(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】セルフピアスリベットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B21K 1/60 20060101AFI20220228BHJP
B21J 15/00 20060101ALI20220228BHJP
F16B 19/05 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
B21K1/60
B21J15/00 U
F16B19/05
(21)【出願番号】P 2017559078
(86)(22)【出願日】2016-05-13
(86)【国際出願番号】 GB2016051397
(87)【国際公開番号】W WO2016181169
(87)【国際公開日】2016-11-17
【審査請求日】2019-02-21
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-07
(32)【優先日】2015-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508080296
【氏名又は名称】アトラス コプコ アイエイエス ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル ジョン トリニック
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】田々井 正吾
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第20319610(DE,U1)
【文献】特開平03-061708(JP,A)
【文献】特開2007-064439(JP,A)
【文献】特開2010-179404(JP,A)
【文献】米国特許第5957777(US,A)
【文献】特表2013-502550(JP,A)
【文献】特表2009-537757(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0908636(EP,A1)
【文献】特開2004-340321(JP,A)
【文献】特開2007-255471(JP,A)
【文献】特開2004-076854(JP,A)
【文献】特開2000-351043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21K 1/00 - 1/76
B21J 15/00 - 15/50
F16B 19/00 - 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る長さのワイヤからセルフピアスリベットを製造する方法であって、
前記或る長さのワイヤを分離させることで複数のスラグを形成する分離ステップであって、各スラグはヘッド端及びテール端を規定する、分離ステップと、
前記スラグから複数のリベットを鍛造する鍛造ステップであって、各リベットはスラグの前記ヘッド端から形成されるヘッドと該スラグの前記テール端から形成される先端部とを有し、前記リベットの前記ヘッド及び前記先端部は縦軸を規定するシャンクによって分離され、前記リベットは実質的に縦軸方向に、前記先端部を通り且つ前記シャンクの全軸長の少なくとも一部に亘って伸張する穴を有する、鍛造ステップと、を有し、
前記複数のリベットの各々のために、前記方法は、
前記シャンクの外周縁部に隣接する前記リベットの前記先端部
の一部から材料を取り除
き、それにより、前記シャンクの前記外周縁部で前記先端部をより均一化させる機械加工を施す、機械加工ステップを有
し、
前記方法は更に、機械加工ステップの後に、前記複数のリベットを熱処理する、熱処理ステップを有する、方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の方法であって、各リベットに施す前記機械加工により、前記穴に隣接する前記先端部の
一部も形成する、方法。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の方法であって、各リベットに施す前記機械加工により、実質的に前記先端部全体を形成する、方法。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法であって、前記機械加工を、鋸を用いて行う、方法。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法であって、前記機械加工を、研削工具を用いて行う、方法。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法であって、前記機械加工を、切削工具を用いて行う、方法。
【請求項7】
請求項
5又は
6に記載の方法であって、前記工具は成形工具である、方法。
【請求項8】
請求項
5又は
6に記載の方法であって、前記工具は単純形状工具である、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記或る長さのワイヤを分離させることで前記スラグを形成する前に、前記或る長さのワイヤは縦軸を規定し、
前記或る長さのワイヤから各スラグを分離した後に、該スラグは、該スラグを貫通していた前記ワイヤの前記縦軸の一部と実質的に整列する縦軸を規定し、
スラグから各リベットを鍛造した後、前記リベットの前記縦軸は、該リベットとなった前記スラグの前記縦軸と実質的に整列する、方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の方法であって、
前記リベットと、前記機械加工を行うために用いる前記工具とを、
前記リベットの前記縦軸周りに相互に回転させながら、各機械加工を行う、方法。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法であって、前記機械加工により前記縦軸方向に少なくとも0.2 mmの深さまで材料を取り除く、方法。
【請求項12】
製品を製造する方法であって、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法を用いてセルフピアスリベットを製造する、セルフピアスリベット製造ステップと、前記リベットの1つをパンチを用いて加工物に打ち込むことによって前記リベットを前記加工物に貫通させることなく前記加工物の内部に裾状に拡げる、打込みステップと、を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルフピアスリベットの製造方法に関する。この方法は、特に自動車産業にて用いられるが、当業界のみに限定されない。
【背景技術】
【0002】
セルフピアスリベット、いわゆるSPRは、スポット接合技術である。接合に際しては、セルフピアスリベットは、ダイ上に支持された加工物にパンチで打ち込まれる。ダイは、ダイに向かってリベットを加工物に打ち込めば加工物の材料が塑性変形するように形成されている。加工物材料のこの流動により、リベットの環状先端部が外向きに裾状に拡がり、加工物材料のアップセット環状部に包み込まれた状態に保たれる。リベットの裾状に広がる先端が加工物のアップセット環状部と噛み合った状態で結合することにより、リベットの外れや加工物の層の分離を防ぐ。
【0003】
セルフピアスリベットは、従来から、各スラグをリベットに鍛造する前に、適切な長さの「スラグ」を或る長さのワイヤから分断することで、製造されてきた。しかしながら、或る長さのワイヤを破断し、分離させてスラグにするとき、巨視的な亀裂又は他の欠陥が発生しかねない。鍛造工程によりこれらの欠陥を圧縮することができるが、確実に取り除くことはできないため、欠陥が残存し、リベットの脆弱箇所を発生させかねない。これは、例えば加工物への挿入中のリベットの断裂、あるいは亀裂の広がりを発生させる疲労によって、リベットを用いて形成される接合部に破損を生じさせかねない。また、或る長さのワイヤからスラグを破断することは、傾斜面を有するスラグ端の形成を促すことにもなる。これにより、このようなスラグから製造されるリベットは、その全周でわずかに不均一、すなわち、その先端部形状がその全周で変化するものとなりかねない。リベットの先端部形状は、リベットが拡がる範囲(及び均一性)を制御するために重要であり、従って、周方向に不均一な先端部を有するリベットは、加工物への挿入時に適正に拡がることができないおそれがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、上述した不利な点の少なくとも1つを軽減もしくは事前に除去すること、および/または、セルフピアスリベットの改善されたもしくは代替的な製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の第1態様に従い、或る長さのワイヤからセルフピアスリベットを製造する方法を提供する。該方法は、或る長さのワイヤを分離させることで複数のスラグを形成する分離ステップであって、各スラグはヘッド端及びテール端を規定する、分離ステップと、スラグから複数のリベットを鍛造する鍛造ステップであって、各リベットはスラグのヘッド端から形成されるヘッドと該スラグのテール端から形成される先端部とを有し、リベットのヘッド及び先端部は縦軸を規定するシャンクによって分離され、リベットは実質的に縦軸方向に、先端部を通り且つシャンクの全軸長の少なくとも一部に亘って伸張する穴を有する、鍛造ステップと、を有し、複数のリベットの各々のために、該方法は、リベットの先端部、又はリベットに鍛造されるスラグのテール端に機械加工を施す、機械加工ステップを有する。
