(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】劣化判定装置、及び電源装置
(51)【国際特許分類】
H01G 13/00 20130101AFI20220228BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20220228BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
H01G13/00 361Z
H02M3/155 H
G01R31/00
(21)【出願番号】P 2018106750
(22)【出願日】2018-06-04
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】指田 和之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-050351(JP,A)
【文献】特開2002-267708(JP,A)
【文献】特開2010-067502(JP,A)
【文献】特開2017-011263(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01659414(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 13/00
H02M 3/155
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタに接続された電力供給線に配置され、当該電力供給線に接続された負荷部と平滑コンデンサとの両方に流れる電流を検出可能なロゴスキーコイルと、
前記電力供給線の電圧を検出する電圧検出部と、
前記ロゴスキーコイルの出力に基づく電流値と、前記電圧検出部が検出した電圧値とに基づいて前記平滑コンデンサのインピーダンス成分の変化を検出し、当該インピーダンス成分の変化に基づいて、前記平滑コンデンサの劣化を判定する劣化判定部と
を備える劣化判定装置。
【請求項2】
インダクタに発生した交流電力を整流する整流部に接続された電力供給線に配置され、当該電力供給線に接続された負荷部と平滑コンデンサとの両方に流れる電流を検出可能なロゴスキーコイルと、
前記電力供給線の電圧を検出する電圧検出部と、
前記ロゴスキーコイルの出力に基づく電流値と、前記電圧検出部が検出した電圧値とに基づいて前記平滑コンデンサのインピーダンス成分の変化を検出し、当該インピーダンス成分の変化に基づいて、前記平滑コンデンサの劣化を判定する劣化判定部と
を備える劣化判定装置。
【請求項3】
前記劣化判定部は、前記電流値の電流変化量と、電流変化に対応する前記電圧値の電圧変化量とに基づいて、前記インピーダンス成分の変化を検出する
請求項1又は請求項2に記載の劣化判定装置。
【請求項4】
前記劣化判定部は、検出した前記インピーダンス成分の変化量に基づいて、前記平滑コンデンサの劣化を判定する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の劣化判定装置。
【請求項5】
前記劣化判定部は、検出した前記インピーダンス成分の変化が、所定の範囲外になった場合に、前記平滑コンデンサが劣化したと判定する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の劣化判定装置。
【請求項6】
前記劣化判定部は、前記平滑コンデンサが劣化したと判定した場合に、前記平滑コンデンサが劣化したことを示す警報を出力する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の劣化判定装置。
【請求項7】
前記劣化判定部は、前記インピーダンス成分の劣化特性に基づいて、前記平滑コンデンサの交換時期を推定し、推定した前記平滑コンデンサの交換時期を提示する
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の劣化判定装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の劣化判定装置を備え、
前記電力供給線に直流電力を出力する
