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  • 特許-電磁波発振装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】電磁波発振装置
(51)【国際特許分類】
   H03G 3/30 20060101AFI20220228BHJP
   H03F 1/34 20060101ALI20220228BHJP
   H03F 3/189 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
H03G3/30 B
H03F1/34
H03F3/189
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017154569
(22)【出願日】2017-08-09
(65)【公開番号】P2019033434
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504293528
【氏名又は名称】ゼネラルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 聞平
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】特許業務法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】神原 誠士
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕二
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/084250(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/021464(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/115707(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/084341(WO,A1)
【文献】特開2011-169179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B6/64-6/80
H05H1/46
H05H1/52
H03G3/30-3/34
H03F1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から印加される直流電圧によって電磁波を発振する電磁波発振器と、
該電磁波発振器から発振される電磁波を増幅する増幅器と、
前記増幅器のドレインに接続され、該増幅器に直流電圧をドレイン電圧として供給する直流可変安定化電源と、
前記増幅器から発振される電磁波の一部を分配し、直流電圧に変換する分配器と、
前記増幅器から出力される電磁波についての出力値を記憶する出力値テーブルと、
記分配器からの直流電圧の値を前記出力値テーブルに記憶された出力値と比較する比較器とを備え、
該比較器で比較した値に応じて、直流可変安定化電源から増幅器へ出力するドレイン電圧の出力値を変更するようにした電磁波発振装置。
【請求項2】
電源から印加される直流電圧によって電磁波を発振する電磁波発振器と、
該電磁波発振器から発振される電磁波を増幅する増幅器と、
前記増幅器のドレインに接続され、該増幅器に直流電圧をドレイン電圧として供給する直流可変安定化電源と、
前記増幅器のトランジスタの温度を計測し、計測した温度を直流電圧値に換算する温度計測器と、
前記増幅器から出力される電磁波についての出力値に対応したトランジスタの温度を直流電圧値に換算した値を記憶する温度データテーブルと、
記温度計測器において換算される直流電圧値を前記温度データテーブルに記憶され直流電圧値と比較する比較器とを備え、
該比較器で比較した値に応じて、直流可変安定化電源から増幅器へ出力するドレイン電圧の出力値を変更するようにした電磁波発振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を供給する電磁波発振装置、特に発振する電磁波の出力を安定的に出力することのできる電磁波発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マグネトロンに代わり、半導体素子による電磁波発振器(マイクロ波発生装置)を用いた電子レンジ等の加熱装置が検討されている。例えば、特許文献1では、加熱室の上下左右の壁面にマイクロ波を放射する電磁波照射アンテナを配備したマイクロ波加熱装置が開示されている。このマイクロ波加熱装置は2つの発振器を有し、第1の発振器から出力されたマイクロ波は第1の分配器で2分配されて上面と下面のアンテナに給電され、第2の発振器から出力されたマイクロ波は第2の分配器で2分配されて左面と右面のアンテナに給電される。
【0003】
そして、半導体で構成される電磁波発振装置では、発振装置内の増幅器(パワーアンプ)に使用されるトランジスタ(以下デバイスと呼ぶ。)の温度が上昇すると発振する電磁波(マイクロ波)の出力が低下し、逆に温度が下降すると出力は増加する。
【0004】
