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特許7030586放熱部材およびそれを装着した放熱性発熱体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】放熱部材およびそれを装着した放熱性発熱体
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20220228BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220228BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20220228BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20220228BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220228BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220228BHJP
   H01G 2/08 20060101ALI20220228BHJP
   H01G 9/048 20060101ALI20220228BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
H05K7/20 B
H01M10/613
H01M10/653
H01M10/6551
H01M10/625
H01M10/647
H01G2/08 A
H01G9/048 C
H01G4/32 305Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018055965
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019169603
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆男
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-118880(JP,A)
【文献】実開昭63-9197(JP,U)
【文献】特開平11-249761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01M 10/613
H01M 10/653
H01M 10/6551
H01M 10/625
H01M 10/647
H01G 2/08
H01G 9/048
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体に装着可能でその長さ方向に伸縮可能な放熱部材であって、
ゴム状弾性体に当該ゴム状弾性体より熱伝導性の高い熱伝導材を含む紐状若しくは輪状の本体において、その長さ方向に貫通する内空間から該本体の外に通じる貫通部位を、該本体の長さ方向の面以外の側面に備える放熱部材。
【請求項2】
前記本体は、平板をスパイラル状に、前記本体の長さ方向に進行させる形態を有する請求項1に記載の放熱部材。
【請求項3】
前記本体は、チューブ状である請求項1に記載の放熱部材。
【請求項4】
前記本体は、
前記ゴム状弾性体に前記熱伝導材を含む第1層と、
該第1層の内側若しくは外側に配置され前記第1層よりも熱伝導性に優れる第2層と、
を少なくとも有する請求項1から3のいずれか1項に記載の放熱部材。
【請求項5】
前記第2層は、金属から主に構成される層、またはセラミックス若しくはグラファイトを含む層である請求項4に記載の放熱部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の放熱部材を、前記発熱体に装着した構成を有する放熱性発熱体。
【請求項7】
前記放熱部材の前記本体が輪状に構成され、
前記放熱部材を前記発熱体の表面に対して輪状に装着している請求項6に記載の放熱性発熱体。
【請求項8】
前記放熱部材の前記本体が紐状に構成され、
前記放熱部材を前記発熱体の表面に対して巻回するように装着している請求項6に記載の放熱性発熱体。
【請求項9】
前記発熱体はコンデンサあるいはバッテリーセルである請求項6から8のいずれか1項に記載の放熱性発熱体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体からの放熱を促進する放熱部材およびそれを発熱体に装着した状態の放熱性発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、航空機、船舶あるいは家庭用若しくは業務用電子機器の制御システムは、より高精度かつ複雑化してきており、それに伴って、回路基板上の小型電子部品の集積密度が増加の一途を辿っている。この結果、回路基板周辺の発熱による電子部品の故障や短寿命化を解決することが強く望まれている。