電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化判定装置、及び電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロゴスキーコイルを利用して計測したコンデンサに流れる電流に基づいて、コンデンサのESR(等価直列抵抗)などのインピーダンス成分の変化を検出して、コンデンサの劣化を判定する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、例えば、電源回路の出力線に複数の平滑コンデンサが並列に接続されている場合に、平滑コンデンサの個々にロゴスキーコイルを実装する必要がある。そのため、上述した従来技術では、複数の平滑コンデンサのそれぞれに対応して複数のロゴスキーコイルを挿入するため、構成が複雑になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、複数の平滑コンデンサが並列に接続されている場合であっても、構成を複雑にさせずにコンデンサの劣化を適切に判定することができる劣化判定装置、及び電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、インダクタに接続された電力供給線に配置され、当該電力供給線に接続された負荷部と平滑コンデンサとの両方に流れる電流を検出可能なロゴスキーコイルと、前記電力供給線の電圧を検出する電圧検出部と、前記ロゴスキーコイルの出力に基づく電流値と、前記電圧検出部が検出した電圧値とに基づいて前記平滑コンデンサのインピーダンス成分の変化を検出し、当該インピーダンス成分の変化に基づいて、前記平滑コンデンサの劣化を判定する劣化判定部とを備える劣化判定装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、インダクタに発生した交流電力を整流する整流部に接続された電力供給線に配置され、当該電力供給線に接続された負荷部と平滑コンデンサとの両方に流れる電流を検出可能なロゴスキーコイルと、前記電力供給線の電圧を検出する電圧検出部と、前記ロゴスキーコイルの出力に基づく電流値と、前記電圧検出部が検出した電圧値とに基づいて前記平滑コンデンサのインピーダンス成分の変化を検出し、当該インピーダンス成分の変化に基づいて、前記平滑コンデンサの劣化を判定する劣化判定部とを備える劣化判定装置である。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の劣化判定装置において、前記劣化判定部は、前記電流値の電流変化量と、電流変化に対応する前記電圧値の電圧変化量とに基づいて、前記インピーダンス成分の変化を検出するようにしてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の劣化判定装置において、前記劣化判定部は、検出した前記インピーダンス成分の変化量に基づいて、前記平滑コンデンサの劣化を判定するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の劣化判定装置において、前記劣化判定部は、検出した前記インピーダンス成分の変化が、所定の範囲外になった場合に、前記平滑コンデンサが劣化したと判定するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の劣化判定装置において、前記劣化判定部は、前記平滑コンデンサが劣化したと判定した場合に、前記平滑コンデンサが劣化したことを示す警報を出力するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記の劣化判定装置において、前記劣化判定部は、前記インピーダンス成分の劣化特性に基づいて、前記平滑コンデンサの交換時期を推定し、推定した前記平滑コンデンサの交換時期を提示するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様は、上記に記載の劣化判定装置を備え、前記電力供給線に直流電力を出力する電源装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、劣化判定部が、ロゴスキーコイルの出力に基づく電流値と、電圧検出部が検出した電圧値とに基づいて平滑コンデンサのインピーダンス成分の変化を検出し、当該インピーダンス成分の変化に基づいて、平滑コンデンサの劣化を判定する。ロゴスキーコイルは、電力供給線に接続された負荷部と平滑コンデンサとの両方に流れる電流を検出可能な電力供給線の位置に配置される。そのため、劣化判定装置は、複数の平滑コンデンサが並列に接続されている場合であっても、1つのロゴスキーコイルによりコンデンサの劣化を判定することができる。よって、劣化判定装置は、構成を複雑にさせずにコンデンサの劣化を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態による劣化判定装置及び電源装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態における積分回路の一例を示す回路図である。
【