【0006】
機械加工を施すことで、リベットの先端部、あるいは、リベットを形成する前のスラグのテール端から欠陥を取り除くことができ、これにより、該欠陥に起因する、リベットを用いて形成される接合部の破損又は脆弱部の発生を防止することができる。代替的又は追加的に、機械加工を施すことでスラグのテール端又はリベット先端部の全周での形状的一貫性を改善することができ、もって、リベットが不均等に拡がる可能性を低減させることができる。
【0007】
該方法は、いずれのスラグもリベットに鍛造しないうちに、或る長さのワイヤを分離してスラグにするステップを含むことができる。代替的に、該方法は、全てのスラグを或る長さのワイヤから分離する前に、1つ以上のスラグをリベットに鍛造するステップを含んでもよい。例えば、該方法は、単一スラグ(第1スラグ)をワイヤから分離させるステップと、該スラグをリベットに鍛造するステップと、その後に別のスラグ(第2スラグ)をワイヤから分離させるステップと、を含んでもよい。同様に、全てのスラグを或る長さのワイヤから分離する前又は分離した後に、及び/又は、全てのスラグをリベットに鍛造する前又は鍛造した後に、リベット/スラグに機械加工を施してもよい。
【0008】
前記複数のスラグは、或る長さのワイヤから製造された全てのスラグを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよいと理解されたい。該複数のスラグの他にもスラグを製造してもよいし、及び/又は、ワイヤを余らせ残してもよい。同様に、前記複数のリベットは、ワイヤから製造された全てのリベット、又は前記複数のスラグから製造された全てのリベットを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。例えば、或る長さのワイヤを20個のスラグに分離してもよく、このうちの18個をリベットに鍛造して、このうちの15個のリベットの先端部に機械加工を施してもよい。この例では、前記複数のリベットはこれら15個のリベットであってよく、前記複数のスラグは、機械加工を施された15個のリベットに鍛造された15個のスラグであってもよく、リベットに鍛造された18個のスラグであってもよく、20個全てのスラグであってもよい。前記複数のリベットは、15個のリベットのうちの、機械加工を施された例えば10個のリベットであってよく、及び/又は、前記複数のスラグは、機械加工を施されたリベットになった15個のスラグのうちの14個のみを含む、ワイヤから製造された20個のスラグのうちの19個であってよい。
【0009】
穴は、リベットの全体に亘って伸長していてもよいし、シャンク全体に亘って伸張し、ヘッド又はヘッド内で終端していてもよいし、シャンクの一部に沿って伸張した位置にて終端していてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、同時に複数のスラグをリベットに鍛造し、及び/又は、同時に複数のスラグを或る長さのワイヤから分離する。
【0011】
誤解を避けるために、スラグ又はリベットへの言及は、機械加工を施す前又は施した後のスラグ又はリベットを含むことを意図されていると理解されたい。例えばリベットに機械加工を施す場合、「リベット」なる語は、機械加工を施す前のリベット及び/又は機械加工を施した後のリベットを表すために用いられ得る。
【0012】
機械加工は、対象物(この場合、スラグ又はリベット)から材料を取り除く製造作業であると考えてもよい。
【0013】
機械加工には、概して2つの異なる方向、すなわち、速度方向及び送り方向の動きを利用する。速度方向とは、機械加工を施される対象物から材料を取り除かせる方向における該対象物に対する工具の動きを意味する。例えば、旋盤を用いるような旋削加工においては、速度方向は、軸周りでの対象物の、工具に対するチャックによる回転である。フライス加工においては、速度方向とは、軸周りでのフライスの回転である。送り方向は、機械加工される対象物の形状を決定する方向における該対象物に対する工具の動きを意味する。例えば、旋削加工においては、送り方向は、対象物の軸に沿っていてもよく(例えば、対象物の直径を「削減」するとき)、対象物の軸に対して垂直であってもよい(例えば、対象物を「分離させる」とき)。他の例として、フライス加工において、送り方向は、対象物が取り付けられているテーブルの動作方向であってもよい。
【0014】
機械加工がスラグに施される場合、該スラグは、或る長さのワイヤの一部のままであってもよいし、既に或る長さのワイヤから分離されていてもよい。
【0015】
該方法は、機械加工をスラグのヘッド端又はリベットのヘッドに施すステップを更に備えてもよい。一実施例においては、単一の機械加工を、一方のスラグのヘッド端及びもう一方のスラグのテール端の両方に施す。他の実施例においては、機械加工をスラグのヘッド端に施し、その後スラグをリベットに鍛造し、続いて、別の機械加工を該リベットの先端部に施す。スラグのヘッド端又はリベットのヘッドに機械加工を施す場合、これらの機械加工は、スラグのテール端又はリベットの先端部に施す機械加工と実質的に同一であっても、同一でなくてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態においては、各機械加工を複数のリベット/スラグに同時に施す。
【0017】
リベット又はフラグに機械加工を施すという表現は、全体として単一の機械加工処置のみを行うことを含意しようとするものではない。例えば、本発明に係る機械加工を行った後に、リベットに研磨加工を施してもよい。更に、本発明に係る機械加工は、1つ以上の機械加工処置を含んでもよい。例えば、機械加工は、1つの工具(又は本明細書において「工具」と称されるものに該当する種々の工具)による多数のサイクルを含んでもよい。
【0018】
機械加工は、リベット間又はスラグ間で異なっていてもよいし、そうでなくてもよい。本発明に係るいくつかの実施形態においては、機械加工を、いくつかのスラグ及びいくつかのリベット(例えば、機械加工を施していないスラグから形成されたリベット)に施す。該実施形態は、スラグに機械加工を施す実施形態と、リベットに機械加工を施す実施形態との両方に該当し得るものである。
【0019】
リベットは、冷間鍛造工程、熱間鍛造工程又は温間鍛造工程で形成してもよい。
【0020】
機械加工をスラグに施してもよく、各機械加工によって或る長さのワイヤからのスラグの分離も行うようにしてもよい。
【0021】
機械加工をスラグに施すことで、機械加工の単純化(例えば、リベットの先端部に要求され得る複雑な形状ではなく、平坦面を形成すること)を可能にし得る。代替的又は追加的に、機械加工をスラグに施すことで、既存の鍛造設備を用いた本発明の実施を可能にし得る。これに対し、機械加工をリベットに施す場合には、(ダイから形成されたリベットが、機械加工で先端部から材料を取り除かれた後も十分な長さを維持するように)鍛造用のダイの取り換えが必要となり得る。
【0022】
各機械加工によって或る長さのワイヤからのスラグの分離も行うようにすることで、或る長さのワイヤからリベットを製造するために必要な加工の総数を低減させ、これにより、リベット製造の高速化及び/又はコスト低減を可能にし得る。
【0023】
各機械加工により、或る長さのワイヤから、該機械加工を施されたテール端を有するスラグを分離してもよい。代替的に、各機械加工により、或るスラグのテール端に該機械加工を施しながら、別のスラグを或る長さのワイヤから分離させてもよい。
【0024】
或る長さのワイヤからスラグを分離した後に、各スラグに対して機械加工を施してもよい。
【0025】
機械加工をリベットに施してもよい。これは、鍛造工程中(例えばリベットが押出しピンにより押出されたとき)に発生したあらゆる欠陥を取り除き又はその寸法を縮小させ得るという利点を有し得る。
【0026】
各リベットに施す機械加工により、シャンクの外周縁部に隣接する先端部の少なくとも一部を形成してもよい。こうすることで、リベット挿入中のリベットの拡がる範囲に特に大きな影響を与えるリベット先端部の形状を機械加工によって、より均一に形成することを可能にし得る。
【0027】
先端部の該一部は、先端部の個別の表面であってもよく、先端部の個別の表面の一部であってもよく、1つの連続した表面から形成された先端部の一部であってもよい。
【0028】
各リベットに施す機械加工により、穴に隣接する先端部の少なくとも一部を形成してもよい。こうすることで、リベット挿入中のリベットの拡がる範囲に特に大きな影響を与えるリベット先端部の一部の均一性を機械加工によって向上させることを可能にし得る。
【0029】
先端部の該一部は、先端部の個別の表面であってもよく、先端部の個別の表面の一部であってもよく、1つの連続した表面から形成された先端部の一部であってもよい。
【0030】
各リベットに施した機械加工により、実質的に先端部全体を形成してもよい。こうすることで、先端部の周方向の不均一性をその全域において最小化することを確実にし得る。
