(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】パーキンソン病バイオマーカーとしてのmiRNA及びこれを用いた診断キット
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6883 20180101AFI20220228BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220228BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220228BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20220228BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20220228BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220228BHJP
A23L 33/13 20160101ALI20220228BHJP
【FI】
C12Q1/6883 Z ZNA
A61P25/16
A61K31/7105
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
A23L33/13
(21)【出願番号】P 2020502648
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 KR2018008085
(87)【国際公開番号】W WO2019017680
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-03-17
(31)【優先権主張番号】10-2017-0091417
(32)【優先日】2017-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0116583
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0132866
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0132867
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0132868
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0132869
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0132870
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512145572
【氏名又は名称】国民大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】KOOKIMIN UNIVERSITY INDUSTRY ACADEMY COOPERATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】77, Jeongneung-ro,Seongbuk-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ヒョンジョン
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/018650(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/084770(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/085287(WO,A1)
【文献】特表2013-504542(JP,A)
【文献】国際公開第2012/164058(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/179765(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/114106(WO,A2)
【文献】Neurobiology of Aging,2014年,Vol.35,p.705-714
【文献】Journal of Biotechnology,2011年,Vol.152,p.96-101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の段階を含むパーキンソン病の診断のための情報を提供する方法:
(a)被検者から取得したサンプル中に含まれたmiR-494-3p、miR-6768-5p、miR-4324及びmiR-4726-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAの発現量を正常群サンプル中に含まれた前記miRNAの発現量と比較する段階;及び
(b)前記被検者のサンプル中に含まれた前記miRNAの発現量が正常群サンプル中に含まれたmiRNAの発現量よりも減少したことを確認する段階。
【請求項2】
前記方法は、下記の段階をさらに含むことを特徴とするパーキンソン病の診断のための情報を提供する、請求項1に記載の方法:
(a)被検者から取得したサンプル中に含まれたmiR-1226-5p、miR-4767及びmiR-3064-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAの発現量を正常群サンプル中に含まれた前記miRNAの発現量と比較する段階;及び
(b)前記被検者のサンプル中に含まれた前記miRNAの発現量が正常群サンプル中に含まれたmiRNAの発現量よりも増加したことを確認する段階。
【請求項3】
下記の段階を含むパーキンソン病の診断のための情報を提供する方法:
(a)被検者から取得したサンプル中に含まれたmiR-4767及びmiR-3064-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAの発現量を正常群サンプル中に含まれた前記miRNAの発現量と比較する段階;及び
(b)前記被検者のサンプル中に含まれた前記miRNAの発現量が正常群サンプル中に含まれたmiRNAの発現量よりも増加したことを確認する段階。
【請求項4】
下記の段階を含むパーキンソン病誘発物質のスクリーニング方法:
(i)miR-494-3p、miR-6768-5p、miR-4324及びmiR-4726-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAを発現する細胞にパーキンソン病誘発候補物質を処理し、該細胞から前記miRNAの発現量を確認する段階;及び
(ii)前記パーキンソン病誘発候補物質を処理した細胞において前記miRNAの発現量が下向き調節(down-regulation)される場合、前記パーキンソン病誘発候補物質をパーキンソン病誘発物質と判断する段階。
【請求項5】
下記の段階を含むパーキンソン病誘発物質のスクリーニング方法:
(i)miR-4767及びmiR-3064-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAを発現する細胞にパーキンソン病誘発候補物質を処理し、該細胞から前記miRNAの発現量を確認する段階;及び
(ii)前記パーキンソン病誘発候補物質を処理した細胞において前記miRNAの発現量が上向き調節(up-regulation)される場合、前記パーキンソン病誘発候補物質をパーキンソン病誘発物質と判断する段階。
【請求項6】
下記の段階を含むパーキンソン病治療剤のスクリーニング方法:
(i)miR-494-3p、miR-6768-5p、miR-4324及びmiR-4726-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAを発現する細胞にパーキンソン病治療剤候補物質を処理し、該細胞から前記miRNAの発現量を確認する段階;及び
(ii)前記パーキンソン病治療剤候補物質を処理した細胞において前記miRNAの発現量が上向き調節(up-regulation)される場合、前記パーキンソン病治療剤候補物質をパーキンソン病治療剤と判断する段階。
【請求項7】
下記の段階を含むパーキンソン病治療剤のスクリーニング方法:
(i)miR-4767及びmiR-3064-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAを発現する細胞にパーキンソン病治療剤候補物質を処理し、該細胞から前記miRNAの発現量を確認する段階;及び
