(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、及び、遮光性吸着治具
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220228BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
G03F7/20 521
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2018051450
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】塚本 英之
(72)【発明者】
【氏名】熊田 渓一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 近
【審査官】冨士 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-074888(JP,A)
【文献】特開2013-050576(JP,A)
【文献】特開2013-131568(JP,A)
【文献】特開2003-167223(JP,A)
【文献】特開2014-137420(JP,A)
【文献】特開2013-070042(JP,A)
【文献】特開2016-218117(JP,A)
【文献】特開2004-059229(JP,A)
【文献】国際公開第2011/089828(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0208254(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/67-21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の第1面に形成された酸化膜上に感光材を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、遮光性吸着治具が写真マスクを貫通する吸着穴から前記半導体基板の前記第1面を吸引できるように、前記遮光性吸着治具を前記写真マスクの露光面に装着し、前記半導体基板の前記第1面側を前記遮光性吸着治具により吸引させることで前記写真マスクの接触面を前記半導体基板の前記第1面側に固定した状態で、光源から前記写真マスクを介して前記感光材に光を照射して、前記酸化膜上の前記感光材を選択的に感光させる露光工程と、
前記露光工程の後、感光した前記感光材を現像する現像工程と、を備え、
前記遮光性吸着治具は、前記光源が出力する前記光を遮光し且つ乱反射しないようになっていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記遮光性吸着治具は、
前記写真マスクの前記露光面上に配置され、前記写真マスクを前記半導体基板に吸着させる時に前記遮光性吸着治具を前記写真マスクに係止する本体部と、
前記本体部から延在し且つ前記写真マスクの前記吸着穴に挿入される挿入部と、を有し、且つ、前記本体部と前記挿入部とを貫通する通気穴が設けられており、
前記露光工程において、前記遮光性吸着治具の前記本体部側から前記通気穴と前記吸着穴を介して前記半導体基板の前記第1面を吸引することにより、前記半導体基板の前記第1面側に前記写真マスクの前記接触面を吸着させる
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記遮光性吸着治具の前記通気穴は、前記露光工程において、前記光源が出力する前記光が、前記通気穴を介して、前記感光材の表面に直接到達しないように設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記写真マスクの前記露光面に平行な面における、前記吸着穴の断面が、丸、又は、多角形の形状を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記遮光性吸着治具の前記挿入部が前記写真マスクの前記吸着穴に挿入された状態で、前記写真マスクの前記露光面に平行な面における、前記遮光性吸着治具の前記挿入部の断面が、丸、又は、多角形の形状を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記遮光性吸着治具の前記挿入部の前記写真マスクの前記吸着穴への挿入方向と平行な面における、前記遮光性吸着治具の前記通気穴の断面は、Y字型、L字型、T字型、又は、千鳥型になっている