【0031】
機械加工により、実質的にリベットの穴の全長に亘って、材料を取り除いてもよい。機械加工により、(例えば、貫通穴を有するリベットに対し)リベットの全長に亘って、材料を取り除いてもよい。
【0032】
機械加工を、鋸を用いて行ってもよい。鋸は、帯鋸、往復式鋸又は丸鋸などのいかなる種類の鋸であってもよい。
【0033】
機械加工を、研削工具を用いて行ってもよい。研削工具は、例えば研削ホイール、研削プラグ、ホーニング工具、ラッピング定盤又は研削ベルトなどの、適切ないかなる形式のものであってもよい。研削工具は、ドレッシング可能な工具であっても、ドレッシング不可能な工具であってもよい。
【0034】
機械加工を、切削工具を用いて行ってもよい。切削工具は、(例えば、砥粒とは対照的な)1つ以上の刃先を有する工具であると考えてもよい。例えば、切削工具は、突っ切りバイトなどのバイト、又はフライスであってもよい。
【0035】
誤解を避けるために、単刃ではなく、一連の刃を有する鋸は、鋸及び切削工具の両方を構成し得ると理解されたい。
【0036】
研削工具又は切削工具は、成形工具であってもよい。成形工具は、機械加工の対象物に与えられる輪郭を規定するのが工具の動き又は位置となる単純形状工具ではなく、機械加工の対象物に特定の輪郭を与える形状を有する工具であると考えてもよい。成形工具は、輪郭が設定された研削ホイール又はフライスなどの、適切ないかなる種類のものであってもよい。
【0037】
成形工具を用いることで、工具を(機械加工のためにより複雑で高価な装置の使用を要求し得る)複雑な経路に沿って動かす必要なしに、各スラグ/リベットを特定の形状に成形することを可能にし得る。
【0038】
研削工具又は切削工具は、単純形状工具であってもよい。単純形状工具を用いることで、コストが有利に低い工具を用いて機械加工を行うことを可能にし得る。
【0039】
任意に、
或る長さのワイヤを分離させることでスラグを形成する前に、或る長さのワイヤは縦軸を規定し、
或る長さのワイヤから各スラグを分離した後に、該スラグは、該スラグを貫通していたワイヤの縦軸の一部と実質的に整列する縦軸を規定し、
スラグから各リベットを鍛造した後、リベットの縦軸は、該リベットとなったスラグの縦軸と実質的に整列する。
【0040】
代替的に、ワイヤからスラグを分離するステップは、スラグの縦軸の位置を変更させることを含んでもよく、及び/又は、鍛造工程は、リベット形成時にスラグの縦軸の方向を変更させてもよい。
【0041】
機械加工により、スラグのテール端に、スラグの縦軸に対して実質的に垂直に配置された実質的に平坦な表面を形成してもよい。
【0042】
このような表面を有するスラグのテール端は、テール端に傾斜面を有するスラグから鍛造されたリベットと比較して、該スラグから鍛造されたリベットの先端部の周方向の連続性を向上させ得る。
【0043】
スラグ又はリベットと、機械加工を行うために用いる工具とを、スラグ又はリベットの縦軸周りに相互に回転させながら、機械加工を行ってもよい。
【0044】
機械加工により、少なくとも0.2 mmの深さまで材料を取り除いてもよい。
【0045】
該方法は、熱処理、メッキ処理及び/又は潤滑化処理を更に含んでもよい。このような処理は、該方法のいかなる段階で行ってもよく、例えば、ワイヤを分離してスラグにする前、又は機械加工及び鍛造工程の両方が完了した後に行ってもよい。
【0046】
本発明の第2態様に従い、本発明の第1態様に従う方法を用いて製造されたセルフピアスリベットを提供する。
【0047】
上述した理由により、本発明の第2態様に従うリベットは、その先端部において欠陥が減少され得るし、及び/又は、周方向により均一化された形状を有する先端部を有し得る。
【0048】
本発明の第3態様に従い、製品を製造する方法を提供する。該方法は、本発明の第1態様に従う方法を用いてセルフピアスリベットを製造するセルフピアスリベット製造ステップと、リベットの1つをパンチを用いて加工物に打ち込むことによってリベットを加工物に貫通させることなく前記加工物の内部に裾状に拡げる、打込みステップと、を有する。
【0049】
本発明の第3態様に従う方法により、上述した欠陥の低減及び/又は向上した先端部の均一性によって品質が向上した接合部を有する製品を形成し得る。
【0050】
本発明の第4態様に従う方法は、本発明の第3態様に従う方法を用いて製造された製品を提供する。
【0051】
製品は、自動車などの車両又は航空機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】例示的なセルフピアスリベットの側面断面図である。
【
図2】他の例示的なセルフピアスリベットの側面断面図である。
【
図3】セルフピアスリベット接合部の側面断面図である。
【
図4A】「加締め(ステーキング)」が生じているセルフピアスリベット接合部の側面断面図である。
【
図4B】過剰又は非対称な拡がりが生じているセルフピアスリベット接合部の側面断面図である。
【
図5A】従来の方法を用いてセルフピアスリベットを製造する一段階を示す概要図である。
【
図5B】従来の方法を用いてセルフピアスリベットを製造する一段階を示す概要図である。
【
図5C】従来の方法を用いてセルフピアスリベットを製造する一段階を示す概要図である。
【
図5D】従来の方法を用いてセルフピアスリベットを製造する一段階を示す概要図である。
【
図5E】従来の方法を用いてセルフピアスリベットを製造する一段階を示す概要図である。
【
図5F】従来の方法を用いてセルフピアスリベットを製造する一段階を示す概要図である。
【
図7A】巨視的な亀裂が発生した先端部を有するリベットの拡大図である。
【
図7B】加工物への挿入を仮定した変形を経た
図7Aに図示するリベットの拡大図である。
【
図8A】不均一な先端部を有するリベットの端面図である。
【
図8B】
図8Aに示すリベットの先端部の一部の拡大図である。
【
図9A】本発明の第1実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【
図9B】本発明の第1実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【
図9C】本発明の第1実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【
図10A】本発明の第2実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【
図10B】本発明の第2実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【
図10C】本発明の第2実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【
図11A】本発明の第3実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【
図11B】本発明の第3実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【
図11C】本発明の第3実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【
図12A】本発明の第4実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【
図12B】本発明の第4実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【
図12C】本発明の第4実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【
図13】本発明の第5実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【
図14】本発明の第6実施形態に従う方法の一段階を示す、模式的側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の特定の実施形態を添付の図面を参照しながら例示説明する。
【0054】
全ての図面において、参照数字は同一又は対応する構成を示すものである。
【0055】
図1は、例示的なセルフピアスリベットの断面図を示す。リベット2は、シャンク8により離間されたヘッド4及び先端部6を有する。シャンク8は、リベットの縦軸10を規定する。リベットは、実質的に縦軸10に沿って伸張するとともに先端部6及びシャンク8を通ってヘッド4で終端している穴12を更に有する。本例では、穴は、断面において実質的に円形状をなし、ドーム形状の終端壁14で終端している。リベットの穴12の端部を越えた領域15は、従来から「ウェブ」と称されている。本例では、穴12は、リベット内で終端しているため、穴は止まり穴と称してもよい。止まり穴を備えるリベットは、半中空又は半管状リベットとして知られている場合もある。他のリベットにおいて、穴は、適切ないかなる形状を有していてもよい。例えば、穴は、断面において楕円形状又は八角形状をなしていてもよい。更に、本例では穴12は実質的に均一な形状を有しているが、他の例では、穴12は縦軸に沿って形状が変化してもよい。例えば、穴は、テーパー形状(例えば、穴は、ヘッド4に向かって細まっていてもよいし、先端部6に向かって細まっていてもよいし、細まったウェスト部を有するとともに先端部及びヘッドの両方に向かって拡がっていてもよい)をなしていてもよい。