図3】第1の実施形態における検出電圧の波形の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態における検出電流の波形の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態における劣化判定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】第2の実施形態における劣化判定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第3の実施形態による電源装置の一例を示すブロック図である。
【
図8】第3の実施形態における検出電流の波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態による劣化判定装置、及び電源装置について、図面を参照して説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態による劣化判定装置10、及び電源装置1の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、電源装置1は、直流電源2と、スイッチ素子31と、ダイオード32と、インダクタ4と、平滑コンデンサ50と、制御部6と、劣化判定装置10とを備える。電源装置1は、例えば、降圧型のスイッチングレギュレータであり、直流電源2が出力する電圧Vinを降圧して、出力電圧を負荷部7に供給する。
【0018】
直流電源2は、例えば、バッテリなどの直流電力を供給する供給源であり、電力供給線L1とGND(グランド)線L2との間に、電圧Vinの直流電力を供給する。
【0019】
スイッチ素子31は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistorn:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)であり、電力供給線L1とインダクタ4との間に接続されている。
ダイオード32は、電力供給線L1とインダクタ4との間のノードN1と、GND線L2との間に接続されている。ダイオード32は、GND線L2からノードN1に向って順方向に接続されている。すなわち、ダイオード32のアノード端子が、GND線L2に接続され、ダイオード32のカソード端子が、ノードN1に接続されている。
【0020】
インダクタ4は、例えば、降圧用のコイルであり、インダクタ4の第1端が、ノードN1を介して、スイッチ素子31に接続されている。また、インダクタ4の第2端は、電源装置1の出力線L3(電力供給線の一例)に接続されている。ここで、出力線L3は、インダクタ4の第2端及び平滑コンデンサ50と接続されている。
なお、電源装置1は、スイッチ素子31、ダイオード32、及びインダクタ4により、降圧チョッパー回路を構成する。
【0021】
平滑コンデンサ50は、出力線L3とGND線L2との間に接続され、電源装置1の出力電圧を平滑化する。平滑コンデンサ50は、平滑コンデンサ51、平滑コンデンサ52、及び平滑コンデンサ53の3つのコンデンサから構成され、本実施形態において、電源装置1が備える平滑コンデンサの全体を示す場合に、平滑コンデンサ50として説明する。
平滑コンデンサ51、平滑コンデンサ52、及び平滑コンデンサ53は、例えば、電解コンデンサであり、経年変化により特性が劣化する。
【0022】
制御部6は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、スイッチ素子31のスイッチングを制御するとともに、後述する劣化判定装置10の積分回路12のリセット機能を制御する。制御部6は、例えば、制御信号S1によるパルス信号で、スイッチ素子31の導通状態を制御し、例えば、制御信号S2によるパルス信号で、積分回路12をリセット(初期化)する制御を行う。
【0023】
劣化判定装置10は、平滑コンデンサ50の劣化を判定する判定装置である。劣化判定装置10は、ロゴスキーコイル11と、積分回路12と、電圧検出部13と、劣化判定部14を備える。
【0024】
ロゴスキーコイル11は、インダクタ4に接続された出力線L3に配置されている。ロゴスキーコイル11は、当該出力線L3に接続された負荷部7と平滑コンデンサ50との両方に流れる電流を検出可能である。ロゴスキーコイル11は、例えば、インダクタ4の第2端と平滑コンデンサ50の間の出力線L3に配置され、当該出力線L3を流れる電流を検出する。
【0025】
積分回路12は、リセット機能を有し、ロゴスキーコイル11の出力を積分する。ここで、
図2を参照して、積分回路12の詳細な構成について説明する。
図2は、本実施形態における積分回路12の一例を示す回路図である。
図2に示すように、積分回路12は、抵抗121と、オペアンプ122と、コンデンサ123と、リセットスイッチ124とを備えている。
【0026】