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記吸着穴の断面の大きさは、前記半導体基板に形成される1つの半導体チップの表面の大きさよりも、小さい
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記遮光性吸着治具は、樹脂、ゴム、又は、無機物から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記感光材は、ネガ型のレジストであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記光は、紫外光であることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記光源は、水銀ランプであることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記写真マスクは、
前記光を透過する透過領域が選択的に設けられるとともに、前記吸着穴が形成されたガラス基板である
ことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記現像工程の後、残存する前記感光材をマスクとして、前記半導体基板の前記第1面上の前記酸化膜を選択的にエッチングして除去するエッチング工程をさらに備える
ことを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記エッチング工程の後、前記酸化膜が選択的に残存する前記半導体基板の前記第1面上にNiをメッキしてNiメッキ層を形成するメッキ工程と、
前記メッキ工程の後、前記半導体基板の前記第1面上に、はんだクレームを印刷してリフローすることにより、前記Niメッキ層上に、はんだ部材を成膜するスクリーン印刷工程と、
前記スクリーン印刷工程の後、前記酸化膜を介して前記半導体基板の前記第1面にレーザを照射して、前記半導体基板の前記第1面に切り込みを形成するレーザ照射工程と、
前記レーザ照射工程の後、前記切り込みに沿って、前記半導体基板を切断する切断工程と、を備える
ことを特徴とする請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
写真マスクを半導体基板に吸着させるための遮光性吸着治具であって、
前記写真マスクの露光面上に配置され、前記写真マスクを前記半導体基板に吸着させる時に前記遮光性吸着治具を前記写真マスクに係止する前記遮光性吸着治具を前記写真マスクに係止する本体部と、
前記本体部から延在し且つ前記写真マスクの吸着穴に挿入される挿入部と、を有し、
前記本体部と前記挿入部とを貫通する通気穴が設けられており、
露光工程において、前記遮光性吸着治具の前記本体部側から前記通気穴と前記吸着穴を介して前記半導体基板の
第1面を吸引することにより、前記半導体基板の前記第1面側に前記写真マスクの
接触面を吸着させるようになっている
ことを特徴とする遮光性吸着治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、及び、遮光性吸着治具に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ウェーハ表面にパターンを形成するため、液体のネガ型感光材(レジスト)を酸化膜の形成の後のウェーハに両面塗布する半導体装置の製造方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
このような従来の半導体装置の製造方法においては、N面側のウェーハは写真マスクに接触し、P面側のウェーハは写真マスクに接触しない状態で、格子状パターンの写真マスクを介して紫外線を両面に照射する(
図12)。
【0004】
このように紫外線を照射することでレジストが硬化し格子状のパターンを形成している。
【0005】
そして、紫外線が照射されない領域はレジストが硬化しないため、次工程の現像工程で容易に除去される。ウェーハは不純物拡散をした場合、不純物量にもよるがウェーハ反りが発生する。
【0006】
このウェーハ反りはレジスト塗布後の紫外線照射(露光工程)の際に位置ズレのよる未露光やパターンズレなどの不具合が発生することとなる。
【0007】
そこで、紫外線照射の際にウェーハを固定するために、ウェーハと接触するN面の写真マスクに穴をあけてバキュームで固定している。
【0008】
このバキューム穴に対応するウェーハの領域には紫外線が照射されることから、レジストが硬化するため現像工程では除去されない。
【0009】
