(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】圧力検出器
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20220228BHJP
G01L 19/06 20060101ALI20220228BHJP
G01L 7/00 20060101ALI20220228BHJP
G01L 19/00 20060101ALI20220228BHJP
G01L 7/08 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
A61M1/36 105
G01L19/06 A
G01L7/00 D
G01L19/00 A
G01L7/08
(21)【出願番号】P 2018094462
(22)【出願日】2018-05-16
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真悟
(72)【発明者】
【氏名】川尻 博之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亮
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特公昭62-051630(JP,B2)
【文献】特許第6685089(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0234817(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0050168(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0186518(US,A1)
【文献】特許第5141004(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M1/36
G01L7/00
G01L7/08
G01L19/00
G01L19/06
本件出願を優先基礎とする国際特許出願PCT/JP2019/019393の調査結果及び対応欧州出願の調査結果が利用された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の流路に接続可能なケースと、
該ケース内に取り付けられ、前記流路の液体を充填し得る液相部と、気体を充填し得る気相部とを区画するとともに、前記液相部に充填された液体の圧力に応じて変位可能な膜部材と、
を具備し、前記気相部の圧力を検出することにより前記流路における液体の圧力を検出する圧力検出器において、
前記液体の流路に接続可能な接続部を有するとともに、前記液相部の流入口から液体を流入させる流路部を有した流入ポートと、
前記液体の流路に接続可能な接続部を有するとともに、前記液相部に流入した液体を流出口から流出させる流路部を有した流出ポートと、
を有し、前記流入ポートの流路部又は流出ポートの流路部のうち少なくとも一方は、その液体の流入方向又は流出方向が前記膜部材の取付面に対して傾斜して成る
ものとされ、且つ、前記流入ポート及び流出ポートのうち少なくとも一方は、前記接続部との境界面における前記流路部の中心位置にある第1中心点と前記境界面と平行であって前記流入口又は流出口の開口縁を含む面における前記流路部の中心位置にある第2中心点とを結ぶ仮想線が前記接続部の中心線に対して傾斜して成ることを特徴とする圧力検出器。
【請求項2】
少なくとも前記流入ポートの流路部は、前記液相部に向かって漸次縮径して成ることを特徴とする請求項1記載の圧力検出器。
【請求項3】
前記流入ポート及び流出ポートは、前記ケースの周方向に対して所定角度有して形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の圧力検出器。
【請求項4】
前記流入ポートの流路部及び流出ポートの流路部は、液体の流入方向と流出方向とが互いにオフセットして成ることを特徴とする請求項1~3の何れか1つに記載の圧力検出器。
【請求項5】
前記ケースは、前記液相部が形成される液相部ケースと、前記気相部が形成される気相部ケースとを有して構成され、前記膜部材の取付面は、当該液相部ケース及び気相部ケースを合致させて前記膜部材を挟持した挟持面を含む仮想平面から成ることを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載の圧力検出器。
【請求項6】
液体の流路に接続可能なケースと、
該ケース内に取り付けられ、前記流路の液体を充填し得る液相部と、気体を充填し得る気相部とを区画するとともに、前記液相部に充填された液体の圧力に応じて変位可能な膜部材と、
を具備し、前記気相部の圧力を検出することにより前記流路における液体の圧力を検出する圧力検出器において、
前記液体の流路に接続可能な接続部を有するとともに、前記液相部の流入口から液体を流入させる流路部を有した流入ポートと、
前記液体の流路に接続可能な接続部を有するとともに、前記液相部に流入した液体を流出口から流出させる流路部を有した流出ポートと、
を有し、前記流入ポートの流路部又は流出ポートの流路部は、その液体の流入方向又は流出方向が前記膜部材の取付面に対して平行とされ、且つ、前記流入ポート及び流出ポートの一方における前記接続部との境界面における前記流路部の中心位置にある第1中心点と前記境界面と平行であって前記流入口又は流出口の開口縁を含む面における前記流路部の中心位置にある第2中心点とを結ぶ仮想線の延長線上に前記流入ポート及び流出ポートの他方における前記第2中心点が重ならない配置とされ
、前記第1中心点と第2中心点とを結ぶ仮想線が前記接続部の中心線に対して傾斜して成ることを特徴とする圧力検出器。
【請求項7】
少なくとも前記流入ポートの流路部は、前記液相部に向かって漸次縮径して成ることを特徴とする請求項
6記載の圧力検出器。
【請求項8】
前記流入ポート及び流出ポートは、前記ケースの周方向に対して所定角度有して形成されたことを特徴とする請求項
6又は請求項
7記載の圧力検出器。
【請求項9】
前記流入ポートの流路部及び流出ポートの流路部は、液体の流入方向と流出方向とが互いにオフセットして成ることを特徴とする請求項
6~
8の何れか1つに記載の圧力検出器。
【請求項10】
前記ケースは、前記液相部が形成される液相部ケースと、前記気相部が形成される気相部ケースとを有して構成され、前記膜部材の取付面は、当該液相部ケース及び気相部ケースを合致させて前記膜部材を挟持した挟持面を含む仮想平面から成ることを特徴とする請求項
6~
9の何れか1つに記載の圧力検出器。
【請求項11】
請求項1~
10の何れか1つの圧力検出器が接続されたことを特徴とする血液回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相部の圧力を検出することにより流路における液体の圧力を検出し得る圧力検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、透析治療時においては、採取した患者の血液を体外循環させて再び体内に戻すための血液回路が用いられており、かかる血液回路は、例えば中空糸膜を具備したダイアライザ(血液浄化器)と接続し得る動脈側血液回路及び静脈側血液回路から主に構成されている。これら動脈側血液回路及び静脈側血液回路の各先端には、動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針が取り付けられ、それぞれが患者に穿刺されて透析治療における血液の体外循環が行われることとなる。
