(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】流速流向計及びスクリーン
(51)【国際特許分類】
G01P 13/00 20060101AFI20220228BHJP
G01P 5/20 20060101ALI20220228BHJP
G01V 9/02 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
G01P13/00 E
G01P5/20 G
G01V9/02
(21)【出願番号】P 2017157810
(22)【出願日】2017-08-18
【審査請求日】2020-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】512052764
【氏名又は名称】株式会社アサノ大成基礎エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100070183
【氏名又は名称】吉村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100131303
【氏名又は名称】吉村 徳人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和幸
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-57473(JP,A)
【文献】特開2005-257367(JP,A)
【文献】米国特許第5337821(US,A)
【文献】特開昭62-198782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P13/00-13/04
G01P 5/00- 5/26
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のパッカーと、
一対のパッカーの間に形成された計測領域と、
前記計測領域に配置された複数の電極と、
前記計測領域に配置された透水体と、を備え、
前記パッカーは、透水性を有する材料により形成され、
前記透水体は、前記パッカーを形成する材料と比較して、透水性が高い材料により形成されていることを特徴とする流速流向計。
【請求項2】
前記透水体は、不織布又は連続気泡体により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流速流向計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水の流速及び流向を計測する流速流向計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地下水の流れ(流速及び流向)を計測する方法として、比抵抗測定方式による計測方法が知られている(特許文献1参照)。
比抵抗測定方式による計測方法では、計測領域において、地下水とは比抵抗が異なるトレーサ(蒸留水等)が配置される。また、計測領域に配置された複数の電極を用いて、トレーサの移動により発生する比抵抗の変化が検出される。そして、検出された比抵抗の変化に基づいて、地下水の流速及び流向が算出される。
【0003】
次に、従来の比抵抗測定方式による計測方法に用いられていた設備を説明する。
図10は、従来の流速流向計の構成を示す図である。
図11は、従来の流速流向計の計測部の構成を示す断面図である。
なお、
図10及び
図11では、ケーシングパイプP1がボーリング孔h内に配置され、かつ、流速流向計100がケーシングパイプP1内に配置されている状態を示している。
まず、従来の比抵抗測定方式による計測方法に用いられていたケーシングパイプP1の構成を説明する。
図10に示すように、ケーシングパイプP1は、底面を有し、天面が開放された円筒状に形成されている。また、ケーシングパイプP1は、地下水を通過(流入及び流出)させることが可能なスクリーン部200を有している。
スクリーン部200は、円筒状に形成され、その全周に亘って、複数のスリットが形成されている。具体的には、スクリーン部200として、円筒状のウェッジワイヤースクリーン等が用いられている。
【0004】
次に、従来の比抵抗測定方式による計測方法に用いられていた流速流向計100の構成を説明する。
図10に示すように、流速流向計100は、ケーシングパイプP1内に挿入されるプローブ部110と、プローブ部110の上端に接続された定方位ロッド120と、地上に設定されるコントローラ(図示せず)と、を含んで構成されている。
プローブ部110は、一対のエアパッカー111a,111bと、一対のエアパッカー111a,111bの間に配置された測定器本体112と、を備えている。
各エアパッカー111a,111bは、ゴム等の弾性体によって、袋状に形成されている。そして、各エアパッカー111a,111bは、その内部に気体を注入することにより、膨張させることが可能となっている。具体的には、各エアパッカー111a,111bには、地上に設置されているボンベから気体を圧送するためのチューブ(図示せず)が接続されている。そして、各エアパッカー111a,111bは、チューブを介して、ボンベから気体を圧送することによって、膨張させることが可能となっている。
測定器本体112には、地下水を通過(流入及び流出)させる計測部113が設けられている。計測部113は、その外周がステンレスメッシュmにより覆われ、円筒状に形成されている。
図11に示すように、計測部113には、中心電極cと、複数の周辺電極pと、が配置されている。複数の周辺電極pは、中心電極cの周囲に配置されている。また、計測部113の内側(ステンレスメッシュmの内側)には、ガラスビーズf1が充填されている。
中心電極cは、鉛直方向に沿って延びる管状に形成されている。中心電極cの上流側には、ピストン(図示せず)を介して、地上に設置されているトレーサタンクからトレーサ(蒸留水)を圧送するためのチューブ(図示せず)が接続されている。また、中心電極cには、トレーサタンクから圧送されたトレーサを置換するためのピストン機構(図示せず)と、置換されたトレーサが放出される複数の放出孔と、が設けられている。そして、放出孔は、計測部113内に配置されている。
【0005】
次に、ケーシングパイプP1及び流速流向計100を用いて地下水の流れを計測する際の手順を説明する。
地下水の流れを計測する際には、まず、地盤Gにおいて、ボーリング孔h(裸孔)が掘削される。この際、ボーリング孔hは、地盤内Gにおける地下水の流れを計測する対象とされている領域(以下、「対象領域」とする)より深い位置まで掘削される。