そして、レジストが残った領域は酸化膜残りが発生する為、Niなどの電極が形成されない。
【0010】
また、ウェーハへスクリーン印刷法で予備はんだを形成するが、バキューム穴に対応する領域には酸化膜があるためはんだが付着しない。
【0011】
例えば、外観工程ではんだ未付着部分は除去されるが、識別のためP面のチップパターン(例えば、長方形)は、2チップ分を不良にするため、例えば、3パターンある場合、合計6チップ破棄することになる(
図13、
図14)。
【0012】
また、はんだ未付着の領域は、後工程の個辺化工程で割れ形状異常の不具合が発生し外観歩留りを悪化させている(
図15)。
【0013】
このように、上記従来技術では、写真マスクを半導体基板(ウェーハ)に吸着(固定)しつつ、感光材(レジスト)を露光する光(紫外線)を遮光して、所定の位置の当該感光材を選択的に露光することができないことで、電極が正常に形成されず、又、外観の歩留まりが低下する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特公平5-33808
【文献】特開2007-234742
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、露光工程において、写真マスクを半導体基板(ウェーハ)に吸着(固定)しつつ、感光材(レジスト)を露光する光(紫外線)を遮光して、所定の位置の当該感光材を選択的に露光することが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様に係る実施形態に従った半導体装置の製造方法は、
半導体基板の第1面に形成された酸化膜上に感光材を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、遮光性吸着治具が写真マスクを貫通する吸着穴から前記半導体基板の前記第1面を吸引できるように、前記遮光性吸着治具を前記写真マスクの露光面に装着し、前記半導体基板の前記第1面側を前記遮光性吸着治具により吸引させることで前記写真マスクの接触面を前記半導体基板の前記第1面側に固定した状態で、光源から前記写真マスクを介して前記感光材に光を照射して、前記酸化膜上の前記感光材を選択的に感光させる露光工程と、
前記露光工程の後、感光した前記感光材を現像する現像工程と、を備え、
前記遮光性吸着治具は、前記光源が出力する前記光を遮光し且つ乱反射しないようになっていることを特徴とする。
【0017】
前記半導体装置の製造方法において、
前記遮光性吸着治具は、
前記写真マスクの前記露光面上に配置され、前記写真マスクを前記半導体基板に吸着させる時に前記遮光性吸着治具を前記写真マスクに係止する本体部と、
前記本体部から延在し且つ前記写真マスクの前記吸着穴に挿入される挿入部と、を有し、且つ、前記本体部と前記挿入部とを貫通する通気穴が設けられており、
前記露光工程において、前記遮光性吸着治具の前記本体部側から前記通気穴と前記吸着穴を介して前記半導体基板の前記第1面を吸引することにより、前記半導体基板の前記第1面側に前記写真マスクの前記接触面を吸着させる
ことを特徴とする。
【0018】
前記半導体装置の製造方法において、
前記遮光性吸着治具の前記通気穴は、前記露光工程において、前記光源が出力する前記光が、前記通気穴を介して、前記感光材の表面に直接到達しないように設けられている
ことを特徴とする。
【0019】
前記半導体装置の製造方法において、
前記写真マスクの前記露光面に平行な面における、前記吸着穴の断面が、丸、又は、多角形の形状を有する
ことを特徴とする。
【0020】
前記半導体装置の製造方法において、
前記遮光性吸着治具の前記挿入部が前記写真マスクの前記吸着穴に挿入された状態で、前記写真マスクの前記露光面に平行な面における、前記遮光性吸着治具の前記挿入部の断面が、丸、又は、多角形の形状を有する
ことを特徴とする。
【0021】
前記半導体装置の製造方法において、
前記遮光性吸着治具の前記挿入部の前記写真マスクの前記吸着穴への挿入方向と平行な面における、前記遮光性吸着治具の前記通気穴の断面は、Y字型、L字型、T字型、又は、千鳥型になっている
ことを特徴とする。
【0022】
前記半導体装置の製造方法において、
前記吸着穴の断面の大きさは、前記半導体基板に形成される1つの半導体チップの表面の大きさよりも、小さい
ことを特徴とする。
【0023】
前記半導体装置の製造方法において、前記遮光性吸着治具は、樹脂、ゴム、又は、無機物から構成されていることを特徴とする。
【0024】
前記半導体装置の製造方法において、