【0003】
血液回路を体外循環する血液の圧力を検出するため、例えば特許文献1にて開示されているように、血液回路に接続可能なケースと、ケース内に取り付けられ、血液回路の血液を充填し得る液相部と、空気を充填し得る気相部とを区画するとともに、液相部に充填された血液の圧力に応じて変位可能なダイヤフラム(膜部材)とを具備し、気相部の圧力を圧力検出センサにて検出することにより血液の圧力を検出し得る圧力検出器が提案されている。かかる従来の圧力検出器によれば、液相部と気相部とが膜部材にて区画されているため、血液が気相部内の空気に触れてしまうのを回避しつつ血液回路内の血液の圧力を精度よく検出することができる。
【0004】
このような圧力検出器において、液相部内の血液の滞留を抑制するため、従来、血液を液相部に流入させる流入ポートと、液相部に流入した血液を流出させる流出ポートとをオフセットして形成し、流入口と流出口とが対向して形成されないよう構成されたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。かかる圧力検出器によれば、流入口から流入した血液が液相部内で攪拌された後、流出口から流出されるので、液相部内における血液の滞留を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-504389号公報
【文献】特開2008-136673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の円柱形状の圧力検出器においては、流入ポート及び流出ポートの軸線が互いに平行、且つ、オフセットしているため液相部の容量が大きくなってしまい、血液回路に接続した場合のプライミングボリュームが大きくなってしまうとともに、液相部内の十分な撹拌効果を得るのが難しくなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、液相部の容量増大を抑制しつつ液相部内の液体を十分に撹拌することができる圧力検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、液体の流路に接続可能なケースと、該ケース内に取り付けられ、前記流路の液体を充填し得る液相部と、気体を充填し得る気相部とを区画するとともに、前記液相部に充填された液体の圧力に応じて変位可能な膜部材とを具備し、前記気相部の圧力を検出することにより前記流路における液体の圧力を検出する圧力検出器において、前記液体の流路に接続可能な接続部を有するとともに、前記液相部の流入口から液体を流入させる流路部を有した流入ポートと、前記液体の流路に接続可能な接続部を有するとともに、前記液相部に流入した液体を流出口から流出させる流路部を有した流出ポートとを有し、前記流入ポートの流路部又は流出ポートの流路部のうち少なくとも一方は、その液体の流入方向又は流出方向が前記膜部材の取付面に対して傾斜して成るものとされ、且つ、前記流入ポート及び流出ポートのうち少なくとも一方は、前記接続部との境界面における前記流路部の中心位置にある第1中心点と前記境界面と平行であって前記流入口又は流出口の開口縁を含む面における前記流路部の中心位置にある第2中心点とを結ぶ仮想線が前記接続部の中心線に対して傾斜して成ることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の圧力検出器において、少なくとも前記流入ポートの流路部は、前記液相部に向かって漸次縮径して成ることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の圧力検出器において、前記流入ポート及び流出ポートは、前記ケースの周方向に対して所定角度有して形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1~3の何れか1つに記載の圧力検出器において、前記流入ポートの流路部及び流出ポートの流路部は、液体の流入方向と流出方向とが互いにオフセットして成ることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1~4の何れか1つに記載の圧力検出器において、前記ケースは、前記液相部が形成される液相部ケースと、前記気相部が形成される気相部ケースとを有して構成され、前記膜部材の取付面は、当該液相部ケース及び気相部ケースを合致させて前記膜部材を挟持した挟持面を含む仮想平面から成ることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、液体の流路に接続可能なケースと、該ケース内に取り付けられ、前記流路の液体を充填し得る液相部と、気体を充填し得る気相部とを区画するとともに、前記液相部に充填された液体の圧力に応じて変位可能な膜部材とを具備し、前記気相部の圧力を検出することにより前記流路における液体の圧力を検出する圧力検出器において、前記液体の流路に接続可能な接続部を有するとともに、前記液相部の流入口から液体を流入させる流路部を有した流入ポートと、前記液体の流路に接続可能な接続部を有するとともに、前記液相部に流入した液体を流出口から流出させる流路部を有した流出ポートとを有し、前記流入ポートの流路部又は流出ポートの流路部は、その液体の流入方向又は流出方向が前記膜部材の取付面に対して平行とされ、且つ、前記流入ポート及び流出ポートの一方における前記接続部との境界面における前記流路部の中心位置にある第1中心点と前記境界面と平行であって前記流入口又は流出口の開口縁を含む面における前記流路部の中心位置にある第2中心点とを結ぶ仮想線の延長線上に前記流入ポート及び流出ポートの他方における前記第2中心点が重ならない配置とされ、前記第1中心点と第2中心点とを結ぶ仮想線が前記接続部の中心線に対して傾斜して成ることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の圧力検出器において、少なくとも前記流入ポートの流路部は、前記液相部に向かって漸次縮径して成ることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項6又は請求項7記載の圧力検出器において、前記流入ポート及び流出ポートは、前記ケースの周方向に対して所定角度有して形成されたことを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項6~8の何れか1つに記載の圧力検出器において、前記流入ポートの流路部及び流出ポートの流路部は、液体の流入方向と流出方向とが互いにオフセットして成ることを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項6~9の何れか1つに記載の圧力検出器において、前記ケースは、前記液相部が形成される液相部ケースと、前記気相部が形成される気相部ケースとを有して構成され、前記膜部材の取付面は、当該液相部ケース及び気相部ケースを合致させて前記膜部材を挟持した挟持面を含む仮想平面から成ることを特徴とする。
