(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】眼の状態を処置する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/6615 20060101AFI20220228BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220228BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20220228BHJP
A61K 31/435 20060101ALI20220228BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220228BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
A61K31/6615
A61K45/00
A61K38/13
A61K31/435
A61P27/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019538106
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(86)【国際出願番号】 US2017054051
(87)【国際公開番号】W WO2018064354
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-25
(32)【優先日】2016-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】318014201
【氏名又は名称】メディコン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リーガス, バジル
【審査官】古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0225529(US,A1)
【文献】特表2010-535817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0299124(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0295979(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 41/00-45/08
A61K 38/00-38/58
A61P 1/00-43/00
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において
、ドライアイ疾患および糖尿病性網膜症から選択される眼の状態を処置する
ための組成物であって、
前記組成物は、式IIIまたはIVの化合物:
【化121】
またはその塩を
含む、組成物。
【請求項2】
前記化合物が、式IIIである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記化合物が、式IVである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記状態が、ドライアイ疾患である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記化合物が、式IIIであり、そして前記状態が、ドライアイ疾患である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記化合物が、式IVであり、そして前記状態が、ドライアイ疾患である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記状態が、糖尿病性網膜症である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物が、式IIIであり、そして前記状態が、糖尿病性網膜症である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記化合物が、式IVであり、そして前記状態が、糖尿病性網膜症である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
(i)前
記ドライアイ疾患
が、シェーグレン症候群に関連する
;
(ii)前記ドライアイ疾患が、眼手術に伴う眼炎症および疼痛のうちの1つまたは複数である;
(iii)前記ドライアイ疾患が、ブドウ膜炎または結膜炎である;
(iv)前記ドライアイ疾患が、類嚢胞黄斑浮腫または糖尿病性網膜症である;
(v)前記ドライアイ疾患が、翼状片に関連する;あるいは、
(vi)前記ドライアイ疾患が、眼への機械的外傷または化学損傷に関連する、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記化合物が、局所的に投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記化合物が、点眼剤で投与される、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記化合物が、前記眼の表面に局部投与される、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、0.5重量%未満の前記式
IIIまたはIVの化合物を含むことを特徴とする、請求項
1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、0.2重量%未満の前記式
IIIまたはIVの化合物を含むことを特徴とする、請求項
14に記載の組成物。
【請求項16】
前記
式IIIまたはIVの化合物が、前記哺乳動物の体重1キログラムあたり約0.001mgから約100mgの間
の用量で投与されることを特徴とする、請求項1から
15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
治療有効量の追加の活性剤をさらに含む、請求項1から
16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記追加の活性剤が、抗生物質、シクロスポリン、リフィテグラストおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項
17に記載の組成物。
【請求項19】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本国際出願は、2017年9月28日に出願された米国仮出願第62/564,595号および2016年9月28日に出願された米国仮出願第62/400,955号に対する優先権の利益を主張し、その全体は本明細書に参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
眼窩、眼の筋肉、瞼、睫毛、結膜および涙器を含む、眼球およびその付属器、すなわち眼球の外側構造からなる眼は、多くの病的状態によって悪影響を受ける恐れがある。それらの中で、顕著なものは、a)ドライアイ疾患、術後炎症、結膜炎、眼瞼炎、ブドウ膜炎、脈絡膜炎、網膜炎、強膜炎および角膜炎を含む炎症状態、b)類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性網膜症を含む網膜状態、c)眼に対する機械的外傷および化学的損傷、およびd)翼状片などの様々な疾患である。疼痛は、それを制御するために、局所鎮痛薬が必要となることが多い、眼疾患の一般的な徴候である。
【0003】
ドライアイ疾患(DED)は、6名のヒト中の約1名(集団の15%)、とりわけ40歳を過ぎたヒトが冒される、一般的な障害である。世界の主要部分では、中程度および重症なDEDを有する6億名を超える患者が存在する。
【0004】
これらの個体のうちの一部は、シェーグレン症候群に罹患している。閉経後の年齢の女性は、ドライアイ集団の別のセグメントを占める。DEDは、様々な重症度を有する個体を悩ませ得る。軽症の例では、患者は、灼熱感、乾燥感およびその他の眼の不快な症状を経験することがある。重症な例では、視力が実質的に損なわれることがある。
【0005】
DEDを引き起こす恐れがある疾患には、ライリー-デイ症候群、シャイ-ドレーガー症候群、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、アミロイドーシス、放射線治療の後遺症、兎眼、ビタミンA欠乏症、スティーブンス-ジョンソン症候群、眼類天疱瘡、熱的または化学的熱傷、イドクスウリジン(IDU)の薬物毒性および緑内障の治療剤、眼瞼縁炎、マイボーム腺炎、眼内手術の後遺症、コンタクトレンズ感染症、糖尿病性角膜上皮症、VDT操作によるドライアイなどが含まれる。
【0006】
DEDは、様々な無関係な病原性の原因を有することがあるが、すべてが、露出した外側の眼表面の脱水およびその後の損傷を伴う、共通の作用として、眼の涙膜の破損を共有している。
【0007】
シェーグレン症候群として公知の全身性自己免疫疾患に苦しんでいる個体は、通常、重症なドライアイを経験している。この疾患では、涙腺の炎症により、正常な分泌プロセスが損なわれ、涙膜の異常をもたらす。眼の表面への変化は、炎症の様々なメディエーターの産生および蓄積を含む。
【0008】
DEDに対するこれまでの治療には、人工涙液製剤などの緩和剤と、局所コルチコステロイド、局所レチノイド(例えば、ビタミンA)、経口ピロカルピンおよび局所シクロスポリンなどの薬物の両方が含まれる。一般に、緩和治療は、DEDの症状のいくつかから短期的な軽減をもたらすことができるが、緩和製品は、一般的にドライアイ状態の生理学的な原因を取り除かないので、この軽減を維持するには眼にこのような製品を頻繁に適用する必要がある。これらの薬物治療は、ドライアイ状態の根本原因をその薬物が排除もしくは低減することができないこと、患者の総合的な眼の健康を脅かすその薬物からの副作用または患者の不十分な服薬遵守に至ること、またはこれらの要因の組合せに、通常、起因して、ドライアイ状態の処置の成功は限定的であった。
【0009】
例えば、ある種のグルココルチコイドは、このクラスにおける他の化合物よりも、眼内圧(「IOP」)を高める潜在性が一層大きい。このような化合物の1つである、非常に強力な眼の抗炎症剤であるプレドニゾロンは、中程度の眼の抗炎症活性を有するフルオロメトロンよりもIOPを高める傾向が一層強い。グルココルチコイドの局所眼使用に関連するIOP上昇のリスクは、経時的に増加する。言い換えると、これらの薬剤の慢性(すなわち、長期)使用により、IOPが有意に上昇するリスクが高まる。さらに、眼の感染症を有する患者におけるグルココルチコイドの投与は、眼への感染性損傷を高めることがある。
【0010】
数週間程度の短期治療を必要とする、物理的な外傷に関連する細菌感染症または急性眼炎症とは異なり、ドライアイ状態は、長期間、一般に、数カ月またはそれより長い間、処置を必要とする。コルチコステロイドのこのような慢性使用は、IOP上昇のリスクを有意に増加させる。コルチコステロイドの長期間使用は、通常、白内障形成のリスクを増加させる。
【0011】
永続的となり得る、白内障および他のタイプの眼の手術後の炎症は、外科的技法に多くの進歩があるにもかかわらず、依然として望ましくない結果である。コルチコステロイドおよび非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、このような眼炎症を、予防的におよび手術後に処置するため旧来より使用されてきたが、術後眼炎症および疼痛を処置するために使用した場合、コルチコステロイドとNSAIDとの両方に大きな安全性懸念がある。
【0012】
ブドウ膜炎は、ブドウ膜の炎症および組織破壊から生じ、多様な病因を有しており、かつ深刻な合併症に至る恐れがある。ブドウ膜炎は、コルチコステロイドにより局所点眼剤としてまたは経口治療としてのどちらかで、通常、処置され、このどちらも重大な副作用を伴う。ブドウ膜炎の処置には、安全かつ効果的な抗炎症剤が必要である。
【0013】
類嚢胞黄斑浮腫は、正常な血液網膜障壁の破壊による、斑の網膜肥厚化である。これは、網膜の細胞内空間内の流体の蓄積を引き起こす。失明は、光受容体の構造をゆがめる網膜の肥厚化および流体の収集から起こる。類嚢胞黄斑浮腫は、先進国世界では、中枢失明の主な原因である。類嚢胞黄斑浮腫の医療的治療には、局所または全身性NSAID、ならびにコルチコステロイドおよび抗VEGF剤の局所、眼周囲、全身性または硝子体内注射または埋め込みが含まれ、これらの3つはすべて、効力は不十分であり、重大な副作用を有する。
【0014】
結膜炎は、結膜の炎症または感染であり、結膜血管の拡張を特徴としており、通常、排出に関連する、結膜の充血および浮腫をもたらす。感染性病因には、ウイルスおよび細菌が含まれる。アレルギー反応は、別の共通の原因である。結膜炎の炎症を制御する必要がある。細菌性結膜炎の場合、抗生物質および抗炎症剤の共投与は、その臨床徴候を制御するために必要となることがある。
【0015】
糖尿病性網膜症とは、糖尿病を有する患者に起こる網膜変化を指す。これらの変化は、網膜の小さな血管に影響を及ぼし、いくつかの異なる経路により、失明に至る恐れがある。実際に、糖尿病性網膜症は、失明の最も一般的な原因の1つである。血管内皮成長因子(VEGF)は、虚血性網膜によって分泌される。VEGFは、a)網膜の腫れ/浮腫をもたらす血管透過性の増加、およびb)血管新生、すなわち新しい血管の形成をもたらす。VEGFを抑制する薬剤は、糖尿病性網膜症を制御することができる。
【0016】
翼状片は、角膜の進行性併発を伴う、眼瞼裂内の輪部結膜に由来する一般的な眼の表面の病変である。炎症および過剰増殖が、その病因の一部である可能性がある。翼状片の管理に対する治療的選択肢は、平滑化から外科的切除にまで及ぶ。再発および他の手術の潜在的リスクがあるため、翼状片の外科的除去は、最適な処置ではない。抗増殖性および抗炎症特性を有する薬剤は、この疾患を制御することができる。
【0017】
異物、指の爪、木の枝、紙による切れなどに由来する機械的外傷は、疼痛に関連し、その病因に応じて、異物感、羞明、かすみ目および流涙を伴う。処置は、平滑化、抗生物質および疼痛緩和物の他に、および特定の場合、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9の阻害剤およびコルチコステロイドを含む。利用可能な処置の効力および安全性が限定的であることを考慮すると、安全な鎮痛薬およびコルチコステロイドの代替物が、明確に必要とされている。
【0018】
眼への化学的損傷は、複数の病因を有する。一旦、刺激性の化学物質が完全に除去されると、上皮の治癒が始まり得る。損傷の時点で眼表面から放出された炎症メディエーターは、組織壊死、新血管形成および瘢痕化を引き起こし、さらなる炎症反応物質を誘引する。この炎症応答は、再上皮形成を阻害するだけでなく、角膜の潰瘍形成および穿孔のリスクを増加させる。炎症を制御することにより、この炎症サイクルを破壊することができる。局所コルチコステロイドを使用すると、炎症が制御されるが、重大な副作用を有する恐れがある。したがって、安全であり、かつ疼痛を軽減することができる抗炎症剤が、現在の治療的転帰を改善するために必要とされている。
【0019】
眼の痛みに苦しむ患者に無痛を有効にもたらすための選択肢がやはり欠如している。疼痛は、眼手術または他の状態に起因し得る。鎮痛薬は、通常、長期的というよりはむしろ急性投与されるが、関与する用量は一層高く、かつ角膜融解を含めた副作用をもたらす恐れがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、より有効な眼の治療が必要とされている。
【0021】
一態様では、本発明は、ドライアイ疾患、炎症、疼痛または結膜炎などの、患者における眼の状態を処置する方法であって、患者に式Iの化合物:
【化1】
(式中、可変基は、本明細書に定義されている通りである)
を投与することを含む方法を提供する。
【0022】
好ましい実施形態では、本化合物は、局所的に、例えば点眼剤で投与される。
【0023】
この分野における必要性に対処するため、本発明は、眼およびその関連構造体の様々な状態(すなわち、眼の状態)を処置するための化合物、組成物および方法を含む。一部の実施形態では、化合物、組成物および/またはキットによって処置される眼の状態は、ドライアイ疾患および網膜症を含むことができる。一部の実施形態では、網膜症は、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、VEGF網膜症、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞症および/または高血圧性網膜症の疾患を含むことができる。ある特定の実施形態では、網膜症は、糖尿病性網膜症であり得る。
【0024】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されているNSAID誘導体を含むまたは使用する、組成物、方法またはキットを含むことができる。一部の実施形態では、NSAID誘導体は、式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物:
【化2】
または薬学的に許容されるその塩であり得る。式IIIの化合物は、ホスホスリンダク(PS)と呼ばれることがある。式IVの化合物は、ホスホスリンダクII(PS-II)と呼ばれることがある。式IIIおよびIVの化合物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,236,820号に記載されている。
【0025】
一実施形態では、本発明は、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む、ドライアイ疾患を処置するための組成物を含む。
【0026】
一実施形態では、本発明は、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、および治療有効量の追加の活性剤、および薬学的に許容される担体を含むドライアイ疾患を処置するための組成物を含む。一部の実施形態では、追加の活性剤は、抗生物質、シクロスポリンおよびリフィテグラストのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0027】
一部の実施形態では、本発明は、治療有効量の式IIIの化合物、または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含むドライアイ疾患を処置するための組成物を含む。
【0028】
一実施形態では、本発明は、ドライアイ疾患を処置することを必要とする患者においてドライアイ疾患を処置する方法であって、患者に、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法を含む。
【0029】
一実施形態では、本発明は、ドライアイ疾患を処置することを必要とする患者においてドライアイ疾患を処置する方法であって、患者に、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、および治療有効量の追加の活性剤を投与することを含む方法を含む。一部の実施形態では、追加の活性剤は、抗生物質、シクロスポリンおよびリフィテグラストのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0030】
一部の実施形態では、本発明は、ドライアイ疾患を処置することを必要とする患者においてドライアイ疾患を処置する方法であって、患者に、治療有効量の式IIIの化合物、または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法を含む。
【0031】
一実施形態では、本発明は、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む、網膜症を処置するための組成物を含む。
【0032】
一実施形態では、本発明は、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、および治療有効量の追加の活性剤、および薬学的に許容される担体を含む、網膜症を処置するための組成物を含む。一部の実施形態では、追加の活性剤は、抗生物質、シクロスポリンおよびリフィテグラストのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0033】
一部の実施形態では、抗生物質は、テトラサイクリン、トブラマイシン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシンおよびエリトロマイシンのうちの1つまたは複数を含むことができる。他の抗生物質には、アミノグリコシド、アンピシリン、カルベニシリン、セファゾリン、セファロスポリン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、エベルニノマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、リポペプチド、メチシリン、ナフシリン、ノボビオシア(novobiocia)、オキサゾリジノン、ペニシリン、キノロン、リファンピン、ストレプトグラミン、ストレプトマイシン、スルファメトキサゾール、スルホンアミド、トリメトプリムおよびバンコマイシンが含まれる。
【0034】
一部の実施形態では、本発明は、治療有効量の式IIIの化合物、または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む、網膜症を処置するための組成物を含む。
【0035】
一実施形態では、本発明は、網膜症を処置することを必要とする患者において網膜症を処置する方法であって、患者に、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法を含む。
【0036】
一実施形態では、本発明は、網膜症を処置することを必要とする患者において網膜症を処置する方法であって、患者に、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、および治療有効量の追加の活性剤を投与することを含む方法を含む。一部の実施形態では、追加の活性剤は、抗生物質、シクロスポリンおよびリフィテグラストのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0037】
一部の実施形態では、本発明は、網膜症を処置することを必要とする患者において網膜症を処置する方法であって、患者に、治療有効量の式IIIの化合物、または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法を含む。
【0038】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置する方法であって、患者に、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの、角膜融解のリスクが低減した化合物、または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法を含む。
【0039】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの、角膜融解のリスクが低減した化合物、または薬学的に許容されるその塩および薬学的に許容される担体を含む組成物を含む。
【0040】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなるものから選択される眼の状態を処置するための組成物であって、群組成物の(the group composition)が、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、および可溶化剤(例えば、ビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート))、糖アルコール(例えば、マンニトール)、酸(例えば、ホウ酸)および保存剤(例えば、ポリクオタニウム-1(ポリクワッド(polyquad)))のうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。一部の実施形態では、このような製剤を使用して、眼への局所投与後、式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩を網膜に送達することができる。
【0041】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約0.5%~約10%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約0%~約25%のビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、約0%~約10%のマンニトール、約0%~約10%のホウ酸および約0%~約1%のポリクオタニウム-1(ポリクワッド)のうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0042】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で0.5%より多い式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに5%より多いビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、0.5%より多いマンニトール、0.5%より多いホウ酸および0.001%より多いポリクオタニウム-1(ポリクワッド)のうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0043】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で10%未満の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに25%未満のビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、10%未満のマンニトール、10%未満のホウ酸および1%未満のポリクオタニウム-1(ポリクワッド)のうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0044】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約3.5%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約16%のビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、約3.18%のマンニトール、約1.2%のホウ酸および約0.005%のポリクオタニウム-1(ポリクワッド)のうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0045】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびにゲル化賦形剤(例えば、ゲランガムまたはアルギン酸ナトリウム)、ポロキサマー、可溶化剤(例えば、ビタミンE TPGS)、界面活性剤、ポリエーテルおよびシクロデキストリン(例えば、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン)のうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。一部の実施形態では、このような製剤により、局所投与後、式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩を眼の前区に送達することが可能になり得る。
【0046】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびにゲランガム、ビタミンE TPGSおよび(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0047】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約0.5%~約10%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約0%~約5%のゲランガム、約0%~約20%のビタミンE TPGSおよび約0%~約20%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0048】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で0.5%より多い式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに0.1%より多いゲランガム、1%より多いビタミンE TPGSおよび5%より多い(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0049】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で20%未満の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに5%未満のゲランガム、20%未満のビタミンE TPGS、20%未満の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0050】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約2.4%~約3%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約0.5%のゲランガム、約5%のビタミンE TPGS、約10%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0051】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約2.4%~約3%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約0.4%のゲランガム、約10%のビタミンE TPGS、約5%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0052】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびにアルギン酸ナトリウム、ビタミンE TPGS、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン、Tween(例えば、Tween80)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)(例えば、PEG400)およびステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0053】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約0.5%~約10%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約0%~約5%のアルギン酸ナトリウム、約0%~約20%のビタミンE TPGSおよび約0%~約20%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0054】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で0.5%より多い式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに0.1%より多いアルギン酸ナトリウム、1%より多いビタミンE TPGSおよび5%より多い(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0055】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で10%未満の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに5%未満のアルギン酸ナトリウム、20%未満のビタミンE TPGS、20%未満の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0056】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約3%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約1.5%のアルギン酸ナトリウム、約5%のビタミンE TPGS、約10%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0057】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約0.5%~約10%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約0%~約5%のアルギン酸ナトリウム、約0%~約25%のTween80、約0%~約20%の(2-ヒドロキシルプロピル)-β-シクロデキストリン、約0%~約20%のPEG400および約0%~約10%のステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0058】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で0.5%より多い式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに1%より多いアルギン酸ナトリウム、1%より多いTween80、1%より多い(2-ヒドロキシルプロピル)-β-シクロデキストリン、1%より多いPEG400および1%より多いステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0059】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で10%未満の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに5%未満のアルギン酸ナトリウム、25%未満のTween80、20%未満の(2-ヒドロキシルプロピル)-β-シクロデキストリン、20%未満のPEG400および10%未満のステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0060】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で3%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約1.5%のアルギン酸ナトリウム、約15%のTween80、約10%の(2-ヒドロキシルプロピル)-β-シクロデキストリン、約10%のPEG400および約5%のステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0061】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約1%~約5%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約50%~約90%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)、約0.05%~約1%のcremophor EL(F1)および約0.5%~約5%のTween80(F2)のうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0062】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約1%~約5%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約50%~約90%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および約0.05%~約1%のcremophor EL(F1)のうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0063】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約1%~約5%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約50%~約90%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および約0.5%~約5%のTween80(F2)のうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0064】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約3%~約4%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約80%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および約0.1%のcremophor EL(F1)のうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0065】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約3%~約4%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約80%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および約1%のTween80(F2)のうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0066】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約1%~約10%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約1%~約40%のポロキサマー407および約1%~約20%のビタミンE TPGSのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0067】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で1%より多い式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに1%より多いポロキサマー407および1%より多いビタミンE TPGSのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0068】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で10%未満の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに40%未満のポロキサマー407および20%未満のビタミンE TPGSのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0069】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約5.4%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約20%のポロキサマー407および約12%のビタミンE TPGSのうちの1つまたは複数を含む、組成物を含む。