【0056】
本例では、リベット4のシャンク8は、縦断面において実質的に円形をなし、実質的に円柱面状をなす外周縁部16を規定する。他の例では、シャンク及び/又はヘッドは、他の適切な形状を有していてもよい。例えば、シャンクは、断面において六角形状、八角形状又は楕円形状をなしていてもよく、縦軸に沿って、形状又は直径が変化してもよいし、変化しなくてもよい。
【0057】
本例のリベット2のヘッド4は、フィレット部20にてシャンク8の外周縁部16と交わる略径方向に延在するフランジ18として構成されている。本例では、ヘッド4は、皿型ヘッドねじのヘッドの形状と同様の一般的な形状を有する。他の例では、リベットのヘッドは、チーズ型ヘッドねじ、なべ型ヘッドねじ又は丸平(ドーム)型ヘッドねじの形状と同様の一般的な形状、あるいは、他の適切な形状を有していてもよい。リベットのヘッドは、断面において円形状をなしていてもよいし、そうでなくてもよい。一例では、リベットのヘッドは、加工物に挿入する前のテール部と区別不能である。このような例では、リベットの挿入中又は挿入後に、リベットのヘッドを、加工物の上面に重なる、外方に突出するフランジを形成するように変形させる。
【0058】
本例のリベット2の先端部6は、シャンク8の外周縁部16に隣接して配置された部分22(以下、「外側部分」と称する)と、穴12に隣接する部分24(以下、「内側部分」と称する)と、を有している。本例では、内側部分24及び外側部分22は、共に実質的に円錐台形状を有し、協働して、それら部分間の実質的に環状な刃先26を規定している。
【0059】
図2に、セルフピアスリベットの他の例を示す。
図1のリベット2と同様に
図2のリベット2は、略径方向に延在するフランジ18として構成されたヘッド4と、断面において円形状をなすシャンク8と、先端部6と、穴12と、を有している。しかしながら、本例では、穴12は、ヘッド4で終端せずに、リベット2の全長を通過している。従って、
図2のリベット2は、ウェブを有していない。よって、穴12は、貫通穴として構成されている。貫通穴を有するリベットは、管状又は中空リベットとしても知られている。
【0060】
図2のリベット2は、外側部分22及び内側部分24が、円錐台形状(すなわち、断面において平坦な形状)をなすのではなく、断面において弓形状をなしている点でも、
図1のリベット2と異なっている。また、先端部6の内側部分24と外側部分22とは、連続する弓形状の面を協働して形成する。従って、これらの部分は、刃先を規定していない。
【0061】
セルフピアスリベットを用いて接合部を形成するために、該リベットは、ダイ上に支持された加工物にパンチで打ち込まれる。加工物は、一般に2つ以上の材料層を備える。リベットをパンチにより挿入すると、リベットは加工物を穿刺し、加工物の材料を塑性変形させる。ダイは、加工物の材料の塑性変形の流動方向を規定し、リベットにより加工物の材料が入り込めるキャビティを有する場合もある。リベットの先端部の形状及び/又は加工物の材料の塑性変形の流動により、リベットが挿入されるのに伴い、そのシャンクは外向きに裾状に拡がる。リベットの形状及び材料、並びにダイの形状は、リベットが完全に加工物に挿入されたとき、その先端部が加工物の底層部を貫通しないように、特定の加工物(すなわち、特定の材料及び厚みの板の特定の組み合わせ)に合わせて選択されている。これにより、例えば湿気の侵入を防ぐために、加工物の底層部で気密封止を与えることが可能となる。また、リベット及びダイは、リベットのシャンクが、底層部との(後述する)許容可能な程度の連結を与えるのに十分な程度に拡がるが、尚早に裾状に拡がること及び/又は潰れることのないように選択されている。
【0062】
図3は、セルフピアスリベットによる接合部の一例を示す。この接合部で用いられたリベット2は、管状である点で
図2に示すリベットと略同様である。しかしながら、
図3に示す接合部のリベット2は、
図1に示すリベットの場合により近い形状の先端部6を有している。
【0063】
図3に示す接合部は、加工物30にセルフピアスリベット2を挿入することで形成されている。本例では、加工物は、3層の材料、すなわち、上層32a、中間層32b及び底層32cにより形成されている。誤解を避けるために述べると、本明細書における加工物の「上」層及び「底」層とは、リベット2によりそれぞれ、最初及び最後に穿刺される層を意味する。これらの用語は、リベッティング中(又はその後)の特定の空間的な方向を含意することを意図していない。更に、セルフピアスリベッティングは、適切ないかなる厚さ及び材料組成の適切ないかなる数の加工物層を有する加工物に用いてもよい。例えば、材料の板上に取り付け点を与えるためにヘッドにねじ状の突起部を有するセルフピアスリベットを挿入する場合などのような状況では、セルフピアスリベッティングを、単一の層を有する加工物に施してもよい。
【0064】
図3に示すように、リベット2が加工物30に挿入されたとき、加工物スラグ31は、リベットの穴12まで移動し、リベットのシャンク8は加工物30の底層32c内へと外向きに裾状に拡がっている。シャンク8が裾状に拡がったことにより、底層32cとのインターロック34(アンダーカットとしても知られる)が設けられている。インターロック34は、加工物30内にリベット2を保持し、それにより、加工物層32a, 32b, 32cの分離を防止している。ヘッド4及び裾状に拡がったシャンク8は、上層及び底層32a, 32cを共に保持し、それらの層の間にあらゆる中間層(本例では、中間層32b)を挟み込む。インターロック34は、リベットの先端部6と、加工物30の底層32c(後記の重複部が最小となる、リベットの外周の周りの点)との間における(リベット2の縦軸に対する)径方向の重複部であると考えてもよい。
【0065】
図3にも示すように、リベット2は、加工物30の底層32cを全体に亘って突入してはいない。むしろ、底層32cの最小厚さ36が残されている。最小厚さ36は、底層32cの上の層(この場合、中間層32b)又はリベットの先端部6が底層32cを貫通するのに最も近い位置にある点での、加工物30の底層32cの(リベットの縦軸に対する)軸方向の厚さであると考えてもよい。本例では、底層32cを貫通するのに最も近い位置にあるのは、リベット2の先端部6ではなく、中間層32bである。
【0066】
図3には、リベット2によりダイ(視認不可)のキャビティ内に加工物の材料を変位させることで形成された「ボタン」40が図示されている。
図3には、接合部のヘッド高さ42にも符号を付している。ヘッド高さ42は、上部板32aの上面により規定される平面44の上方又は下方に位置するヘッド4の上面と、平面44との間の最大距離であると考えてもよい。本例では、ヘッド4は、平面44の下方に凹んでおり、従って、ヘッド高さ42は負である。
【0067】
リベット接合部のインターロック34、最小厚さ36及び/又はヘッド高さ42は、その品質を査定するためによく用いられる。接合部の必要条件は、その分野及び用途により相当異なるが、許容可能な接合部の仕様の一例では、インターロック34は少なくとも0.4mmとされ、最小厚さは少なくとも0.2mmとされ、ヘッド高さは+0.3mmから-0.5mmの間とされている。
【0068】
リベットの先端部の形状は、該リベットのシャンクが加工物への挿入時に裾状に拡がる範囲に対して非常に重要な影響を与える。例えば、
図1を再び参照するが、内側部分24が先端部6の径方向の全体的な厚さのより大きな部分を形成するようにすることで、リベット2がより大きな範囲で裾状に拡がる傾向を強め得る。他方、先端部の外側部分22が先端部6の径方向の厚さのより大きな部分を形成するようにすることで、リベット2がより小さな範囲で裾状に拡がる傾向を強め得る。他の例では、
図2を参照するが、先端部6の内側部分24により大きな曲率半径を与えることで、リベット2が裾状に拡がる範囲を拡大させる傾向を強め得るし、外側部分22により大きな曲率半径を与えることで、リベット2の裾状の拡がりを縮小させる傾向を強め得る。
【0069】
リベット2が裾状に拡がる範囲は、多くの場合、許容可能な接合部を形成するように慎重に制御するべきである。
図3を再び参照するが、リベット2の裾状の拡がりが小さ過ぎると、リベット2が加工物30の底層32cに過剰に突入し、これにより、最小厚さ36及びインターロック34が縮小し得る。この問題は、一般に「加締め(ステーキング)」として知られる。加締めが生じた接合部の一例を
図4Aに示す。この接合部では、加工物は2つの層、上層32a及び底層32cを備える。本例では、リベット2の先端部6は、矢印Aにより強調された領域において加工物30の底層32cを貫通している。従って、底層32cの完全性は失われ、もはや気密封止を与えることはできない。また、おけるインターロック34は、この特定の接合部に要求されるものよりも小さい。
【0070】
また、リベットの過剰な拡がりは、許容不能な接合部をもたらしかねない。このような接合部の一例を
図4Bに示す。本例では、
図3に示す接合部のように加工物30は3つの層を備える。
図4Bの接合部では、過剰で非対称な拡がりにより、リベット2のシャンク8が内側に曲がっている。この曲がりは、(
