IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リバーエレテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-AEセンサ素子及びAEセンサ 図1
  • 特許-AEセンサ素子及びAEセンサ 図2
  • 特許-AEセンサ素子及びAEセンサ 図3
  • 特許-AEセンサ素子及びAEセンサ 図4
  • 特許-AEセンサ素子及びAEセンサ 図5
  • 特許-AEセンサ素子及びAEセンサ 図6
  • 特許-AEセンサ素子及びAEセンサ 図7
  • 特許-AEセンサ素子及びAEセンサ 図8
  • 特許-AEセンサ素子及びAEセンサ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】AEセンサ素子及びAEセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01H 11/08 20060101AFI20220228BHJP
【FI】
G01H11/08 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018062008
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019174254
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237444
【氏名又は名称】リバーエレテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100128071
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】武藤 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大西 秀和
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-303995(JP,A)
【文献】特開2017-200014(JP,A)
【文献】特開2009-165164(JP,A)
【文献】特開2014-240789(JP,A)
【文献】特開2011-232264(JP,A)
【文献】特開2008-008683(JP,A)
【文献】特開2004-085419(JP,A)
【文献】特開2000-046639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 11/08
H03H 9/00 - 9/76
H01L 41/00 -41/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の水晶材によって形成され、少なくとも1本の共振子の表面と裏面にそれぞれ4本ずつの溝部が対向するように設けられた共振子を備え、各溝部の内周面には電極膜が形成され、前記共振子の表面と裏面に設けられたそれぞれ2本ずつの溝部に隣接して1本の電界遮断溝が設けられ、該電界遮断溝は内周面に前記電極膜を有しないAEセンサ素子。
【請求項2】
請求項1に記載のAEセンサ素子と、AEセンサ素子を収容するケースと、を有するAEセンサ。
【請求項3】
前記AEセンサ素子及びケースがウエハレベルパッケージからなる請求項に記載のAEセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物に直接取付けて種々の周波数成分を有する振動波を検出するアコーステックエミッション(AE)センサ、及びこのAEセンサに用いられるAEセンサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のAEセンサとして特許文献1に示される振動波センサが知られている。この振動波センサは、半導体シリコン基板の一部に一体形成したセンサ素子を備えている。このセンサ素子は、複数のカンチレバーを並設している。そして、それぞれのカンチレバーは、異なる共振周波数を有するように寸法設定されている。また、各カンチレバーは、それぞれの根元部近傍の一面に、検知部としてのピエゾ抵抗を備えている。そして、各別のピエゾ抵抗の抵抗値の変化が、出力回路の出力として各別に検出され、振動波に含まれる周波数毎の振動レベルとして得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000‐205940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の振動波センサにあっては、半導体シリコン基板が用いられ、この半導体基板に一体形成されたセンサ素子の各カンチレバーの一面に設けたピエゾ抵抗の抵抗値を測定するものであるため、経年劣化などによる抵抗値の変化などによって検出精度に誤差が生じ、波動波センサとしての長期的な安定性に欠けるおそれがあった。