【0070】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、式IIIもしくは式IVの化合物など本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩および薬学的に許容される担体を含むナノ粒子製剤を含む組成物を含む。一部の実施形態では、ナノ粒子製剤は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)ナノ粒子を含むことができる。一部の実施形態では、ナノ粒子製剤は、メトキシポリ(エチレングリコール)-ポリ(ラクチド)(mPEG-PLA)ナノ粒子を含むことができる。一部の実施形態では、このような製剤により、局所投与後、PSを眼の前区に送達することが可能となり得る。
【0071】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約1%~約5%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体および約90%~約98%のmPEG-PLAを含むナノ粒子製剤を含む組成物を含む。
【0072】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約3%~約3.5%の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、および約96.5%~約97%のmPEG-PLAを含むナノ粒子製剤を含む組成物を含む。
【0073】
一部の実施形態では、式IIIおよび/または式IVの化合物は、鎮痛剤である。
【0074】
一部の実施形態では、式IIIおよび/または式IVの化合物は、抗炎症剤である。
【0075】
一部の実施形態では、式IIIおよび/または式IVの化合物は、角膜融解のリスクが低減しているか、または眼への投与の際に角膜融解をもたらさない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】
図1は、ウサギ眼への注射部位を例示している。Con Aが投与されている部位と共に、ウサギの右眼、およびその2つの涙腺が図示されている。ILGの部分は、頬骨の真下にある。上部右:配向座標。
【0077】
【
図2】
図2は、Con Aの注射前および後の、ILGの頭部の超音波検査画像を例示している。注射後の画像中に見られる特有の低エコーの空間により、注射が成功したことが確認される。
【0078】
【
図3】
図3は、Con Aが、涙腺において炎症を誘発することを例示している。H&Eにより染色された、ナイーブなウサギおよびCon Aを注射したウサギに由来するILGの頭部のミクロトーム切片。
【0079】
【
図4】
図4は、PSがウサギにおいて、ドライアイ疾患を抑制することを例示している。ビヒクルまたはPSのどちらかで3週間処置した2つの群のウサギにおいて、方法と同様に(as in Methods)、DEDを、3つの組のCon Aの注射により誘発し、対照ナイーブ群と比較した(n=8~10眼/群)。PSは、ビヒクルと対比させて、TBUT、浸透圧および涙のラクトフェリンレベルを正規化した。STTは、PSによって改善されたが、ビヒクルからの差異は、統計的有意性に到達しなかった。値=平均±平均の標準誤差。
【0080】
【
図5】
図5は、ウサギにおけるDEDに対する、PSと2種の眼科用NSAIDとの効果の比較を例示している。Con Aによって誘発されたDEDを有するウサギの4つの群を、方法と同様に、1週間、毎日、ビヒクルまたはPSまたはケトロラクまたはジクロフェナクにより処置した。ナイーブ群を対照として使用した。TBUT、浸透圧およびSTTの値は、ベースラインでは同等であった。ヒストグラムは、5日目における、これらの3つのパラメータに関する結果を図示している。3つの試験薬物からの結果は、ビヒクル群からの結果と比較した。3つの統計学的有意差が示されている。他はすべて有意ではなかった。ビヒクル群の値は、ナイーブ群と有意に異なった(図示せず)。値=平均±平均の標準誤差。
【0081】
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、PSが、NF-κBおよびMAPKの活性化を抑制することを例示している。
図6Aでは、NF-κB活性化は、TNFαにより刺激した培養ヒト結膜細胞(上部)において、およびCon A誘発DEDを有し、ビヒクルまたはPSのどちらかにより1週間処置したウサギのILG(下部)において、EMSAによって決定した。
図6Bにおいて、3.5時間、表示した濃度でPSにより処置した、培養ヒト結膜細胞における、リン酸化によってMAPKの活性化を検出したイムノブロット。ローディング対照:β-アクチン。
【0082】
【
図7A】
図7Aおよび7Bは、培養結膜細胞およびDEDを有するウサギのILGにおいて、PSがサイトカインレベルを抑制することを例示している。
図7Aでは、ヒト結膜細胞を、1xIC
50で、24時間、PSにより処置した(TNF-αを、PSの2時間後に、10ng/mlの濃度で培養培地に加えた)。サイトカインレベルは、ELISAによって決定し、3つの試料の平均値を表す。
図7Bでは、IL-1βレベルおよびIL-8レベルは、以前の通り、1週間、ビヒクルまたはPSにより処置したCon A誘発性DEDを有するウサギの涙腺においてELISAによって決定した。腺組織をホモジナイズし、ELISAを全組織溶解物に対して行った。n=8の腺/群。値=平均±平均の標準誤差。
【
図7B】
図7Aおよび7Bは、培養結膜細胞およびDEDを有するウサギのILGにおいて、PSがサイトカインレベルを抑制することを例示している。
図7Aでは、ヒト結膜細胞を、1xIC
50で、24時間、PSにより処置した(TNF-αを、PSの2時間後に、10ng/mlの濃度で培養培地に加えた)。サイトカインレベルは、ELISAによって決定し、3つの試料の平均値を表す。
図7Bでは、IL-1βレベルおよびIL-8レベルは、以前の通り、1週間、ビヒクルまたはPSにより処置したCon A誘発性DEDを有するウサギの涙腺においてELISAによって決定した。腺組織をホモジナイズし、ELISAを全組織溶解物に対して行った。n=8の腺/群。値=平均±平均の標準誤差。
【0083】
【
図8A】
図8Aおよび
図8Bは、PSが、MMPのレベルおよび活性を抑制することを例示している。
図8Aでは、ヒト結膜細胞を、1xIC
50で、PSにより処置した(TNF-αを、PSの2時間後に、10ng/mlの濃度で培養培地に加えた)。培養培地におけるMMP-1のレベルは、方法と同様に、ELISAにより決定した(n=3)。値=平均±平均の標準誤差。
図8Bでは、Con A誘発性DEDを有するウサギの2つの群を、方法と同様に、ビヒクルまたはPSにより1週間、処置した。ナイーブなウサギが対照として働いた。ILG(上部)および房水(中部)におけるMMP-9レベルをELISAによって決定した。MMP活性を、以前の通り、ナイーブなウサギ、およびPSまたはケトロラクにより処置した、Con A誘発性DEDを有するウサギの角膜において決定した。n=8眼/群。値=平均±平均の標準誤差。
【
図8B】
図8Aおよび
図8Bは、PSが、MMPのレベルおよび活性を抑制することを例示している。
図8Aでは、ヒト結膜細胞を、1xIC
50で、PSにより処置した(TNF-αを、PSの2時間後に、10ng/mlの濃度で培養培地に加えた)。培養培地におけるMMP-1のレベルは、方法と同様に、ELISAにより決定した(n=3)。値=平均±平均の標準誤差。
図8Bでは、Con A誘発性DEDを有するウサギの2つの群を、方法と同様に、ビヒクルまたはPSにより1週間、処置した。ナイーブなウサギが対照として働いた。ILG(上部)および房水(中部)におけるMMP-9レベルをELISAによって決定した。MMP活性を、以前の通り、ナイーブなウサギ、およびPSまたはケトロラクにより処置した、Con A誘発性DEDを有するウサギの角膜において決定した。n=8眼/群。値=平均±平均の標準誤差。
【0084】
【
図9A】
図9Aおよび
図9Bは、PSが、涙および角膜のPGE
2のレベルを保存することを例示している。
図9Aでは、PGE
2のレベルは、7日目にナイーブなウサギ、およびビヒクルまたはPSにより1週間、処置したCon A誘発性DEDを有するウサギから収集した涙においてELISAによって決定した。
図9Bでは、PGE
2レベルをさらに試験した。上のパネル:ナイーブなウサギおよび、方法と同様に、PSまたはケトロラクにより1時間、処置したCon A誘発性DEDを有するウサギの涙中のPGE
2レベル。下のパネル:ナイーブなウサギ、およびビヒクルまたはPSまたはケトロラクまたはジクロフェナクにより1週間、処置したCon A誘発性DEDを有するウサギの角膜組織におけるPGE
2レベル。n=8眼/群。値=平均±平均の標準誤差。
【
図9B】
図9Aおよび
図9Bは、PSが、涙および角膜のPGE
2のレベルを保存することを例示している。
図9Aでは、PGE
2のレベルは、7日目にナイーブなウサギ、およびビヒクルまたはPSにより1週間、処置したCon A誘発性DEDを有するウサギから収集した涙においてELISAによって決定した。
図9Bでは、PGE
2レベルをさらに試験した。上のパネル:ナイーブなウサギおよび、方法と同様に、PSまたはケトロラクにより1時間、処置したCon A誘発性DEDを有するウサギの涙中のPGE
2レベル。下のパネル:ナイーブなウサギ、およびビヒクルまたはPSまたはケトロラクまたはジクロフェナクにより1週間、処置したCon A誘発性DEDを有するウサギの角膜組織におけるPGE
2レベル。n=8眼/群。値=平均±平均の標準誤差。
【0085】
【
図10】
図10は、PSの眼の鎮痛作用を例示している。PSまたはビヒクルまたはリドカインを1滴、ウサギの片眼に適用し(n=4/群)、角膜知覚計を使用して角膜接触閾値(CTT)を決定した。ビヒクルは、CTTに対して影響を及ぼさなかった(図示せず;0値の水平線と重なる)。値=平均±平均の標準誤差。
【0086】
【
図11】
図11は、様々な条件下でのしょう尿膜(CAM)の画像を例示しており、PSにより、CAMにおいて新しい血管形成が顕著に低下した。
【0087】
【
図12】
図12は、DEDを有するウサギの涙腺における血管新生の阻害を例示している。
【0088】
【
図13】
図13は、PSが、ウサギにおいて眼炎症を抑制することを例示している。写真は、処置の開始の24時間後に得た。上のパネル:ビヒクルにより処置されたウサギは、顕著な炎症反応を示し、眼窩周囲浮腫のために、その眼を開くのが困難となった。下のパネル:PSにより処置されたウサギは、炎症反応が最小限またはまったくなく、これらのウサギは、その眼を完全に開くことができた。
【0089】
【
図14】
図14は、PSが、ウサギにおいて炎症細胞数を抑制することを例示している。上のパネル:白内障手術およびLPSによってウサギにおいて誘発された顕著な炎症反応により、ビヒクル処置されたウサギにおいて、AHにおける炎症細胞数が劇的に増加し、これは、PSにより防止された。データは、
図13の4羽のウサギに由来するものである。個々の値は、各ウサギの2つの眼の平均値である。下のパネル:5日目に除去した2つの埋め込んだレンズの代表的な写真。ビヒクル処置されたウサギからのレンズは、それに付着した細胞の存在量を示している。PSにより処置されたウサギからのレンズに細胞はほとんど観察され得ない。
【0090】
【
図15】
図15は、S.aureusの成長に適用した感受性ディスクを有する寒天プレートを例示している。成長阻害ゾーンがあることは明白である。試験した抗生物質は、レボフロキサシンであった。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
哺乳動物において眼の状態を処置する方法であって、患者に式Iの化合物:
【化22】
またはその塩(式I中:
X
1
は、-O-、-S-および-NR
1
-から選択され、
R
1
は、HまたはC
1~10
-アルキルであり、
Aは、フェニル、
【化23】
から選択され、
R
2
は、ハロゲン原子であり、
R
3
およびR
4
はそれぞれ、独立して、水素またはアルキルであり、
R
5
およびR
6
はそれぞれ、独立して、水素、-OH、アルコキシ、ハロ、トリフルオロアルキル、ハロアルキル、トリフルオロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルであり、
R
11
は、-SCH
3
、-S(O)CH
3
または-S(O)
2
CH
3
であり、
Bは、非置換アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルであるか、または1つもしくは複数のX
2
で置換されている、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルであり、
X
2
はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、-CN、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、-OR
R
、-SO
2
R
d
、-NR
b
R
c
、-C(=O)R
a
、-C(=O)OR
a
または
【化24】
から独立して選択され、
R
a
は、出現毎に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから独立して選択され、
R
b
およびR
c
は、出現毎に、水素、ヒドロキシ、SO
2
R
d
、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから独立して選択され、
R
d
は、出現毎に、水素、-N(R
e
)
2
、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから独立して選択され、
R
R
は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたはアシルであり、
Dは、
【化25】
である)
を投与することを含む、方法。
(項目2)
Aが、
【化26】
から選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
Aが、
【化27】
である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目4)
Bが、
【化28】
またはC
1
~C
10
アルキレンであり、R
7
がC
1
~C
3
アルキルであり、R
8
が、H、C
1
~C
3
アルキル、C
1
~C
3
アルコキシまたはハロである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記式Iの化合物が、
【化29】
から選択される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記式Iの化合物がPSである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
患者において眼の状態を処置する方法であって、該患者に、式IIの化合物:
A-D-Y
式II
またはその塩(式中、
Aは、A1~A38:
【表24-1】
【表24-2】
【表24-3】
から選択され、
Dは、D1~D10:
【表25】
から選択され、
Yは、Y1~Y4:
【表26】
から選択され、
nは、0~10から選択され、
mは、1~100から選択され、
Raは、出現毎に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから独立して選択される)
を投与することを含む、方法。
(項目8)
前記式IIの化合物が、化合物1~120のうちの1つ、またはその塩である、項目7に記載の方法。
(項目9)
患者において眼の状態を処置する方法であって、該患者に、化合物121~136から選択される化合物またはその塩を投与することを含む、方法。
(項目10)
前記眼の状態がドライアイ疾患である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記ドライアイ疾患がシェーグレン症候群に関連する、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記ドライアイ疾患がシェーグレン症候群に関連する、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記ドライアイ疾患が、眼手術に伴う眼炎症および疼痛のうちの1つまたは複数である、項目10に記載の方法。
(項目14)
前記ドライアイ疾患がブドウ膜炎または結膜炎である、項目10に記載の方法。
(項目15)
前記ドライアイ疾患が類嚢胞黄斑浮腫または糖尿病性網膜症である、項目10に記載の方法。
(項目16)
前記ドライアイ疾患が翼状片に関連する、項目10に記載の方法。
(項目17)
前記ドライアイ疾患が、眼への機械的外傷または化学損傷に関連する、項目10に記載の方法。
(項目18)
前記化合物が、少なくとも0.75mgの用量で投与される、項目10に記載の方法。
(項目19)
前記化合物が、少なくとも1.5mgの用量で投与される、項目10に記載の方法。
(項目20)
前記化合物が、少なくとも2mgの用量で投与される、項目10に記載の方法。
(項目21)
前記化合物が、鎮痛用量未満であるドライアイ疾患用量で投与される、項目10に記載の方法。
(項目22)
前記眼の状態が、疼痛または炎症である、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記化合物が、少なくとも2mgの用量で投与される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記化合物が、少なくとも3mgの用量で投与される、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記化合物が、少なくとも4mgの用量で投与される、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記化合物が、鎮痛用量で投与される、項目22に記載の方法。
(項目27)
前記化合物が、鎮痛用量未満である抗炎症用量で投与される、項目21に記載の方法。
(項目28)
前記眼の状態が結膜炎である、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記結膜炎がアレルギー性結膜炎である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記化合物が、少なくとも2mgの用量で投与される、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記化合物が、少なくとも3mgの用量で投与される、項目28に記載の方法。
(項目32)
前記化合物が、少なくとも4mgの用量で投与される、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記化合物が、鎮痛用量で投与される、項目28に記載の方法。
(項目34)
前記化合物が、角膜融解を引き起こさない用量で投与される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記化合物が、少なくとも2日間、少なくとも毎日1回、投与される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記化合物が、少なくとも7日間、少なくとも毎日1回、投与される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
式Iの化合物:
【化30】
またはその塩を含む製剤、および
ディスペンサーであって、
該ディスペンサーを使用して、該製剤を眼に送達する場合、該製剤の1滴または2滴が、眼の状態を処置するために治療上有効である該化合物の用量を含む、ディスペンサー
を含む医薬品パッケージであって、さらに、式中、
X
1
は、-O-、-S-および-NR
1
-から選択され、
R
1
は、HまたはC
1~10
-アルキルであり、
Aは、フェニル、
【化31】
から選択され、
R
2
は、ハロゲン原子であり、
R
3
およびR
4
はそれぞれ、独立して、水素またはアルキルであり、
R
5
およびR
6
はそれぞれ、独立して、水素、-OH、アルコキシ、ハロ、トリフルオロアルキル、ハロアルキル、トリフルオロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルであり、
R
11
は、-SCH
3
、-S(O)CH
3
または-S(O)
2
CH
3
であり、
Bは、非置換アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルであるか、または1つもしくは複数のX
2
で置換されている、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルであり、
X
2
はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、-CN、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、-OR
R
、-SO
2
R
d
、-NR
b
R
c
、-C(=O)R
a
、-C(=O)OR
a
または
【化32】
から独立して選択され、
R
a
は、出現毎に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから独立して選択され、
R
b
およびR
c
は、出現毎に、水素、ヒドロキシ、SO
2
R
d
、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから独立して選択され、
R
d
は、出現毎に、水素、-N(R
e
)
2
、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから独立して選択され、
R
R
は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたはアシルであり、
Dは、
【化33】
である、医薬品パッケージ。
(項目38)
Aが、
【化34】
から選択される、項目37に記載の医薬品パッケージ。
(項目39)
Aが、
【化35】
である、項目37または38のいずれか一項に記載の医薬品パッケージ。
(項目40)
Bが、
【化36】
またはC
1
~C
10
アルキレンであり、R
7
がC
1
~C
3
アルキルであり、R
8
が、H、C
1
~C
3
アルキル、C
1
~C
3
アルコキシまたはハロである、項目37から39のいずれか一項に記載の医薬品パッケージ。
(項目41)
前記式Iの化合物が、
【化37】
【化38】
から選択される、項目37から40のいずれか一項に記載の医薬品パッケージ。
(項目42)
前記式Iの化合物がPSである、項目37から41のいずれか一項に記載の医薬品パッケージ。
(項目43)
式IIの化合物:
A-D-Y
式II
またはその塩を含む製剤、および
ディスペンサーであって、
該ディスペンサーを使用して、該製剤を眼に送達する場合、該製剤の1滴または2滴が、眼の状態を処置するために治療上有効である該化合物の用量を含む、ディスペンサー
を含む医薬品パッケージであって、さらに、式中、
Aは、A1~A38:
【表27-1】
【表27-2】
【表27-3】
【表27-4】
から選択され、
Dは、D1~D10:
【表28】
から選択され、
Yは、Y1~Y4:
【表29】
から選択され、
nは、0~10から選択され、
mは、1~100から選択され、
Raは、出現毎に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル(heterocycl)、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから独立して選択される、医薬品パッケージ。
(項目44)
前記式IIの化合物が、化合物1~120のうちの1つである、項目43に記載の医薬品パッケージ。
(項目45)
化合物121~136から選択される化合物またはその塩を含む製剤、およびディスペンサーであって、
該ディスペンサーを使用して、該製剤を眼に送達する場合、該製剤の1滴または2滴が、眼の状態を処置するために治療上有効である該化合物の用量を含む、ディスペンサー
を含む、医薬品パッケージ。
(項目46)
前記眼の状態がドライアイ疾患である、項目37から45のいずれか一項に記載の医薬品パッケージ。
(項目47)
前記用量が、鎮痛用量未満であるドライアイ疾患用量である、項目46に記載の医薬品パッケージ。
(項目48)
前記眼の状態が疼痛または炎症である、項目37から45のいずれか一項に記載の医薬品パッケージ。
(項目49)
前記用量が、鎮痛用量未満である抗炎症用量である、項目48に記載の医薬品パッケージ。
(項目50)
前記用量が鎮痛用量である、項目48に記載の医薬品パッケージ。
(項目51)
前記眼の状態が結膜炎である、項目37から45のいずれか一項に記載の医薬品パッケージ。
(項目52)
前記結膜炎がアレルギー性結膜炎である、項目51に記載の医薬品パッケージ。
(項目53)
前記用量が、鎮痛用量未満である抗炎症用量である、項目51または52のいずれか一項に記載の医薬品パッケージ。
(項目54)
前記用量が鎮痛用量である、項目51または52のいずれか一項に記載の医薬品パッケージ。
(項目55)
前記ディスペンサーを使用して、眼に前記製剤を送達する場合、該製剤の1滴が、1.5mgの前記化合物を含む、項目37~45のいずれか一項に記載の医薬品パッケージ。
(項目56)
前記ディスペンサーを使用して、眼に前記製剤を送達する場合、該製剤の1滴が、2mgの前記化合物を含む、項目55に記載の医薬品パッケージ。
(項目57)
前記ディスペンサーを使用して、眼に前記製剤を送達する場合、該製剤の1滴が、3mgの前記化合物を含む、項目55に記載の医薬品パッケージ。
(項目58)
前記ディスペンサーを使用して、眼に前記製剤を送達する場合、該製剤の1滴が、4mgの前記化合物を含む、項目55に記載の医薬品パッケージ。
(項目59)
前記ディスペンサーを使用して、眼に前記製剤を送達する場合、該製剤の1滴が、5mgの前記化合物を含む、項目55に記載の医薬品パッケージ。
(項目60)
前記ディスペンサーが点眼器である、項目37から59のいずれか一項に記載の医薬品パッケージ。
(項目61)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置する方法であって、該患者に、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物:
【化39】
または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む、方法。
(項目62)
治療有効量の式IIIの化合物、または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記眼の状態がドライアイ疾患である、項目61または62に記載の方法。
(項目64)
前記眼の状態が、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、VEGF網膜症、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞症および高血圧性網膜症からなる群から選択される網膜症である、項目61または62に記載の方法。
(項目65)
前記眼の状態が糖尿病性網膜症である、項目64に記載の方法。
(項目66)
治療有効量の追加の活性剤を投与するステップを含む、項目61から65のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記追加の活性剤が、抗生物質、シクロスポリン、リフィテグラストおよびそれらの組合せからなる群から選択される、項目66に記載の方法。
(項目68)
前記化合物が、前記患者に局所投与される、項目61から67のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記化合物が、前記患者に点眼剤形で局所投与される、項目68に記載の方法。
(項目70)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物:
【化40】
または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
(項目71)
治療有効量の式IIIの化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む、項目70に記載の組成物。
(項目72)
前記眼の状態がドライアイ疾患である、項目70または71に記載の組成物。
(項目73)
前記眼の状態が、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、VEGF網膜症、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞症および高血圧性網膜症からなる群から選択される網膜症である、項目70または71に記載の組成物。
(項目74)
前記眼の状態が糖尿病性網膜症である、項目73に記載の組成物。
(項目75)
治療有効量の追加の活性剤を含む、項目70から74のいずれか一項に記載の組成物。
(項目76)
前記追加の活性剤が、抗生物質、シクロスポリン、リフィテグラストおよびそれらの組合せからなる群から選択される、項目75に記載の組成物。
(項目77)
前記組成物が点眼剤形として調製される、項目70から76のいずれか一項に記載の組成物。
(項目78)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置する方法であって、該患者に、治療有効量の式IIIもしくは式IVの角膜融解のリスクが低減した化合物:
【化41】
または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む、方法。
(項目79)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、治療有効量の式IIIもしくは式IVの角膜融解のリスクが低減した化合物:
【化42】
【化43】
または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
(項目80)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに可溶化剤、糖アルコール、酸および保存剤のうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目81)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約0.5%~約10%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約0%~約25%のビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、約0%~約10%のマンニトール、約0%~約10%のホウ酸および約0%~約1%のポリクオタニウム-1(ポリクワッド)のうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目82)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で0.5%より多い式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに5%より多いビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、0.5%より多いマンニトール、0.5%より多いホウ酸および0.001%より多いポリクオタニウム-1(ポリクワッド)のうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目83)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で10%未満の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに25%未満のビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、10%未満のマンニトール、10%未満のホウ酸および1%未満のポリクオタニウム-1(ポリクワッド)のうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目84)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約3.5%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約16%のビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、約3.18%のマンニトール、約1.2%のホウ酸および約0.005%のポリクオタニウム-1(ポリクワッド)のうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目85)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびにゲル化賦形剤、ポロキサマー、可溶化剤、界面活性剤、ポリエーテルおよびシクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目86)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびにゲランガム、ビタミンE TPGSおよび(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目87)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約0.5%~約10%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約0%~約5%のゲランガム、約0%~約20%のビタミンE
