要する。よって、N方向からN-1方向又はN-1方向からN方向に振動子31の向きを変えるためにスキャンモータ27を駆動する時間は、上式(3)によって表される。
【0133】
即ち、N方向からN-1方向又はN-1方向からN方向に振動子31の向きを変えるためにスキャンモータ27を駆動する時間は20msである。そのため、N-1方向で超音波ビームTBを送信した後、N方向において超音波ビームTBを送信するまでの時間(400ms)に、スキャンモータ27を駆動し振動子31の向きをN-1方向からN方向に変えることができる。また、N方向において超音波ビームTBを送信した後、N-1方向において反射波を受信し始めるまでの時間(300ms)にスキャンモータ27を駆動し振動子31の向きをN方向からN-1方向に変えることができる。さらにN-1方向で反射波の受信が終了してから、N方向で反射波の受信を始めるまでの時間(100ms)にスキャンモータ27を駆動し振動子31の向きをN-1方向からN方向に変えることができる。
【0134】
同様にN方向からN+1方向に振動子31の向きを変えるためにスキャンモータ27を駆動する時間は20msである。そのためN方向で反射波を受信し終えてから、N+1方向に超音波ビームTBを送信するまでの時間(100ms)にスキャンモータ27を駆動し振動子31の向きをN方向からN-1方向に変えることができる。
【0135】
これにより、N方向で超音波ビームTBを送信してから、その超音波ビームTBの所定の範囲からの反射波が帰来するまでの時間に、N-1方向において所定の範囲からの反射波を受信することができる。よって、N方向で超音波ビームTBを送信してから、その超音波ビームTBの所定の範囲からの反射波が帰来するまでの時間を有効に活用することができる。
【0136】
また、本実施形態では、N-1方向において反射波を受信し終えてから、N方向において反射波を受信し始めるまでの時間に振動子31の向きをN-1方向からN方向に変えるだけでよい。そのため、N-1方向において反射波を受信し終えてから、N方向において反射波を受信するまでの時間を短くすることができる。これにより、N-1方向の探知結果とN方向の探知結果との時間的な差を小さくすることができる。一方で、N方向で反射波を受信し終えてから、N+1方向で反射波を受信し始めるまでには、他の方向で反射波を受信することができない。よって、狭い特定範囲を探知しようとするような場合は、各方向間の時間的な差を小さくすることができるという効果が顕著に得られる。
【0137】
その他、第2実施形態における超音波ソナー装置12は、第1実施形態と同一の構成によって同一の効果を奏する。
【0138】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、各実施形態は、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部又は複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部又は複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。また、上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0139】
第1、第2実施形態では所定の範囲を525m~750mとしているが、これに限定されるものではない。例えば、所定の範囲を525m~825mとしても良い。この場合、N方向に超音波ビームTBを送信し、振動子31の向きをN-1方向に変える。N方向に超音波ビームTBを送信してから100ms経過後に、N-1方向においてN方向の超音波ビームTBより前に送信した超音波ビームTBの反射波を受信する。そして、N方向に超音波ビームTBを送信してから500ms経過後にN-1方向での反射波の受信を終了する。その後、振動子31の向きをN+1方向に変え、N-1方向における反射波の受信を終了してから100ms経過後にN+1方向に超音波ビームTBを送信する。これを繰り返すことで、特定範囲にわたり探知を行うことができる。
【0140】
即ち、第1実施形態ではN-1方向において反射波の受信を終了してから200ms経過後にN+1方向に超音波ビームTBを送信しているが、その時間を100msに短縮して、その分を反射波の受信に用いるようにしても良い。これにより、N方向に超音波ビームTBを送信してからN+1方向に超音波ビームを送信するまでの時間は、変わらなくても所定の範囲を広げることができる。
【0141】