図4Bの視点で)シャンクの左側、つまり、符号Bを付した領域において、特に顕著である。このような曲がりは、リベットにより形成されるインターロックを縮小させ、及び/又は、脆弱箇所を(あるいは、亀裂や破断さえも)生じさせ、接合部を即時的又は尚早な破損を生じやすいものにし得る。
図4Bの接合部においては特に顕著ではないが、リベット2の過剰な拡がりは、リベットが加工物スラグ31を穴12内に収容せずに下向きに押すことで、加工物底層32cの最小厚さ36を縮小させ得る場合もある。これは
図4Bにおいて或る程度認められ、加工物スラグ31は、穴12の約半分のみにまで到達し、その上部にボイド50を残した状態となっている。その結果、底層32cの上方の層(本例では、中間層32b)から生じた加工物スラグ31の一部52が、リベット2に沿って(
図4Bの視点で)押し下げられている。加工物スラグ31の一部52が加工物底層32cを貫通するまで押し下げられ得る場合もある。リベットの過剰な拡がりによる他の問題として、シャンク8の曲がりにより、リベットにより与えられるインターロックが縮小し得ることが挙げられる。これは
図4Bにおいて或る程度まで認められ、加工物中間層32bからシャンク8の左側が引き離され始め、キャビティ54を形成している。シャンク8のこの部分が更に内側に移動していた場合には、形成されるインターロックは著しく縮小していたことになる。
【0071】
セルフピアスリベットは、概して適切な直径を有する或る長さのワイヤを「スラグ」に分離してから、1つ以上の鍛造加工で各スラグをリベットに鍛造することで製造される。
図5A~
図5Fは、典型的な既知の方法を用いるリベットの製造段階を示す。工程の第1段階では、或る長さのワイヤからスラグを分離させる。第1段階は、従来は、剪断刃を用いてワイヤの適切な長さの部分を剪断して、
図5Aに一例が示されるスラグ60を形成することによって、なされてきた。スラグ60は、リベットのヘッドとなるヘッド端62と、リベットの端部となるテール端64と、を有する。しかしながら、この段階においては、ヘッド端62及びテール端64は実質的に同一である。スラグ60の各端部は、2つの領域である、ワイヤの材料を変位させることで剪断刃がワイヤに突入する第1領域66と、剪断刃の挿入時に形成され、ワイヤからスラグ60を分離させた破断面として構成された第2領域68を備える。この図は、或る長さのワイヤからのスラグ60の破断により、スラグの2つの端部62, 64がわずかに均等でなくなり、粗面を有するものとなっていることも示している。
【0072】
スラグ60が或る長さのワイヤから分離されると、この例示的な方法では、第1鍛造加工を行う。この加工は、スラグ60のヘッド端62を平坦にし、テール端64にわずかな凹面70を形成する。これは、
図5Bに示されている。次いで、更なる鍛造加工を、
図5Cに示すように、凹面70の寸法を増加させるように実施される。その後、他の鍛造加工をスラグ60に施して、凹面70の形状を変化させ、それにより、リベットの先端部となるおおよその形状を形成する。これは、
図5Dに示されている。
【0073】
更なる鍛造加工により、凹面の深さを増加させてリベットの穴12を形成し、それにより、リベットのシャンク8を規定するとともに先端部6の形状を規定する。これは、
図5Eに示されている。穴12は、従来から、鍛造ダイ(図示せず)から突出する押出しピンを用いて形成される。押出しピンを、スラグ60に押し入れることで、穴12が形成される(あるいは、穴が拡げられる及び/又は深化させられる)。穴12の形成後、スラグ60は、通常、押出しピンに密着する。従って、一般に押出しピンは、牽引可能な構成を有し、あるいは、伸長可能な排出スリーブを有している。押出しピンをスラグ60から取り除くために、穴12からピンを除去するようにピンが牽引され、あるいは、押出しピンからスラグを押し出すために排出スリーブが伸張させられる。
【0074】
先端部6、シャンク8及び穴12の鍛造後、更なる鍛造加工をスラグ60に施してヘッド4を形成する。
図5Fに示すように、これで、リベット2の形成が完了する。
【0075】
この特定の例では、先端部及び穴をヘッドの形成前に完全に形成しているが、他の方法では、適切な数の鍛造加工により、リベットの構成を適切ないかなる順序で形成してもよいと理解されたい。例えば、シャンクの大まかな形状を最初に形成し、続いて、ヘッドを完全に形成した後に、シャンクを完全に形成し、先端部を完全に形成してもよい。他の例として、シャンクを最初に形成し、続いて、ヘッド及び先端部を同時に形成してもよい。他の例では、単一の工程で、又は漸次的に一連の工程を通じて、リベットの全ての構成を同時に形成してもよい。
【0076】
上述の方法のような従来のリベット製造の1つの問題として、スラグが或る長さのワイヤから破断されたとき、特に破断面68にて、巨視的な亀裂又は他の欠陥が形成されかねないことが挙げられる。鍛造工程は、そのような欠陥を平坦化させるかもしれないが、通常、それらを除去することはない。
図6A~
図6Cは、(鍛造前の)そのような欠陥の例を、符号Bが付された状態で示す。リベットの本体は、
図6A及び
図6Bの左側、並びに
図6Cの右下に示されている。各欠陥Bの深さ76が図示されるとともに、亀裂の広がり78の長さが
図6Bに示されている。寸法の表示としては、
図6A、
図6B及び
図6Cの欠陥の深さ76がぞれぞれ、63 μm、45 μm及び40 μmである。
図6Bの亀裂の広がり78の長さは116 μmである。
【0077】
図6A~
図6Cに示すような欠陥は、完成したリベットにおいては認識されない程小さいことが多いが、リベットを加工物に挿入するために必要となる力が加えられ、シャンクが加工物内で外向きに拡がると、このような欠陥は、リベットの機能の低下をもたらし得るし、破断さえももたらし得る。一般に、このような欠陥は、比較的高硬度のリベットを用いるときにより大きな問題となる。
図7Aは、鍛造工程後のリベット2の先端部6の微視的な亀裂を示している。
図7Bは、加工物内での裾状の拡がりを模すようにリベットが変形した後の同じ亀裂を示している。
図7Bの亀裂Bによって先端部6の破断Cがもたらされたことが分かる。このような破断は、形成された接合部の機能に非常に深刻な影響を与えかねない。
【0078】
従来のリベット製造方法の他の問題として、リベットの先端部が、その全周で不均等となり得る点が挙げられる。これは、例えば、鍛造中に、リベットが(例えば、排出スリーブにより、あるいは押出しピンが牽引されるのに伴って鍛造ダイの表面により)押出しピンから押されるときに生じ得る。また、これは、或る長さのワイヤからスラグを破断させたときに(特にスラグのテール端で)傾斜面が形成された場合にも生じ得る。このような傾斜面の存在は、鍛造工程においても完全に修正することはできない場合があり、リベットの先端部を不均等にし得る。
【0079】
図8A~
図8Dは、先端部6がその全周で不均一なリベット2を示す。本例では、先端部は、その全周のうち約200°の角度に亘って延在する平坦面80を有する。平坦面80の拡大図を
図8Bに示す。
図8C及び
図8Dは、
図8Aで符号C及びDを付された点におけるリベット2の先端部6の断面を示す。リベットの縦軸(図示せず)は、
図8Cに示された先端部の一部の上方に位置し、
図8Dに示された先端部の一部の下方に位置している。点Cにて、先端部6は3つの部分、すなわち、シャンクの外周縁部に隣接する部分22と、穴に隣接する部分24と、それらの間に配置された(上述した)平坦面80と、を有する。寸法の表示としては、平坦面80の径方向幅(すなわち、
図8cの視点での平坦面の高さ)は100 μm、外側部分22の径方向幅は130 μm、外側部分22の縦軸方向の長さは130 μmである。
【0080】
点Cとは対照的に、点Dにおいて先端部の内側部分24及び外側部分22は、刃先26を規定する。先端部周りの点Dにおいて、外側部分22の径方向幅は220 μmであり、外側部分22の縦軸方向の高さは169 μmである。
図8Cと
図8Dとを比較すると、外側部分22の曲率半径は、点Cよりも点Dにおいて著しく大きいことは明らかである。
【0081】
上述したように、リベットの先端部の形状は、リベットの拡がる範囲に顕著な影響を与える。従って、
図8A~
図8Dに示されるリベットは、その周方向に不均一な先端部形状のためにその全周で不均等に拡がり得るし、それにより、形成された接合部の品質を低下させ得る。いくつかの場合、不均等な先端部の形状は、先端部の全ての領域が許容可能な公差内であっても、不均等な拡がりを生じさせることで、リベットが正確に機能することを妨げかねない。
【0082】
出願人は、広範囲に亘る試験及び分析を行った結果、従来のリベットの製造方法には上述の限界があることを認識した。更なる分析及び実験により、出願人は、リベットの先端部又はスラグのテール端に機械加工を施すことで、亀裂若しくは欠陥の発生、及び/又は不均等な先端部を有するリベットの形成を有利に低減できることを発見するに至った。
【0083】
本発明の第1実施形態に従う方法を、
図9A~
図9Cに示す。この方法の第1段階は、
図5A~
図5Fを参照して説明した方法のような、或る長さのワイヤをスラグに分離し、各スラグをリベットに鍛造してリベットを形成する従来の方法を用いて、リベット2を製造するステップを含んでいる。このような工程により形成された例示的なリベットを
図9Aに示す。本例では、リベット2は、(