TPGSおよび約0%~約20%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目88)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で0.5%より多い式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに0.1%より多いゲランガム、1%より多いビタミンE TPGSおよび5%より多い(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目89)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で20%未満の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに5%未満のゲランガム、20%未満のビタミンE TPGSおよび20%未満の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目90)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約2.4%~約3%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約0.5%のゲランガム、約5%のビタミンE TPGS、約10%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目91)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約2.4%~約3%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約0.4%のゲランガム、約10%のビタミンE TPGS、約5%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目92)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびにアルギン酸ナトリウム、ビタミンE TPGS、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン、Tween(例えば、Tween80)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)(例えば、PEG400)およびステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目93)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約0.5%~約10%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約0%~約5%のアルギン酸ナトリウム、約0%~約20%のビタミンE TPGSおよび約0%~約20%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目94)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で0.5%より多い式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに0.1%より多いアルギン酸ナトリウム、1%より多いビタミンE TPGSおよび5%より多い(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目95)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で10%未満の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに5%未満のアルギン酸ナトリウム、20%未満のビタミンE TPGS、20%未満の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目96)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約3%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約1.5%のアルギン酸ナトリウム、約5%のビタミンE TPGS、約10%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目97)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約0.5%~約10%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約0%~約5%のアルギン酸ナトリウム、約0%~約25%のTween80、約0%~約20%の(2-ヒドロキシルプロピル)-β-シクロデキストリン、約0%~約20%のPEG400および約0%~約10%のステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目98)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で0.5%より多い式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに1%より多いアルギン酸ナトリウム、1%より多いTween80、1%より多い(2-ヒドロキシルプロピル)-β-シクロデキストリン、1%より多いPEG400および1%より多いステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目99)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で10%未満の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに5%未満のアルギン酸ナトリウム、25%未満のTween80、20%未満の(2-ヒドロキシルプロピル)-β-シクロデキストリン、20%未満のPEG400および10%未満のステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目100)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で3%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約1.5%のアルギン酸ナトリウム、約15%のTween80、約10%の(2-ヒドロキシルプロピル)-β-シクロデキストリン、約10%のPEG400および約5%のステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目101)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約1%~約5%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約50%~約90%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)、約0.05%~約1%のcremophor EL(F1)および約0.5%~約5%のTween80(F2)のうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目102)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約1%~約5%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約50%~約90%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および約0.05%~約1%のcremophor EL(F1)のうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目103)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約1%~約5%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約50%~約90%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および約0.5%~約5%のTween80(F2)のうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目104)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約3%~約4%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約80%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および約0.1%のcremophor EL(F1)のうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目105)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約3%~約4%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約80%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および約1%のTween80(F2)のうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目106)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約1%~約10%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約1%~約40%のポロキサマー407および約1%~約20%のビタミンE TPGSのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目107)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で1%より多い式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに1%より多いポロキサマー407および1%より多いビタミンE TPGSのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目108)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で10%未満の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに40%未満のポロキサマー407および20%未満のビタミンE TPGSのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目109)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約5.4%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、ならびに約20%のポロキサマー407および約12%のビタミンE TPGSのうちの1つまたは複数を含む、組成物。
(項目110)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩および薬学的に許容される担体を含むナノ粒子製剤を含む組成物。
(項目111)
前記ナノ粒子製剤がポリ(エチレングリコール)(PEG)ナノ粒子を含む、項目110に記載の組成物。
(項目112)
前記ナノ粒子製剤がメトキシポリ(エチレングリコール)-ポリ(ラクチド)(mPEG-PLA)ナノ粒子を含む、項目100または101に記載の組成物。
(項目113)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約1%~約5%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、および約90%~約98%のmPEG-PLAを含むナノ粒子製剤を含む、組成物。
(項目114)
眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、重量で約3%~約3.5%の式IIIもしくは式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩、薬学的に許容される担体、および約96.5%~約97%のmPEG-PLAを含むナノ粒子製剤を含む、組成物。
(項目115)
網膜症が、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、VEGF網膜症、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞症および高血圧性網膜症からなる群から選択される、項目69から114のいずれか一項に記載の組成物。
(項目116)
網膜症が糖尿病性網膜症である、項目115に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0091】
一部の実施形態では、本発明は、ドライアイ、炎症、疼痛または結膜炎などの、患者における眼の状態を処置する方法であって、患者に式Iの化合物:
【化3】
またはその塩を投与することを含む方法を提供する。式I中:
X
1は、-O-、-S-および-NR
1-から選択され、
R
1は、HまたはC
1~10-アルキルであり、
Aは、フェニル、
【化4】
から選択され、
R
2は、ハロゲン原子であり、
R
3およびR
4はそれぞれ、独立して、水素またはアルキルであり、
R
5およびR
6はそれぞれ、独立して、水素、-OH、アルコキシ、ハロ、トリフルオロアルキル、ハロアルキル、トリフルオロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルであり、
R
11は、-SCH
3、-S(O)CH
3または-S(O)
2CH
3であり、
Bは、非置換アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルであるか、または1つもしくは複数のX
2で置換されている、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルであり、
X
2はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、-CN、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、-OR
R、-SO
2R
d、-NR
bR
c、-C(=O)R
a、-C(=O)OR
aまたは
【化5】
から独立して選択され、
R
aは、出現毎に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから独立して選択され、
R
bおよびR
cは、出現毎に、水素、ヒドロキシ、SO
2R
d、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから独立して選択され、
R
dは、出現毎に、水素、-N(R
e)
2、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから独立して選択され、
R
Rは、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたはアシルであり、
Dは、
【化6】
である。
【0092】
一部の実施形態では、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ、水素、ハロ、C1~C6アルキルまたはC1~C6シクロアルキルである。
【0093】
一部の好ましい実施形態では、Aは、
【化7】
から選択される。
【0094】
一部の実施形態では、Bは、
【化8】
またはC
1~C
10アルキレンであり、R
7は、C
1~C
3アルキル、好ましくはメチルであり、R
8は、H、C
1~C
3アルキル、C
1~C
3アルコキシまたはハロであり、好ましくは、Hである。
【0095】
一部の好ましい実施形態では、Bは、-(CH2)4-である。
【0096】
【0097】
好ましい実施形態では、X2上のRa置換基のどちらも同じである。好ましくは、X2上のRa置換基のどちらも、1~3個の炭素原子を有するアルキル基である。一部の特に好ましい実施形態では、X2上のRa置換基のどちらも、エチル基である。
【0098】
ある特定の好ましい実施形態では、D上のRa置換基のどちらも同じである。好ましくは、D上のRa置換基のどちらも、1~3個の炭素原子を有するアルキル基である。一部の特に好ましい実施形態では、D上のRa置換基のどちらも、エチル基である。
【0099】
本発明の一部の実施形態では、Aは、以下:
【化10】
である。
【0100】
本発明の一部の実施形態では、Aは、以下:
【化11】
(式中、R
11は、-SCH
3、-S(O)CH
3または-S(O)
2CH
3、好ましくはS(O)CH
3である)である。
【0101】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、ホスホ-スリンダクI(PS)またはホスホ-スリンダクII(PS-II):
【化12】
である。
【0102】
一部の好ましい実施形態では、式Iの化合物は、PSである。
【0103】
本発明の一部の実施形態では、Aは、以下:
【化13】
である。
【0104】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、ホスホバルプロ酸:
【化14】
である。
【0105】
一部の実施形態では、本発明は、患者において、ドライアイ、炎症、疼痛または結膜炎などの眼の状態を処置する方法であって、患者に、その各々の内容の全体が参照により本明細書に完全に組み込まれている、US2009/0099137A1、US2013/0225529A1およびUS2014/0315834に開示されている化合物のうちの1つまたは複数を投与することを含む方法を提供する。
【0106】
一部の実施形態では、本発明は、患者において、ドライアイ、炎症、疼痛または結膜炎などの眼の状態を処置する方法であって、患者に式IIの化合物:
A-D-Y
式II
またはその塩を投与することを含む方法を提供する。式II中、
Aは、A1~A38から選択される。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
Dは、D1~D10から選択される。
【表4】
n=0~10、および好ましくは1~6である。
Yは、Y1~Y4から選択される:
【表5-1】
【表5-2】
(式中、m=1~100、および好ましくは30~50であり、
R
aは、出現毎に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから独立して選択される)。
【0107】
以下の表は、例示的な式IIの化合物を列挙する:
【表6-1】
【表6-2】
【0108】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、以下の1つ:
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
である。
使用方法
【0109】
NSAIDは、2つの理由のため、DEDの処置に使用されない。第1に、それらが効果的である証拠が存在せず、第2に、それらは、ひどい眼の副作用、最も顕著には角膜融解を伴う。実際に、NSAIDは、DEDを有する患者には禁忌である。
【0110】
局所眼科用NSAIDの最も危険な合併症が、角膜融解である。角膜融解は、角膜上皮が深刻に損傷を受けている、または失われている状態であり、角膜間質(これは、コラーゲンから主になる)の菲薄化を伴う。この間質の進行性菲薄化は、主に屈折異常により失明、または感染症などのその後の合併症から眼自体の喪失にさえ至る恐れがある、眼の穿孔を生じ得る。角膜融解は、眼の手術後、および角膜表面に対する炎症または他の損傷の状況で、通常、起こる。しかし、角膜融解は、やはり、視線固定(quiet eye)で起こり得る。
【0111】
一般に、角膜がDEDによって既に損なわれていると、角膜融解のリスクが増加するので、すべてのオピニオンリーダーは、眼科においてNSAIDを使用することに細心の注意を払うことを推奨しており、DEDにおけるNSAIDの使用を推奨していない。
【0112】
本明細書において記載されている化合物(例えば、式Iの化合物、式IIの化合物および化合物1~136)は、一般に言えば、NSAIDの誘導体および他の化合物である。例えば、PSは、NSAIDスリンダクの誘導体である。したがって、とりわけ、NSAIDスリンダクは、これに対する角膜のカルボキシルエステラーゼによって容易に加水分解を受け得るので、DEDの処置においてやはり禁忌になると予想され、このNSAIDスリンダクは、ひいては、その活性な代謝産物であるスリンダクスルフィドおよびスリンダクスルホンに変換される。
【0113】
しかし、PSは効果的であり、DEDの処置にも安全である。特に、PSは、DEDを処置するのに有効な用量で、および有効な期間にわたって投与されると、角膜融解を引き起こさない。PSは、眼の痛みに対する鎮痛薬としてもやはり効果的であり、安全である。
【0114】
一部の実施形態では、本発明は、患者において眼の状態を処置する方法であって、患者に、ある用量の本明細書に記載されている化合物の1つを投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本化合物は、式Iの化合物である。一部の実施形態では、本化合物は、式IIの化合物である。一部の実施形態では、本化合物は、化合物1~120から選択される。一部の実施形態では、本化合物は、化合物121~136から選択される。ある特定の実施形態によれば、眼の状態は、ドライアイ疾患、疼痛または炎症、眼の術後疼痛および/または炎症、結膜炎、ブドウ膜炎、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、シェーグレン症候群、翼状片、または眼への機械的外傷または化学損傷である。
【0115】
ある特定の実施形態では、用量は、本明細書に記載されている通り選択される。ある特定の実施形態では、用量は、少なくとも0.75mg、少なくとも1.5mg、少なくとも2mg、少なくとも3mgまたは少なくとも4mgである。一部の実施形態では、用量は、0.75mg以下、1.5mg以下、2mg以下、3mg以下または4mg以下である。一部の実施形態では、用量は鎮痛用量である。一部の実施形態では、用量は、鎮痛用量未満である抗炎症用量であり、すなわち用量は、ドライアイ疾患を処置するのに有効であるが、鎮痛をもたらすことはない。一部の実施形態では、用量は、眼の状態を処置するのに十分であるが、鎮痛または抗炎症活性はもたらさない。好ましい実施形態では、用量は、角膜融解を引き起こさない。
【0116】
投与するステップは、当業者に公知の任意の適切な送達方法によって行ってもよい。ある特定の実施形態では、投与するステップは、本化合物を眼の表面に局部投与すること、直接注射により眼の後部に本化合物を送達すること、本化合物を涙腺に注射すること、または眼内に本化合物を沈着させること(depositing)を含む。
【0117】
本化合物は、当業者に公知の任意の眼製剤において、投与するために製剤化され得る。例えば、本化合物は、点眼剤、注射用製剤、軟膏剤、スプレー剤、ゲル剤または徐放製剤に製剤化され得る。一部の実施形態では、本製剤は、0.3重量%の本化合物を含む。一部の実施形態では、本製剤は、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%または5.0%の本化合物を含む。一部の好ましい実施形態では、本製剤は、0.5%の本化合物を含む。一部の好ましい実施形態では、本製剤は、2.0%の本化合物を含む。一部の実施形態では、投与するステップは、2滴の本製剤を投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、1日に、2回、3回または4回の投与するステップを繰り返すことを含む。一部の実施形態では、液滴のサイズは、10~100μLの間にある。液滴サイズは、約10μL、約20μL、約30μL、約40μL、約50μL、約60μL、約70μL、約80μL、約90μLまたは約100μLであり得る。
【0118】
一部の実施形態では、本方法は、2日間、7日間または14日間、少なくとも毎日1回、投与するステップを繰り返すことを含む。
【0119】
一部の実施形態では、本発明は、治療有効用量の本明細書に記載されている化合物の1つを投与することを含む、DEDを処置する方法を提供する。DEDは、例えば、眼手術に関連する眼炎症および/または疼痛;ブドウ膜炎または結膜炎;類嚢胞黄斑浮腫または糖尿病性網膜症;翼状片;または眼への機械的外傷または化学損傷を伴うことがある。好ましい実施形態では、本化合物は、局所的に、例えば点眼剤で投与される。一部の実施形態では、DEDの治療有効用量は、少なくとも0.75mg、少なくとも1.5mg、または少なくとも2mgである。一部の実施形態では、DEDの治療有効用量は、0.75mg以下、1.5mg以下、または2mg以下である。一部の実施形態では、用量は、鎮痛用量未満であるドライアイ疾患用量であり、すなわちこの用量は、ドライアイ疾患を処置するのに有効であるが、鎮痛をもたらすことはない。好ましい実施形態では、式Iの化合物はPSである。
【0120】
一部の実施形態では、本発明は、哺乳動物の眼に、式Iの化合物の製剤を1滴投与することを含む、DEDを処置する方法であって、製剤が、10重量%未満の式Iの化合物を含む方法を提供する。一部の実施形態では、本製剤は、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%または10%の式Iの化合物を含む。一部の好ましい実施形態では、本製剤は、0.5%の式Iの化合物を含む。一部の好ましい実施形態では、本製剤は、2.0%の式Iの化合物を含む。一部の実施形態では、本製剤は、10.0%未満、9.5%未満、9.0%未満、8.5%未満、8.0%未満、7.5%未満、7.0%未満、6.5%未満、6.0%未満、5.5%未満、5.0%未満、4.5%未満、4.0%未満、3.5%未満、3.0%未満、2.5%未満、2.0%未満、1.9%未満、1.8%未満、1.7%未満、1.6%未満、1.5%未満、1.4%未満、1.3%未満、1.2%未満、1.1%未満、1.0%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満または0.1%未満の式Iの化合物を含む。一部の好ましい実施形態では、本製剤は、0.5%未満の式Iの化合物を含む。一部の好ましい実施形態では、本製剤は、0.2%未満の式Iの化合物を含む。一部の実施形態では、本方法は、2滴の本製剤を投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、1日に、2回、3回または4回の投与するステップを繰り返すことを含む。一部の実施形態では、液滴のサイズは、10~100μLの間にある。液滴サイズは、約10μL、約20μL、約30μL、約40μL、約50μL、約60μL、約70μL、約80μL、約90μLまたは約100μLであり得る。一部の実施形態では、本方法は、2日間、7日間または14日間、少なくとも毎日1回、投与するステップを繰り返すことを含む。
【0121】
一部の実施形態では、本発明は、眼痛または炎症を処置するための方法を提供する。一部の実施形態では、眼痛または炎症の治療有効用量は、少なくとも2.0mg、少なくとも3.0mgまたは少なくとも4.0mgである。一部の実施形態では、眼痛または炎症の治療有効用量は、2.0mg以下、3.0mg以下、または4.0mg以下である。眼痛または炎症は、眼の痛みまたは急性炎症であり得、眼手術(例えば、白内障手術)から生じ得る。好ましい実施形態では、式Iの化合物はPSである。一部の実施形態では、本発明は、哺乳動物の眼に、式Iの化合物の製剤を1滴投与することを含む、眼痛または炎症を処置する方法であって、製剤が、0.3重量%の式Iの化合物を含む方法を提供する。一部の実施形態では、本製剤は、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%または5.0%の式Iの化合物を含む。一部の好ましい実施形態では、本製剤は、0.5%の式Iの化合物を含む。一部の好ましい実施形態では、本製剤は、2.0%の式Iの化合物を含む。一部の実施形態では、本方法は、2滴の本製剤を投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、1日に、2回、3回または4回の投与するステップを繰り返すことを含む。一部の実施形態では、液滴のサイズは、10~100μLの間にある。液滴サイズは、約10μL、約20μL、約30μL、約40μL、約50μL、約60μL、約70μL、約80μL、約90μLまたは約100μLであり得る。一部の実施形態では、本方法は、2日間、7日間または14日間、少なくとも毎日1回、投与するステップを繰り返すことを含む。
【0122】
一部の実施形態では、本発明は、アレルギー性結膜炎などの結膜炎を処置するための方法を提供する。一部の実施形態では、結膜炎の治療有効用量は、少なくとも2.0mg、少なくとも3.0mgまたは少なくとも4.0mgである。一部の実施形態では、結膜炎の治療有効用量は、2.0mg以下、3.0mg以下、または4.0mg以下である。結膜炎は、アレルギー性結膜炎、ウイルス性結膜炎または細菌性結膜炎であり得る。好ましい実施形態では、式Iの化合物はPSである。一部の実施形態では、本発明は、哺乳動物の眼に、式Iの化合物の製剤を1滴投与することを含む、結膜炎を処置する方法であって、製剤が、0.3重量%の式Iの化合物を含む方法を提供する。一部の実施形態では、本製剤は、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%または5.0%の式Iの化合物を含む。一部の好ましい実施形態では、本製剤は、0.5%の式Iの化合物を含む。一部の好ましい実施形態では、本製剤は、2.0%の式Iの化合物を含む。一部の実施形態では、本方法は、2滴の本製剤を投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、1日に、2回、3回または4回の投与するステップを繰り返すことを含む。一部の実施形態では、液滴のサイズは、10~100μLの間にある。液滴サイズは、約10μL、約20μL、約30μL、約40μL、約50μL、約60μL、約70μL、約80μL、約90μLまたは約100μLであり得る。一部の実施形態では、本方法は、2日間、7日間または14日間、少なくとも毎日1回、投与するステップを繰り返すことを含む。
【0123】
一部の実施形態では、本発明は、治療有効用量の本明細書に記載されている化合物の1つを投与することを含む、類嚢胞黄斑浮腫または糖尿病性網膜症を処置する方法を提供する。用量は、本明細書に記載されている通り、選択することができる。これらの実施形態では、本化合物は、眼の表面に局部投与されてもよく、眼の後部に直接注射によって送達されてもよく、または徐放製剤で眼内に沈着させてもよい。
【0124】
一部の実施形態では、本発明は、治療有効用量の本明細書に記載されている化合物の1つを投与することを含む、シェーグレン症候群を処置する方法を提供する。用量は、本明細書に記載されている通り、選択することができる。これらの実施形態では、本化合物は、好ましくは徐放製剤に製剤化して、涙腺の近傍の皮膚への適用によって、涙腺への直接注射によって、眼の表面に、涙腺に、局部投与されてもよく、涙腺内にもしくはその近くに沈着させてもよい。
【0125】
一部の実施形態では、本発明は、治療有効用量の本明細書に記載されている化合物の1つを投与することを含む、翼状片を処置する方法を提供する。用量は、本明細書に記載されている通り、選択することができる。これらの実施形態では、本化合物は、例えば、点眼製剤、軟膏剤またはスプレー剤で、または翼状片内にマイクロインジェクションによって眼の表面に投与してもよい。
【0126】
一部の実施形態では、本発明は、治療有効用量の本明細書に記載されている化合物の1つを投与することを含む、眼への機械的外傷または化学損傷を処置する方法を提供する。用量は、本明細書に記載されている通り、選択することができる。これらの実施形態では、本化合物は、例えば、点眼製剤、軟膏剤、スプレー剤または好適な徐放製剤で、罹患領域に局部投与してもよい。
【0127】
本明細書に記載されている化合物および組成物は、眼の疾患を処置する方法において使用することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物、組成物、方法およびキットによって処置される眼の疾患は、ドライアイ疾患および網膜症を含む。一部の実施形態では、網膜症は、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、VEGF網膜症、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞症および/または高血圧性網膜症の疾患を含むことができる。ある特定の実施形態では、網膜症は、糖尿病性網膜症であり得る。
【0128】
ドライアイ疾患(DED)は、涙膜のホメオタシスの喪失を特徴とする、および眼症状を伴う、眼表面の多因子性疾患である。DEDにおける涙膜は、以下の3つの理由の1つまたは複数による異常である:涙生成が低下する;涙の蒸発が増加する;または涙の粘液または脂質が異常である。DEDの臨床徴候は、非常に軽度のものから、それらが、読書および運転、患者のクオリティオブライフへの深刻な影響などの、視覚的注意を必要とする活動を行う能力が低下している点まで、重症度は様々となり得る。それが世界的に分布していること、およびその診断に対する単一の明確な試験または診断基準のコンセンサスが欠如していることを考慮すると、DEDに対する有病率の数字(prevalence figure)は様々である。その有病率の最良の推定値は、15%(女性の場合、17.9%および男性の場合10.5%)であり、一部の著者は、15%さえ過小推定値と考えている。
【0129】
DEDは、その病因が広範囲な研究下にある、炎症性疾患である。例えば、涙腺の機能不全、慢性の刺激ストレスまたは全身性自己免疫疾患は、眼炎症をもたらす恐れがある。ひいては、炎症は、機能不全、または悪循環を定着させる涙の分泌を担う細胞の死を引き起こし、これは、損傷が始まるかにかかわらず、眼表面の疾患をもたらす。DEDにおける炎症プロセスに対する重要な一因は、以下である:(1)炎症誘発性サイトカインの活性化;MAPKによる炎症メディエーターを刺激する涙の高い浸透圧;(2)角膜上皮の基底膜および密着結合タンパク質の構成成分を溶解するマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP);(3)近くの応答細胞を動員するケモカイン;および(4)例えばシェーグレン症候群における、炎症細胞を誘引することによる、カスケードを増幅することができる、T細胞。
【0130】
DEDの処置は、その臨床的重症度に依存する。非常に軽度の疾患の症状は、人工涙液により処置されることが多く、これにより、部分的軽減をもたらすが、炎症を抑制しない。進行性疾患は、免疫抑制薬であるシクロスポリン、最近承認されたインテグリンアンタゴニストであるリフィテグラスト、涙点プラグまたは希にコルチコステロイドにより管理される。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、DESにおいて役割を有していない。
【0131】
一実施形態では、本発明は、ドライアイ疾患を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患を処置する方法であって、患者に、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法を含む。
【0132】
一部の実施形態では、化合物は、式IIIの化合物または薬学的に許容されるその塩であり得る。
【0133】
一部の実施形態では、ドライアイ疾患を処置するための方法には、治療有効量の追加の活性剤の投与を含むことができる。一部の実施形態では、追加の活性剤は、抗生物質、シクロスポリンおよびリフィテグラストのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0134】
糖尿病性網膜症とは、糖尿病を有する患者に起こる網膜変化を指す。これらの変化は、網膜の小さな血管に影響を及ぼし、いくつかの異なる経路により、失明に至る恐れがある。斑を含む、網膜の肥厚化および浮腫として定義される黄斑浮腫は、糖尿病性網膜症のいかなる段階でも起こり得る。糖尿病性網膜症は、失明の最も一般的な原因の1つである。血管内皮成長因子(VEGF)は、虚血性網膜によって分泌される。VEGFは、(a)網膜の腫れ/浮腫をもたらす血管透過性の増加、および(b)血管新生、すなわち新しい血管の形成をもたらす。VEGFを抑制する薬剤は、糖尿病性網膜症を制御することができる。
【0135】
糖尿病性網膜症に加えて、他のいくつかの眼疾患が、VEGFに主に依存する異常な脈管現象を特徴とする。これらの障害におけるVEGFの役割を考慮すると、VEGFを制御することが、その予防および処置に対する手法である。それらの中で顕著なものは、中枢視力の喪失を主にもたらす、網膜の中枢部分の変性疾患(斑)である、加齢黄斑変性(AMD)である。中枢視力は、運転、読書、テレビの視聴および日常生活の動作などの活動に必要である。AMDは、臨床目的の場合、乾燥型(萎縮性)または滲出型(新生血管型または滲出型)として分類される。脈絡膜新血管形成とも呼ばれる滲出型AMDは、通常、脈絡膜循環から、およびそれほど頻度は高くないが網膜循環から、網膜下腔への異常な血管成長を特徴とする。これらの異常な血管が漏れると、網膜の下の網膜下流体および/または血液の集まり(collection)がもたらされる。
【0136】
網膜静脈閉塞症(RVO)は、世界中の高齢者のなかで、失明の重要な原因である。この実体に対する治療標的でもある(alo)RVOの重要な構成成分は、黄斑浮腫、網膜新血管形成および前区新血管形成を含めた、視力に影響を及ぼすその二次合併症である。VEGFは、このような視力を決める合併症において重要な役割を果たす。重症(虚血性)な網膜中心静脈閉塞症を有する患者は、多くの場合、診断の最初の数カ月以内に、特に新血管緑内障の高いリスクにあり、この期間の間、前区新血管形成の発症に対して、少なくとも毎月観察すべきである。実際に、重症(虚血性)な網膜中心静脈閉塞症を有する患者は、特に、新血管緑内障の高いリスクにあり、前区新血管形成の発症が密接に観察される。RVOを有する患者におけるVEGF阻害剤は、黄斑浮腫を制限して、血管透過性の低下により視力が改善するという仮説が立てられている。