【0020】
請求項11記載の発明は、請求項1~10の何れか1つの圧力検出器が接続されたことを特徴とする血液回路である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、流入ポートの流路部又は流出ポートの流路部のうち少なくとも一方は、その液体の流入方向又は流出方向が膜部材の取付面に対して傾斜して成るので、液相部の容量増大を抑制しつつ液相部内の液体を十分に撹拌することができる。
また、流入ポート及び流出ポートのうち少なくとも一方は、接続部との境界面における流路部の中心位置にある第1中心点と境界面と平行であって流入口又は流出口の開口縁を含む面における流路部の中心位置にある第2中心点とを結ぶ仮想線が接続部の中心線に対して傾斜して成るので、液相部内における液体の撹拌効果をより向上させることができる。
【0022】
請求項2の発明によれば、少なくとも流入ポートの流路部は、液相部に向かって漸次縮径して成るので、液相部に流入する液体の流速を増大させて液相部内の滞留を確実に抑制することができる。
【0023】
請求項3の発明によれば、流入ポート及び流出ポートは、ケースの周方向に対して所定角度有して形成されたので、液相部の容量増大をより抑制しつつ流入口及び流出口が対向配置してしまうのを回避でき、液相部内における液体の撹拌効果をより向上させることができる。
【0024】
請求項4の発明によれば、流入ポートの流路部及び流出ポートの流路部は、液体の流入方向と流出方向とが互いにオフセットして成るので、液相部の容量増大をより抑制しつつ液相部内における液体の撹拌効果をより向上させることができる。
【0025】
請求項5の発明によれば、ケースは、液相部が形成される液相部ケースと、気相部が形成される気相部ケースとを有して構成され、膜部材の取付面は、当該液相部ケース及び気相部ケースを合致させて膜部材を挟持した挟持面を含む仮想平面から成るので、取付面に対して流入ポート又は流出ポートを精度よく傾斜させて形成することができる。
【0027】
請求項6の発明によれば、流入ポートの流路部又は流出ポートの流路部は、その液体の流入方向又は流出方向が膜部材の取付面に対して平行とされ、且つ、流入ポート及び流出ポートの一方における接続部との境界面における流路部の中心位置にある第1中心点と境界面と平行であって流入口又は流出口の開口縁を含む面における流路部の中心位置にある第2中心点とを結ぶ仮想線の延長線上に流入ポート及び流出ポートの他方における第2中心点が重ならない配置とされたので、液相部の容量増大を抑制しつつ液相部内の液体を十分に撹拌することができる。
また、流入ポート及び流出ポートのうち少なくとも一方は、接続部との境界面における流路部の中心位置にある第1中心点と境界面と平行であって流入口又は流出口の開口縁を含む面における流路部の中心位置にある第2中心点とを結ぶ仮想線が接続部の中心線に対して傾斜して成るので、液相部内における液体の撹拌効果をより向上させることができる。
【0028】
請求項7の発明によれば、少なくとも流入ポートの流路部は、液相部に向かって漸次縮径して成るので、液相部に流入する液体の流速を増大させて液相部内の滞留を確実に抑制することができる。
【0029】
請求項8の発明によれば、流入ポート及び流出ポートは、ケースの周方向に対して所定角度有して形成されたので、液相部の容量増大をより抑制しつつ流入口及び流出口が対向配置してしまうのを回避でき、液相部内における液体の撹拌効果をより向上させることができる。
【0030】
請求項9の発明によれば、流入ポートの流路部及び流出ポートの流路部は、液体の流入方向と流出方向とが互いにオフセットして成るので、液相部の容量増大をより抑制しつつ液相部内における液体の撹拌効果をより向上させることができる。
【0031】
請求項10の発明によれば、ケースは、液相部が形成される液相部ケースと、気相部が形成される気相部ケースとを有して構成され、膜部材の取付面は、当該液相部ケース及び気相部ケースを合致させて膜部材を挟持した挟持面を含む仮想平面から成るので、取付面に対して流入ポート又は流出ポートを精度よく傾斜させて形成することができる。
【0033】
請求項11の発明によれば、請求項1~10の何れか1つの圧力検出器の効果を有する血液回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る圧力検出器が適用される透析装置(血液浄化装置)を示す模式図
【
図5】
図2におけるV-V線断面図(膜部材が液相部側に変位した状態)
【
図6】
図2におけるV-V線断面図(膜部材が気相部側に変位した状態)
【
図7】同圧力検出器における液相部ケースに形成された流入口及び流出口を示す平面図
【
図8】同圧力検出器における気相部ケース(疎水性膜が取り付けられる前の状態)を示す平面図
【
図9】同圧力検出器における気相部ケース(疎水性膜が取り付けられた状態)を示す平面図
【
図10】同圧力検出器における疎水性膜の取付構造を示す断面図
【
図11】同圧力検出器における流入ポートの流路部及び流出ポートの流路部を示す断面図
【
図12】本発明の第2の実施形態に係る圧力検出器を示す平面図
【
図15】本発明の第3の実施形態に係る圧力検出器を示す平面図及び正面図
【
図17】本発明の第4の実施形態に係る圧力検出器を示す平面図及び正面図
【
図19】本発明の第5の実施形態に係る圧力検出器を示す平面図及び正面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に適用される血液浄化装置は、透析治療を行うための透析装置から成り、
図1に示すように、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2から成る血液回路と、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の間に介装されて血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ3(血液浄化器)と、血液ポンプ4と、静脈側血液回路2に配設されたエアトラップチャンバ5と、ダイアライザ3に透析液を供給及びダイアライザ3からの排液を排出させる透析装置本体6と、置換液としての生理食塩液を血液回路に供給し得る生理食塩液供給ラインL3(置換液供給ライン)と、置換液としての生理食塩液を収容した収容手段7とから主に構成されている。
【0036】
動脈側血液回路1には、その先端に動脈側穿刺針aがコネクタを介して接続可能とされるとともに、途中にしごき型の血液ポンプ4が配設されている一方、静脈側血液回路2には、その先端に静脈側穿刺針bがコネクタを介して接続可能とされるとともに、途中にエアトラップチャンバ5が接続されている。エアトラップチャンバ5は、液体内の気泡を捕捉し得るとともに、濾過網(不図示)が配設されており、例えば返血時の血栓等を捕捉し得るようになっている。なお、本明細書においては、血液を脱血(採血)する穿刺針の側を「動脈側」と称し、血液を返血する穿刺針の側を「静脈側」と称しており、「動脈側」及び「静脈側」とは、穿刺の対象となる血管が動脈及び静脈の何れかによって定義されるものではない。
【0037】