【0003】
回路基板からの速やかな放熱を実現するには、従来から、回路基板自体を放熱性に優れた材料で構成し、ヒートシンクを取り付け、あるいは放熱ファンを駆動するといった手段を単一で若しくは複数組み合わせて行われている。これらの内、回路基板自体を放熱性に優れた材料、例えばダイヤモンド、窒化アルミニウム(AlN)、cBNなどから構成する方法は、回路基板のコストを極めて高くしてしまう。また、放熱ファンの配置は、ファンという回転機器の故障、故障防止のためのメンテナンスの必要性や設置スペースの確保が難しいという問題を生じる。これに対して、放熱フィンは、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)を用いた柱状あるいは平板状の突出部位を数多く形成することによって表面積を大きくして放熱性をより高めることのできる簡易な部材であるため、放熱部品として汎用的に用いられている(特許文献1を参照)。
【0004】
ところで、現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しょうとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、2040年までにガソリン車とディーゼル車から完全に電気自動車に切り替えることを宣言している。電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置などの課題がある。特に、リチウム系の自動車用バッテリーの充放電機能を高めるための技術開発が大きな課題となっている。上記自動車バッテリーは、摂氏60度以上の高温下では充放電の機能を十分に発揮できないことが良く知られている。このため、先に説明した回路基板と同様、バッテリーにおいても、放熱性を高めることが重要視されている。
【0005】
また、電気自動車の普及および自動車以外のインフラ供給電力用の制御回路には、電解コンデンサが不可欠である。電解コンデンサは、インバータ、コンバータ、信号制御および演算処理に用いるコンピュータに多く用いられる。この種のコンデンサは、小型電子機器に搭載されるコンデンサとは異なり、大型でかつ発熱量の大きなものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-243999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今後、益々、回路基板上の電子部品の密集度が高くなる状況、電解コンデンサが密集する状況、あるいはバッテリーからの放熱をより促進する必要性が高まる状況を考える、従来のヒートシンクを用いることは難しい。このため、放熱対象たる発熱体の密集化およびより高い放熱性に対応する放熱部材が強く望まれている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、発熱体の密集化に対応容易であってかつ高い放熱性を発揮可能な放熱部材、およびそれを装着した放熱性発熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る放熱部材は、発熱体に装着可能でその長さ方向に伸縮可能な放熱部材であって、ゴム状弾性体に当該ゴム状弾性体より熱伝導性の高い熱伝導材を含む紐状若しくは輪状の本体において、その長さ方向に貫通する内空間から該本体の外に通じる貫通部位を、該本体の長さ方向の面以外の側面に備える。
【0010】
(2)別の実施形態に係る放熱部材において、好ましくは、本体は、平板をスパイラル状に、本体の長さ方向に進行させる形態を有する。
【0011】
(3)別の実施形態に係る放熱部材において、好ましくは、本体はチューブ状である。
【0012】
(4)別の実施形態に係る放熱部材において、好ましくは、本体は、ゴム状弾性体に熱伝導材を含む第1層と、第1層の内側若しくは外側に配置され第1層よりも熱伝導性に優れる第2層と、を少なくとも有する。
【0013】
(5)別の実施形態に係る放熱部材において、好ましくは、第2層は、金属から主に構成される層、またはセラミックス若しくはグラファイトを含む層である。
【0014】
(6)一実施形態に係る放熱性発熱体は、前述のいずれかの放熱部材を発熱体に装着した構成を有する。
【0015】
(7)別の実施形態に係る放熱性発熱体において、好ましくは、放熱部材の本体は、輪状に構成され、放熱部材は発熱体の表面に対して輪状に装着されている。
【0016】