次に、ケーシングパイプP1が、ボーリング孔h内に設置される。この際、スクリーン部200が、対象領域と同一の深さに配置される。また、対象領域におけるボーリング孔hの孔壁(内周面)とケーシングパイプP1の外周面との間に、珪砂等の孔内充填材f2が充填される。さらに、対象領域以外の孔壁とケーシングパイプP1との隙間が、ベントナイト(粘性土)f4により塞がれる。
次に、プローブ部110が、ケーシングパイプP1内に設置される。この際、プローブ部110は、定方位ロッド120により、所定の向き(複数の周辺電極pのうち特定の周辺電極p(1番の電極)が磁北方向)を維持した状態で配置される。また、計測部113が、対象領域と同一の深さに配置される。
次に、下側のエアパッカー111bが膨張された後に、ケーシングパイプP1の内周面と計測部113の外周面との間に、珪砂等の間隙充填材f3が充填され、その後、上側のエアパッカー111aが膨張される。
以上によって、流速流向計100の設置が完了する。そして、流速流向計100の設置の完了後、半日(翌朝)の経過後に、対象領域における地下水の流れの計測を開始する。ここで、流速流向計100の設置の完了後、半日(翌朝)の経過を待つ理由は、対象領域における地下水の流れの安定(間隙水圧)と、流速流向計100に内蔵しているトレーサが地下水の温度と同じ(温度の違いによる密度流の防止)となるのを待つためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の流速流向計100では、小型化が困難であった。
すなわち、流速流向計100では、プローブ部110において、2つのエアパッカー111a,111bを備える必要があるため、プローブ部110の小型化が困難であった。
さらに、流速流向計100では、地上のボンベから各エアパッカー111a,111bに気体を圧送するためのチューブ2本と、トレーサタンクからピストンにトレーサ(蒸留水)を圧送するためのチューブ1本と、トレーサを計測部113の中心へ置換するためのチューブ2本と、が必要となるため、地上とプローブ部110との間に配置されるチューブの数を減らすことが困難であった。
特に、プローブ部110(測定器本体112)の小型化が困難であることに伴い、ボーリング孔hの孔径を小さくすることが困難であった。
本発明の課題は、小型化を図ることが可能な流速流向計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第一の発明に係る流速流向計は、一対のパッカーと、一対のパッカーの間に形成された計測領域と、前記計測領域に配置された複数の電極と、前記計測領域に配置された透水体と、中心電極部を兼ねたトレーサ管を備え、前記パッカーは、透水性を有する材料により形成され、前記透水体は、前記パッカーを形成する材料と比較して、透水性が高い材料により形成されていることを特徴とする。
第一の発明に係る流速流向計では、一対のパッカーが、それぞれ、連続気泡体(スポンジ)等の透水性を有する柔軟な材料により形成されている。これによって、エアパッカーを備えることなく、スクリーンやケーシングパイプに対して密着させることができ、流速流向計を小型化することが可能となる。
特に、第一の発明に係る流速流向計では、計測領域において、不織布、連続気泡体(スポンジ)等の柔軟な透水体が配置されている。これによって、透水体により、地下水を誘導・整流することができる。したがって、計測領域において、ガラスビーズを充填する必要がなくなり、ガラスビーズを充填・交換する手間を削減することが可能となる。また、計測時に、計測領域において、柔軟な透水体がスクリーンに対して密着することにより、珪砂を充填する必要がなくなり、ケーシングパイプP1の底部において砂溜まりが出来ることを防止することが可能となる。
さらに、第一の発明に係る流速流向計では、透水体が、パッカーを形成する材料と比較して、透水性が高い材料により形成されている。これによって、透水体内に流入した地下水のパッカー側への流出が抑制される。したがって、計測空間における地下水の上昇流又は下降流の発生を抑制でき、計測精度を向上することが可能となる。
ここで、流速流向計としては、後述する流速流向計1が該当する。一対のパッカーとしては、後述する上側パッカー62及び下側パッカー72が該当する。計測領域としては、後述する計測空間(計測部80)が該当する。複数の電極としては、後述する中心電極c及び周辺電極p1~p12が該当する。透水体としては、後述する透水体81が該当する。
【0009】
第二の発明に係る流速流向計は、第一の発明に係る流速流向計において、前記透水体は、不織布又は連続気泡体により形成されていることを特徴とする。
第二の発明に係る流速流向計によれば、計測領域における地下水の流れを安定させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流速流向計を小型化することが可能となり、これに伴い、ボーリング孔hの孔径を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る流速流向計の構成を示す図である。
【
図9】地下水の流速及び流向を計測する原理の説明図である。
【
図11】従来の流速流向計の計測部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
(流速流向計1の構成)
まず、本発明の実施形態に係る流速流向計1を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る流速流向計の構成を示す図である。
図2は、センサーユニットの構成を示す図である。
図3は、計測部を示す拡大図である。
図4は、計測部の水平面に沿う断面図である。
図5は、蒸留水置換機構の構成を示す図である。
図6は、基板ユニットの構成を示す図である。
図1に示すように、流速流向計1は、ケーシングパイプP2内に挿入される測定器本体10と、測定器本体10に接続される挿入用ロッド20と、地上に設定されるコントローラ(図示せず)と、を含んで構成されている。
測定器本体部10は、センサーユニット11と、基板ユニット12と、を含んで構成されている。
図2に示すように、センサーユニット11は、センサー部30と、蒸留水制御部40と、蒸留水タンク収容部50と、を含んで構成されている。
センサー部30は、固定ベース部60と、固定ベース部60に対して着脱することが可能な着脱ベース部70と、固定ベース部60と着脱ベース部70との間に形成された計測部80と、を含んで構成されている。
【0018】
固定ベース部60は、枠体61と、中心電極cと、複数(本実施形態では、12本)の周辺電極p1~p12と、上側パッカー62と、温度計63と、を含んで構成されている。
枠体61は、絶縁材料(絶縁体)により、略円筒状に形成されている。本実施形態では、枠体61は、アクリルにより形成されている。
中心電極cは、電気伝導材料(電気伝導体)により、円筒状(パイプ状)に形成されている。本実施形態では、中心電極cとして、ステンレス製の直管パイプが用いられている。そして、中心電極cでは、その内側が、蒸留水Tの圧送路(流路)となる。