血液ポンプ4は、動脈側血液回路1に配設されたしごき型ポンプから成り、正転駆動及び逆転駆動可能とされるとともに、血液回路内の液体を駆動方向に流動させ得るものである。すなわち、動脈側血液回路1には、当該動脈側血液回路1を構成する他の可撓性チューブより軟質かつ大径の被しごきチューブが接続されており、血液ポンプ4には、この被しごきチューブを送液方向にしごくためのローラが配設されているのである。このように血液ポンプ4が駆動すると、そのローラが回動して被しごきチューブ(血液回路の一部)をしごき、内部の液体を駆動方向(ローラの回転方向)に流動させることができるのである。
【0038】
しかして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ4を正転駆動(図中左回転)させると、患者の血液は、動脈側血液回路1を通ってダイアライザ3に至った後、該ダイアライザ3によって血液浄化が施され、エアトラップチャンバ5で除泡がなされつつ静脈側血液回路2を通って患者の体内に戻る。すなわち、患者の血液を血液回路の動脈側血液回路1の先端から静脈側血液回路2の先端まで体外循環させつつダイアライザ3にて浄化するのである。また、血液ポンプ4を逆転駆動(図中右回転)させると、血液回路(動脈側血液回路1における先端と血液ポンプ4の配設位置との間)の血液を患者に返血することができる。
【0039】
ダイアライザ3は、その筐体部に、血液導入ポート3a、血液導出ポート3b、透析液導入ポート3c及び透析液導出ポート3dが形成されており、このうち血液導入ポート3aには動脈側血液回路1が、血液導出ポート3bには静脈側血液回路2がそれぞれ接続されている。また、透析液導入ポート3c及び透析液導出ポート3dは、透析装置本体6から延設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2とそれぞれ接続されている。
【0040】
ダイアライザ3内には、複数の中空糸が収容されており、該中空糸内部が血液の流路とされるとともに、中空糸外周面と筐体部の内周面との間が透析液の流路とされている。中空糸には、その外周面と内周面とを貫通した微少な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、当該中空糸膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0041】
一方、透析装置本体6には、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2に跨って複式ポンプ等の送液手段が配設されているとともに、当該送液手段をバイパスするバイパスラインにはダイアライザ3中を流れる患者の血液から水分を除去するための除水ポンプが配設されている。さらに、透析液導入ラインL1の一端がダイアライザ3(透析液導入ポート3c)に接続されるとともに、他端が所定濃度の透析液を調製する透析液供給装置(不図示)に接続されている。また、透析液排出ラインL2の一端は、ダイアライザ3(透析液導出ポート3d)に接続されるとともに、他端が図示しない排液手段と接続されており、透析液供給装置から供給された透析液が透析液導入ラインL1を通ってダイアライザ3に至った後、透析液排出ラインL2を通って排液手段に送られるようになっている。
【0042】
なお、エアトラップチャンバ5の上部からは、オーバーフローラインが延設されており、その途中に電磁弁等のクランプ手段が配設されている。そして、電磁弁等のクランプ手段を開状態とすることにより、オーバーフローラインを介して、血液回路中を流れる液体(プライミング液等)をオーバーフローし得るようになっている。
【0043】
生理食塩液供給ラインL3(置換液供給ライン)は、動脈側血液回路1における血液ポンプ4の配設位置と当該動脈側血液回路1の先端との間においてT字管等にて一端が接続され、血液回路内の血液と置換させるための生理食塩液(置換液)を当該動脈側血液回路1に供給可能な流路(例えば可撓性チューブ等)から成るものである。かかる生理食塩液供給ラインL3の他端には、所定量の生理食塩液を収容した収容手段7(所謂「生食バッグ」)が接続されているとともに、途中には、エアトラップチャンバ8が接続されている。
【0044】
また、本実施形態に係る生理食塩液供給ラインL3には、クランプ手段9(例えば電磁弁等)が配設されている。かかるクランプ手段9は、生理食塩液供給ラインL3を開閉可能として設けられ、流路の閉塞及び開放を行わせ得るもので、当該クランプ手段9を開閉させることにより、生理食塩液供給ラインL3の流路を閉塞させる閉塞状態と生理食塩液(置換液)を流通させ得る流通状態とを任意に切り替え可能とされている。なお、このようなクランプ手段9に代えて、手動操作により生理食塩液供給ラインL3の流路を閉塞及び開放し得る鉗子等の汎用手段としてもよい。
【0045】
ここで、本実施形態に適用される血液回路には、圧力検出器10が接続されている。かかる圧力検出器10は、静脈側血液回路2におけるダイアライザ3とエアトラップチャンバ5との間の位置に接続され、静脈側血液回路2(血液回路)を流れる血液の圧力を検出し得るよう構成されている。具体的には、圧力検出器10は、
図2~6に示すように、液体の流路(本実施形態においては、静脈側血液回路2(血液回路))に接続可能なケースCと、ケースC内に取り付けられ、流路の液体(本実施形態においては、静脈側血液回路2(血液回路)の血液)を充填し得る液相部S1と、空気を充填し得る気相部S2とを区画するとともに、液相部S1に充填された液体(血液)の圧力に応じて変位可能な膜部材Mとを具備し、気相部S2の圧力を圧力検出センサPで検出することにより流路(静脈側血液回路2)における液体の圧力を検出し得るようになっている。
【0046】
ケースCは、所定の樹脂材等を成形して得られた中空状成形部品から成り、液相部S1を構成する液相部ケースCaと、気相部S2を構成する気相部ケースCbとを組み合わせて構成されている。液相部ケースCaは、液体の流路と接続可能とされて液相部S1と連通させ得る流入ポートC1及び流出ポートC2が一体形成されるとともに、気相部ケースCbは、後述する配管部Kの一端と接続可能とされて気相部S2と連通させ得る接続ポートC3が一体形成されている。なお、流入ポートC1及び流出ポートC2は、液体の流入と流出が逆(すなわち、流入ポートC1により液体が流出し、流出ポートC2により液体が流入する構成)になってもよい。
【0047】
また、液相部ケースCaの外周縁部には、円環状の挟持面m1(
図7参照)が形成されるとともに、気相部ケースCbの外周縁部には円環状の挟持面m2(
図8、9参照)が形成されており、液相部ケースCa及び気相部ケースCbを合致して組み付ける際、挟持面m1と挟持面m2との間に膜部材Mの外周部Maを挟持させることにより、膜部材Mをシールしつつ取付可能とされている。しかして、ケースCの内部形成された空間は、膜部材Mによって液相部S1及び気相部S2に区画(画成)されている。
【0048】
膜部材Mは、ケースC内に取り付けられたダイヤフラムから成り、液相部S1又は気相部S2の圧力変化に追従して変位又は変形可能な柔軟な材料にて形成されている。すなわち、液相部S1内の液体の圧力(液圧)が小さい場合、
図5に示すように、膜部材Mが液相部S1側に変位して気相部S2の容量が増大するとともに、液相部S1内の液体の圧力(液圧)が大きい場合、
