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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/74 20060101AFI20220228BHJP
【FI】
H01L29/74 B
H01L29/74 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018043218
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019160927
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 いく子
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143138(JP,A)
【文献】実公昭56-028777(JP,Y1)
【文献】特開昭56-037677(JP,A)
【文献】特開2005-159279(JP,A)
【文献】特開昭57-078171(JP,A)
【文献】特開2012-054356(JP,A)
【文献】実開昭58-060951(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および前記第1面と反対側の第2面を有する第1導電型の半導体基板と、
前記第1面に形成された第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域上に形成された第1電極と、
前記第1電極から前記第1面に沿った面方向に離間して配置され、前記第1半導体領域に形成された前記半導体基板の不純物濃度より高い第1導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域上に形成された第2電極と、
前記第2面に形成された前記第2導電型の第3半導体領域と、
前記第3半導体領域上に形成された第3電極と、
前記第1半導体領域を取り囲むように配置され、前記第1面から前記第2面側に向かって形成された前記第2導電型のアイソレーション領域と、
前記アイソレーション領域上および前記第1半導体領域と前記アイソレーション領域との間の前記第1面に形成され、前記アイソレーション領域との間において、前記半導体基板と前記アイソレーション領域との間の逆方向耐圧よりも低い逆方向耐圧を有する、前記第1導電型の低耐圧領域と、
前記アイソレーション領域上および前記低耐圧領域上に形成され、前記アイソレーション領域と前記低耐圧領域との接合部を保護する保護膜と、を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記低耐圧領域の不純物濃度は、前記半導体基板の不純物濃度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記低耐圧領域の不純物濃度は、前記第2半導体領域の不純物濃度以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記保護膜は、更に、前記第1面上、前記第1半導体領域上および前記第2半導体領域上にも形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1半導体領域上に形成された前記第2導電型の第4半導体領域を更に備え、
前記第1電極は、前記第4半導体領域を介して前記第1半導体領域上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第4半導体領域の不純物濃度は、前記第1半導体領域の不純物濃度よりも高いことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第3半導体領域上に形成された前記第2導電型の第5半導体領域を更に備え、
前記第3電極は、前記第5半導体領域を介して前記第3半導体領域上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第5半導体領域の不純物濃度は、前記第3半導体領域の不純物濃度よりも高いことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の逆方向耐圧レスタイプのサイリスタ(例えば、特許文献1参照)は、図2に示す断面図の側面のように、逆方向特性を決定する接合(図2におけるNB層とPE層との接合)がチップ端でむき出しとなり、保護膜は形成されていない。
【0003】
このように、逆方向接合が保護膜で保護されていないため、従来のサイリスタのI(電流)-V(電圧)特性は、接合の出来上がりに大きく依存している。
【0004】
また、逆方向接合が保護されていないため、従来のサイリスタは、使用状況によってはその漏れ電流レベルが変動し、I-V特性が変動する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-294766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、従来は、個体差の少ない安定したI-V特性を得ることが困難な場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、個体差の少ない安定したI-V特性を得ることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る半導体装置は、
第1面および前記第1面と反対側の第2面を有する第1導電型の半導体基板と、
前記第1面に形成された第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域上に形成された第1電極と、
