(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】微小液滴生成装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20220228BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20220228BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20220228BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20220228BHJP
【FI】
G01N1/00 101G
G01N1/00 101Z
G01N35/00 Z
G01N37/00 101
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2020543685
(86)(22)【出願日】2018-11-03
(86)【国際出願番号】 CN2018113851
(87)【国際公開番号】W WO2019086018
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-04-22
(31)【優先権主張番号】201711074976.3
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201711074977.8
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201711074985.2
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520143155
【氏名又は名称】北京新▲い▼生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】TARGETINGONE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】Room 310,Building 44,No. 13,Beiertiao,Zhongguancun Haidian District Beijing 100190 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】荊 高山
(72)【発明者】
【氏名】郭 永
(72)【発明者】
【氏名】王 博
(72)【発明者】
【氏名】蘇 世聖
(72)【発明者】
【氏名】白 宇
(72)【発明者】
【氏名】朱 修鋭
(72)【発明者】
【氏名】付 明珠
(72)【発明者】
【氏名】祝 令香
(72)【発明者】
【氏名】劉 宝霞
(72)【発明者】
【氏名】楊 文軍
(72)【発明者】
【氏名】王 勇斗
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/165559(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0174926(US,A1)
【文献】特表2013-524171(JP,A)
【文献】特表2010-506136(JP,A)
【文献】国際公開第2017/083375(WO,A1)
【文献】特開2006-317299(JP,A)
【文献】特表2016-515214(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0209785(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103285947(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104084247(CN,A)
【文献】中国実用新案第207981204(CN,U)
【文献】中国実用新案第207614860(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00 - 3/10 、
G01N 1/00 - 1/44 、35/00 -37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小液滴生成装置であって、第1部品と第2部品を含み、第1部品と第2部品とは固定接続され、前記第1部品は、微小液滴生成チップであり、微小液滴の生成のために使用され、前記第2部品は、微小液滴試料のローディングと生成された微小液滴の収集の装置であり、油相試料と水相試料のローディング及び生成された微小液滴の収集のために使用され、
