(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】破砕工具用防音カバー
(51)【国際特許分類】
B25D 17/12 20060101AFI20220228BHJP
【FI】
B25D17/12
(21)【出願番号】P 2021080379
(22)【出願日】2021-05-11
【審査請求日】2021-05-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510106762
【氏名又は名称】有限会社清水営繕興業
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【氏名又は名称】岡本 雅至
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】清水 記博
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特許第4528890(JP,B1)
【文献】特開2001-025981(JP,A)
【文献】登録実用新案第3128812(JP,U)
【文献】登録実用新案第3024348(JP,U)
【文献】特開2011-098405(JP,A)
【文献】中国実用新案第201519948(CN,U)
【文献】中国実用新案第212202181(CN,U)
【文献】特開2011-185207(JP,A)
【文献】米国特許第04749058(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D1/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体(20)の下端に取り付けられた破砕具を高圧の空気の圧力で上下動させる破砕工具に用いられ、前記工具本体(20)の排気口(26)を覆うように前記工具本体(20)の外周に被せられる破砕工具用防音カバー(1)において、
前記排気口(26)の上方及び下方で前記工具本体(20)の外周に沿う締付筒部(2,3)と、前記締付筒部(2,3)に挟まれた中間部分で前記工具本体(20)の外周との間に空間が形成される吸音筒部(4)とを備えた弾性体からなり、
前記吸音筒部(4)は、上方から下方へかけて窄まるテーパー状とされ、
前記吸音筒部(4)の周壁は、上下方向に山筋(4a)及び谷筋(4b)が延びる波型形状になって
おり、
前記吸音筒部(4)の上部から下方に延びる周壁の膨出部の内部には、前記吸音筒部(4)の内側上部と外側下部との間で連通する排気路(7)が形成されていることを特徴とする破砕工具用防音カバー。
【請求項2】
前記吸音筒部(4)の周壁の内側には、ネット状のクッション材(5)が張設されていることを特徴とする請求項1に記載の破砕工具用防音カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート等の破砕やハツリを行う空気動の破砕工具に、その騒音を低減するために装着される防音カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートブレーカーやチッパー等の破砕工具は、工具本体に供給された圧縮空気の圧力で内部のピストンを駆動させ、このピストンによって工具本体の下端に取り付けた破砕具を上下に振動させて、コンクリートの破砕作業等を行うものである。この駆動に用いられる圧縮空気は、工具本体の排気口から高い圧力のまま大気中に排気されて急速に減圧膨張し、その際、大きな衝撃音が発生し騒音の原因となることから、この騒音を低減するため、例えば下記特許文献1-4においては、種々の技術が開示されている。
【0003】
下記特許文献1に示された破砕工具の消音装置は、工具本体の排気ポートに、消音室を備えた消音体を設けたものである。そして、工具本体と消音体を離間して設けることで、工具本体から発生する騒音の軽減とともに、振動の伝達防止を図っている。
【0004】
下記特許文献2に示されたハンマードリルは、工具本体の排気ポートと消音器とをホースで連結し、この工具本体から離れた位置で排気音の消音を図っている。
【0005】
下記特許文献3に示された空気動工具は、工具本体の外周部に消音装置を備えたものであって、排気が工具本体と消音装置との間に形成される消音処理室内を流動する間に消音がなされるようになっている。
【0006】
下記特許文献4に示された破砕工具用防音カバーは、工具本体の排気口から排出された空気を、球面をなすように周壁が膨出した球体部に通し、さらに軸方向に伸縮する蛇腹状の伸縮部に通すことにより、騒音を低減するものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001―47381号公報
