(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】リチウムイオンバッテリ用の複合金属酸化物カソードの製造のための高密度前駆体
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20220228BHJP
C01G 51/00 20060101ALI20220228BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220228BHJP
【FI】
H01M4/525
C01G51/00 A
H01M4/505
(21)【出願番号】P 2017526036
(86)(22)【出願日】2015-07-01
(86)【国際出願番号】 US2015038890
(87)【国際公開番号】W WO2016018561
(87)【国際公開日】2016-02-04
【審査請求日】2017-03-29
【審判番号】
【審判請求日】2019-12-05
(32)【優先日】2014-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503260918
【氏名又は名称】アップル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Apple Inc.
【住所又は居所原語表記】One Apple Park Way,Cupertino, California 95014, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ダイ ホーンリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン クリストファー エス
(72)【発明者】
【氏名】ウー フイミン
(72)【発明者】
【氏名】カーター ジョン デイヴィッド
【合議体】
【審判長】平塚 政宏
【審判官】池渕 立
【審判官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-087327(JP,A)
【文献】特開2005-289700(JP,A)
【文献】国際公開第2013/048048(WO,A1)
【文献】特開2005-101003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/36-4/62
H01M4/13-4/1399
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード活物質組成物用の前駆体共沈物を製造するための方法であって、
硫酸マンガン、硫酸コバルト及び下記Mの硫酸塩を含む水溶液を調製することと、
NH
4OH溶液を前記水溶液に加え、前駆体共沈物の不規則な二次粒子を含む懸濁液を形成することであって、前記前駆体共沈物がMn
xM
yCo
z(OH)
2
(式中、MはNi、Mg、又はこれらの組み合わせであって、
0.01≦x≦0.04、0<y≦0.02、0.94≦z<1.00、かつx+y+z=1である)
によって表される組成を有することと、
塩基性溶液を前記懸濁液に加えることにより、10~12の範囲の一定のpHを前記懸濁液において維持することと、
前記懸濁液を撹拌し、前記不規則な二次粒子から、メジアン粒径が5マイクロメートルよりも大きい、球状の共沈粒子を形成すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記懸濁液から前記球状の共沈粒子を濾取することと、
前記濾取した球状の共沈粒子を洗浄することと、
前記球状の共沈粒子を乾燥することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記懸濁液が3~72時間撹拌される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記懸濁液が連続的に撹拌される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁液が30~65℃の範囲の一定温度で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基性溶液が、アルカリ金属水酸化物、炭酸アルカリ、及びシュウ酸アルカリのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基性溶液中の前記アルカリ金属水酸化物の濃度が、0.5モル/L~10モル/Lの範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記水溶液中の前記硫酸マンガン、前記Mの硫酸塩、及び前記硫酸コバルトの濃度の合計が、0.5モル/L~5モル/Lの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
Mn
xM
yCo
z(OH)
2
(式中、MはNi、Mg、又はこれらの組み合わせであって、
0.01≦x≦0.04、0<y≦0.02、0.94≦z<1.00、かつx+y+z=1である)
によって表される組成を有し、そして、
メジアン粒径が5マイクロメートルよりも大きい、球状の共沈粒子を含む、カソード活物質組成物用の前駆体。
