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特許7030648半導体装置の製造方法およびエッチングガス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法およびエッチングガス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20220228BHJP
   H01L 21/3213 20060101ALI20220228BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20220228BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220228BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20220228BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20220228BHJP
   H01L 27/11582 20170101ALI20220228BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/88 D
H01L29/78 371
H01L27/11582
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018150773
(22)【出願日】2018-08-09
(65)【公開番号】P2020027832
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】堀内 三成
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊行
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-16050(JP,A)
【文献】特開2017-50529(JP,A)
【文献】特開2006-156539(JP,A)
【文献】特開2002-184768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/3213
H01L 21/768
H01L 21/336
H01L 27/11582
H01L 29/788
H01L 29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基(Cは炭素を表し、Fはフッ素を表す)を有し、炭素原子の個数が4個または5個である第1または第2分子を含むエッチングガスを用いて膜をエッチングすることを含み、
前記第1分子は、前記C基内の炭素原子に二重結合により結合したR1基を有し、前記R1基は、炭素を含み、かつ、塩素、臭素、ヨウ素、または酸素を含み、
前記第2分子は、前記C基内の炭素原子に単結合により結合したR2基と、前記C基内の炭素原子に単結合により結合したR3基とを有し、前記R2基および前記R3基の少なくとも一方は、炭素を含み、かつ、前記R2基および前記R3基の各々は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、または酸素を含む、
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記R1基内のフッ素原子および炭素原子のF/C比、または前記R2およびR3基内のフッ素原子および炭素原子のF/C比は、2以下である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記エッチングガスはさらに、酸素分子、希ガス分子、およびC分子(a、bは1以上の整数を表す)の少なくともいずれかを含む、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記膜は、前記第1または第2分子から生成されたプラズマによりエッチングされる、請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記プラズマは、前記第1または第2分子から生成されたCラジカルを含む、請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記プラズマの電子密度は、5.0×10~2.0×1011個/cmである、請求項4または5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記膜は、基板上に交互に形成された複数の第1膜と複数の第2膜とを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記エッチングでは、アスペクト比が10以上の凹部が前記膜に形成される、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
基(Cは炭素を表し、Fはフッ素を表す)を有し、炭素原子の個数が4個または5個である第1または第2分子を含み、
前記第1分子は、前記C基内の炭素原子に二重結合により結合したR1基を有し、前記R1基は、炭素を含み、かつ、塩素、臭素、ヨウ素、または酸素を含み、
前記第2分子は、前記C基内の炭素原子に単結合により結合したR2基と、前記C基内の炭素原子に単結合により結合したR3基とを有し、前記R2基および前記R3基の少なくとも一方は、炭素を含み、かつ、前記R2基および前記R3基の各々は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、または酸素を含む、
エッチングガス。
【請求項10】
さらに、酸素分子、希ガス分子、およびC分子(a、bは1以上の整数を表す)の少なくともいずれかを含む、請求項9に記載のエッチングガス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法およびエッチングガスに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスなど、炭素とフッ素を含有する炭素・フッ素含有ガスを用いたエッチングにより被加工膜に凹部を形成すると、凹部内の被加工膜の側面にフルオロカーボン膜が堆積され、エッチング中の被加工膜の側面がフルオロカーボン膜により保護される。Cガスは、フルオロカーボン膜の堆積速度が速いなどの利点があるが、単価が高いなどの欠点がある。そこで、Cガスの代替ガスとなる好適な炭素・フッ素含有ガスが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6323540号公報
【文献】特許第4804345号公報
【文献】特開2011-44740号公報
【文献】特開2003-133289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