【文献】特開2006―515956号公報
【文献】特開2006―62067号公報
【文献】特開2011―224676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に示された消音装置や特許文献2に示された消音器は、工具本体から離れて付設されるため、作業の妨げとなりやすい。
【0009】
また、上記特許文献3に示された空気動工具の消音装置は、消音処理室の体積変化がほとんど生じないため、排気抵抗により、破砕具の打撃力が低下する恐れがある。
【0010】
さらに、上記特許文献4に記載された破砕工具用防音カバーは、工具本体からの球体部の張り出しが大きいため、作業性が損なわれる恐れがある。
【0011】
そこで、この発明は、工具本体にコンパクトに装着されて防音性が高く、破砕具の打撃力が低下することもない破砕工具用防音カバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、この発明は、工具本体の下端に取り付けられた破砕具を高圧の空気の圧力で上下動させる破砕工具に用いられ、前記工具本体の排気口を覆うように前記工具本体の外周に被せられる破砕工具用防音カバーにおいて、
前記排気口の上方及び下方で前記工具本体の外周に沿う締付筒部と、前記締付筒部に挟まれた中間部分で前記工具本体の外周との間に空間が形成される吸音筒部とを備えた弾性体からなり、
前記吸音筒部の周壁は、上下方向に山筋及び谷筋が延びる波型形状になっているものとしたのである。
【0013】
また、前記吸音筒部の周壁の内側には、ネット状のクッション材が張設されているものとしたのである。
【0014】
さらに、前記吸音筒部の周壁には、内側上部と外側下部との間で連通する排気路が形成されているものとしたのである。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る破砕工具用防音カバーでは、吸音筒部の周壁が波型形状の凹凸面となっているので、吸音面積が拡大され、素材の弾力性による吸音性能と相俟って、反射音の反響が大幅に抑制され、優れた吸音性能を得ることができる。また、排気に伴う吸音筒部の内部空間の体積変化が許容されるので、破砕具の打撃力が低下することもない。
【0016】
また、吸音筒部の周壁の山筋及び谷筋の部分がリブとして作用するので、保形性や強度が向上し、吸音筒部の周壁が工具本体の外周から大きく張り出すことがないので、防音カバーの下方で工具本体の外周をしっかりと把持することができる。
【0017】
さらに、吸音筒部の周壁の内側にシリコン素材からなるネット状のクッション材を張設することにより、吸音性能の向上が図られ、優れた耐熱性、耐寒性、耐候性が得られるほか、工具本体の排気口からの排気の圧力がクッション材で緩和されるので、吸音筒部の周壁が保護される。
【0018】
また、吸音筒部の周壁に、内側上部と外側下部との間で連通する排気路を形成することにより、工具本体の排気口からの排気が吸音筒部の外部へ迅速に排出されるので、破砕具の打撃力の低下を防止しつつ、吸音性能の向上を図ることができ、排気口の近傍で凍結が生じる現象も防止される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施形態に係る防音カバーを装着した破砕工具を示す斜視図
【
図4】同上の防音カバーの(a)平面図、(b)正面図、(c)一部切欠底面図
【
図5】同上の防音カバーとグリッパーの破砕工具への装着過程を示す分解斜視図
【
図6】同上の防音カバーの排気路における排気の流れを示す正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1に示すように、この防音カバー1は、コンクリートブレーカーやチッパー等の破砕工具に装着されるものである。ここで例示するチッパーの工具本体20は、上部のハンドル21の下方にピストンが内蔵されたシリンダ22を備え、シリンダ22の下部にスプリング23により付勢された図示されないチゼルホルダを有する構造とされ、チゼルホルダにチゼル24が取り付けられる。
【0022】
この破砕工具の工具本体20では、ハンドル21の端部のホースニップル25に接続されたホースから高圧の空気が送り込まれ、シリンダ22の内部でピストンが往復運動し、これに伴いチゼル24が上下に振動して、ピストンを駆動した排気がシリンダ22の上部外周に位置する排気口26から排気される。
【0023】
図2乃至
図4に示すように、防音カバー1は、開口面が上下に向けられる短筒状のゴム製部材を主体とするものであり、防音カバー1の上部及び下部にはそれぞれ締付筒部2,3が形成され、締付筒部2,3に挟まれた中間部には吸音筒部4が形成されている。