前記第1部品には、油相試料入口、油相試料管路、水相試料入口、水相試料管路、及び微小液滴出口が設けられ、油相試料と水相試料が前記油相試料管路及び前記水相試料管路を介して合流して微小液滴が生成され、
前記第2部品には、油相試料ローディングスロット、油相ローディング貫通孔、水相試料ローディングスロット、水相ローディング貫通孔及び試料収集装置が設けられ、前記油相ローディング貫通孔及び前記水相ローディング貫通孔は、それぞれ前記油相試料ローディングスロット及び前記水相試料ローディングスロットの底部に設けられ、前記油相試料及び前記水相試料は、前記油相ローディング貫通孔及び前記水相ローディング貫通孔をそれぞれ通して、前記第1部品の前記油相試料入口及び前記水相試料入口に入り、前記第1部品で生成された微小液滴が、前記第1部品の前記微小液滴出口を介して前記試料収集装置に収集され、
前記微小液滴生成装置は第3部品を更に含み、前記第3部品は、前記第2部品の油相試料ローディングスロット及び水相試料ローディングスロットを密封し、
外部圧力を加えるための通気孔が設けられ、外部圧力源によって前記油相試料及び前記水相試料に対して外部圧力が加えられる
ことで注入量を制御する、ことを特徴とする微小液滴生成装置。
【請求項2】
前記第1部品と前記第2部品は、それぞれ一体射出成形によって形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の微小液滴生成装置。
【請求項3】
前記第1部品には、少なくとも1個の微小液滴生成ユニットが設けられ、好ましくは4個、8個、及び12個の微小液滴生成ユニットが設けられ、前記第2部品には、少なくとも1個の微小液滴ローディング及び収集ユニットが設けられ、好ましくは4個、8個、及び12個の微小液滴生成ユニットが設けられ、各微小液滴生成ユニットは、それに対応する微小液滴ローディング及び収集ユニットと協働して、微小液滴のローディング、生成及び収集を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の微小液滴生成装置。
【請求項4】
前記微小液滴生成チップは中心孔を含み、前記中心孔は、前記微小液滴生成チップの製造中の射出成形材料の注入、及びバッチ生産中の微小液滴生成チップの移送のために使用され、前記中心孔の両側に、中心孔を中心として1個以上の微小液滴生成ユニットが設けられ、各微小液滴生成ユニットは独立して微小液滴を生成し、好ましくは、前記中心孔の両側に、4個の微小液滴生成ユニットが等間隔で設けられる、ことを特徴とする請求項3に記載の微小液滴生成装置。
【請求項5】
前記微小液滴生成チップは中心孔を含み、前記微小液滴生成ユニットは、油相試料入口、油相試料管路、水相試料入口、水相試料管路、及び微小液滴出口を含み、前記油相試料管路及び/又は前記水相試料管路は、前記中心孔から離れる弧状の管路構造である、ことを特徴とする請求項3に記載の微小液滴生成装置。
【請求項6】
前記微小液滴生成ユニットは、2つの油相試料管路と1つの水相試料管路、又は1つの油相試料管路と2つの水相試料管路を含み、前記油相試料管路と前記水相試料管路は、微小液滴を形成するためのクロス構造を形成する、ことを特徴とする請求項5に記載の微小液滴生成装置。
【請求項7】
前記油相試料入口の後の管路には、ジグザグ状流動抵抗エリアが設けられ、油相試料は、前記ジグザグ状流動抵抗エリアを通過した後、2つの経路に分かれ、それぞれ油相試料管路に入り、「油中水」微小液滴を生成する、ことを特徴とする請求項5に記載の微小液滴生成装置。
【請求項8】
前記油相試料管路には油相試料濾過エリアが設けられ、及び/又は前記水相試料管路には水相試料濾過エリアが設けられ、好ましくは、前記油相試料濾過エリア及び/又は前記水相試料濾過エリアは、それぞれ一組の柱状アレイ構造である、ことを特徴とする請求項5に記載の微小液滴生成装置。
【請求項9】
前記試料収集装置は、その両端にそれぞれ設けられた生成された微小液滴受入口及び微小液滴収集口と、プレストアキャビティとを含み、前記第1部品によって生成された微小液滴は、前記微小液滴受入口を通して第2部品に入り、次に、前記プレストアキャビティを通過し、最後に、前記微小液滴収集口によって収集される、ことを特徴とする請求項1に記載の微小液滴生成装置。
【請求項10】
前記微小液滴収集口は、傾斜した側壁構造の出口として設けられ、その端部に接続棒が設けられ、微小液滴は、前記接続棒を介して微小液滴収集容器に滴下する、ことを特徴とする請求項9に記載の微小液滴生成装置。
【請求項11】
前記微小液滴収集容器は遠心管であり、前記接続棒は弧状の側壁を有し、前記接続棒は、前記遠心管の内部に深く入り、微小液滴の収集を容易にする、ことを特徴とする請求項10に記載の微小液滴生成装置。