図6に示すように、膜部材Mが気相部S2側に変位して気相部S2の容量が減少するようになっている。
【0049】
さらに、気相部ケースCbには、その底面の略中央に開口Cb1(
図8参照)が形成されている。かかる開口Cb1は、気相部ケースCbの内周面(底面)に形成されて接続ポートC3の流路と気相部S2とを連通させ、膜部材Mの変位に応じて気相部S2の空気(気体)を流入又は流出させ得るようになっている。しかして、配管Kの一端を接続ポートC3に接続し、他端を圧力検出センサPに接続することにより、膜部材Mの変位に応じて開口Cb1から空気(気体)を流入又は流出させ、気相部S2の圧力を圧力検出センサPにて検出することができるのである。なお、接続ポートC3は、配管Kに接続されるものに限らず、気相部S2の圧力を圧力センサPに伝えることができる他の手段に接続されるものとしてもよい。
【0050】
またさらに、本実施形態に係る気相部ケースCbは、その底面の開口Cb1の周りに凹部Cb4が形成されるとともに、
図8~10に示すように、開口Cb1を含む凹部Cb4を覆って疎水性膜Bが取り付けられている。疎水性膜Bは、気体の通過を許容しつつ液体の通過を遮断する膜状に成形された部材から成り、その外周縁部が開口Cb1の周囲に形成された凸部Cb3に対して溶着(例えば、超音波溶着等)されて取り付けられている。
【0051】
凹部Cb4には、
図8に示すように、開口Cb1を中心として放射状に突出した複数のリブCb2が形成されており、疎水性膜Bの開口Cb1側への撓みを制限し得るようになっている。すなわち、疎水性膜Bが開口Cb1側(凹部Cb4側)に撓むとリブCb2と当接してそれ以上の撓みが制限されるので、開口Cb1の周囲の空間(凹部Cb4が成す空間)を保持することができ、膜部材Mの変位過程において開口Cb1が閉塞してしまうのを防止することができるのである。
【0052】
本実施形態に係る流入ポートC1は、液体の流路(血液回路)に接続可能な部位(突出部)から成るとともに、
図4、11に示すように、液相部S1の流入口Ca1(
図7参照)から液体(血液)を流入させる流路部C1aと、流路(血液回路)と接続し得る接続部C1bとを有して構成されている。すなわち、流路部C1a及び接続部C1bは、流入ポートC1を構成する突出部内において軸方向に連通して形成されており、接続部C1bに流路を構成するチューブを接続することにより、流路の液体を流路部C1aにて流通させ、流入口Ca1から液相部S1に流入させることができるのである。なお、流入ポートC1は、流路を構成するチューブを接続する凹形状であってもよい。
【0053】
本実施形態に係る流出ポートC2は、液体の流路(血液回路)に接続可能な部位(突出部)から成るとともに、同図に示すように、液相部S1に流入した液体(血液)を流出口Ca2(
図7参照)から流出させる流路部C2aと、流路(血液回路)と接続し得る接続部C2bとを有して構成されている。すなわち、流路部C2a及び接続部C2bは、流出ポートC2を構成する突出部内において軸方向に連通して形成されており、接続部C2bに流路を構成するチューブを接続することにより、液相部S1に流入した液体を流路部C2aにて流通させ、下流側の流路(血液回路)に流出させることができるのである。なお、流出ポートC2は、流路を構成するチューブを接続する凹形状であってもよい。
【0054】
ここで、本実施形態に係る流入ポートC1の流路部C1a及び流出ポートC2の流路部C2aは、
図11に示すように、液体の流入方向α及び流出方向βが膜部材Mの取付面Qに対して傾斜するよう設定されている。具体的には、本実施形態に係る取付面Qは、膜部材Mを挟持した挟持面m1を含む仮想平面から成り、かかる取付面Qを基準とすると、流入ポートC1の流路部C1aは、接続部C1bから液相部S1に向かって下方に傾斜する方向(流入方向α)に液体を流入可能とされており、流出ポートC2の流路部C2aは、液相部S1から接続部C2bに向かって下方に傾斜する方向(流出方向β)に液体を流出可能とされている。
【0055】
なお、本実施形態においては、流入ポートC1の流路部C1a及び流出ポートC2の流路部C2aは、その液体の流入方向α及び流出方向βが膜部材Mの取付面Qに対して傾斜するよう構成されているが、流入ポートC1の流路部C1a又は流出ポートC2の流路部C2aのうち少なくとも一方が、その液体の流入方向α又は流出方向βが膜部材Mの取付面Qに対して傾斜していれば足りる。
【0056】
しかるに、液体の流入方向α又は流出方向βを傾斜させる基準である膜部材Mの取付面Qは、
図5、6に示すように、上記の如く液相部ケースCaの挟持面m1を含む仮想平面Q1の他、気相部ケースCbの挟持面m2を含む仮想平面Q2、或いは膜部材Mの外周部Maにおける高さ方向中央面を含む仮想平面Q3であってもよい。すなわち、本願発明においては、液相部ケースCaの挟持面m1を含む取付面Q1、気相得ケースCbの挟持面m2を含む取付面Q2、又は膜部材Mの外周部Maにおける高さ方向中央面を含む仮想平面Q3の何れかから成る取付面Qに対して液体の流入方向α又は流出方向βを傾斜させているのである。
【0057】
また、本実施形態に係る流入ポートC1及び流出ポートC2は、
図2に示すように、ケースCの周方向に対して所定角度fを有して突出形成されている。なお、気相部ケースCaにおける流入口Ca1と流出口Ca2との間には、これら流入口Ca1及び流出口Ca2を連通する連通凹部Ca3(
図7参照)が形成されている。これにより、膜部材Mが気相部ケースCbの内周面に接触する位置まで変位しても、連通凹部Ca3によって流入口Ca1と流出口Ca2との間の液体の流通を確保し得るようになっている。
【0058】
さらに、本実施形態に係る流入ポートC1の流路部C1a及び流出ポートC2の流路部C2aは、
図11に示すように、液体の流入方向αと流出方向βとが互いにオフセットして成るよう構成されている。具体的には、同図に示すように、流入ポートC1の流路部C1aは、液体の流入方向αが液相部S1に向かって下方に傾斜するとともに、流出ポートC2の流路部C2aは、液体の流出方向βが液体の流入方向αとオフセットしている(互いの方向がずれている)のである。
【0059】
しかるに、本実施形態においては、
図11に示すように、流入ポートC1及び流出ポートC2は、接続部(C1b、C2b)との境界面X1における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第1中心点Paと境界面X1と平行であって流入口Ca1又は流出口Ca2の開口縁を含む面X2における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第2中心点Pbとを結ぶ仮想線Lbが接続部(C1b、C2b)の中心線La(軸線)に対して側面子で傾斜して成るものとされている。なお、本実施形態においては、流入ポートC1及び流出ポートC2の何れも上記形状とされているが、流入ポートC1及び流出ポートC2のうち少なくとも一方が上記形状とされていれば足りる。
【0060】
またさらに、本実施形態に係る流入ポートC1の流路部C1a及び流出ポートC2の流路部C2aは、