一実施形態では、本発明は、糖尿病性網膜症を処置することを必要とする患者において、糖尿病性網膜症を処置する方法であって、患者に、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法を含む。
【0137】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置する方法であって、患者に、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの、角膜融解のリスクが低減した化合物、または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法を含む。
【0138】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、治療有効量の式IIIもしくは式IVの化合物などの、角膜融解のリスクが低減した化合物、または薬学的に許容されるその塩および薬学的に許容される担体を含む組成物を含む。
【0139】
一部の実施形態では、本化合物は、式IIIの化合物または薬学的に許容されるその塩であり得る。
【0140】
一部の実施形態では、糖尿病性網膜症を処置するための方法は、治療有効量の追加の活性剤の投与を含むことができる。一部の実施形態では、追加の活性剤は、抗生物質、シクロスポリンおよびリフィテグラストのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0141】
一部の実施形態では、抗生物質(the antibiotic the antibiotic)は、テトラサイクリン、トブラマイシン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシンおよびエリトロマイシンのうちの1つまたは複数を含むことができる。他の抗生物質には、アミノグリコシド、アンピシリン、カルベニシリン、セファゾリン、セファロスポリン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、エベルニノマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、リポペプチド、メチシリン、ナフシリン、ノボビオシア、オキサゾリジノン、ペニシリン、キノロン、リファンピン、ストレプトグラミン、ストレプトマイシン、スルファメトキサゾール、スルホンアミド、トリメトプリムおよびバンコマイシンが含まれる。
【0142】
一部の実施形態では、抗生物質は、ネオマイシン硫酸塩またはポリミキシンB硫酸塩を含むことができる。
【0143】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、眼の状態を処置するための追加の化合物の投与を含むことができ、追加の化合物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,236,820号および/または米国特許出願第2009/0099137号、同第2013/0225529号および同第2014/0315834号に開示されている化合物の1つまたは複数を含むことができる。
【0144】
示されている疾患または障害を処置する、予防するおよび/または管理することにおける、本明細書に記載されている方法、化合物および化合物の組合せの効力を、当分野で公知の様々な動物モデルを使用して試験することができる。
定義
【0145】
特に本明細書において定義されていない限り、本出願において使用される科学用語および技術用語は、当業者により一般に理解されている意味を有するものとする。一般に、本明細書に記載されている、化学、細胞および組織培養、分子生物学、細胞およびがん生物学、神経生物学、神経化学、ウイルス学、免疫学、微生物学、薬理学、遺伝学およびタンパク質および核酸化学に関連して、およびそれらの技法において使用される命名は、当分野において周知であり、一般に使用されているものである。
【0146】
本明細書で使用する場合、用語「投与する」、「投与」または「投与すること(administering)」とは、(1)保健医師(health practitioner)またはその委任代理人、または本開示による保健医師による指示の元のいずれかによって、提供すること、与えること、投薬することおよび/もしくは処方すること、ならびに/または(2)本開示により、哺乳動物が入れること(putting into)、摂取することまたは消費することを指す。
【0147】
用語「共投与」、「共投与すること」、「と組み合わせて投与された」、「と組み合わせて投与すること」、「同時に」および「並行して」とは、本明細書で使用する場合、対象への2種またはそれより多い活性医薬成分を投与することを包含し、その結果、活性医薬成分のどちらもおよび/またはその代謝産物が、同時に対象中に存在する。共投与は、個別の組成物での同時投与、個別の組成物での異なる時間における投与、または2種もしくはそれより多い活性医薬成分が存在する組成物での投与を含む。個別の組成物での同時投与、および両方の薬剤が存在する組成物での投与が好ましい。
【0148】
用語「角膜融解のリスクが低減した化合物」とは、ほぼ同じ投与量で、角膜融解を引き起こすことが公知であるNSAID(例えば、ジクロフェナク(例えば、Julianne, C.ら、「Corneal Melting Associated with Use of Topical Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs after Ocular Surger」、(2000年) 118巻:1129~1132頁参照))と比べたときに、処置される患者において、角膜融解を引き起こす可能性が低い化合物を指す。式(III)および式(IV)の化合物などの本発明の化合物は、角膜融解のリスクが低減した化合物である。
【0149】
用語「活性医薬成分」および「薬物」は、本明細書において記載されている化合物、より詳細には式(III)または式(IV)によって記載されている化合物を含む。
【0150】
用語「in vivo」とは、対象の身体において起こる事象を指す。
【0151】
用語「in vitro」とは、対象の身体の外側において起こる事象を指す。in vitroアッセイは、生存細胞または死細胞を使用する、細胞をベースとするアッセイを包含し、無傷細胞を使用しない細胞不含アッセイも包含してもよい。
【0152】
用語「有効量」または「治療有効量」とは、疾患処置を含むがそれに限定されない、所期の用途をもたらすのに十分な本明細書に記載されている化合物または化合物の組合せの量を指す。治療有効量は、所期の用途(in vitroまたはin vivo)、または処置されている対象および疾患状態(例えば、対象の体重、年齢および性別)、疾患状態の重症度、投与様式などに応じて様々になり得、これは、当業者により容易に決定することができる。この用語はまた、標的細胞における特定の応答(例えば、血小板の接着および/または細胞移動の低減)を誘導する用量にも適用する。特定の用量は、選択される特定の化合物、従う投薬レジメン、本化合物が他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与の時機、本化合物が投与される組織、および本化合物が運ばれる物理的送達系に応じて様々である。
【0153】
本明細書において使用される用語「治療効果」は、治療的利益および/または予防的利益を包含する。予防的効果には、疾患もしくは状態の出現を遅延させることまたはなくすこと、疾患もしくは状態の症状の発症を遅延させることまたはなくすこと、疾患もしくは状態の進行を減速させること、停止させることまたは逆転させること、あるいはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0154】
用語「QD」、「qd」または「q.d.」とは、1日1回(quaque die)、1日1回(once a day)または毎日1回(once daily)を意味する。用語「BID」、「bid」または「b.i.d.」は、1日2回(bis in die)、1日2回(twice a day)または毎日2回(twice daily)を意味する。用語「TID」、「tid」または「t.i.d.」とは、1日3回(ter in die)、1日3回(three times a day)または毎日3回(three times daily)を意味する。用語「QID」、「qid」または「q.i.d.」は、1日4回(quater in die)、1日4回(four times a day)、または毎日4回(four times daily)を意味する。
【0155】
用語「薬学的に許容される塩」とは、当分野で公知の様々な有機および無機の対イオンに由来する塩を指す。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸と形成され得る。塩が由来し得る好ましい無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸が含まれる。塩が由来し得る好ましい有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸およびサリチル酸が含まれる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基と形成され得る。塩が由来し得る無機塩基には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガンおよびアルミニウムが含まれる。塩が由来し得る有機塩基は、例えば、一級、二級および三級アミン、置換アミン(天然に存在する置換アミン、環式アミンおよび塩基性イオン交換樹脂を含む)を含む。具体例には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびエタノールアミンが含まれる。一部の実施形態では、薬学的に許容される塩基付加塩は、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩から選択される。用語「共結晶」とは、当分野で公知のいくつかの共結晶形成剤(cocrystal former)から誘導される分子複合体を指す。塩とは異なり、共結晶は、通常、共結晶と薬物との間で水素の移動を含まず、代わりに、結晶構造中の共結晶形成剤と薬物との間の水素結合、芳香族環のスタッキングまたは分散力などの分子間相互作用を含む。
【0156】
「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、ならびに不活性成分を含むことが意図される。活性医薬成分のためのそのような薬学的に許容される担体または薬学的に許容される賦形剤の使用は、当分野で周知である。慣用的な薬学的に許容される担体または薬学的に許容される賦形剤のいずれも、活性医薬成分と適合不能となる場合を除き、本発明の治療組成物におけるその使用が企図される。本明細書において開示されている他の薬物などの追加の活性医薬成分もまた、記載されている組成物および方法に、やはり組み込まれ得る。
【0157】
本明細書で使用する場合、用語「処置する」、「処置」および/または「処置すること」とは、疾患、障害、病的状態またはそれらの症状を治癒する、改善する、安定化するおよび/または制御することを意図した、疾患、障害、または病的状態、またはこれらの症状の管理を指すことができる。疾患、障害または病的状態を制御することに関してより具体的には、「制御」は、本明細書において列挙されている方法への応答によって評価される通り、状態の進行が存在しないことを含むことができ、この場合、このような応答とは、完全(例えば、疾患を寛解にする)であってもよく、または部分的(例えば、状態に関連する任意の症状を軽減または改善する)であってもよい。
【0158】
本明細書で使用する場合、用語「モジュレートする」および「モジュレーション」とは、生物分子(例えば、タンパク質、遺伝子、ペプチド、抗体など)についての生物活性の変化を指し、この場合、このような変化は、生物分子についての、生物活性の増加(例えば、活性の増加、アゴニスト作用、活性化、発現、上方調節および/または発現の増加)、または生物活性の低下(例えば、活性の低下、拮抗作用、抑制、脱活性化、下方調節および/または発現の低下)に関連し得る。
【0159】
特に明記しない限り、本明細書において図示されている化学構造は、1個または複数の同位体富化原子の存在においてのみ異なる、化合物が含まれることが意図される。例えば、重水素またはトリチウムにより1個または複数の水素原子が置き換えられている、または13Cもしくは14C富化炭素によって1個または複数の炭素原子が置き換えられている化合物が、本発明の範囲内にある。
【0160】
範囲が、例えば分子量または化学式などの物理的特性または化学的特性を記載するために本明細書において使用されている場合、範囲およびその具体的な実施形態のすべての組合せおよび部分組合せが、含まれることが意図されている。用語「約」の使用は、数または数値範囲を言及する場合、言及されているその数または数値範囲が、実験のばらつきの範囲内(または統計的な実験誤差の範囲内)の概数であり、こうして、この数または数値範囲は様々になり得ることを意味する。ばらつきは、通常、0%~15%、好ましくは0%~10%、より好ましくは0%~5%の明記されている数または数値範囲である。用語「含むこと(comprising)」(および、「含む(comprise)」または「含む(comprises)」または「有すること(having)」または「含むこと(including)」などの関連用語)は、例えば、記載した特徴「からなる」または「から本質的になる」、材料(matter)の任意の組成物、方法またはプロセスの実施形態などのそのような実施形態を含む。
【0161】
「異性体」は、同一分子式を有する異なる化合物である。「立体異性体」は、原子の空間配列だけが異なる異性体、すなわち異なる立体化学配置を有する異性体である。「鏡像異性体」は、互いの重なり合わない鏡像である、一対の立体異性体である。一対の鏡像異性体の1:1混合物が、「ラセミ」混合物である。用語「(±)」は、適切な場合、ラセミ混合物を表すために使用される。「ジアステレオ異性体」は、少なくとも2個の不斉原子を有するが、互いに鏡像ではない立体異性体である。絶対立体化学は、カーン-インゴルド-プレログのR-Sシステムに従い指定される。化合物は、純粋な鏡像異性体である場合、個々のキラル炭素の立体化学は、(R)または(S)のどちらかによって指定され得る。その絶対配置が未知の分割された化合物は、これらの化合物が、ナトリウムD線の波長において、平面偏光を回転させる方向(右旋性または左旋性)に応じて、(+)または(-)と表すことができる。ある種の本明細書において記載されている化合物は、1個または複数の不斉中心を含有し、(R)または(S)として、絶対立体化学に関して定義され得る、鏡像異性体、ジアステレオマーおよび他の立体異性形態を生じることができる。本発明の化学実体、医薬組成物および方法は、ラセミ混合物、光学的に純粋な形態および中間体混合物(intermediate mixture)を含む、このようなすべての可能な異性体を含むことを意味する。光学的に活性な(R)-異性体および(S)-異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して調製することができるか、または従来の技法を使用して分割することができる。本明細書において記載されている化合物が、オレフィン二重結合または幾何学的不斉の他の中心を含有している場合、および特に指定しない限り、この化合物は、EおよびZ幾何異性体の両方を含むことが意図されている。
【0162】
「鏡像体純度」とは、本明細書で使用する場合、他の鏡像異性体に対する、特定の鏡像異性体の存在の百分率として表される、相対量を指す。例えば、(R)-または(S)-異性体配置を潜在的に有することができる化合物が、ラセミ混合物として存在する場合、鏡像体純度は、(R)-異性体または(S)-異性体のどちらか一方に関して約50%となる。その化合物が、他方よりも優先して1つの異性体を有する場合、例えば80%の(S)-異性体および20%の(R)-異性体の場合、(S)-異性体に関するこの化合物の鏡像体純度は80%である。化合物の鏡像体純度は、以下に限定されないが、キラル支持体を使用するクロマトグラフィー、偏光の回転の旋光度測定、キラル錯体もしくはPirkleの試薬を含有するランタニドを含むがそれに限定されないキラルシフト試薬を使用する核磁気共鳴分光法、またはMosherの酸などのキラル化合物を使用する化合物の誘導体化とその後のクロマトグラフィーまたは核磁気共鳴分光法を含めた、当分野で公知のいくつかの方法で決定することができる。
【0163】
好ましい実施形態では、鏡像異性体富化組成物(enantiomerically enriched composition)は、その組成物のラセミ混合物よりも単位質量あたりの治療的利用性に関して、より高い効能を有する。鏡像異性体は、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびキラルな塩の形成および結晶化を含めた、当業者に公知の方法によって、混合物から単離することができる。または、好ましい鏡像異性体は、不斉合成により調製することができる。例えば、Jacquesら、Enantiomers, Racemates and Resolutions、Wiley Interscience、New York(1981年);E. L. Eliel、Stereochemistry of Carbon Compounds、McGraw-Hill、New York(1962年);ならびにE. L. ElielおよびS. H. Wilen、Stereochemistry of Organic Compounds、Wiley-Interscience、New York(1994年)を参照されたい。
【0164】
用語「鏡像異性体富化」および「非ラセミ」とは、本明細書で使用する場合、1つの鏡像異性体の重量%が、ラセミ組成物の対照混合物において、その1つの鏡像異性体の量よりも多い(例えば、重量で1:1より多い)、組成物を指す。例えば、(S)-鏡像異性体の鏡像異性体富化調製物は、少なくとも75重量%など、または少なくとも80重量%などの、(R)-鏡像異性体よりも(S)-鏡像異性体を50重量%よりも多く有する化合物の調製物を意味する。一部の実施形態では、富化は、80重量%よりも有意に多くなり得るが、ただし、「実質的に鏡像異性体富化」または「実質的に非ラセミの」調製物とは、少なくとも90重量%など、または少なくとも95重量%などの、他の鏡像異性体に対して1つの鏡像異性体を少なくとも85重量%有する組成物の調製物を指すことを条件とする。用語「鏡像異性体として純粋な」または「実質的に鏡像異性体として純粋な」とは、単一鏡像異性体を少なくとも98%、および反対の鏡像異性体を2%未満で含む組成物を指す。
【0165】
「部分」とは、分子の特定のセグメントまたは官能基を指す。化学部分は、多くの場合、分子に組み込まれたまたは分子に結合している、認識される化学実体である。
【0166】
「互変異性体」は、互変異性によって相互変換する構造的に異なる異性体である。「互変異性」は、異性化の形態であり、プロトトロピック互変異性、またはプロトンシフト互変異性を含み、これは、酸-塩基化学のサブセットと見なされる。「プロトトロピック互変異性」または「プロトンシフト互変異性」は、結合次数の変化、多くの場合、単結合と隣接する二重結合との相互交換を伴うプロトンの移動を含む。互変異性が可能な場合(例えば、溶液中)、互変異性体の化学的平衡に到達することができる。互変異性の一例は、ケト-エノール互変異性である。ケト-エノール互変異性の具体例は、ペンタン-2,4-ジオン互変異性体と4-ヒドロキシペンタ-3-エン-2-オン互変異性体との相互変換である。互変異性の別の例は、フェノール-ケト互変異性である。フェノール-ケト互変異性の具体例は、ピリジン-4-オール互変異性体とピリジン-4(1H)-オン互変異性体の相互変換である。
【0167】
「溶媒和物」は、薬学的に許容される溶媒の1つまたは複数の分子と物理的結合をしている化合物を指す。
【0168】
本発明の化合物はまた、例えば、化合物の多形、擬似多形、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形(無水物を含む)、立体構造多形およびアモルファス形態、ならびにそれらの混合物を含めた化合物の結晶形態およびアモルファス形態を含む。「結晶形態」および「多形」は、特定の結晶形態またはアモルファス形態を言及しない限り、例えば、多形、擬似多形、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形(無水物を含む)、立体構造多形およびアモルファス形態、ならびにそれらの混合物を含めた化合物の結晶形態およびアモルファス形態のすべてを含むことが意図されている。
【0169】
誤解を避けるために、本発明の特定の態様、実施形態または例と関連して記載されている特定の特徴(例えば、整数、特徴、値、使用、疾患、式、化合物または基)は、それらと不適合でない限り、本明細書に記載されている任意の他の態様、実施形態または例に適用可能なものとして理解されることが、本明細書において意図されている。したがって、このような特徴は、本明細書において定義されている定義、特許請求の範囲または実施形態のいずれかと併せて適切な場合に使用することができる。この明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)において開示されている特徴のすべて、および/またはそのように開示されている任意の方法もしくはプロセスのステップのすべてを、任意に組み合わせて一緒にしてもよいが、特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互に排他的となる組合せを除く。本発明は、任意の開示されている実施形態のいずれかの詳細に限定されない。本発明は、この明細書に開示されている特徴の、任意の新規な1つまたは新規な組合せ(任意の添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)、またはそのように開示されている任意の方法もしくはプロセスのステップの任意の新規な1つ、または任意の新規な組合せに展開する。
【0170】
さらに、本明細書で使用する場合、用語「約」は、寸法、サイズ、製剤、パラメータ、形状および他の量、および特徴が、正確ではなく正確である必要がない(are not and need not be exact)が、近似であってよく、かつ/または、所望の場合、公差(tolerance)、換算係数、四捨五入、測定誤差など、および当業者に公知の他の因子を反映して、より大きくもしくはより小さくてもよいことを意味する。一般に、寸法、サイズ、製剤、パラメータ、形状または他の量または特徴は、明示的にこのように明記されているか否かにかかわらず、「約」または「ほぼ」である。非常に異なるサイズ、形状および寸法の実施形態は、記載されている配列(arrangement)を使用することができることが留意される。
【0171】
さらに、移行用語「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」は、元の形態および補正形態の添付の特許請求の範囲において使用する場合には、存在する場合には列挙されていないさらなる特許請求の範囲の要素またはステップが特許請求の範囲の範囲から除外されているものに関する特許請求の範囲の範囲を規定する。用語「含む(comprising)」は、包括的またはオープンエンドであることを意図しており、任意の追加的な、列挙されていない要素、方法、ステップまたは物質材料を除外しない。用語「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲に指定されているもの以外の任意の要素、ステップまたは材料、および後者の場合、指定材料(複数可)に関連する通常の不純物を除外する。用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、指定された要素、ステップまたは材料(複数可)、および実質的に基本的かつ新規な特許請求されている発明の特徴(複数可)に影響を及ぼさないものに、特許請求の範囲の範囲を制限する。本発明の実施形態はすべて、代替的に、移行用語「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」のいずれかによって、より具体的に定義することができる。
【0172】
用語「レーシック(LASIK)」は、本明細書で使用する場合、レーザー角膜切削形成術の頭字語である。これは、角膜がその光学出力を変化させるよう再形成される(reshaped)、屈折矯正手術のタイプである。具体的には、角膜のディスクが、フラップとして持ち上げられ、エキシマレーザーを使用して、角膜組織の中間層を再形成して、手術による平坦化を生じさせる。レーシック手術は、近視、遠視および乱視の矯正のために使用されてもよい。
【0173】
用語「アシル」は、当分野で認識されており、一般式ヒドロカルビルC(O)-、好ましくはアルキルC(O)-によって表される基を指す。
【0174】
用語「アシルアミノ」は、当分野で認識されており、アシル基で置換されているアミノ基を指し、例えば、式ヒドロカルビルC(O)NH-によって表すことができる。
【0175】
用語「アシルオキシ」は、当分野で認識されており、一般式ヒドロカルビルC(O)O-、好ましくはアルキルC(O)O-によって表される基を指す。
【0176】
用語「アルコキシ」とは、アルキル基、好ましくはそれに結合している酸素を有する低級アルキル基を指す。代表的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシなどが含まれる。
【0177】
用語「アルコキシアルキル」とは、アルコキシ基で置換されているアルキル基を指し、一般式アルキル-O-アルキルによって表すことができる。
【0178】
用語「アルケニル」とは、本明細書で使用する場合、少なくとも1つの二重結合を含有する脂肪族基を指し、「非置換アルケニル」と「置換アルケニル」の両方を含むことが意図されており、後者の置換アルケニルは、アルケニル基の1個または複数の炭素上の水素を置き換えた置換基を有するアルケニル部分を指す。このような置換基は、1つまたは複数の二重結合に含まれている、または含まれていない1個または複数の炭素上に存在し得る。さらに、このような置換基は、安定性により許されない場合を除いて、以下に議論されている通り、アルキル基について企図されているものすべてを含む。例えば、1個または複数のアルキル基、カルボシクリル基、アリール基、ヘテロシクリル基またはヘテロアリール基によるアルケニル基の置換が企図される。
【0179】
「アルキル」基または「アルカン」は、完全に飽和な直鎖または分岐の非芳香族炭化水素である。通常、直鎖または分岐アルキル基は、特に定義しない限り、1~約20個、好ましくは1~約10個の炭素原子を有する。直鎖および分岐アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチルおよびオクチルが含まれる。C1~C6直鎖または分岐アルキル基はまた、「低級アルキル」基とも称される。
【0180】
さらに、本明細書、実施例および特許請求の範囲の全体を通じて使用されている用語「アルキル」(または「低級アルキル」)は、「非置換アルキル」と「置換アルキル」の両方を含むことが意図されており、後者の置換アルキルは、炭化水素骨格の1個または複数の炭素上の水素を置き換えた置換基を有するアルキル部分を指す。このような置換基は、特に指定しない場合、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテートまたはチオフォーメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族部分もしくは複素芳香族部分を含むことができる。炭化水素鎖上で置換されている部分は、適切な場合、それ自体が置換され得ることが当業者により理解されよう。例えば、置換アルキルの置換基は、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(サルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)およびシリル基の置換形態および非置換形態、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレートおよびエステルを含む)、-CF3、-CNなどを含むことができる。例示的な置換アルキルは、以下に記載されている。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、-CF3、-CNなどによりさらに置換され得る。
【0181】
用語「Cx~y」は、アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルコキシなどの化学部分に関連して使用される場合、鎖中にx~y個の炭素を含有する基を含むことが意図される。例えば、用語「Cx~yアルキル」とは、トリフルオロメチルおよび2,2,2-トリフルオロエチル(tirfluoroethyl)などのハロアルキル基を含めた、鎖中にx~y個の炭素を含有する直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基を含めた、置換または非置換の飽和炭化水素基を指す。C0アルキルは、この基が末端位に存在する場合、水素を、内部に存在する場合、結合を示す。用語「C2~yアルケニル」および「C2~yアルキニル」は、長さが類似しており、上で記載したアルキルに置換している可能性があり、それぞれ少なくとも1つの二重結合または三重結合を含有する、置換または非置換の不飽和脂肪族基を指す。
【0182】
用語「アルキルアミノ」とは、本明細書で使用する場合、少なくとも1つのアルキル基で置換されているアミノ基を指す。
【0183】
用語「アルキルチオ」とは、本明細書で使用する場合、アルキル基で置換されているチオール基を指し、一般式アルキルS-によって表すことができる。
【0184】
用語「アルキニル」とは、本明細書で使用する場合、少なくとも1つの三重結合を含有する脂肪族基を指し、「非置換アルキニル」と「置換アルキニル」の両方を含むことが意図されており、後者の置換アルキニルは、アルキニル基の1個または複数の炭素上の水素を置き換えた置換基を有するアルキニル部分を指す。このような置換基は、1つまたは複数の三重結合に含まれている、または含まれていない1個または複数の炭素上に存在し得る。さらに、このような置換基は、安定性により許されない場合を除いて、上で議論されている通り、アルキル基について企図されているものすべてを含む。例えば、1つまたは複数のアルキル基、カルボシクリル基、アリール基、ヘテロシクリル基またはヘテロアリール基によるアルキニル基の置換が企図される。
【0185】
用語「アミド」とは、本明細書で使用する場合、基
【化15】
(式中、R
10はそれぞれ、独立して、水素またはヒドロカルビル基を表すか、または2つのR
10は、それらが結合しているN原子と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成する)を指す。
【0186】
用語「アミン」および「アミノ」は、当分野で認識されており、非置換および置換アミンの両方ならびにそれらの塩、例えば、
【化16】
(式中、R
10はそれぞれ、独立して、水素またはヒドロカルビル基を表すか、または2つのR
10は、それらが結合しているN原子と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成する)によって表すことができる部分を指す。
【0187】
用語「アミノアルキル」とは、本明細書で使用する場合、アミノ基で置換されているアルキル基を指す。
【0188】
用語「アラルキル」とは、本明細書で使用する場合、アリール基で置換されているアルキル基を指す。
【0189】
用語「アリール」は、本明細書で使用する場合、環の原子がそれぞれ炭素である置換または非置換の単環芳香族基を含む。好ましくは、環は、5~7員の環、より好ましくは6員環である。用語「アリール」はまた、2つまたはそれより多い環式環を有する多環式環系であって、2個またはそれより多い炭素が、2つの隣接する環に共通しており、環の少なくとも1つが、芳香族である、例えば、他の環式環が、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリルであり得る、多環式環系も含む。アリール基は、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどを含む。
【0190】
用語「カルバメート」は、当分野で認識されており、基
【化17】
(式中、R
9およびR
10は、独立して、水素、またはアルキル基などのヒドロカルビル基を表すか、またはR
9およびR
10は、介在する原子(複数可)と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成する)を指す。
【0191】
用語「炭素環」および「炭素環式」とは、本明細書で使用する場合、環の各原子が炭素である、飽和または不飽和環を指す。この用語である炭素環は、芳香族炭素環と非芳香族炭素環の両方を含む。非芳香族炭素環は、すべての炭素原子が飽和しているシクロアルカン環と、少なくとも1つの二重結合を含有するシクロアルケン環の両方を含む。「炭素環」は、5~7員の単環式および8~12員の二環式環を含む。二環式炭素環の各環は、飽和環、不飽和環および芳香族環から選択することができる。炭素環は、1個、2個もしくは3個、またはそれより多い原子が、2つの環の間を共有する、二環式分子を含む。用語「縮合炭素環」とは、環のそれぞれが、他の環と2個の隣接原子を共有する二環式炭素環を指す。縮合炭素環の各環は、飽和環、不飽和環および芳香族環から選択することができる。例示的な実施形態では、芳香族環、例えばフェニルは、飽和環または不飽和環、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタンまたはシクロヘキセンに縮合していてもよい。価数が許容した場合、飽和環、不飽和環および芳香族二環式環の任意の組合せが、炭素環式の定義に含まれる。例示的な「炭素環」には、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5-シクロオクタジエン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタ-3-エン、ナフタレンおよびアダマンタンが含まれる。例示的な縮合炭素環には、デカリン、ナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタン、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インデンおよびビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-エンが含まれる。「炭素環」は、水素原子を有することが可能な、任意の1つまたは複数の位置において、置換されていてもよい。
【0192】
「シクロアルキル」基は、完全に飽和な環式炭化水素である。「シクロアルキル」には、単環式環および二環式環が含まれる。通常、単環式シクロアルキル基は、特に定義しない限り、3~約10個の炭素原子、より典型的には、3~8個の炭素原子を有する。二環式シクロアルキルの第2の環は、飽和環、不飽和環および芳香族環から選択することができる。シクロアルキルには、1個、2個もしくは3個、またはそれより多い原子が、2つの環の間で共有されている、二環式分子を含む。用語「縮合シクロアルキル」とは、環のそれぞれが、他の環と2個の隣接原子を共有する二環式シクロアルキルを指す。縮合二環式シクロアルキルの第2の環は、飽和環、不飽和環および芳香族環から選択することができる。「シクロアルケニル」基は、1つまたは複数の二重結合を含有する環式炭化水素である。
【0193】
用語「カルボシクリルアルキル」とは、本明細書で使用する場合、炭素環基で置換されているアルキル基を指す。
【0194】
用語「カーボネート」は、当分野で認識されており、基-OCO2-R10を指し、R10は、ヒドロカルビル基を表す。
【0195】
用語「カルボキシ」は、本明細書で使用する場合、式-CO2Hによって表される基を指す。
【0196】
用語「エステル」は、本明細書で使用する場合、基-C(O)OR10を指し、R10は、ヒドロカルビル基を表す。
【0197】
用語「エーテル」とは、本明細書で使用する場合、酸素を介して別のヒドロカルビル基に連結しているヒドロカルビル基を指す。したがって、ヒドロカルビル基のエーテル置換基は、ヒドロカルビル-O-であり得る。エーテルは、対称であってもよく、または非対称であってもよい。エーテルの例には、以下に限定されないが、複素環-O-複素環およびアリール-O-複素環が含まれる。エーテルは、一般式アルキル-O-アルキルによって表すことができる、「アルコキシアルキル」基を含む。
【0198】
用語「ハロ」および「ハロゲン」とは、本明細書で使用する場合、ハロゲンを意味し、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを含む。
【0199】