(ii)前記パーキンソン病治療剤候補物質を処理した細胞において前記miRNAの発現量が下向き調節(down-regulation)される場合、前記パーキンソン病治療剤候補物質をパーキンソン病治療剤と判断する段階。
【請求項8】
miR-494-3p、miR-6768-5p、miR-4324及びmiR-4726-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAを有効成分として含むパーキンソン病の予防又は治療用薬剤学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキンソン病で発現が減少又は増加するmiRNAを用いたパーキンソン病の診断方法及び前記miRNAを用いたパーキンソン病の予防又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は、中枢神経系退行性疾患の一つであり、中脳の黒質緻密部(Substantia nigra pars compacta)の変形を始めとして、脳の体積の減少、アルファ-シヌクレイン(α-synuclein,αSyn)の凝集などを病態生理的症状として有する疾患であり、歩行の不完全、手の震え、強張った動きなどを示す。
【0003】
韓国のパーキンソン病患者の現況は、2010年6万1,565名から年平均で8.7%ずつ増え、2014年には8万5,888名と増加した。2014年の患者を見ると、60歳以上の患者比率が95.7%で、有病率は患者の年齢と相関関係を示し、性比は、男性が3万3,831名、女性が5万2,057名だった(ここ5年間のパーキンソン病患者・診療費の増加傾向、青年医師、2015年)。
【0004】
主要7ケ国(米国、日本、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国)のパーキンソン病患者人口は、2008年に約454万名、2012年には505万名と年平均で2.72%増加し、アジアでは、2008年198万名から2012年219万名に増加し、ヨーロッパでは、2008年82万名から2012年91万名に増加した(Product and Pipeline Analysis of the Global Parkinson’s Disease Therapeutic Market,F&S,2014年)。
【0005】
世界のパーキンソン病治療剤製品動向について説明すると、2011年に47%と最大シェアを占めたドーパミンアゴニスト薬物が2021年には42%と減ることが予想され、新規パイプライン薬物が2021年に約20%のシェアを占めると見込まれている(R&D Trends:Parkinson’s Disease,Datamonitor,2012年)。
【0006】
パーキンソン病の診断と関連して行われる検査には、1)PET検査、2)MRI検査、3)内科的疾患に対する検査などがある。
【0007】
脳ドーパミン運搬体陽電子断層撮影(dopamine transporter PET,positron emission tomography)検査は、ドーパミン性細胞の損傷の有無が分かる検査であり、脳ドーパミン運搬体陽電子断層撮影をすると、パーキンソン病以外の原因によるパーキンソン症状を確認することができる。薬物誘発性パーキンソン症候群、血管性パーキンソン症候群、アルツハイマー病に同伴するパーキンソン症状、本態性振戦に伴うパーキンソン症状は、一見してはパーキンソン症状と同様の震え、運動緩徐を見せるが、ドーパミン性神経細胞は正常であることが確認できる。
【0008】
パーキンソン症状を示す場合に、パーキンソン病に類似する疾患と区別することが重要であり、二次性パーキンソン症候群及び非定型性パーキンソン症候群などと区別するためには、まず最初に脳磁気共鳴映像(MRI)検査が必要である。パーキンソン病の場合は、MRIが正常所見であるのに対し、他の疾患は特徴的なMRI所見を呈する。
【0009】
パーキンソン病診断方法のうち、内科的疾患に対する検査(血液検査、小便検査、心電図、胸部エックス線検査)方法は、内科的疾患が前身萎弱感を起こし、パーキンソン症状と誤認する場合があるが、これを判別するために別の内科的な疾患がないか確認するための検査である。
【0010】
しかしながら、これらのパーキンソン病診断方法は高価であり、診断手順が複雑であるという問題がある。パーキンソン病の治療及び診断に注力しているトップ企業の一つであるルンドベック(Lundbeck)社の場合、ホームページにパーキンソン病の早期診断のためのツールの開発の重要性について言及してはいるが、商用化した試薬又はキットは現在販売していない。また、パーキンソン病の患者は毎年大きく増加しており、これに比例して治療剤市場も大きく成長しているが、実際にパーキンソン病診断市場の発展は微々たる実情である。したがって、パーキンソン病をその類似疾患と区別して迅速で経済的に診断できる技術及びこれと同時に治療を並行できる技術の開発が至急望まれる。
【0011】
上の背景技術として説明された事項は本発明の背景に対する理解増進のためのものに過ぎず、この技術分野で通常の知識を有する者に既に知られた従来技術に該当すると認めるものとして理解してはならないだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、パーキンソン病をその類似疾患と区別して迅速で経済的に診断できる技術及びこれと同時に治療を並行できる技術を開発しようと鋭意努力した。その結果、パーキンソン病モデルで特定miRNAの発現量が特異的に増加又は減少していることを見出し、これを用いてパーキンソン病の効率的な診断及び治療ができることを確認することによって、本発明を完成するに至った。
【0013】
したがって、本発明の目的は、パーキンソン病の診断のための情報を提供する方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、パーキンソン病の診断又は予後分析用キットを提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、パーキンソン病誘発物質のスクリーニング方法を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、パーキンソン病治療剤のスクリーニング方法を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、パーキンソン病の予防、改善又は治療用組成物を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、パーキンソン病の治療方法を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面から、より明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様によれば、本発明は、下記の段階を含むパーキンソン病の診断のための情報を提供する方法を提供する:
(a)被検者から取得したサンプル中に含まれたmiR-494-3p、miR-501-5p、miR-1244、miR-6768-5p、miR-4324及びmiR-4726-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAの発現量を正常群サンプル中に含まれた前記miRNAの発現量と比較する段階;及び
(b)前記被検者のサンプル中に含まれた前記miRNAの発現量が正常群サンプル中に含まれたmiRNAの発現量よりも減少した場合、パーキンソン病と診断する段階。
【0021】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明は、下記の段階をさらに含む:
(a)被検者から取得したサンプル中に含まれたmiR-1226-5p、miR-4767及びmiR-3064-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAの発現量を正常群サンプル中に含まれた前記miRNAの発現量と比較する段階;及び
(b)前記被検者のサンプル中に含まれた前記miRNAの発現量が正常群サンプル中に含まれたmiRNAの発現量よりも増加した場合、パーキンソン病と診断する段階。
【0022】
本発明の他の態様によれば、本発明は、下記の段階を含むパーキンソン病の診断のための情報を提供する方法を提供する:
(a)被検者から取得したサンプル中に含まれたmiR-1226-5p、miR-4767及びmiR-3064-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAの発現量を正常群サンプル中に含まれた前記miRNAの発現量と比較する段階;及び
(b)前記被検者のサンプル中に含まれた前記miRNAの発現量が正常群サンプル中に含まれたmiRNAの発現量よりも増加した場合、パーキンソン病と診断する段階。
【0023】
本明細書において“miRNA”は、特に言及しない限り、ヘアピン状構造のRNA前駆体として転写され、RNase III切断活性を有するdsRNA切断酵素によって切断されてRISCと呼ばれるタンパク質複合体に導入され、mRNAの翻訳抑制に関与する15~25塩基の非コーディングRNAを意図して使用される。また、本明細書で使用するmiRNAは、特定塩基配列(又は配列番号)で表されるmiRNAだけでなく、前記miRNAの前駆体(pre-miRNA、pri-miRNA)、それらと生物学的機能が同等なmiRNA、例えば同族体(すなわち、ホモログ又はオーソログ)、遺伝子多型などの変異体、及び誘導体も含む。このような前駆体、同族体、変異体又は誘導体としては、具体的にはmiRBase release 20(http://www.mirbase.org/)によって同定でき、厳格な条件下で配列目録第1配列~第9配列のmiRNAの相補配列とハイブリダイジングする塩基配列を有するmiRNAを挙げることができる。また、本明細書で使用するmiRNAは、miR遺伝子の遺伝子産物であってもよく、それらの遺伝子産物は成熟miRNA(例えば、上記のようなmRNAの翻訳抑制に関与する15~25塩基又は19~25塩基の非コーディングRNA)又はmiRNA前駆体(例えば、上記のようなpre-miRNA又はpri-miRNA)を含む。
【0024】
本明細書において“核酸”とは、RNA、DNA、及びRNA/DNA(キメラ)のいずれも含む核酸を意味する。また、前記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれも含まれる。また、前記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、miRNA、siRNA、snoRNA、snRNA、非コーディング(non-coding)RNA及び合成RNAのいずれも含まれる。本明細書において“合成DNA”及び“合成RNA”とは、所定の塩基配列(天然型配列又は非天然形配列のいずれであってもよい。)に基づいて、例えば自動核酸合成機を用いて人工的に作製されたDNA及びRNAを指す。本明細書において“非天然形配列”は、広義の意味で使用することを意図しており、天然型配列と異なる、例えば1以上のヌクレオチドの置換、欠失、挿入及び/又は付加を含む配列(すなわち、変異配列)、1以上の修飾ヌクレオチドを含む配列(すなわち、修飾配列)などを含む。また、本明細書ではポリヌクレオチドが核酸と同じ意味で使われる。
【0025】
本明細書で使われる“被検者”とは、ヒト、チンパンジーを含む霊長類、イヌ、ネコなどの愛玩動物、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギなどの家畜動物、マウス、ラットなどの齧歯類などの哺乳動物を含む意味と解釈される。また、“正常群”も同様の意味と解釈され、検出しようとするパーキンソン病を有しない客体を意味する。
【0026】
本発明が含むサンプルは、被検者から自然的又は人工的に分離されて被検者のパーキンソン病関連遺伝情報を含むものであれば制限されず、好ましくは、体外に分離された糞便、細胞、血液、血漿、血清、毛髪又は尿などから分離可能であり、より好ましくは、体外に分離された血液、血漿、血清などを用いることができる。
【0027】
本発明のパーキンソン病診断のための情報を提供する方法は、公知の様々な試験方法を用いることができ、例えば、混成化法、免疫分析(immunoassay)方法又は遺伝子増幅方法を用いて行うことができ、これに限定されるものではない。
【0028】
前記混成化法は、プローブを用いてmiRNAの存在を確認する。
【0029】
本明細書で使われた用語“プローブ”とは、自然の又は変形されたモノマー又は連鎖(linkages)の線形オリゴマーを意味し、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを含み、ターゲットヌクレオチド配列に特異的に混成化でき、自然的に存在するか或いは人工的に合成されたものである。本発明のプローブは、ましくは単一鎖であり、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。
【0030】
本発明の方法が混成化方式のうちマイクロアレイ方式で行われる場合、上記のプローブは混成化アレイ要素(hybridizable array element)として用いられ、基質(substrate)上に固定化される。好ましい基質は、堅固性又は半-堅固性支持体として、例えば、膜、フィルター、チップ、スライド、ウエハー、ファイバー、磁気性ビーズ又は非磁気性ビーズ、ゲル、チュービング、プレート、高分子、微小粒子及び毛細管を含む。前記混成化アレイ要素は、前記の基質上に配列され固定化される。このような固定化は、化学的結合方法又はUVのような共有結合的方法によって行われる。例えば、前記混成化アレイ要素は、エポキシ化合物又はアルデヒド基を含むように変形されたグラス表面に結合し、また、ポリリシンコーティング表面においてUVによって結合し得る。また、前記混成化アレイ要素はリンカー(例:エチレングリコールオリゴマー及びジアミン)によって基質に結合し得る。
【0031】
一方、本発明のマイクロアレイに適用される試料DNAは標識(labeling)され得、マイクロアレイ上のアレイ要素と混成化される。混成化条件は様々に変更可能である。また、混成化程度の検出及び分析は標識物質によって様々に実施可能である。
【0032】
プローブの標識は、混成化の有無を検出可能にするシグナルを提供でき、これは、オリゴヌクレオチドに連結され得る。適合した標識は、蛍光団(例えば、フルオレセイン(fluorescein)、フィコエリトリン(phycoerythrin)、ローダミン、リサミン(lissamine)、そしてCy3とCy5(Pharmacia))、TdT(terminal deoxynucleotidyl transferase)、発色団、化学発光団、磁気粒子、放射性同位元素(P32又はS35)、マス標識、電子密集粒子、酵素(アルカリンフォスファターゼ又はホースラディッシュペルオキシダーゼ)、助因子、酵素に対する基質、重金属(例えば、金)そして抗体、ストレプトアビジン、バイオチン、ジゴキシゲニン、キレート基のような特定結合パートナーを有するヘプテンを含むが、これらに限定されるものではない。標識は、当業界で通常用いられる様々な方法、例えば、ニックトランスレーション方法(nick translation)、無作為プライミング方法(Multiprime DNA labelling systems booklet,“Amersham”(1989))及びキネーション方法(Maxam & Gilbert,Methods in Enzymology,65:499(1986))によって実施できる。標識は、蛍光、放射能、発色測定、重量測定、X線回折又は吸収、磁気、酵素的活性、マス分析、結合親和度、混成化高周波、ナノクリスタルによって検出できるシグナルを提供する。
【0033】
プローブを用いる場合、プローブをcDNA分子と混成化させる。本発明において、適合した混成化条件は、最適化手順によって一連の過程で決定され得る。このような手順は、研究室における使用のためのプロトコルを樹立するために当業者によって一連の過程で行われる。例えば、温度、成分の濃度、混成化及び洗浄時間、緩衝液成分及びそれらのpH及びイオン強度などの条件は、プローブの長さ及びGC量及びターゲットヌクレオチド配列などの様々な因子に依存する。混成化のための詳細な条件は、Joseph Sambrook,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001);及びM.L.M.Anderson,Nucleic Acid Hybridization,Springer-Verlag New York Inc.N.Y.(1999)から確認できる。
【0034】