前記感光材は、ネガ型のレジストであることを特徴とする。
【0025】
前記半導体装置の製造方法において、
前記光は、紫外光であることを特徴とする。
【0026】
前記半導体装置の製造方法において、
前記光源は、水銀ランプであることを特徴とする。
【0027】
前記半導体装置の製造方法において、
前記写真マスクは、
前記光を透過する透過領域が選択的に設けられるとともに、前記吸着穴が形成されたガラス基板である
ことを特徴とする。
【0028】
前記半導体装置の製造方法において、
前記現像工程の後、残存する前記感光材をマスクとして、前記半導体基板の前記第1面上の前記酸化膜を選択的にエッチングして除去するエッチング工程をさらに備える
ことを特徴とする。
【0029】
前記半導体装置の製造方法において、
前記エッチング工程の後、前記酸化膜が選択的に残存する前記半導体基板の前記第1面上にNiをメッキしてNiメッキ層を形成するメッキ工程と、
前記メッキ工程の後、前記半導体基板の前記第1面上に、はんだクレームを印刷してリフローすることにより、前記Niメッキ層上に、はんだ部材を成膜するスクリーン印刷工程と、
前記スクリーン印刷工程の後、前記酸化膜を介して前記半導体基板の前記第1面にレーザを照射して、前記半導体基板の前記第1面に切り込みを形成するレーザ照射工程と、
前記レーザ照射工程の後、前記切り込みに沿って、前記半導体基板を切断する切断工程と、を備える
ことを特徴とする。
【0030】
本発明の一態様に係る実施形態に従った遮光性吸着治具は、
写真マスクを半導体基板に吸着させるための遮光性吸着治具であって、
前記写真マスクの露光面上に配置され、前記写真マスクを前記半導体基板に吸着させる時に前記遮光性吸着治具を前記写真マスクに係止する前記遮光性吸着治具を前記写真マスクに係止する本体部と、
前記本体部から延在し且つ前記写真マスクの吸着穴に挿入される挿入部と、を有し、
前記本体部と前記挿入部とを貫通する通気穴が設けられており、
露光工程において、前記遮光性吸着治具の前記本体部側から前記通気穴と前記吸着穴を介して前記半導体基板の前記第1面を吸引することにより、前記半導体基板の前記第1面側に前記写真マスクの前記接触面を吸着させるようになっている
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板(ウェーハ)の第1面(N面)に形成された酸化膜上に感光材を塗布する塗布工程と、塗布工程の後、遮光性吸着治具が写真マスク(N面写真マスク)を貫通する吸着穴から半導体基板の第1面を吸引できるように、遮光性吸着治具を写真マスクの露光面に装着し、半導体基板の第1面(N面)側を遮光性吸着治具により吸引させることで写真マスクの接触面を半導体基板の第1面(N面)側に固定した状態で、光源から写真マスクを介して感光材に光を照射して、酸化膜上の感光材を選択的に感光させる露光工程と、露光工程の後、感光した感光材を現像する現像工程と、を備え、遮光性吸着治具は、光源が出力する光を遮光し且つ乱反射しないようになっている。
【0032】
すなわち、本発明の半導体装置の製造方法によれば、写真マスクを半導体基板(ウェーハ)に吸着(固定)しつつ、感光材(レジスト)を露光する光(紫外線)を遮光して、所定の位置の当該感光材を選択的に露光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の半導体装置の製造方法の露光工程において半導体基板(ウェーハ)Wを横方向から見た断面の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、半導体基板Wが遮光性吸着治具Xで吸着される領域Zの位置が3箇所の場合の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す遮光性吸着治具Xの一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す遮光性吸着治具Xを横方向(半導体基板Wの側面側)から見た外観一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す遮光性吸着治具Xを縦方向(半導体基板Wの第1面側)から見た外観一例を示す図である。
【
図6】