(8)別の実施形態に係る放熱性発熱体において、好ましくは、放熱部材の本体は紐状に構成され、放熱部材は発熱体の表面に対して巻回するように装着されている。
【0017】
(9)別の実施形態に係る放熱性発熱体において、好ましくは、発熱体はコンデンサあるいはバッテリーセルである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発熱体の密集化に対応容易であってかつ高い放熱性を発揮可能な放熱部材、およびそれを装着した放熱性発熱体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1実施形態に係る放熱部材の平面図および当該平面図中の矢印A-A間の部分の拡大側面図(1A)と、(1A)の放熱部材の変形例の斜視図(1B)と、をそれぞれ示す。
図2図2は、図1(1A,1B)の2種放熱部材を構成する本体の各種変形例の(1A)と同様の拡大側面図(2A,2B,2C,2D)を示す。
図3図3は、第2実施形態に係る放熱部材の斜視図および当該斜視図中の矢印A-A間の部分の拡大側面図(3A)と、(3A)の放熱部材の変形例の斜視図および当該斜視図中の矢印A-A間の部分の拡大側面図(3B)と、をそれぞれ示す。
図4図4は、図3(3A,3B)の本体に第2層を設けた各種変形例に係る放熱部材の一部の斜視図および放熱部材を一端方向から見た右側面図(4A,4B)を示す。
図5図5は、本発明の第1実施形態に係る各種放熱性発熱体の斜視図(5A,5B)を示す。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る各種放熱性発熱体の斜視図(6A,6B)を示す。
図7図7は、本発明の第3実施形態に係る放熱性発熱体の斜視図および一部Bの拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
1.放熱部材
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る放熱部材の平面図および当該平面図中の矢印A-A間の部分の拡大側面図(1A)と、(1A)の放熱部材の変形例の斜視図(1B)と、をそれぞれ示す。
【0022】
第1実施形態に係る放熱部材1は、発熱体に装着可能でその長さ方向に伸縮可能な放熱部材である。放熱部材1は、ゴム状弾性体10と、ゴム状弾性体10より熱伝導性の高い熱伝導材30とを含む輪状の本体2を有する。放熱部材1は、本体2の長さ方向に貫通する内空間3から本体2の外に通じる隙間(貫通部位の一例)4を、本体2の長さ方向以外の側面5に備える。
【0023】
放熱部材1の本体2は、好ましくは、平板をスパイラル状に、本体2の長さ方向に進行させる形態を有する。この実施形態では、本体2は、好ましくは、ゴム状弾性体10と熱伝導材30とを含む第1層15と、第1層15の内側に配置され、ゴム状弾性体10よりも熱伝導性に優れる第2層20と、を少なくとも有する。なお、後述するように、第1層15と第2層20との配置を逆にして、第1層15の外側に第2層20を備えても良い。また、第1層15、第2層20以外の層を本体2に備えても良い。
【0024】
ゴム状弾性体10は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系、ナイロン(登録商標)に代表されるポリアミド系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。また、ゴム状弾性体10は、上記ゴム等より硬質の樹脂を含む材料でも良く、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)等を好適に例示できる。ゴム状弾性体10は、放熱対象たる発熱体からの熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。
【0025】
熱伝導材(熱伝導フィラーと称することもできる)30は、好ましくは、金属、炭素系材料、セラミックスである。金属としては、アルミニウム、アルミニウム系合金、鉄、鉄系合金、銅、銅系合金あるいはSUSを例示できる。セラミックスとしては、金属の酸化物、水酸化物若しくは窒化物を挙げることができる。セラミックスのより好適な材料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、hBN、cBNあるいは炭化ケイ素等を例示できる。また、炭素系材料としては、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、非晶質炭素若しくはグラファイト等を例示できる。熱伝導材30は、第1層15を製造する上で支障が無ければ、第1層15の全体積に対して如何なる比率で含まれていても良いが、好ましくは2~70体積%の範囲である。図1中の熱伝導材30は、第1層15の全体積に対して2~10体積である。