図11に示すように、液相部S1に向かって漸次縮径して成るよう構成されている。具体的には、同図に示すように、流入ポートC1の流路部C1aは、接続部C1bに近い部位の径d1より液相部S1に近い部位の径d2の方が小さく形成されるとともに、流出ポートC2の流路部C2aは、接続部C2bに近い部位の径d3より液相部S1に近い部位の径d4の方が小さく形成されているのである。
【0061】
なお、本実施形態においては、流入ポートC1の流路部C1a及び流出ポートC2の流路部C2aは、液相部S1に向かって漸次縮径して成るよう構成されているが、少なくとも流入ポートC1の流路部C1aが液相部S1に向かって漸次縮径していれば足り、流出ポートC2の流路部C2aが縮径しないものとしてもよい。また、少なくとも流入ポートC1の流路部C1aが液相部S1に向かって漸次縮径する場合、本実施形態の如く連続的に縮径するもの、或いは段階的に縮径するものであってもよい。
【0062】
本実施形態によれば、流入ポートC1の流路部C1a又は流出ポートC2の流路部C2aのうち少なくとも一方は、その液体の流入方向α又は流出方向βが膜部材Mの取付面Qに対して傾斜して成るので、液相部S1の容量増大を抑制しつつ液相部S1内の血液(液体)を十分に撹拌することができる。また、少なくとも流入ポートC1の流路部C1aは、液相部S1に向かって漸次縮径して成るので、液相部S1に流入する血液(液体)の流速を増大させて液相部S1内の滞留を確実に抑制することができる。また、少なくとも流入ポートC1の流路部C1aは、液相部S1に向かって漸次縮径して成るので、液相部S1に流入する血液(液体)の流速を増大させつつ液相部S1にて渦流を生じさせることができる。
【0063】
さらに、本実施形態に係る流入ポートC1及び流出ポートC2は、ケースC(液相部ケースCa)の周方向に対して所定角度fを有して突出形成されたので、液相部S1の容量増大をより抑制しつつ流入口Ca1及び流出口Ca2が対向配置してしまうのを回避でき、液相部S1内における血液(液体)の撹拌効果をより向上させることができる。
【0064】
またさらに、本実施形態に係る流入ポートC1の流路部C1a及び流出ポートC2の流路部C2aは、液体の流入方向αと流出方向βとが互いにオフセットして成るので、液相部S1の容量増大をより抑制しつつ液相部S1内における血液(液体)の撹拌効果をより向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態に係るケースCは、液相部S1が形成される液相部ケースCaと、気相部S2が形成される気相部ケースCbとを有して構成され、膜部材Mの取付面Qは、当該液相部ケースCa及び気相部ケースCbを合致させて膜部材Mを挟持した挟持面(m1、m2)を含む仮想平面から成るので、取付面Qに対して流入ポートC1又は流出ポートC2を精度よく傾斜させて形成することができる。
【0066】
またさらに、流入ポートC1及び流出ポートC2のうち少なくとも一方は、接続部(C1b、C2b)との境界面X1における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第1中心点Paと境界面X1と平行であって流入口Ca1又は流出口Ca2の開口縁を含む面X2における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第2中心点Pbとを結ぶ仮想線Lbが接続部(C1b、C2b)の中心線Laに対して傾斜して成るので、液相部S1内における液体の撹拌効果をより向上させることができる。さらに、本実施形態によれば、上記のような圧力検出器10の効果を有する血液回路を提供することができる。
【0067】
次に、本発明の第2の実施形態に係る圧力検出器について説明する。
本実施形態に係る圧力検出器は、第1の実施形態と同様の血液浄化装置に適用されるもので、
図1に示すように、静脈側血液回路2におけるダイアライザ3とエアトラップチャンバ5との間の位置に接続され、静脈側血液回路2(血液回路)を流れる血液の圧力を検出し得るよう構成されている。
【0068】
本実施形態に係る圧力検出器10は、
図12~14に示すように、液体の流路(本実施形態においては、静脈側血液回路2(血液回路))に接続可能なケースCと、ケースC内に取り付けられ、流路の液体(本実施形態においては静脈側血液回路2(血液回路)の血液)を充填し得る液相部S1と、空気を充填し得る気相部S2とを区画するとともに、液相部S1に充填された液体(血液)の圧力に応じて変位可能な膜部材Mとを具備し、気相部S2の圧力を圧力検出センサPで検出することにより流路(静脈側血液回路2)における液体の圧力を検出し得るようになっている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0069】
本実施形態に係る流入ポートC4は、液体の流路(血液回路)に接続可能な部位(突出部)から成るとともに、
図14に示すように、液相部S1の流入口Ca1から液体(血液)を流入させる流路部C4aと、流路(血液回路)と接続し得る接続部C4bとを有して構成されている。すなわち、流路部C4a及び接続部C4bは、流入ポートC4を構成する突出部内において軸方向に連通して形成されており、接続部C4bに流路を構成するチューブを接続することにより、流路の液体を流路部C4aにて流通させ、流入口Ca1から液相部S1に流入させることができるのである。なお、流入ポートC4は、流路を構成するチューブを接続する凹形状であってもよい。
【0070】
本実施形態に係る流出ポートC5は、液体の流路(血液回路)に接続可能な部位(突出部)から成るとともに、同図に示すように、液相部S1に流入した液体(血液)を流出口Ca2から流出させる流路部C5aと、流路(血液回路)と接続し得る接続部C5bとを有して構成されている。すなわち、流路部C5a及び接続部C5bは、流出ポートC5を構成する突出部内において軸方向に連通して形成されており、接続部C5bに流路を構成するチューブを接続することにより、液相部S1に流入した液体を流路部C5aにて流通させ、下流側の流路(血液回路)に流出させることができるのである。なお、流出ポートC5は、流路を構成するチューブを接続する凹形状であってもよい。
【0071】
ここで、第1の実施形態と同様、本実施形態に係る流入ポートC4の流路部C4a及び流出ポートC5の流路部C5aは、
図14に示すように、液体の流入方向α及び流出方向βが膜部材Mの取付面Qに対して傾斜するよう設定されている。具体的には、本実施形態に係る取付面Qは、膜部材Mを挟持した挟持面m2を含む仮想平面から成り、かかる取付面Qを基準とすると、流入ポートC1の流路部C1aは、接続部C1bから液相部S1に向かって下方に傾斜する方向(流入方向α)に液体を流入可能とされており、流出ポートC2の流路部C2aは、液相部S1から接続部C2bに向かって下方に傾斜する方向(流出方向β)に液体を流出可能とされている。
【0072】
なお、本実施形態においては、流入ポートC4の流路部C4a及び流出ポートC5の流路部C5aは、その液体の流入方向α及び流出方向βが膜部材Mの取付面Qに対して傾斜するよう構成されているが、流入ポートC4の流路部C4a又は流出ポートC5の流路部C5aのうち少なくとも一方が、その液体の流入方向α又は流出方向βが膜部材Mの取付面Qに対して傾斜していれば足りる。
【0073】
さらに、本実施形態に係る流入ポートC4の流路部C4a及び流出ポートC5の流路部C5aは、