【請求項10】
x=0.04、y=0.02、z=0.94であり、かつMがNiである、請求項9に記載の前駆体。
【請求項11】
x=0.04、y=0.02、z=0.94であり、かつMがMgである、請求項9に記載の前駆体。
【請求項12】
x=0.02、y=0.01、z=0.97であり、かつMがNiである、請求項9に記載の前駆体。
【請求項13】
x=0.02、y=0.02、z=0.96であり、かつMがNiである、請求項10に記載の前駆体。
【請求項14】
前記前駆体が、溶液共沈反応を用いて形成される、請求項9に記載の前駆体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(技術分野)
本開示の実施形態は、充電式バッテリに関する。より具体的には、本開示の実施形態は、リチウムイオンバッテリ用の複合積層金属酸化物カソードの製造のための高密度前駆体に関する。
【0002】
(関連技術に関する説明)
充電式バッテリは、様々な家庭用、医療用、航空宇宙産業、防衛及び/又は輸送の用途において、エネルギの蓄積のために広く用いられている。最も一般に用いられるタイプの充電式バッテリはリチウムバッテリであり、これには、リチウムイオンバッテリ又はリチウムポリマーバッテリが含まれ得る。バッテリ駆動デバイスがますます小型化し、かつより強力になるにつれて、これらのデバイスに給電するバッテリはより小さい体積でより多くのエネルギを蓄積する必要がある。したがって、家庭用電子デバイス用途向けの二次(すなわち、充電式)バッテリの重要要件は、高い体積エネルギ密度である。
【0003】
二次リチウムイオンバッテリは、安全に使用することができる、高い比容量、良好な循環性、及び高いエネルギ密度を提供する。二次バッテリは、正極(カソード)、負極(アノード)、電解質、及びセパレータを含む。通常、家庭用電子デバイス向けの現在の市販のカソードは、積層コバルト酸リチウム、すなわちLiCoO2である。カソード向けに高エネルギ密度を達成するため、コバルト酸リチウムは大きな粒径を有し、均一な分布及び小さな表面積を伴わなくてはならない。好ましくは、メジアン粒径D50は15マイクロメートルより大きく、かつBrunauer-Emmett-Teller(BET)表面積は0.5m2/g未満である。
【0004】
現在のところ、LiCoO2は、Co3O4をLi2CO3と高温(800~1020℃)で焼し、大きな粒子を得ることによって調製される。しかしながら、高温を用いて大きな粒子を生成することにより、均一な粒度分布、バッチ間の再現性、及び/又は化学量論の制御を確保するのが困難となる場合がある。
【0005】
したがって、均一な粒子分布、バッチ間の再現性、及び/又は化学量論の制御を伴う、高体積密度の活物質組成物を製造するための技術により、ポータブル電子デバイスにおけるバッテリの使用を向上させることができる。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態は、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物の製造に関する。前駆体共沈物の製造中に、硫酸マンガン及び硫酸コバルトのうちの少なくとも1つを含有する水溶液が調製され、反応器に送り込まれる。次に、NH4OH溶液をこの水溶液に加え、前駆体共沈物の不規則な二次粒子を含有する粒子溶液を形成する。また、塩基性溶液を粒子溶液に加えることにより、10~12の範囲の一定のpHを微粒子溶液において維持する。
【0007】
一部の実施形態では、粒子溶液の撹拌も行い、不規則な二次粒子から、球状の共沈粒子を形成する。
【0008】
一部の実施形態では、球状の共沈粒子を粒子溶液から濾取し、洗浄し、乾燥する。
【0009】
一部の実施形態では、粒子溶液を30~65℃の範囲の一定温度で維持する。
【0010】
一部の実施形態では、粒子溶液を3~72時間、又は連続的に撹拌する。
【0011】
一部の実施形態では、球状の共沈粒子の中央粒径は、5マイクロメートルよりも大きい。
【0012】
一部の実施形態では、塩基性溶液は、アルカリ金属水酸化物、炭酸アルカリ、及びシュウ酸アルカリのうちの少なくとも1つを含有する。
【0013】
一部の実施形態では、塩基性溶液中のアルカリ金属水酸化物の濃度は、0.5モル/L~10モル/Lの範囲である。
【0014】
一部の実施形態では、前駆体共沈物は、MnxMyCoz(OH)2によって表される組成を有する。
【0015】
一部の実施形態では、Mとしては、1つ以上の1価、2価、3価、又は4価カチオン、及びRuから選択される1つ以上の金属カチオンが挙げられ、これらの例としては、Li+、Ni2+、Ni3+、Cu+、Cu2+、Mg2+、Zn2+、B3+、Ga3+、Al3+、Mn3+、Mn4+、Sn4+、Ti4+、及び/又はRu4+/5+/6+が挙げられる。Mが金属カチオンの混合物である場合、金属カチオンの化学量論数が等しい必要はない。
【0016】
一部の実施形態では、粒子溶液を不活性ガス雰囲気下で形成する。
【0017】
一部の実施形態では、水溶液中の硫酸マンガン、Mの硫酸塩、及び硫酸コバルトの濃度は、0.5モル/L~5モル/Lの範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の実施形態における、バッテリセルの上視図である。
