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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】レーダ信号処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20220228BHJP
【FI】
G01S13/90 164
G01S13/90 191
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018118592
(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公開番号】P2019219339
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-289946(JP,A)
【文献】特開2003-344532(JP,A)
【文献】特開2009-162611(JP,A)
【文献】特開2010-256079(JP,A)
【文献】特開2016-057164(JP,A)
【文献】米国特許第05343204(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ信号の物体による反射波に応じた信号であるレーダ受信信号を取得する取得部と、
前記取得部により取得された、第1の時点におけるレーダ受信信号と前記第1の時点よりも前の第2の時点におけるレーダ受信信号とを合成して得られたレーダ受信信号を用いてISAR画像を生成する生成部と、
前記生成部により生成されたISAR画像に基づいて、前記物体の種別を識別する識別部と、を備え、
前記生成部は、
前記第1の時点におけるレーダ受信信号に基づいてISAR画像を生成し、
前記識別部が前記第1の時点におけるレーダ受信信号に基づいて生成したISAR画像に基づいて物体の種別を識別することができなかった場合、前記第1の時点におけるレーダ受信信号と前記第2の時点におけるレーダ受信信号とを合成して得られたレーダ受信信号を用いてISAR画像を生成し、
前記識別部は、前記第1の時点におけるレーダ受信信号と前記第2の時点におけるレーダ受信信号とを合成して得られたレーダ受信信号を用いて生成されたISAR画像に基づいて前記物体の種別を識別する、
レーダ信号処理装置。
【請求項2】
前記識別部は、
前記生成部が第1時点におけるレーダ受信信号に基づいてISAR画像を生成した場合において、第1のテンプレートを参照して、前記第1の時点におけるレーダ受信信号に基づいて生成されたISAR画像を用いて、前記物体を識別し、
前記生成部が第1時点および第2時点におけるレーダ受信信号に基づいてISAR画像を生成した場合において、前記第1のテンプレートに比して物体の占める領域が小さい第2のテンプレートを参照して、前記第1の時点および前記第2の時点におけるレーダ受信信号を合成して生成されたISAR画像に基づいて、前記物体の種別を識別する、
請求項1に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記第1の時点と前記第2の時点とのレーダ受信信号が、自装置と前記物体との相対位置が同じ状態で取得されたものとみなせるように、前記第1の時点と前記第2の時点とのレーダ受信信号に含まれる位相を補正する、
請求項1または2に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項4】
飛翔体、または航空機に搭載される、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載のレーダ信号処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーダ信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆合成開口レーダ(ISAR:Inverse Synthetic Aperture Radar)で取得したISAR画像を用いて、物体を識別する技術が知られている。しかしながら、この技術では、レーダ断面積(RCS;Radar Cross Section)が小さい物体については精度よく物体の種別を識別することができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3866048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、より精度よく物体を識別することができるレーダ信号処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の処理装置は、取得部と、生成部と、識別部とを持つ。取得部は、レーダ信号の物体による反射波に応じた信号であるレーダ受信信号を取得する。生成部は、前記取得部により取得された、第1の時点におけるレーダ受信信号と前記第1の時点よりも前の第2の時点におけるレーダ受信信号とを合成して得られたレーダ受信信号を用いてISAR画像を生成する。識別部は、前記生成部により生成されたISAR画像に基づいて、前記物体の種別を識別する。更に、前記生成部は、前記第1の時点におけるレーダ受信信号に基づいてISAR画像を生成し、前記識別部が前記第1の時点におけるレーダ受信信号に基づいて生成したISAR画像に基づいて物体の種別を識別することができなかった場合、前記第1の時点におけるレーダ受信信号と前記第2の時点におけるレーダ受信信号とを合成して得られたレーダ受信信号を用いてISAR画像を生成する。更に、前記識別部は、前記第1の時点におけるレーダ受信信号と前記第2の時点におけるレーダ受信信号とを合成して得られたレーダ受信信号を用いて生成されたISAR画像に基づいて前記物体の種別を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態のレーダシステムの一例を示す機能構成図である。