抵抗121は、ロゴスキーコイル11の一端とオペアンプ122の反転入力端子との間に接続されている。また、コンデンサ123は、オペアンプ122の反転入力端子(ノードN3)と、オペアンプ122の出力端子(ノードN4)との間に接続されている。
【0027】
オペアンプ122は、抵抗121及びコンデンサ123が接続されることにより、積分回路として機能する。オペアンプ122は、反転入力端子に抵抗121を介してロゴスキーコイル11の一端が接続され、非反転入力にロゴスキーコイル11の他端が接続されている。オペアンプ122は、ロゴスキーコイル11の出力を入力信号(IN)とし、ロゴスキーコイル11の出力を積分した出力信号(OUT)を出力する。
【0028】
リセットスイッチ124は、コンデンサ123と並列に、オペアンプ122の反転入力端子(ノードN3)と、オペアンプ122の出力端子(ノードN4)との間に接続されている。リセットスイッチ124は、積分回路12の出力電位をリセットするスイッチであり、制御部6が出力する制御信号S2によるパルス信号により導通状態が制御される。なお、リセットスイッチ124は、積分回路12をリセットする際に、導通状態(オン状態)に制御される。なお、積分回路12の出力信号(OUT)は、出力線L3のロゴスキーコイル11が配置された部分に流れる電流値に対応する。
【0029】
図1に説明に戻り、電圧検出部13は、出力線L3の電圧を検出する。電圧検出部13は、例えば、出力線L3と、GND線L2との間に、直列に接続される抵抗131と抵抗132とを備える。
【0030】
抵抗131及び抵抗132は、分圧抵抗であり、出力線L3の電圧Vを所定の抵抗比で抵抗分圧して、劣化判定部14に出力する。抵抗131の第1端は、出力線L3に接続され、抵抗131の第2端は、ノードN2に接続されている。また、抵抗132の第1端は、ノードN2に接続され、抵抗132の第2端は、GND線L2に接続されている。ここで、ノードN2には、出力線L3の電圧Vを所定の抵抗比で抵抗分圧した電圧であって、出力線L3の電圧Vに対応する電圧が出力される。
【0031】
劣化判定部14は、ロゴスキーコイル11の出力に基づく電流値Iと、電圧検出部13が検出した電圧値Vとに基づいて平滑コンデンサ50のインピーダンス成分の変化を検出する。劣化判定部14は、検出した当該インピーダンス成分の変化に基づいて、平滑コンデンサ50の劣化を判定する。劣化判定部14は、例えば、電流値Iの電流変化量ΔIと、電流変化に対応する電圧値Vの電圧変化量ΔVとに基づいて、インピーダンス成分の変化を検出する。なお、電流変化量ΔI、電圧変化量ΔV、及びインピーダンス成分の変化の詳細については後述する。
【0032】
また、劣化判定部14は、検出したインピーダンス成分の変化が、所定の範囲外になった場合に、平滑コンデンサ50が劣化したと判定する。例えば、劣化判定部14は、インピーダンス成分が予め定められた閾値以上に変化した場合に、平滑コンデンサ50が劣化した判定する。
【0033】
また、劣化判定部14は、平滑コンデンサ50が劣化したと判定した場合に、平滑コンデンサ50が劣化したことを示す警報を出力する。劣化判定部14は、例えば、警報の出力として、LED(発光ダイオード)などの警告灯を発光させる、スピーカから警告音を出力する、警告メッセージを表示部に表示するなどを実行する。
また、劣化判定部14は、変化量算出部141と、警報出力部142とを備える。
【0034】
変化量算出部141は、例えば、電圧検出部13から出力された出力信号(電圧信号)を、例えば、ADC(Analog to Digital Converter)などにより電圧値として取得する。なお、電圧検出部13の出力信号は、出力線L3の電圧Vに対応している。また、出力線L3の電圧Vは、例えば、
図3に示す波形W1のように変化し、変化量算出部141は、取得した電圧値の変化から、出力線L3の電圧Vの最大値と最小値との差である電圧変化量ΔV(リップル電圧)を算出する。
【0035】
また、変化量算出部141は、例えば、積分回路12から出力された出力信号(電圧信号)を、例えば、ADCなどにより電圧値として取得する。なお、積分回路12の出力信号は、ロゴスキーコイル11の出力に基づく電流値(ロゴスキーコイル11の検出電流I)に対応している。また、ロゴスキーコイル11の検出電流Iは、例えば、
図4に示す波形W2のように変化し、変化量算出部141は、取得した電圧値(電流値に相当)の変化から、ロゴスキーコイル11の検出電流Iの最大値と最小値との差である電流変化量ΔIを算出する。
【0036】
また、変化量算出部141は、算出した電圧変化量ΔV及び電流変化量ΔIに基づいて、下記の式(1)により、平滑コンデンサ50のインピーダンス成分を算出する。
【0037】
インピーダンス成分 = ΔV/ΔI ・・・ (1)