図9Aの視点で)先端部の上側の外側部分22が弓形状で、先端部の下側の外側部分が実質的に平坦な、不均等な先端部6を有している。本実施形態では、機械加工をリベット2の先端部6に施す。より具体的には、切削工具82を用いて先端部6の外側部分22を削減する。鍛造工程により形成されるリベット2は、リベットを過度に短くすることなく先端部から材料を取り除くことができるように、最終的に要求される寸法よりもわずかに長くしてもよい。本例では、切削工具82は、単一の直線状の刃先84を有している。従って、この工具は、「単純形状工具」であると考えてもよい。
【0084】
図9Bに示すように、本実施形態では、機械加工を行うためにリベット2(本例では、より具体的には、リベットのヘッド4)がチャック86に取り付けられている。チャック86は、縦軸10の周りにリベット2を回転させる。このリベットの回転は、速度方向における工具82に対するリベットの動きの一例である。そして、切削工具82は、送り方向(矢印E)にこの工具を動かすことでリベット2に導入される。本例では、送り方向Eはリベットの縦軸10方向と実質的に平行であるが、他の実施形態では、送り方向は他の適切な方向であってもよい。例えば、本実施形態の変形例では、送り方向は、リベット2の縦軸10に対して実質的に径方向に内向きであってもよい。他の変形例では、送り方向は、工具82の刃先84に対して垂直である。
【0085】
工具82が、リベットの先端部6の外側部分22が所望の形状となるまで送り方向に十分に移動すると、工程は停止し、リベット2は取り除かれる。
図9Cに示すように、機械加工後、リベット先端部6の形状はより均一となる。本実施形態では、機械加工により先端部6の形状は完全に均一となる。しかしながら、他の例では、機械加工により先端部6の形状における変化を低減してもよいが、先端部6の形状を完全に均一にはしなくてもよい。
【0086】
また、機械加工によって材料がリベット2の先端部6から取り除かれるため、その材料内の欠陥も取り除かれる。従って、欠陥がリベット2の先端部6に残存する可能性と、リベット2を用いて形成された接合部の破損をその後に生じる可能性と、を低減させることができる。
【0087】
リベット2の形状が最終形状となった後、リベット2を、従来の方法による熱処理、メッキ加工及び/又は(適切であれば)潤滑加工のために送ることができる。熱処理、メッキ加工及び/又は潤滑加工は、機械加工を行う前に行うこともできる。しかしながら、機械加工によって潤滑材又はメッキ加工材が取り除かれることがないように、あるいは、機械加工によって、潤滑材によりリベットに貼り付き得る削り屑を生じないように、機械加工は、メッキ加工又は潤滑加工の前に施すことが好ましい。リベットを熱し、一定の形状とすることで、材料が一定の機械特性を有するようになるため、機械加工を補助することができる。セルフピアスリベットの熱処理はリベットを硬化させることが多く、硬化される前の軟化状態にて機械加工する方が大半の場合効果的であるため、熱処理前に機械加工を行うことは、有利に作用することが多い。リベットを加熱及び冷却して硬化させた後に機械加工処置をリベットに施すことが好ましい場合がある。機械加工処置は、リベットの焼き戻しの前後に施すことができる。これを行うことの利点は、リベットの材料がより安定した機械特性を示すことができ、従って、リベットの機械加工がより安定した結果(すなわち、より安定した先端部形状を有するリベット)を提供できることである。リベットの材料がより安定した機械特性を有することの更なる利点は、機械加工工具の摩耗をより正確に予測できることである。焼き戻しは、例えば約280 Hvから580 Hvまでの硬度範囲のリベットバッチを製造するために用いることができる。
【0088】
本発明の第2実施形態に従う方法を
図10A~
図10Cに図示する。第1実施形態同様に、第2実施形態は、リベットに最終的な形状を与えるように機械加工をリベットの先端部に施す前に、
図5A~
図5Fを参照して説明したような従来の方法を用いてリベットを製造するステップを含んでいる。従って、上述した場合と同様に、鍛造工程により製造されるリベットは、リベットを過度に短くすることなく先端部から材料を取り除くことができるように、最終的に要求される長さよりも長くしてもよい。上述したような既知の工程で製造される他の例示的なリベットを、
図10Aに図示する。本例では、リベット2は、内側部分44が断面において弓形状をなすとともにリベットの全周上の異なる点で曲率半径が異なる不均等な先端部6を有している。本実施形態では、機械加工は、研削工具88を用いて先端部6の内側部分44を研削するステップを含む。
【0089】
本実施形態で用いる研削工具は研削プラグ(研削コーンとも称される)を用いる。しかしながら、他の実施形態では、他のタイプ又は形状の研削工具を用いてもよい。本実施形態に係る研削プラグ88は、要求された形状をリベットの先端部6に与える形状に成形されており、リベットの先端部6に与える形状が工具88の方向の変更のみよって選択されるようにはなっていないので、成形工具であると考えてもよい。本例では、例えば、リベット2の内側部分24は、円錐台形状であり、リベット2の縦軸10に対して約45°の角度で配置されることが望ましい。従って、研削プラグは、円錐台形状の表面を有し、その縦軸10(図示せず)に対して約45°の角度で配置され、研削は、該縦軸をリベットの縦軸10と実質的に整列させて施される。
【0090】
第2実施形態に係る機械加工を施すために、リベット2のヘッド4はクランプ90内に静止するように保持される。切削プラグ88は、リベットの縦軸10周りに回転し(工具88をリベットに対して速度方向に移動させる一例である)、送り方向Eにてリベットに向かって移動する。第1実施形態の場合と同様に、第2実施形態における送り方向Eは、リベット2の縦軸10に対して実質的に平行になっている。第2実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、機械加工工程が完了すると、先端部6は完全に均一な形状をなす。しかしながら、上述したように、他の実施形態では、機械加工により、先端部の均一性の欠如を全て除去するのではなく低減させるだけとしてもよい。第1実施形態の場合と同様に、切削プラグ88は、リベット2を用いて形成された接合部に破損を生じさせ得る欠陥を含み得る材料を取り除いている。
【0091】
本発明の第3実施形態に従う方法を
図11A~
図11Cに図示する。第3実施形態に係る方法は、第3実施形態で用いる切削工具82が成形工具である点を除いて、第1実施形態に係る方法と同様である。切削工具82は、工具を送り方向Eに送ることによってリベット先端部6に所望の形状を与えるように、要求された形状(本例では、直線形状)をなすとともに要求された角度を相互間になす2つの刃先84a, 84bを有している。また、第3実施形態は、機械加工を実質的に先端部6全体(すなわち、本例では、内側部分24、外側部分22及びそれらの間で規定される刃先26)に施す点で、第1実施形態と異なっている。
【0092】
本例では成形切削工具82は、2つの刃先84a, 84bを有する単一の刃を備えるが、他の実施形態では、成形切削工具は、リベットの先端部(機械加工を施されるのが先端部全体でない場合には、機械加工される部分)に要求される形状に沿った単一の刃先を備えてもよいと理解されたい。他の代替的実施形態では、工具は、要求された形状を協働して与えるように互いに重なる2つ以上の個別の刃を有していてもよい。
【0093】
本発明の実施形態において、機械加工が施される深さは、機械加工されるリベットの機能に応じて変更可能である。「機械加工の深さ」とは、リベット2から取り除かれる、縦軸10方向のリベット材料の深さを意味すると解釈することができる。
【0094】
リベットの先端部6の形状の均一性を向上させるために機械加工を施す実施形態において用いられる機械加工の深さは、概して、機械加工前のリベットの先端部の不均一部分の深さよりも深い。不均一部分の深さは、例えばリベットのバッチから抜き出した1つ以上のサンプルリベットを用いて、事前に測定してもよい。不均一部分の深さは、例えば、顕微鏡又は他の適切な設備システム/測定システム(例えば、プローブベースの長さ測定システム)を既知の方法で用いて測定してもよい。
【0095】
一実施形態において、リベット先端部6の形状の均一性を向上させるために行われる機械加工の深さは、例えば、少なくとも0.6 mmとすることができる。リベット先端部の不均一部分は、一般的にこの深さよりも小さいため、機械加工の深さを少なくとも0.6 mmとすることで、そのような不均一部分を十分に取り除くことができる。サンプルリベットにおいて計測した先端部の不均一部分の深さが例えば0.5 mmより一貫して著しく小さい場合には、機械加工の深さを、それに従って低減してもよい。例えば、機械加工の深さは、少なくとも0.5 mmに設定することができる。一般的に、機械加工の深さは、サンプルリベットにおけるリベット先端部の不均一部分の深さよりも深くなければならない(例えば、機械加工の深さは、サンプルリベットで確認されたリベット先端部の不均一部分の深さよりも少なくとも0.1 mm深いものとすることができる)。例えば、先端部の不均一部分の深さが一貫して、例えば約0.2 mm又はそれ未満である場合、機械加工の深さは、少なくとも0.3 mmに設定することができる。機械加工の深さは、1 mm以上、例えば5 mm以上に設定することができる。より大きな直径を有するリベットはより大きな先端部を有するため、上述した設定は、例えば、5.5 mmを超えるような従来の直径よりも大きな直径を有するリベットにも適用することができる。