前記第1電極から前記第1面に沿った面方向に離間して配置され、前記第1半導体領域に形成された前記半導体基板の不純物濃度より高い第1導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域上に形成された第2電極と、
前記第2面に形成された前記第2導電型の第3半導体領域と、
前記第3半導体領域上に形成された第3電極と、
前記第1半導体領域を取り囲むように配置され、前記第1面から前記第2面側に向かって形成された前記第2導電型のアイソレーション領域と、
前記アイソレーション領域上および前記第1半導体領域と前記アイソレーション領域との間の前記第1面に形成され、前記アイソレーション領域との間において、前記半導体基板と前記アイソレーション領域との間の逆方向耐圧よりも低い逆方向耐圧を有する、前記第1導電型の低耐圧領域と、
前記アイソレーション領域上および前記低耐圧領域上に形成され、前記アイソレーション領域と前記低耐圧領域との接合部を保護する保護膜と、を備える。
【0009】
前記半導体装置において、
前記低耐圧領域の不純物濃度は、前記半導体基板の不純物濃度よりも高くてもよい。
【0010】
前記半導体装置において、
前記低耐圧領域の不純物濃度は、前記第2半導体領域の不純物濃度以上であってもよい。
【0011】
前記半導体装置において、
前記保護膜は、更に、前記第1面上、前記第1半導体領域上および前記第2半導体領域上にも形成されていてもよい。
【0012】
前記半導体装置において、
前記第1半導体領域上に形成された前記第2導電型の第4半導体領域を更に備え、
前記第1電極は、前記第4半導体領域を介して前記第1半導体領域上に形成されていてもよい。
【0013】
前記半導体装置において、
前記第4半導体領域の不純物濃度は、前記第1半導体領域の不純物濃度よりも高くてもよい。
【0014】
前記半導体装置において、
前記第3半導体領域上に形成された前記第2導電型の第5半導体領域を更に備え、
前記第3電極は、前記第5半導体領域を介して前記第3半導体領域上に形成されていてもよい。
【0015】
前記半導体装置において、
前記第5半導体領域の不純物濃度は、前記第3半導体領域の不純物濃度よりも高くてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様に係る半導体装置は、
第1面および第1面と反対側の第2面を有する第1導電型の半導体基板と、
第1面に形成された第2導電型の第1半導体領域と、
第1半導体領域上に形成された第1電極と、
第1電極から第1面に沿った面方向に離間して配置され、第1半導体領域に形成された半導体基板の不純物濃度より高い第1導電型の第2半導体領域と、
第2半導体領域上に形成された第2電極と、
第2面に形成された第2導電型の第3半導体領域と、
第3半導体領域上に形成された第3電極と、
第1半導体領域を取り囲むように配置され、第1面から第2面側に向かって形成された第2導電型のアイソレーション領域と、
アイソレーション領域上および第1半導体領域とアイソレーション領域との間の第1面に形成され、アイソレーション領域との間において、半導体基板とアイソレーション領域との間の逆方向耐圧よりも低い逆方向耐圧を有する、第1導電型の低耐圧領域と、
アイソレーション領域上および低耐圧領域上に形成され、アイソレーション領域と低耐圧領域との接合部を保護する保護膜と、を備える。
本発明によれば、低耐圧領域を設け、保護膜で逆方向接合を保護することで、個体差の少ない安定したI-V特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図2】従来の半導体装置(サイリスタ)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。本実施形態に係る半導体装置は、例えば、サイリスタ等に適用することができる。
【0019】
図1は、本実施形態に係る半導体装置1を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、半導体基板2と、第1半導体領域3と、第2半導体領域4と、第3半導体領域5と、第4半導体領域9と、第5半導体領域10とを備える。
【0021】
また、半導体装置1は、第1電極の一例であるゲート電極Gと、第2電極の一例であるカソード電極Kと、第3電極の一例であるアノード電極Aとを備える。
【0022】
また、半導体装置1は、アイソレーション領域6と、低耐圧領域7と、保護膜8とを備える。
【0023】
半導体装置1の各領域3~7、9、10は、不純物の拡散プロセスで形成することができる。
【0024】
半導体基板2は、第1面21および第1面21と反対側の第2面22を有する。
【0025】
半導体基板2は、導電型が、第1導電型の一例であるn型である。
【0026】
第1半導体領域3は、半導体基板2の第1面21に形成された不純物の拡散領域である。
【0027】
第1半導体領域3の導電型は、第2導電型の一例であるp型である。
【0028】
ゲート電極Gは、第1半導体領域3上に形成されている。
【0029】
第2半導体領域4は、ゲート電極Gから第1面21に沿った面方向dに離間して配置され、第1半導体領域3に形成された不純物の拡散領域である。
【0030】
第2半導体領域4の導電型は、n型である。より詳しくは、第2半導体領域4は、半導体基板2よりもn型不純物の不純物濃度が高い。
【0031】
カソード電極Kは、第2半導体領域4上に形成されている。
【0032】
第3半導体領域5は、半導体基板2の第2面22に形成された不純物の拡散領域である。
【0033】
第3半導体領域5の導電型は、p型である。
【0034】
アノード電極Aは、第3半導体領域5上に形成されている。
【0035】