【
図2】本開示の実施形態における、バッテリセルの1組の層構成を示している。
【
図3】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物を製造するための装置を示している。
【
図4】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物の粒径のヒストグラム及び累積分布図である。
【
図5】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物のX線粉末回折(XRD)である。
【
図6】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物の温度の関数としての質量及び示差走査熱量測定(DSC)曲線のプロットである。
【
図7】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【
図8】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物の粒径のヒストグラム及び累積分布図である。
【
図9】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物の粒径のヒストグラム及び累積分布図である。
【
図10】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物の粒径のヒストグラム及び累積分布図である。
【
図11】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物の粒径のヒストグラム及び累積分布図である。
【
図12】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物のSEMである。
【
図13】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物のSEMである。
【
図14】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物のSEMである。
【
図15】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物のSEMである。
【
図16】本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物の製造プロセスを図解したフローチャートである。
【
図17】本開示の実施形態における、ポータブル電子デバイスの図である。
【0019】
図中、同じ参照番号は同じ図要素を表している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の記述は、あらゆる当業者が実施形態を作製、使用できるように提示されており、特定の用途及びその要件のコンテキストにおいて提供されている。本開示の実施形態に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかとなるであろう。本明細書において定義されている一般原理は、本開示の精神や範囲から逸脱することなく他の実施形態、及び応用に適用可能である。したがって、本発明は、示されている実施形態に限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び特徴と矛盾しない最も広い範囲を許容するものとする。
【0021】
本開示の実施形態は、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物の製造に関する。カソード活物質組成物は、リチウムイオン又はリチウムポリマーセルなどの充電式バッテリセルの電極に使用することができる。
【0022】
より具体的には、本開示の実施形態は、後続する二次リチウムイオンバッテリ用のカソード活物質組成物の製造のために、非常に大きな粒径(例えば、1~40マイクロメートル)を有し、均一な狭い分布を伴い、マンガンコバルトリッチな水酸化物前駆体を製造するための方法及び装置を提供する。水酸化物の粒子はMn及び/又はCoを含有してもよく、前駆体組成物はMnxMyCoz(OH)2によって表される。Mとしては、好ましくは1つ以上の1価、2価、3価、又は4価カチオン、及びRuから選択される1つ以上の金属カチオンを挙げることができ、これらの例としては、Li+、Ni2+、Ni3+、Cu+、Cu2+、Mg2+、Zn2+、B3+、Ga3+、Al3+、Mn3+、Mn4+、Sn4+、Ti4+、及び/又はRu4+/5+/6+があり得る。Mが金属カチオンの混合物である場合、金属カチオンの化学量論数が等しい必要はない。前駆体組成物において、x+y+z=1.00、並びにxは0.01~1.00未満(0.01≦x<1.00)の範囲であってもよく、yは0~1.00未満(0≦y<1.00)の範囲であってもよく、かつzは0.5~1.00未満(0.50≦z<1.00)の範囲であってもよい。好ましくは、0.01≦x≦0.30、0≦y≦0.20、かつ0.70≦z<1.00である。
【0023】