この出力変化に対応するために、基準温度換算の電圧値を記録した比較器に、増幅器から出力される電磁波を分配し直流に変換して入力し、基準値と異なる場合、発振器と増幅器(可変増幅アンプ)との間に配設する利得制御器により増幅器からの出力を制御するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5169371号公報
【文献】特開2000-116126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、利得制御器は高価なパーツであり装置全体が高騰するという問題がある。
【0007】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高価な利得制御器を使用することなく、安価な構成で安定した出力が可能な電磁波発振器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本第1の発明に係る電磁波発振装置は、
電源から印加される直流電圧によって電磁波を発振する電磁波発振器と、
該電磁波発振器から発振される電磁波を増幅する増幅器と、
該増幅器に直流電圧を供給する直流可変安定化電源と、
前記増幅器から発振される電磁波の一部を分配し、直流電圧に変換する分配器と、
予め定められた増幅器から発振する電磁波の出力値を記憶するとともに、前記分配器からの直流電圧値を前記記憶した出力値と比較する比較器とを備え、
該比較器で比較した電圧値の値に応じて、直流可変安定化電源からの出力値を変更するようにしている。
【0009】
本第1の発明に係る電磁波発振装置は、増幅器からの出力の変動に応じて、直流可変安定化電源から増幅器に供給するドレイン電圧を変更することで出力の安定化を図る。
【0010】
上記課題を解決するためになされた本第2の発明に係る電磁波発振装置は、
電源から印加される直流電圧によって電磁波を発振する電磁波発振器と、
該電磁波発振器から発振される電磁波を増幅する増幅器と、
該増幅器に直流電圧を供給する直流可変安定化電源と、
前記増幅器のトランジスタの温度を計測し、計測した温度を直流電圧値に換算する温度計測器と、
予め定められたトランジスタの温度を電圧値に換算した値を記憶するとともに、前記温度計測器からの直流電圧値を前記記憶した温度の電圧値と比較する比較器とを備え、
該比較器で比較したで夏値の値に応じて、直流可変安定化電源からの出力値を変更するようにしている。
【0011】
本第2の発明に係る電磁波発振装置は、増幅器のトランジスタの温度変動に応じて、直流可変安定化電源から増幅器に供給するドレイン電圧を変更することで出力の安定化を図る。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電磁波発振装置は、増幅器からの出力に応じて又はデバイスの温度に応じて、増幅器のデバイスに供給するドレイン電圧を変更することで増幅器からの出力値の安定化を図ることができ、高価な利得制御器を使用することなく、安価な構成で安定した出力が可能な電磁波発振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本第1発明の電磁波発振器の概略を示す回路図である
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0015】
<実施形態1>
本実施形態1は、本発明に係る電磁波発振装置である。この電磁波発振装置1Aは、図1に示すように、電源から印加される直流電圧によって電磁波を発振する電磁波発振器MWと、この電磁波発振器MWから発振される電磁波を増幅する増幅器2と、この増幅器2に直流電圧を供給する直流可変安定化電源3と、増幅器2から発振される電磁波の一部を分配し、直流電圧に変換する分配器6と、予め定められた増幅器2から発振する電磁波の出力値を記憶するとともに、分配器からの直流電圧の値を記憶した出力値と比較する比較器4とを備えている。そして、比較器4で比較した値に応じて、直流可変安定化電源3から増幅器2へ出力するドレイン電圧値を変更するようにしている。
【0016】
増幅器2は、電磁波発振器MWから出力された数W程度の電磁波(例えば、2.45GHzのマイクロ波)を数kWまで増幅し、供給先の抵抗、例えばマイクロ波照射アンテナAに供給される。供給先の抵抗としては、プラズマ生成装置や電磁波放電装置等であっても構わない。
【0017】
<電磁波発振器>
電磁波発振器MWは、マグネトロンの利用が一般的であったが、近年半導体デバイスを利用した電磁波発振器が実用化されている。半導体デバイスとして一般的に使用される半導体材料は、シリコン(ケイ素(Si))である。シリコンを使った半導体デバイスは、酸化物SiOを還元、清留させて製造される高純度のシリコンにさらに加工を加えて作ったシリコンウェーハから製造される。このシリコンウェーハの製造方法は確立しており、大量生産が可能なことから半導体材料として汎用されており、本実施形態の電磁波発振器MWに好適に用いることができる。また、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)又はダイヤモンドを用いることで、エネルギ効率が70%以上を確保することができ、本実施形態で用いる電磁波発振器MWの半導体材料として利用することができる。
【0018】
増幅器2に使用されるトランジスタ(MOS-FET、以下デバイスという)は、直流可変安定化電源3から供給される例えば32Vの直流電流によって作動し、電磁波発振器MWが発振する数Wの電磁波の出力を、100倍以上、例えば500W~1.2kWまで増幅するようにしている。