【0038】
ここで、平滑コンデンサ50が劣化した場合に、電圧変化量ΔVが増加するため、インピーダンス成分の値が増加する。
なお、劣化判定部14は、上述した式(1)により算出したインピーダンス成分が、例えば、予め定められた所定の閾値以上であるか否かを判定し、予め定められた所定の閾値以上である場合に、平滑コンデンサ50が劣化したと判定する。
【0039】
警報出力部142は、平滑コンデンサ50が劣化したと判定した場合に、平滑コンデンサ50が劣化したことを示す警報を出力する。警報出力部142は、警報として、例えば、警告灯を発光させたり、スピーカから警告音を出力したりする。
【0040】
次に、図面を参照して、本実施形態による劣化判定装置10及び電源装置1の動作について説明する。
【0041】
図5は、本実施形態における劣化判定装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
劣化判定装置10は、所定の時間間隔ごとや、予め設定された時刻になった場合、利用者からの判定要求があった場合などの所定の条件を満たした場合に、
図5に示す処理を実行する。
【0042】
図5に示すように、劣化判定装置10は、検出した電圧V及び電流Iから電圧変化量ΔV及び電流変化量ΔIを算出する(ステップS101)。すなわち、劣化判定部14の変化量算出部141は、電圧検出部13によって検出した電圧Vの最大値と最小値との差分から電圧変化量ΔVを算出する。また、変化量算出部141は、ロゴスキーコイル11によって検出した電流Iの最大値と最小値との差分から電流変化量ΔIを算出する。
【0043】
次に、劣化判定装置10は、電圧変化量ΔV及び電流変化量ΔIからインピーダンス成分を算出する(ステップS102)。変化量算出部141は、例えば、上述した式(1)により、平滑コンデンサ50のインピーダンス成分を算出する。
【0044】
次に、劣化判定装置10は、インピーダンス成分が所定の範囲内であるか否かを判定する(ステップS103)。劣化判定部14は、例えば、算出したインピーダンス成分が、所定の閾値に達したか否かによって、所定の範囲内であるか否かを判定する。劣化判定部14は、インピーダンス成分が、所定の閾値未満である場合に、所定の範囲内であると判定し(ステップS103:YES)、判定処理を終了する。また、劣化判定部14は、インピーダンス成分が、所定の閾値以上である場合に、所定の範囲内でないと判定し(ステップS103:NO)、処理をステップS104に進める。
【0045】
ステップS104において、劣化判定装置10は、平滑コンデンサ50が劣化したと判定し、利用者に警報を出力する。すなわち、劣化判定部14の警報出力部142は、平滑コンデンサ50が劣化したことを示す警報を出力する。ステップS104の処理後に、劣化判定装置10は、判定処理を終了する。
【0046】
なお、上述した例では、所定の範囲として、平滑コンデンサ50の劣化を判定するインピーダンス成分の上限閾値のみを設定する例を説明したが、平滑コンデンサ50の劣化を判定するインピーダンス成分の下限閾値を設定するようにしてもよい。また、上限閾値及び下限閾値は、予め定められた固定値であってもよいし、例えば、インピーダンス成分の初期値の±10%の値などのように、各電源装置1のインピーダンス成分の初期値に基づいて異なる値に設定されてもよい。
【0047】
次に、本実施形態による電源装置1の動作について説明する。
本実施形態による電源装置1において、制御部6が、周期的な制御信号S1をスイッチ素子31のゲート端子に供給することにより、スイッチ素子31を周期的にスイッチングする。これにより、スイッチ素子31、ダイオード32、及びインダクタ4により構成される降圧チョッパー回路が、直流電源2が出力する電圧Vinを降圧して、出力線L3に出力する。電源装置1は、降圧チョッパー回路によって降圧された電圧を、平滑コンデンサ50により平滑化して、出力線L3を介して、負荷部7に供給する。
【0048】
また、電源装置1は、劣化判定装置10を備えており、劣化判定装置10が、上述したように平滑コンデンサ50の劣化を判定して、平滑コンデンサ50が劣化したと判定した場合に利用者に警報を出力する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態による劣化判定装置10は、ロゴスキーコイル11と、電圧検出部13と、劣化判定部14とを備える。ロゴスキーコイル11は、インダクタ4に接続された出力線L3(電力供給線)に配置され、当該出力線L3に接続された負荷部7と平滑コンデンサ50との両方に流れる電流を検出可能である。電圧検出部13は、出力線L3の電圧を検出する。劣化判定部14は、ロゴスキーコイル11の出力に基づく電流値と、電圧検出部13が検出した電圧値とに基づいて平滑コンデンサ50のインピーダンス成分の変化を検出する。電圧検出部13は、当該インピーダンス成分の変化に基づいて、平滑コンデンサ50の劣化を判定する。