【請求項12】
前記第1部品には微小液滴生成の観察エリアが設けられ、前記第2部品には観察窓が設けられ、光学装置と協働して、生成された微小液滴をリアルタイムで監視するために使用される、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の微小液滴生成装置。
【請求項13】
前記第1部品と前記第2部品にはそれぞれ、両者の固定接続を容易にする位置決めのための位置決め孔がさらに設けられる、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の微小液滴生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小液滴デジタルPCR技術の分野に関し、具体的には、微小液滴生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微小液滴デジタルPCR技術(droplet digital PCR、ddPCR)は、単一分子PCRに基づく核酸の絶対的な定量的分析技術である。微小液滴デジタルPCR技術は、高感度と高精度という利点を備えたため、業界で次の革新的な技術になりつつある。近年、マイクロナノ製造技術及びマイクロ流体技術(micro-nanofabrication and microfluidics)の発展に伴い、微小液滴デジタルPCR技術は、技術的なボトルネックを打破するための最良の機会に直面している。この技術は、マイクロ流体チップを使用して、直径数ミクロンから数百ミクロンの液滴を生成する。微小液滴は単一分子又は単一細胞を包むため、反応と検出は完全に密閉し、完全に統合される。微小液滴デジタルPCR装置の動作原理は次のとおりである。まず、被測定試料は、特別な微小液滴生成器によって、大量のナノリットルスケール(直径は数ミクロンから数百ミクロンである)の「油中水」微小液滴に均一に分散され、微小液滴の数は百万レベルである。微小液滴の数が十分であり、微小液滴が油層によって互いに隔離されるため、各微小液滴は「マイクロリアクター」に相当する。微小液滴には、被測定試料のDNA単一分子だけが含まれる。次に、これらの微小液滴に対してそれぞれPCR増幅反応を行い、液滴の蛍光信号を微小液滴分析器で1つずつ検出し、蛍光信号のある微小液滴を1、蛍光信号のない微小液滴を0とする。最後に、ポアソン分布原理及び陽性の微小液滴の数と比率に基づいて、被測定試料の目標DNA分子の数を取得し、核酸試料の絶対定量を達成することできる。
【0003】
微小液滴デジタルPCR技術の重要なステップは、均一なミクロンレベルの「油中水」の微小液滴を迅速かつ確実に並行生成することである。微小液滴を生成するためのコア技術は、マイクロ流体技術に基づく微小液滴生成装置を設計及び処理することである。微小液滴生成装置は、臨床検出で広く使用されるために、次の原則を持つ必要である。(1)ミクロンレベルの均一な「油中水」/「水中油」微小液滴を迅速かつ確実に並行生成する。(2)マイクロ流体技術に基づくマイクロ流体チップの材料および処理コストが低い。(3)操作が便利である。(4)液滴の生成及び収集中に交差汚染は発生しない。
【0004】
現在、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に基づくマイクロ流体チップは、微小液滴の生成に幅広く使用されている。まず、研究者たちは、ソフトリソグラフィテクノロジー(手動操作)を利用して、ミクロンレベルを有するPDMS微小液滴チップを加工する。PDMS微小液滴チップの製造が成功すると、その試料入口と微小液滴生成出口で、機械的処理プロセスを使用して穴を開け、試料入口管と試料出口管を組み立てる。「油相」及び「水相」の試料は、手動でシリンジに吸引される。次に、「油相」試料と「水相」試料は、外部のシリンジポンプによって、試料入口管を通してPDMS微小液滴チップに注入される。最後に、生成された微小液滴は、試料出口管を介して、EP管などの従来の実験用消耗品に収集される。PDMS微小液滴チップ材料の開発コストは低く、実験室の処理プロセスは簡単であるが、その欠点には次のようなものがある。
(1)PDMSは熱弾性ポリマー材料であり、工業用グレードの射出成形及びパッケージングプロセスには適していない。手で処理されたPDMS微小液滴チップは、信頼性が低い。
(2)PDMS微小液滴チップのバッチ処理コストは高い。
(3)PDMS微小液滴チップの試料注入、液滴収集は、煩雑な手動操作プロセスであり、臨床検査応用に適していない。
(4)液滴の生成と収集中に相互汚染が発生しやすい。
【0005】
