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  • 特許-容器回転式混合装置用パドル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】容器回転式混合装置用パドル
(51)【国際特許分類】
   B01F 29/83 20220101AFI20220228BHJP
【FI】
B01F9/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019037676
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020138181
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2020-10-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 化学工学論文集,44巻,5号,第292~297頁,公益社団法人化学工学会,発行日:2018年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】391050145
【氏名又は名称】日本ソセー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073287
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 聞一
(72)【発明者】
【氏名】森川 議博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 禎人
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-178905(JP,A)
【文献】特開2003-126669(JP,A)
【文献】特開2008-136998(JP,A)
【文献】特開2019-150787(JP,A)
【文献】特開平07-171369(JP,A)
【文献】特開2007-090346(JP,A)
【文献】登録実用新案第3044591(JP,U)
【文献】仏国特許発明第01047613(FR,B1)
【文献】特開2006-204980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 29/00 - 29/90
B01F 27/00 - 27/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターンテーブル上に載置した容器を回転させて、該容器内の混合対象物を混合する容器回転式混合装置用のパドルであって、
前記容器外に配置されるアーム部と、該アーム部の先端に一体形成した、前記容器内に配置されるパドル部とを有し、該パドル部は、水平部位と、該水平部位の両端部より上方突出した垂直部位と、水平部位の中央より上方突出した、前記アーム部への連結軸部とを有し、前記垂直部位の少なくともどちらか一方の上端に内方突出部を設け、前記水平部位の下面を凸曲面としたことを特徴とする容器回転式混合装置用パドル。
【請求項2】
前記垂直部位の一方を高くし、前記垂直部位の他方に前記内方突出部を設けたことを特徴とする請求項1記載の容器回転式混合装置用パドル。
【請求項3】
前記連結軸部を、幅が広く両側部に両刃状のエッジ部を形成した柱状体としたことを特徴とする請求項1又は2記載の容器回転式混合装置用パドル。
【請求項4】
前記アーム部及びパドル部をプラスチックで一体成形したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の容器回転式混合装置用パドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を回転させて該容器内の混合対象物を混合する装置用のパドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かかる容器回転式混合装置用パドルにあっては、金属製で、図7に示す様に、容器a外に配置されるアーム部bと、該アーム部bの先端に一体形成した、容器a内に配置されるパドル部cとを有し、該パドル部cは、水平部位dと、該水平部位dの両端部より上方突出した垂直部位e、e′と、水平部位dの中央より上方突出した、アーム部bへの連結軸部fとを有し、水平部位dの下面及び垂直部位e、e′の外側面にゴム製のワイパーg、h、h′を設け、混合装置mにターンテーブルt上に設置した容器a内にパドル部cを収容し、ターンテーブルtにより容器aを回転させることで、パドル部cにより容器a内の混合対象物wを混練可能にしたものが見受けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-204980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術の山の字形パドルでは、混合対象物wが高粘性流体の場合、垂直部位e、e′の上端より内方且つ上方のリング状の領域s(図7のクロスハッチングで示された領域)が流動しないことが明らかとなったため、この非流動領域の発生により高粘性流体を均一に混練出来ないなど、解決せねばならない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記従来技術に基づく、山の字形パドルでは高粘性流体を均一に混練出来ない課題に鑑み、容器外に配置されるアーム部と、該アーム部の先端に一体形成した、前記容器内に配置されるパドル部とを有し、該パドル部は、水平部位と、該水平部位の両端部より上方突出した垂直部位と、水平部位の中央より上方突出した、前記アーム部への連結軸部とを有し、前記垂直部位の少なくともどちらか一方の上端に内方突出部を設け、前記水平部位の下面を凸曲面としていることによって、非流動領域に該当する領域の混合対象物を内方突出部位で混合可能にして、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0006】
要するに本発明は、前記容器外に配置されるアーム部と、該アーム部の先端に一体形成した、前記容器内に配置されるパドル部とを有し、該パドル部は、水平部位と、該水平部位の両端部より上方突出した垂直部位と、水平部位の中央より上方突出した、前記アーム部への連結軸部とを有し、前記垂直部位の少なくともどちらか一方の上端に内方突出部を設けたので、該内方突出部位により非流動領域に該当する領域の混合対象物を、他領域の混合対象物と混合することが出来るため、容器内の混合対象物を均一に混合することが出来る。
前記垂直部位の一方を高くし、前記垂直部位の他方に前記内方突出部を設けたので、他方の垂直部位より上方の混合対象物を一方の垂直部位で混合することが出来るため、容器内の混合対象物を更に均一に混合することが出来る。
【0007】
前記水平部位の下面を凸曲面としたので、水平部位下部の角部分の面積が広く且つ下向きに成ることから、混合対象物における容器下部の領域を流動化させることが出来るため、混合性能の更なる向上を図ることが出来る。
【0008】
前記連結軸部を、幅が広く両側部に両刃状のエッジ部を形成した柱状体としたので、容器内を流動する混合対象物が、連結軸部の一方のエッジ部で分流して、連結軸部の正背面に沿って流れ、他方のエッジ部を経て合流するため、他方のエッジ部より下流側の混合対象物の合流部位に溝が発生しないため、混合対象物への気泡の混入を防止することが出来る。
【0009】
前記アーム部及びパドル部をプラスチックで一体成形したので、軽量化を図ることが出来ると共に、水平部位の下面及び垂直部位の外側面にゴム製のワイパーを設けなくても、そのままで容器内面に損傷を与えない様にすることが出来る等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る容器回転式混合装置用パドルの正面図である。
図2図1のX-X断面の拡大図である。
図3図1のY-Y断面の拡大図である。
図4図1のパドルを取り付けた容器回転式混合装置の平面図である。
図5図4の容器回転式混合装置の一部断面正面図である。
図6】パドルが収容された容器の使用状態での水平断面図である。
図7】従来の容器回転式混合装置の一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る容器回転式混合装置用パドルは、容器A外に配置されるアーム部1と、該アーム部1の先端に一体形成した、容器A内に配置されるパドル部2とを有し、該パドル部2は、水平部位3と、該水平部位3の両端部より上方突出した垂直部位4、5と、水平部位3の中央より上方突出した、アーム部1への連結軸部6とを有し、垂直部位4、5の少なくともどちらか一方の上端に内方突出部7を設けている。
【0012】
具体的に説明すると、この容器回転式混合装置用パドルは、プラスチック製、望ましくはグラスファイバー等の繊維を加えた繊維強化プラスチック製の一体成形品で、図1~3に示す様に、アーム部1及びパドル部2で構成され、他方の垂直部位5に内方突出部7が形成されている。
【0013】
アーム部1は支柱部位8の上端に水平部位9を突設した略逆L字形状とし、支柱部位8の下方部位を丸棒形状の差込み部10としている。
【0014】
パドル部2は、一方の垂直部位4を他方の垂直部位5より高くし、連結軸部6は幅が広く、両側部に両刃状のエッジ部11、11a を形成した柱状体とし、具体的には、水平断面形状が偏平六角形の柱状体で、エッジ部11、11a 以外の4箇所の角部にR面を面取り形成している。
又、水平部位3の下面、垂直部位4、5の外側面を凸曲面12、13、14とし、水平部位3の上面、垂直部位4、5の内側面に両刃状のエッジ部を形成し、具体的には、断面形状をティアドロップ形状としている。
【0015】
尚、図面上、水平部位3のおける他方の垂直部位5側の部位の厚さが、一方の垂直部位4側の部位より薄くなっているが、同厚であっても良い。
【0016】
そして、図4、5に示す様に、混合装置Mにおける差込み穴Hにアーム部1の差込み部10を挿入すると共に、ターンテーブルT上に設置した容器A内にパドル部2を収容し、ターンテーブルTにより容器Aを回転させることで、図6に示す様に、混合対象物Wに押されてパドル部2が容器Aに当たるまで移動しこの状態のまま混合対象物Wを混合し、パドル部2により容器A内の高粘性流体である混合対象物W(例えば、シーリング材)を混合するが、内方突出部7により混合対象物Wの非流動領域がなくなって、混合対象物Wが均一に混合される。