図14に示すように、液体の流入方向αと流出方向βとが互いにオフセットして成り、そのオフセット量が液相部S1に向かって漸次大きくなるよう構成されている。具体的には、同図に示すように、流入ポートC4の流路部C4aは、液体の流入方向αが液相部S1に向かって下方に傾斜するとともに、流出ポートC5の流路部C5aは、液体の流出方向βが液体の流入方向αとオフセットしつつ液相部S1に向かって上方に傾斜しているので、流入方向αと流出方向βのオフセット量が液相部S1に向かって漸次大きくなるよう構成されているのである。
【0074】
本実施形態によれば、流入ポートC4の流路部C4a又は流出ポートC5の流路部C5aのうち少なくとも一方は、その液体の流入方向α又は流出方向βが膜部材Mの取付面Qに対して傾斜して成るので、液相部S1の容量増大を抑制しつつ液相部S1内の血液(液体)を十分に撹拌することができる。また、本実施形態に係る流入ポートC4の流路部C4a及び流出ポートC5の流路部C5aは、液体の流入方向αと流出方向βとが互いにオフセットして成り、そのオフセット量が液相部S1に向かって漸次大きくなるよう形成されたので、液相部S1の容量増大をより抑制しつつ流入口Ca1及び流出口Ca2の離間寸法を大きくして液相部S1内における血液(液体)の撹拌効果をより向上させることができる。
【0075】
また、本実施形態に係るケースCは、液相部S1が形成される液相部ケースCaと、気相部S2が形成される気相部ケースCbとを有して構成され、膜部材Mの取付Qは、当該液相部ケースCa及び気相部ケースCbを合致させて膜部材Mを挟持した挟持面(m1、m2)を含む仮想平面から成るので、取付面Qに対して流入ポートC4又は流出ポートC5を精度よく傾斜させて形成することができる。さらに、本実施形態によれば、上記のような圧力検出器10の効果を有する血液回路を提供することができる。
【0076】
次に、本発明の第3の実施形態に係る圧力検出器について説明する。
本実施形態に係る圧力検出器は、第1、2の実施形態と同様の血液浄化装置に適用されるもので、
図1に示すように、静脈側血液回路2におけるダイアライザ3とエアトラップチャンバ5との間の位置に接続され、静脈側血液回路2(血液回路)を流れる血液の圧力を検出し得るよう構成されている。
【0077】
本実施形態に係る圧力検出器10は、
図15、16に示すように、液体の流路(本実施形態においては、静脈側血液回路2(血液回路))に接続可能なケースCと、ケースC内に取り付けられ、流路の液体(本実施形態においては静脈側血液回路2(血液回路)の血液)を充填し得る液相部S1と、空気を充填し得る気相部S2とを区画するとともに、液相部S1に充填された液体(血液)の圧力に応じて変位可能な膜部材Mとを具備し、気相部S2の圧力を圧力検出センサPで検出することにより流路(静脈側血液回路2)における液体の圧力を検出し得るようになっている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0078】
本実施形態においては、流入ポートC1の流路部C1a及び流出ポートC2の流路部C2aが一端から他端まで略同一径の流路とされたもので、これら流入ポートC1及び流出ポートC2は、接続部(C1b、C2b)との境界面X1における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第1中心点Paと境界面X1と平行であって流入口Ca1又は流出口Ca2の開口縁を含む面X2における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第2中心点Pbとを結ぶ仮想線Lbが接続部(C1b、C2b)の中心線La(軸線)に対して傾斜して成るものとされている。なお、本実施形態においては、流入ポートC1及び流出ポートC2の何れも上記形状とされているが、流入ポートC1及び流出ポートC2のうち少なくとも一方が上記形状とされていれば足りる。
【0079】
本実施形態によれば、流入ポートC1の流路部C1a又は流出ポートC2の流路部C2aのうち少なくとも一方は、その液体の流入方向α又は流出方向βが膜部材Mの取付面Qに対して傾斜して成るので、液相部S1の容量増大を抑制しつつ液相部S1内の血液(液体)を十分に撹拌することができる。特に、流入ポートC1及び流出ポートC2のうち少なくとも一方は、接続部(C1b、C2b)との境界面X1における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第1中心点Paと境界面X1と平行であって流入口Ca1又は流出口Ca2の開口縁を含む面X2における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第2中心点Pbとを結ぶ仮想線Lbが接続部(C1b、C2b)の中心線Laに対して傾斜して成るので、液相部S1内における液体の撹拌効果をより向上させることができる。
【0080】
次に、本発明の第4の実施形態に係る圧力検出器について説明する。
本実施形態に係る圧力検出器は、第1~3の実施形態と同様の血液浄化装置に適用されるもので、
図1に示すように、静脈側血液回路2におけるダイアライザ3とエアトラップチャンバ5との間の位置に接続され、静脈側血液回路2(血液回路)を流れる血液の圧力を検出し得るよう構成されている。
【0081】
本実施形態に係る圧力検出器10は、
図17、18に示すように、液体の流路(本実施形態においては、静脈側血液回路2(血液回路))に接続可能なケースCと、ケースC内に取り付けられ、流路の液体(本実施形態においては静脈側血液回路2(血液回路)の血液)を充填し得る液相部S1と、空気を充填し得る気相部S2とを区画するとともに、液相部S1に充填された液体(血液)の圧力に応じて変位可能な膜部材Mとを具備し、気相部S2の圧力を圧力検出センサPで検出することにより流路(静脈側血液回路2)における液体の圧力を検出し得るようになっている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0082】
本実施形態においては、
図18に示すように、流入ポートC1の流路部C1a又は流出ポートC2の流路部C2aは、その液体の流入方向α又は流出方向βが膜部材Mの取付面Qに対して平行とされ、且つ、流入ポートC1及び流出ポートC2の一方における接続部(C1b、C2b)との境界面X1における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第1中心点
Paと境界面X1と平行であって流入口Ca1又は流出口Ca2の開口縁を含む面X2における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第2中心点Pbとを結ぶ仮想線Lbの延長線上に流入ポートC1及び流出ポートC2の他方における第2中心点Pbが平面視で重ならない配置とされている。
【0083】
さらに、本実施形態に係る流入ポートC1の流路部C1a及び流出ポートC2の流路部C2aは、
図17に示すように、液相部S1に向かって漸次縮径して成るよう構成されている。具体的には、同図に示すように、流入ポートC1の流路部C1aは、接続部C1bに近い部位の径寸法より液相部S1に近い部位の径寸法の方が小さく形成されるとともに、流出ポートC2の流路部C2aは、接続部C2bに近い部位の径寸法より液相部S1に近い部位の径寸法の方が小さく形成されているのである。