【0050】
これにより、本実施形態による劣化判定装置10は、複数の平滑コンデンサ(51~53)が並列に接続されている場合であっても、1つのロゴスキーコイル11により平滑コンデンサ50の劣化を判定することができる。すなわち、本実施形態による劣化判定装置10では、平滑コンデンサ(51~53)の個々にロゴスキーコイルを実装する必要がない。よって、劣化判定装置10は、構成を複雑にさせずに平滑コンデンサ50の劣化を適切に判定することができる。
【0051】
また、本実施形態による劣化判定装置10では、平滑コンデンサ50の劣化を故障前に適切に判定できる。そのため、本実施形態による劣化判定装置10は、平滑コンデンサ50の交換間隔を、平滑コンデンサ50が劣化した判定される平滑コンデンサ50の寿命まで延ばすことが可能であり、電源装置1のメンテナンスに要するコストを低減することができる。
【0052】
また、本実施形態では、劣化判定部14は、電流値の電流変化量と、電流変化に対応する電圧値の電圧変化量とに基づいて、インピーダンス成分の変化を検出する。
これにより、本実施形態による劣化判定装置10は、平滑コンデンサ50の劣化判定に用いる指標(インピーダンス成分)を用意に得ることができ、簡易な手法により、平滑コンデンサ50の劣化を判定することができる。
【0053】
また、本実施形態では、劣化判定部14は、検出したインピーダンス成分の変化が、所定の範囲外(例えば、所定の閾値以上)になった場合に、平滑コンデンサ50が劣化したと判定する。
これにより、本実施形態による劣化判定装置10は、簡易な手法により、平滑コンデンサ50の劣化を適切に判定することができる。
【0054】
また、本実施形態では、劣化判定部14は、平滑コンデンサ50が劣化したと判定した場合に、平滑コンデンサ50が劣化したことを示す警報を出力する。
これにより、本実施形態による劣化判定装置10は、平滑コンデンサ50が劣化したことを利用者に知らせることができる。よって、本実施形態による劣化判定装置10は、例えば、平滑コンデンサ50が劣化したまま使用されて、電源装置1の性能が低下することを防止することができる。
【0055】
また、本実施形態において、インピーダンス成分の劣化特性が予め分かっている場合には、劣化判定部14は、インピーダンス成分の劣化特性に基づいて、平滑コンデンサ50の交換時期を推定し、推定した平滑コンデンサ50の交換時期を提示するようにしてもよい。
これにより、本実施形態による劣化判定装置10は、交換する平滑コンデンサ50の手配や平滑コンデンサ50の交換計画の立案を適切に行うことができ、電源装置1を効率良くメンテナンスすることができる。そのため、本実施形態による劣化判定装置10は、電源装置1の稼働率を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態による電源装置1は、上述した劣化判定装置10を備え、出力線L3に直流電力を出力する。
これにより、本実施形態による電源装置1は、上述した劣化判定装置10と同様の効果を奏し、構成を複雑にさせずにコンデンサの劣化を適切に判定することができる。
【0057】
[第2の実施形態]
次に、図面を参照して、第2の実施形態による劣化判定装置10及び電源装置1について説明する。
【0058】
本実施形態による劣化判定装置10は、劣化判定部14における平滑コンデンサ50の劣化の判定処理が異なる点を除いて、第1の実施形態と同様である。本実施形態では、劣化判定部14が予め記憶していたインピーダンス成分の初期値を用いて算出されたインピーダンス成分の変化量に基づいて、平滑コンデンサ50の劣化を判定する変形例について説明する。本実施形態による電源装置1及び劣化判定装置10の構成は、
図1及び
図2に示す第1の実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0059】
本実施形態による劣化判定部14は、不図示の記憶部に、上述したインピーダンス成分の初期値を予め記憶している。また、劣化判定部14は、上述した式(1)により、現在のインピーダンス成分を算出し、当該現在のインピーダンス成分と、予め記憶しているインピーダンス成分の初期値との差分を、インピーダンス成分の変化量として算出する。劣化判定部14は、インピーダンス成分の変化量が所定の閾値以上である場合に、平滑コンデンサ50が劣化していると判定する。
【0060】
なお、本実施形態における変化量算出部141は、上述したインピーダンス成分の変化量を算出する処理を実行する。
【0061】
次に、図面を参照して、本実施形態による劣化判定装置10及び電源装置1の動作について説明する。