【0026】
第2層20は、金属から主に構成される層である。金属としては、アルミニウム、アルミニウム系合金、鉄、鉄系合金、銅、銅系合金あるいはSUSを例示できる。第2層20は、好ましくは、第1層15よりも熱伝導性の高い金属である。第2層20は、金属に代えてあるいは金属と共に、炭素系材料を含む層であっても良い。炭素系材料としては、熱伝導材30に用いることのできる炭素系材料と同様の材料を例示できる。金属あるいは炭素系材料は、第2層20の全部を構成する材料でも良いが、一部を構成する材料でも良い。金属あるいは炭素系材料が第2層20を構成する一部の材料の場合、例えば、紙の原料であるセルロース、若しくは樹脂と、金属若しくは炭素系材料とを混合してシート状に成形して、第2層20を製造しても良い。
【0027】
放熱部材1の本体2をスパイラル状に構成すると、本体2の側面5にスパイラル状の隙間4が形成される。隙間4は、本体2の外側に位置する側面5から内空間3に連通する部位である。このため、本体2の内側および外側の両面を放熱に利用できる。また、放熱部材1の外面に位置する第1層15をゴム状弾性体10にて構成することにより、輪状の放熱部材1を発熱体の外側にはめたときに、発熱体と放熱部材1の外面とを密着させやすくなる。このため、放熱部材1と発熱体との間の熱抵抗(=熱伝導を妨げる性質)を低減することができる。さらに、スパイラル状の本体2は、高い伸縮性を有するので、発熱体のサイズに制約なく若しくは制約を小さくできる。
【0028】
(1B)に示す放熱部材1aは、紐状であってその長さ方向にそれぞれ端部(端面と称しても良い)を有する点で、(1A)に示す放熱部材1と異なる。放熱部材1aは、放熱部材1と同様、前述の第1層15と、前述の第2層20とを積層した平板を、スパイラル状に本体2の長さ方向に進行させる形態を有する。なお、放熱部材1aの本体2の長さ方向両端に、両端を結合する部材を取り付けても良い。このように、放熱部材1,1aの形態は、閉じた輪のみならず、輪を開いた紐状の形態でも良い。
【0029】
図2は、図1(1A,1B)の2種放熱部材を構成する本体の各種変形例の(1A)と同様の拡大側面図(2A,2B,2C,2D)を示す。
【0030】
(2A)に示す本体2は、第1層15に占める熱伝導材30の体積%を(1A)に示す本体2よりも大きくし、11~30体積%の範囲内としている点を除き、(1A)に示す本体2と共通する。
【0031】
(2B)に示す本体2は、第1層15に占める熱伝導材30の体積%を(2A)に示す本体2よりも大きくし、31~70体積%の範囲内としている点を除き、(2A)に示す本体2と共通する。
【0032】
(2C)に示す本体2は、(2A)の第1層15のみから成り、第2層20を備えていない点を除き、(2A)に示す本体2と共通する。このように、放熱部材1,1aは、ゴム状弾性体10と熱伝導材30とを含む第1層15からのみ構成される本体2を備えても良い。熱伝導材30は、(2B)あるいは(1A)と同様、第1層15に対して31~70体積%あるいは2~10体積%の各範囲内としても良い。
【0033】
(2D)に示す本体2は、(2A)に示す本体2の第1層15の材料と第2層20の材料とを逆にして、外側に金属、炭素系材料若しくはその両方を含有する第1層15を設け、その内側にゴム状弾性体10と熱伝導材30とを含有する第2層20を設けた構造を有する。隙間4は、この場合でも、(2A)と同様、第2層20と第1層15とを貫通して、外と内空間3とを連通する。
【0034】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る放熱部材について説明する。第1実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0035】
図3は、第2実施形態に係る放熱部材の斜視図および当該斜視図中の矢印A-A間の部分の拡大側面図(3A)と、(3A)の放熱部材の変形例の斜視図および当該斜視図中の矢印A-A間の部分の拡大側面図(3B)と、をそれぞれ示す。
【0036】
第2実施形態に係る放熱部材1bは、発熱体に装着可能でその長さ方向に伸縮可能な放熱部材である。(3A)に示す放熱部材1bは、ゴム状弾性体10bと、ゴム状弾性体10bより熱伝導性の高い熱伝導材30とを含む輪状の本体2bを有する。放熱部材1bは、本体2bの長さ方向に貫通する内空間3から本体2bの外に通じる貫通孔(貫通部位の一例)12を、本体2bの長さ方向の面以外の側面5に備える。本体2bは、チューブ状である。貫通孔12は、本体2bの外側に位置する側面5から内空間3に連通する部位である。このため、本体2bの内側および外側の両面を放熱に利用できる。ゴム状弾性体10bは、第1実施形態におけるゴム状弾性体10と同様の材料から成る。