前駆体共沈物の製造中に、硫酸マンガン及び硫酸コバルトのうちの少なくとも1つを含有する水溶液が調製され、反応器に送り込まれる。次に、NH4OH溶液をこの水溶液に加え、前駆体共沈物の不規則な二次粒子を含有する粒子溶液を形成する。また、塩基性溶液を粒子溶液に加えることにより、10~12の範囲の一定のpHを粒子溶液において維持する。
【0024】
図1は、実施形態における、バッテリセル100の上視図を示す。バッテリセル100は、家庭用、医療用、航空宇宙産業、防衛、及び/又は輸送の用途に用いられるデバイスに給電するのに用いられるリチウムイオン又はリチウムポリマーバッテリセルに対応し得る。バッテリセル100は、活性コーティングを伴うカソード、セパレータ、及び活性コーティングを伴うアノードを含む、巻き合わせた多数のレイヤを含有するジェリーロール102を含む。より具体的には、ジェリーロール102は、セパレータ材料(例えば、導電性ポリマー電解質)の1つのストリップによって分離された、カソード材料(例えば、リチウム化合物でコーティングされたアルミホイル)の1つのストリップ及びアノード材料(例えば、炭素でコーティングされた銅ホイル)の1つのストリップを含んでもよい。次に、カソード、アノード、及びセパレータレイヤをマンドレル上に巻き付け、螺旋状に巻き付けられた構造体を形成してもよい。あるいは、これらのレイヤを積層して、かつ/又は使用して、バイセル構造などのその他のタイプのバッテリセル構造を形成してもよい。ジェリーロールは当該技術分野において周知であり、更に説明することはしない。
【0025】
バッテリセル100の組み立て中、ジェリーロール102を、折り線112に沿って可撓性シートを折り畳むことによって形成される可撓性パウチに封入する。例えば、可撓性シートはポリプロピレンなどのポリマーフィルムを有するアルミニウムでできていてもよい。可撓性シートを折り畳んだ後、可撓性シートを、例えば、サイドシール110に沿って、かつテラスシール108に沿って熱を加えることにより、密封することができる。バッテリセル100のパッケージング効率及び/又はエネルギ密度を向上させるために、可撓性パウチは120ミクロン未満の厚さであり得る。
【0026】
ジェリーロール102はまた、カソード及びアノードに結合された1組の導電タブ106を含む。導電タブ106は、(例えば、シールテープ104を用いて形成された)パウチのシールを貫通して延出し、バッテリセル100用の端子を提供することができる。次に、導電タブ106を用いてバッテリセル100を1つ以上のその他のバッテリセルと電気的に結合し、バッテリパックを形成することができる。例えば、直列、並列、又は直並列配置でバッテリセルを結合することにより、バッテリパックを形成することができる。結合したセルをハードケースに封入してバッテリパックを完成してもよく、又は結合したセルを、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、デジタルカメラ、及び/又はポータブルメディアプレーヤなどのポータブル電子デバイスのエンクロージャに組み込むことができる。
【0027】
図2は、本開示の実施形態における、バッテリセル(例えば、
図1のバッテリセル100)用の1組のレイヤを示す。これらのレイヤはカソード集電体202、カソード活性コーティング204、セパレータ206、アノード活性コーティング208及びアノード集電体210を含んでもよい。カソード集電体202及びカソード活性コーティング204はバッテリセル用のカソードを形成してもよく、アノード集電体210及びアノード活性コーティング208はバッテリセル用のアノードを形成してもよい。これらのレイヤを巻き付けるか又は積層してバッテリセルを作製してもよい。
【0028】
上述のように、カソード集電体202は、アルミホイルであってもよく、カソード活性コーティング204はリチウム化合物であってもよく、アノード集電体210は銅ホイルであってもよく、アノード活性コーティング208は炭素であってもよく、セパレータ206は導電性ポリマー電解質を含んでもよい。
【0029】
例えば、カソード活性コーティング204は、xLi2MO3・(1-x)LiCoyM′(1-y)O2で表されるカソード活物質組成物を含んでもよい。MはMn、Ti、Ru、Zr、又はこれらの混合物とすることができ、M’が存在する場合、M’としては、好ましくは1つ以上の1価、2価、3価、又は4価カチオン、及びRuから選択される1つ以上の金属カチオンを挙げることができ、これらの例としては、Li+、Ni2+、Ni3+、Cu+、Cu2+、Mg2+、Zn2+、B3+、Ga3+、Al3+、Mn3+、Mn4+、Sn4+、Ti4+、及び/又はRu4+/5+/6+がある。Mが金属カチオンの混合物である場合、金属カチオンの化学量論数が等しい必要はない。M’が金属カチオンの混合物である場合、金属カチオンの化学量論数の合計(1-y)が0~0.50(0≦(1-y)<0.50)の範囲である限り、金属カチオンの化学量論数が等しい必要はない。当業者は、他のカソード活物質組成物を、カソード活性コーティング204と共に使用できることを理解するであろう。
【0030】
このような活物質組成物は、
図1のバッテリセル100などの充電式リチウムセル及びバッテリ、並びに/又は他の充電式バッテリセル構造体で使用することができる。従来の活物質とは異なり、上述の例示のカソード活物質では、Li