【0096】
一般的に、先端部形状の不均一部分の深さを著しく越えて機械加工を行うことなく、その不均一部分を取り除くのに十分な深さまでリベットを機械加工することには利点がある。これは、必要以上の深さまで機械加工を施すと、リベットの製造に要する時間が増加し(従って、コストも増加し)、機械加工を施す工具の摩耗を増加させるためである。
【0097】
上述したように、リベットにおける欠陥の深さは、一般に100ミクロン未満であり、いくつかの場合、100ミクロン超(であってもよいが、一般には有意に200ミクロン未満)であろう。結果的に、200ミクロン(0.2 mm)の深さまでリベット先端部に機械加工を施すことで、リベット先端部における多くの主要な欠陥を取り除くことができ、恐らくリベット先端部の全ての欠陥を取り除くことができる。可能性としては低いが、非常に少数の欠陥は200ミクロンを超える深さを有しかねず、この場合、200ミクロンまで機械加工を施しても完全にこれらの欠陥を取り除くことはできない。例えば、500ミクロン(0.5 mm)の深さまでより深くリベット先端部に機械加工を施すことで、全ての欠陥を取り除くことができる。リベット先端部形状の均一性を向上させるために、リベット先端部に機械加工を施すならば、このような機械加工は同時に、その先端部から欠陥も取り除くことができることが理解されるであろう。(上述したように)機械加工の深さを少なくとも0.6 mmとすることで、均一なリベット先端部形状を構成することができ、リベット先端部から全ての欠陥を取り除くことができると考えることができる。機械加工の深さを少なくとも0.3 mmとすることで、リベット先端部から全ての欠陥を取り除くことができると考えることができる。
【0098】
欠陥の深さは、それぞれのリベットのバッチにより異なる。例えば、リベットの製造に用いる異なるタイプの材料、又はリベットを形成するスラグを製造するために用いた工具の多様な条件に左右される。従って、或るバッチのリベットから1つ以上のサンプルを用いて試験を行うことができ、リベットにおける欠陥の存否、並びに欠陥が存在する場合の欠陥の深さを決定することができる。リベットに施す機械加工の深さは、欠陥を取り除くために適切に選択することができる。
【0099】
一実施形態において、機械加工により、全ての欠陥を取り除くのではなく主要な欠陥を取り除くことができる。いくつかの欠陥の長さを低減させ、欠陥を部分的に残してもよい。これらの欠陥の長さを少なくとも半分まで低減させてもよい。このような実施形態では、いくつかの欠陥をリベット内に部分的に残すが、これらの欠陥の寸法は、リベットが加工物に挿入された際に所望の動作を行う(また、所望の強度を有する接合部を構成する)のに十分な程度に小さくてもよい。
【0100】
一実施形態において、機械加工は、既存のリベット先端部形状の均一性を向上させるだけでなく、リベット先端部を所望の形状とするために施すことができる。言い換えると、リベットは、所望の先端部形状なしに形成した後、リベット先端部を所望の形状とするために機械加工を施すことができる。このような方法を用いると、機械加工を施す深さは、所望のリベット先端部形状の深さよりも深くなる。機械加工を施す深さは、例えば、2 mm以上、及び3 mm以上とすることができる。これにより、リベットは、2 mm以上又は3 mm以上の深さを有する円錐台形状の内側部分24を構成することが可能となる。機械加工を施す深さは、5 mm以上(例えば、5.5 mmを超えるような従来の直径よりも大きな直径を有するリベットに対して)とすることができる。機械加工を施す深さは、例えば、少なくとも0.5 mmとすることができる。
【0101】
機械加工は、従来の方法(例えば、
図5と関連して上述した方法)では実現することが困難又は不可能であった形状を有するリベットを提供するために用いることができる。一実施形態において、機械加工は、リベットの穴の全長に亘って、あるいは、穴の実質的に全長に亘って、施すことができる。例えば、リベットの穴は、その穴の長さに沿って、テーパー加工することができる。テーパー加工は、リベットのヘッドに向かって狭くなる、又はリベットの先端部に向かって狭くなるように施すことができる。一実施形態において、穴は、くびれた中央部を有していてもよく、両端部方向に向かって外向きにテーパー形状(すなわち、ヘッドに向かって外向きにテーパー加工され、先端部に向かって外向きにテーパー加工される)を有していてもよい。一実施形態において、リベットは当初、軸方向に対して概ね平行な穴を有し、穴は機械加工を用いて所望の構成(テーパー形状及び/又はくびれた中央部を有する穴)に形成される。穴は、止まり穴または貫通穴であってもよい。
【0102】
一般に、機械加工を施すことで形成される形状は、リベットの軸長に沿って部分的に伸張し、あるいは、リベットのウェブまで伸張するものとすることができる。機械加工を施す深さは、例えば、リベットの長さと対応するものとすることができる(例えば、貫通穴においてはその全長に沿って機械加工を施す)。機械加工を施す深さは、例えば、(5 mm長のリベットにおいては)5 mmまで、あるいは、(14 mm長のリベットにおいては)14 mmまでとすることができる。機械加工を施す深さは、14 mm超とすることができる。
【0103】
図12A~
図12Cは、本発明に係る第4実施形態を図示する。本発明に係る上述の実施形態において、機械加工はリベットに施されるが、当実施形態においては、機械加工はスラグに施され、これらのスラグは、従来の手段によりリベットに鍛造される。より具体的には、本実施形態では、スラグがそれを形成する或る長さのワイヤの一部である間に、機械加工を各スラグに施す(ワイヤは、端と端とを接合した一連のスラグであると考えることができる)。
【0104】
まず、
図12Aを参照するが、本実施形態では、
図5A~
図5Fを参照して上述した従来の方法により、或る長さのワイヤ92からスラグ60を分離することができる。或る長さのワイヤ92からスラグ60を分離するよう、或る長さのワイヤ92に剪断刃94を打ち込むことで、ワイヤに(
図5Aに関して上述したように、ワイヤ材料を変形させることでワイヤに剪断刃が突入する第1領域及び破断面形状の第2領域を形成する)亀裂が生じる前にワイヤ92に凹部を形成する。本実施形態では、ワイヤ92は縦軸96を規定し、ワイヤから分離された各スラグ60は、スラグを貫通していたワイヤの縦軸96の一部と実施的に整列する縦軸98を規定することは特筆すべきことであろう。本例では、各スラグからリベットを鍛造した後、リベットの縦軸は、該リベットとなったスラグ60の縦軸98と実質的に整列する。リベットの縦軸がリベットとなったスラグの縦軸と実質的に整列する構成は、
図5A~
図5Fにおいて明らかであるように、上述した例示的な方法にも適用することができる。
【0105】
図12Bを参照するが、上述したように、スラグを分離したワイヤの先端部は、わずかに粗く不均等である。本実施形態では、この段階で、或る長さのワイヤ92から次に切除するスラグ60’のテール端64に機械加工を施す。機械加工の様子を
図12Cに示す。機械加工工程によってスラグ60から材料を取り除いても所望の長さのリベットを形成する鍛造工程のために十分な長さを残せるように、スラグは、必要な長さよりもわずかに長い状態でワイヤ92から破断させられている。
【0106】
本実施形態では、機械加工により、フライス工具形状の切削工具82を用いて、スラグ60’のテール端64を切削する。フライス工具は回転し(速度方向の動きの他の例)、本実施形態では、ワイヤ92の縦軸96と実質的に平行な(かつ、従って、スラグ60’の縦軸98と平行な)送り方向Eにてスラグ60’に導入される。切削工具82は、スラグ60’のテール端64で実質的に平坦な表面100を形成する。この場合、表面100は、スラグ60’の縦軸98に対して実質的に垂直である。従って、スラグのテール端64には、スラグ60’を鍛造してリベットを形成する場合に鍛造後にリベットの先端部を不均等にし得る傾斜面は、形成されない。更に、機械加工により、スラグ60’のテール端64から材料を取り除くということは、先のスラグ(
図12Aにおけるスラグ60)をワイヤ92から分離させるときに生じた欠陥も取り除くことができることを意味する。
【0107】
図13に、本発明に係る第5実施形態を図示する。第5実施形態では、第4実施形態と同様に、機械加工を、完成したリベットではなく、スラグ60に施す。しかしながら、本例では、第4実施形態の場合のようにスラグが未だ或る長さのワイヤの一部である間に機械加工を施すのではなく、或る長さのワイヤから分離した(例えば、上述した剪断刃を用いて)後に機械加工を施す。
【0108】
第5実施形態では、各機械加工を、2つのスラグ60a, 60bに同時に施す。より具体的には、2つのスラグ60a, 60bは、治具102により保持され、これらのスラグの各テール端64は、研削工具88(この場合、回転研削ホイール)に向いている。続いて、治具102は、送り方向Eにて、研削工具88に向かって前進する。従って、この場合、スラグが研削工具に向かって移動するのであって、研削工具がスラグに向かって移動するのではない。
【0109】