中心電極cは、鉛直方向に沿って、直線状に延びている。中心電極cは、枠体61の内側において、枠体61の中心軸に沿って(同軸状に)配置されている。そして、中心電極cは、枠体61の下端部から下方に向かって突出している。
図3に示すように、中心電極cの下端には、蒸留水Tが排出(放出)される排出口eが設けられている。ここで、中心電極cの下端は、着脱ベース部70の下端より下方の位置に達している。これによって、測定器本体10では、排出口eを介して、着脱ベース部70(後述する下側パッカー72)より下方の位置に、蒸留水Tを排出することが可能となっている。
また、中心電極cには、開口部64が設けられている。開口部64は、排出口eに対して上流側に設けられている。特に、開口部64は、後述する計測空間(計測部80)内に配置されるように設けられている。開口部64には、その全周に亘って、複数の貫通孔が略均一に設けられている。本実施形態では、開口部64は、網目状(メッシュ状)に形成されている。そして、開口部64では、各貫通孔を介して、中心電極cの外側及び内側が、互いに連通している。
これによって、中心電極cでは、開口部64において、地下水を通過させることが可能となっている。すなわち、中心電極cでは、開口部64(各貫通孔)を介して、地下水を内側に流入させるとともに、内側に流入した地下水を外側に流出させることが可能となっている。特に、開口部64を通過(流入及び流出)する地下水の流れに乗せて、開口部64の内側に配置されている蒸留水Tを、開口部64外側に流出させることが可能となっている。
【0019】
各周辺電極p1~p12は、電気伝導材料(電気伝導体)により、円柱状(針状)に形成されている。本実施形態では、各周辺電極p1~p12として、ステンレス製のロッドが用いられている。各周辺電極p1~p12は、鉛直方向に沿って、直線状に延びている。各周辺電極p1~p12は、枠体61の内側において、枠体61の内周面に沿って配置されている。そして、各周辺電極p1~p12は、枠体61の下端部から下方に向かって突出している。各周辺電極p1~p12の下端は、計測空間(計測部80)内に配置されている。
具体的には、
図4に示すように、鉛直方向に沿う視点において、12本の周辺電極p1~p12は、中心電極cを中心とする一の円周上に配置されている。すなわち、各周辺電極p1~p12と中心電極cとの距離(間隔)は、全ての周辺電極p1~p12について同一となっている。また、12本の周辺電極p1~p12は、互いに等角度間隔(本実施形態では、30°間隔)で配置されている。
ここで、全ての電極c,p1~p12は、枠体61によって、互いに絶縁されている。
【0020】
上側パッカー62は、透水性を有する材料により形成されている。具体的には、上側パッカー62は、弾性を有する連続気泡体により形成されている。特に、上側パッカー62は、後述する透水体81を形成する材料と比較して、硬く、かつ、弾性係数が大きい材料により形成されている。本実施形態では、上側パッカー62は、連続気泡構造(連通気泡構造)の硬質フォーム材(スポンジ)により形成されている。
上側パッカー62は、所定の厚みを有する円筒状に形成されている。上側パッカー62は、枠体61の外周面を覆うように配置されている。上側パッカー62の内周面は、枠体61の外周面に密着している。上側パッカー62の下端の位置は、枠体61の下端の位置と略一致している。すなわち、上側パッカー62の下面(底面)は、枠体61の下面(底面)と略同一面上に配置されている。
ここで、上側パッカー62の外径は、ケーシングパイプP2の内径より大きくなっている。これによって、測定器本体10がケーシングパイプP2の内側に挿入された際に、上側パッカー62の弾性(収縮)により、上側パッカー62の外周面とケーシングパイプP2の内周面とを密着させることができる。
本実施形態では、枠体61の外周面において、1つ(一連)の上側パッカー62が配置されている。しかしながら、枠体61の外周面において、鉛直方向に沿って、互いに独立した複数(例えば、2つ)の上側パッカー62が配置されている構成としても構わない。
【0021】
温度計63は、サーミスタ等により構成されている。温度計63は、枠体61の内側に配置されている。そして、温度計63は、枠体61の温度を検出(計測)することによって、計測空間(計測部80)を流れる地下水の温度による枠体61の温度変化を検出する。温度計63は、後述する制御基板91(具体的には、温度計アンプ)に対して、検出信号を出力する。
【0022】
着脱ベース部70は、枠体71と、下側パッカー72と、を含んで構成されている。
枠体71は、絶縁材料(絶縁体)により、略円柱状に形成されている。本実施形態では、枠体71は、アクリルにより形成されている。枠体71には、その中心軸に沿って、電極挿通孔(図示せず)が設けられている。電極挿通孔は、貫通孔となっている。
【0023】
下側パッカー72は、上側パッカー62と同一の材料により形成される。すなわち、下側パッカー72は、透水性を有する材料により形成されている。特に、下側パッカー72は、後述する透水体81を形成する材料と比較して、硬く、かつ、弾性係数が大きい材料により形成されている。具体的には、下側パッカー72は、弾性を有する連続気泡体により形成されている。本実施形態では、下側パッカー72は、連続気泡構造(連通気泡構造)の硬質フォーム材(スポンジ)により形成されている。
下側パッカー72は、所定の厚みを有する円筒状に形成されている。下側パッカー72は、枠体71の外周面を覆うように配置されている。下側パッカー72の内周面は、枠体71の外周面に密着している。下側パッカー72の上端の位置は、枠体71の上端の位置と略一致している。すなわち、下側パッカー72の上面(天面)は、枠体71の上面(天面)と略同一面上に配置されている。
ここで、下側パッカー72の外径は、上側パッカー72の外径と略同一となっている。すなわち、下側パッカー72の外径は、ケーシングパイプP2の内径より大きくなっている。これによって、測定器本体10がケーシングパイプP2の内側に挿入された際に、下側パッカー72の弾性(収縮)により、下側パッカー72の外周面とケーシングパイプP2の内周面とを密着させることができる。
本実施形態では、枠体71の外周面において、1つ(一連)の下側パッカー72が配置されている。しかしながら、枠体71の外周面において、鉛直方向に沿って、互いに独立した複数(例えば、2つ)の下側パッカー72が配置されている構成としても構わない。
【0024】
着脱ベース部70は、電極挿通孔に中心電極cが挿通された状態で、固定ベース部60に装着されている。着脱ベース部70が固定ベース部60に装着されている状態では、中心電極cの下端部が、着脱ベース部70の下端から下方に向かって突出している。ここで、中心電極cの下端部の外周面には、ネジ溝(図示せず)が形成されている。そして、着脱ベース部70は、中心電極cの下端部のネジ溝に固定用ナットNが螺合されることによって、固定ベース部60に対して固定されている。