PDMS微小液滴チップの不足に対して、業界は上記の欠点に向けて研究開発を進めている。米国のBioRad社とRainDance Technologies社は、ポリマー材料に基づく微小液滴生成装置を開発した。Biorad社の微小液滴生成装置は、生成された微小液滴を手動でチップからEP管に転送する必要がある。RainDance社の微小液滴生成装置は、油相試料を入れるための外部機器を必要とし、コストが高くなる。これらの微小液滴生成装置自体の不足は、臨床検査の分野での幅広い応用を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の微小液滴生成装置の不足に対して、本発明は、ポリマー材料に基づく微小液滴生成装置を提供する。この微小液滴生成装置の特徴は次のとおりである。(1)均一なミクロンレベルの「油中水」又は「水中油」微小液滴を迅速かつ確実に並行生成する。(2)微小液滴チップは、熱可塑性材料(例えば、ポリカーボネート材料(PC)、シクロオレフィンコポリマー(COP)又はポリメチルメタクリレート材料(PMMA)、ポリプロピレン(PP)など)を使用し、材料及びバッチ処理のコストが低い。(3)外部圧力源によって、この微小液滴生成装置のチップを使用して、試料注入と液滴収集プロセスが便利になる。(4)集積された微小液滴生成装置の設計により、全プロセスで交差汚染が発生しにくい。
【0007】
また、本発明は、ポリマー材料に基づく微小液滴生成チップを提供する。この微小液滴チップは、業界の成熟した光ディスク製造プロセスと組み合わされ、次の特徴を有する。(1)均一なミクロンレベルの「油中水」又は「水中油」微小液滴を迅速かつ確実に生成する。(2)従来の円形ディスクの構造を変更し、ディスクのスペースを最大限に活用し、微小液滴の生成流路を平行に配置する。
【0008】
一実施形態では、本発明は、微小液滴生成装置を提供する。前記微小液滴生成装置は第1部品と第2部品を含む。第1部品と第2部品とは固定接続される。前記第1部品は、微小液滴生成チップであり、微小液滴の生成のために使用される。前記第2部品は、微小液滴試料のローディングと生成された微小液滴の収集の装置であり、第1部品の油相試料と水相試料のローディング及び生成された微小液滴の収集のために使用される。好ましい実施形態では、前記微小液滴生成チップは、円形又は多角形であり、前記多角形は十六角形、八角形又は四角形であることが好ましい。好ましい実施形態では、前記微小液滴生成チップは、熱可塑性材料、好ましくは、ポリカーボネート、環状オレフィン共重合体、ポリメチルメタクリレート及びポリプロピレンである。一実施形態では、前記第1部品と前記第2部品は、スポット溶接又は超音波溶接によって密封され、固定接続される。
【0009】
一実施形態では、前記第1部品と前記第2部品は、それぞれ一体射出成形によって形成される。一実施形態では、前記第1部品と前記第2部品は、熱可塑性材料、好ましくは、ポリカーボネート材料、環状オレフィン共重合体又はポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンである。
【0010】
一実施形態では、前記第1部品には、少なくとも1個の微小液滴生成ユニットが設けられ、好ましくは、4個、8個及び12個の微小液滴生成ユニットが設けられる。前記第2部品には、少なくとも1個の微小液滴ローディング及び収集ユニットが設けられ、好ましくは4個、8個、及び12個の微小液滴生成ユニットが設けられる。各微小液滴生成ユニットは、それに対応する微小液滴ローディング及び収集ユニットと協働して、微小液滴のローディング、生成及び収集を行う。一実施形態では、各个前記距離は、標準の8チャンネルピペッターのピペットチップ間の距離に等しい。
【0011】
一実施形態では、前記微小液滴生成チップは中心孔を含み、前記中心孔は、前記微小液滴生成チップの製造中の射出成形材料の注入、及びバッチ生産中の微小液滴生成チップの移送のために使用される。前記中心孔の両側に、中心孔を中心として1個以上の微小液滴生成ユニットが設けられ、各微小液滴生成ユニットは独立して微小液滴を生成する。好ましくは、前記中心孔の両側に、4個の微小液滴生成ユニットが等間隔で設けられる。
【0012】
一実施形態では、前記微小液滴生成ユニットは、油相試料入口、油相試料管路、水相試料入口、水相試料管路、及び微小液滴出口を含む。前記油相試料管路及び/又は前記水相試料管路は、前記中心孔から離れる弧状の管路構造である。
【0013】
一実施形態では、前記微小液滴生成ユニットは、2つの油相試料管路と1つの水相試料管路、又は1つの油相試料管路と2つの水相試料管路を含む。前記油相試料管路と前記水相試料管路は、微小液滴を形成するためのクロス構造を形成する。
【0014】