図2】テンプレート群の内容の一例を示す図である。
図3】姿勢角推定部130により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】識別部が物体を識別する際に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のレーダ信号処理装置を、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、本実施形態のレーダシステムの一例を示す機能構成図である。レーダシステム100は、例えば、アンテナ102と、サーキュレータ104と、送信部106と、受信部108と、レーダ信号処理部110と、出力部150とを備える。レーダシステム100は、例えば、移動体(例えば、飛翔体や航空機等)に搭載されて移動しながら使用されてもよいし、静止した状態で使用されてもよい。
【0009】
アンテナ102は、例えば、複数のアンテナ素子をマトリクス状に配列したフェーズドアレイアンテナである。アンテナ102は、送信部106が特定の周波数で繰り返し出力する特定周波数の送信パルス信号(以下、「レーダ信号」という)を指定方向に送信し、送信したレーダ信号の物体による反射波(反射エコー)を受信部108に出力する。
【0010】
サーキュレータ104は、送受信信号を所望の方向に送出するための循環回路である。サーキュレータ104は、送信部106が出力したレーダ信号をアンテナ102に出力する。サーキュレータ104は、アンテナ102が物体から受信して出力した反射エコーを受信部108に出力する。なお、サーキュレータ104を用いず、送信用アンテナと受信用アンテナと、別々のアンテナ102を用意してもよい。
【0011】
送信部106は、例えば、特定の周期でレーダ信号を生成し、生成したレーダ信号を、サーキュレータ104を介してアンテナ102から大気に送信(放射)する。アンテナ102により送信された送信波の一部は、物体によって反射され、反射エコーとしてアンテナ102により受信される。
【0012】
受信部108は、送信部106がレーダ信号を生成する送信周期に基づく周期で、アンテナ102から供給される信号に基づいて、レーダ受信信号を生成する。受信部108は、アンテナ102の複数のアンテナ素子でそれぞれ受信された信号を、位相制御を行って合成することで、任意の方向に受信ビーム(レーダ受信信号)を形成する。受信部108は、生成したレーダ受信信号をレーダ信号処理部110に出力する。レーダ受信信号の情報は、過去データ142として記憶部140に記憶される。
【0013】
レーダ信号処理部110は、例えば、第1処理部112と、第2処理部114と、第3処理部116と、画像生成部118と、第1識別部120と、第2識別部122と、姿勢角推定部130と、記憶部140とを備える。第1処理部112、第2処理部114、第3処理部116、画像生成部118、第1識別部120、第2識別部122、および姿勢角推定部130は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現されてよい。また、これらの機能部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。また、上記のプログラムは、予め記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がレーダシステム100のドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0014】
記憶部140は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の記憶装置により実現される。記憶部140には、レーダ信号処理部110により参照される各種情報が格納されている。例えば、記憶部140には、前述した過去データ142に加え、第1テンプレート群144と、第2テンプレート群146とが記憶されている。第1テンプレート群144、および第2テンプレート群146は、物体ごとの反射レベルの分布のテンプレートを含む。第1テンプレート群144と、第2テンプレート群146とを区別しない場合は、単に「テンプレート群」と称することがある。
【0015】
第1テンプレート群144は、第1処理部112の処理結果に基づいて生成されたISAR画像に対する処理において用いられるテンプレート(高いRCS用のテンプレート)であり、第2テンプレート群146は、第2処理部114の処理結果に基づいて生成されたISAR画像に対する処理において用いられるテンプレート(低いRCS用のテンプレート)である。第1テンプレート群144は、例えば、第1の範囲に存在する物体の種別を識別するためのテンプレートである。第2テンプレート群146は、例えば、第1の範囲よりも遠い位置である第2の範囲に存在する物体の種別を識別するためのテンプレートである。例えば、第2テンプレート群146における物体のテンプレートの占める領域は、第1テンプレート群144における物体のテンプレートの占める領域に比して小さい。
【0016】
また、第1テンプレート群144および第2テンプレート群146には、所定の姿勢角毎に、物体の反射レベルの分布が記憶される。例えば、物体の種別が同じでも、物体の姿勢角が異なる場合には、物体の反射レベルは異なるためである。
【0017】