また、着脱ベース部70が固定ベース部60に装着されている状態では、枠体61(上側パッカー62)の下面と、枠体71(下側パッカー72)の上面とが、所定の間隔で配置される。これにって、枠体61(上側パッカー62)の下面と、枠体71(下側パッカー72)の上面との間において、地下水が流れる計測空間が構成される。
そして、センサー部30では、計測空間において、後述する透水体81が配置されることによって、計測部80が構成されている。
【0025】
計測部80(計測空間)には、透水体81が配置されている。透水体81は、計測空間の略全体を埋めるように配置されている。そして、計測部80(計測空間)では、透水体81によって、地下水が、誘導(センターライズ)・整流される。
透水体81は、透水性を有する材料により形成されている。特に、透水体81は、各パッカー62,72を形成する材料と比較して、透水性が高い(透水係数が大きい)材料により形成されている。具体的には、透水体81は、弾性を有する連続気泡体により形成されている。本実施形態では、透水体81は、不織布、連続気泡構造(連通気泡構造)のフォーム材(スポンジ)等により形成されている。
透水体81は、円盤状に形成されている。透水体81は、その中心軸に沿って、貫通孔が設けられている。透水体81の鉛直方向の寸法は、計測空間の鉛直方向の寸法(枠体61の下面と枠体71の下面との間の寸法)より大きくなっている。これによって、透水体81が計測空間に配置された際に、透水体81の弾性(収縮)により、透水体81の上面と枠体61(上側パッカー62)の下面とを密着させることができるとともに、透水体81の下面と枠体71(下側パッカー72)の上面とを密着させることができる。
また、透水体81の外径は、各パッカー62,72の外径と略同一となている。すなわち、透水体81の外径は、ケーシングパイプP2(特に、後述するスクリーン部5)の内径より大きくなっている。これによって、測定器本体10がケーシングパイプP2の内側に挿入された際に、透水体81の弾性(収縮)により、透水体81の外周面とケーシングパイプP2(スクリーン部5)の内周面とを密着させることができる。
なお、透水体81の外径を、各パッカー62,72の外径より大きくしても構わない。特に、透水体81の外径を、スクリーン部5の外径より大きくしても構わない。これによって、透水体81がスクリーン部5の内側に挿入された際に、より確実に、後述する横線材yの内周面と透水体81の内周面とを密着させることが可能となる。
【0026】
透水体81は、その貫通孔に中心電極cが挿通されるとともに、その内部に各周辺電極p1~p12が挿通された(突き刺さった)状態で、計測空間に配置される。これによって、計測部80(計測空間)内では、鉛直方向に沿う視点において、中心電極cが中心に配置されるとともに、12本の周辺電極p1~p12が、中心電極cを中心する一の円周上に配置される。
着脱ベース部70が固定ベース部60に装着されている状態では、上側パッカー62の下面と透水体81の上面とが密着するとともに、下側パッカー72の上面と透水体81の下面とが密着する。すなわち、鉛直方向に沿って、上側パッカー62、透水体81及び下側パッカー72が、連続して配置される。
ここで、上記のように、透水体81は、各パッカー62,72を形成する材料と比較して、透水性が高い(透水係数が大きい)材料により形成されている。すなわち、透水体81の内部は、各パッカー62,72の内部と比較して、流体(地下水及び蒸留水T)が流れ易くなっている。これによって、計測空間(透水体81)内に流入した地下水(または、蒸留水T)の各パッカー62,72側への流出が抑制される。したがって、計測空間において、地下水(または、蒸留水T)の上昇流又は下降流が発生することを抑制することが可能となる。
【0027】
ここで、透水体81を交換する際には、まず、中心電極cの下端部のネジ溝に螺合されている固定用ナットNを取り外す。また、固定ベース部60の中心電極cに挿通されている着脱ベース部70を、固定ベース部60から離脱させる。そして、固定ベース部60の中心電極cに挿通されている透水体81を、固定ベース部60から離脱させる。
その後、新しい透水体81を、固定ベース部60の中心電極cに挿通させる。この際、中心電極cは、透水体81の貫通孔に挿通される。一方、各周辺電極p1~p12は、透水体81に突き刺すことにより、透水体81の内部に挿通される。
その後、着脱ベース部70を、固定ベース部60の中心電極cに挿通させる。この際、中心電極cは、着脱ベース部70の電極挿通孔に挿通される。さらに、着脱ベース部70の下端から突出する中心電極cの下端部のネジ溝に、固定用ナットNを螺合する。これによって、透水体81の交換が完了する。
【0028】
蒸留水制御部40は、枠体41と、枠体41の内側に配置された蒸留水圧送路42、電磁弁43及び圧力計44と、を含んで構成されている。
枠体41は、略円筒状に形成されている。本実施形態では、枠体41は、ステンレスにより形成されている。枠体41の下端部には、枠体61の上端部が嵌合されている。
図5に示すように、蒸留水圧送路42は、後述する蒸留水タンク52と、中心電極cの上端(開口)とを、互いに接続している。蒸留水圧送路42は、上流側圧送路42aと、下流側圧送路42bと、を含んで構成されている。上流側圧送路42aは、蒸留水タンク52と、電磁弁43の上流側の接続路(接続口)とを、互いに接続している。下流側圧送路42bは、電磁弁43の下流側の接続路(接続口)と、中心電極cの上端(開口)とを、互いに接続している。各圧送路42a,42bは、ナイロンチューブ等により形成されている。
電磁弁43は、ソレノイドバルブとなっている。電磁弁43には、制御基板91(具体的には、電磁弁制御回路)からの制御信号が入力される。そして、電磁弁43は、電磁弁制御回路からの制御信号の入力に応じて、上流側の接続路と下流側の接続路とを、互いに連通させ、電磁弁制御回路からの制御信号の停止に応じて、上流側の接続路と下流側の接続路とを、互いに遮断する。
【0029】
圧力計44は、下流側圧送路42bに配置されている。圧力計44は、下流側圧送路42bに存在する蒸留水T(または、地下水)の圧力を検出(計測)することによって、計測空間(計測部80)に存在する地下水の圧力を検出する。圧力計44は、制御基板91(具体的には、圧力計アンプ)に対して、検出信号を出力する。
【0030】
蒸留水タンク収容部50は、枠体51と、枠体51の内側に配置された蒸留水タンク52と、を含んで構成されている。
枠体51は、略円筒状に形成されている。本実施形態では、枠体51は、ステンレスにより形成されている。枠体51の下端部には、枠体41の上端部が嵌合されている。