混成化反応後に、混成化反応から発生する混成化シグナルを検出する。混成化シグナルは、例えば、プローブに結合した標識の種類によって様々な方法で行うことができる。例えば、プローブが酵素によって標識された場合、この酵素の基質を混成化反応結果と反応させて混成化の有無を確認することができる。利用可能な酵素/基質の組合せは、ペルオキシダーゼ(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)と、クロロナフトール、アミノエチルカルバゾール、ジミノベンジジン、D-ルシフェリン、ルシゲニン(ビス-N-メチルアクリジニウムニトレート)、レゾルフィンベンジルエーテル、ルミノール、アンプレックスレッド試薬(10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン)、HYR(p-phenylenediamine-HCl and pyrocatechol)、TMB(tetramethylbenzidine)、ABTS(2,2‘-Azine-di[3-ethylbenzthiazoline sulfonate])、o-フェニレンジアミン(OPD)及びナフトール/ピロニン;アルカリホスファターゼとブロモクロロインドールイルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、ナフトール-AS-B1-ホスフェート(naphthol-AS-B1-phosphate)及びECF基質;グルコースオキシダーゼと、t-NBT(nitroblue tetrazolium) 及びm-PMS(phenzaine methosulfate)などである。プローブが金粒子で標識された場合には、硝酸銀を用いてシルバー染色方法で検出することができる。
【0035】
生物学的試料において前記miRNAの配列に対する混成化シグナルが正常試料に比べて上向き調節(up-regulation)又は下向き調節(down-regulation)される場合にはパーキンソン病と診断される。
【0036】
本発明のパーキンソン病診断のための情報を提供する方法は、免疫分析方法によって行うことができる。前記免疫分析方法は、放射能免疫分析、放射能免疫沈殿、免疫沈殿、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)、キャプチャー-ELISA、抑制又は競合分析、サンドウィッチ分析、流細胞分析(flow cytometry)、免疫蛍光染色及び免疫親和性精製を含むが、これに限定されるものではない。前記免疫分析の方法は、Enzyme Immunoassay,E.T.Maggio,ed.,CRC Press,Boca Raton,Florida,1980;Gaastra,W.,Enzyme-linked immunosorbentassay(ELISA),inMethodsinMolecularBiology,Vol.1,Walker,J.M.ed.,Humana Press,NJ,1984;及びEd Harlow and David Lane,UsingAntibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999に記載されており、これらの文献は本明細書に参照として組み込まれる。
【0037】
本発明のパーキンソン病診断のための情報を提供する方法は、遺伝子増幅方法によって行うことができる。遺伝子増幅方法を用いたmiRNAの検出は、当業界に公知された様々な方法を用いて行うことができ、この場合、miRNAのプライマー又はプローブを用いることができる。
【0038】
プライマーを用いる場合には、遺伝子増幅反応を実施して前記miRNAの遺伝子の発現程度を調べる。本発明は前記遺伝子の発現程度を分析するものであるから、分析対象の試料(例えば、細胞)において前記マーカーのmRNA量を調べて前記マーカーの遺伝子の発現程度を決定する。したがって、本発明は原則的に生物学的試料内のmRNAを鋳型とし、mRNA又はcDNAに結合するプライマーを用いて遺伝子増幅反応を行う。
【0039】
まず、mRNAを得るために試料からtotal RNAを分離する。total RNAの分離は、当業界に公知の通常の方法によって行うことができる(参照:Sambrook,J.et al.,MolecularCloning.A Laboratory Manual,3rd ed.Cold Spring Harbor Press(2001);Tesniere,C.et al.,PlantMol.Biol.Rep.,9:242(1991);Ausubel,F.M.et al.,CurrentProtocolsinMolecularBiology,John Willey & Sons(1987);及びChomczynski,P.et al.,Anal.Biochem.162:156(1987)。例えば、Trizolを用いて容易に細胞内のtotal RNAを分離することができる。
【0040】
次に、分離されたmRNAからcDNAを合成し、このcDNAを増幅する。本発明のtotal RNAはヒトの試料から分離されるものであるから、mRNAの末端にはポリAテールを有しており、このような配列特性を用いたオリゴdTプライマー及び逆転写酵素を用いてcDNAを容易に合成することができる(参照:PNAS USA,85:8998(1988);Libert F,et al.,Science,244:569(1989);及びSambrook,J.et al.,Molecular Cloning.A LaboratoryManual,3rd ed.Cold Spring Harbor Press(2001))。次に、遺伝子増幅反応によって合成されたcDNAを増幅する。本発明に用いられるプライマーは鋳型の一箇所に混成化又はアニーリングされ、二重鎖構造を形成する。このような二重鎖構造を形成するのに適合した核酸混成化の条件は、Joseph Sambrook,等、MolecularCloning,A LaboratoryManual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001)及びHaymes,B.D.,等、Nucleic Acid Hybridization,A PracticalApproach,IRL Press,Washington,D.C.(1985)に開示されている。
【0041】
様々なDNA重合酵素を本発明の増幅に用いることができ、E.coli DNA重合酵素Iの“クレノウ”断片、熱安定性DNA重合酵素及びバクテリオファージT7 DNA重合酵素を含む。重合酵素は、様々なバクテリア種から得られる熱安定性DNA重合酵素であり、これは、Taq(Thermus aquaticus)、Tth(Thermusthermophilus)、サーマスフィリフォルミス(Thermusfiliformis)、サーマスフラバス(Thermisflavus)、サーモコッカスリトラリス (Thermococcus literalis)、及びPfu(Pyrococcusfuriosus)を含む。重合反応を行う時、反応容器に反応に必要な成分を過量で提供することが好ましい。増幅反応に必要な成分の過量は、増幅反応が成分の濃度に実質的に制限されない程度の量を意味する。Mg2+のような助因子、dATP、dCTP、dGTP及びdTTPを所望の増幅程度が達成され得るような程度に反応混合物に提供することが望まれる。増幅反応に用いられる酵素はいずれも、同じ反応条件で活性状態であり得る。事実上、緩衝液は全ての酵素が最適の反応条件に近接するようにする。したがって、本発明の増幅過程は、反応物の添加のような条件の変化無しに単一反応物で行うことができる。
【0042】
本発明においてアニーリング又は混成化は、ターゲットヌクレオチド配列とプライマーとの特異的結合を可能にする厳格条件下で行われる。アニーリングのための厳格条件は配列-依存的であり、周囲環境的変数によって様々である。
【0043】