また、第1実施形態において、N方向に超音波ビームTBを送信してから、N-1方向で反射波を受信するまでの時間を変えても良い。例えば、その時間を150msとしても良い。この場合、N方向に超音波ビームTBを送信し、振動子31の向きをN-1方向に変える。N方向に超音波ビームTBを送信してから150ms経過後に、N-1方向においてN方向の超音波ビームTBより前に送信した超音波ビームTBの反射波を受信する。そして、N方向に超音波ビームTBを送信してから450ms経過後にN-1方向での反射波の受信を終了する。その後、振動子31の向きをN+1方向に変え、N-1方向における反射波の受信を終了してから100ms経過後にN+1方向に超音波ビームTBを送信する。これを繰り返すことで、特定範囲にわたり探知を行うことができる。
【0142】
上記第1、第2実施形態では、所定の範囲を525m~750mとし受信を待機している方向の数を最大で2方向としているが、所定の範囲を延長し受信を待機している方向の数を増やしても良い。例えば、所定の範囲を1200m~1425mとして、受信を待機している方向の数を最大で3方向としても良い。この場合の各方向での超音波送受信と時間との関係について、
図12を参照して説明する。
図12は、所定の範囲を750m~975mとした場合の各方向での超音波送受信と時間との関係を模式的に例示したものである。
【0143】
図12に示すように、N方向に超音波ビームTBを送信し、振動子31の向きをN+1方向に変える。N方向に超音波ビームTBを送信してから400ms経過後に、N+1方向に超音波ビームTBを送信し、振動子31の向きをN+2方向に変える。N方向に超音波ビームTBを送信してから800ms経過後にN+2方向に超音波ビームTBを送信し、振動子31の向きをN方向に変える。N方向に超音波ビームTBを送信してから、1000ms~1300ms後までN方向で反射波を受信し、その後、振動子31の向きをN+1方向に変える。そして、N方向に超音波ビームTBを送信してから1400ms~1700ms後にN+1方向で反射波を受信し、その後、振動子31の向きをN+2方向に変える。そして、N方向に超音波ビームTBを送信してから1800ms~2100ms後にN+2方向で反射波を受信し、その後、振動子31の向きをN+3方向に変える。そして、N方向に超音波ビームTBを送信してから2200ms後にN+3方向に超音波ビームTBを送信するようにして、これを繰り返しても良い。
【0144】
この場合、超音波ビームTBを送信してから所定の範囲(750m~975m)からの反射波が帰来するのに要する時間は1000ms~1300msである。また、N方向からN+1方向、N+1方向からN+2方向、N+2方向からN+3方向に振動子31の向きを変えるためにスキャンモータ27を駆動する時間は20msである。N+2方向からN方向に振動子31の向きを変えるためにスキャンモータ27を20ステップ駆動するのに要する時間は40msである。
【0145】
よって、N方向で超音波ビームTBを送信した後N+1方向において超音波ビームTBを送信するまでの時間(400ms)、N+1方向で超音波ビームTBを送信した後N+2方向において超音波ビームTBを送信するまでの時間(400ms)、N方向で反射者を受信した後N+1方向において反射波を受信するまでの時間(100ms)、N+1方向で反射者を受信した後N+2方向において反射波を受信するまでの時間(100ms)、N+2方向で反射者を受信した後N+3方向において超音波ビームTBを送信するまでの時間(100ms)にスキャンモータ27を駆動し振動子31の向きを変えることができる。
【0146】
同様に、N+2方向で超音波ビームTBを送信してから、N方向で反射波を受信し始めるまでの時間(100ms)にスキャンモータ27を駆動し振動子31の向きをN+2方向からN方向に変えることができる。
【0147】
受信を待機している方向の数を最大で3方向とした場合、例えば、N方向において反射波を受信した後、N+1方向において反射波を受信する前に超音波ビームTBを送信するようにしても良い。この場合の各方向での超音波送受信と時間との関係について、
図13を参照して説明する。
図13は、所定の範囲を1200m~1425mとした場合の各方向での超音波送受信と時間との関係を模式的に例示したものである。
図12において示した例では、N方向、N+1方向、N+2方向に超音波ビームTBを送信し、これら3方向の反射波を受信した後に、N+3方向に超音波ビームTBを送信しているが、これに限定されるものではない。
【0148】