蒸留水タンク52は、枠体51の内側に配置されている。蒸留水タンク52には、トレーサ(追跡子)が収容されている。ここで、トレーサは、計測対象とする地下水の水質に応じて選定される。すなわち、トレーサとして、計測対象とされる地下水に対して比抵抗が異なる溶液(蒸留水、食塩水等)が選定される。本実施形態では、トレーサとして、蒸留水を用いている。
蒸留水タンク52は、圧力チューブPを介して、コントローラと接続されている。すなわち、コントローラには、窒素ボンベBを着脱することが可能な圧力調整器Rが配置されている。窒素ボンベBには、窒素ガスが収容されている。そして、圧力チューブPの一方側の端部が、蒸留水タンク52のの上端部に接続されるとともに、圧力チューブPの他方側の端部が、圧力調整器Rに接続されている。これによって、圧力調整器Rのバルブを操作することで、窒素ボンベBに収容されている窒素ガスを、バルブの操作量に応じた圧力で、蒸留水タンク52内に圧送することができる。そして、蒸留水タンク52の内部を窒素ガスで加圧した状態で、電磁弁43を開放することにより、蒸留水タンク52に収容されている蒸留水Tを、所定の圧力で、中心電極c内に圧送することができる。本実施形態では、圧力チューブPとして、ナイロンチューブが用いられている。
【0031】
図6に示すように、基板ユニット12は、枠体90と、枠体90の内側に配置された制御基板91と、枠体90の上端部に接続されたロッドレジューサー92と、を含んで構成されている。
枠体90は、略円筒状に形成されている。本実施形態では、枠体90は、ステンレスにより形成されている。枠体90の下端部には、センサーユニット11(枠体51)の上端部が嵌合されている。
制御基板91には、各種の制御回路(図示せず)が配置されている。本実施形態では、制御基板91には、通信回路、12チャンネルアンプ、圧力計アンプ、温度計アンプ、3次元磁気方位センサー、電磁弁制御回路等が配置されている。
また、制御基板91には、電源線(メタル線)を介して、コントローラ(具体的には、バッテリー)から電力が供給される。
【0032】
通信回路は、コントローラとの相互通信を制御する。本実施形態では、通信回路は、2本の信号線(メタル線)を介して、コントローラに接続(電気的に接続)されている。そして、通信回路は、コントローラからの制御指令(制御信号)を受信する。そして、制御基板91では、通信回路により受信された制御指令の内容に応じた処理が実行される。また、通信回路は、12チャンネルアンプ、圧力計アンプ、温度計アンプ、3次元磁気方位センサー等から入力された各種情報を、コントローラに対して出力する。
12チャンネルアンプは、後述する各周辺電極p1~p12と中心電極cとの間における電圧の印加を制御するとともに、各周辺電極p1~p12と中心電極cとの間における地下水の比抵抗を検出する。
12チャンネルアンプは、各周辺電極p1~p12と中心電極cとの間に、交流電圧を印加する。また、12チャンネルアンプは、各周辺電極p1~p12と中心電極cとの間の地下水の比抵抗を検出(測定)する。そして、12チャンネルアンプは、検出した地下水の比抵抗を示す情報を、通信回路を介して、コントローラに対して出力する。
【0033】
圧力計アンプは、圧力計44から入力された検出信号に基づいて、圧力を算出する。そして、算出した圧力を示す情報を、通信回路を介して、コントローラに対して出力する。
温度計アンプは、温度計63から入力された検出信号に基づいて、温度を算出する。そして、算出した温度を示す情報を、通信回路を介して、コントローラに対して出力する。
3次元磁気方位センサーは、磁気センサー(ホール素子等)を含んで構成されている。本実施形態では、3次元方位センサーは、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに向けて配置された、3つの磁気センサーによって、地磁気を検出する。
3次元磁気方位センサーは、3つの磁気センサーにより検出した地磁気に基づいて、中心電極cを中心とする各周辺電極p1~p12が配置されている方位(磁北に対する角度)を算出する。本実施形態では、3次元磁気方位センサーは、周辺電極p1の方位を算出する。そして、周辺電極p1について算出した方位を示す情報を、通信回路を介して、コントローラに対して出力する。
電磁弁制御回路は、コントローラ(具体的には、バルブスイッチS)からのバルブの開放を指定する制御指令の入力に応じて、電磁弁43に対する制御信号の出力を開始する。また、電磁弁制御回路は、コントローラ(具体的には、バルブスイッチS)からのバルブの閉鎖を指定する制御指令の入力に応じて、電磁弁43に対する制御信号の出力を停止する。
【0034】
ロッドレジューサー92は、略円筒状に形成されている。実施形態では、ロッドレジューサー92は、ステンレスにより形成されている。ロッドレジューサー92の下端部には、枠体90の上端部が嵌合されている。
ロッドレジューサー92の側面には、雌型複合コネクターC1が配置されている。本実施形態では、測定器本体10とコントローラとが、1本の複合ケーブル(図示せず)を介して、互いに接続される。複合ケーブルは、圧力チューブPと、電源線と、2本の信号線と、を含む複数のケーブルを纏めて、1本のケーブルとして構成されている。複合ケーブルの各端には、雄型複合コネクターが配置されている。
複合ケーブルは、ケーブルドラムDに巻回されている。そして、複合ケーブルの一方側の端部に配置された雄型複合コネクターを、ロッドレジューサー92に配置された雌型複合コネクターC1に嵌合させるとともに、複合ケーブルの他方側の端部に配置された雄型複合コネクターを、コントローラに配置された雌型複合コネクターに嵌合させることによって、測定器本体10とコントローラとが、互いに接続される。
また、ロッドレジューサー92の上端には、挿入用ロッド20の下端部が嵌合される嵌合部Fが設けられている。
【0035】
挿入用ロッド20は、棒状に形成されている。ここで、測定器本体10をケーシングパイプP2内に挿入する際には、測定器本体10を配置する深さに応じて、所定数の挿入用ロッド20が、測定器本体10に接続される。
各挿入用ロッド20は、アルミにより形成されている。特に、各挿入用ロッド20の内部には、外部と遮断された空気室が設けられている。これによって、測定器本体10を地下水で満たされているケーシングパイプP2内に挿入する際に、各挿入用ロッド20に浮力が発生することで、測定器本体10を下ろすために必要となる力を軽減することが可能となる。同様に、測定器本体10を地下水で満たされているケーシングパイプP2の内側から抜き出す際に、各挿入用ロッド20に浮力が発生することで、測定器本体10を上げるために必要となる力を軽減することが可能となる。