本明細書の用語“増幅反応”は、核酸分子を増幅する反応を意味する。様々な増幅反応が当業界に報告されており、これは、重合酵素連鎖反応(以下、PCRという。)(米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、及び第4,800,159号)、逆転写-重合酵素連鎖反応(以下、RT-PCRと表記する。)(Sambrook等、Molecular Cloning.A LaboratoryManual,3rd ed.Cold Spring Harbor Press(2001)),Miller,H.I.(WO89/06700)及びDavey,C.等(EP329,822)の方法、リガーゼ連鎖反応(ligase chain reaction;LCR)(17,18)、Gap-LCR(WO90/01069)、復旧連鎖反応(repair chain reaction;EP439,182)、転写-介在増幅(transcription-mediated amplification;TMA)(19)(WO88/10315)、自己維持塩基配列複製(self sustained sequence replication)(20)(WO90/06995)、ターゲットポリヌクレオチド塩基配列の選択的増幅(selective amplification of target polynucleotide sequences)(米国特許第6,410,276号)、コンセンサス配列プライミング重合酵素連鎖反応(consensus sequence primed polymerase chain reaction;CP-PCR)(米国特許第4,437,975号)及びループ-介在等温増幅(loop-mediated isothermal amplification;LAMP)を含むが、これに限定されない。利用可能な他の増幅方法は、米国特許第5,242,794号、第5,494,810号、第4,988,617号及び米国特許第09/854,317号に記述されている。本発明の遺伝子増幅方法は、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号及び第4,800,159号に開示されたPCR(polymerase chain reaction)によって行われる。
【0044】
PCRは、最も周知された核酸増幅方法であり、その多くの変形と応用が開発されている。例えば、PCRの特異性又は敏感性を増進させるために伝統的なPCR手順を変形させ、タッチダウン(touchdown)PCR、ホットスタート(hot start)PCR、入れ子(nested)PCR及びブースター(booster)PCRが開発された。また、実時間(real-time)PCR、分別ディスプレイPCR(differential display PCR:DD-PCR)、cDNA末端の迅速増幅(rapid amplification of cDNA ends:RACE)、マルチプレクスPCR、逆重合酵素連鎖反応(inverse polymerase chain reaction:IPCR)、ベクトレット(vectorette)PCR、TAIL-PCR(thermal asymmetric interlaced PCR)及びマルチプレクスPCRが特定の応用のために開発された。PCRに対する詳細な内容はMcPherson,M.J.、及びMoller,S.G.PCR.BIOS Scientific Publishers,Springer-Verlag New York Berlin Heidelberg,N.Y.(2000)に記載されており、その教示事項は本明細書に参照として組み込まれる。
【0045】
本発明で遺伝子増幅方法に用いられるプライマーは、前記miRNAのcDNA配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドである。本明細書で用語“プライマー”とは、適度の温度で適合な緩衝液内で適合な条件(すなわち、4種の異なるヌクレオチドトリホスフェート及び重合反応酵素)下で鋳型-指示DNA合成の開始点として作用し得る単一鎖オリゴヌクレオチドを意味する。プライマーの適度の長さは、様々な因子、例えば、温度とプライマーの用途によって変異があるが、典型的に15-30ヌクレオチドである。短いプライマー分子は鋳型と十分に安定したハイブリッド複合体を形成するために、通常、より低い温度を要求する。
【0046】
プライマーの配列は、鋳型の一部配列と完全に相補的な配列を有する必要はなく、鋳型と混成化されてプライマー固有の作用が可能な範囲内における十分の相補性を有すれば足りる。したがって、本発明におけるプライマーセットは、鋳型である前記マーカーのcDNA配列に完壁に相補的な配列を有する必要はなく、この配列に混成化されてプライマー作用ができる範囲内で十分の相補性を有すれば足りる。好ましくは、本発明で用いられるプライマーは、前記マーカーのcDNA配列に完壁に相補的な配列を有するものである。
【0047】
このようなプライマーのデザインは、前記miRNAのcDNA配列を参照して当業者にとって容易に実施可能であり、例えば、プライマーデザイン用プログラム(例:PRIMER3プログラム)を用いて実施することができる。
【0048】
このように増幅された前記マーカーのcDNAを適合な方法で分析して前記マーカーの遺伝子の発現程度を調べる。例えば、上述した増幅反応結果をゲル電気泳動をし、その結果として形成されるバンドを観察及び分析することによって、前記マーカーの遺伝子の発現程度を調べる。
【0049】
このような増幅反応の結果、生物学的試料において前記遺伝子の発現が正常試料よりも高い又は低い場合はパーキンソン病と診断される。
【0050】
本発明においてmiRNAは、パーキンソン病で発現が減少又は増加する生体分子である。本明細書で使われる用語“高発現(又は過発現)”或いは“上向き調節(up-regulation)”は、調査対象の生物学的試料において対象ヌクレオチド配列又はタンパク質の発現程度が正常試料に比べて高い場合を意味する。例えば、当業界で通常用いられる発現分析方法、例えば、RT-PCR方法又はELISA方法(参照:Sambrook,J.et al.,Molecular Cloning.A Laboratory Manual,3rd ed.Cold Spring Harbor Press(2001))によって発現分析をした場合、発現が高いものと分析される場合を意味する。例えば、上述した診断方法によって分析した結果、本発明のmiRNAが正常試料に比べて10%以上高発現又は低発現される場合、本発明における“高発現”又は“低発現”と判断し、パーキンソン病と判定する。
【0051】
本発明の一実施例によれば、本発明の診断方法が含む前記miRNAは、正常人と比較してパーキンソン病患者において上向き調節(up-regulation)又は下向き調節(down-regulation)されており、10%以上、好ましくは50%以上と上向き又は下向き調節されていることを確認した。
【0052】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、miR-494-3p、miR-501-5p、miR-1244、miR-6768-5p、miR-4324、miR-4726-5p、miR-1226-5p、miR-4767及びmiR-3064-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAと特異的に結合可能な核酸を含むパーキンソン病の診断又は予後分析用キットを提供する。
【0053】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明のキットは、hsa-miR-494-3p、hsa-miR-1244、hsa-miR-6768-5p、hsa-miR-4324、hsa-miR-4726-5p、hsa-miR-501-5p、hsa-miR-1226-5p、hsa-miR-4767及びhsa-miR-3064-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAと特異的に結合可能な核酸をさらに含む。
【0054】
本発明のキットは前記核酸に加えて、パーキンソン病の検出を可能にする既知の核酸又は将来発見され得る核酸を含むことができ、公知のパーキンソン病検査用マーカーを測定するための抗体も含むことができる。
【0055】
本発明のキットに含まれる前記核酸は、個別に又は任意に組み合わせて他の容器に包装することができる。
【0056】
本発明のキットには体液、細胞又は組織から核酸(例えば、total RNA)を抽出するためのキット、標識用蛍光物質、核酸増幅用酵素及び培地、使用説明書などを含めることができる。
【0057】
本発明のキットは、前記核酸が、例えば固相に結合又は付着したパーキンソン病マーカー測定のためのデバイスである。固相の材質の例は、プラスチック、紙、ガラス、シリコンなどであり、加工の容易性からは、固相の材質はプラスチックが好ましい。固相の形状は任意であり、例えば、四角形、円形、長方形、フィルム形などである。
【0058】
本発明のキットは、前記miRNAの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個のそれぞれと特異的に結合可能な核酸を含むことができる。