用語「ヘトアラルキル(hetaralkyl)」および「ヘテロアラルキル」とは、本明細書で使用する場合、ヘタリール基(hetaryl group)で置換されているアルキル基を指す。
【0200】
用語「ヘテロアルキル」とは、本明細書で使用する場合、炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子の飽和鎖または不飽和鎖を指し、ここでは、2個のヘテロ原子は隣接していない。ヘテロアルキルの例には、アルコキシ、アルキルアミノ、アルコキシアルキルおよびアルキルアミノアルキルが含まれる。
【0201】
用語「ヘテロアリール」および「ヘタリール」は、置換または非置換の芳香族単環構造、好ましくは5~7員の環、より好ましくは5~6員の環を含み、その環構造は、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1個または2個のヘテロ原子を含む。用語「ヘテロアリール」および「ヘタリール」はまた、2つまたはそれより多い環式環を有する多環式環系であって、2個またはそれより多い炭素が、2つの隣接する環に共通しており、環の少なくとも1つが、複素芳香族であり、例えば、他の環式環が、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリルであり得る、多環式環系も含む。ヘテロアリール基には、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが含まれる。
【0202】
用語「ヘテロ原子」とは、本明細書で使用する場合、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄である。
【0203】
用語「ヘテロシクリル」、「複素環」および「複素環式」は、置換または非置換の非芳香族環構造、好ましくは3~10員の環、より好ましくは3~7員の環を指し、その環構造は、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1個または2個のヘテロ原子を含む。用語「ヘテロシクリル」および「複素環式」はまた、2つまたはそれより多い環式環を有する多環式環系であって、2個またはそれより多い炭素が、2つの隣接する環に共通しており、環の少なくとも1つが、複素環式であり、例えば、他の環式環が、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリルであり得る、多環式環系も含む。ヘテロシクリル基には、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタムなどが含まれる。
【0204】
用語「ヘテロシクリルアルキル」とは、本明細書で使用する場合、複素環基で置換されているアルキル基を指す。
【0205】
用語「ヒドロカルビル」とは、本明細書で使用する場合、=Oまたは=S置換基を有していない炭素原子を介して結合している基であって、かつ、通常、少なくとも1つの炭素-水素結合、および主要炭素骨格を有しているが、必要に応じてヘテロ原子を含んでもよい基を指す。したがって、メチル、エトキシエチル、2-ピリジルおよびトリフルオロメチルのような基は、本出願の目的とする場合、ヒドロカルビルと考えられるが、アセチル(これは、連結炭素上に=O置換基を有する)およびエトキシ(これは、炭素を介してではなく、酸素を介して連結されている)などの置換基はそうではない。ヒドロカルビル基には、以下に限定されないが、アリール、ヘテロアリール、炭素環、ヘテロシクリル、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびそれらの組合せが含まれる。
【0206】
用語「ヒドロキシアルキル」とは、本明細書で使用する場合、ヒドロキシ基で置換されているアルキル基を指す。
【0207】
用語「低級」は、アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルコキシなどの化学部分と関連して使用する場合、置換基中に10個またはそれより少ない、好ましくは6個またはそれより少ない非水素原子が存在する基を含むことが意図されている。「低級アルキル」は、例えば、10個またはそれより少ない、好ましくは6個またはそれより少ない炭素原子を含有するアルキル基を指す。ある特定の実施形態では、本明細書において定義されているアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルコキシ置換基は、それらが、単独で現れるか、または列挙したものの中で、ヒドロキシアルキルおよびアラルキルなどの他の置換基との組合せで現れるかにかかわらず、それぞれ、低級アシル、低級アシルオキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニルまたは低級アルコキシである(この場合、例えば、アリール基内の原子は、アルキル置換基中の炭素原子を数える場合には、数に入れない)。
【0208】
用語「ポリシクリル」、「多環」および「多環式」とは、2つまたはそれより多い環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリル)を指し、2個またはそれより多い原子は、2つの隣接環に共通であり、例えば、環は、「縮合環」である。多環の環の各々は、置換され得るか、または置換され得ない。ある特定の実施形態では、多環の各環は、環中に、3~10個、好ましくは5~7個の原子を含有する。
【0209】
用語「シリル」とは、ケイ素部分であって、それに結合している3つのヒドロカルビル部分を有するケイ素部分を指す。
【0210】
用語「シリルオキシ」とは、酸素部分であって、それに結合しているシリルを有する酸素部分を指す。
【0211】
用語「置換されている」とは、骨格の1個または複数の炭素上の水素を置き換えている置換基を有する部分を指す。「置換」または「で置換されている」は、このような置換が、置換されている原子および置換基の許容される価数に従うこと、およびこの置換が、例えば、転位、環化、脱離などによるなど変換を自発的に受けない安定な化合物になるという暗黙の前提を含むことが理解されよう。本明細書で使用する場合、用語「置換されている」は、有機化合物の許容される置換基をすべて含むことが企図されている。広い態様では、許容される置換基は、有機化合物の、非環式および環式の、分岐および非分岐の、炭素環式および複素環式の、芳香族および非芳香族の置換基を含む。許容される置換基は、適切な有機化合物について1つまたは複数であり得、同じでも異なってもよい。本発明の目的として、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、および/またはヘテロ原子の価数を満足する、本明細書に記載されている有機化合物の任意の許容される置換基を有することができる。置換基は、本明細書に記載されている任意の置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテートまたはチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくは複素芳香族部分を含むことができる。置換基は、適切な場合、それ自体が置換され得ることが当業者により理解されよう。「非置換」として具体的に明記しない限り、本明細書における化学部分への言及は、置換されている変異体(variant)を含むことが理解される。例えば、「アリール」基または部分への言及は、置換変異体と非置換変異体の両方を暗示的に含む。
【0212】
用語「サルフェート」は、当分野で認識されており、基-OSO3Hまたは薬学的に許容されるその塩を指す。
【0213】
用語「スルホンアミド」は、当分野で認識されており、一般式
【化18】
によって表される基を指し、
【0214】
式中、R9およびR10は、独立して、水素、またはアルキルなどのヒドロカルビルを表すか、またはR9およびR10は、介在する原子(複数可)と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成する。
【0215】
用語「スルホキシド」は、当分野で認識されており、基-S(O)-R10を指し、R10は、ヒドロカルビルを表す。
【0216】
用語「スルホネート」は、当分野で認識されており、基SO3Hまたは薬学的に許容されるその塩を指す。
【0217】
用語「スルホン」は、当分野で認識されており、基-S(O)2-R10を指し、R10は、ヒドロカルビルを表す。
【0218】
用語「チオアルキル」とは、本明細書で使用する場合、チオール基で置換されているアルキル基を指す。
【0219】
用語「チオエステル」は、本明細書で使用する場合、基-C(O)SR10または-SC(O)R10を指し、R10は、ヒドロカルビルを表す。
【0220】
用語「チオエーテル」は、本明細書で使用する場合、酸素が硫黄により置き換えられている、エーテルと等価である。
用語「ウレア」は、当分野で認識されており、一般式
【化19】
によって表すことができ、
【0221】
式中、R9およびR10は、独立して、水素、またはアルキルなどのヒドロカルビルを表すか、または存在するどちらかのR9が、R10および介在する原子(複数可)と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成する。
【0222】
「保護基」とは、分子中の反応性官能基に結合している場合、この官能基の反応性をマスクする、低減するまたは防止する原子の群を指す。通常、保護基は、合成の過程に、所望に応じて、選択的に除去することができる。保護基の例は、GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Chemistry、第3版、1999年、John Wiley & Sons、NY、ならびにHarrisonら、Compendium of Synthetic Organic Methods、1~8巻、1971~1996頁、John Wiley & Sons、NYに見出すことができる。代表的な窒素保護基には、以下に限定されないが、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert-ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(「TES」)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロ-ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)などが含まれる。代表的なヒドロキシル保護基には、以下に限定されないが、ヒドロキシル基が、アシル化(エステル化)されている、またはベンジルエーテルおよびトリチルエーテル、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル(例えば、TMSまたはTIPS基)、グリコールエーテル(エチレングリコール誘導体およびプロピレングリコール誘導体など)およびアリルエーテルなどアルキル化されているかのどちらかのものが含まれる。
【0223】
本明細書で使用する場合、障害または状態を「予防する」治療薬は、統計学的試料において、未処置対照試料に対して、処置した試料における、障害または状態の発生を低減する化合物、または未処置対照試料に対して、障害もしくは状態の発症を遅延させる、または障害もしくは状態のうちの1つまたは複数の症状の重症度を低減する化合物を指す。例えば、感染を予防する化合物は、感染の頻度を低減することができる、および/または感染の重症度を低減することができる。
【0224】
用語「処置すること(treating)」とは、予防的および/または治療的処置を含む。用語「予防的または治療的」処置は、当分野で認識されており、主題の組成物の1つまたは複数の宿主への投与を含む。望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状況(state))の臨床徴候の前に投与する場合、この処置は予防的(すなわち、処置は、望ましくない状態の発症から宿主を保護する)である一方、望ましくない状態の徴候後に投与する場合、この処置は、治療的(すなわち、処置は、存在する望ましくない状態またはその副作用を低減する、改善するまたは安定化するよう意図されている)である。
【0225】
語句「共同投与」および「一緒に投与した」は、2種またはそれより多い異なる治療用化合物の投与の任意の形態を指し、こうして、第2の化合物が、先に投与した治療用化合物が、身体中で依然として有効である間に投与される(例えば、2つの化合物が、患者に同時に有効であり、これは、2つの化合物の相乗効果を含むことができる)。例えば、異なる治療用化合物が、同一製剤中または個別の製剤中のどちらかで、同時にまたは逐次のどちらかで投与することができる。ある特定の実施形態では、異なる治療用化合物は、互いに、1時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間または1週間以内に投与することができる。したがって、このような処置を受ける個体は、異なる治療用化合物の複合効果から利益を得ることができる。
【0226】
用語「プロドラッグ」は、生理的条件下で、本発明の治療活性剤(例えば、表1から選択される化合物)に変換される化合物を包含することが意図される。プロドラッグを作製するための一般的な方法は、望ましい分子を表わす生理的条件下で加水分解される、1つまたは複数の選択された部分を含ませることである。他の実施形態では、プロドラッグは、宿主動物の酵素活性によって変換される。例えば、エステルまたはカーボネート(例えば、アルコールもしくはカルボン酸のエステルまたはカーボネート)が、本発明の好ましいプロドラッグである。ある特定の実施形態では、上で表される製剤において、表1から選択される、本化合物の一部またはすべてが、対応する好適なプロドラッグにより置き換えられることができ、例えば、親化合物中のヒドロキシルは、エステルまたはカーボネートとして存在するか、または親化合物中に存在するカルボン酸は、エステルとして存在する。
【0227】
用語「アゴニスト」、「アンタゴニスト」および「阻害剤」は、化学化合物(chemical compound)(有機化合物または無機化合物、化学化合物の混合物など)、生物学的マクロ分子(その一部を含む、核酸、抗体、ならびにヒト化抗体、キメラ抗体およびヒト抗体およびモノクローナル抗体、タンパク質またはその一部、例えば、ペプチド、脂質、炭水化物など)、または細菌、植物、真菌または動物細胞もしくは組織などの生物学的材料から作製される抽出物を表すため、本明細書において使用される。それらは、例えば、その構造が公知の作用剤(agent)、およびその構造が未知の作用剤を含む。アゴニストは、タンパク質の活性を増加させる作用剤を指す。
医薬組成物
【0228】
本発明の組成物および方法は、ドライアイ疾患、炎症、疼痛または結膜炎などの眼の状態を有する患者などの、処置することを必要とする個体を処置するために利用することができる。ある特定の実施形態では、個体は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物などの哺乳動物である。ヒトなどの動物に投与されると、組成物または化合物は、例えば、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として好ましくは投与される。薬学的に許容される担体は、当分野で周知であり、例えば、水または生理的緩衝食塩水(physiologically buffered saline)などの水溶液、またはグリコール、グリセロールなどの他の溶媒もしくはビヒクル、オリーブ油などの油、または注射可能な有機エステルを含む。好ましい実施形態では、このような医薬組成物がヒト投与、特に侵襲的な投与経路(すなわち、上皮バリアを経由する輸送または拡散を回避する注射などの経路)向けである場合、この水溶液は、発熱物質不含である、または実質的に発熱物質不含である。本組成物はまた、点眼剤などの局所投与に好適な溶液で存在することができる。
【0229】
薬学的に許容される担体は、例えば本発明の化合物などの化合物を安定化する、その溶解度を増加させる、またはその吸収を増加させるよう作用する、生理的に許容される作用剤を含有することができる。このような生理学的に許容される作用剤は、例えば、グルコース、スクロースまたはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸またはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定剤もしくは賦形剤を含む。生理学的に許容される作用剤を含めた、薬学的に許容される担体の選択は、例えば、組成物の投与経路に依存する。調製物または医薬組成物は、自己乳化性薬物送達系または自己マイクロ乳化性薬物送達系であり得る。医薬組成物(調製物)はまた、その中に、例えば本発明の化合物を組み入れることができる、リポソームまたは他のポリマーマトリックスであり得る。例えば、リン脂質または他の脂質を含むリポソームは、作製することおよび投与することが比較的、簡単な、非毒性の生理学的に許容され、かつ代謝可能な担体である。
【0230】
薬学的に許容される抗酸化剤のさらなる例には、以下:(1)例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;および(3)例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤などが含まれる。
【0231】
語句「薬学的に許容される」は、本明細書において使用され、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに好適な、妥当な医療的判断の範囲内で、正当な利益/リスク比に見合う、そのような化合物、材料、組成物および/または剤形を指す。
【0232】
語句「薬学的に許容される担体」とは、本明細書で使用する場合、薬学的に許容される材料、組成物、または液体もしくは固体充填剤などのビヒクル、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料を包含することができる。担体はそれぞれ、製剤の他の成分と適合性である、および患者に有害でないという意味において、「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として働くことができる材料の一部の例には、以下:(1)プロピレングリコールなどのグリコール、(2)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール、(3)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル、(4)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(5)発熱物質不含水、(6)等張食塩水、(7)リンゲル溶液、(8)エチルアルコール、(9)リン酸緩衝溶液、および(10)医薬製剤で使用される他の非毒性の適合性物質が含まれる。
【0233】
医薬組成物(調製物)は、例えば、眼内(例えば、眼内注射により)、および局所(例えば、皮膚に適用されるクリーム剤、軟膏剤もしくはスプレー剤として、または点眼剤として)を含めた、いくつかの投与経路のいずれかによって対象に投与することができる。ある特定の実施形態では、化合物は、滅菌水中で単純に溶解させてもよく、または懸濁させてもよい。適切な投与経路、およびそれに好適な組成物の詳細は、例えば、米国特許第6,110,973号、同第5,763,493号、同第5,731,000号、同第5,541,231号、同第5,427,798号、同第5,358,970号および同第4,172,896号、ならびにその中に引用されている特許中に見出すことができる。
【0234】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物などの活性化合物を、担体、および必要に応じて1つまたは複数の補助成分と組み合わせるステップを含む。一般に、製剤は、本発明の化合物を液体担体、または微粉砕固体担体と、またはその両方と均一かつ緊密に組み合わせることにより調製される。
【0235】
局所投与向け剤形は、点眼剤などの眼科用製剤を含む。活性化合物は、滅菌条件下において、薬学的に許容される担体、および例えば塩化ベンザルコニウムとして、必要とされ得る任意の保存剤またはバッファと混合されてもよい。
【0236】
本発明の医薬組成物中で使用することができる、好適な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)および好適なそれらの混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。
【0237】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散化剤などのアジュバントを含有することもできる。微生物の作用の予防は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの含有によって確実にされ得る。例えば、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含ませることがやはり望ましいことがある。
【0238】
本発明の方法における使用の場合、活性化合物は、それ自体が投与され得、または薬学的に許容される担体と組み合わせて、例えば0.1~99.5%(より好ましくは、0.5~90%)の活性成分を含有する医薬組成物として投与され得る。
【0239】
医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者への毒性なしに、特定の患者、組成物および投与形式に対する所望の治療的応答を実現するための有効な活性成分の量が得られるよう様々であり得る。
【0240】
選択した投与量レベルは、使用した特定の化合物または化合物の組合せ、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与の時間、使用される特定の化合物(複数可)の排出速度、処置期間、他の薬物、使用される特定の化合物(複数可)との組合せで使用される化合物および/もしくは材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的健康状態および以前の病歴、ならびに医療分野において周知の因子などを含めた、様々な因子に依存する。
【0241】
当分野において通常の技量を有する医師または獣医師は、必要とされる医薬組成物の治療有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、上記医師または獣医師であれば、所望の治療効果を実現するために必要とするよりも少ないレベルで医薬組成物または化合物の投与を開始し、所望の効果が実現されるまで、投与量を徐々に増加させることができる。「治療有効量」とは、所望の治療効果を引き出すのに十分な化合物の濃度を意味する。上記化合物の有効量は、対象の体重、性別、年齢および病歴によって、様々となることが一般に理解される。有効量に影響を及ぼす他の因子は、以下に限定されないが、患者の状態の重症度、処置される障害、化合物の安定性、および所望の場合、本発明の化合物と一緒に投与される別のタイプの治療剤を含むことができる。より多量の全用量を、薬剤の複数回投与により送達することができる。効力および投与量を決定するための方法は、当業者に公知である(参照により本明細書に組み込まれている、Isselbacherら、(1996年) Harrison’s Principles of Internal Medicine 第13版、1814~1882頁)。
【0242】
一般に、本発明の組成物および方法において使用される活性化合物の好適な日用量は、治療効果を生じるのに有効な最低用量となる化合物の量となろう。このような有効用量は、一般に、上で記載されている因子に依存するであろう。
【0243】
所望の場合、活性化合物の有効な日用量は、1日を通して、必要に応じて単位剤形で、適切な時間間隔で別々に投与される1回分、2回分、3回分、4回分、5回分、6回分またはそれより多い部分用量として投与されてもよい。本発明のある特定の実施形態では、活性化合物は、毎日2回または3回、投与されてもよい。好ましい実施形態では、活性化合物は、毎日1回、投与される。
【0244】
この処置を受ける患者は、霊長類、特にヒト、およびウマ、ウシ、ブタおよびヒツジなどの他の哺乳動物、ならびに一般に家禽およびペットを含めた、必要な任意の動物である。
【0245】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、単独で使用され得るか、または別のタイプの治療剤と一緒に投与されてもよい。ある特定の実施形態では、様々な式Iの化合物は、互いに、または眼の状態の処置に好適な他の薬剤と一緒に投与されてもよい。例えば、以下の薬剤、または薬剤のクラス:ドキソサイクリン;デコサヘキサン酸;血管新生阻害剤、例えばVEGF阻害剤(ペガプタニブナトリウム、ベバシズマブ、ラニビズマブ、AV-951、バンデタニブ、セマキサニブ、CBO-P11、アキシチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブおよびTIMP3など);麻酔剤および鎮痛剤(pain killing agent)(リドカインおよび関連化合物およびベンゾジアゼパムおよび関連化合物など);抗がん剤(5-フルオロウラシル、アドリアマイシン、マイトマイシンおよび関連化合物など);抗炎症剤(6-マンノースリン酸(6-mannose phosphate)など);抗真菌剤(フルコナゾールおよび関連化合物など);抗ウイルス剤(ホスホモノギ酸三ナトリウム、トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、DDI、DDCおよびAZTなど);細胞輸送/移動切迫剤(mobility impending agent)(コルヒチン、ビンクリスチン、サイトカラシンBおよび関連化合物など);抗緑内障薬(例えば、ベータ遮断薬:チモロール、ベタキソール、アテナロール(atenalol)など);プロスタグランジン(例えば、ラタノプロストおよびトラボプロストなど);免疫学的応答改質剤(ムラミルジペプチドおよび関連化合物など);ペプチドおよびタンパク質(シクロスポリン、インスリン、成長ホルモン、インスリン関連成長因子、神経成長因子(必要に応じて、デコサヘキサン酸とさらに組み合わされて)、熱ショックタンパク質および関連化合物など);エストロゲン処置;抗ヒスタミン薬(ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、デブロムフェニラミン(debrompheniramine)、デクスクロルフェニラミン、カルビノキサミン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ピリラミン、トリペレナミン、トリポリジン、メトジラジン、ブロモジフェンヒドラミン、プロメタジン、アザタジン、シプロヘプタジン、ジフェニルピラリン、ドキシラミン(doxylamine)、トリメプラジン、フェニンダミン、ケトチフェン、ヒドロキシジン、タジフィリン、テメラスチン、メクリジン、アクリバスチン、セタスチン、オキサトミド、メキタジン、レボカバスチン、ロドキサミド、ロカスチン、フェニンダミン、アゼラスチン、およびエバスティン、フェキソフェナジン、ロラタジン、デスカルボエトキシロラタジン、アステミゾール、ノルアステミゾール、デスメチルアステミゾール、セチリジン、アクリバスチンおよびテメラスチンなど);コルチコステロイド(デキサメタゾン、デキサメタゾン21-ホスフェート、フルオロメトロン、メドリゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリミノロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、プレドニゾロン21-ホスフェート、酢酸プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、プレドニカルベート、デフラザコート、ハロメタゾン、チキソコルトール、プレドニリデン(21-ジエチルアミノアセテート)、プレドニバル、パラメサゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メプレドニゾン、マジプレドン、イソフルプレドン、酢酸ハロプレドン、ハルシノニド、ホルモコルタール、フルランドレノリド、フルプレドニゾロン、酢酸フルプレドニジン(flurprednidine acetate)、酢酸フルペロロン、フルオコルトロン、フルオコルチンブチル、フルオシノニド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルニソリド、フルメタゾン、フルドロコルチゾン、フルクロリニド、フルオロメタロン、エノキソロン、ジフルプレドナート、ジフルコルトロン、二酢酸ジフロラゾン、デスオキシメタゾン(desoximetasone)(デスオキシメタゾン(desoxymethasone))、デゾニド、デスシノロン、コルチバゾール、コルチコステロン、コルチソン、クロプレドノール、クロコルトロン、クロベタゾン、クロベタゾール、クロロプレドニゾン、カフェストール、ブデソニド、ベクロメタゾン、アムシノニド、アロプレグナンアセトニド、アルクロメタゾン、21-アセトキシプレグネノロン、トラロニド、酢酸ジフロラゾン、デアシルコルチバゾール、RU-26988、ブデソニドおよびデアシルコルチバゾールオキセタノンなど)が、式Iの化合物と一緒に投与されてもよい。上で引用されているコルチコステロイドはすべて、公知化合物である。上記化合物に関するさらなる情報は、例えば、The Merck Index、第13版(2001年)、およびその中に引用されている刊行物に見出すことができ、それらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれている。ある特定の実施形態では、コルチコステロイドは、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾンおよび関連化合物またはそれらの任意の組合せ、および炭酸脱水酵素(carbonic anhydaze)阻害剤から選択される。
【0246】
式Iの化合物と一緒に投与されてもよい薬剤のさらなる例または薬剤のクラスには、以下:抗酸化剤(OT-551など);IL-2Rα受容体を標的とする薬剤(ダクリズマブなど);TNFαアンタゴニスト(インフリキシマブなど);抗生物質(シロリムスなど);ニコチンアンタゴニスト(メカミラミンなど);ステロイド(酢酸アネコルタブなど);光線力学療法による光増感剤(ベルテポルフィンなど);PGE1(例えば、アルプロスタジル);合成レチノイド(フェンレチニドなど);炭酸脱水酵素阻害剤(アセタゾラミドなど);P2Y2受容体アゴニスト(デヌホソル四ナトリウムおよびジクアホソルなど);インターフェロン(インターフェロンベータなど);NSAID(ブロムフェナクおよびネパフェナクなど);抗VEGF剤(EYE001、VEGF-トラップ、ベバシラニブおよびバタラニブなど);抗VEGF剤/キナーゼメディエーター(TG100801など);抗血管新生剤(AG-013,958および乳酸スクアラミンなど);およびsiRNA(CAND5およびAGN211745など)が含まれる。
【0247】
式Iの化合物と一緒に投与されてもよい薬剤のさらなる例または薬剤のクラスには、以下:DE-104;PF-04217329;PF-03187207;AL37807;OPC-12759;化学治療剤(マイトマイシンCなど);プロスタグランジンの合成構造アナログ(ビマトプロストなど);アルファ2アゴニスト(ブリモニジンなど);炭酸脱水酵素阻害剤(ドルゾラミドHClなど);プロスタグランジン誘導体およびアナログ(タフルプロストおよびトラボプロストなど);NMDAアンタゴニスト(メマンチンなど);ヒアルロン酸(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム);コルチコステロイド(ロテプレドノールエタボネート、ジフルプレドナートおよびリメキソロンなど);抗生物質(ドキシサイクリンなど);ムチンを増加させる薬剤(エカベトおよびレバミピドなど);潤滑剤(カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびグリセリンとの組合せなど);A3アデノシン受容体アゴニスト(CF-101など);免疫モジュレーター(サリドマイドなど);TNFαアンタゴニスト(エタネルセプトなど);タンパク質キナーゼC-b阻害剤(ルボキシスタウリンなど);免疫抑制剤(シロリムスなど);PARP阻害剤(AG-014699など);神経保護性血栓溶解剤(マイクロプラスミンなど);ヒアルロニダーゼ;酸化剤(カルバミドなど);ソマトスタチンアナログ(オクトレオチド酢酸塩など);アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト(カンデサルタンシレキセチルなど);疾患修飾性抗リウマチ薬(レフルノミドなど);AEB071;TNFアンタゴニスト(アダリムバブなど);CD11アンタゴニスト(エファリズマブなど);カルシニューリン阻害剤(LX211など);インターフェロン(インターフェロンα-2aなど);およびヒトアルファフェトプロテイン(MM-093など)が含まれる。
【0248】
上記の薬剤に加えて、局部もしくは全身の生理学的または薬理学的に有益な効果を生じるよう、他の薬剤が眼およびその周辺組織への投与に好適である。このような薬剤は、式Iの化合物と一緒に投与され得る。このような薬剤の例には、神経保護剤(ニモジピンおよび関連化合物など);抗生物質(テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシンおよびエリトロマイシンなど);抗細菌薬(スルホンアミド、スルファセタミド、スルファメチゾールおよびスルフィソキサゾールなど);抗ウイルス薬(イドクスウリジンを含む);他の抗細菌剤(ニトロフラゾンおよびプロピオン酸ナトリウムなど);抗アレルギー薬(アンタゾリン、メタピリリン、クロルフェニラミン、ピリラミンおよびプロフェンピリダミンなど);充血除去薬(フェニルエフリン、ナファゾリンおよびテトラヒドロゾリン(tetrahydrazoline)など);縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ剤(ピロカルピン、サリチル酸エセリン、カルバコール、フルオロリン酸ジイソプロピル、ホスホリンヨウ素および臭化デメカリウムなど);散瞳薬(アトロピン硫酸塩、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミド、ユーカトロピンおよびヒドロキシアンフェタミンなど);交感神経興奮薬(エピネフリンなど);およびDesign of Prodrugs(Hans Bundgaard編集、Elsevier Scientific Publishing Co.、Amsterdam、1985年)に記載されているものなどのプロドラッグが含まれる。他の薬剤が何であるかについては、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Remington’s Pharmaceutical Sciences. Mack Publishing Company、Easton、Pa.、USA、1985年)などの任意の標準薬学教科書を参照することができる。
【0249】
一部の好ましい実施形態では、式Iの化合物は、コルチコステロイドと一緒に投与されてもよい。
【0250】
一部の好ましい実施形態では、式Iの化合物は、抗生物質と一緒に投与されてもよい。
【0251】
一部の好ましい実施形態では、式Iの化合物は、抗ヒスタミン薬と一緒に投与されてもよい。
【0252】
ある特定の実施形態では、式Iの化合物は、眼の状態の処置に好適な非化学的方法と一緒に投与されてもよい。ある特定の実施形態では、式Iの化合物は、レーザー処置(例えば、光凝固または光線力学療法)、黄斑移動術と一緒に、またはデバイス(例えば、ブリモニジン酒石酸塩埋込物)と一緒に投与されてもよい。
【0253】
ある特定の実施形態では、式Iの化合物は、抗VGEF剤と一緒に投与されてもよい。
【0254】
ある特定の実施形態では、式Iの化合物は、マイトマイシンCなどの抗増殖剤と一緒に投与されてもよい。
【0255】
本発明は、本発明の組成物および方法において、本発明の化合物の薬学的に許容される塩の使用を含む。ある特定の実施形態では、本発明の企図されている塩には、以下に限定されないが、アルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩またはテトラアルキルアンモニウム塩が含まれる。ある特定の実施形態では、本発明の企図されている塩には、以下に限定されないが、L-アルギニン、ベネタミン(benenthamine)、ベンザチン、ベタイン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、リチウム、L-リシン、マグネシウム、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ピペラジン、カリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミンおよび亜鉛塩が含まれる。ある特定の実施形態では、本発明の企図されている塩には、以下に限定されないが、Na、Ca、K、Mg、Znまたは他の金属塩が含まれる。
【0256】
薬学的に許容される酸付加塩はまた、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミドなどによるなどの様々な溶媒和物として存在することができる。このような溶媒和物の混合物も調製することができる。このような溶媒和物の供給源は、結晶化の溶媒、調製または結晶化の溶媒に固有のもの、またはこのような溶媒に対して外来のものに由来することができる。