【0084】
なお、本実施形態においては、流入ポートC1の流路部C1a及び流出ポートC2の流路部C2aは、液相部S1に向かって漸次縮径して成るよう構成されているが、少なくとも流入ポートC1の流路部C1aが液相部S1に向かって漸次縮径していれば足り、流出ポートC2の流路部C2aが縮径しないものとしてもよい。また、少なくとも流入ポートC1の流路部C1aが液相部S1に向かって漸次縮径する場合、本実施形態の如く連続的に縮径するもの、或いは段階的に縮径するものであってもよい。
【0085】
本実施形態によれば、流入ポートC1の流路部C1a又は流出ポートC2の流路部C2aは、その液体の流入方向α又は流出方向βが膜部材Mの取付面Qに対して平行とされ、且つ、流入ポートC1及び流出ポートC2の一方における接続部(C1b、C2b)との境界面X1における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第1中心点Paと境界面X1と平行であって流入口Ca1又は流出口Ca2の開口縁を含む面X2における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第2中心点Pbとを結ぶ仮想線Lbの延長線上に流入ポートC1及び流出ポートC2の他方における第2中心点Pbが重ならない配置とされたので、液相部S1の容量増大を抑制しつつ液相部S1内の液体を十分に撹拌することができる。特に、少なくとも流入ポートC2の流路部C2aは、液相部S1に向かって漸次縮径して成るので、液相部S1に流入する液体の流速を増大させて液相部S1内の滞留を確実に抑制することができる。
【0086】
次に、本発明の第5の実施形態に係る圧力検出器について説明する。
本実施形態に係る圧力検出器は、第1~3の実施形態と同様の血液浄化装置に適用されるもので、
図1に示すように、静脈側血液回路2におけるダイアライザ3とエアトラップチャンバ5との間の位置に接続され、静脈側血液回路2(血液回路)を流れる血液の圧力を検出し得るよう構成されている。
【0087】
本実施形態に係る圧力検出器10は、
図19、20に示すように、液体の流路(本実施形態においては、静脈側血液回路2(血液回路))に接続可能なケースCと、ケースC内に取り付けられ、流路の液体(本実施形態においては静脈側血液回路2(血液回路)の血液)を充填し得る液相部S1と、空気を充填し得る気相部S2とを区画するとともに、液相部S1に充填された液体(血液)の圧力に応じて変位可能な膜部材Mとを具備し、気相部S2の圧力を圧力検出センサPで検出することにより流路(静脈側血液回路2)における液体の圧力を検出し得るようになっている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0088】
本実施形態においては、
図20に示すように、流入ポートC1の流路部C1a又は流出ポートC2の流路部C2aは、その液体の流入方向α又は流出方向βが膜部材Mの取付面Qに対して平行とされ、且つ、流入ポートC1及び流出ポートC2の一方における接続部(C1b、C2b)との境界面X1における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第1中心点P2aと境界面X1と平行であって流入口Ca1又は流出口Ca2の開口縁を含む面X2における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第2中心点Pbとを結ぶ仮想線Lbの延長線上に流入ポートC1及び流出ポートC2の他方における第2中心点Pbが平面視で重ならない配置とされている。
【0089】
本実施形態によれば、流入ポートC1の流路部C1a又は流出ポートC2の流路部C2aは、その液体の流入方向α又は流出方向βが膜部材Mの取付面Qに対して平行とされ、且つ、流入ポートC1及び流出ポートC2の一方における接続部(C1b、C2b)との境界面X1における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第1中心点Paと境界面X1と平行であって流入口Ca1又は流出口Ca2の開口縁を含む面X2における流路部(C1a、C2a)の中心位置にある第2中心点Pbとを結ぶ仮想線Lbの延長線上に流入ポートC1及び流出ポートC2の他方における第2中心点Pbが重ならない配置とされたので、液相部S1の容量増大を抑制しつつ液相部S1内の液体を十分に撹拌することができる。
【0090】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、血液回路における他の位置(例えば、動脈側血液回路1における先端と血液ポンプ4との間の位置、動脈側血液回路1における血液ポンプ4とダイアライザ3との間の位置)に接続された圧力検出器10であってもよい。本圧力検出器10が接続される血液回路は、他の形態のものであってもよく、例えばエアトラップチャンバ5が接続されず、代わりに本圧力検出器10が接続されるものであってもよい。
【0091】
また、本実施形態においては、気相部ケースCbの開口Cb1の周りに凹部Cb4が形成されるとともに、開口Cb1を含む凹部Cb4を覆って疎水性膜Bが取り付けられているが、凹部Cb4を形成せず疎水性膜Bが取り付けられないものとしてもよい。さらに、本実施形態においては、開口Cb1を中心として放射状に突出した複数のリブCb2が形成されているが、このようなリブCb2が形成されないもの、或いは他の凹凸形状が形成されるものとしてもよい。
【0092】
なお、本実施形態においては、透析治療における血液回路の圧力検出器10として適用されているが、患者の血液を浄化治療し得る他の血液回路の圧力検出器として適用してもよい。例えば、アセテートフリーバイオフィルトレーション(AFBF)、持続緩徐式血液濾過療法、血液吸着療法、選択式血球成分除去療法、単純血漿交換療法、二重膜濾過血漿交換療法、血漿吸着療法等で使用される血液回路の圧力検出器に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
流入ポートの流路部又は流出ポートの流路部のうち少なくとも一方は、その液体の流入方向又は流出方向が膜部材の取付面に対して傾斜して成る圧力検出器であれば、他の形態及び用途のものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 動脈側血液回路
2 静脈側血液回路
3 ダイアライザ(血液浄化器)
4 血液ポンプ
5 エアトラップチャンバ
6 透析装置本体
7 収容手段
8 エアトラップチャンバ
9 クランプ手段
10 圧力検出器
L1 透析液導入ライン
L2 透析液排出ライン
L3 生理食塩液供給ライン
C ケース
Ca 液相部ケース
Ca1 流入口
Ca2 流出口
Cb 気相部ケース
Cb1 開口
C1 流入ポート
C1a 流路部
C1b 接続部
C2 流出ポート
C2a 流路部
C2b 接続部
C3 接続ポート
M 膜部材
P 圧力検出センサ
S1 液相部
S2 気相部
K 配管部
B 疎水性膜
Q(Q1、Q2、Q3) 取付面
Pa 第1中心点
Pb 第2中心点
X1 流路部と接続部との境界面
X2 境界面X1と平行な面