図2は、テンプレート群の内容の一例を示す図である。テンプレート群は、物体の種別と、物体の姿勢と、レーダ受信信号から導出される反射レベルの分布とが互いに対応付けられた情報である。
【0018】
第1処理部112は、第1の時点で受信部108が出力したレーダ受信信号を取得する。第1処理部112は、例えば、取得したレーダ受信信号に基づいて、パルス圧縮、クロスレンジ圧縮などの処理を行う。
【0019】
第2処理部114は、第1の時点における情報に基づいて生成されたISAR画像が所定の基準を満たさない場合、第1の時点および第2の時点で受信部108が出力したレーダ受信信号を取得する。第2の時点で取得されるレーダ受信信号は、第1の時点で取得されたレーダ受信信号と同じ方向で送信された電波に対する反射波に基づく信号である。そして、第2処理部114は、例えば、第1の時点および第2の時点で受信部108が出力したレーダ受信信号を合成して、合成したレーダ受信信号に基づいて、パルス圧縮、クロスレンジ圧縮などの処理を行う。
【0020】
例えば、第2処理部114は、物体の第1の時点と第2の時点とにおける位置と、速度情報と、自装置の第1の時点と第2の時点とにおける位置と、速度情報とを取得し、取得した情報に基づいて、第2の時点(または第1の時点)で取得されたレーダ受信信号を補正する。例えば、第2処理部114は、サンプリング時間が倍になるように、第1の時点で取得されたレーダ受信信号と第2の時点で取得され補正されたレーダ受信信号とを並べるようにレーダ受信信号を合成する。この場合、第2処理部114は、例えば、第1の時点と第2の時点とのレーダ受信信号が、自装置と物体との相対位置が同じ状態で取得されたものとみなせるように、第1の時点と第2の時点とのレーダ受信信号の位相を補正する。
【0021】
第3処理部116は、例えば、目標物とされる物体よりも小さいレンジセル単位で、RCS(Radar Cross Section)強度を検出する。第3処理部116は、検出したRCS強度に基づいて、目標物が占めるレンジセルを推定し、推定したレンジセルに基づいて、目標物の大きさを推定する。第3処理部116は、RCS強度が基準値以下であると判定した物体を処理対象から除外し、RCS強度が基準値以下でないと判定した物体を目標物とする。第3処理部116は、目標物による反射エコーから生成されたレーダ受信信号を画像生成部118に出力する。
【0022】
画像生成部118は、第3処理部116が出力したレーダ受信信号に基づいて、レンジ・ドップラ法によりISAR画像を生成する。具体的には、画像生成部118は、時間領域のデータであるレーダ受信信号に対して、FFT(Fast Fourier Transform; 高速フーリエ変換)を行って、周波数領域のレーダ受信信号を導出する。画像生成部118は、時間領域のデータであるレンジ参照信号に対して、FFTを行って、周波数領域のレンジ参照信号を導出する。画像生成部118は、導出した周波数領域のレーダ受信信号と、導出した周波数領域のレンジ参照信号とを掛け合わせることで、周波数領域のレンジ圧縮データを導出する。
【0023】
更に、画像生成部118は、時間領域のデータであるクロスレンジ参照信号に対して、FFTを行って、周波数領域のクロスレンジ参照信号を導出する。画像生成部118は、周波数領域のレンジ圧縮データと周波数領域のクロスレンジ参照信号とを掛け合わせることで、周波数領域のクロスレンジ圧縮データを導出する。画像生成部118は、周波数領域のクロスレンジ圧縮データに対して、2次元FFTを行って、時間領域のクロスレンジ圧縮データを導出し、導出した時間領域のクロスレンジ圧縮データに基づいてISAR画像を生成する。
【0024】
画像生成部118は、生成したISAR画像に対して画像処理を行って、ノイズを除去する。具体的には、画像生成部118は、ISAR画像の複数の画素の各々について、反射レベルの値が閾値以上であれば黒とし、閾値未満であれば白とすることによって、2値化する。画像生成部118は、ISAR画像を2値化処理した反射レベルの分布を導出する。
【0025】
ここで、第1識別部120および第2識別部122の説明の前に、姿勢角推定部130の処理について説明する。姿勢角推定部130は、受信部108により取得された情報に基づいて目標情報を導出する。目標情報には、目標物の位置情報、目標物の速度情報、ビームの指向方向情報などが含まれる。姿勢角推定部130は、目標情報に基づいて、目標物の姿勢角を推定する。なお、目標情報は、外部装置により送信された情報であってもよい。レーダ信号処理部110が、これまでに取得した物体の位置情報、および速度情報に基づいて、目標情報を導出してもよい。
【0026】
第1識別部120は、第1テンプレート群144を参照して、姿勢角を示す情報と、反射レベルの分布とに基づいて、物体の種別を判別する。第1識別部120は、画像生成部118により生成された反射レベルの分布と、テンプレート群の反射レベルの分布とを比較する。第1識別部120は、二つの反射レベルの分布の相関度合が閾値以上である場合、テンプレート群の反射レベルの分布に対応付けられた物体の種別を、目標物の種別と判定する。
【0027】
第2識別部122は、第1テンプレート群144を参照して、姿勢角を示す情報と、反射レベルの分布とに基づいて、物体の種別を判別する。例えば、第2識別部122は、第1識別部120の処理と同様に、反射レベルの分布を比較して、物体の種別を判定する。
【0028】
出力部150は、例えば、第1識別部120または第2識別部122の識別結果を出力する表示部やスピーカ等である。出力部150は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)表示装置などにより実現される。
【0029】
[フローチャート(その1)]