一実施形態では、前記油相試料入口の後ろの管路には、ジグザグ状流動抵抗エリアが設けられ、油相試料は、前記ジグザグ状流動抵抗エリアを通過した後、2つの経路に分かれ、それぞれ油相試料管路に入り、「油中水」微小液滴を生成する。又は、前記水相試料入口の後ろの管路には、ジグザグ状流動抵抗エリアが設けられ、水相試料は、前記ジグザグ状流動抵抗エリアを通過した後、2つの経路に分かれ、それぞれ水相試料管路に入り、「水中油」微小液滴を生成する。
【0015】
一実施形態では、前記油相試料管路には油相試料濾過エリアが設けられ、及び/又は前記水相試料管路には水相試料濾過エリアが設けられる。好ましくは、前記油相試料濾過エリア及び/又は前記水相試料濾過エリアは、それぞれ一組の柱状アレイ構造である。
【0016】
一実施形態では、前記第2部品の上方には、油相試料ローディングスロット、油相ローディング貫通孔、水相試料ローディングスロット及び水相ローディング貫通孔が設けられる。前記油相ローディング貫通孔及び前記水相ローディング貫通孔は、それぞれ前記油相試料ローディングスロット及び前記水相試料ローディングスロットの底部に設けられ、前記油相試料及び前記水相試料は、前記貫通孔をそれぞれ通して前記第1部品に入る。前記第2部品の下方には、試料収集装置が設けられる。
【0017】
一実施形態では、前記油相試料ローディングスロット及び前記水相試料ローディングスロットの容積はそれぞれ1~900μl、好ましくは5~500μl、さらに好ましくは100~200μlである。
【0018】
一実施形態では、前記試料収集装置は、その両端にそれぞれ設けられた生成された微小液滴受入口及び微小液滴収集口と、プレストアキャビティとを含む。前記第1部品によって生成された微小液滴は、前記微小液滴受入口を通して第2部品に入り、次に、前記プレストアキャビティを通過し、最後に、前記微小液滴収集口によって収集される。
【0019】
一実施形態では、前記微小液滴収集口は、傾斜した側壁構造の出口として設けられ、その端部に接続棒が設けられ、微小液滴は、前記接続棒を介して微小液滴収集容器に滴下する。
【0020】
一実施形態では、前記微小液滴収集容器は遠心管であり、前記接続棒は弧状の側壁を有する。前記接続棒は、前記遠心管の内部に深く入り、微小液滴の収集を容易にする。
【0021】
一実施形態では、前記第1部品には微小液滴生成の観察エリアが設けられ、前記第2部品には観察窓が設けられ、光学装置と協働して、生成された微小液滴をリアルタイムで監視するために使用される。
【0022】
一実施形態では、前記微小液滴生成装置は第3部品を更に含み、前記第3部品は、前記第2部品の油相試料及び水相試料を密封し、それを介して外部圧力が加えられる。
【0023】
一実施形態では、前記第1部品と前記第2部品にはそれぞれ、両者の固定接続を容易にする位置決めのための位置決め孔がさらに設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下、本出願の実施例の技術的手段を更に詳細に説明するために、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。当然のことながら、下記の説明における図面は本出願の幾つかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的労働をしない前提で、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】本発明の微小液滴生成装置の全体構造の模式図である。
【
図2】本発明の微小液滴生成装置の第1部品の構造を示す図である。
【
図3】本発明の微小液滴生成装置の第1部品の微小液滴生成「クロス構造」の模式図である。
【
図4】本発明の微小液滴生成装置の第2部品の構造模式図である。
【
図5】本発明の第2部品の収集装置の構造模式図である。
【
図6】本発明の微小液滴生成チップの構造模式図である。
【
図7】本発明の微小液滴生成チップの油相試料注入のジグザグ状流動抵抗エリアの構造図である。
【
図8】本発明の微小液滴生成チップの油相試料注入の濾過エリアの構造模式図である。
【
図9】本発明の微小液滴生成チップのクロス生成構造の模式図である。
【
図10】本発明の微小液滴生成チップの観察エリアの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
当業者が本出願における技術的解決策をよりよく理解できるようにするために、以下の実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。明らかに、説明される実施例は、本出願の実施例の一部にすぎず、すべての実施例ではない。当業者が創造的な作業なしに本出願の実施例に基づいて得られる全ての他の実施例は、本出願の保護範囲に含まれるべきである。以下では、図面及び実施例を参照しながら本発明を更に説明する。