2MO
3を使用して、繰り返しのリチウムインターカレーション及び脱インターカレーション中のその構造を安定化する。得られた構造体は、バッテリ充電及び放電中にカソード活物質構造体全体を安定化するLiM
6構成要素を本来的に含有するLi
2MO
3ドメインを含有する。これによって、構造体からより多くのリチウムイオンを可逆的に抽出することが可能となる。
【0031】
例えば、本開示のカソード活物質組成物は、カソード活物質の理論容量の60%より大きい可逆リチウムイオン抽出(カソード活物質の可逆容量>165mAh/g)、及び場合によっては、カソード活物質の理論容量の75%より大きい可逆リチウムイオン抽出(カソード活物質の可逆容量>200mAh/g)を提供することができる。xLi2MO3・(1-x)LiCoyM’(1-y)O2で表されるカソード活物質組成物は、発明者Hongli Dai、Christopher S.Johnson、及びHuiming Wuによる、表題「High Voltage,High Volumetric Energy Density Li-Ion Battery Using Advanced Cathode Materials」、出願第14,206,654号、出願日2014年3月12日(代理人整理番号APL-P18645US1)である同時係属中の非仮出願に更に記載されており、この記載は参照により本明細書に援用される。
【0032】
本開示の実施形態において、カソード活性コーティング204用のカソード活物質組成物(例えば、Li2MO3によって安定化されたリチウム遷移金属酸化物及び/又は他のカソード活物質組成物)は、好ましくは、溶液共沈法によってあらかじめ調製された混合金属水和水酸化物前駆体から合成される。本方法は、インターカレーションホストにおいて最適な遷移金属の均質混合物を提供する。
【0033】
1つ以上の実施形態において、混合金属水和水酸化物前駆体は、後続する二次リチウムイオンバッテリ用のカソード活物質組成物の製造のために、非常に大きな粒径(例えば、10~40マイクロメートル)及び均一な狭い分布を有する、ニッケルマンガンコバルトリッチな水酸化物前駆体を含む。水酸化物の粒子はMn及び/又はCoを含有してもよく、前駆体組成物は、MnxMyCoz(OH)2によって表される。Mとしては、好ましくは1つ以上の1価、2価、3価、又は4価カチオン、及びRuから選択される1つ以上の金属カチオンを挙げることができ、これらの例としては、Li+、Ni2+、Ni3+、Cu+、Cu2+、Mg2+、Zn2+、B3+、Ga3+、Al3+、Mn3+、Mn4+、Sn4+、Ti4+、及び/又はRu4+/5+/6+がある。Mが金属カチオンの混合物である場合、金属カチオンの化学量論数が等しい必要はない。前駆体組成物において、x+y+z=1.00、並びにxは0.01~1.00未満(0.01≦x<1.00)の範囲であってもよく、yは0~1.00未満(0≦y<1.00)の範囲であってもよく、かつzは0.5~1.00未満(0.50≦z<1.00)の範囲であってもよい。好ましくは、0.01≦x≦0.30、0≦y≦0.20、かつ0.70≦z<1.00である。
【0034】
図3に示すとおり、マンガンニッケルコバルト水酸化物前駆体粒子は、共沈プロセスにおいて、金属塩の溶液及びアンモニア水を、連続撹拌槽型反応器(CSTR)などの反応器302に、好ましくは一定速度で滴下し、核生成させ、成長させる。反応器302は、窒素、アルゴン、及び/又は他の不活性ガスの気流を用いて調節された雰囲気下で、30~65℃の一定温度で維持され得る。第1の供給機構308は、硫酸マンガン及び/又は硫酸コバルトを含有する水溶液を反応器302に加えることができる。例えば、供給機構308は、0.5~5モル/Lの範囲の濃度の硫酸マンガン及び/又は硫酸コバルトの水溶液を反応器302中で調製するのに使用することができる。
【0035】
第2の供給機構310は、NH4OH溶液(例えば、アンモニア水)をキレート剤として水溶液に加え、前駆体共沈物の不規則な二次粒子を含有する、粒子溶液314を形成することができる。例えば、供給機構308~310は、硫酸マンガン及び/又は硫酸コバルトの水溶液、並びにアンモニア水を、それぞれ連続的に反応器302に加え、粒子溶液314を形成するように構成され得る。粒子溶液314は、塩基性溶液を粒子溶液314に注入するポンプを作動させるpHコントローラ312によって、10~12の範囲の一定pHに保持される。塩基性溶液としては、0.5~10モル/Lの範囲の濃度で溶解したアルカリ金属(例えば、Li、Na、又はK)水酸化物を挙げることができ、この溶液には、金属イオンを沈殿させ、前駆体固体に対する対イオンを提供する役割がある。あるいは、炭酸系又はシュウ酸系の前駆体を所望の場合には、炭酸アルカリ又はシュウ酸アルカリを、水酸化アルカリの代わりに使用することができる。
【0036】
共沈反応の初期段階において、反応器302内における3~20時間の滞留時間中にモータ306によって駆動される撹拌機304で激しく撹拌することにより、不規則な二次粒子が針状の初晶から成長し、徐々に球状の共沈粒子へと変化する。反応器302はまた、粒子溶液314の径方向の混合及び循環性の垂直流を確保するため、バッフル(図示せず)及び吸出し管(図示せず)を含んでもよい。