【0059】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、下記の段階を含むパーキンソン病誘発物質のスクリーニング方法を提供する:
(i)miR-494-3p、miR-501-5p、miR-1244、miR-6768-5p、miR-4324及びmiR-4726-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAを発現する細胞にパーキンソン病誘発候補物質を処理し、該細胞から前記miRNAの発現量を確認する段階;及び
(ii)前記パーキンソン病誘発候補物質を処理した細胞において前記miRNAの発現量が下向き調節(down-regulation)される場合、パーキンソン病誘発物質と判断する段階。
【0060】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明のスクリーニング方法は、下記の段階をさらに含む:
(i)miR-1226-5p、miR-4767及びmiR-3064-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAを発現する細胞にパーキンソン病誘発候補物質を処理し、該細胞から前記miRNAの発現量を確認する段階;及び
(ii)前記パーキンソン病誘発候補物質を処理した細胞において前記miRNAの発現量が上向き調節(up-regulation)される場合、パーキンソン病誘発物質と判断する段階。
【0061】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、下記の段階を含むパーキンソン病誘発物質のスクリーニング方法を提供する:
(i)miR-1226-5p、miR-4767及びmiR-3064-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAを発現する細胞にパーキンソン病誘発候補物質を処理し、該細胞から前記miRNAの発現量を確認する段階;及び
(ii)前記パーキンソン病誘発候補物質を処理した細胞において前記miRNAの発現量が上向き調節(up-regulation)される場合、パーキンソン病誘発物質と判断する段階。
【0062】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、下記の段階を含むパーキンソン病治療剤のスクリーニング方法を提供する:
(i)miR-494-3p、miR-501-5p、miR-1244、miR-6768-5p、miR-4324及びmiR-4726-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAを発現する細胞にパーキンソン病治療剤候補物質を処理し、該細胞から前記miRNAの発現量を確認する段階;及び
(ii)前記パーキンソン病治療剤候補物質を処理した細胞において前記miRNAの発現量が上向き調節(up-regulation)される場合、パーキンソン病治療剤と判断する段階。
【0063】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明のスクリーニング方法は、下記の段階をさらに含む:
(i)miR-1226-5p、miR-4767及びmiR-3064-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAを発現する細胞にパーキンソン病治療剤候補物質を処理し、該細胞から前記miRNAの発現量を確認する段階;及び
(ii)前記パーキンソン病治療剤候補物質を処理した細胞において前記miRNAの発現量が下向き調節(down-regulation)される場合、パーキンソン病治療剤と判断する段階。
【0064】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は下記の段階を含むパーキンソン病治療剤のスクリーニング方法を提供する:
(i)miR-1226-5p、miR-4767及びmiR-3064-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAを発現する細胞にパーキンソン病治療剤候補物質を処理し、該細胞から前記miRNAの発現量を確認する段階;及び
(ii)前記パーキンソン病治療剤候補物質を処理した細胞において前記miRNAの発現量が下向き調節(down-regulation)される場合、パーキンソン病治療剤と判断する段階。
【0065】
本発明のスクリーニング方法を言及する上で使用した用語、“候補物質”は、パーキンソン病症状を誘発、減少、防止又は除去させる活性があるか否かを検査するためにスクリーニングで用いられる未知の物質(例えば、各種天然物、化合物ライブラリー、遺伝子又はタンパク質ライブラリーなど)である。
【0066】
本明細書で使われた用語、“パーキンソン病治療剤”は、パーキンソン病に対する薬理活性を示すものと知られた、或いは示すものと確認された薬物(薬剤学的組成物)、健康機能食品又は食餌療法を意味する。一例として、本発明では、パーキンソン病に対する薬理活性を有するものと当業界に知られた薬物と機能性食品を用いて、これに対するパーキンソン病と診断された対象体の敏感性を診断するか、或いは予後を予測することができる。他の例として、本発明は、パーキンソン病に対する薬理活性が知られていない候補物質のの中からパーキンソン病に対する薬理活性を有する物質をスクリーニングするために適用することができる。
【0067】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、miR-494-3p、miR-501-5p、miR-1244、miR-6768-5p、miR-4324及びmiR-4726-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAを有効成分として含むパーキンソン病の予防、改善又は治療用組成物を提供する。
【0068】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、miR-494-3p、miR-501-5p、miR-1244、miR-6768-5p、miR-4324及びmiR-4726-5pから構成された群から選ばれる1つ又はそれ以上のmiRNAを患者に有効量投与する段階を含むパーキンソン病の治療方法を提供する。
【0069】
本発明の一具現例によれば、本発明の組成物は薬剤学的組成物である。
【0070】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は製剤時に通常使用されるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるのではない。本発明の薬剤学的組成物は、これらの成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適合な薬剤学的に許容される担体及び製剤はRemington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0071】
本発明の薬剤学的組成物は経口又は非経口で投与でき、非経口投与の場合には、鼻腔投与、点眼投与、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮投与などで投与できる。
【0072】
本発明の薬剤学的組成物の適度の投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々であり、通常熟練した医師は所望の治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方できる。本発明の好ましい具現例によれば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は、0.001~100mg/kgである。
【0073】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって、単位容量の形態で製造されるか、又は多用量容器内に内入して製造され得る。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0074】
本発明の薬剤学的組成物は、皮膚外用剤、エアゾール、スプレー、点眼剤、経口剤及び注射剤形態の剤形で製造され得る。
【0075】
本発明の一具現例によれば、本発明の組成物は食品組成物である。
【0076】