【0026】
実施例1 本発明の微小液滴生成装置
一、微小液滴生成装置の全体構造
図1に示すように、本発明の微小液滴生成装置は、第1部品1と第2部品2を含む。第1部品1は、微小液滴生成チップであり、第2部品2は、微小液滴試料ローディング及び生成された液滴収集の装置である。第1部品1と第2部品2とは固定接続される。
【0027】
幾つかの実施形態では、本発明の微小液滴生成装置は第3部品3を更に含む。第3部品は、第2部品2の微小液滴油相試料ローディングスロット及び水相試料ローディングスロットを密封するために使用される。第3部品3は、例えば、シリカゲルからなる水封用ガスケットなどである。この水封用ガスケットには、圧力を加えるための通気孔を設けることができ、その機能は、外部圧力源と第2部品との間の圧力接続の気密性を確保し、外部圧力の適用を容易にすることである。外部圧力によって、2つの試料は、第2部品から第1部品に流れ、第1部品のマイクロ流路に進入する。最後に、生成された微小液滴は、微小液滴収集容器、例えば、遠心管(EP管)に収集される。
【0028】
図2と3に示すように、本実施例では、第1部品1には、8個の微小液滴生成ユニットが平行に設けられる。各微小液滴生成ユニットは、第1部品1において左から右へ等間隔で並列配置される。各微小液滴生成ユニットは、独立して微小液滴を生成する。第1部品1における微小液滴生成ユニットの数は、微小液滴生成チップのサイズ及び液滴生成の必要性に依存する。現在一般的に使用されている微小液滴生成構造は、微小液滴を生成する「クロス」構造である。例えば、直径100μmの微小液滴を生成するには、「クロス」構造の幅と深さは70μmである。上から下に見ると、各微小液滴生成ユニットは、油相試料入口11、2つの油相試料管路12、水相試料入口13、1つの水相試料管路14、及び微小液滴出口15を含む。油相試料は、第1部品1の相試料受入口11に進入した後、2つの油相試料管路12に分かれて流れる。水相試料は、第1部品1の水相試料入口13に進入した後、1つの水相試料管路14に進入する。2つの相の液体はクロス構造で合流して微小液滴を生成する。微小液滴は、微小液滴出口15から流出する。
【0029】
第2部品2は、「油相」試料と「水相」試料のローディング、及び微小液滴の収集を実現する。
図4に示すように、本実施例では、第1部品の8個の微小液滴生成ユニットに対応して、第2部品2に8個の微小液滴ローディング及び収集ユニットが平行に配置される。各微小液滴ローディング及び収集ユニットは、第2部品2において左から右へ等間隔で並列配置される。各微小液滴ローディング及び収集ユニットは、各微小液滴生成ユニットと協働して、微小液滴生成ユニットの水相と油相試料の添加及び生成された微小液滴の収集に使用される。第2部品2の上方には、油相試料ローディングスロット21、油相ローディング貫通孔22、水相試料ローディングスロット23及び水相ローディング貫通孔24が設けられる。油相ローディング貫通孔22と水相ローディング貫通孔24は、それぞれ油相試料ローディングスロット21と水相試料ローディングスロット23の底部中央に配置される。第2部品2の下方には試料収集装置25が設けられ、試料収集装置25の両端にはそれぞれ、生成された微小液滴受入口26及び微小液滴収集出口27が設けられる。
【0030】
幾つかの実施形態では、第2部品2には、光学装置と協働して、生成された微小液滴をリアルタイムで監視するための観察窓4が設けられる。観察窓4は中空設計であり、生成された微小液滴受入口26の前に位置し、第1部品1で生成された微小液滴を観察することができる。
【0031】
図5に示すように、試料収集装置25の生成された微小液滴の受入口26は、第1部品1の微小液滴出口15に対応する貫通孔である。生成された微小液滴受入口26の後ろにプレストアキャビティ28が設けられる。プレストアキャビティ28の後ろの微小液滴収集出口27は、傾斜した側壁構造の出口として設けられ、その端部にはEP管に接続するための接続棒29が設けられ、接続棒29は弧状の側壁を有する。接続棒29はEP管の内部に深く入り、微小液滴の収集を容易にする。
【0032】
図5に示すように、第1部品1で生成された微小液滴は、圧力の作用下で微小液滴出口15及び第2部品の生成された液滴出口貫通孔26を通して、プレストアキャビティ28に進入する。微小液滴の密度は油相試料の密度よりも低く、油の上方に浮く。微小液滴と油が流入し続けると、微小液滴は、微小液滴収集出口27の傾斜した側壁に沿ってEP管に滑り込む。