また、ピエゾ抵抗から抵抗値を検出するためには、常に所定のバイアス電圧を印加する直流電源が必要となる。そのため、例えば被測定物の振動変位量を長期間に亘って継続的に測定するような場合、直流電源の設置などで振動波センサの適用範囲が制約を受けるおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するために、水晶材によって形成され、この水晶材が持つ特有の圧電効果を利用して共振強度を検出するAEセンサ及びAEセンサ素子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るAEセンサ素子は、板状の水晶材によって形成され、少なくとも1本の共振子の表面と裏面にそれぞれ4本ずつの溝部が対向するように設けられた共振子を備え、各溝部の内周面には電極膜が形成され、前記共振子の表面と裏面に設けられたそれぞれ2本ずつの溝部に隣接して1本の電界遮断溝が設けられ、該電界遮断溝は内周面に前記電極膜を有しない

【0007】
また、本発明に係るAEセンサ素子は、前記溝部が1本の共振子の表面及び裏面の長手方向に一又は二以上形成される。

【0008】
また、本発明に係るAEセンサ素子は、第1のAEセンサ素子と第2のAEセンサ素子とを備え、第1のAEセンサ素子と第2のAEセンサ素子は、それぞれのベース部から延びる複数の共振子が互いに向かい合わせの状態で配置される。
【0009】
また、本発明に係るAEセンサは、前記AEセンサ素子と、AEセンサ素子を収容するケースと、を有する。さらに、前記ケース内にはAEセンサ素子から出力された検出信号を処理する電子回路が配置されることがある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るAEセンサ素子は、板状の水晶材によって形成され、複数の共振子に形成された溝部の内周面に電極膜が形成されているので、各共振子が共振時に生じる歪で発生した圧電電流変化を高感度で検出することができる。
【0011】
また、本発明に係るAEセンサは、水晶材が持つ特有の圧電効果を利用して共振強度を検出しているので、長期に亘って検出精度に誤差が生じにくく、波動波センサとしての長期的な安定性が図られる。また、本発明に係るAEセンサによれば、検出信号を出力させるための電源を特に必要としないので、AEセンサとしての適用範囲が広がると共に使い勝手が非常に良いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るAEセンサ素子の正面図である。
図2】共振子がX軸方向に屈曲振動するときの溝部と電極配置を示す、図1中II-II断面図である。
図3】共振子がZ軸方向に屈曲振動するときの溝部と電極配置を示す断面図である。
図4】共振子がX軸とZ軸の二方向に屈曲振動するときの溝部と電極配置を示す断面図である。
図5】電界遮断溝部を有する共振子がZ軸方向に屈曲振動するときの溝部と電極配置を示す断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るAEセンサ素子の正面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るAEセンサの斜視図である。
図8図7のVIII-VIII断面図である。
図9】電子回路の一構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るAEセンサ素子及びAEセンサ素子を用いたAEセンサの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面は、本発明のAEセンサ素子及びAEセンサ素子を用いたAEセンサを模式的に表したものである。これらの実物の寸法及び寸法比は、図面上の寸法及び寸法比と必ずしも一致していない。また、重複説明は適宜省略させることがあり、同一部材には同一符号を付与することがある。また、図1において示された本発明のAEセンサ素子は、電気軸をX軸、機械軸をY軸、光軸をZ軸とした水晶材から形成されているが、完全に一致する必要はない。以下、同様である。さらに、本発明の技術的範囲は以下で説明する各実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0014】