【0257】
用語「薬学的に許容される塩基付加塩」は、本明細書で使用する場合、任意の酸化合物の任意の非毒性の有機塩基付加塩または無機塩基付加塩を意味する。好適な塩を形成する例示的な無機塩基には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化バリウムが含まれる。好適な塩を形成する例示的な有機塩基には、メチルアミン、トリメチルアミンおよびピコリンまたはアンモニアなどの、脂肪族有機アミン、脂環式有機アミンまたは芳香族有機アミンが含まれる。適切な塩の選択は、当業者に公知である。
【0258】
一実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、NSAID誘導体化合物であり得る。
【0259】
NSAIDは、2つの理由のため、DEDの処置に使用されない。第1に、NSAIDが効果的である証拠が存在しない。第2に、NSAIDは、ひどい眼の副作用、最も顕著には角膜融解と関連する。実際に、NSAIDは、DEDを有する患者には禁忌である。
【0260】
局所の眼科用NSAIDの中で最も危険な合併症が、角膜融解である。角膜融解は、角膜上皮が深刻に損傷を受けている、または失われている状態であり、角膜間質(これは、コラーゲンから主になる)の菲薄化を伴う。この間質の進行性菲薄化は、主に屈折異常により失明、または感染症などのその後の合併症から眼自体の喪失にさえ至る恐れがある、眼の穿孔をもたらすことがある。角膜融解は、眼の手術後、および角膜表面に対する炎症または他の損傷の状況で、通常、起こる。しかし、角膜融解は、炎症または他の損傷の非存在下で起こることがある。
【0261】
一般に、角膜がDEDによって既に損なわれていると、角膜融解のリスクが増加するので、オピニオンリーダーは、眼科においてNSAIDを使用することに細心の注意を払うことを推奨しており、DEDにおけるNSAIDの使用を推奨していない。
【0262】
一実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、NSAID誘導体である式IIIおよび式IVの化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む。
【0263】
一実施形態では、本発明の化合物は、式IIIの化合物:
【化20】
または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。
【0264】
一実施形態では、本発明の化合物は、式IVの化合物:
【化21】
または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。
【0265】
式IIIおよびIVの化合物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,236,820号に記載されている。
【0266】
例えば、式IIIの化合物(PS)は、NSAIDスリンダクの誘導体である。したがって、それは、DEDの処置において無効または禁忌のいずれかであると予想されるかもしれない。
【0267】
一部の実施形態では、式IIIおよび式IVの化合物は、角膜、強膜、および網膜に接触する結膜のうちの1つまたは複数に浸透することができる。
【0268】
しかし、PSはDEDの処置に効果的かつ安全である。特に、PSは、DEDを処置するのに有効な用量で、およびその期間にわたって投与されると、角膜融解を引き起こさない。
【0269】
PSは、眼の痛みに対する鎮痛薬としてもやはり効果的であり、安全である。PSは、慣用的なNSAIDとして挙動しないので、PSは、例えば、ケトロラクなどの眼科用NSAIDによって示される有益な鎮痛特性を失うことが予期される。しかし、PSは、眼組織において、強力な鎮痛作用を示す。
【0270】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載されている疾患および状態の処置において使用するための医薬組成物を提供する。
【0271】
医薬組成物は、治療有効量の本明細書に記載されている式(III)もしくは式(IV)の化合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物もしくは水和物を活性成分として提供するよう、通常、製剤化されている。
【0272】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている医薬組成物は、追加の活性剤を含むことができる。一部の実施形態では、追加の活性剤は、抗生物質、シクロスポリンおよびリフィテグラストのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0273】
通常、本医薬組成物はまた、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤、不活性固体希釈剤および充填剤を含む担体、滅菌水溶液および様々な有機溶媒を含む希釈剤、浸透促進剤、可溶化剤およびアジュバントを含む。
【0274】
上に記載されている医薬組成物は、好ましくは、ドライアイ疾患または糖尿病性網膜症などの眼の状態または疾患の処置において使用するためのものである。
【0275】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物において提供される、式(III)または式(IV)の化合物の濃度は、例えば、医薬組成物の100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%または0.0001%(w/w、w/vまたはv/v)未満である。
【0276】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物において提供される式(III)または式(IV)の化合物の濃度は、独立して、医薬組成物の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19.75%、19.50%、19.25%、19%、18.75%、18.50%、18.25%、18%、17.75%、17.50%、17.25%、17%、16.75%、16.50%、16.25%、16%、15.75%、15.50%、15.25%、15%、14.75%、14.50%、14.25%、14%、13.75%、13.50%、13.25%、13%、12.75%、12.50%、12.25%、12%、11.75%、11.50%、11.25%、11%、10.75%、10.50%、10.25%、10%、9.75%、9.50%、9.25%、9%、8.75%、8.50%、8.25%、8%、7.75%、7.50%、7.25%、7%、6.75%、6.50%、6.25%、6%、5.75%、5.50%、5.25%、5%、4.75%、4.50%、4.25%、4%、3.75%、3.50%、3.25%、3%、2.75%、2.50%、2.25%、2%、1.75%、1.50%、125%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%または0.0001%(w/w、w/vまたはv/v)より高い。
【0277】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物において提供される、式(III)または式(IV)の化合物の濃度は、医薬組成物の約0.0001%~約50%、約0.001%~約40%、約0.01%~約30%、約0.02%~約29%、約0.03%~約28%、約0.04%~約27%、約0.05%~約26%、約0.06%~約25%、約0.07%~約24%、約0.08%~約23%、約0.09%~約22%、約0.1%~約21%、約0.2%~約20%、約0.3%~約19%、約0.4%~約18%、約0.5%~約17%、約0.6%~約16%、約0.7%~約15%、約0.8%~約14%、約0.9%~約12%または約1%~約10%(w/w、w/vまたはv/v)の範囲にある。
【0278】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物において提供される、式(III)または式(IV)の化合物の濃度は、医薬組成物の約0.001%~約10%、約0.01%~約5%、約0.02%~約4.5%、約0.03%~約4%、約0.04%~約3.5%、約0.05%~約3%、約0.06%~約2.5%、約0.07%~約2%、約0.08%~約1.5%、約0.09%~約1%、約0.1%~約0.9%(w/w、w/vまたはv/v)の範囲にある。
【0279】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物において提供される式(III)または式(IV)の化合物の量は、10g、9.5g、9.0g、8.5g、8.0g、7.5g、7.0g、6.5g、6.0g、5.5g、5.0g、4.5g、4.0g、3.5g、3.0g、2.5g、2.0g、1.5g、1.0g、0.95g、0.9g、0.85g、0.8g、0.75g、0.7g、0.65g、0.6g、0.55g、0.5g、0.45g、0.4g、0.35g、0.3g、0.25g、0.2g、0.15g、0.1g、0.09g、0.08g、0.07g、0.06g、0.05g、0.04g、0.03g、0.02g、0.01g、0.009g、0.008g、0.007g、0.006g、0.005g、0.004g、0.003g、0.002g、0.001g、0.0009g、0.0008g、0.0007g、0.0006g、0.0005g、0.0004g、0.0003g、0.0002gまたは0.0001gに等しいか、またはこれらより少ない。
【0280】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物において提供される式(III)または式(IV)の化合物の量は、0.0001g、0.0002g、0.0003g、0.0004g、0.0005g、0.0006g、0.0007g、0.0008g、0.0009g、0.001g、0.0015g、0.002g、0.0025g、0.003g、0.0035g、0.004g、0.0045g、0.005g、0.0055g、0.006g、0.0065g、0.007g、0.0075g、0.008g、0.0085g、0.009g、0.0095g、0.01g、0.015g、0.02g、0.025g、0.03g、0.035g、0.04g、0.045g、0.05g、0.055g、0.06g、0.065g、0.07g、0.075g、0.08g、0.085g、0.09g、0.095g、0.1g、0.15g、0.2g、0.25g、0.3g、0.35g、0.4g、0.45g、0.5g、0.55g、0.6g、0.65g、0.7g、0.75g、0.8g、0.85g、0.9g、0.95g、1g、1.5g、2g、2.5g、3g、3.5g、4g、4.5g、5g、5.5g、6g、6.5g、7g、7.5g、8g、8.5g、9g、9.5gまたは10gより多い。
【0281】
本発明により提供される化合物はそれぞれ、広い投与量範囲にわたり有効である。例えば、成人ヒトの処置において、独立して1日あたり0.01~1000mg、0.5~100mg、1~50mgの範囲にわたる投与量、および、1日あたり、5~40mgが、使用され得る投与量の例である。正確な投与量は、投与経路、化合物が投与される形態、処置される対象の性別および年齢、処置される対象の体重、ならびに主治医の好みおよび経験に依存する。
【0282】
非限定的な医薬組成物、およびこれを調製する方法が以下に記載されている。
【0283】
好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物、および局所送達に好適な医薬品用賦形剤を含有する、局所送達用医薬組成物を提供する。
【0284】
本発明の組成物は、ゲル剤、水溶性ゼリー剤、クリーム剤、ローション剤、懸濁剤、フォーム剤、散剤・粉剤(powder)、スラリー剤、軟膏剤、液剤、油剤、ペースト剤、坐剤、スプレー剤、乳剤、食塩液剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)をベースとする液剤などの、局部または局所投与に好適な、固体形態、半固体形態または液状形態の調製物に製剤化され得る。一般に、より高い密度を有する担体は、活性成分に長期間曝露する領域を提供することが可能である。対照的に、溶液製剤は、選択領域への活性成分の一層速やかな曝露を実現することができる。
【0285】
本明細書に記載されている組成物は、眼および周囲組織に、特に、眼の内側表面および瞼の内側表面(例えば、角膜、結膜および強膜を含む)に、局所投与向けに製剤化され得る。このような組成物は、例えば、点眼投与、結膜嚢への投与および結膜投与向けに製剤化されてもよい。特に、本明細書に記載されている組成物は、点眼剤として製剤化され得る。このような点眼剤製剤は、眼への投与に適合させた液体または半固体の医薬組成物を含むことができる。点眼剤組成物の典型的な例は、眼に滴下して投与される、眼科用液剤である。
【0286】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、点眼剤の形態にある。一部の実施形態では、液滴のサイズは、約10~約100μLの間にある。液滴サイズは、約10μLより多く、約20μLより多く、約30μLより多く、約40μLより多く、約50μLより多く、約60μLより多く、約70μLより多く、約80μLより多く、約90μLより多く、または約100μLより多くすることができる。液滴サイズは、約10μL未満、約20μL未満、約30μL未満、約40μL未満、約50μL未満、約60μL未満、約70μL未満、約80μL未満、約90μLまたは約100μL未満とすることができる。
【0287】
医薬組成物はまた、好適な固相担体またはゲル相担体、または賦形剤を含んでもよく、これらは、以下に限定されないが、角膜、結膜および強膜を含めた、眼の膜を通過する治療分子の浸透の増加、またはその送達の支援を可能にする化合物である。局所製剤の当業者に公知のこれらの浸透促進性分子は多数、存在する。このような担体および賦形剤の例には、以下に限定されないが、保湿剤(例えば、ウレア)、グリコール(例えば、プロピレングリコール)、アルコール(例えば、エタノール)、脂肪酸(例えば、オレイン酸)、界面活性剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピルおよびラウリル硫酸ナトリウム)、ピロリドン、モノラウリン酸グリセロール、スルホキシド、テルペン(例えば、メントール)、アミン、アミド、アルカン、アルカノール、水、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリマー(ポリエチレングリコールなど)が含まれる。
【0288】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、液体製剤、半固体製剤および多区画製剤(multicompartment formulation)を含むことができる。
【0289】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、PSの眼科用溶液および/またはPSのマイクロエマルションを含むことができる液体製剤であり得る。マイクロエマルションが開発された活性医薬成分(API)には、シクロスポリンAおよびフルルビプロフェンアキセチルが含まれる。液状剤形の眼組織との接触時間を延長するため、およびAPIの組織取り込みを増加させる手法の成功は、粘度を増加させる、浸透を増強する賦形剤、またはシクロデキストリンの使用を含む。シクロデキストリンは、疎水性APIの水溶解度および生体利用率を増加させる、APIを含む包接錯体を形成する環状オリゴ糖である。一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、β-シクロデキストリンおよび治療有効量のPSを含むことができる。
【0290】
一実施形態では、本発明は、眼の状態を処置することを必要とする患者において、ドライアイ疾患および網膜症からなる群から選択される眼の状態を処置するための組成物であって、治療有効量の式Iまたは式IIの化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む、組成物を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、薬学的に許容される担体を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、可溶化剤、アルコール、酸および保存剤のうちの1つまたは複数を含む。
【0291】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、可溶化剤およびアルコールを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、可溶化剤および酸を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、可溶化剤および保存剤を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、可溶化剤、アルコールおよび酸を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、可溶化剤、アルコール、酸および保存剤を含む。
【0292】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、式Iまたは式IIの化合物、または薬学的に許容されるその塩を、重量で約0.5%~約75%、または約0.5%~約70%、または約0.5%~約65%、または約0.5%~約60%、または約0.5%~約55%、または約0.5%~約50%、または約0.5%~約45%、または約0.5%~約40%、または約0.5%~約35%、または約0.5%~約30%、または約0.5%~約25%、または約0.5%~約20%、または約0.5%~約15%、または約0.5%~約10%、または約0.5%~約9%、または約0.5%~約8%、または約0.5%~約7%、または約0.5%~約6%、または約0.5%~約5%、または約0.5%~約4%、または約0.5%~約3%、または約0.5%~約2%、または約0.5%~約1%の量で含むことができる。
【0293】
一部の実施形態では、可溶化剤は、ビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)である。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、可溶化剤を、重量で約0.5%~約75%、または約1%~約70%、または約1%~約65%、または約1%~約60%、または約1%~約55%、または約1%~約50%、または約1%~約45%、または約1%~約40%、または約1%~約35%、または約1%~約30%、または約1%~約25%、または約1%~約20%、または約1%~約15%、または約1%~約10%、または約1%~約5%の量で含む。
【0294】
一部の実施形態では、アルコールは、マンニトールなどの糖アルコールである。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、アルコールを、重量で約0.5%~約75%、または約0.5%~約70%、または約0.5%~約65%、または約0.5%~約60%、または約0.5%~約55%、または約0.5%~約50%、または約0.5%~約45%、または約0.5%~約40%、または約0.5%~約35%、または約0.5%~約30%、または約0.5%~約25%、または約0.5%~約20%、または約0.5%~約15%、または約0.5%~約10%、または約0.5%~約9%、または約0.5%~約8%、または約0.5%~約7%、または約0.5%~約6%、または約0.5%~約5%、または約0.5%~約4%、または約0.5%~約3%、または約0.5%~約2%、または約0.5%~約1%の量で含む。
【0295】
一部の実施形態では、酸はホウ酸である。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、酸を、重量で約0.5%~約75%、または約0.5%~約70%、または約0.5%~約65%、または約0.5%~約60%、または約0.5%~約55%、または約0.5%~約50%、または約0.5%~約45%、または約0.5%~約40%、または約0.5%~約35%、または約0.5%~約30%、または約0.5%~約25%、または約0.5%~約20%、または約0.5%~約15%、または約0.5%~約10%、または約0.5%~約9%、または約0.5%~約8%、または約0.5%~約7%、または約0.5%~約6%、または約0.5%~約5%、または約0.5%~約4%、または約0.5%~約3%、または約0.5%~約2%、または約0.5%~約1%の量で含む。
【0296】
一部の実施形態では、保存剤は、ポリクオタニウム-1(ポリクワッド)である。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、保存剤を、重量で約0.001%~約5%、または約0.001%~約4%、または約0.001%~約3%、または約0.001%~約2%、または約0.001%~約1%、または約0.001%~約0.5%、または約0.001%~約0.1%、または約0.001%~約0.009%、または約0.001%~約0.008%、または約0.007%、または約0.001%~約0.006%、または約0.001%~約0.005%の量で含む。
【0297】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、治療有効量のPS、および可溶化剤(例えば、ビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート))、糖アルコール(例えば、マンニトール)、酸(例えば、ホウ酸)および保存剤(例えば、ポリクオタニウム-1(ポリクワッド))のうちのつまたは複数を含み得る。一部の実施形態では、このような製剤を使用して、眼への局所投与後、PSを網膜に送達することができる。一部の実施形態では、このような製剤は、網膜症を処置するのに十分な量(すなわち、治療有効量)で網膜にPSを送達するために使用することができる。
【0298】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約0.5%~約10%のPS、ならびに約0%~約25%のビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、約0%~約10%のマンニトール、約0%~約10%のホウ酸および約0%~約1%のポリクオタニウム-1(ポリクワッド)のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0299】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で0.5%より多いPS、ならびに5%より多いビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、0.5%より多いマンニトール、0.5%より多いホウ酸および0.001%より多いポリクオタニウム-1(ポリクワッド)のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0300】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で10%未満のPS、ならびに25%未満のビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、10%未満のマンニトール、10%未満のホウ酸および1%未満のポリクオタニウム-1(ポリクワッド)のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0301】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約3.5%のPS、ならびに約16%のビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、約3.18%のマンニトール、約1.2%のホウ酸および約0.005%のポリクオタニウム-1(ポリクワッド)のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0302】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、ゲルまたは粘性賦形剤およびPSを含む半固体製剤であり得る。このような半固体製剤は、前角膜領域におけるAPIの滞留時間を増加させることにより、生体利用率を増加させる粘度の高い製剤を含む。in situでのゲル剤は、pH、温度または電解質濃度の変化のため、眼に適用すると、ゾルからゲルへの転移を受ける粘性液体である。好都合な粘膜付着特性を有するゲル化賦形剤は、滞留時間をさらに増加させる。これらの薬物形態の開発に使用されるポリマーまたはゲル化賦形剤は、ゲランガム、アルギン酸ナトリウム、ポロキサマーおよび酢酸フタル酸セルロースを含む。一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、ポロキサマー407またはゲランガムを使用し、治療有効量のPSを含むPSサーモゲルを含むことができる。
【0303】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、ゲランガムまたはアルギン酸ナトリウムなどのゲル化賦形剤を含むことができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、ゲル化賦形剤を、重量で約0.5%~約20%、または約0.1%~約15%、または約0.1%~約10%、または約0.1%~約9%、または約0.1%~約8%、または約0.1%~約7%、または約0.1%~約6%、または約0.1%~約5%、または約0.1%~約4%、または約0.1%~約3%、または約0.1%~約2%、または約0.1%~約1%、または約0.1%~約0.9%、または約0.1%~約0.8%、または約0.1%~約0.7%、または約0.1%~約0.6%、または約0.1%~約0.5%の量で含む。
【0304】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、ポロキサマーを含むことができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、ポロキサマーを、重量で約1%~約75%、または約1%~約70%、または約1%~約65%、または約1%~約60%、または約1%~約55%、または約1%~約50%、または約1%~約45%、または約1%~約40%、または約1%~約35%、または約1%~約30%、または約1%~約25%、または約1%~約20%、または約1%~約15%、または約1%~約10%、または約1%~約9%、または約1%~約8%、または約1%~約7%、または約1%~約6%、または約1%~約5%、または約1%~約4%、または約1%~約3%、または約1%~約2%の量で含む。
【0305】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、Tween80またはステアリン酸ポリオキシルなどの界面活性剤を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、界面活性剤を、重量で約0.01%~約20%、または約0.01%~約15%、または約0.01%~約10%、または約0.01%~約9%、または約0.01%~約8%、または約0.01%~約7%、または約0.01%~約6%、または約0.01%~約5%、または約0.01%~約4%、または約0.01%~約3%、または約0.01%~約2%、または約0.01%~約1%、または約0.01%~約0.5%、または約0.01%~約0.1%、または約0.01%~約0.09%、または約0.01%~約0.08%、または約0.07%、または約0.01%~約0.06%、または約0.01%~約0.05%の量で含む。
【0306】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリンを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、シクロデキストリン(cylcodextrin)を、重量で約0.5%~約95%、または約0.5%~約90%、または約0.5%~約85%、または約0.5%~約80%、または約0.5%~約75%、または約0.5%~約70%、または約0.5%~約65%、または約0.5%~約60%、または約0.5%~約55%、または約0.5%~約50%、または約0.5%~約45%、または約0.5%~約40%、または約0.5%~約35%、または約0.5%~約30%、または約0.5%~約25%、または約0.5%~約20%、または約0.5%~約15%、または約0.5%~約10%、または約0.5%~約9%、または約0.5%~約8%、または約0.5%~約7%、または約0.5%~約6%、または約0.5%~約5%、または約0.5%~約4%、または約0.5%~約3%、または約0.5%~約2%、または約0.5%~約1%の量で含む。
【0307】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、治療有効量のPS、ならびにゲル化賦形剤(例えば、ゲランガムまたはアルギン酸ナトリウム)、ポロキサマー、可溶化剤(例えば、ビタミンE TPGS)、界面活性剤(例えば、Tween80またはステアリン酸ポリオキシル)、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、Cremophor)およびシクロデキストリン(例えば、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン)のうちの1つまたは複数を含むことができる。一部の実施形態では、このような製剤により、局所投与後、PSを眼の前区に送達することが可能になり得る。一部の実施形態では、このような製剤を使用して、眼のこのような前区に関連する、本明細書に記載されている疾患を処置するのに十分な量(すなわち、治療有効量)で、眼の前区にPSを送達することができる。
【0308】
本明細書で使用する場合、重量で「約0%」として記載される量は、0%より多い量であることが理解される。
【0309】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、治療有効量のPS、ならびにゲランガム、ビタミンE TPGSおよび(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0310】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約0.5%~約10%のPS、ならびに約0%~約5%のゲランガム、約0%~約20%のビタミンE TPGSおよび約0%~約20%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0311】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で0.5%より多いPS、ならびに0.1%より多いゲランガム、1%より多いビタミンE TPGSおよび5%より多い(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0312】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で10%未満のPS、ならびに5%未満のゲランガム、20%未満のビタミンE TPGS、20%未満の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0313】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約2.4%~約3%のPS、ならびに約0.5%のゲランガム、約5%のビタミンE TPGS、約10%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0314】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約2.4%~約3%のPS、ならびに約0.4%のゲランガム、約10%のビタミンE TPGS、約5%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0315】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、治療有効量のPS、ならびにアルギン酸ナトリウム、ビタミンE TPGS、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン、Tween(例えば、Tween80)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)(例えば、PEG400)およびステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0316】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約0.5%~約10%のPS、ならびに約0%~約5%のアルギン酸ナトリウム、約0%~約20%のビタミンE TPGSおよび約0%~約20%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0317】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で0.5%より多いPS、ならびに0.1%より多いアルギン酸ナトリウム、1%より多いビタミンE TPGSおよび5%より多い(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0318】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で10%未満のPS、ならびに5%未満のアルギン酸ナトリウム、20%未満のビタミンE TPGS、20%未満の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0319】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約3%のPS、ならびに約1.5%のアルギン酸ナトリウム、約5%のビタミンE TPGS、約10%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0320】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約0.5%~約10%のPS、ならびに約0%~約5%のアルギン酸ナトリウム、約0%~約25%のTween80、約0%~約20%の(2-ヒドロキシルプロピル)-β-シクロデキストリン、約0%~約20%のPEG400および約0%~約10%のステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0321】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で0.5%より多いPS、ならびに1%より多いアルギン酸ナトリウム、1%より多いTween80、1%より多い(2-ヒドロキシルプロピル)-β-シクロデキストリン、1%より多いPEG400および1%より多いステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0322】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で10%未満のPS、ならびに5%未満のアルギン酸ナトリウム、25%未満のTween80、20%未満の(2-ヒドロキシルプロピル)-β-シクロデキストリン、20%未満のPEG400および10%未満のステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0323】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約3%のPS、ならびに約1.5%のアルギン酸ナトリウム、約15%のTween80、約10%の(2-ヒドロキシルプロピル)-β-シクロデキストリン、約10%のPEG400および約5%のステアリン酸ポリオキシルのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0324】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約1%~約5%のPS、ならびに約50%~約90%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)、約0.05%~約1%のcremophor EL(F1)および約0.5%~約5%のTween80(F2)のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0325】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約1%~約5%のPS、ならびに約50%~約90%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および約0.05%~約1%のcremophor EL(F1)のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0326】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約1%~約5%のPS、ならびに約50%~約90%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および約0.5%~約5%のTween80(F2)のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0327】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約3~約4%のPS、ならびに約80%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および約0.1%のcremophor EL(F1)のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0328】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約3~約4%のPS、ならびに約80%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)および約1%のTween80(F2)のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0329】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約1%~約10%のPS、ならびに約1%~約40%のポロキサマー407および約1%~約20%のビタミンE TPGSのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0330】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で1%より多いPS、ならびに1%より多いポロキサマー407および1%より多いビタミンE TPGSのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0331】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で10%未満のPS、ならびに40%未満のポロキサマー407および20%未満のビタミンE TPGSのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0332】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約5.4%のPS、ならびに約20%のポロキサマー407および約12%のビタミンE TPGSのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0333】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、例えば、PSを含むことができるナノ粒子、リポソーム、デンドリマーまたはニオソームなどのPSの多区画製剤であってもよい。ナノ粒子は、ポリマー担体であり、この担体により、角膜の浸透が増加すること、および溶解のための表面積がより大きいために、生体利用率が改善される。ナノ粒子の相対的な制約は、その容量(capacity)が低いことである。リポソームは、安定性が不十分であること、コストが高いことおよび大規模生成についての技術に難題があることにより制限される。ニオソームおよびディスコソーム(discosome)は、二層状担体であり、これにより、その角膜前部の滞留時間の延長により、APIの生体利用率が増加する。一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、治療有効量のPSを含むナノ粒子を含む。