各挿入用ロッド20の一方側の端部は、他の挿入用ロッド20の他方側の端部に嵌合することが可能な嵌合部(図示せず)が設けられている。これによって、複数の挿入用ロッド20を、直線状に、互いに連結することが可能となっている。
【0036】
コントローラは、通信装置と、演算装置(図示せず)と、圧力調整器Rと、バルブスイッチSと、バッテリーと、気圧計と、を含んで構成されている。
通信装置は、制御基板91(通信回路)から入力した各種情報(12チャンネルアンプにより検出された地下水の比抵抗を示す情報、圧力計アンプにより算出された圧力を示す情報、温度計アンプにより算出された温度を示す情報、気圧計にり算出された気圧情報、圧力計アンプにより算出された圧力と気圧計アンプにより算出された気圧との差を算出した水圧(差圧)情報、3次元磁気方位センサーにより算出された周辺電極p1の方位を示す情報等を、適宜、演算装置に対して出力する。
本実施形態では、演算装置として、タッチ操作可能なディスプレイ(表示装置)を備えてなるタブレット型のパーソナルコンピュータ(以下、「タブレットPC」とする)が用いられている。そして、通信装置は、制御基板91(通信回路)から入力した各種情報を、無線通信(Bluetooth(登録商標)等)により、タブレットPCに対して送信する。
そして、タブレットPCは、入力された情報に応じた演算処理を実行する。具体的には、タブレットPCは、各周辺電極p1~p12について検出された地下水の比抵抗、圧力計アンプにより算出された圧力、気圧計アンプにより算出された気圧、及び、温度計アンプにより算出された温度のそれぞれを、経時的に記録(記憶)する。
また、各周辺電極p1~p12について検出された地下水の比抵抗の経時的な変化、圧力計アンプにより算出された圧力と気圧計アンプにより算出された気圧との差である水圧(差圧)の経時的な変化、及び、温度計アンプにより算出された温度の経時的な変化のそれぞれを、ディスプレイにおいて表示する。
特に、タブレットPCは、各周辺電極p1~p12について検出された地下水の比抵抗の経時的な変化と、各周辺電極p1~p12の方位と、に基づいて、地下水(水流)の流速及び流向を算出する。そして、算出した地下水流の流速及び流向を、ディスプレイにおいて表示する。
【0037】
圧力調整器Rは、窒素ボンベBを着脱することが可能となっている。そして、圧力調整器Rは、バルブを操作することにより、窒素ボンベBに収容されている窒素ガスを、所定の圧力で、圧力チューブPを介して、蒸留水タンク52内に圧送する。
バルブスイッチSは、開放状態又は閉鎖状態に切り替えが可能な操作部(図示せず)を備えている。そして、バルブスイッチSは、操作部が開放状態に切り替えられたことに応じて、バルブの開放を指定する制御指令を、制御基板91(電磁弁制御回路)に対して出力する。また、バルブスイッチSは、操作部が閉鎖状態に切り替えられたことに応じて、バルブの閉鎖を指定する制御指令を、制御基板91(電磁弁制御回路)に対して出力する。
バッテリーは、コントローラに対して電源を供給するとともに、電源線を介して制御基板91に対して電源を供給する。
【0038】
(ケーシングパイプP2の構成)
次に、本発明の実施形態に係るケーシングパイプP2を説明する。
図7は、スクリーン部の鉛直面に沿う断面図である。
図8は、スクリーン部の部分断面図である。
なお、
図8(a)には、スクリーン部2の水平面に沿う断面が示されている。
図8(b)には、
図8(a)に示すA-A線に沿う断面が示されている。
図8(c)には、
図8(a)に示すB-B線に沿う断面が示されている。
図1に示すように、ケーシングパイプP2は、上側パイプ2と、スクリーンパイプ3と、下側パイプ4と、を含んで構成されている。上側パイプ2、スクリーンパイプ3及び下側パイプ4は、互いに一連となるように接続されている。
上側パイプ2は、円筒状に形成されている。本実施形態では、上側パイプ2として、塩化ビニル管が用いられている。上側パイプ2の下端部の内周面には、ネジ溝が形成されている。
下側パイプ4は、底面を有する円筒状に形成されている。本実施形態では、下側パイプ4として、塩化ビニル管が用いられている。下側パイプ4の下端部の内周面には、ネジ溝が形成されている。
【0039】
スクリーンパイプ3は、円筒状に形成されている。
図7に示すように、スクリーンパイプ3には、スクリーン部5が設けられている。スクリーン部5は、円筒状のスクリーンとなっている。すなわち、スクリーン部5には、その全周に亘って、複数の貫通孔が略均一に設けられている。
ここで、スクリーン部5の開口率は、25%~35%の範囲内、好ましくは、27%~33%の範囲内に設定する。本実施形態では、スクリーン部5の開口率は、30%に設定されている。
【0040】
図7及び
図8に示すように、スクリーン部5は、複数の縦線材xと、少なくとも1本の横線材yと、を組み合わせて構成されている。本実施形態では、スクリーン部5は、12本の縦線材xと、3本の横線材yと、を組み合わせて構成されている。すなわち、12本の縦線材xと、3本の横線材yと、を組み合わせることによって、スクリーン部5の外周壁が形成されている。
各縦線材xは、円柱状に形成されている。
図7に示すように、各縦線材xは、スクリーンパイプ3(スクリーン部5)の中心軸と平行に、直線状に延びている。また、12本の縦線材xは、互いに並行している。
図8(a)に示すように、スクリーンパイプ3の中心軸に沿う視点において、12本の縦線材xは、スクリーンパイプ3の軸心を中心とする一の円周上において、互いに等角度間隔(本実施形態では、30°間隔)で配置されている。
各横線材yは、平板状に形成されている。
図7に示すように、各横線材yは、スクリーンパイプ3の軸心を中心として、螺旋状に巻回されている。そして、スクリーン部5では、各横線材yにより、12本の縦線材xが、互いに連結されている。すなわち、各横線材yは、12本の縦線材zのうち、互いに隣り合う2本の縦線材xを、順次、連結するように、スクリーンパイプ3の軸心を中心として、螺旋状に巻回されている。そして、各横線材yと各縦線材xとが交差する部分において、当該横線材yと当該縦線材xとが、互いに接続されている。
【0041】
特に、
図8(a)及び(b)に示すように、縦線材xと横線材yとの各接続部では、縦線材xが、横線材yの厚み方向(スクリーンパイプ3の外周壁の厚み方向)の内側に埋設されている。これによって、
図8(b)に示すように、スクリーン部5では、縦線材xが、横線材yに対して、スクリーンパイプ3の軸心側に突出していない。換言すると、スクリーン部5では、横線材yの内周面が、縦線材xに対して、スクリーンパイプ3の軸心側の位置に配置されている。したがって、流速流向計1の計測部80(透水体81)がスクリーン部5内に配置されたときに、計測部80における上昇流又は下降流の発生を抑制することが可能となる。