本発明の組成物が食品組成物として製造される場合、食品製造時に通常添加される成分を含み、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、営養素、調味剤及び香味剤を含む。上述した炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えばマルトース、スクロース、オリゴ糖など;及びポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。香味剤として天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物[例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチンなど])及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を使用することができる。
【0077】
例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤として製造される場合には、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、杜仲抽出液、ナツメ抽出液、甘草抽出液などをさらに含めることができる。
【発明の効果】
【0078】
本発明の特徴及び利点を要約すると、次の通りである:
(i)本発明は、パーキンソン病の診断のための情報を提供する方法を提供する。
【0079】
(ii)また、本発明は、パーキンソン病の予防、改善又は治療用組成物を提供する。
【0080】
(iii)本発明のmiRNAは、パーキンソン病モデルにおいて特異的に発現が減少又は増加し、パーキンソン病の診断及び治療に効果的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】パーキンソン病モデル細胞の死滅段階で発現量が減少したmiRNAを示すものである。
【
図2】パーキンソン病モデル細胞の死滅段階で発現量が増加したmiRNAを示すものである。
【
図3】6-OHDAを注入した内部対照群(internal control)の写真である。脳組織に何も処理しなかった左半球の黒質(Substantia nigra)(A)は完全に保存されているのに対し、右半球の6-ヒドロキシドーパミン注入(6-hydroxy dopamine injected)は、黒質(B)の神経細胞死滅は勿論、組織の変形によってその大きさが過度に収縮されている。
【
図4】6-OHDAと共に注入された494-3pの影響で黒質の神経細胞が生きていることを確認した結果である。同一個体内のA(正常)とB(injected)における病変をH&E染色で確認した。
【
図5】6-OHDAと共に注入されたmiR1244の影響で黒質の神経細胞が生きていることを確認した結果である。同一個体内のA(正常)とB(injected)における病変をH&E染色で確認した。
【
図6】6-OHDAと共に注入されたmiR4324の影響で黒質の神経細胞が生きていることを確認した結果である。同一個体内のA(正常)とB(injected)における病変をH&E染色で確認した。
【
図7】6-OHDAと共に注入されたmiR4726-5pの影響で黒質の神経細胞が生きていることを確認した結果である。同一個体内のA(正常)とB(injected)における病変をH&E染色で確認した。
【
図8】6-OHDAと共に注入されたmiR6768-5pの影響で黒質の神経細胞が生きていることを確認した結果である。同一個体内のA(正常)とB(injected)における病変をH&E染色で確認した。
【
図9】6-OHDAと共に注入されたmiR501-5pの影響で黒質の神経細胞が生きていることを確認した結果である。同一個体内のA(正常)とB(injected)における病変をH&E染色で確認した。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかである。
【実施例】
【0083】
材料及び方法
1.SH-SY5Y細胞培養
C57BL/6SH-SY5Y神経芽細胞(neuroblast cell)は、熱非働化ウシ胎児血清(heat-inactivated fetal bovine serum)(GIBCO,MD,USA)が最終濃度10%となるように添加されたDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium,Invitrogen,MD,USA)培地を用いて、37℃湿潤5% CO2チャンバー内で培養した(Jang,S.-W.,Oh,M.-S.,Yang,S.I.& Cho,E.-M.Gene expression profiles of human neuroblastoma cells exposed to CuO nanoparticles and Cu ions.BioChip Journal 10,140-149(2016))。そして、6-ヒドロキシドーパミン(6-hydroxy dopamine,Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)は、PBS(phosphate buffered saline)に溶かして-80℃に保管しながら、使用の度に、分注された培地の試薬を使用し、特に光に注意(light sensitive)した。
【0084】
2.細胞生存能試験
細胞の生存に関する観察のためには安定したテトラゾリウム塩(stable tetrazolium salt)WST-1アッセイ(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)を使用したが、SH-SY5Y細胞を96-ウェルプレートの各ウェルに5000cellsにして6-ヒドロキシドーパミン(6OHDA、25μM、24h)を処置した。単にPBSを処置した対照群と比較し、実験終了2時間前にWST-1溶液を10μl/ウェル添加して37℃チャンバー内培養した。実験終了後、450nmで変化した色を測定して確認した。
【0085】
3.RNA分離
6OHDA(25μM、24h)が処理されたSH-SY5Y細胞株のtotal RNAは、Trizol reagentを使用して分離した。その方法は、メーカーの勧告方法にそのまま従った(Invitrogen,California,USA)。分離されたRNAの総量と純度はNanoDrop ND-2000spectrophotometer(Nano Drop,Delaware,USA)を用いて260/280nm(比率1.8~2.0)比率を基準に測定した(Kim,G.W.e.a.Integrative analyses of differential gene expression and DNA methylation of ethylbenzene-exposed workers.BioChip Journal 9,259-267(2015))。
【0086】
4.miRNA発現プロファイリング
miRNA発現プロファイリング分析のためにAffymetrix miRNA4.0アレイ(Lee,S.E.e.a.Identification and characterization of MicroRNAs in acrolein-stimulated endothelial cells:Implications for vascular disease..BioChip Journal 9,144-155(2015))を使用し、マイクロアレイデータ(microarray data)はGEO(Gene Expression Omnibus)データベースを用いて分析した。
【0087】
5.ターゲット予測及び遺伝子オントロジー分析