【0062】
図6は、本実施形態における劣化判定装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
劣化判定装置10は、所定の時間間隔ごとや、予め設定された時刻になった場合、利用者からの判定要求があった場合などの所定の条件を満たした場合に、
図6に示す処理を実行する。
【0063】
図6において、ステップS201及びステップS202の処理は、上述した
図5に示すステップS101及びステップS102の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0064】
ステップS203において、劣化判定装置10は、インピーダンス成分の初期値と、算出したインピーダンス成分とからインピーダンス成分の変化量を算出する。変化量算出部141は、例えば、算出したインピーダンス成分から記憶部(不図示)に記憶しているインピーダンス成分の初期値を差分して、インピーダンス成分の変化量を算出する。
【0065】
次に、劣化判定装置10は、インピーダンス成分の変化量が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS204)。劣化判定部14は、インピーダンス成分の変化量が、所定の閾値以上である場合(ステップS204:YES)に、処理をステップS205に進める。また、劣化判定部14は、インピーダンス成分の変化量が、所定の閾値未満である場合(ステップS204:NO)に、判定処理を終了する。
【0066】
ステップS205の処理は、上述した
図5に示すステップS104の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
また、本実施形態による電源装置1の動作は、上述した第1の実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態における劣化判定装置10では、劣化判定部14は、検出したインピーダンス成分の変化量に基づいて、平滑コンデンサ50の劣化を判定する。
これにより、本実施形態における劣化判定装置10は、上述した第1の実施形態と同様に、簡易な手法により、平滑コンデンサ50の劣化を適切に判定することができる。
【0068】
また、本実施形態では、劣化判定部14は、予め記憶していたインピーダンス成分の初期値と、現在のインピーダンス成分とに基づいて、インピーダンス成分の変化量を算出する。
これにより、本実施形態における劣化判定装置10は、インピーダンス成分の値が異なる個々の電源装置1において、平滑コンデンサ50の劣化を適切に判定することができる。
【0069】
[第3の実施形態]
次に、図面を参照して、第3の実施形態による電源装置1aについて説明する。
【0070】
本実施形態による電源装置1aは、第1の実施形態と同様の劣化判定装置10を備える電源装置の変形例である。本実施形態では、劣化判定装置10を、降圧チョッパー回路の代わりに、トランス40を備えたDC/DCコンバータ回路に適用した場合の変形例について説明する。
【0071】
図7は、第3の実施形態による電源装置1aの一例を示すブロック図である。
図7に示すように、電源装置1aは、直流電源2と、スイッチ素子31aと、トランス40と、整流部43と、平滑コンデンサ50と、制御部6aと、劣化判定装置10とを備える。電源装置1aは、例えば、DC/DCコンバータであり、直流電源2が出力する電圧Vinを所定の電圧に変換して、出力電圧を負荷部7に供給する。
なお、この図において、
図1と同一の構成には同一の符号を付与し、ここではその説明を省略する。
【0072】
スイッチ素子31aは、例えば、nMOSFET(n型MOS電界効果トランジスタ)であり、直流電源2の両端子間に、後述するトランス40の一次側コイル41と直列に接続されている。スイッチ素子31aは、制御部6aが出力する制御信号によりスイッチング制御され、一次側コイル41に交流信号を発生させる。
【0073】
トランス40は、一次側コイル41と、二次側コイル42とを備える。一次側コイル41の第1端子は、直流電源2の正極端子に接続され、一次側コイル41の第2端子は、スイッチ素子31aのドレイン端子に接続されている。また、二次側コイル42の第1端子は、整流部43に接続され、二次側コイル42の第2端子は、GND線L2に接続されている。
【0074】
整流部43は、例えば、ダイオードであり、二次側コイル42(インダクタ)に発生した交流電力を整流する。整流部43は、整流した直流電力を、出力線L3(電力供給線の一例)に供給する。
【0075】
制御部6aは、例えば、CPUなどを含むプロセッサであり、スイッチ素子31aのスイッチングを制御する。また、制御部6aは、図示を省略するが、第1の実施形態と同様に、積分回路12のリセット機能を制御する。