【0334】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、治療有効量のPSを含むナノ粒子(nanopartical)製剤を含んでもよい。一部の実施形態では、ナノ粒子製剤は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)ナノ粒子を含むことができる。一部の実施形態では、ナノ粒子製剤は、メトキシポリ(エチレングリコール)-ポリ(ラクチド)(mPEG-PLA)ナノ粒子を含むことができる。一部の実施形態では、このような製剤により、局所投与後、PSを眼の前区に送達することが可能になり得る。一部の実施形態では、このような製剤を使用して、眼の前区に関連する、本明細書に記載されている疾患を処置するのに十分な量(すなわち、治療有効量)で、眼のこのような前区にPSを送達することができる。
【0335】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約1%~約5%のPSおよび約90%~約98%のmPEG-PLAを含む、ナノ粒子製剤を含むことができる。
【0336】
一実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、重量で約3%~約3.5%のPSおよび約96.5%~約97%のmPEG-PLAを含む、ナノ粒子製剤を含むことができる。
【0337】
好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物などの本発明の化合物、および注射に好適な医薬品用賦形剤を含有する、眼内注射などの注射向け医薬組成物を提供する。組成物中の化合物の構成成分および量は、本明細書に記載されている通りである。
【0338】
本発明の組成物が注射によって投与するために組み入れられ得る形態としては、ゴマ油、トウモロコシ油、綿実油もしくはピーナッツ油、ならびにエリキシル、マンニトール、デキストロース、または滅菌水溶液、および類似の医薬ビヒクルとの水性もしくは油性懸濁液、またはエマルションが挙げられる。
【0339】
食塩水の水溶液はまた、注射に慣用的に使用される。エタノール、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール(ポリエチレングリコール、(および好適なそれらの混合物(例えば、PEG-PLA))など)、シクロデキストリン誘導体および植物油も使用されてもよい。適切な流動性は、分散液の場合、必要な粒子サイズを維持するため、例えばレシチンなどのコーティング剤の使用により、および界面活性剤の使用により維持され得る。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸およびチメロサールによってもたらされ得る。
【0340】
滅菌注射用液剤は、上で列挙されている様々な他の成分と共に必要とされる量の本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物などの本発明の化合物を、適切な溶媒に組み入れ、要求に応じ、次いで濾過滅菌することにより調製される。一般に、分散剤は、基礎分散媒、および上で列挙されているものから必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに様々な滅菌化活性成分を組み入れることにより調製される。滅菌注射用液剤を調製するための滅菌散剤・粉剤の場合、調製のある種の望ましい方法は、真空乾燥技法および凍結乾燥技法であり、これらにより、活性成分および追加の所望の任意の成分からなる粉末が先に滅菌濾過したその溶液から生じる。
【0341】
医薬組成物はまた、本明細書に記載されている組成物、および眼もしくは眼内投与に好適な1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤から調製することができる。このような医薬組成物の調製は、当分野において周知である。例えば、その各々の全体が参照により本明細書に組み込まれている、Andersonら編、Handbook of Clinical Drug Data、第10版、McGraw-Hill、2002年;ならびにPrattおよびTaylor編、Principles of Drug Action、第3版、Churchill Livingston、N.Y.、1990年を参照されたい。
【0342】
本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物などの本発明の化合物、またはこれらの化合物の医薬組成物の投与は、これらの化合物を作用の部位に送達するのを可能にする任意の方法により行うことができる。これらの方法は、非経口注射(眼内注射を含む)または局所適用(例えば、眼の表面への適用)を含む。
【0343】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物、またはこれらの化合物の医薬組成物の投与は、作用の部位への化合物の送達を可能にする任意の方法により行うことができ、この方法は、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、血管内、腹腔内または注入を含む)、局所(例えば、経皮適用、眼適用)、直腸投与、カテーテルもしくはステントによる、または吸入による局部送達経由を含むことができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物はまた、脂肪内にまたは鞘内に(intrathecally)投与することができる。
【0344】
例示的な投与形態(例えば、非経口、局所、または点眼による)は、滅菌水溶液、例えば、水性プロピレングリコールまたはデキストロース溶液中の、式(III)または式(IV)の化合物の液剤または懸濁剤を含む。このような剤形は、所望の場合、好適に緩衝化され得る。
【0345】
本発明はまた、キットを提供する。キットは、好適なパッケージング中の本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物、ならびに使用に関する指示、臨床研究の考察、および副作用の列挙を含み得る書面による資料を含む。このようなキットはまた、例えば、科学参考文献、添付文書資料、臨床試験結果および/またはこれらのまとめなどの情報も含むことができ、これらは、組成物の活性および/または利点を表示もしくは確立する、および/またはこれらは、投薬、投与、副作用、薬物相互作用、または医療供給者に有用な他の情報を記載している。このような情報は、様々な研究、例えばin vivoモデルを含む実験動物を使用する研究、およびヒト臨床試験に基づく研究の結果に基づくことができる。キットは、別の活性医薬成分(例えば、抗生物質)をさらに含有してもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物、および別の活性医薬成分は、キット内の個別の容器に、個別の組成物として提供される。一部の実施形態では、式(III)または式(IV)の化合物、および薬剤は、キット中の容器内に単一組成物として提供される。使用するための好適なパッケージングおよび追加の物品(例えば、液体調製物用の測定カップ、空気への曝露を最小化するためのホイルラッピングなど)は、当分野で公知であり、キットに含まれ得る。本明細書に記載されているキットは、医師、看護士、薬剤師、処方当局者などを含めた、医療供給者に、提供、市販および/または推進され得る。キットはまた、一部の実施形態では、消費者に直接、販売され得る。
【0346】
上記のキットは、好ましくは、本明細書に記載されている疾患および状態の処置において使用するためのものである。好ましい実施形態では、キットは、ドライアイ疾患または糖尿病性網膜症の処置に使用するためのものである。
【0347】
投与される本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物の量は、処置されるヒトまたは哺乳動物、障害または状態の重症度、投与速度、化合物の性質(disposition)および処方医師の自由裁量に依存する。しかし、各々の有効投与量は、単回用量または分割用量で、1日あたり、体重1kgあたり、約0.001~約100mg(約1~約35mg/kg/日など)の範囲にある。70kgのヒトの場合、これは、総計が、約0.05~約2.5g/日などの、約0.05~7g/日になるであろう。一部の例では、上述の範囲の下限値未満の投与量レベルは、適量よりも多くてもよいが、他の場合、さらに多量の用量が、いかなる有害な副作用を引き起こすことなく、例えば、丸1日をかけて投与するために、このような多量の用量をいくつかの少用量に分割することにより使用されてもよい。本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物の投与量は、体重のmg/kgまたは体表面積のmg/m2の単位で供給され得る。
【0348】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物は、複数回用量で投与される。好ましい実施形態では、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物は、複数回用量で投与される。投薬は、1日あたり、1回、2回、3回、4回、5回、6回または6回より多くてもよい。投薬は、1カ月に1回、2週間毎に1回、1週間に1回、または2日毎に1回であってもよい。他の実施形態では、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物は、1日あたり約1回から1日あたり約6回、投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物は、毎日1回、投与される一方、他の実施形態では、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物は、毎日2回、投与され、他の実施形態では、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物が毎日3回、投与される。
【0349】
本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物の投与は、必要となる限り、継続してもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物は、1、2、3、4、5、6、7、14または28日間より長く投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物は、28、14、7、6、5、4、3、2または1日間より短く投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物は、例えば、長期的効果の処置のため、継続的に長期投与される。別の実施形態では、本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物の投与は、約7日未満の間、継続する。さらに別の実施形態では、投与は、約6、10、14、28日間、2カ月、6カ月または1年間超、継続する。一部の場合、必要な限り、連続投薬を実現して、維持する。
【0350】
一部の実施形態では、有効投与量の本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物は、約1mg~約500mg、約10mg~約300mg、約20mg~約250mg、約25mg~約200mg、約10mg~約200mg、約20mg~約150mg、約30mg~約120mg、約10mg~約90mg、約20mg~約80mg、約30mg~約70mg、約40mg~約60mg、約45mg~約55mg、約48mg~約52mg、約50mg~約150mg、約60mg~約140mg、約70mg~約130mg、約80mg~約120mg、約90mg~約110mg、約95mg~約105mg、約150mg~約250mg、約160mg~約240mg、約170mg~約230mg、約180mg~約220mg、約190mg~約210mg、約195mg~約205mg、または約198~約202mgの範囲にある。
【0351】
一部の実施形態では、有効投与量の本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物は、約0.01mg/kg~約4.3mg/kg、約0.15mg/kg~約3.6mg/kg、約0.3mg/kg~約3.2mg/kg、約0.35mg/kg~約2.85mg/kg、約0.15mg/kg~約2.85mg/kg、約0.3mg~約2.15mg/kg、約0.45mg/kg~約1.7mg/kg、約0.15mg/kg~約1.3mg/kg、約0.3mg/kg~約1.15mg/kg、約0.45mg/kg~約1mg/kg、約0.55mg/kg~約0.85mg/kg、約0.65mg/kg~約0.8mg/kg、約0.7mg/kg~約0.75mg/kg、約0.7mg/kg~約2.15mg/kg、約0.85mg/kg~約2mg/kg、約1mg/kg~約1.85mg/kg、約1.15mg/kg~約1.7mg/kg、約1.3mg/kg mg~約1.6mg/kg、約1.35mg/kg~約1.5mg/kg、約2.15mg/kg~約3.6mg/kg、約2.3mg/kg~約3.4mg/kg、約2.4mg/kg~約3.3mg/kg、約2.6mg/kg~約3.15mg/kg、約2.7mg/kg~約3mg/kg、約2.8mg/kg~約3mg/kgまたは約2.85mg/kg~約2.95mg/kgの範囲にある。
【0352】
一部の例では、上述の範囲の下限値未満の投与量レベルは、適量よりも多くてもよいが、他の場合、さらに多量の用量が、いかなる有害な副作用を引き起こすことなく、例えば、丸1日をかけて投与するために、このような多量の用量をいくつかの少用量に分割することにより使用されてもよい。
【0353】
一部の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、例えば、点眼剤で局所投与される。一部の実施形態では、式(III)または式(IV)の化合物の治療有効用量は、少なくとも約0.75mg、少なくとも約1.5mg、または少なくとも約2mgであり得る。一部の実施形態では、式(III)または式(IV)の化合物の治療有効用量は、約0.75mg、約1.5mgまたは約2mgであり得る。一部の実施形態では、式(III)または式(IV)の化合物の治療有効用量は、約0.75mg以下、約1.5mg以下または約2mg以下である。
【0354】
本明細書に記載されている式(III)または式(IV)の化合物の有効量は、眼内注射または局所適用によるものを含めて、類似の利用性を有する薬剤の許容される投与形式のいずれかによって、単回用量または複数回用量のどちらかで投与され得る。
【0355】
ある特定の実施形態では、HPLCによって決定すると、1時間後に組織に分布する、本明細書に記載されている化合物(例えば、式IIIまたは式IVの化合物)のかなりの部分が、特定組織もしくは標的組織、または特定領域もしくは標的領域に存在する。ある特定の実施形態では、角膜、結膜、房水、硝子体、網膜、脈絡膜、強膜、涙腺およびレンズ(眼の組織または領域と呼ばれる)中、化合物の総量の30%を超えるものが、眼の単一組織または領域で見出すことができる。ある特定の実施形態では、角膜、結膜、房水、硝子体、網膜、脈絡膜、強膜、涙腺およびレンズ中、化合物の総量の30%を超えるものが、単一組織または領域で見出すことができる。ある特定の実施形態では、角膜、結膜、房水、硝子体、網膜、脈絡膜、強膜、涙腺およびレンズ中、化合物の総量の40%を超えるものが、単一組織または領域で見出すことができる。ある特定の実施形態では、角膜、結膜、房水、硝子体、網膜、脈絡膜、強膜、涙腺およびレンズ中、化合物の総量の50%を超えるものが、単一組織または領域で見出すことができる。ある特定の実施形態では、角膜、結膜、房水、硝子体、網膜、脈絡膜、強膜、涙腺およびレンズ中、化合物の総量の60%を超えるものが、単一組織または領域で見出すことができる。ある特定の実施形態では、角膜、結膜、房水、硝子体、網膜、脈絡膜、強膜、涙腺およびレンズ中、化合物の総量の70%を超えるものが、単一組織または領域で見出すことができる。ある特定の実施形態では、角膜、結膜、房水、硝子体、網膜、脈絡膜、強膜、涙腺およびレンズ中、化合物の総量の80%を超えるものが、単一組織または領域で見出すことができる。ある特定の実施形態では、角膜、結膜、房水、硝子体、網膜、脈絡膜、強膜、涙腺およびレンズ中、化合物の総量の90%を超えるものが、単一組織または領域で見出すことができる。
【0356】
一部の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、疾患を処置するために、哺乳動物に送達される。当業者であれば、ある特定の実施形態では、このような化合物の投与量は、処置される哺乳動物に応じて、調整することができることを理解するであろう。例えば、ある特定の実施形態では、ウサギの処置は、本明細書に記載されており、このような投与量は、本発明の化合物をヒトに投与する際に、修正されてもよく、または修正されなくてもよい。しかし、当業者は、必要な場合、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Guidance for Industry: Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers、U.S. Department of Health and Human Services、Food and Drug Administration、Center for Drug Evaluation and Research(CDER)、2005年7月に説明されている通り、本明細書において供給される投与量を変換してもよい。一部の実施形態では、ヒト等価用量(HED)は、動物用量から決定してもよく、動物用量が、以下の換算係数:マウス=0.08、ハムスター=0.13、ラット=0.16、フェレット=0.19、モルモット=0.22、ウサギ=0.32、イヌ=0.54、サル=0.32、マーモセット=0.16、リスサル=0.19、ヒヒ=0.54、マイクロ-ブタ=0.73およびミニ-ブタ=0.95を乗算して、mg/kgでの単位を得ることができる。上述の換算係数は例示であり、当業者により理解される通り、本発明において提示されている投与量を決して限定するものではない。
医薬品パッケージ
【0357】
一部の実施形態では、本発明は、以下:
本明細書において記載されている化合物から選択される化合物を含む製剤、および
点眼器などのディスペンサー
を含む医薬品パッケージであって、
ディスペンサーを使用して、製剤を眼に送達する場合、製剤の1滴または2滴が、眼の状態を処置するために治療上有効である、本明細書に記載されている化合物の用量を含む、医薬品パッケージを提供する。
【0358】
一部の実施形態では、眼の状態はドライアイ疾患である。用量は、鎮痛用量未満であるドライアイ用量であってもよい。
【0359】
一部の実施形態では、眼の状態は、疼痛または炎症である。用量は、鎮痛用量未満である抗炎症用量であってもよく、この用量は、鎮痛用量であってもよい。
【0360】
一部の実施形態では、眼の状態は、眼手術後の疼痛および/または炎症である。用量は、鎮痛用量未満である抗炎症用量であってもよく、この用量は、鎮痛用量であってもよい。
【0361】
一部の実施形態では、眼の状態は、結膜炎またはブドウ膜炎である。この用量は、鎮痛用量未満である抗炎症用量であってもよく、この用量は、鎮痛用量であってもよい。
【0362】
一部の実施形態では、眼の状態は、翼状片である。式Iの化合物は、点眼剤として翼状片の上の眼の表面に;または軟膏剤として;またはスプレー剤として;またはマイクロインジェクションによって翼状片に、局部投与することができる。
【0363】
一部の実施形態では、眼の状態は、眼への機械的外傷または化学損傷である。式Iの化合物は、点眼剤として;または軟膏剤として;またはスプレー剤として;または好適な徐放製剤で、罹患領域に局部投与することができる。
【0364】
一部の実施形態では、眼の状態は、類嚢胞黄斑浮腫または糖尿病性網膜症である。これらの実施形態では、本化合物は、眼の表面に局部投与されてもよく、眼の後部に直接注射によって送達されてもよく、または徐放製剤で眼内に沈着させてもよい。用量は、鎮痛用量未満である有効用量であってもよい。
【0365】
一部の実施形態では、眼の状態は、シェーグレン症候群である。これらの実施形態によれば、式Iの化合物は、好ましくはその徐放を確実にするように製剤化して、眼の表面に;または涙腺に近接した皮膚へのその適用後に涙腺に;または涙腺への直接注射によって局部投与してもよく;または涙腺にもしくはその近傍に沈着させてもよい。用量は、鎮痛用量未満である有効用量であってもよい。
【0366】
一部の実施形態では、眼の状態は、翼状片である。これらの実施形態によれば、化合物は、点眼剤として翼状片の上の眼の表面に;または軟膏剤として、またはスプレー剤として、またはマイクロインジェクションによって、翼状片に、局部投与することができる。用量は、鎮痛用量未満である有効用量であってもよい。
【0367】
一部の実施形態では、眼の状態は、眼への機械的外傷または化学損傷である。これらの実施形態によれば、化合物は、点眼剤として;または軟膏剤として、またはスプレー剤として、または好適な徐放製剤で、罹患領域に局部投与することができる。これらの実施形態によれば、用量は、鎮痛用量未満である有効用量であってもよい。
【0368】
一部の実施形態では、ディスペンサーを使用して、眼に製剤を送達する場合、この製剤の1滴は、0.75mg、1.5mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mgまたは10mgの化合物を含む。一部の好ましい実施形態では、ディスペンサーを使用して、眼に製剤を送達する場合、この製剤の1滴は、0.75mgの化合物を含む。一部の好ましい実施形態では、ディスペンサーを使用して、眼に製剤を送達する場合、この製剤の1滴は、2mgの化合物を含む。
【0369】
一部の実施形態では、医薬品パッケージは、DED、疼痛、炎症または結膜炎、ブドウ膜炎、類嚢胞黄斑浮腫、シェーグレン症候群、翼状片、糖尿病性網膜症、眼への外傷または化学損傷などの、眼の状態を処置するため、製剤の投与に関する指示をさらに含む。
【0370】
ある特定の実施形態では、医薬品パッケージは、上記の眼の状態の処置に好適な薬剤または非化学的方法と一緒に、本明細書に記載されている化合物(すなわち、式Iの化合物、式IIの化合物、化合物1~120から選択される化合物、または化合物121~136から選択される化合物)を含む製剤の投与に関する指示を含む。ある特定の実施形態では、医薬品パッケージは、上記の眼の状態の処置に好適な薬剤を含む、第2の製剤をさらに含む。
【0371】
一部の実施形態では、本発明は、以下:
1つまたは複数の単一剤形であって、それぞれが、本明細書に記載されている化合物(例えば、式Iの化合物、式IIの化合物、化合物1~120から選択される化合物、または化合物121~136から選択される化合物)を含む製剤を含む、1つまたは複数の単一剤形、および
眼の状態を処置するための単一剤形を投与するための指示
を含む医薬品パッケージを提供する。
【0372】
ある特定の実施形態では、本医薬品パッケージは、1つまたは複数の単一剤形の投与に関する指示であって、単一剤形がそれぞれ、上記の眼の状態の処置に好適な薬剤または非化学的方法と一緒に、本明細書に記載されている化合物(すなわち、式Iの化合物、式IIの化合物、化合物1~120から選択される化合物、または化合物121~136から選択される化合物)を含む製剤を含む、指示をさらに含む。ある特定の実施形態では、キットは、上記の眼の状態の処置に好適な薬剤の1つまたは複数の単一剤形をさらに含む。
【0373】
一部の実施形態では、本発明は、以下:
1つまたは複数の単一剤形であって、それぞれが、上記の眼の状態の処置に好適な薬剤を含む、1つまたは複数の単一剤形、および
眼の状態を処置または予防するための、本明細書に記載されている化合物(すなわち、式Iの化合物、式IIの化合物、化合物1~120から選択される化合物、または化合物121~136から選択される化合物)を含む、1つまたは複数の単一剤形の投与に関する指示
を含む医薬品パッケージを提供する。
【0374】
一部の実施形態では、本発明は、以下:
上記の眼の状態の処置に好適な薬剤を含む第1の製剤、および
第1の医薬製剤および、眼の状態を処置または予防するための本明細書に記載されている化合物(すなわち、式Iの化合物、式IIの化合物、化合物1~120から選択される化合物、または化合物121~136から選択される化合物)を含む第2の製剤の投与に関する指示
を含む医薬品パッケージを提供する。
【実施例】
【0375】
本発明がこれより一般に記載されており、以下の実施例に対する参照によって一層容易に理解され、これらの実施例は、単に本発明のある特定の態様および実施形態の例示目的のために含まれているに過ぎず、本発明の制限を意図するものではない。
(実施例1)
一般的な方法
【0376】
DEDに対するPSの効力を評価するため、改良したコンカナバリンAモデルを使用した。コンカナバリンAモデルでは、ドライアイは、涙腺においてリンパ球浸潤を誘導する選択的T細胞有系分裂促進物質であるコンカナバリンAを哺乳動物の涙腺に注射することにより誘発させる。コンカナバリンAモデルは、一般に、(Barabino S. Animal models of dry eye. Arch Soc Esp Oftalmol. 2005年;80巻(12号):693~4頁)に記載されている。コンカナバリンAを超音波誘導下で涙腺に注射し、こうして、涙腺の近傍への注射をなくした(涙腺自体の反対側)。ウサギの主な涙腺の頭部および尾部に、別々に注射した。コンカナバリンAの用量は、DED徴候に対して最適化した。
【0377】
下記の試験において、DEDの4つのマーカー:涙液層破壊時間(TBUT)、シルマー試験、涙液浸透圧(tear osmolarity)および涙のラクトフェリンレベルをモニタリングした。同じ時刻(±1時間)にすべてのアッセイを行い、日内変動が理由となるアッセイのばらつきを回避した。
(実施例2)
DEDに対するPSの効力
【0378】
コンカナバリンAモデルを使用する効力実験において、ホスホスリンダクとも公知であり、PSと略される化合物5(1.5%点眼剤)でウサギの一群を処置し、一群はビヒクルにより処置した。表1に示されている通り、TBUT、涙液浸透圧および涙のラクトフェリンレベルにより、PSに対して強力な治療的応答が示されたが、シルマー試験もやはり改善された(傾向が有意である)。したがって、局所的に適用したPSが、DEDを抑制することは明白である。
【表1】
(実施例3)
一般安全性データ
【0379】
ウサギでは、PS3.6%の点眼剤により2週間、毎日、処置している間に、眼内圧の変化がなかったことを含めて、PSに起因する(form)局所または全身性毒性の証拠はなかった。
(実施例4)
角膜融解はない
【0380】
PSにより最大3週間、処置したウサギの眼の注意深い眼科検査により、角膜炎または角膜融解がないことが明らかとなった。
(実施例5)
PGE2レベルに対するPSとケトロラクの効果の比較
【0381】
コンカナバリンAにより誘発させたドライアイを有するウサギにおける、PGE2の涙レベルに対する、PS、ケトロラクおよびジクロフェナク(dicofenac)(後者の2つは、角膜融解を誘発することが公知である眼科用NSAIDである)の効果を比較した。PS1.5%または市販のケトロラク0.5%である3つの点眼剤を、0時および1時間後にコンカナバリンA誘発性DEDを有するウサギに投与した。涙を2時間時に得て、PGE2のレベルをELISAにより決定した。ナイーブなウサギの涙中のPGE2(コンカナバリンAにも曝露せず、処置もされない)も測定した。PGE2レベル(平均±平均の標準誤差)は、ナイーブは、110.4±12.6ng/mlであり、PS処置は、115.4±15.8ng/mlであり、ケトロラク処置は、77.7±8.7ng/mlであった。PS対ケトロラクにおける差異は有意(p<0.02)であり、ケトロラク対ナイーブの差異も同様(p<0.03)であった。このパラメータに関すると、PSは、角膜融解を誘発するケトロラクとは(form)根本的に異なる。
【0382】
ウサギの3つの群の角膜におけるPGE2のレベルは、ELISAによって決定した。ウサギは、眼に局所適用した、PS1.6%またはケトロラク0.5%の点眼剤により処置するか、または処置しなかった(ナイーブ群)。pg/mgタンパク質での結果(平均±平均の標準誤差)。ナイーブ=787.3±96.3;PS=880.6±110.3;ケトロラク(Ketrolorac)=247.2±187.4(PSに対してp<0.01)。
【0383】
上記のコンカナバリンAにより誘発したDEDを有するウサギを、ビヒクル、またはPS2.3%またはケトロラク0.5%またはジクロフェナク0.1%により6日間、処置した。ビヒクル群と比較すると、6日目に、角膜におけるPGE2レベルは、PS群では、ビヒクル値の106%(統計学的有意差はない)であり、ケトロラク群では1.3%(ビヒクルに対してp<0.0001)であり、ジクロフェナク群では2.3%(ビヒクルに対してp<0.0001)であった。
【0384】
PGE2は、角膜上皮に対する細胞保護剤である。角膜におけるPGE2のレベルの低下は、角膜融解の発達を促進し、角膜浸食の形成における開始因子に相当する可能性が最も高い。その後のステップは、角膜の大部分を構成するコラーゲン原繊維を加水分解するMMPの放出である。コラーゲンの破壊は、眼の機能に関する深刻な結果を伴う角膜融解のプロセスを完了する。角膜融解の最終段階として続いて起こり得る角膜穿孔は、重症な合併症の場合に、失明、または眼の喪失さえもたらす恐れがある。
(実施例6)
MMPの抑制
【0385】
基質として精製MMP-1(コラゲナーゼI)を用いるin vitroアッセイでは、PSは、コラゲナーゼ活性をIC50<100nMで阻害することを示した。培養したヒト結膜細胞では、PSは、MMP-1を75%~86%抑制した。PS点眼剤により処置した、DEDを有するウサギの涙腺において、PSは、ビヒクル処置ウサギと比較して、MMP-9レベルを27%抑制した(2.20±0.24対1.66±0.20ng/mgタンパク質;p<0.05;平均±平均の標準誤差)。
【0386】
MMPの一般活性を、ウサギの3つの群の角膜で決定した。このMMP活性アッセイは、包括的なMMP指標として蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ペプチドを使用するものである。ウサギは、眼に局所適用した、PS1.6%またはケトロラク0.5%の点眼剤により処置するか、または処置しなかった(ナイーブ群)。相対蛍光単位(RFU)/mgタンパク質の結果(平均±平均の標準誤差)。ナイーブ=1,328±123;PS=749±218;ケトロラク(Ketoroloac)=1,272±106(PSに対してp<0.03)。
(実施例7)
眼痛および炎症の処置
【0387】
PSの鎮痛効果は、Luneau Cochet-Bonnet Aeshesiometer(Western Ophthalmics、Lynwood、WA)(定義した直径を有する調整可能なナイロンモノフィラメントを角膜中心へ様々な長さで適用する)を使用して、角膜接触閾値(CTT)を測定することにより決定した。このデバイスは、Lima L、Lange RR、Turner-Giannico A、Montiani-Ferreira F. Evaluation of standardized endodontic paper point tear test in New Zealand white rabbits and comparison between corneal sensitivity followed tear tests. Vet Ophthalmol. 2015年;18巻、補遺1号:119~24頁に一般に記載されている。
【0388】
CTTに到達するフィラメントによって生じた刺激は、瞼が迅速に閉じることからなる、角膜反射を誘導する。CTTは、瞬目反射を引き起こすために必要なフィラメントのセンチメートル長さとして定量する。
【0389】
CTTは、試験化合物(PS)の適用前(ベースライン)および適用後の様々な時点で決定する。PSは、β-シクロデキストリン(42または8mg/ml)またはナノ担体(19mg/ml)のどちらか一方で製剤化した。試験薬物は、エマルション法および蒸発法により、ナノ担体中で製剤化した(Vauthier C、Bouchemal K. Methods for the Preparation and Manufacture of Polymeric Nanoparticles. Pharmaceutical Research;2009年;26巻:1025~1058頁)。製剤化した安定な薬物懸濁液は、ポリ乳酸およびポリエチレングリコール(PLLA(10k)-PEG(2k));コール酸ナトリウム;およびPSからなった。ビヒクル対照は、PSを含まないβ-シクロデキストリンまたはナノ担体のいずれかとした。市販のリドカイン1%を、陽性対照として使用した。
【0390】
成体のニュージーランド白色家兎の各眼に、PSまたはビヒクルまたはリドカインの液滴3 25μLを、各滴下の間を5分間にして適用した。最後の滴下の時間を0時として採用した。
【0391】
表2は、時間依存性および用量依存性の両方となる、PSの鎮痛効果を実証する。
【表2】
(実施例8)
ウサギにおけるドライアイの効果的な処置としてのPS
【0392】