【0037】
反応器302が満たされると、粒子溶液314の均一な混合物を、オーバーフロー管316を通して連続的に放出する。次いで、放出された粒子溶液314から得られた球状の共沈粒子を洗浄し、濾取し、乾燥する。均一な球状水酸化物粒子の合成において、共沈反応中のpH、アンモニアの濃度、及び撹拌速度は、粉末の物理化学的特性を決定する上で重要な要因である。一部の場合には、沈殿プロセスに界面活性添加剤が使用される。
【0038】
以下の実施例は、本発明者によって企図されたとおり、本開示の実施形態の原理を記載しているが、それらは限定的な例として解釈されるべきではない。
実施例1
【0039】
3.5LのCSTRを蒸留水で満たし、55℃まで加熱する。蒸留水を1000rpmの速度で撹拌しながら、窒素でパージする。続いて、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、硫酸マグネシウム、及び硫酸コバルトの1.5モル濃度水溶液、並びにアンモニア水の1モル濃度溶液を、連続的に反応器に滴下する。pHコントローラ/ポンプを使用して水酸化ナトリウムの3モル濃度水溶液を加えることにより、pHを10.5に調整する。8.5時間の操作時間の間に、粒子溶液中で粒子が核生成し、成長する。最終前駆体粒子を洗浄し、濾取し、乾燥する。
図4~7は前駆体の粉末の特性解析結果を示す。
【0040】
特に、
図4は、得られた前駆体共沈物の粒径のヒストグラム及び累積分布を示している。成長8時間後の前駆体の粒径分析の結果、D50は7.7マイクロメートル、D10/D90は0.45である。更に、最終前駆体粒子の最小粒径は1.60マイクロメートル、最大粒径は16.09マイクロメートル、平均7.83マイクロメートル、標準偏差2.42マイクロメートル、D10は5.01マイクロメートル、D90は10.98マイクロメートルである。乾燥粉末のタップ密度は、測定の結果、1.26g/cm
3である。
【0041】
図5に示すとおり、X線粉末回折(XRD)は、単相のCo(OH)
2型の結晶構造を示している。
図6に示すとおり、空気中で前駆体を加熱すると、多段階の発熱反応を呈し、Co(OH)
2粒子を脱水及び酸化して最終的にCo
3O
4へと変換し、重量減少は予想どおり13.6%である。
図7の走査型電子顕微鏡写真(SEM)に示すとおり、粒子は等軸の形状及び均一な粒径分布を有する。
実施例2
【0042】
共沈反応は、実施例1と同様に実施する。pHを11に設定する。蒸留水を1200rpmの速度で撹拌しながら、窒素でパージする。続いて、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、及び硫酸コバルトの2モル濃度水溶液、並びにアンモニア水の1.0モル濃度溶液を、連続的に反応器に滴下する。最終前駆体粒子を洗浄し、濾取し、乾燥する。
図8のグラフによると、D50は15.67マイクロメートル、D10/D90は0.59である。更に、最終前駆体粒子の最小粒径は1.52マイクロメートル、最大粒径は34.24マイクロメートル、平均15.90マイクロメートル、標準偏差3.73マイクロメートル、D10は12.35マイクロメートル、D90は20.09マイクロメートルである。
実施例3
【0043】
共沈反応は、実施例1と同様に実施する。CSTRを0.5モル濃度のNa
2SO
4塩溶液2Lで満たす。蒸留水を1100rpmの速度で撹拌しながら、窒素でパージする。続いて、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、及び硫酸コバルトの1.5モル濃度水溶液、並びにアンモニア水の1モル濃度溶液を、連続的に反応器に滴下する。pHを10.5に設定する。最終前駆体粒子を洗浄し、濾取し、乾燥する。
図9のグラフによると、D50は12.38マイクロメートル、D10/D90は0.56である。また、最終前駆体粒子の最小粒径は0.35マイクロメートル、最大粒径は28.45マイクロメートル、平均12.95マイクロメートル、標準偏差3.19マイクロメートル、D10は9.67マイクロメートル、D90は17.18マイクロメートルである。乾燥粉末のタップ密度は、測定の結果、0.80g/cm
3である。
実施例4
【0044】
共沈反応は、実施例1と同様に実施する。反応器を1モル濃度のアンモニア水溶液2Lで満たす。蒸留水を1000rpmの速度で撹拌しながら、窒素でパージする。続いて、硫酸コバルトの2モル濃度水溶液及びアンモニア水の5モル濃度溶液を、連続的に反応器に滴下する。pHを10.5に設定する。最終前駆体粒子を洗浄し、濾取し、乾燥する。
図10のグラフによると、D50は23.38マイクロメートル、D10/D90は0.49である。最終前駆体粒子の最小粒径は2.00マイクロメートル、最大粒径は37.96マイクロメートル、平均23.01マイクロメートル、標準偏差5.90マイクロメートル、D10は14.83マイクロメートル、D90は30.15マイクロメートルである。乾燥粉末のタップ密度は、測定の結果、0.86g/cm
3である。
実施例5
【0045】