すなわち、縦線材xが、横線材yに対して、スクリーンパイプ3の軸心側に向かって突出している場合には、流速流向計1の計測部80(透水体81)がスクリーン部5内に配置されたときに、横線材yに対して突出している縦線材xの各側方において、透水体81との間に隙間が発生し易くなり、当該隙間を介して、縦線材xに沿う上昇流又は下降流が発生する恐れがある。
これに対して、スクリーン部5では、縦線材xが、横線材yに対して、スクリーンパイプ3の軸心側に向かって突出していないため、流速流向計1の計測部80(透水体81)がスクリーン部5内に配置されたときに、横線材yの全周に亘って、横線材yの内周面と透水体81の外周面とを密着させることができる。したがって、スクリーン部5の内周面と透水体81の外周面との間における隙間(鉛直方向に沿って延びる隙間)の発生を抑制することができ、計測部80における上昇流又は下降流の発生を抑制することが可能となる。
また、
図8(b)及び(c)に示すように、各横線材yは、鉛直面に沿う断面が、くさび形(テーパー状)に形成されている。すなわち、各横線材yの鉛直方向の厚みが、スクリーンパイプ3の軸心側に向かって、徐々に小さくなっている。
これによって、スクリーン部5の外側に付着している粒子を、逆洗により容易に離脱させることが可能となる。
【0042】
本実施形態では、スクリーンパイプ3は、ピーク(Poly Ether Ether Ketone)、アクリル等の樹脂により形成されている。そして、スクリーンパイプ3は、3Dプリンタにより形成されている。
スクリーンパイプ3の上端部の外周面には、上側パイプ2の下端部の内周面に形成されているネジ溝に螺合するネジ山が形成されている。また、スクリーンパイプ3の下端部の外周面には、下側パイプ4の上端部の内周面に形成されているネジ溝に螺合するネジ山が形成されている。
上側パイプ2、スクリーンパイプ3及び下側パイプ4では、内径及び外径が、互いに同一となっている。
そして、上側パイプ2の下端部の内周面に形成されているネジ溝に、スクリーンパイプ3の上端部の外周面に形成されているネジ山を螺合するとともに、下側パイプ4の上端部の内周面に形成されているネジ溝に、スクリーンパイプ3の下端部の外周面に形成されているネジ山を螺合することによって、ケーシングパイプP2が構成される。
【0043】
(流速流向計1を用いて地下水の流れを計測する際の手順)
次に、流速流向計1を用いて地下水の流れを計測する際の手順を説明する。
図1に示すように、流速流向計1を用いて地下水の流れを計測するには、まず、地盤Gにおいて、ボーリング孔h(裸孔)を掘削する。この際、ボーリング孔hは、地盤G内における地下水の流れを計測する対象とされている領域(以下、「対象領域」とする)より深い位置まで掘削される。
次に、ケーシングパイプP2を、ボーリング孔h内に設置する。この際、スクリーン部5が、対象領域と同一の深さに配置される。
次に、ボーリング孔h内におけるスクリーン部5の下端より深い深度において、ボーリング孔hの孔壁(内周面)とケーシングパイプP2の外周面との間に、ベントナイト(粘性土)等の孔内充填材f4を充填する。
次に、ボーリング孔h内におけるスクリーン部5の上端から下端までの深度において、ボーリング孔hの孔壁(内周面)とスクリーン部3の外周面との間に、珪砂等の孔内充填材f2を充填する。
次に、ボーリング孔h内におけるスクリーン部5の上端より浅い深度において、ボーリング孔hの孔壁(内周面)とケーシングパイプP2の外周面との間に、ベントナイト(粘性土)等の孔内充填材f4を充填する。
次に、測定器本体10を、ケーシングパイプP2内に設置する。この際、複数本の挿入用ロッド20を互いに連結することによって、計測部80が、対象領域と同一の深さに配置される。これによって、測定器本体10の設置が完了する。
次に、圧力調整器Rのバルブを開放して、蒸留水タンク52内を加圧した後に、バルブスイッチSを開放状態に切り替えて、所定量の蒸留水Tを、中心電極cの排出口eから放出する。これによって、中心電極c内及び蒸留水圧送路42内の空気が排出されて、圧力計44による圧力の検出が可能となる。
【0044】
その後、タブレットPCのディスプレイに表示される圧力計アンプにより算出された圧力の経時的な変化、及び、温度計アンプにより算出された温度の経時的な変化を監視し、地下水の圧力及び温度が安定するのを待つ。そして、地下水の圧力及び温度が安定したことを確認した後に、地下水の流れの計測を開始する。なお、地下水の圧力及び温度が安定するのを待つ理由は、対象領域における地下水の流れが安定(間隙水圧及び水温が安定)するのを待つためである。
地下水の流れの計測を開始する際には、まず、バルブスイッチSを開放状態に切り替えて、所定量の蒸留水Tを、中心電極cの排出口eから放出する。これによって、中心電極c内の地下水が蒸留水Tに置換され、開口部64内に蒸留水Tが配置される。
次に、開口部64内に蒸留水Tを配置した後の各周辺電極p1~p12について検出された地下水の比抵抗の経時的な変化を記憶する。そして、各周辺電極p1~p12について検出された地下水の比抵抗の経時的な変化と、3次元磁気方位センサーにより検出された周辺電極p1の方位に基づいて、地下水(水流)の流速及び流向が算出される。
【0045】
(地下水の流速及び流向を計測する原理)
次に、地下水の流速及び流向を計測する原理を説明する。
図9は、地下水の流速及び流向を計測する原理の説明図である。
なお、
図9(a)には、時間の経過により変化する蒸留水Tの分布を示している。すなわち、
図9(a)では、「a」が、初期状態を示し、「b」が、初期状態からt1時間が経過した第1状態を示し、「c」が、初期状態からt2時間が経過した第2状態を示し、「d」が、初期状態からt3時間が経過した第3状態を示し、「e」が、初期状態からt4時間が経過した第4状態を示している(t1<t2<t3<t4とする)。
図9(b)には、時間の経過と、地下水の流れに対して平行に配置された各周辺電極p1~p12と中心電極cとの間(この例では、周辺電極p7と中心電極cとの間とする)の地下水の比抵抗と、の関係を示している。
流速流向計1では、比抵抗測定方式により、地下水の流れが計測される。すなわち、流速流向計1では、地下水の流れを計測する際に、まず、中心電極cの開口部64内に、蒸留水Tが配置される(初期状態「a」)。そして、開口部64内に蒸留水Tが配置されると、時間の経過とともに、地下水の流れにより蒸留水Tが移動し、計測空間(計測部80)内の比抵抗が変化する。そして、計測空間(計測部80)内における比抵抗の変化の過程を、12本の周辺電極p1~p12により検出し、検出結果に基づいて地下水の流速及び流向が算出される。
【0046】
具体的には、
図9(a)に示すように、初期状態「a」では、蒸留水Tが開口部64の外側に流出していない。これによって、周辺電極p7と中心電極cとの間の比抵抗値は、地下水の比抵抗値を示す。したがって、