ホスホ-スリンダク(PS)は、その潜在的な臨床応用が研究された低分子である。PSは、PS分子全体がその薬理学的活性に必要となるので、NSAIDスリンダクのプロドラッグではない。ここで、DEDにおけるPSの潜在的効力を調査する。
【0393】
DEDの様々な動物モデルが報告されている。一般に、トランスジェニック系統および関連抗体が入手可能であるので、マウスモデルが機構研究に一般に使用される。しかし、ウサギまたはイヌのモデルがドライアイ徴候の研究および治療的研究にとってより好適である。なぜなら、それらの眼のサイズがヒトにより近く、それらの眼表面が容易にアクセス可能であり、また涙の生成が低下して眼表面が有意に変化し得、ヒト疾患をかなりの程度再現するからである。
【0394】
最初に、ベンザルコニウムおよびアトロピンを含め、いくつかのDED動物モデルを実験し、その報告された制約に遭遇した。薬物発見を進めるため、Nagelhoutらによって開発されたDEDの臨床的関連性のある短期間のウサギモデルに着目した。このモデルでは、T細胞有系分裂促進物質であるコンカナバリンA(Con A)を、下涙腺(ILG)に注射すると、涙腺および角膜の両方において、MMP-9およびサイトカインIL-1β、IL-8およびTGF-β1のレベルの上昇を伴う、顕著な炎症プロセス(涙腺炎)がもたらされた。涙腺炎は、涙の生成を抑制し、DEDの臨床パラメータの付随変化を伴う、眼炎症に至る。このモデルの優れた選択は、ウサギの使用であり、その眼は、マウスおよびラットのものとは対照的に、サイズおよび他の特徴がヒトにより近い。このモデルは、これらのウサギにおいて、デキサメタゾンなどの抗炎症剤が、DEDの臨床徴候を逆転させるという報告に由来する、ある程度の検証を受けたものである。
【0395】
このモデルのいくつかの制約、すなわち、主に、再現性の欠如および短期間のドライアイ(急性モデル)が観察された。前者の再現性の欠如は、涙腺へのCon Aの相対的な盲目的注射、動物の解剖学的構造における多様性、ならびに涙腺系の注射されていない部分からの代償的な涙生成に主に起因する。本発明者らは、本発明者らの精密モデルにおいてこのような制約を克服した。
【0396】
本発明者らの手法をもたらした元々のCon Aをベースとする方法に関する主な改善が、本明細書に提示されている。
【0397】
Con Aを、超音波誘導下ですべての涙腺に注射し、この注射の成功を、注射後の超音波画像により確認した(
図1および
図2を参照されたい)。観察される通り、ウサギの下涙腺のサイズは、最小と最大との間で、4.1倍の異なりがある(n=42)。この多様性は、元々の方法で推奨された盲目的注射が、不成功に終わることが多い理由を説明する。これは、Con A溶液とメチレンブルーとを混合し、注射後のその経過を追跡することにより確認した。その場合の約1/3において、Con Aは、涙腺の外側に行き着いた。ウサギに3回のCon Aの注射(それぞれ1回ずつ、下涙腺(ILG)、上涙腺の眼瞼部分(PSLG)およびSLGの眼窩部分(OSLG)への)を受けさせた。
【0398】
1箇所の涙腺にだけCon Aを注射した後では、その残りの涙腺が涙を過剰生成することによって、ドライアイを埋め合わせることができることが観察されたので、下涙腺だけではなく、涙腺のすべてに注射して、涙生成の抑制を最大化した。
【0399】
Con Aは、密なリンパ球浸潤を特徴とする、涙腺の強力な炎症応答を誘発した(
図3)。炎症の後に、有意なSTT値の低下により証明される、涙生成の低下が続いた。
【0400】
効力の4つのパラメータを、通常の1つまたは2つの代わりに評価した。それらのパラメータは、(a)眼の上に0.2%フルオレセインを使用し、フルオレセインフィルムの黒点、線または明白な破壊を生じさせるのにかかった時間を記録して決定した、涙液層破壊時間(TBUT)、(b)製造業者の指示に従う、TearLab浸透圧試験を使用して測定した、涙液浸透圧(TearLab Corp.、San Diego、CA)、(3)角膜と下瞼の中間点における眼瞼結膜との間に挿入された、シルマー片(EagleVision、Denville、NJ)を使用し、5分で湿潤した片の長さを測定して決定した、シルマー涙試験(STT)、および、(4)製造業者の指示に従う、ELISAキット(MyBiosource、San Diego、CA)によって測定される涙のラクトフェリンレベルを含む。4つすべてが、臨床診療において使用されており、疾患の臨床活性と相関する。STTは、最も信頼性が低く、その結果、TBUTよりも半分未満の頻度しか臨床的に使用されていない。
【0401】
涙腺へのCon Aの注射を、必要な場合、毎週、繰り返した。1週間よりも長い研究が必要となる場合、注射の繰り返しにより、少なくとも3週間、ドライアイを延長させ、元々の急性モデルを慢性にした。
【0402】
このモデルはロバストであり、これを使用して、DEDおよび治療剤へのその応答を確実に研究することができる。
【0403】
PSは、ウサギにおいて、Con A誘発性ドライアイを抑制する。ドライアイに対するPSの効果は、ニュージーランド白色(NZW)家兎、2~3kg(Charles River Labs、Waltham、MA)で決定した。これらのウサギを、一羽ずつ厳密な温度(70±5°F)および湿度(45±5%)管理がなされた部屋に収容し、少なくとも2週間、慣れさせた後、上記のCon Aの注射によりドライアイを誘発させた。Con A誘発性ドライアイを有するNZW家兎(三組の注射)をナノ粒子として製剤化したPSにより処置し、Con A注射の当日に開始し、21日間、3回/日、点眼剤として局所投与した。
図4に示されている通り、PSは、TBUT、涙液浸透圧および涙のラクトフェリンレベルを正常に回復させた。STT値もまた改善したが、ビヒクル群からの差異は、傾向だけが有意であった。同様の結果が、5日目および14日目に得られた(データは示さず)。
【0404】
PSは、DEDにおいて、シクロスポリンおよびリフィテグラストよりも効力に優れている。このモデルを使用して、本発明者らは、PSの効果とシクロスポリンおよびリフィテグラストの効果とを比較した。ウサギを上記のPS、またはシクロスポリン0.05%、またはリフィテグラスト5%の点眼剤で3回/日により6日間、処置した。TUBT、浸透圧およびSTTの決定に加え、本発明者らは、安楽死の時点に採取したウサギのILGにおける、IL-8およびIL-1βのレベルを測定した。これらのサイトカインはどちらも、DEDにおける炎症の重要なメディエーターである。以下の表に示されている通り、PSは、TBUT、涙液浸透圧、IL-8およびIL-1βのレベルに対して統計学的に有意な効果を有した。シクロスポリンは、STTを有意に改善したが、残りのパラメータに対して有意な効果を有さなかった。リフィテグラストは、涙液浸透圧を有意に改善したが、他のパラメータのいずれも有意に改善しなかった。留意すべきことに、リフィテグラストは、STTをビヒクル群のレベル未満に抑制し、この抑制は、統計学的に有意であったが、有用な治療効果に対して反対方向にあった。
【表8】
【0405】
DEDに対するPSの効力を、ケトロラクおよびジクロフェナク(強力な眼抗炎症および鎮痛特性を有する2種のNSAID)の効力と比較した(
図5)。処置の1週間後、PSは、予期される通り、TBUTおよび浸透圧を正常にしたが、STTに対して有意な効果を有さなかった。ケトロラクとジクロフェナクのどちらも、これらのパラメータのいずれも改善しなかった。
【0406】
局所適用したPSの安全性。PSの眼への適用は、不快感の証拠なしに、ウサギによって非常に十分に耐容された。PSを1カ月、適用している間、毎週行った細隙灯検査により、結膜の濾胞性/乳頭性応答もしくは充血の証拠は示されず角膜異常の徴候(染色欠損、角膜の血管形成、混濁形成、上皮欠損、間質菲薄化または融解の証拠)もなかった。Tonopen(Reichert Technologies、Depew、NY)により測定した眼内圧は、期間中、正常のままであった。ブドウ膜炎の徴候を発症した動物はなく、検死において、後区は、すべての動物において正常に見えた。
【0407】
ドライアイにおけるPSの作用機序。組織培養、動物およびヒトでの研究により、DEDのコア機構として炎症が確立された8。DEDにおけるPSの作用機序を決定するため、DEDに伴う炎症において重要な役割を果たすことが公知であるいくつかの因子のPSへの応答を調査した。それらは、NF-κB;サイトカインTGF-β、IL-1β、IL-6およびIL-8;コラゲナーゼMMP-1およびMMP-9;およびPGE2を含む。これらの研究では、本発明者らは、Chang結膜細胞(クローン1~5c-4lアメリカンタイプカルチャーコレクション(Manassas、VA)認定細胞系、20.2)のWong-Kilbourne誘導体である、ヒト結膜上皮細胞を使用した。
【0408】
PSは、NF-κB活性化を抑制する。NF-κBは、恐らくDEDの眼炎症の病因において、重要な役割を果たす、多数の炎症メディエーターおよび細胞シグナル伝達カスケードをモジュレートする転写因子である。NF-κBに対するPSの効果は、培養したヒト結膜細胞と、PSまたはビヒクルにより処置したDEDを有するウサギのILGとの両方で評価した。
【0409】
ヒト結膜細胞は、PSの様々な濃度で処置した。5時間後、TNF-αを培養培地に加えて、10ng/mlの最終濃度にし、1時間後、NF-κB活性化の状態をEMSAにより決定した。
図6Aに示されている通り、PSは、NF-κBの活性化を有意に抑制した。同様に、処置の1週間後、PSは、DEDを有するウサギのILGにおいて、ビヒクルにより処置したものと比べて、NF-κB活性化を抑制した。
【0410】
PSは、MAPK活性化を抑制する。MAPKは、DEDにおける、涙の高浸透圧および炎症性サイトカインへの細胞の応答を媒介する。これらのキナーゼは、MMP-9を含めて、ストレス関連遺伝子の転写を活性化することができる。MAPKは、IL-βおよびTNF-αを含むサイトカインの生成を刺激し、それによって、眼表面損傷が引き起こされる。
【0411】
本発明者らの結膜細胞は、JNK経路およびErk1/2経路しか発現しない。PSは、両方のリン酸化による活性化を強く抑制した(
図6B)。
【0412】
PSは、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を抑制する。MMPは、DEDの病態生理学において重要な役割を果たす。MMP-9(主に)およびMMP-1は、DESに関係する。涙のMMP-9の活性は、DEDの重症度と平行している。MMP、例えばMMP-9は、角膜上皮の基底膜および密着結合タンパク質の構成成分を溶解する。したがって、培養した結膜細胞におけるMMP-1、およびPSにより処置したウサギのILG、角膜および房水におけるMMP-9に対するPSの効果を決定した。
【0413】
2時間、PS 1xIC
50または1.5xIC
50による培養したヒト結膜細胞の処置により、対照と比べて、それぞれ、48%および55%、培養培地に分泌されたMMP-1のレベルが低減された(47.7±2.0対24.9±0.8、および21.6±0.8;平均±平均の標準誤差;どちらについてもp<0.01;
図7A)。これらの細胞は、MMP-9を生成しなかった。Con Aにより処置したウサギにおいて、ILGおよび房水中のMMP-9のレベルは、
図7Bに示されている通り、ナイーブなウサギ(Con A処置していない)と比べて、7日目に、有意に増加した。1週間、DEDを有するウサギのPSによる処置により、MMP-9レベルが正常に戻った。
【0414】
急性実験では、ナイーブなウサギを1時間、PSまたはケトロラクのいずれかで処置し(どちらも、局所投与した)、角膜におけるMMPの活性を決定した。このアッセイにより、所与の組織におけるMMP活性がまとめて決定される。
図7Bに示されている通り、PSは、MMPの活性を43%抑制した(p<0.05)。対照的に、NSAIDであるケトロラクは、角膜におけるMMP活性に影響しなかった。
【0415】
PSはサイトカインを抑制する。サイトカインは、DEDにおいて重要な役割を果たし、それらの一部のレベルは、ヒトにおいて、DEDの個々の臨床パラメータと相関する。結膜細胞系におけるTGF-β、IL-6、IL-8およびIL-1βのPSへの応答、およびPSにより処置したDEDウサギのILGを決定した。
【0416】
細胞をPS 1xIC50により処置し、2時間後、TNF-αを培地に加えて、最終濃度を10ng/mlにした。培養培地を24時間後に採取し、TGF-β、IL-6およびIL-8のレベルをELISAにより決定した。IL-1βのレベルは、検出限界未満であったことが留意される。
【0417】
PSは、IL-8(92%低下)、IL-6(95%低下)およびTGF-β(19%低下)のTNF-αによる刺激レベルを顕著に抑制した(
図8A)。さらに、3種のサイトカインのすべてに関して、PSは、その非刺激レベルも同様に抑制した(それぞれ、62%、84%および4.7%の低下)。さらに、PSは、ビヒクルにより処置した対照と比べて、1週間、PSにより処置したウサギのILGにおいて、IL-8のレベルを64%およびIL-1β(培養した細胞により発現されない)のレベルを61%抑制した(
図8B)。TGF-βは、ILGホモジネートにおいて、この方法により検出不能であった。これらの変化はすべて、統計学的に有意であった(非刺激TGF-βの場合を除いて、p<0.001~0.04)。
【0418】
PSは、角膜および涙において、PGE2のレベルを保存する。プロスタグランジン(PG)は、その生成部位において、またはその近傍で作用する重要な炎症メディエーターである。PGE2は、DEDに関係しており、DEDを有する患者の涙中のPGE2のレベルが増加する。COX-2およびPGEシンターゼ発現レベルの増加が、DEDマウスの涙生成組織において見出された(涙レベルは報告しなかった)。
【0419】
ウサギの3つの群、すなわちナイーブなウサギ、およびPSまたはビヒクルのいずれかで1週間処置した、Con A誘発性DEDを有するウサギからなる3つの群において、ウサギ涙中のPGE
2レベルを決定した。
図9Aおよび9Bにおいて示されている通り、ビヒクル処置したウサギの涙は、ナイーブなウサギ(Con A処置なし、薬物処置なし)よりもPGE
2のレベルは有意に高い一方、PS処置ウサギでは、これらのレベルは、ナイーブなウサギのレベルよりもわずかに低かった(しかし、ナイーブなウサギのレベルと有意差はなかった)。
【0420】
急性実験では、以下のもの:ビヒクル、PS、ケトロラクまたはジクロフェナクを、Con A誘発性DEDを有するウサギの4つの群の眼に1回、局所投与した。後者の2つのケトロラクまたはジクロフェナクは、眼炎症および疼痛の処置に使用されるNSAIDである。1時間後に得たこれらのウサギの角膜、およびナイーブなウサギの角膜におけるPGE
2のレベルを決定した。
図9Bにおいて示される通り、PS処置群におけるPGE
2レベルは、ビヒクル処置ウサギおよびナイーブなウサギのPGE
2レベルとは違いがなかった。これは、PGE
2のレベルをほぼ完全に抑制する、ケトロラクおよびジクロフェナクとは顕著に対照的である。
議論
【0421】
この改善されたCon Aをベースとするモデルを首尾よく使用して、新しい薬物の治療的効力および安全性を決定し、これにより、薬物の開発研究に対するその適用性が実証され、その妥当性が強化される。
【0422】
まとめると、本発明者らの結果は、PSのロバストな治療効果を実証する。PSにより、DEDの4つの臨床パラメータのうちの3つの値が正常(ナイーブ群により表される)に回復した。唯一の例外はSTTであり、これは、PS群において改善されたが、その変化は、傾向だけが統計学的に有意であった。しかし、この試験の重大な制約を考慮すると、STT結果は、PSが効果的であるという結論からそれるものではない。
【0423】
この結論は、PSの効力とDEDに対して2種の臨床的に使用される薬物であるシクロスポリンおよびリフィテグラストの効力とを比較することにより強化される。炎症応答において重要な2つのサイトカインIL-1およびIL-8(後者のIL-8は、ヒトにおける疼痛と相関する)を含めた、5つのパラメータのパネルから、PSは、他の2つのそれぞれの場合に1つであることと対照的に、4つにおいて臨床的に意味のある応答を誘導した。
【0424】
非常に重要な知見は、NSAID分子の懸念される副作用である、角膜融解のなんら証拠がないことであった。NSAIDの決定的な特性は、PG合成を阻害するその能力である。PSは、PGE2合成を阻害する、またはPGE2合成に影響を及ぼさないかのどちらかであることが報告されている。角膜および涙において、PSは、PGE2のレベルを保存した。対照的に、角膜融解を誘発することが公知である2つの眼科用NSAIDである、ケトロラクおよびジクロフェナクは、PGE2レベルを顕著に抑制した。PSと、これらの2つのNSAIDとの間の安全性差異は、PGE2に対するその異なる効果に一部、起因し得ると考えられる。実際に、DEDの角膜は、NSAIDに特に感受性が高く、したがって、NSAIDは、禁忌となるか、または回避されるべきである。角膜融解の発症に寄与するものは、角膜REFのコラーゲン間質を分解するMMPの活性化である。PSは、角膜における、MMP9のレベルおよびMMPの全体的な活性を抑制した。これは、ケトロラクによるこのような効果の欠如と対照的である。本発明のいずれか1つの理論に限定されることなく、PGE2およびMMPに対するPSの複合効果が、PSが眼に安全であることの一部の理由となることは明らかである。これらの知見は、PSと慣用的なNSAIDとの間の決定的な差異を指摘するものであり、観察期間の間に見られない角膜融解は、PSの長期投与後でさえも、転帰となる可能性は非常に低いと予期することを可能にする。
【0425】
DEDにおけるPSの効力は、シグナル伝達経路およびDEDの病因に関与するエフェクター分子に対する効果の集まりに起因するようである。興味深いことに、PSは、有意なレベルに到達する、眼と涙腺の表面の両方に対する、有意な機構的効果を示した。PSのこの多経路効果により、DEDに対するその強力な効果が説明される可能性がある。炎症は、多経路の活性化に起因する。したがって、系の冗長性が、1つの経路の不活性化を補うので、単一経路を完全に抑制しても、炎症の徴候に影響を及ぼすことができない。多重標的化の方法で作用するPSは、このような機械的耐性(mechanistic resistance)を回避し、したがって、その優れた効力。
(実施例9)
PSの眼および鎮痛効果
【0426】
PSの鎮痛作用は、Luneau Cochet-Bonnet Aesthesiometer(Western Ophthalmics、Lynwood、WA)(定義した直径を有する調整可能なナイロンモノフィラメントを角膜中心へ様々な長さで適用する)を使用して、角膜接触閾値(CTT)を決定することにより、眼の表面についてさらに検査した。
【0427】
図10に示されている通り、単一点眼剤としてナイーブなウサギに局所適用したPSは、実質的に瞬時に、かつ有意な鎮痛を生じた。対照として使用されるビヒクルは、効果がまったくなかった。リドカイン1%を、陽性対照とした。
(実施例10)
PSは、VEGFの生成および新血管形成を阻害する
【0428】
糖尿病性網膜症は、主に新しい血管の形成によって推進される疾患である。新しい血管形成の制御因子である、VEGFを標的とすることによるこのプロセスを阻害することが、確立されている治療戦略である。3つの組の実験により、VEGFおよび新しい血管形成をPSが阻害する能力を実証した。
【0429】
第1に、VEGFを分泌して血管内皮細胞を動員し血管新生することが公知である培養したヒトがん卵巣細胞によって、VEGF生成に対するPSの効果を評価した。したがって、VEGFは、抗血管新生戦略において、最も重要かつ直接的な標的の1つとなる。この実験により、卵巣がん細胞において、VEGFレベルが、PSによって低下することが発見された。分泌されたVEGFは、ELISAにより培養培地でアッセイした。この結果により、卵巣がんの親(SKOV3、OVCAR3およびA2780)と抵抗性変異体(A2780cisおよびA2780ADR)の両方において、PS(1.0×IC
50、24時間)により処置すると、VEGF-A発現レベルが低減することが示された。阻害の程度は、以下の表に示されている通り、対照と比較すると65%と100%の間の範囲であった。
【表9】
【0430】
第2に、しょう尿膜(CAM)アッセイを使用して、新しい血管形成(新血管形成)に対するPSの効果を評価した。このアッセイでは、白鶏受精卵(SPF Premium、Charles River Laboratory、North Franklin、CT)を、37℃、70%湿度で3日間、インキュベートした。次に、胚を7日間、滅菌ペトリ皿中、ex vivoでインキュベートした。VEGFおよびPSまたは水(ビヒクル対照)を吸収した、または吸収していないゼラチンスポンジを、CAM表面に埋め込み、解剖顕微鏡下、埋め込み後の4日目に新生血管を計数した。
【0431】
図11は、PSの血管新生抑制作用を実証する代表的な画像を示している。以下の表は、関連する知見を要約している。4日間内に、PSは、対照と比べて、26%~34%の間で、CAMにおける新血管形成を阻害した。標準的慣習であるように、VEGFを系に加えなかった場合でさえも、この効果は存在した。
【表10】
【0432】
最後に、ニュージーランド白色家兎の眼への局所適用したPSは、その涙腺において血管新生を阻害したことが実証された(
図12)。Con A誘発性ドライアイ疾患(n=8眼/群)を有するウサギを、PS3.5%の点眼剤により1日あたり3回、またはビヒクルにより1週間、処置した。ウサギの下涙腺を除去して、ホルマリンに固定した。VEGFに関する免疫組織化学検査を組織区域に対して行い、VEGF陽性血管を計数した。PSは、VEGF陽性細胞数を73%低下させ、細胞数をほぼ正常値にした(ナイーブなウサギのレベル)。
(実施例11)
網膜にPSを送達する例示的なPS製剤
【0433】
組成物:3.5%のPS;16%のビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート);3.18%のマンニトール;1.2%のホウ酸;0.005%のポリクオタニウム-1(ポリクワッド)。代替的に、ビタミンE TPGSは、他の可溶化剤によって置き換えてもよい。ポリクワッドを保存剤として添加する。
【0434】
調製方法:ポリクワッドおよびビタミンE TPGSを精製水に溶解し、次いでPSを添加し、70℃で30分間、撹拌した。次に、この溶液を遠心分離にかけて、不溶な薬物粒子を除去し、この上清を収集して、それにマンニトールおよびホウ酸を加えた。NaOHによりpHを6.7±0.2に調整した後、最終体積を精製水により調整した。
【0435】
結果:上記のPS製剤を、ニュージーランド白色家兎の眼へ点眼剤として、局所投与した。1時間および3時間後の、眼組織中のPSのレベルは、HPLCにより決定した。以下の表は、知見を要約している:
【表11】
(実施例12)
眼の前区にPSを送達する例示的なPS製剤
【0436】
眼の前区へのPSの送達を可能にする例示的な製剤は、以下のin-situゲル製剤を含む。
【0437】
ゲランガムをベースとするin-situゲル製剤
【0438】
組成物:2.4~3%のPS;0.5%のゲランガム;5%のビタミンE TPGS;10%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン。
【0439】
調製方法:ゲランガム溶液は、ある量のゲランガムを脱イオン水に添加し、この混合物を高速撹拌(500rpm)で、90℃まで加熱することにより調製した。一旦、完全に溶解すると、この溶液を0.22μmのフィルターによって濾過した。次に、PSおよび追加の賦形剤をこの系に加え、上記の濃度に到達させて、50℃、500rpmで30分間、撹拌し、完全溶解させた。
【0440】
結果:上記のPS製剤を、ニュージーランド白色家兎の眼へ点眼剤として、局所投与した。2時間後の、眼組織中のPSのレベルは、HPLCにより決定した。以下の表は、これらの知見を要約している:
【表12】
【0441】
代替的なゲランガムをベースとするin-situゲル製剤
【0442】
組成物:2.4~3%のPS;0.4%のゲランガム;10%のビタミンE TPGS;5%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン。
【0443】
調製:上記の通り。
【0444】
結果:PSを含むこの製剤を、ニュージーランド白色家兎の眼に局所投与し、その生体内分布を上記の通り決定した。以下の表は、これらの知見を要約している。
【表13】
【0445】
アルギン酸ナトリウムをベースとするin-situゲル製剤
【0446】
組成物:3%のPS;1.5%のアルギン酸ナトリウム;5%のビタミンE TPGS;10%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン。
【0447】
調製方法:アルギン酸ナトリウム溶液は、ある量のアルギン酸ナトリウムを脱イオン水に添加し、この混合物を高速撹拌(500rpm)で、90℃まで加熱することにより調製した。一旦、完全に溶解すると、この溶液を0.22μmのフィルターによって濾過した。次に、PSおよび追加の賦形剤をこの系に加え、上記の濃度に到達させて、50℃、500rpmで30分間、撹拌し、完全に溶解させた。
【0448】
代替的なアルギン酸ナトリウムをベースとするin-situゲル製剤
【0449】
組成物:3%のPS、1.5%のアルギン酸ナトリウム、15%のTween80、10%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン、10%のポリエチレングリコール400(PEG400)、5%のステアリン酸ポリオキシル。
【0450】
調製方法:アルギン酸ナトリウム溶液は、適量のアルギン酸ナトリウムを脱イオン水に添加し、この混合物を高速撹拌(500rpm)で、90℃まで加熱することにより調製した。一旦、アルギン酸ナトリウムが完全に溶解すると、この溶液を0.22μmのフィルターによって濾過した。次に、PSおよび追加の賦形剤を加え、上記の濃度に到達させて、完全に溶解するまで50℃、500rpmで撹拌した。
【0451】
結果:PSを含むこの製剤を、ニュージーランド白色家兎の眼に局所投与し、その生体内分布を上記の通り決定した。以下の表は、これらの知見を要約している。
【表14】
【0452】
ポロキサマー407に基づいたin-situゲル製剤:
【0453】
組成物:5.4%のPS;20%のポロキサマー407;12%のビタミンE TPGS。
【0454】
調製方法:ポロキサマー407溶液(感熱性ゲル溶液)は、「冷却法」を使用して調製した。ポロキサマー407および他の賦形剤の必要量を4℃の2回蒸留した冷水に溶解した。この混合物を濁りのない溶液が得られるまで、連続して撹拌した。次に、室温で連続撹拌しながら、濁りのない溶液が形成するまで、PSの適量を冷PM溶液に溶解した。
【0455】
結果:PSを含むこの製剤を、ニュージーランド白色家兎の眼へ点眼剤として、局所投与した。3時間および6時間での眼組織中のPSの生体内分布を、HPLCにより決定した。以下の表は、これらの知見を要約している。
【表15】
【0456】
眼の前区へのPSの送達を可能にする例示的な製剤は、以下のナノ粒子製剤を含む。
【0457】
組成物:約3.0~3.5%のPS、96.5~97%のメトキシポリ(エチレングリコール)-ポリ(ラクチド)(mPEG-PLA)。
【0458】
調製方法:油相:150mgのPSおよび1gのPEG-PLA(Akina,Inc)を20mLのジクロロメタン(DCM)に溶解した。水相:365mgのコール酸ナトリウムを60mlの精製水に溶解した。5mLの油相を、50mLのエッペンドルフコニカル管中で15mLの水相に穏やかに加えた。エマルションを生成するため、本発明者らは、75%の出力で、2分間のプローブ超音波処理(robe sonication)を使用した(Branson150、Fisher Scientific(商標)、USA)。出力ワット数は12~13であった。エマルションを100mLのビーカーに移し、DCMを完全に蒸発させるまで化学フード中、600rpmで一晩、撹拌した。この後に、14,000rpmで1時間、遠心分離した(Dupont、RC-5C)。次に、上清を別の管に移し、この中に3mLのPBSを加え、ナノ粒子を再懸濁した。ナノ粒子溶液を6~7秒間、遠心分離にかけて凝集物を除去した。この上清を最終調製物とした。
【0459】
結果:PSナノ粒子の特性付け:有効直径=109.4nm;粒子サイズ分布:多分散指数=0.163;薬物封入効率(EE)=46.4%(これは、%EE=封入された薬物/添加した薬物×100として算出した)。
【0460】
局所投与後のPSの生体内分布:上記のナノ粒子に製剤化したPSを、点眼剤として、ニュージーランド白色家兎に局所投与した。投与後の表示時点における、眼組織中のPSの生体内分布を、HPLCにより決定した。以下の表は、それらの知見を要約している。
【表16】
【0461】
硝子体内注射後のPSの生体内分布:上記のナノ粒子に製剤化したPSを、ニュージーランド白色家兎の硝子体に直接、注射した。投与後の表示時点における、眼組織中のPSの生体内分布を、HPLCにより決定した。以下の表は、これらの知見を要約している。
【表17】
【0462】
ヒトの眼におけるPSの生体内分布(ex vivo):ヒトの眼の前表面(眼瞼裂よりもわずかに広い領域に対応する)を、PSナノ粒子溶液(PS濃度は、0.2%、1%および2%であった)に直接接触させ、PSの溶液製剤について、上記の通り処置した。以下の表は、これらの結果を要約している。
【表18】
【0463】
ブタの眼におけるPSの生体内分布(ex vivo):外植したブタの眼をPSナノ粒子溶液(PS濃度は2%)に曝露し、ヒトの眼と同様に処置した。以下の表に要約されている結果により、眼組織によるPSの取り込みは迅速であり、その大部分は1分またはそれより早く起こり、強膜への移行時間は時間依存的であり、60分以内に観察される最大値に達することが実証される。
【表19】
(実施例13)
局所適用したPSは、強力な眼の抗炎症効果を有する
【0464】
ニュージーランド白色家兎におけるPSの抗炎症効果は、白内障手術後、および炎症誘発性細菌性リポ多糖(LPS)の投与後に評価した。手短に言えば、レンズを、水晶体超音波乳化吸引により取り除き、疎水性アクリル製眼内レンズ(AR40e、AMO)で置き換えた。操作が完了すると、10μlのPBSに溶解した1μgのLPSを硝子体に注射し、ブドウ膜炎を誘発した。
【0465】
ウサギを、1日あたり3回、点眼剤として局所適用したナノ粒子に製剤化したPS3.5%またはビヒクル(PSを含まないナノ粒子)により処置した。最初の適用は、手術の完了後、1時間以内に行った。このウサギを毎日、検査し、LPSの注射後、1日目、3日目および5日目に、ニードル吸引により、房水(AH)をサンプリングした。AH中の浸潤細胞数は、標準法に従い決定した。5日目に、ウサギを安楽死させて、埋め込んだレンズを取り除き、2.5%のグルタルアルデヒドに固定し、レンズに付着した炎症細胞の数を解剖顕微鏡下で検査した。
【0466】
白内障手術とLPS注射との組合せは、眼および眼窩周囲組織において顕著な炎症反応を引き起こし、こうして、ウサギは眼窩周囲浮腫のためにその眼を十分に開けることができなかった(
図13)。ビヒクルによる処置は、眼炎症を改善しなかったが、PSにより、処置の最初の24時間の間に眼炎症が実質的になくなった。ウサギの2つの群(ビヒクル対PS)の臨床的外観における差異は、劇的である。
【0467】
この臨床的効果は、AHにおける炎症細胞数に対するPSの効果に対応した。
図14に示されている通り、3日目に、ビヒクル処置したウサギは、細胞数が増加した(24~35×10
4個/ml)一方、PSにより処置したウサギは、<7×10
4/mlと、炎症反応の臨床徴候に対応する効果を有した。同様に、本発明者らは、5日目に、埋め込んだレンズを取り除いて検査すると、ビヒクル処置したウサギに由来するものは、それらに付着した多量の炎症細胞を有することを見出した。対照的に、PS処置したウサギに由来するものは、その上に細胞はほとんどまたはまったくなかった(
図14、下のパネル)。
(実施例14)
例示的なシクロデキストリンをベースとするPSの製剤
【0468】
組成物:0.1% Cremophor EL(F1)または1%のTween80(F2)を含む、3~4%のPS、80%の(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)。
【0469】
調製方法:6gのHP-β-CD(CAS番号128446-35-5)を、55℃の水浴で5mLの精製水に溶解した。380mgのPSを上記の溶液に加え、一晩、またはPSが完全に溶解するまで55℃の水浴中に維持した。Kolliphor ELまたはTween80をそれぞれ、PS HP-β-CD溶液に加えた。この得られた溶液を3000rpmで10分間、遠心分離にかけ、不溶粒子を取り除いた。上清を収集した。
結果:
【0470】
局所投与後のPSの生体内分布:PSを含むこの製剤を、ニュージーランド白色家兎の眼へ点眼剤として、局所投与した。0.5時間、1時間および3時間での眼組織中のPSのレベルをHPLCにより決定した。以下の表は、これらの知見を要約している:
【表20】
【0471】
ヒトの眼におけるPSの生体内分布(ex vivo):ヒトの死体の眼をLions Eye Bank for Long Island、Valley Stream、NYを通じて得た。それらを氷上で保存し、ドナーから取り出してから2時間以内に使用した。
【0472】
ヒトの眼の前表面(眼瞼裂よりもわずかに広い領域に対応する)を、PS HP-β-CD溶液(PS濃度は、0.5%、2.0%および3.3%であった)に直接、接触させ、37℃で10分間、インキュベートした。次に、眼を10%のジメチルスルホキシド(DMSO)ですすぎ、眼の表面から残留PSを除去して、PBS中、60分間、インキュベートした(対照実験により、このDMSO濃度で、眼組織を損傷することなく、完全にPSが除去されることが示された)。指定時間において、眼組織を切除し、PSレベルをHPLCによって決定した。以下の表は、これらの知見を要約している。
【表21】
【0473】
ニュージーランド白色家兎におけるPSの抗炎症効果を、白内障手術および炎症誘発性細菌性リポ多糖(LPS)投与の後に評価した。手短に言えば、レンズを水晶体超音波乳化吸引により取り除き、疎水性アクリル製眼内レンズ(AR40e、AMO)で置き換えた。操作が完了すると、10μlのPBSに溶解した1μgのLPSを硝子体に注射し、ブドウ膜炎を誘発させた。
(実施例15)
抗生物質と組み合わせたPSは、抗菌性効力を阻害しない
【0474】
眼へ局所適用するためのPSと抗生物質との組合せが、抗生物質の抗菌活性に影響を及ぼすかどうか評価した。この目的のため、ディスク拡散方法を使用した。
【0475】
手短に言えば、1mLあたり2×10
8個のコロニー形成単位となる標準濃度で、培養で成長させたStaphylococcus aureusを、ミュラーヒントンII寒天プレート(BD Diagnostic Systems)上に均一に播種した。抗生物質の抗菌感受性ディスク(Thermo Scientific Oxoid(商標))を6種のPS濃度(0%、1%、2%、3%、6%、9%)の1つに浸漬させた。各10μLを均一に各ディスク上で分配した。追加の対照は、PSもビヒクルもないディスク(disk with no PS and no vehicle)とした。
図15に示されている通り、様々なディスクを寒天表面に軽く押し付けた。各ディスクの周辺の細菌の成長をモニタリングし、各ディスク周辺の「成長がない」領域を24時間後に測定した。
【0476】
結果:以下の表に要約されている通り、PSは、対照(0%PS、すなわちビヒクルのみ)と比べて各抗生物質の阻害ゾーンをそれほど変化させなかった。PSもビヒクルもないディスクは、ビヒクル対照(図示せず)と実質的に(vitually)同一の結果をもたらした。したがって、これらの2つのキノロン抗生物質の抗菌活性は、点眼剤として眼に適用される濃度(通常、3%)をかなり超える濃度でさえも、PSの存在下で維持された。同様の結果が、さらなる抗生物質を用いて得られた。
【表22】
(実施例16)
PSは眼の様々な組織に分布する
【0477】
眼組織においてPSのPK/生体内分布への上述の製剤の寄与を評価するため、純粋なプロピレングリコール(PG)中のPSの溶液を研究した。PGは、眼によって十分に耐容された。点眼剤として(PG中の)3.5%PS溶液を、ニュージーランド白色家兎の眼に局所投与し、その1時間の生体内分布をHPLCにより決定した。表は、これらの知見を要約している。
【表23】
【0478】
これらの知見は、本発明のいずれか1つの理論に限定されることなく、本明細書において例示されている様々な製剤の各々が、特異的にPSを眼組織に標的化させることを示している。
参照による組み込み
【0479】
本明細書において明記されているすべての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許の各々が、参照により組み込まれているよう具体的かつ個々に示されているかのごとく、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。矛盾する場合、本明細書におけるいかなる定義をも含めた本出願が優先する。
均等物
【0480】
主題となる発明の具体的な実施形態が議論されているが、上記の本明細書は例示的なものであり、限定的ではない。本発明の多くの変形が、本明細書および以下の特許請求の範囲を鑑みて、当業者に明白となろう。本発明の全範囲は、均等物のその全範囲と共に特許請求の範囲を、およびこのような変形と共に本明細書を参照することにより決定すべきである。
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