【0033】
幾つかの実施形態では、第1部品1と第2部品2は、油相試料入口11と油相ローディング貫通孔22、水相試料入口13と水相ローディング貫通孔24、及び微小液滴出口15貫通孔と生成された液滴出口26のそれぞれの周囲にスポット溶接シールがある。
【0034】
二、微小液滴生成装置のワークフロー
ワークフロー全体は、(1)試料注入ステップ、(2)微小液滴生成ステップ、及び(3)微小液滴収集ステップという3つのステップに分かれている。まず、「油相」試料と「水相」試料は、それぞれ第2部品2の油相試料ローディングスロット21と水相試料ローディングスロット23に入れられる。外部圧力によって、2つの試料はそれぞれ油相ローディング貫通孔22と水相ローディング貫通孔24を通過して、第1部品1の油相試料入口11と水相試料受入孔13にそれぞれ進入する。その後、油相は2つの油相試料管路12に進入し、水相は1つの水相試料管路14に進入する。油相と水相は、第1部品1のクロス構造で均一な微小液滴を形成する。生成された微小液滴は、第1部品1の微小液滴出口15と第2部品の生成された液滴出口26を通過して、第2部品のプレストアキャビティ28に進入する。プレストアキャビティ28の微小液滴は収集出口27を介して、試料収集装置に接続されるEP管に進入して、微小液滴の生成及び収集が完了する。
【0035】
(1)試料ローディングステップ
油相試料と水相試料は、予め第2部品2の油相試料ローディングスロット21と水相試料ローディングスロット23に入れられる。外部圧力によって、2つの試料はそれぞれ油相ローディング貫通孔22と水相ローディング貫通孔24を通過して、第1部品1の油相試料入口11と水相試料受入孔13にそれぞれ進入する。その後、油相は2つの油相試料管路12に進入し、水相は1つの水相試料管路14に進入する。
【0036】
(2)微小液滴生成ステップ
典型的な「油中水」微小液滴生成プロセスは、
図3に示される。「油相」試料は、外部空気圧の作用下で、水平方向からミクロンレベルの管路に流入する。「水相」試料は、外部空気圧の作用下で、垂直方向からミクロンレベルの管路に流入する。2つの非混和性液体は、「クロス」マイクロ流体構造で交流する。「油相」試料と「水相」試料との液体表面張力差、及び外部から加えられた圧力によって生成されたせん断力により、 「水相」試料は、クロス構造で「油相」試料によって、連続相から離散した微小液滴に分割される。微小液滴は「油中水」の形であり、外部は「油相」試料である。
【0037】
(3)微小液滴収集ステップ
生成された微小液滴は、第1部品1の微小液滴出口15と第2部品の生成された液滴出口26を通過して、第2部品のプレストアキャビティ28に進入する。プレストアキャビティ28の微小液滴は収集出口27を介して、試料収集装置に接続されるEP管に進入して、微小液滴の生成及び収集が完了する。
【0038】
図5からわかるように、微小液滴は、第1部品のマイクロ管路内で生成された後、第1部品1の微小液滴出口15及び第2部品の生成された液滴出口26に流れる。液滴は、圧力の作用下で第2部品2のプレストアキャビティ28まで浮上する。微小液滴の密度は油相試料の密度よりも低いため、油の上に浮く。微小液滴及び油が流入し続けると、微小液滴は、収集出口27の傾斜した側壁に沿ってEP管に滑り込む。接続棒29は、EP管の内部に深く入り、微小液滴の収集を容易にする。
【0039】
実施例2 本発明の微小液滴生成チップ
(一)、微小液滴生成チップの全体構造
図6は、微小液滴生成チップの構造模式図である。左から右へ、八角形のチップ上に8個の微小液滴生成ユニット41が設計される。チップの中心に中心孔42がある。この中心孔42は、光ディスク加工テクノロジーに由来するものであり、射出成形材料の注入及びバッチ生産中の基板の転送に使用される。従来の円形ディスク構造は、容易に位置決めることができないため、チップを八角形構造に加工し、2つの位置決め孔43を加工することによって、微小液滴チップと関連機器との位置決め及び適合は容易になる。中心孔の両側に、4個の同じ微小液滴生成ユニット41が等間隔で配置され、微小液滴を並列に生成するために使用される。
【0040】
図6に示すように、各液滴生成ユニット41は、上から下へ、油相試料入口4111、ジグザグ状流動抵抗エリア4112、2つの油相試料管路4113、2つの油相濾過エリア4114、水相試料入口4121、1つの水相試料濾過エリア4122、1つの水相試料管路4123、微小液滴生成エリア413、微小液滴生成観察エリア414、及び生成された微小液滴出口415を含む。