【0037】
また、放熱部材1bの本体2b全体をゴム状弾性体10bにて構成することにより、輪状の放熱部材1bを発熱体の外側にはめたときに、発熱体と放熱部材1bの外面とを密着させやすくなる。このため、放熱部材1bと発熱体との間の熱抵抗を低減することができる。さらに、本体2bは、伸縮性を有するので、発熱体のサイズに制約なく若しくは制約を小さくできる。
【0038】
(3B)に示す放熱部材1cは、紐状であってその長さ方向にそれぞれ端部を有する点で、(2A)に示す放熱部材1bと異なる。放熱部材1cは、放熱部材1bと類似して、ゴム状弾性体10cと熱伝導材30とを含む本体2cの側面5に、内空間3につながる複数の貫通孔12を備える。ゴム状弾性体10cは、第1実施形態におけるゴム状弾性体10と同様の材料から成る。なお、放熱部材1cの本体2cの長さ方向両端に、両端を結合する部材を取り付けても良い。このように、放熱部材1b,1cの形態は、閉じた輪のみならず、輪を開いた紐状の形態でも良い。
【0039】
図4は、図3(3A,3B)の本体に第2層を設けた各種変形例に係る放熱部材の一部の斜視図および放熱部材を一端方向から見た右側面図(4A,4B)を示す。
【0040】
図4(4A)に示す本体2b’は、チューブ状であり、ゴム状弾性体10bと熱伝導材30とを含む第1層15bと、第1層15bの内側に配置され第1層15bよりも熱伝導性に優れる第2層20bと、を有する。ここでは、第2層20bは、金属から主に構成される層であるが、セラミックス若しくはグラファイトを含む層でも良い。第1層15bは、第1実施形態に係る放熱部材1の第1層15と同様の材料から構成される。また、第2層20bは、第1実施形態に係る放熱部材1の第2層20と同様の材料から構成される。
【0041】
放熱部材1bは、本体2b’の長さ方向に貫通する内空間3から本体2b’の外に通じる貫通孔(貫通部位の一例)12を、本体2b’の長さ方向の面以外の側面5に備える。貫通孔12は、本体2b’の外側に位置する側面5から内空間3に連通する部位である。このため、本体2b’の内側および外側の両面を放熱に利用できる。なお、図4に示す本体2b’は、紐状の放熱部材1c(図3(3B)を参照)を構成しても良い。
【0042】
(4B)に示す本体2b’’は、(4A)に示す本体2b’の第1層15bの材料と第2層20bの材料とを逆にして、外側に金属、炭素系材料若しくはその両方を含有する第1層15bを設け、その内側にゴム状弾性体10bと熱伝導材30とを含有する第2層20bを設けた構造を有する。貫通孔12は、この場合でも、(4A)と同様、第2層20bと第1層15bとを貫通して、外と内空間3とを連通する。
【0043】
2.放熱性発熱体
次に、本発明の各実施形態に係る放熱性発熱体について図面を参照しながら説明する。
【0044】
(第1実施形態)
図5は、本発明の第1実施形態に係る各種放熱性発熱体の斜視図(5A,5B)を示す。
【0045】
第1実施形態に係る放熱性発熱体50は、(5A)に示すように、発熱体の一例である電解コンデンサ40の外側面41に輪状の放熱部材1を所定間隔にて3本装着した構成を有する。放熱部材1の数は3本に限らず、1本、2本あるいは4本以上でも良い。放熱部材1は、図1(1A)に示す輪状に閉じた部材である。その本体については図1(1A)、図2(2A,2B,2C,2D)等の種々の形態をとり得る。電解コンデンサ40は、破裂(爆発)のリスクを最小限にするため、通常、その天面が上方に飛びやすい構成を有する。このため、外側面41は、放熱部材1をはめるのに適した部位である。また、複数の電解コンデンサ40を密集配置した場合にでも、放熱部材1は内空間3と隙間4とを有しており、変形自在である。したがって、放熱部材1は、破損することなく、電解コンデンサ40からの熱を自身に伝えて他の部位(空気中も含む)へと放熱させる機能を十分に発揮できる。
【0046】
第1実施形態の変形例に係る放熱性発熱体50aは、(5B)に示すように、電解コンデンサ40の外側面41に1本の紐状の放熱部材1aを所定間隔にて3回巻回するように装着した構成を有する。放熱部材1aの数は1本に限らず、2本以上でも良い。放熱部材1aは、図1(1B)に示すように両端を有する紐状部材である。その本体については図1(1B)、図2(2A,2B,2C,2D)等の種々の形態をとり得る。複数の電解コンデンサ40を密集配置した場合にでも、放熱部材1aは内空間3と隙間4とを有しており、変形自在である。したがって、放熱部材1aは、先に説明した放熱部材1と同様、放熱機能を十分に発揮できる。