蒸留水2.5Lを4LのCSTRに投入し、反応器の温度を55℃に維持し、速度20mL/分の窒素ガスで保護し、1200rpmで撹拌して、共沈反応を行った。硫酸ニッケル、硫酸マンガン、及び硫酸コバルトをモル比1:2:97(目標組成Ni0.01Mn0.02Co0.97(OH)2)で混合した2モル濃度の金属水溶液を、連続的に0.1L/時で反応器に加え、5モル濃度の水酸化アンモニア溶液もまた、連続的に0.46L/時で反応器に加えた。更に、pHコントローラ/ポンプを使用して水酸化ナトリウムの10モル濃度水溶液を加えることにより、pHを10.5に調整する。溶液を反応器に保持する平均時間は、反応器への流量を制御することにより、11時間に維持した。全操作時間は約12時間である。最終前駆体粒子を洗浄し、濾取し、乾燥する。
【0046】
図11のグラフに示すとおり、前駆体の成長8時間後の粒径分析によると、D50は25マイクロメートルである。前駆体は更に、最小粒径が2.00マイクロメートル、最大粒径が48.23マイクロメートル、平均28.61マイクロメートル、標準偏差13.08マイクロメートル、D10が12.84マイクロメートル、D90が44.94マイクロメートルである。乾燥粉末のタップ密度は、測定の結果、0.96g/cm
3である。
図12~13のSEMからわかるように、粒子は均一な球状の形状で、粒子の表面は滑らかで、二次粒子は直径約25マイクロメートルである。
【0047】
金属水酸化物前駆体もまた、実施例5の手順を用いて調製した。前駆体の組成は、Co(OH)2、Co0.96Mn0.04(OH)2、Co0.94Ni0.02Mn0.04(OH)2、及びCo0.94Mg0.02Mn0.04(OH)2に設定した。
実施例6
【0048】
共沈反応は、実施例5と同様に実施する。蒸留水2.5Lを4LのCSTRに投入し、反応器の温度を55℃に維持し、速度20mL/分の窒素ガスで保護し、1200rpmで撹拌して、共沈反応を行った。硫酸ニッケル、硫酸マンガン、及び硫酸コバルトをモル比1:2:97(目標組成Ni0.01Mn0.02Co0.97(OH)2)で混合した2モル濃度の金属水溶液を、連続的に0.1L/時で反応器に加え、5モル濃度の水酸化アンモニア溶液もまた、連続的に0.1L/時で反応器に加えた。更に、pHコントローラ/ポンプを使用して水酸化ナトリウムの10モル濃度水溶液を加えることにより、pHを11に調整する。溶液を反応器に保持する平均時間は、反応器への流量を制御することにより、11時間に維持した。全操作時間は約24時間である。最終前駆体粒子を洗浄し、濾取し、乾燥する。
【0049】
図14~15のSEMからわかるように、粒子は均一な球状の形状で、粒子の表面は滑らかで、二次粒子は直径約10~40マイクロメートルである。前駆体の表面積は15.10m
2/gであり、粒子のタップ密度は約1.1g/ccである。
実施例7
【0050】
共沈反応は、実施例6と同様に実施する。最初に、0.5モル濃度の硫酸ナトリウム及び1モル濃度のアンモニア溶液2.5Lを4LのCSTRに加え、反応器の温度を55℃に維持し、速度200mL/分の窒素ガスで保護し、1200rpmで撹拌して、共沈反応を行った。硫酸ニッケル、硫酸マンガン、及び硫酸コバルトをモル比2:2:96(目標組成Ni0.02Mn0.02Co0.96(OH)2)で混合した2モル濃度の金属水溶液を、連続的に反応器に加え、5モル濃度の水酸化アンモニア溶液もまた、連続的に反応器に加えた。更に、pHコントローラ/ポンプを使用して水酸化ナトリウムの10モル濃度水溶液を加えることにより、pHを11に調整した。溶液を反応器に保持する平均時間は、反応器への流量を制御することにより、20時間に維持した。全操作時間は約72時間であった。最終前駆体粒子を洗浄し、濾取し、乾燥した。
【0051】
粒子は球状の形状で滑らかである。二次粒子のD50は40マイクロメートル、D10/D90は0.7である。粒子のタップ密度は1.7g/ccである。
実施例8
【0052】
1モル濃度のアンモニア水溶液2.5Lを4LのCSTRに投入し、反応器の温度を55℃に維持し、速度20mL/分の窒素ガスで保護し、1200rpmで撹拌して、共沈反応を行った。硫酸マンガン及び硫酸コバルトをモル比4:96(目標組成Mn0.04Co0.96(OH)2)で混合した1モル濃度の金属水溶液を、連続的に0.2L/時で反応器に加え、5モル濃度の水酸化アンモニア溶液もまた、連続的に0.05L/時で反応器に加えた。更に、pHコントローラ/ポンプを使用して水酸化ナトリウムの10モル濃度水溶液を加えることにより、pHを11.5に調整する。溶液を反応器に保持する平均時間は、反応器への流量を制御することにより、6.57時間に維持した。全操作時間は約24時間である。最終前駆体粒子を洗浄し、濾取し、乾燥する。乾燥粉末のタップ密度は、測定の結果、1.78g/cm3である。
実施例9
【0053】
共沈反応は、実施例8と同様に実施する。1モル濃度のアンモニア水溶液2.5Lを4LのCSTRに投入し、反応器の温度を55℃に維持し、速度20mL/分の窒素ガスで保護し、1200rpmで撹拌して、共沈反応を行った。硫酸マンガン、硫酸コバルト、及び硫酸マグネシウムをモル比4:95.9:0.1(目標組成Mn0.04Co0.959Mg0.001(OH)2)で混合した1モル濃度の金属水溶液を、連続的に0.2L/時で反応器に加え、5モル濃度の水酸化アンモニア溶液もまた、連続的に0.05L/時で反応器に加えた。更に、pHコントローラ/ポンプを使用して水酸化ナトリウムの2モル濃度水溶液を加えることにより、pHを11.5に調整する。溶液を反応器に保持する平均時間は、反応器への流量を制御することにより、6.57時間に維持した。全操作時間は約24時間である。最終前駆体粒子を洗浄し、濾取し、乾燥する。乾燥粉末のタップ密度は、測定の結果、1.5g/cm3である。