【0019】
増幅器2が増幅して出力する電磁波の出力値は、デバイスの温度によって変動する。本実施形態では、増幅器2から出力する所望の出力値が入力されている出力値テーブル5Aを備えている。出力値テーブル5Aに記録される値は、増幅器が出力可能な複数の所望の値が入力・記録されており、使用者が必要な値を選択する。
【0020】
分配器6は、増幅器2から出力される電磁波の一部、例えば出力される電磁波の数%を分配し、ダイオードを介して直流電圧に変換する。使用する分配器6は、特に限定するものではないが、本実施形態においては、方向性結合器を利用するようにしている。
【0021】
比較器4は、出力値テーブル5Aの選択された値と、分配器6から出力される値とを比較する。従来は、この比較された値に応じて、発振器と増幅器(可変増幅アンプ)との間に配設する利得制御器に制御信号を送信し、増幅器から発振する電磁波の出力を調整していたが、本実施形態においては、比較された値に応じて、直流可変安定化電源3からの出力電圧、つまり増幅器2のデバイスへのドレイン電圧を変更する。具体的には、分配器6から出力される値が、出力値テーブル5Aの選択された値よりも低い場合はドレイン電圧を上昇させ、高い場合はドレイン電圧を下降させる。
【0022】
このように、分配器6からの出力と出力値テーブル5Aの選択された値とを常時比較しながら直流可変安定化電源3からの出力であるドレイン電圧を変更することで、増幅器2から安定した出力の電磁波(マイクロ波)をアンテナA、プラズマ生成装置等の抵抗に供給することができる。
【0023】
<実施形態2>
本実施形態2は、本第2の発明に係る電磁波発振装置である。この電磁波発振器1Bは、電源から印加される直流電圧によって電磁波を発振する電磁波発振器MWと、この電磁波発振器MWから発振される電磁波を増幅する増幅器2と、この増幅器2に直流電圧を供給する直流可変安定化電源3と、増幅器2のトランジスタであるデバイスの温度を計測し、計測した温度を直流電圧値に換算する温度計測器7と、予め定められたトランジスタの温度を電圧値に換算した値を記憶するとともに、温度計測器7からの直流電圧値を記憶した温度の電圧値と比較する比較器4とを備えている。そして、比較器4で比較した値に応じて、直流可変安定化電源3から増幅器2へ出力するドレイン電圧値を変更するようにしている。
【0024】
本実施形態2の電磁波発振装置1Bは、実施形態1の電磁波発振装置1Aと比較して、増幅器2から出力される電磁波の一部を分配し、ダイオードを介して直流電圧に変換する分配器6に換えて、増幅器2のデバイス温度を計測する温度計測器7を配設する。そして、比較器4において比較する値は増幅器2のトランジスタであるデバイスの温度を直流電圧値に換算した値で行う。その他の構成は実施形態1と同様であり、説明を省略する。
【0025】
温度計測器7は、デバイスの温度計測が可能で、計測したデータを直流電圧に変換可能な計測器であれば、特に限定するものではなく、放射温度計等種々の温度計測器を使用することが可能である。
【0026】
増幅器2が増幅して出力する電磁波の出力値は、電磁波発振器MWから発振される電磁波の出力とデバイス温度によって決定される。本実施形態では、増幅器2から出力する所望の出力値に対応したデバイス温度を直流電圧値に換算した値が入力されている温度データテーブル5Bを備えている。
【0027】
温度データテーブル5Bに記録される値は、増幅器が出力可能な複数の所望の出力値に対応したデバイス温度を直流電圧値に換算した値が入力・記録されており、使用者が必要な値を選択する。
【0028】
比較器4は、温度データテーブル5Bの選択された値と、温度計測器7から出力されるデバイス温度を直流電圧値に換算した値とを比較する。そして、比較された値に応じて、直流可変安定化電源3からの出力電圧、つまり増幅器2のデバイスへのドレイン電圧を変更する。具体的には、温度計測器7から出力される値が、温度データテーブル5Bの選択された値よりも低い場合はドレイン電圧を上昇させ、高い場合はドレイン電圧を下降させる。
【0029】
このように、温度計測器7からの出力と温度データテーブル5Bの選択された値とを常時比較しながら直流可変安定化電源3からの出力であるドレイン電圧を変更することで、増幅器2から安定した出力の電磁波(マイクロ波)をアンテナA、プラズマ生成装置等の抵抗に供給することができる。
【0030】
<実施形態1と比較しての効果>
本第2発明の電磁波発振装置1Bは、電磁波発振装置1Aと比べて増幅器2からの出力値の一部を分配する必要がないため、電磁波の供給効率が高い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明の電磁波発振装置は、供給する電磁波の出力を安定した出力での電磁波の供給が必要な加熱調理器の用途に好適に用いることもできる。また、プラズマ生成装置、電磁波放電装置等の電磁波やマイクロ波を供給する装置に使用する場合や、電磁波を利用した生ゴミ処理機等にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1A 電磁波発振装置
1B 電磁波発振装置
2 増幅器
3 直流可変安定化電源
4 比較器
5A 出力値テーブル
5B 温度データテーブル
6 分配器
7 温度計測器
MW 電磁波発振器
図1