アイソレーション領域6は、半導体基板2および第1半導体領域3を取り囲むように配置され、第1面21から第2面22側に向かって形成された不純物の拡散領域である。アイソレーション領域6は、半導体装置1の最外周に、第1面21から第3半導体領域5まで形成されている。
【0036】
アイソレーション領域6の導電型は、p型である。
【0037】
低耐圧領域7は、アイソレーション領域6上および第1半導体領域3とアイソレーション領域6との間の半導体基板2の第1面21に形成された不純物の拡散領域である。
【0038】
より詳しくは、低耐圧領域7は、アイソレーション領域6との間において、半導体基板2とアイソレーション領域6との間の逆方向耐圧よりも低い逆方向耐圧を有する領域である。低耐圧領域7とアイソレーション領域6との接合によって、逆方向特性を決定することができる。
【0039】
低耐圧領域7は、半導体基板2よりもn型不純物の不純物濃度が高い。
【0040】
例えば、半導体基板2の不純物濃度が1×1014cm-3であるのに対して、低耐圧領域7の不純物濃度は、1×1019cm-3であってもよい。
【0041】
また、低耐圧領域7の不純物濃度(n++)は、第2半導体領域4の不純物濃度(n++)と同一である。低耐圧領域7の不純物濃度は、第2半導体領域4の不純物濃度よりも高くてもよい。
【0042】
低耐圧領域7は、第1半導体領域3とアイソレーション領域6との間にチャネルが形成されて漏れ電流が生じることを防止するための順方向のチャネルストッパとしても機能する。
【0043】
保護膜8は、アイソレーション領域6上および低耐圧領域7上に形成された膜である。保護膜8は、例えば、酸化膜、ガラスパッシベーション膜である。
【0044】
より詳しくは、保護膜8は、個体差の少ない安定したI-V特性を得るため、アイソレーション領域6と低耐圧領域7との接合部を保護する。
【0045】
保護膜8は、I-V特性を更に向上させるため、第1面21上、第1半導体領域3上、第2半導体領域4上および第4半導体領域9上にも形成されている。
【0046】
より詳しくは、保護膜8は、低耐圧領域7と半導体基板2との接合部、半導体基板2と第1半導体領域3との接合部、および、第1半導体領域3と第2半導体領域4との接合部を保護している。
【0047】
第4半導体領域9は、第1半導体領域3に形成された不純物の拡散領域である。第4半導体領域9は、ゲート電極Gとオーミック接触したオーミック領域である。
【0048】
第4半導体領域9の導電型は、p型である。第4半導体領域9は、第1半導体領域3よりもp型不純物の不純物濃度が高い。
【0049】
ゲート電極Gは、第4半導体領域9を介して第1半導体領域3上に形成されている。
【0050】
第5半導体領域10は、第3半導体領域5上に形成された不純物の拡散領域である。第5半導体領域10は、アノード電極Aとオーミック接触したオーミック領域である。
【0051】
第5半導体領域10の導電型は、p型である。第5半導体領域10の不純物濃度は、第3半導体領域5よりもp型不純物の不純物濃度が高い。
【0052】
アノード電極Aは、第5半導体領域10を介して第3半導体領域5上に形成されている。
【0053】
ここで、もし、アイソレーション領域6と低耐圧領域7との接合部が保護されていない場合、逆方向特性は、接合部の出来上がりに大きく依存することになる。そして、接合部の出来上がりに応じてI-V特性が異なることで、I-V特性に個体差が生じる可能性がある。また、使用状況によっては、接合部における漏れ電流レベルが変動し、I-V特性が変動する可能性がある。
【0054】
これに対して、本実施形態に係る半導体装置1においては、保護膜8によってアイソレーション領域6と低耐圧領域7との接合部を保護している。これにより、接合部の出来上がりに依存しない個体差の少ないI-V特性を得ることができる。また、漏れ電流の変動を抑制して安定したI-V特性を得ることができる。
【0055】
また、低耐圧領域7がアイソレーション領域6に接触して形成されているため、チップサイズを低減することも可能となる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置1は、第1面21および第1面21と反対側の第2面22を有する第1導電型の半導体基板2と、第1面21に形成された第2導電型の第1半導体領域3と、第1半導体領域3上に形成された第1電極Gと、第1電極Gから第1面21に沿った面方向dに離間して配置され、第1半導体領域3に形成された半導体基板2の不純物濃度(n‐)より高い第1導電型の第2半導体領域4と、第2半導体領域4上に形成された第2電極Kと、第2面22に形成された第2導電型の第3半導体領域5と、第3半導体領域5上に形成された第3電極Aと、第1半導体領域3を取り囲むように配置され、第1面21から第2面22側に向かって形成された第2導電型p+のアイソレーション領域6と、アイソレーション領域6上および第1半導体領域3とアイソレーション領域6との間の第1面21に形成され、アイソレーション領域6との間において、半導体基板2とアイソレーション領域6との間の逆方向耐圧よりも低い逆方向耐圧を有する、第1導電型の低耐圧領域7と、アイソレーション領域6上および低耐圧領域7上に形成され、アイソレーション領域6と低耐圧領域7との接合部を保護する保護膜8と、を備える。
これにより、個体差の少ない安定したI-V特性を得ることができる。
【0057】
上述した実施形態は、あくまで一例であって、発明の範囲を限定するものではない。発明の要旨を逸脱しない限度において、上述した実施形態に対して種々の変更を行うことができる。変更された実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 半導体装置
2 半導体基板
21 第1面
22 第2面
3 第1半導体領域
4 第2半導体領域
5 第3半導体領域
6 アイソレーション領域
7 低耐圧領域
8 保護膜
図1
図2