【0017】
又、本発明に係る容器回転式混合装置用パドルをプラスチック製とすることで、容器Aにパドル部2があたっても、容器Aに傷は付かず、水平部位3の下面、垂直部位4、5の外側面を凸曲面12、13、14とすることで、容器A内面に対する摩擦抵抗が軽減される。
【0018】
実験1
掻き取り効果を持つ、連結軸部を長方形の板型とした従来型パドルを使用し、混合対象物は、塑性流体のモデル液として4wt%CVP水溶液を用い、容器回転式混合装置により、容器の回転数を45rpm、正転反転のインターバルを30sとして、脱色法により混合過程を可視化した結果、容器中央或いは容器底付近に非流動領域を形成することが明らかになった。
【0019】
実験2
本発明に係るパドルの試作品1の性能を確認するために混合可視化実験を行った。
容器Aの径を120mmとし、試作品1の翼径を115mm、一方の垂直部位4の高さを85mm、他方の垂直部位5の高さを60mmとして、水平部位3の下面が容器の底にほぼ接触するように設置した。
混合対象物は、CVP水溶液より降伏値が大きいデンプンのりを用い、容器回転式混合装置により、容器の回転数を45rpm、正転反転のインターバルを30sとし、試作品の混合過程の可視化および混合時間は、脱色法で観察・測定した。
【0020】
定性的な観察ではあるが、約600sで脱色は略完了し、容器Aの壁の上部にまだ脱色されていない薄い膜が観察されるが、これは他方の垂直部位5の高さが低いため、従来型パドルよりも掻き取り効果が若干弱くなったためと考えられる。
しかしながら、従来型パドルでは混合に約900s要したことから、たとえ他方の垂直部位5の高さが低くても、混合性能が向上したと考えられる。
また試作品が液面に露出する部分を減らすことができることから気泡の混入を防止できると考えられる。
【0021】
実験3
本発明に係るパドルの試作品2の実液による実験を行った。
容器Aの径を210mmとし、試作品2は、破損を防ぐためにGFRP製とし、翼径は、パドルが撓った時に容器Aの壁と接するよう205mmとし、一方の垂直部位4の高さを150mm、他方の垂直部位5の高さを110mmとして、水平部位3の下面を容器Aの底にほぼ接触するように設置した。
混合対象物Wは、建築現場で使用される降伏値が大きいポリウレタン系シーリング材(横浜ゴム株式会社、商品名:Hamatite SC-PU2NB)を用い、重量比で主剤(白色)10に対して硬化剤(透明)1の割合で2液を混合して全体量を6Lとし、容器回転式混合装置により、容器の回転数を45rpm、正転反転のインターバルを30sとし、混合過程を視覚的に観察するため、また混合時間の測定のために黒色のトレーサーを液自由表面に添加した。
【0022】
定性的な観察ではあるが、約300sでポリウレタン系シーリング材の混合が完了したと判断した。
白色の主剤と透明の硬化剤は均質に混合され、l日後には硬化した(混合が十分でない場合は硬化しない)。
又、見かけ粘度が高い混合対象物Wを、正逆反転機構を持つ容器回転式混合装置を用いて混合すると、シャフトを中心に設置したとしても、混合対象物Wから応力を受け、パドルがしなる様子が観察された。
この効果により、偏心撹拌(図6参照)の効果が加わり、容器A内の流れがより非定常な流れになったため、混合が促進したと考えられる。
シーリング材は品質品位の向上のため気泡の混入防止が求められており、硬化後のシーリング材を、缶ごと垂直に切断した断面を観察すると、従来型パドルでの断面に対し、試作品2での断面の方が気泡の混入が非常に少なく、気泡混入の防止が十分にできていると考えられる。
【0023】
従って、従来型パドルで観察された非流動領域を解消するための本発明に係るパドルの最適条件は、下記(1)~(6)を備えたものとなる。
(1)連結軸部6を板型とする。
(2)容器中央部の非流動領域を解消するため、他方の垂直部位5のドーナツリングの発 生する位置に内方突出部位7を形成して、片右非対称な形状とする。
(3)掻き取り効果をより大きくするため、水平部位3の縦幅、垂直部位4、5及び連結 軸部6の横幅を広くし、連結軸部6の両側面にエッジ部11、11a を、水平部位3及 び垂直部位4、5の内側面にエッジ部を形成する。
(4)容器A下部の非流動領域を解消するため、水平部位3及び垂直部位4、5の外側面 を凸曲面12、13、14として、水平部位3下部の角部分の面積を広くする。
(5)非定常な操作が混合操作に有効であるため、30sごとに正逆反転機構を持つ容器 回転式混合装置を採用する。
(6)混合後の混合対象物Wの製品品位を向上させるために気泡の混入を可能な限り最小 限にすべく、他方の垂直部位5の高さを、先端が液面より低くなる様に設定する。
【符号の説明】
【0024】
1 アーム部
2 パドル部
3 水平部位
4、5 垂直部位
6 連結軸部
7 内方突出部
11、11a エッジ部
12 凸曲面
A 容器

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7