図1及び図2には本発明の第1実施形態に係るAEセンサ素子1が示される。このAEセンサ素子1は、板状の水晶材によって形成されるベース部2及びベース部2から一方向延びる複数の共振子3を備えている。複数の共振子3は屈曲振動モードを備え、それぞれが異なる周波数の振動波に対して共振するように寸法設定されている。この実施形態では長さの異なる5本の共振子3を順番に並べているが、本数は用途に応じて適宜選択することができ、また並べる順番も自由である。共振子3は寸法の長い方が低い周波数の振動波に対して共振し、寸法が短くなるのにしたがって高い周波数の振動波に対して共振する。センサの精度は、各共振子3の周波数を、設計値に対して±20ppm以内に調整することが望ましい。周波数の調整は、例えば各共振子3の先端部の質量を調整することで行われる。
【0015】
前記各共振子3は溝部4を有している。この溝部4は、共振子3の表面3a及び裏面3bの長手方向に1本ずつ形成されるものである。溝部4の長さ、幅、深さは、適宜選択される。前記溝部4の内周面には電極膜5が形成されている。電極膜5は、各共振子3が共振する際に生じる歪を電流値として検出するもので、この実施形態では共振子3の両側面3cにも一対の電極膜6が形成されている。
【0016】
前記ベース部2には、前記共振子3の溝部4に形成される電極膜5と共振子3の両側面3cに形成される電極膜6が互いに極性の異なる電極となるように一対の電極端子7a,7bが形成されている。この電極端子7a,7bは、それぞれ共振子3に設けられる。そして、共振子3の溝部4に形成された電極膜5が一方の電極端子7aに接続され、共振子3の両側面3cに形成された電極膜6が他方の電極端子7bに接続されている。本実施形態では各共振子3が共振時に生じる歪が電流を発生させ、共振強度に応じた電流を前記電極膜5,6によって検出する。なお、他方の電極端子7bを形成することなく、極性の異なる他方の電極をグランドとして共通化することも可能である。
【0017】
上記構成からなるAEセンサ素子1は、フォトリソ加工などによって、板状の水晶材から形成することができる。フォトリソ工程においてマスクパターンを形成し、水晶エッチングを施すことによって、ベース部2及びベース部2から一方向に延びる複数の共振子3を形成することができる。共振子3に形成される溝部4の細い凹部形状もフォトリソ工程の中で形成することができる。そのため、AEセンサ素子1の小型化を実現することができると共に、多数の共振子3を有する多チャンネル化も容易に形成可能である。図1に示されるAEセンサ素子1は、ベース部2の下部2a(ハッチング部分)を被測定物などに直接貼り付けることで、AEセンサ素子1そのものをAEセンサとして機能させることもできる。また、ケース内にAEセンサ素子1を収容したAEセンサを被測定物に取付けて測定することもある。この場合、ケース内にAEセンサ素子1からの検出信号を処理する電子回路を収容することも可能である。
【0018】
また、本発明のAEセンサ素子1は、図3に示したように、1本の共振子3の表面3aと裏面3bにそれぞれ2本の溝部4aを形成することもできる。各溝部4aの溝幅は、1本の溝部4の場合に比べて狭くなるが、2本の溝部4aに形成される一対の電極膜5aを互いに極性の異なる電極となるように設定することで、Z軸方向の振動に対する共振子3の共振強度に応じた電流を検出することができる。
【0019】
また、本発明のAEセンサ素子1は、図4に示したように、1本の共振子3の表面3aと裏面3bにそれぞれ2本の溝部4aを形成すると共に、共振子3の両側面3cに電極膜6aを設けることもできる。この場合には、4本の溝部4aのうち、3本の溝部4aに形成される電極膜5aと、残りの1本と共振子3の両側面3cに形成される一対の電極膜6aとを互いに極性の異なる電極となるように設定することで、X軸とZ軸の二軸方向の振動に対する共振子3の共振強度に応じた電流を検出することができる。
【0020】
さらに、本発明のAEセンサ素子1は、図5に示したように、1本の共振子3の表面3aと裏面3bにそれぞれ4本の溝部4bと、1本の電界遮断溝4cを形成することもできる。各溝部4bの溝幅は2本の溝部4aの場合よりさらに狭くなるが、各溝部4bの内周面には電極膜5bが形成される。電界遮断溝4cは、共振子3の中央部に形成されており、電極膜は設けられていない。この電界遮断溝4cによって、共振子3に発生する左右の電界が互いに影響を受けることがないようにしている。4本の溝部4bに形成される電極膜5bを互いに極性の異なる電極となるように設定することで、Z軸方向の振動に対する共振子3の共振強度に応じた電流を検出することができる。
【0021】
上記のように、各共振子3の表面3a及び裏面3bに1又は2以上の溝部4,4a,4bを形成し、各溝部4,4a,4bの内周面に各共振子3が共振時に生じる歪で発生した電流を検出するための電極膜5,5a,5bを形成したので、共振子3に歪が発生した時の圧電電流変化を高感度で検出することが可能となる。
【0022】