【0047】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る各種放熱性発熱体の斜視図(6A,6B)を示す。
【0048】
第2実施形態に係る放熱性発熱体50bは、(6A)に示すように、電解コンデンサ40の外側面41に輪状の放熱部材1bを所定間隔にて3本装着した構成を有する。放熱部材1bの数は3本に限らず、1本、2本あるいは4本以上でも良い。放熱部材1bは、図3(3A)に示す輪状に閉じた部材である。その本体については図3(3A)、図4(4A,4B)等の種々の形態をとり得る。複数の電解コンデンサ40を密集配置した場合にでも、放熱部材1bは内空間3を有しており、変形自在である。したがって、放熱部材1bは、破損することなく、電解コンデンサ40からの熱を自身に伝えて他の部位(空気中も含む)へと放熱させる機能を十分に発揮できる。
【0049】
第2実施形態の変形例に係る放熱性発熱体50cは、(6B)に示すように、電解コンデンサ40の外側面41に1本の紐状の放熱部材1cを所定間隔にて3回巻回するように装着した構成を有する。放熱部材1cの数は1本に限らず、2本以上でも良い。その本体については図3(3B)、図4(4A,4B)等の種々の形態をとり得る。複数の電解コンデンサ40を密集配置した場合にでも、放熱部材1cは内空間3を有しており、変形自在である。したがって、放熱部材1cは、先に説明した放熱部材1bと同様、放熱機能を十分に発揮できる。
【0050】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態に係る放熱性発熱体の斜視図および一部Bの拡大図を示す。
【0051】
第3実施形態に係る放熱性発熱体70は、発熱体の一例であるバッテリーセル60の外側面61~64に輪状の放熱部材1を所定間隔にて6本装着した構成を有する。このように、バッテリーセル60にスパイラル状の放熱部材1を装着することにより、バッテリーセル60からの熱を速やかに放熱できる。なお、放熱部材1に代えて、放熱部材1a,1b,1cをバッテリーセル60に装着しても良い。紐状の放熱部材1a,1cをバッテリーセル60に装着する場合には、放熱部材1a,1cを、バッテリーセル60の外周に沿って1回若しくは2回以上巻回すれば良い。
【0052】
3.その他の実施形態
上記のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0053】
例えば、放熱部材1,1a,1b,1c(以後、「放熱部材1等」という。)を装着する発熱体は、電解コンデンサ40あるいはバッテリーセル60のみならず、他の電子部品や回路基板でも良い。例えば、電解コンデンサを含むコンデンサ(キャパシタともいう)として、アルミニウム電解コンデンサ、アルミニウム固体電解コンデンサのみならず、タンタル電解コンデンサ、セラミックコンデンサ、マイカ・コンデンサ、ポリエステルフィルムコンデンサ、電気二重層コンデンサを例示できる。また、バッテリーセル60は、電気自動車のバッテリーに搭載されるもの以外に、電車、船舶等の他の移動手段に搭載可能なものでも良い。
【0054】
放熱部材1等の本体2,2b,2b’,2b’’,2c(以後、「本体2等」という。)は、ゴム状弾性体10,10b,10c(以後、「ゴム状弾性体10等」という。)と熱伝導材30とを含む紐状若しくは輪状の本体である。しかし、本体2等は、金属、炭素系材料あるいは金属と炭素系材料とを両方含むスパイラル状、チューブ状若しくは中実状の形態でも良い。
【0055】
また、上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば、自動車用バッテリーの他、自動車、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品などの各種電子機器にも利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1,1a,1b,1c・・・放熱部材、2,2b,2b’,2b’’,2c・・・本体、3・・・内空間、4・・・隙間(貫通部位の一例)、5・・・側面、10,10b,10c・・・ゴム状弾性体、12・・・貫通孔(貫通部位の一例)、15,15b・・・第1層、20,20b・・・第2層、30・・・熱伝導材、40・・・電解コンデンサ(コンデンサ、発熱体の一例)、41・・・外側面(表面)、50,50a,50b,50c・・・放熱性発熱体、60・・・バッテリーセル(発熱体の一例)、61~64・・・外側面(表面)、70・・・放熱性発熱体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7