図9(b)に示すように、初期状態「a」では、周辺電極p7と中心電極cとの間の比抵抗値は、地下水の比抵抗(初期値)となる。
一方、
図9(a)に示すように、第1状態「b」~第3状態「d」では、時間の経過により、蒸留水Tが、地下水の流れに乗って、周辺電極p7側に向かって移動する。これによって、周辺電極p7と中心電極cとの間の比抵抗値は、地下水及び蒸留水Tが混合された溶液の比抵抗値を示す。したがって、
図9(b)に示すように、周辺電極p7と中心電極cとの間の比抵抗値は、第1状態「b」~第3状態「d」のように時間とともに変化する。
一方、
図9(a)に示すように、第4状態「e」では、蒸留水Tが、周辺電極p7の外側(中心電極cに対して逆側)に移動する。これによって、再び、周辺電極p7と中心電極cとの間の比抵抗値は、地下水の比抵抗値を示す。したがって、
図9(b)に示すように、第4状態「e」では、周辺電極p7と中心電極cとの間の比抵抗値は、再び、地下水の比抵抗(初期値)となる。
流速流向計1では、30°の角度間隔で、12本の周辺電極p1~p12が配置されている。これによって、地下水の流れを計測する際には、12本の周辺電極p1~p12のそれぞれについて、比抵抗のデータを得ることができる。そして、流速流向計1では、12本の周辺電極p1~p12に係る比抵抗のデータに基づいて、地下水の流速及び流向が算出される。
【0047】
(流速流向計1及びケーシングパイプP2の作用・効果)
次に、流速流向計1及びケーシングパイプP2の作用・効果を説明する。
流速流向計1では、一対のパッカー62,72が、それぞれ、連続気泡体(スポンジ)等の透水性を有する材料により形成されている。これによって、エアパッカーを備える必要がなくなり、測定器本体10を小型化することが可能となる。また、測定器本体10をケーシングパイプP2の内側に挿入する際に、各パッカー62,72の下側に存在する空気又は地下水を、各パッカー62,72の上側に抜く(透過させる)ことができる。したがって、ケーシングパイプP2内への測定器本体10の設定を容易化することが可能となる。
また、流速流向計1では、エアパッカーが不要となることに伴い、地上に配置されたボンベからエアパッカーに気体を圧送するためのチューブが不要となる。これによって、地上と測定器本体10との間に配置されるチューブの数を減らすことが可能となる。また、蒸留水Tを計測部80の中心電極c内に置換するためのピストン構造を廃したことにより、ピストンを駆動させるチューブが不要となる。
さらに、流速流向計1では、測定器本体10において、蒸留水タンク52が配置されている。これによって、地上から測定器本体10に蒸留水Tを圧送するためのチューブが不要となる。したがって、地上と測定器本体10との間に配置されるチューブの数を更に減らすことが可能となる。
特に、流速流向計1では、計測空間(計測部80)において、不織布、連続気泡体(スポンジ)等の透水体81が配置されている。これによって、透水体81により、地下水を誘導・整流することができる。したがって、計測部80にガラスビーズを充填する必要がなくなり、ガラスビーズを充填・交換する手間を削減することが可能となる。また、計測時に、計測空間に珪砂を充填する必要がなくなり、ケーシングパイプP2の底部において砂溜まりが出来ることを防止することが可能となる。
また、流速流向計1では、透水体81が、各パッカー62,72を形成する材料と比較して、透水性が高い材料により形成されている。これによって、透水体81内に流入した地下水の各パッカー62,72側への流出が抑制される。したがって、計測空間における上昇流又は下降流の発生を抑制することができ、計測精度を向上することが可能となる。
【0048】
また、流速流向計1では、中心電極cが、開口部64と、開口部64より下流側に設けられた排出口eと、を有している。特に、開口部64が、計測空間に設けられ、排出口eが、蒸留水Tを、下側パッカー72より下方の領域に排出することが可能となるように設けられている。これによって、中心電極c内に蒸留水Tを圧送し、蒸留水Tを排出口eから排出させることによって、開口部64の内側において、蒸留水Tを配置(置換)することができる。そして、計測空間を流れる地下水によって、開口部64の内側に配置されている蒸留水Tを、開口部64の外側に移動させることができる。したがって、測定器本体10において、地下水を蒸留水Tに置換するためのピストンを設置する必要がなくなり、測定器本体10を小型化することが可能となる。
【0049】
また、ケーシングパイプP2のスクリーン部5では、縦線材xと横線材yとの接続部において、縦線材xが、横線材yの厚み方向の内側に埋設されている。これによって、スクリーン部5内に透水体81が配置されたときに、計測空間における上昇流又は下降流の発生を抑制することが可能となる。
すなわち、スクリーン部5では、縦線材xと横線材yとの接続部において、縦線材xが、横線材yに対して中心側に向かって突出していないため、スクリーン部5内に透水体81が配置されたときに、横線材yの全周に亘って、横線材yの内周面と透水体81とを接触させることができる。したがって、スクリーン部5の内周面と透水体81との間における隙間の発生を抑制することができ、計測空間における上昇流又は下降流の発生を抑制することが可能となる。
特に、流速流向計1によれば、測定器本体10の小型化が可能となる結果、ボーリング孔h及びケーシングパイプP2の孔径を小さくすることが可能となる。したがって、計測に必要となる費用を低減することが可能となる。
【0050】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態では、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、上記実施形態では、流速流向計1を用いて地下水の流れを計測する際に、測定器本体10が、ケーシングパイプP2内に設置される。
しかしながら、ケーシングパイプP2を設置することなく、測定器本体10を、ボーリング孔h(裸孔)の内側に設置する構成としても構わない。
この際、流速流向計1では、上記のように測定器本体10を小型化、特に、鉛直方向の寸法を小さくすることができる。これによって、ボーリング孔hに孔曲りが発生している場合であっても、ボーリング孔h内への測定器本体10の挿入を容易に実行することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 流速流向計
10 測定器本体
11 センサーユニット
12 基板ユニット
20 挿入用ロッド
30 センサー部
40 蒸留水制御部
50 蒸留水タンク収容部
52 蒸留水タンク
62 上側パッカー
64 開口部
72 下側パッカー
80 計測部
81 透水体
91 制御基板
c 中心電極
e 排出口
p1~p12 周辺電極
T 蒸留水