図6は、半導体基板Wが遮光性吸着治具Xで吸着される領域Zのはんだ部材を成膜した後の半導体基板Wの第1面(N面)の外観の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、半導体基板Wが遮光性吸着治具Xで吸着される領域Z近傍における、半導体基板Wの第2面(P面)側のマスクパターンの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、半導体基板Wが遮光性吸着治具Xで吸着される領域Zのはんだ部材を成膜した後の半導体基板Wの第2面(P面)の外観の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、
図1に示す遮光性吸着治具Xの他の例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、従来の半導体装置の製造方法の露光工程において半導体基板(ウェーハ)を横方向から見た断面の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、従来の半導体基板が吸着される領域近傍における、半導体基板の第2面(P面)側のマスクパターンの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、従来の半導体基板が吸着される領域のはんだ部材を成膜した後の半導体基板の第2面(P面)の外観の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、従来の半導体基板が吸着される領域のはんだ部材を成膜した後の半導体基板Wの第1面(N面)の外観の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る実施形態について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0035】
図1は、本発明の半導体装置の製造方法の露光工程において半導体基板(ウェーハ)Wを横方向から見た断面の一例を示す図である。また、
図2は、半導体基板Wが遮光性吸着治具Xで吸着される領域Zの位置が3箇所の場合の一例を示す図である。また、
図3は、
図1に示す遮光性吸着治具Xの一例を示す断面図である。また、
図4は、
図3に示す遮光性吸着治具Xを横方向(半導体基板Wの側面側)から見た外観一例を示す図である。また、
図5は、
図3に示す遮光性吸着治具Xを縦方向(半導体基板Wの第1面W1側)から見た外観一例を示す図である。
【0036】
以下、本実施例1に係る半導体装置の製造方法を工程順に説明する。
【0037】
先ず、N型の不純物が含まれたシリコン基板である半導体基板(ウェーハ)Wを準備し、当該半導体基板Wの第1面W1にN型の不純物を拡散させるとともに、半導体基板Wの第1面W1の反対側の第2面W2にP型の不純物を拡散させる。
【0038】
そして、当該半導体基Wの第1面W1及び第2面W2に、例えば、熱酸化により、酸化膜を形成する。
【0039】
そして、当該半導体基板Wの第1面W1(N面)に形成された酸化膜上に感光材Rを塗布する(塗布工程)。
【0040】
なお、上述の感光材Rは、本実施例1では、ネガ型のレジストである。しかし、この感光材Rは、適用される半導体装置のプロセスに応じて、ポジ型のレジストにしてもよい。
【0041】
そして、この塗布工程の後、遮光性吸着治具Xが写真マスクM(N面写真マスク)を貫通する吸着穴Maから半導体基板Wの第1面W1を吸引できるように、遮光性吸着治具Xを写真マスクMの露光面MRに装着し、半導体基板Wの第1面W1(N面)側を遮光性吸着治具Xにより吸引させることで写真マスクMの接触面MS(露光面MRの反対側の面)を半導体基板Wの第1面W1(N面)側に固定した状態で、光源Lから写真マスクMを介して感光材Rに光を照射して、酸化膜上の感光材Rを選択的に感光させて、感光部分Raを形成する(露光工程)。
【0042】
なお、本実施例1においては、光源Lは、例えば、水銀ランプである。この場合、この光源Lが出力する光Hは、例えば、紫外光である。
【0043】
なお、この光源Lは、LEDランプであってもよい。
【0044】
そして、この露光工程の後、感光した感光材Rを現像する(現像工程)。
【0045】
なお、
図1に示す露光工程においては、半導体基板Wの第1面W1(N面)側はN面写真マスクMに接触し、半導体基板Wの第2面W2(P面)側はP面写真マスク(図示せず)に接触しない状態で、格子状パターンの当該N面、P面写真マスクを介して紫外線(光)Hを両面に照射する。
【0046】
このように紫外線Hを照射することでネガ型のレジストである感光材Rが硬化し格子状のパターンを形成している。
【0047】
そして、紫外線Hが照射されない領域は感光材Rが硬化しないため、次工程の現像工程で容易に除去される。なお、既述のように、半導体基板Wには不純物拡散がされているため、ウェーハ反りが発生し得る。