図6に示される微小液滴生成チップは、従来の光ディスクの標準的な構造を修正しており、光ディスクのスペースを最大限に活用し、微小液滴生成フローチャネルを並列に配置することができる。同時に、精密射出成形プロセスで加工されたチップは、ジグザグ状流動抵抗エリア及び濾過エリアの設計と組み合わされて、均一なミクロンレベルの「油中水」微小液滴を迅速かつ確実に生成することができる。
【0041】
(二)、油相試料ローディング構造
図7と
図8に示すように、まず、外部の空気ポンプ又はぜん動ポンプによって、油相試料は、油相試料入口4111に注入される。油相試料の注入量を正確に制御するために、油相試料入口4111の後ろにジグザグ状流動抵抗エリア4112が設計される。このジグザグ状流動抵抗ゾーン4112は、複数のU字管で構成される。油相試料はポリマー材料の表面に浸潤し、圧力が加えられない条件で、毛管作用によって、油相試料はマイクロ管路に流入する。極端な場合に、油相試料は毛管作用で流動し続ける。ジグザグ状流動抵抗ゾーン4112を設計する目的は、油相試料の注入量を正確に制御し、毛管作用による油相試料のマイクロ管路での継続的な流動を最小限に抑え、油相試料の注入量を外部の空気ポンプ又はぜん動ポンプによってのみ制御することである。
【0042】
その後、油相試料は、油相分流入口を通して、2つに分かれて同じ設計の2つの油相試料管路4113に進入する。油相試料管路4113は、中心孔42から離れる弧状構造管路である。
図3に示すように、2つの油相試料管路4113のそれぞれは、油相濾過エリア4114に入る。油相濾過エリア4114は、1組の柱状アレイ構造である。
図8に示すように、柱状アレイ構造は、交互配置された複数列の柱状アレイから構成される。油相に存在する不純物(粒子、フィラメント繊維など)は、該1組の柱状構造でブロックされ、微小液滴の生成に影響を与えない。
【0043】
(三)、水相試料ローディング構造
まず、外部の空気ポンプ又はぜん動ポンプによって、水相試料は、水相試料入口4121に注入される。油相試料注入設計と同様に、水相試料は、1つの水相試料濾過エリア4122及び1つの水相試料管路4123に進入する。濾過エリアは、1組の柱状アレイ構造であり、その目的は、水相試料中の不純物を濾過し、不純物の液滴生成に対する影響を排除することである。
【0044】
(四)、微小液滴生成エリアの構造
図9に示すように、2つの油相試料管路4113と1つの水相試料管路4123は、微小液滴生成エリア413で、微小液滴を生成するための「クロス」構造を形成する。2つの「油相」試料は、2つの油相試料管路4113を通して、外部空気圧の作用下で、水平方向からミクロンレベルの管路に流入する。1つの「水相」試料は、水相試料管路4123を通して、外部大気圧の作用下で、垂直方向からミクロンレベルの管路に流入する。2つの非混和性液体は、「クロス」マイクロ流体構造で交流する。「油相」試料と「水相」試料との液体表面張力差、及び外部から加えられた圧力によって生成されたせん断力により、 「水相」試料は、クロス構造で「油相」試料によって、連続相から離散した微小液滴に分割される。
【0045】
(五)、観察エリア及び微小液滴収集口の構造
図10に示すように、微小液滴生成観察エリア414の目的は、光学装置と適合して微小液滴をリアルタイムで監視するのを容易にすることである。微小液滴生成観察エリア414の特徴的な構造は、マイクロ管路の左側に設計された、閉じた微小構造である。油相/水相液体、微小液滴が閉じた構造を流れないため、光学検出装置は安定した静止画像を収集し、マイクロ管路平面に集中して、明確な検出結果を得るのが容易になる。生成された微小液滴は、生成された微小液滴出口415を通して流出する。
【0046】
(六)、チップ位置決め構造-中心孔、八角形縁構造、位置決め孔
従来の光ディスクの標準構造は、光ディスクのスペースを最大限に活用し、使用中のチップの位置決めを容易にするために修正される。中心孔42は、光ディスク加工テクノロジーに由来するものであり、射出成形材料の注入及びバッチ生産中の基板の転送に使用される。従来の円形ディスク構造は、容易に位置決めすることができない。従って、チップを八角形構造に加工し、2つの位置決め孔43を加工することによって、微小液滴チップと関連機器との位置決め及び適合は容易になる。
【0047】
開示された本発明は、記載された特定の方法、解決策、及び物質に限定されないことが理解されたい。これらはいずれも変化し得る。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。
【0048】
当業者はまた、本明細書に記載されている本発明の具体的な実施形態の多くの同等物を、通常の実験を超えないように使用することを認識するか、又は確認することができる。これらの同等物も、添付の特許請求の範囲に含まれる。