図6には、本発明に係るAEセンサ素子の第2実施形態が示される。このAEセンサ素子10は、第1のAEセンサ素子11aと第2のAEセンサ素子11bとを備える。第1のAEセンサ素子11aと第2のAEセンサ素子11bは、それぞれのベース部12a,12bから延びる4本の共振子13a,13bが互いに向かい合わせの状態で配置される。合計で8本の共振子13a,13bは、それぞれ異なる周波数の振動波に対して共振するように寸法設定されており、この実施形態では、第1のAEセンサ素子11aに形成される共振子13aの方で低い領域の周波数の振動を検出できるように長めに寸法設定され、第2のAEセンサ素子11bに形成される共振子13bの方で高い領域の周波数の振動を検出できるように短めに寸法設定されている。8本全ての共振子13a,13bには、前記実施形態と同様、表面及び裏面に溝部14a,14bが形成され、各溝部14a,14bの内周面には電極膜15a,15bが形成される。
【0023】
上記AEセンサ素子10は、先の実施形態と同様、フォトリソ加工などによって、板状の水晶材から周囲のフレームと一体に形成することができる。なお、AEセンサ素子10に設けられる共振子13a,13bが8本に限定されないことは勿論である。
【0024】
図7及び図8には上記AEセンサ素子1を用いたAEセンサ20の一実施形態が示されている。このAEセンサ20は、AEセンサ素子1と、AEセンサ素子1を収容するケース21と、ケース21のキャビティ24内に配置される電子回路22とを有している。AEセンサ素子1は、前述したように、板状の水晶材をフォトリソ加工することで、周囲のフレーム23と一体に形成することができる。また、ケース21は上ケース21aと下ケース21bとによって形成され、ケース21のキャビティ24内にAEセンサ素子1を配置している。また、図9に示されるように、電子回路22は、増幅回路、整流回路、平滑回路、電圧判定回路、電圧信号回路、信号処理回路、無線回路などで構成され、AEセンサ素子1から出力された検出信号を選択的に信号処理する。AEセンサ20は、AEセンサ素子1と、AEセンサ素子1で検出された出力信号を処理する電子回路22とを一つのケース21にパッケージしたものであり、取り扱いが容易である。また、ケース21にはAEセンサ20の電源として小形電池が収容される場合もある。なお、電子回路22をケース21の外部に設置することも可能である。この場合にはAEセンサ20はケース21内にAEセンサ素子1のみ、又はAEセンサ素子1と小形電池を収容しただけの構成となる。また、必要に応じて電源線、グランド線、信号線などを引き出すための引出孔がケース21に設けられる場合がある。
【0025】
図9には電子回路22のブロック図が示されている。AEセンサ素子1から出力された検出信号は増幅回路で電圧が増幅されたのち整流回路において整流される。検出信号をデジタルデータとして処理する場合には平滑回路を経てから電圧判定回路に送られる。ここで電圧判定された信号は、信号処理回路において外部に送り出すための信号に処理され、無線回路を通じて、又は信号線を介して外部に送られる。信号処理回路での信号処理は、例えばコンパレータなどのような簡単な回路を用いて処理する場合や、デジタルシグナルプロセッサなどのような複雑な回路を用いて処理する場合などが考えられる。一方、AEセンサ素子1からの検出信号を振幅データとして処理する場合には、平滑回路を経てから電圧信号回路に送られる。ここで電圧信号に変換されてから信号処理回路において信号処理される。なお、電子回路22はIC化されていることが望ましい。
【0026】
図7に示したAEセンサ20は、ウエハレベルパッケージによって形成することができる。研磨されたウエハ状の水晶基材を3枚積層し、上下2枚の水晶基材にキャビティ24を形成し、このキャビティ24内にAEセンサ素子1と電子回路22が配置される。上下2枚の水晶基材が上ケース21aと下ケース21bを形成し、その間に挟まれた水晶基材にAEセンサ素子1が形成される。このようにして積層された3枚のウエハ状の水晶基材をケースごとにダイシングすることによって、AEセンサ20をパッケージ化することができる。AEセンサ20をウエハレベルパッケージにした場合には、ケースの外表面が研磨されているので、被測定物にAEセンサ20を密着させることができ、検出感度と精度の向上につながる。
【符号の説明】
【0027】
1,10 AEセンサ素子
2,12a,12b ベース部
2a ベース部の下部
3,13a,13b 共振子
3a 表面
3b 裏面
3c 両側面
4,4a,4b,14a,14b 溝部
4c 電界遮断溝
5,5a,5b,15a,15b 溝部の電極膜
6,6a 側面の電極膜
7a 正極端子
7b 負極端子
11a 第1のAEセンサ素子
11b 第2のAEセンサ素子
16,23 フレーム
20 AEセンサ
21 ケース
21a 上ケース
21b 下ケース
22 電子回路
24 キャビティ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9