図13に示すように、N方向に超音波ビームTBを送信し、振動子31の向きをN+1方向に変える。N方向に超音波ビームTBを送信してから700ms経過後に、N+1方向に超音波ビームTBを送信し、振動子31の向きをN+2方向に変える。N方向に超音波ビームTBを送信してから1400ms経過後にN+2方向に超音波ビームTBを送信し、振動子31の向きをN方向に変える。N方向に超音波ビームTBを送信してから、1600ms~1900ms後までN方向で反射波を受信し、その後、振動子31の向きをN+3方向に変える。そして、N方向に超音波ビームTBを送信してから2100ms経過後にN+3方向に超音波ビームTBを送信する。その後、振動子31の向きをN+1方向に変え、N方向に超音波ビームTBを送信してから2300ms~2600ms後(N+1方向に超音波ビームTBを送信してから1600ms~1900ms後)までN+1方向で反射波を受信するようにして、これを繰り返しても良い。
【0149】
なお、この場合においてN方向に振動子31が超音波ビームTBを送信してから、超音波ビームTBが1200m先に到達し、その反射波が振動子31に帰来するまでに要する時間は、1600msである。また、N方向に振動子31が超音波ビームTBを送信してから、超音波ビームTBが1425m先に到達し、その反射波が振動子31に帰来するまでに要する時間は、1900msである。
【0150】
また、N方向からN+1方向、N+1方向からN+2方向に振動子31の向きを変えるためにスキャンモータ27を駆動する時間は20msである。そのため、N方向で超音波ビームTBを送信した後N+1方向において超音波ビームTBを送信するまでの時間(700ms)、N+1方向で超音波ビームTBを送信した後N+2方向において超音波ビームTBを送信するまでの時間(700ms)にスキャンモータ27を駆動し振動子31の向きを変えることができる。
【0151】
更に、N+2方向からN方向に振動子31の向きを変えるためにスキャンモータ27を20ステップ駆動するのに要する時間は40msである。そのためN+2方向で超音波ビームTBを送信してから、N方向で反射波を受信し始めるまでの時間(200ms)にスキャンモータ27を駆動し振動子31の向きをN+2方向からN方向に変えることができる。
【0152】
同様に、N方向からN+3方向に振動子31の向きを変えるためにスキャンモータ27を駆動する時間は60msである。そのため、N方向で反射波を受信した後、N+3方向において超音波ビームTBを送信するまでの時間(100ms)に、スキャンモータ27を駆動し振動子31の向きをN方向からN+3方向に変えることができる。
【0153】
上記第1、第2実施形態では、送信する超音波ビームの周波数については限定してないが、超音波ビームTBを送信する方向によって、送信する超音波ビームTBの周波数を変えても良い。例えば、N方向には288kHzの超音波ビームTBを送信し、その次のN+1方向には292kHzの超音波ビームTBを送信するなどして、送信する方向によって交互に周波数を変えても良い。これにより、N方向で所定の範囲からの反射波を受信しているときに、N+1方向の所定の範囲外からの反射波を誤って受信するおそれがなくなる。なお、遠距離の探知を行う場合は狭帯域バンドパスフィルタが使用されるため周波数を大きくずらす必要がない。そのため、288kHzと292kHzとのように近い周波数の超音波ビームTBを使用することができる。
【0154】
なお、指向角の狭い振動子31を使用する場合は、同一の周波数の超音波ビームTBを送信してもN方向で所定の範囲からの反射波を受信しているときに、N+1方向の所定の範囲外からの反射波を誤って受信するおそれは少ない。一方、指向角の広い振動子31を使用する場合は、同一の周波数の超音波ビームTBを送信すると、N方向で所定の範囲からの反射波を受信しているときに、N+1方向の所定の範囲外からの反射波を誤って受信するおそれが高くなる。そのため、指向角の広い振動子31を使用する場合に、超音波ビームTBを送信する方向によって、送信する超音波ビームTBの周波数を変えれば、その効果をより顕著に得ることができる。
【0155】
超音波ビームTBを送信する方向によって、送信する超音波ビームTBの周波数を変えた場合、周波数によって反射波を受信する際の感度が異なる場合がある。そのため、反射波を受信して得られる受信信号に周波数に応じた増幅率を乗じることで、反射波を受信する際の感度の差をなくす補正をしてもよい。これにより、反射波を受信する際の感度の差の影響をなくした探知画像表示15aを生成することができる。
【符号の説明】
【0156】
11 船舶
12 超音波ソナー装置
15 表示装置(表示手段)
27 スキャンモータ(駆動手段の一部)
31 振動子
33 チルトモータ(駆動手段の一部)