【0076】
本実施形態によるロゴスキーコイル11は、二次側コイル42に発生した交流電力を整流する整流部43に接続された出力線L3に配置されている。ロゴスキーコイル11は、当該出力線L3に接続された負荷部7と平滑コンデンサ50との両方に流れる電流を検出可能である。
【0077】
また、本実施形態による積分回路12が出力する電流値に対応する電圧信号の波形は、
図8に示す波形W3のような波形である。すなわち、ロゴスキーコイル11の検出電流Iは、例えば、
図8に示す波形W3のように変化し、変化量算出部141は、取得した電圧値(電流値に相当)の変化から、ロゴスキーコイル11の検出電流Iの最大値と最小値との差である電流変化量ΔIを算出する。また、本実施形態による出力線L3の電圧Vは、第1の実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。
なお、その他の劣化判定装置10の動作は、第1の実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0078】
以上説明したように、本実施形態による劣化判定装置10は、ロゴスキーコイル11と、電圧検出部13と、劣化判定部14とを備える。ロゴスキーコイル11は、二次側コイル42(インダクタ)に発生した交流電力を整流する整流部43に接続された出力線L3に配置され、当該出力線L3に接続された負荷部7と平滑コンデンサ50との両方に流れる電流を検出可能である。電圧検出部13は、出力線L3の電圧を検出する。劣化判定部14は、ロゴスキーコイル11の出力に基づく電流値と、電圧検出部13が検出した電圧値とに基づいて平滑コンデンサ50のインピーダンス成分の変化を検出する。電圧検出部13は、当該インピーダンス成分の変化に基づいて、平滑コンデンサ50の劣化を判定する。
【0079】
これにより、本実施形態による劣化判定装置10は、複数の平滑コンデンサ(51~53)が並列に接続されている場合であっても、1つのロゴスキーコイル11により平滑コンデンサ50の劣化を判定することができる。すなわち、本実施形態による劣化判定装置10では、平滑コンデンサ(51~53)の個々にロゴスキーコイルを実装する必要がない。よって、劣化判定装置10は、第1の実施形態と同様に、構成を複雑にさせずに平滑コンデンサ50の劣化を適切に判定することができる。
【0080】
また、本実施形態による電源装置1aは、上述した劣化判定装置10を備え、出力線L3に直流電力を出力する。
これにより、本実施形態による電源装置1aは、上述した劣化判定装置10と同様の効果を奏し、構成を複雑にさせずにコンデンサの劣化を適切に判定することができる。
【0081】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の実施形態において、電源装置1が降圧型のスイッチングレギュレータである場合の一例、及び電源装置1aがDC/DCコンバータである場合の一例を説明したが、これに限定されるものではない。電源装置1(1a)は、例えば、昇圧型のスイッチングレギュレータなどの他の方式の電源装置であってもよい。
【0082】
また、上記の各実施形態において、劣化判定部14は、ロゴスキーコイル11の出力に基づく電流値Iと、電圧検出部13が検出した電圧値Vとを取得する際に、ADCを利用する例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、他の手段を利用するようにしてもよい。また、劣化判定部14が、演算により、インピーダンス成分を算出する例を説明したが、例えば、アナログ演算回路などを用いて、インピーダンス成分を算出(生成)するようにしてもよい。
【0083】
また、上記の第1及び第2の実施形態において、劣化判定部14は、第1及び第2の実施形態とで異なる判定処理を行う例を説明したが、2つの判定処理を組み合わせて実行するようにしてもよい。
【0084】
また、上述の劣化判定部14は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した劣化判定部14の処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1、1a 電源装置
2 直流電源
4 インダクタ
6、6a 制御部
7 負荷部
10 劣化判定装置
11 ロゴスキーコイル
12 積分回路
13 電圧検出部
14 劣化判定部
31、31a スイッチ素子
32 ダイオード
40 トランス
41 一次側コイル
42 二次側コイル
43 整流部
50、51、52、53 平滑コンデンサ
121、131、132 抵抗
122 オペアンプ
123 コンデンサ
124 リセットスイッチ
141 変化量算出部
142 警報出力部