【0054】
図16は、本開示の実施形態における、カソード活物質組成物用の前駆体共沈物の製造プロセスを図解したフローチャートである。1つ以上の実施形態において、工程の1つ以上の省略、繰り返し、及び/又は異なる順序での実施が可能である。したがって、
図16に示す工程の特定の構成は、実施形態の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0055】
共沈プロセスの開始時において、反応器内の水溶液の初期組成物は、以下の溶液、すなわち、蒸留水、アンモニア、硫酸ナトリウム、及び/又は前のプロセスバッチから採取された共沈物溶液からなる母液のうちの、少なくとも1つ又は混合物を含有する。
【0056】
硫酸マンガン及び/又は硫酸コバルトを含有する水溶液を調製する(操作1602)。例えば、供給機構によって、水溶液をCSTRに滴下してもよい。更に、水溶液中の硫酸ニッケル、硫酸マンガン、及び硫酸コバルトの濃度は、0.5モル/L~5モル/Lの範囲とすることができる。
【0057】
次に、NH4OH溶液をこの水溶液に加え、前駆体共沈物の不規則な二次粒子を含有する粒子溶液を形成する(操作1604)。粒子溶液は、30~65℃の範囲の一定温度で維持し、窒素、アルゴン、及び/又は別の不活性ガスを含有する不活性ガス雰囲気中で形成することができる。また、塩基性溶液を粒子溶液に加えることにより、10~12の範囲の一定のpHを粒子溶液において維持する(操作1606)。塩基性溶液としては、0.5~10モル/Lの範囲の濃度のアルカリ金属水酸化物、炭酸アルカリ及び/又はシュウ酸アルカリを挙げることができる。
【0058】
粒子溶液を(例えば、CSTR内で)更に撹拌し、不規則な二次粒子から球状の共沈粒子を形成する(操作1608)。このような撹拌を3~12時間実施し、メジアン粒径が15マイクロメートルより大きい、球状の共沈粒子を形成する。球状の共沈粒子が所望のサイズに到達した後、球状の共沈粒子を粒子溶液から濾取し(操作1610)、洗浄し(操作1612)、乾燥する(操作1614)。
【0059】
続いて球状の共沈粒子を使用し、リチウムイオンバッテリで使用するためのカソード活物質組成物を形成することができる。例えば、上記の溶液共沈反応を用いて形成された球状の前駆体粒子は、MnxMyCoz(OH)2(式中、0.01≦x<1.00、0≦y<1.00、かつ0.50≦z<1.00である)によって表される組成を有し得る。Mとしては、好ましくは1つ以上の1価、2価、3価、又は4価カチオン、及びRuから選択される1つ以上の金属カチオンを挙げることができ、これらの例としては、Li+、Ni2+、Ni3+、Cu+、Cu2+、Mg2+、Zn2+、B3+、Ga3+、Al3+、Mn3+、Mn4+、Sn4+、Ti4+、及び/又はRu4+/5+/6+がある。Mが金属カチオンの混合物である場合、金属カチオンの化学量論数が等しい必要はない。前駆体をリチウム塩と混合し、固相反応において1000℃まで加熱し、xLi2MO3(1-x)LiCo2M’(1-y)O2によって表されるカソード活物質組成物を形成することができる。カソード活物質組成物中で、Ni、Co、M及びM’は、平均酸化状態3を有する。次に、カソード活物質組成物をバッテリセルのカソード活性コーティングに使用し、バッテリセルのカソードの可逆容量を上げることができる。
【0060】
上記の充電式バッテリセルは、一般に、任意のタイプの電子デバイスで使用することができる。例えば、
図17は、プロセッサ1702、メモリ1704、及びディスプレイ1708を含み、これら全てがバッテリ1706によって給電される、ポータブル電子デバイス1700を示す。ポータブル電子デバイス1700は、ラップトップコンピュータ、携帯電話、PDA、タブレットコンピュータ、ポータブルメディアプレーヤ、デジタルカメラ、及び/又はその他のタイプのバッテリ駆動電子デバイスに対応することができる。バッテリ1706は、1つ以上のバッテリセルを含むバッテリパックに対応することができる。各バッテリセルは、アノード集電体及びアノード集電体上に配置されるアノード活物質を含有するアノードを含んでもよい。バッテリセルはまた、カソード集電体及びカソード集電体上に配置されるカソード活物質を含有するカソードを含んでもよい。カソード活物質は、Mn
xM
yCo
z(OH)
2(式中、0.01≦x<1.00、0≦y<1.00、かつ0.50≦z<1.00である)によって表される組成を有する球状の前駆体共沈粒子を使用して形成することができる。カソード及びアノードを可撓性パウチに密封してもよい。
【0061】
様々な実施形態の前述の説明を、例示と説明のためにのみ提示してきた。これらは、全てを網羅すること、又は本発明を開示された形態に限定することを意図していない。したがって、多くの変更及び変化形が、当業者には明らかとなるであろう。更に、上記の開示は、本発明を限定することを意図していない。