第5実施形態の変形例では、スラグ60a, 60bのテール端64及びヘッド端62を共に機械加工する。例えば、各スラグ60a, 60bの一端に機械加工を施した後、治具102の方向を反転させることで、もう一端に機械加工を施すことができる。代替的に、治具102を用いることで、スラグ60a, 60bを中間に保持し、その両端に機械加工を施す(例えば、2つの工具を用いて同時に機械加工を施す)構成とすることもできる。
【0110】
図14に、本発明に係る第6実施形態を図示する。第4実施形態の場合と同様に、本実施形態では、スラグ60'a, 60'bが未だ或る長さのワイヤ92の一部である間に、機械加工をスラグに施す。しかしながら、本実施形態では、各機械加工により、ワイヤからスラグを分離させる。本実施形態では、機械加工を、単純形状切削工具82を用いて施す。この切削工具82は、分離式鋸(丸鋸の一種)であって、或る長さのワイヤ92の縦軸96と平行な軸(すなわち、スラグ60'a, 60'bの縦軸と平行な軸)周りでスピンドル104によって回転される。そして、分離式鋸82は、ワイヤ92(すなわち、スラグ60'a, 60'b)の縦軸96に対して垂直である送り方向Eにて、ワイヤの縦軸に向かって移動することで、ワイヤ92の材料を切断する。
【0111】
この特定の実施形態では、或る長さのワイヤ92は、分離式鋸82がワイヤに切り込むのに伴って、チャック86により縦軸96周りに回転される。従って、分離式鋸82は、送り方向Eに移動するのに伴って、ワイヤの縦軸(すなわち、スラグ60'a, 60'bの縦軸)周りにて環状溝106を徐々に深化させながら形成する。溝106の両側は、一方のスラグ60'aのテール端64表面を形成し、隣接するスラグ60'bのヘッド端62表面を形成する。溝106の深さがワイヤ92の半径と同等になる(すなわち、溝がワイヤの縦軸96に到達する)と、一方のスラグ60'aのテール端64及び他方のスラグ60'bのヘッド端62の機械加工が完了し、一方のスラグ60'bは、或る長さのワイヤ92から分離される。この特定の実施形態では、機械加工により、一方のスラグ60'aのテール端64表面(図中、符号を記載せず)及び他方のスラグ60'bのヘッド端62表面を形成し、これらの表面はワイヤ92の縦軸96に対して実質的に垂直(すなわち、各スラグ60'a, 60'bの縦軸に対して実質的に垂直)である。
【0112】
ある長さのワイヤ92をその切断中に、縦軸96周りに回転させることで、スラグ60'a, 60'bのテール端64の周方向の均一性を向上させることができる。これにより、不均一な先端部を有するスラグからリベットが鍛造される潜在的な可能性を低減させることができる。ある長さのワイヤ92を回転させず、ワイヤ及び/又は分離式鋸のスピンドル104が切断中に偏向した場合、この偏向によりワイヤの縦軸に対する切断角度は変化する。従って、これにより、スラグ60'aのテール端64に傾斜面が形成され得る。対照的に、切断中に、或る長さのワイヤ92をその縦軸96周りに回転させることは、ワイヤ92又はスピンドル104の偏向が、ワイヤ周りに均一に生じ得ることを意味する。例えば、分離式鋸82から離れるワイヤ92の偏向は、スラグ60'aのテール端64にわずかに隆起した凸表面を形成し得る。同様に、ワイヤ92から離れるスピンドル104の偏向は、スラグ60'aのテール端64にわずかに凹んだ凹表面を形成し得る。凹凸を有する表面は通常、望ましくないが、完成したリベットの先端部周りの不均一性を生じる可能性を低減させることができるため、傾斜面においては好適であり得る。
【0113】
ある長さのワイヤ92をその切断中に、縦軸96周りに回転させることの他の利点として、スラグ60'bが分離したときに、残存する切り屑により、完成したリベットの先端形状に殆ど影響を与えることのない位置である、スラグの中央部にピップ又はインデントが形成されることが挙げられる。対照的に、ワイヤの端部をそれぞれ単純に切断した場合、分離したスラグ60'bに残存する切り屑は、スラグの周縁部に残存し、完成したリベットの先端部を全周で不均一なものにし得る。
【0114】
他の実施形態においても、(スラグ又はリベットのいずれに機械加工を施すかに関わらず)工具に対してスラグ/リベットを縦軸周りに回転させる、あるいは、同様にスラグ/リベットに対して工具をスラグ/リベットの縦軸周りにて回転させることで、同様の利点を実現することができる。
【0115】
上述した実施形態では、一方のスラグ60'aのテール端64に施されるとともに、隣接するスラグ60'b(すなわち、テール端に機械加工が施されたスラグに向けて進むスラグ)の分離も行う各機械加工について説明した。しかしながら、スラグ60'a, 60'bの先端部は実質的に同一であるため、リベットへの鍛造時におけるリベットの方向付けに応じて、各スラグのテール端に施す機械加工によるワイヤからのスラグの分離を行うことができると考えられる。例えば、
図14を参照するが、スラグのテール端が、図面の視点で左側を向いていると考えることができる。この例では、
図14に示す機械加工は、スラグ60'bのテール端に機械加工を施し、或る長さのワイヤ92からスラグを分離しながら、追加的にスラグ60'aのヘッド端に機械加工を施すことができる。
【0116】
明確性を期するために述べると、上述の実施形態では、ワイヤのスラグは、スラグのヘッドが全て同じ方向を向いているのではなく、異なる方向に配置されていると考えてもよい。例えば、スラグは、ヘッド同士、テール同士が互いに連続するように配置されていると考えてもよい。しかしながら、実施形態において、各スラグはそのテール端に機械加工を施され、スラグの先端部に施された同一の機械加工によりワイヤから特定のスラグが分離されたか否かに関わらず、各機械加工によりワイヤからスラグが分離される。
【0117】
リベットを形成する前のスラグに機械加工を施す本発明に係る実施形態において、機械加工の深さは、リベット端部の機械加工について上述した考えに基づいて選択することができる。従って、例えば、スラグ端部の非対称性を取り除くために機械加工を施した場合、その非対称部分よりも深く機械加工を施すことができる(例えば、機械加工を施す深さは、約0.6 mm以上とすることができる)。例えばスラグの端部が著しい非対称性を含まない場合のように、機械加工が、スラグの端部から主に欠陥を取り除くために施される場合、機械加工を施す深さはより浅くすることができる(例えば、約0.2 mm以上、例えば、約0.5 mm以上とすることができる)。
【0118】
スラグに機械加工を施す方法と、リベットに機械加工を施す方法とは、別々に説明しているが、いくつかの実施形態では、機械加工をスラグ及び全てのリベットの両方に施してもよいと理解されたい。例えば、いくつかの実施形態において、スラグに機械加工を施し、続いて、これらのスラグから形成されたリベットに、更なる機械加工を施すこともできる(ここで、いずれの機械加工も本発明の要件とされる機械加工であると考えてよく、従って、この実施形態は、スラグに機械加工を施す実施形態とリベットに機械加工を施す実施形態との両方に該当すると考えてよい)。
【0119】
上述した実施形態における鍛造工程は従来の手段を用いているが、このような手段に限定されるべきではない。スラグからのリベットの鍛造は、適切ないかなる方法によって行ってもよい。スラグに機械加工を施すいくつかの実施形態において、いくつかの鍛造工程は、機械加工に置き換えることができる(例えば、鍛造工程を開始する前に、
図5Cに示す状態にするまでスラグに機械加工を施すことができる)。
【0120】
リベット先端部の形状は、適切ないかなる方法で測定してもよい。例えば、コンフォーカル白光顕微鏡は、リベット先端部の三次元画像を生成するソフトウェアと共に用いることができる。代替的に、レーザー・プロファイル・スキャナは、リベット先端部の三次元画像を生成するソフトウェアと共に用いることができる。リベット先端部の形状の測定は、1つ以上のサンプルリベットに対して行うことができる。測定はリベットに機械加工を施す前に行うことができ、例えば、リベット先端部の形状の不均一部分の深さを測定するために行うことができる。追加的又は代替的に、リベット先端部の形状の不均一部分が取り除かれたことを確認するために機械加工後に測定を行ってもよい。
【0121】
リベットの欠陥を探知するためにいかなる方法を用いてもよい。例えば、リベットの光学顕微鏡検査を行ってもよい。これは、例えば、リベットの内部の観察を可能とするために検査の前に部分にスライスされたリベットを用いる、破壊的な方法であってもよい。代替的な方法では、リベットをダイに押し付けてリベット先端部の亀裂を探知することにより、リベットの機能を測定してもよい。これは、加工物材料が存在する状態で行ってもよいし、加工物材料が存在しない状態で行ってもよい。
【0122】
機械加工の実施に関し、本明細書でのリベット、スラグ又は或る長さのワイヤの1つの縦軸についての説明は、他のリベット、スラグ又は或る長さのワイヤにも同様に、適切な範囲で適用することができる。
【0123】
本明細書に記載する任意的及び/又は好適な構成は、適切な範囲で個別または互いに組み合わせて使用することができるし、特に(しかし非限定的に)、添付の特許請求の範囲に記載された組み合わせで使用することができる。また、本発明の各態様のための任意及び/又は好適な構成は、適切な範囲で本発明の他の態様に適用することができる。