【0048】
このウェーハ反りは、既述のように、レジスト塗布後の紫外線照射(当該露光工程)の際に位置ズレのよる未露光やパターンズレなどの原因になる。
【0049】
そこで、半導体基板Wと接触するN面の写真マスクMに吸着穴Maを複数個(例えば、3箇所)貫通させて(
図2)、紫外線照射(露光工程)の際にバキュームにより半導体基板Wを固定している(
図1)。
【0050】
そして、既述の現像工程の後、残存する感光材Rをマスクとして、半導体基板Wの第1面W1(N面)上の酸化膜を選択的にエッチングして除去する(エッチング工程)。
【0051】
その後、図示しないが、半導体基板Wの第2面W2(P面)側に、残存する酸化膜をマスクとして、チップ毎に半導体基板Wを切断するためのメサ溝を形成するとともに、当該メサ溝にガラス保護膜を形成する。
【0052】
その後、酸化膜が選択的に残存する半導体基板Wの第1面W1(N面)上にNiをメッキしてNiメッキ層を形成する(メッキ工程)。
【0053】
このメッキ工程の後、半導体基板Wの第1面W1(N面)上に、はんだクレームを印刷してリフローすることにより、Niメッキ層上に、はんだ部材を成膜する(スクリーン印刷工程)。
【0054】
そして、スクリーン印刷工程の後、酸化膜を介して半導体基板Wの第1面W1にレーザを照射して、半導体基板Wの第1面W1(N面)に切り込みを形成する(レーザ照射工程)。
【0055】
そして、レーザ照射工程の後、形成された切り込みに沿って、半導体基板Wを切断する(切断工程)。
【0056】
以上の工程により、半導体装置(半導体チップ)が個片化され、当該半導体装置に対して、外観検査や特性検査が実施されることとなる。
【0057】
ここで、本実施例1で適用される写真マスクMについて、詳述する。
【0058】
この写真マスクMは、例えば、光を透過する透過領域Mbが選択的に設けられるとともに、吸着穴Maが形成されたガラス基板である。
【0059】
そして、この写真マスクMの露光面MRに平行な面における、吸着穴Maの断面が、例えば、丸、又は、多角形(三角、四角等)の形状を有する。本実施例1においては、吸着穴Maの断面は、丸になっている。
【0060】
また、写真マスクMの露光面MRに平行な面における、当該吸着穴Maの断面の大きさは、半導体基板Wに形成される1つの半導体装置(半導体チップ)の表面の大きさよりも、小さくなるように設定されている。
【0061】
次に、本実施例1で適用される遮光性吸着治具について、詳述する。
【0062】
この遮光性吸着治具Xは、写真マスクMを半導体基板Wに吸着させるための治具であり、光源Lが出力する光を遮光し且つ乱反射しないようになっている。
【0063】
この遮光性吸着治具Xは、例えば、
図1、
図3に示すように、本体部Xbと、挿入部Xhと、を有する。
【0064】
そして、本体部Xbは、写真マスクMの露光面MR上に配置され、写真マスクMを半導体基板Wに吸着させる時に遮光性吸着治具Xを写真マスクMに係止するようになっている。
【0065】
挿入部Xhは、本体部Xbから延在し且つ写真マスクMの吸着穴Maに挿入されるようになっている。
【0066】
そして、この遮光性吸着治具Xは、本体部Xbと挿入部Xhとを貫通する通気穴A1、A2が設けられている。
【0067】
そして、既述の露光工程において、遮光性吸着治具Xの本体部Xb側から通気穴A1、A2と吸着穴Maを介して半導体基板Wの第1面W1を吸引する(写真マスクMの露光面MR側を負圧にする)ことにより、半導体基板Wの第1面W1側に写真マスクMの接触面MSを吸着させるようになっている。
【0068】
また、遮光性吸着治具Xの通気穴A1、A2は、露光工程において、光源Lが出力する光が、通気穴A1、A2を介して、感光材Rの表面に直接到達しないように設けられている。
【0069】
また、この遮光性吸着治具Xの挿入部Xhが写真マスクMの吸着穴Maに挿入された状態で、写真マスクMの露光面MRに平行な面における、遮光性吸着治具Xの挿入部Xhの断面が、丸、又は、多角形(三角、四角等)の形状を有するようになっている。
【0070】
また、遮光性吸着治具Xの挿入部Xhの写真マスクMの吸着穴Maへの挿入方向と平行な面における、遮光性吸着治具Xの通気穴A1、A2の断面は、T字型になっている。なお、後述のように、遮光性吸着治具Xの通気穴A1、A2の断面は、例L字型、略Y字型、又は、千鳥型になっていてもよい。
【0071】
なお、遮光性吸着治具Xは、例えば、樹脂、ゴム、又は、無機物(SiC等)から構成されている。
【0072】
ここで、