図3は、姿勢角推定部130により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、姿勢角推定部130は、目標情報を取得する(ステップS10)。次に、姿勢角推定部130は、取得した目標情報に基づいて、目標物の姿勢角を推定する(ステップS12)。次に、姿勢角推定部130は、推定された目標物の姿勢角の情報を第1識別部120または第2識別部122に送信する(ステップS14)。これにより、本フローチャートの1ルーチンの処理が終了する。
【0030】
上述したように、第1識別部120または第2識別部122は、目標物の姿勢角に応じた反射レベルの分布を取得することができる。
【0031】
[フローチャート(その2)]
図4は、識別部(第1識別部120または第2識別部122)が物体を識別する際に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、第1処理部112が、時刻t(第1の時点)で取得されたレーダ受信信号を取得する(ステップS100)。次に、画像生成部118が、取得したレーダ受信信号に基づいて、ISAR画像を生成する(ステップS102)。
【0032】
次に、第1識別部120が、第1テンプレート群144を参照し、ステップS102で生成されたISAR画像と、姿勢角推定部130により推定された姿勢とに基づいて物体の種別を判別することができるか否かを判定する(ステップS104)。例えば、第1識別部120が、ISAR画像から所定の基準を満たす特徴量を抽出することができた場合、物体の種別を識別することができると判定する。特徴量とは、例えば、前述した反射レベルの分布である。また、ISAR画像から特徴量を抽出することができるとは、例えば、ISAR画像を2値化処理した反射レベルの分布が所定の基準を満たすことである。所定の基準とは、テンプレート群のテンプレートに対する特徴量のマッチング度合いが閾値以上であることである。物体が識別できた場合、ステップS114の処理に進む。
【0033】
物体が識別できなかった場合、第2処理部114は、時刻t-1(第2の時点)と、時刻tとで取得されたレーダ受信信号を取得し(ステップS106)、時刻t-1で取得された信号を補正する(ステップS108)。次に、画像生成部118は、時刻tで取得されたレーダ受信信号と、時刻t-1で取得され補正されたレーダ受信信号とに基づいて、ISAR画像を生成する(ステップS110)。
【0034】
なお、時刻t-1で取得されたレーダ受信信号に代えて、時刻t+1で取得されたレーダ受信信号が用いられてもよい。また、3つの時点以上で取得されたレーダ受信信号が、ISAR画像の生成に用いられてもよい。
【0035】
次に、第2識別部122が、第2テンプレート群146を参照し、ステップS110で生成されたISAR画像と、姿勢角推定部130により推定された姿勢とに基づいて物体の種別を判別する(ステップS112)。例えば、第2識別部122が、第1識別部120の処理で説明したように、ISAR画像から所定の基準を満たす特徴量を抽出することができた場合、物体の種別を識別することができると判定する。そして、第1識別部120または第2識別部122は、識別結果を出力部150に出力させる。これにより、本フローチャートの処理の1ルーチンの処理が終了する。
【0036】
上述した処理により、レーダ信号処理部110は、比較的に近い距離にある物体および比較的に遠い距離に位置する物体の種別を識別することができる。
【0037】
例えば、短いサンプリング時間でサンプリングされた情報に基づいて、ISAR画像が生成される場合、高いRCSの物体を識別可能な画像が生成される。そして、生成された画像から特徴量などが抽出され、この特徴量に基づいて物体の種別が判別される。しかしながら、低いRCSの物体に同様の処理を行って画像を生成しても、画像において特徴量とノイズとを区別したり、特徴量を抽出したりすることが困難である場合があった。
【0038】
また、低いRCSの物体などから得られた低いSN比の信号を用いて生成された画像に代えて、長時間のサンプリングを行って高いSN比の信号を用いた画像を生成し、生成した画像に基づいて、物体の種別を識別することが考えられる。しかしながら、長時間のサンプリングでは、物体が移動してしまうため、この画像を用いることが好ましくない場合もある。
【0039】
本実施形態では、短いサンプリング時間で取得した信号に基づいて生成された画像を用いて高いRCSの物体の種別を識別し、長いサンプリング時間で取得した信号に基づいて生成された画像に相当する画像を、2つの時点で取得した信号を合成して生成し、生成した画像を用いて低いRCSの物体の種別を識別することにより、より精度よく物体の種別を識別することができる。
【0040】
以上説明した実施形態によれば、レーダ信号の物体による反射波に基づく情報を取得する取得部(108)と、前記取得部により取得された、第1の時点における情報と第1の時点よりも前の第2の時点における情報とを合成して、ISAR画像を生成する生成部(112、114、118)と、前記生成部により生成されたISAR画像に基づいて、物体の種別を識別する識別部(120、122)とを持つことにより、より精度よく物体の種別を識別することができる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
100‥レーダシステム、108‥受信部、110‥レーダ信号処理部、112‥第1処理部、114‥第2処理部、116‥第3処理部、118‥画像生成部、120‥第1識別部、122‥第2識別部、130‥姿勢角推定部、142‥過去データ、144‥第1テンプレート群、146‥第2テンプレート群
図1
図2
図3
図4