【0024】
吸音筒部4は、上方から下方へかけて窄まるテーパー状とされ、締付筒部2,3よりも外側へ張り出して大径となっている。
【0025】
吸音筒部4の周壁は、線状の凸部である山筋4a及び線状の凹部である谷筋4bが上下方向に延びる波型形状とされ、周壁の外面の山筋4aは内面の谷筋4bに対応し、周壁の外面の谷筋4bは内面の山筋4aに対応するようになっている。
【0026】
また、吸音筒部4の周壁の内側には、シリコン素材からなるネット状のクッション材5が全周にわたって張設されている。
【0027】
また、吸音筒部4の上部には、対向する2箇所に把手6が設けられ、その下方に延びる周壁の膨出部の内部には、吸音筒部4の内側上部と外側下部との間で連通する排気路7が形成されている。
【0028】
このような防音カバー1を破砕工具の工具本体20に装着する際には、
図5に示すように、チゼル24の下端側から防音カバー1を工具本体20の外周に被せ、排気口26の上方及び下方で締付筒部2,3をそれぞれ工具本体20の外周に沿わせてステンレス製の締付バンド11で固定する。この状態では、吸音筒部4の周壁内面と工具本体20の外周との間には空間が形成される。
【0029】
また、工具本体20のシリンダ22の下部外周には、グリッパー12を嵌める。グリッパー12は、上側の柔らかいゴム製環状体13と下側の金属製環状体14とが一体化されたものであり、凹凸が形成されたゴム製環状体13の外周は、金属製環状体14の外周よりも張り出している。
【0030】
グリッパー12の金属製環状体14は、3点止めのねじでシリンダ22の外周に固定され、工具本体20が振動してもグリッパー12がずり落ちないようになっている。
【0031】
上記のような防音カバー1では、吸音筒部4の周壁が波型形状の凹凸面となっているので、吸音面積が拡大され、素材の弾力性による吸音性能と相俟って、反射音の反響が大幅に抑制され、優れた吸音性能を得ることができる。また、排気に伴う吸音筒部4の内部空間の体積変化が許容されるので、チゼル24の打撃力が低下することもない。
【0032】
また、吸音筒部4の周壁の山筋4a及び谷筋4bの部分がリブとして作用するので、保形性や強度が向上し、吸音筒部4の周壁が工具本体20の外周から大きく張り出すことがないので、防音カバー1の下方で工具本体20のシリンダ22の外周をしっかりと把持することができる。
【0033】
さらに、吸音筒部4の周壁の内側にシリコン素材からなるネット状のクッション材5を張設しているので、吸音性能の向上が図られ、優れた耐熱性、耐寒性、耐候性が得られるほか、工具本体20の排気口26からの排気の圧力がクッション材5で緩和されるので、吸音筒部4の周壁が保護される。
【0034】
また、吸音筒部4の周壁に、内側上部と外側下部との間で連通する排気路7を形成しているので、
図6に示すように、工具本体20の排気口26からの排気が吸音筒部4の外部へ迅速に排出され、チゼル24の打撃力の低下を防止しつつ、吸音性能の向上を図ることができ、排気口26の近傍で凍結が生じる現象も防止される。
【0035】
そのほか、この実施形態のように、工具本体20のシリンダ22の下部外周にグリッパー12を嵌めておくと、シリンダ22の外周を把持する手の雨や汗による滑りが防止されて、手に力が入るので、作業性が向上するとともに、上下に振動するチゼル24の位置まで手が滑ることがないので、安全性が向上する。
【符号の説明】
【0036】
1 防音カバー
2,3 締付筒部
4 吸音筒部
4a 山筋
4b 谷筋
5 クッション材
6 把手
7 排気路
11 締付バンド
12 グリッパー
13 ゴム製環状体
14 金属製環状体
20 工具本体
21 ハンドル
22 シリンダ
23 スプリング
24 チゼル
25 ホースニップル
26 排気口
【要約】
【課題】工具本体にコンパクトに装着されて防音性が高く、破砕具の打撃力が低下することもない破砕工具用防音カバーを提供する。
【解決手段】工具本体20の下端に取り付けられた破砕具を高圧の空気の圧力で上下動させる破砕工具に用いられ、工具本体20の排気口26を覆うように工具本体20の外周に被せられる破砕工具用防音カバーにおいて、排気口26の上方及び下方で工具本体20の外周に沿う締付筒部2,3と、締付筒部2,3に挟まれた中間部分で工具本体20の外周との間に空間が形成される吸音筒部4とを備えた弾性体からなり、吸音筒部4の周壁は、上下方向に山筋4a及び谷筋4bが延びる波型形状になっているものとする。また、吸音筒部4の周壁の内側にネット状のクッション材5が張設され、吸音筒部4の周壁の内側上部と外側下部との間で連通する排気路7が形成されているものとする。
【選択図】
図1