miRNA発現の様相に基づくmiRNAターゲット遺伝子の予測のために、TargetScan6.2 DBを活用し、miRanda algorithm(Kim,G.W.et al.Integrative analyses of differential gene expression and DNA methylation of ethylbenzene-exposed workers.BioChip Journal 9,259-267(2015))に従った。また、最も頻繁に多量で発現変化を示すmiRNAターゲットは、GOカテゴリー(Gene Ontology categories)(http://www.geneontology.org/)(Cho,H.et al.A relationship between miRNA and gene expression in the mouse Sertoli cell line after exposure to bisphenol A.BioChip Journal 4,75-81(2010);Jeong,S.I.et al.MicroRNA microarray analysis of human umbilical vein endothelial cells exposed to benzo(a)pyrene.BioChip Journal 6,191-196(2012);Park,H.R.,Lee,S.E.,Yang,H.,Son,G.W.& Park,Y.S.Functional screening of altered microRNA expression in 3-methylcholanthrene-treated human umbilical vein endothelial cells.BioChip Journal 8,260-268(2014);Park,J.H.et al.Expression profiles of miRNAs during ethanol-induced differentiation of neural stem cells.BioChip Journal 6,73-83(2012))を用いて再確認した。log2倍率変化(log2 fold change)に基づいて、発現の増減が目立つ順序でmiRを選別した。
【0088】
6.パーキンソン病の動物モデル製造
6-OHDA(Sigma,St.Louis,USA)による毒性がドーパミン性神経細胞にのみ影響を与え得るようにノルアドレナリン運搬体ブロッカー(noradrenalin transporter blocker)であるデシプラミン(desipramine)(12.5mg/kg;Sigma,St.Louis,USA)を、6-OHDAを注入する30分前に実験動物に腹腔で注入した。ケタミン(Ketamine)(40mg/kg)とキシラジン(xylazine)(5mg/kg)混合液を腹腔注射して実験動物が深い麻酔状態に入ると呼吸麻酔し、脳定位装置(David KOPF instrument.,CA,USA)に固定し、頭の皮膚を切開して頭骨を露出させた後、頭頂点を確認し、それを基点にして裏側に1.1mm、右に1.2mm移動した地点に、歯科用ドリルを用いて小さな穴をあけた。穴から腹部側に5.0mm地点まで26ゲージ針を挿入して右側の内側前脳束(medial forebrain bundle;MFB)に位置させた。5μLのハミルトンシリンジ(Hamilton syringe)を用いて0.1%アスコルビン酸(ascorbic acid)を溶かした6-OHDA 2μL(2.5μg/μL)を注入ポンプ(Infusion pump)(Harvard Apparatus.,USA)を用いて0.5μL/minの速度で注入した。別の5μLのハミルトンシリンジを用いて5uL実験物質miRNAを0.5μL/minの速度で注入し、注入完了して5分をさらに待ってからハミルトンシリンジを除去し、皮膚を縫合した。左側は内部対照群(internal control)として使用するために何にも注入しなかった。実験動物をケタミン(70mg/kg)とキシラジン(8mg/kg)との混合液で麻酔した後、心臓を通じて4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)(0.1Mリン酸緩衝液内、pH7.4)で貫流固定して脳組織を摘出した。
【0089】
結果
1.PDモデルの細胞の死滅段階で減少したmiR
前記発現の増減が目立つmiRNAのうち、PDモデルの細胞の死滅段階で発現の減少が最も目立つmiRは、
図1の通りである。このうち、miR494-3pはまだパーキンソン病関連報告がない状態であり、顕著な減少が毎実験ごとに反復して現れた。その他にも、対数比(log ratio)を基準に-2.0(30%)以上の減少を示したmiRを
図1に列挙した。また、その中、miR-1244は、バイオインフォマティクスデータ解析(bioinformatic data analysis)の結果、‘TBC1ドメインファミリーメンバー2B(TBC1 domain family member 2B)’というタンパク質をターゲティングするものと分析された。ここで重要な点は、パーキンソン病における神経細胞死滅で特異的に現れる遺伝子と知られたいずれか一つをターゲティングする根本的な調節子としてのmiRNAを見出したことである(A Network View on Parkinson’s Disease,Comput Struct Biotechnol J.2013;7:e201304004)。
【0090】
2.PDモデルの細胞の死滅段階で増加したmiR
前記発現の増減が目立つmiRNAのうち、PDモデルの細胞の死滅段階で発現の増加が最も目立つmiRは、
図2の通りである。
【0091】
3.miR SEQ
前記発現の増減が目立つmiRNAの配列情報は、次の通りである:
PDモデルの細胞の死滅段階で発現の減少が最も目立つmiRNAは、hsa-miR-494-3p(配列目録第1配列:UGAAACAUACACGGGAAACCUC)、hsa-miR-1244(配列目録第2配列:AAGUAGUUGGUUUGUAUGAGAUGGUU)、hsa-miR-6768-5p(配列目録第3配列:CACACAGGAAAAGCGGGGCCCUG)、hsa-miR-4324(配列目録第4配列:CCCUGAGACCCUAACCUUAA)、hsa-miR-4726-5p(配列目録第5配列:AGGGCCAGAGGAGCCUGGAGUGG)及びhsa-miR-501-5p(配列目録第6配列:AAUCCUUUGUCCCUGGGUGAGA)である。
【0092】
PDモデルの細胞の死滅段階で発現の増加が最も目立つmiRNAは、hsa-miR-1226-5p(配列目録第7配列:GUGAGGGCAUGCAGGCCUGGAUGGGG)、hsa-miR-4767(配列目録第8配列:CGCGGGCGCUCCUGGCCGCCGCC)及びhsa-miR-3064-5p(配列目録第9配列:UCUGGCUGUUGUGGUGUGCAA)である。
【0093】
4.H&E染色
脳の効能評価は、パーキンソン病の主要病変となる黒質緻密部の細胞生存率をH&E染色で確認比較した。
【0094】
1)組織の固定:細胞の酵素を不活性化し、組織内成分を凝固(coagulation)又は沈殿(precipitation)させて不溶性状態(insoluble state)に切り替えて構造をよく保存させるために固定液に浸して4℃で一日以上固定する。
【0095】
2)脱水及びクリーニング:水分の除去及び水分の除去に用いた溶媒の除去過程。細部組織までのパラフィン侵入を容易にするためである。
【0096】
3)パラフィンブロックの製造:パラフィンを用いて組織の内外部を整形することにより、組織や細胞の構造が変形されない。
【0097】
4)スライド作製:薄切というパラフィンブロックをミクロトーム刀(Microtome knife)で10μm厚の連続冠状切片をシロキサンコーティングスライド(Siloxane coating slide)に作製する。
【0098】
5)染色:組織の保存のために処理したパラフィンを除去し、ハリスヘマトキシリン(Harris hematoxylin)を用いて細胞の核を染色し、エオシンYを用いて対比染色した。
【0099】
6)結果は、細胞で区分される藍色部位と対比染色したピンク色で分けられる。
【0100】
5.miRNAの神経細胞死滅抑制効果
図3~
図9から確認できるように、6-OHDAのみ注入された内部対照群(internal control)(
図3)において神経細胞死滅だけでなく、組織の変形によってその大きさが過度に収縮しているのに対し、miR494-3p(
図4)、miR1244(
図5)、miR4324(
図6)、miR4726-5p(
図7)、miR6768-5p(
図8)又はmiR501-5p(
図9)を投与した実験群では神経細胞が生きていることが確認された。このことから、本発明のmiRNAが神経細胞死滅作用を防御するのに優れた効果を有すると証明された。
【0101】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は単に好ましい具現例であるだけで、これらに本発明の範囲が制限されるない点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物によって定義されるへきであろう。
【配列表】