図6は、半導体基板Wが遮光性吸着治具Xで吸着される領域Zのはんだ部材を成膜した後の半導体基板Wの第1面W1(N面)の外観の一例を示す図である。また、
図7は、半導体基板Wが遮光性吸着治具Xで吸着される領域Z近傍における、半導体基板Wの第2面W2(P面)側のマスクパターン(P面写真マスク)の一例を示す図である。また、
図8は、半導体基板Wが遮光性吸着治具Xで吸着される領域Zのはんだ部材を成膜した後の半導体基板Wの第2面W2(P面)の外観の一例を示す図である。
【0073】
図6ないし
図8に示すように、遮光性吸着治具Xで吸着される領域Z近傍においても、露光工程において感光材Rが感光しないことで、酸化膜残りによるNiメッキ、はんだ未付着部分が無くなるため、通常の電極が形成され、半導体チップの歩留まりが向上することとなる。
【0074】
以上のように、本発明の実施例1に係る半導体装置の製造方法は、半導体装置の製造方法は、半導体基板(ウェーハ)の第1面(N面)に形成された酸化膜上に感光材を塗布する塗布工程と、塗布工程の後、遮光性吸着治具が写真マスク(N面写真マスク)を貫通する吸着穴から半導体基板の第1面を吸引できるように、遮光性吸着治具を写真マスクの第1面(露光面)に装着し、半導体基板の第1面(N面)側を遮光性吸着治具により吸引させることで写真マスクの第2面(接触面)を半導体基板の第1面(N面)側に固定した状態で、光源から写真マスクを介して感光材に光を照射して、酸化膜上の感光材を選択的に感光させる露光工程と、露光工程の後、感光した感光材を現像する現像工程と、を備える。そして、遮光性吸着治具は、光源が出力する光を遮光し且つ乱反射しないようになっている。
【0075】
すなわち、本実施例1の半導体装置の製造方法によれば、写真マスクを半導体基板(ウェーハ)に吸着(固定)しつつ、感光材(レジスト)を露光する光(紫外線)を遮光して、所定の位置の当該感光材を選択的に露光することができる。
【実施例2】
【0076】
既述の実施例1では、遮光性吸着治具Xの一例について説明した。しかしながら、既述のように、遮光性吸着治具は、光源Lが出力する光を遮光し且つ乱反射しないように構成されていればよい。
【0077】
そこで、本実施例2では、光源Lが出力する光を遮光し且つ乱反射しないように構成された遮光性吸着治具Xの他の例について説明する。
【0078】
図9ないし
図11は、
図1に示す遮光性吸着治具Xの他の例を示す断面図である。
【0079】
例えば、
図9ないし
図11に示すように、遮光性吸着治具Xの挿入部Xhの写真マスクMの吸着穴Maへの挿入方向と平行な面(露光面MRに対して垂直な面)における、遮光性吸着治具Xの通気穴A1、A2の断面は、例L字型(
図9)、略Y字型(10)、又は、千鳥型(
図11)になっていてもよい。
【0080】
なお、本実施例2に係る半導体装置の製造方法のその他の構成は、実施例1と同様である。
【0081】
すなわち、本実施例2の半導体装置の製造方法によれば、写真マスクを半導体基板(ウェーハ)に吸着(固定)しつつ、感光材(レジスト)を露光する光(紫外線)を遮光して、所定の位置の当該感光材を選択的に露光することができる。
【0082】
以上のように、本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板(ウェーハ)の第1面(N面)に形成された酸化膜上に感光材を塗布する塗布工程と、塗布工程の後、遮光性吸着治具が写真マスク(N面写真マスク)を貫通する吸着穴から半導体基板の第1面を吸引できるように、遮光性吸着治具を写真マスクの露光面に装着し、半導体基板の第1面(N面)側を遮光性吸着治具により吸引させることで写真マスクの接触面を半導体基板の第1面(N面)側に固定した状態で、光源から写真マスクを介して感光材に光を照射して、酸化膜上の感光材を選択的に感光させる露光工程と、露光工程の後、感光した感光材を現像する現像工程と、を備え、遮光性吸着治具は、光源が出力する光を遮光し且つ乱反射しないようになっている。
【0083】
すなわち、本発明の半導体装置の製造方法によれば、写真マスクを半導体基板(ウェーハ)に吸着(固定)しつつ、感光材(レジスト)を露光する光(紫外線)を遮光して、所定の位置の当該感光材を選択的に露光することができる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0085】
W 半導体基板
W1 第1面
W2 第2面
R 感光材
X 遮光性吸着治具
Xb 本体部
Xh 挿入部
M 写真マスク
吸着穴Ma
MR 露光面
MS 接触面
L 光源
A1、A2 通気穴