好適な炭素・フッ素含有ガスにより膜をエッチングすることが可能な半導体装置の製造方法およびエッチングガスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の実施形態によれば、半導体装置の製造方法は、C基(Cは炭素を表し、Fはフッ素を表す)を有し、炭素原子の個数が4個または5個である第1または第2分子を含むエッチングガスを用いて膜をエッチングすることを含む。さらに、前記第1分子は、前記C基内の炭素原子に二重結合により結合したR1基を有し、前記R1基は、炭素を含み、かつ、塩素、臭素、ヨウ素、または酸素を含む。さらに、前記第2分子は、前記C基内の炭素原子に単結合により結合したR2基と、前記C基内の炭素原子に単結合により結合したR3基とを有し、前記R2基および前記R3基の少なくとも一方は、炭素を含み、かつ、前記R2基および前記R3基の各々は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、または酸素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図2】Cガスについて説明するためのグラフである。
図3】Cガスについて説明するための表である。
図4】Cガスについて説明するための別のグラフである。
図5】第1実施形態のエッチングガスの成分を説明するための図である。
図6】第1実施形態のエッチングガスの成分の例を説明するための図(1/4)である。
図7】第1実施形態のエッチングガスの成分の例を説明するための図(2/4)である。
図8】第1実施形態のエッチングガスの成分の例を説明するための図(3/4)である。
図9】第1実施形態のエッチングガスの成分の例を説明するための図(4/4)である。
図10】第1実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1から図10において、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。本実施形態の半導体装置は、3次元メモリである。
【0009】
まず、基板1上に下部層2を形成し、下部層2上に、複数の犠牲層3と複数の絶縁層4とを交互に含む積層膜を形成する(図1(a))。犠牲層3は第1膜の例であり、絶縁層4は第2膜の例である。次に、この積層膜上に上部層5を形成し、上部層5上にマスク層6を形成する(図1(a))。
【0010】
基板1は例えば、シリコン(Si)基板などの半導体基板である。図1(a)は、基板1の表面に平行で互いに垂直なX方向およびY方向と、基板1の表面に垂直なZ方向とを示している。本明細書では、+Z方向を上方向として取り扱い、-Z方向を下方向として取り扱う。-Z方向は、重力方向と一致していてもよいし、重力方向と一致していなくてもよい。
【0011】
下部層2は例えば、シリコン酸化膜(SiO)やシリコン窒化膜(SiN)などの絶縁膜や、絶縁膜間に形成された導電層である。犠牲層3は例えばシリコン窒化膜であり、絶縁層4は例えばシリコン酸化膜である。上部層5は例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜などの絶縁膜や、絶縁膜間に形成された導電層である。マスク層6は例えば、有機膜、金属膜、シリコン含有膜などのハードマスク層である。シリコン含有膜の例は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、ポリシリコン膜などである。
【0012】
次に、リソグラフィおよびドライエッチングにより、メモリホールMを形成するための開口パターンをマスク層6に形成する(図1(b))。次に、マスク層6を利用したドライエッチングにより、上部層5、複数の絶縁層4、複数の犠牲層3、および下部層2を貫通するメモリホールMを形成する(図1(b))。メモリホールMのアスペクト比は、例えば10以上である。メモリホールMは、凹部の例である。
【0013】
本実施形態のメモリホールMは、炭素・フッ素含有ガスを含むエッチングガスを用いたドライエッチングにより形成される。その結果、このドライエッチング中にメモリホールM内の絶縁層4や犠牲層3の側面に保護膜7が堆積され、絶縁層4や犠牲層3の側面が保護膜7により保護される。本実施形態の保護膜7は、C膜(フルオロカーボン膜)である。ただし、Cは炭素を表し、Fはフッ素を表し、m、nは1以上の整数を表す。
【0014】
本実施形態のエッチングガスは、炭素・フッ素含有ガスの分子として、第1分子または第2分子を含んでいる。第1分子と第2分子はいずれも、C基(CF-CF=CF基)を有しており、符号「-」は単結合を表し、符号「=」は二重結合を表す。第1分子内の炭素原子の個数は、4個または5個である。同様に、第2分子内の炭素原子の個数は、4個または5個である。
【0015】
第1分子は、C基内の炭素原子に二重結合により結合したR1基をさらに有している。R1基は、炭素を含んでおり、かつ、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、または酸素(O)を含んでいる。R1基は、例えばCCl基やCO基である。R1基はさらに、水素(H)またはフッ素(F)を含んでいてもよい。
【0016】
第2分子は、C基内の炭素原子に単結合により結合したR2基と、C基内の炭素原子に単結合により結合したR3基とをさらに有している。R2基およびR3基の少なくとも一方は、炭素を含んでおり、かつ、R2基およびR3基の各々は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、または酸素を含んでいる。R2基およびR3基の組合せは、例えばCH基およびF基である。
【0017】
基は、C分子にも含まれている官能基である。その結果、本実施形態によれば、このようなエッチングガスを用いてドライエッチングを行うことで、Cガスを用いる場合と同様に、保護膜7の堆積速度を速くすることができることが判明した。これにより、メモリホールM内の絶縁層4や犠牲層3の側面を保護膜7により好適に保護しつつ、メモリホールMを形成することが可能となる。本実施形態のこのような効果の詳細については後述する。
【0018】
次に、保護膜7とマスク層6とを除去し、メモリホールM内にブロック絶縁膜11と、電荷蓄積層12と、トンネル絶縁膜13とを順に形成する(図1(c))。次に、メモリホールMの底部からブロック絶縁膜11と、電荷蓄積層12と、トンネル絶縁膜13とを除去し、メモリホールM内にチャネル半導体層14と、コア絶縁膜15とを順に形成する(図1(c))。電荷蓄積層12は、例えばシリコン窒化膜である。チャネル半導体層14は、例えばポリシリコン層である。ブロック絶縁膜11、トンネル絶縁膜13、およびコア絶縁膜15は、例えばシリコン酸化膜や金属絶縁膜である。
【0019】
その後、犠牲層3を除去して絶縁層4間に複数の空洞を形成し、これらの空洞内に複数の電極層を形成する。さらには、基板1上に種々のプラグ、配線、層間絶縁膜などを形成する。このようにして、本実施形態の半導体装置が製造される。
【0020】
以下、Cガスの詳細を説明し、その内容を踏まえて本実施形態のエッチングガスの詳細を説明する。
【0021】
図2は、Cガスについて説明するためのグラフである。
【0022】
有機膜、金属膜、シリコン含有膜などのマスク層6を用いて絶縁層4や犠牲層3をエッチングする際に、エッチングガスとしてC(ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン)ガスを用いると、高いマスク選択比が得られる。このような高い選択比が得られる要因として、Cガスが多量の保護膜7を生成することが挙げられる。
【0023】
図2は、Cガスを用いた場合の保護膜7の堆積速度と、Cガスを用いた場合の保護膜7の堆積速度を示している。エッチングガスとしてCガスを用いると、保護膜7の堆積速度が速くなるため、多量の保護膜7が生成される。
【0024】
図3は、Cガスについて説明するための表である。
【0025】
エッチングガスとしてCガスを用いる場合には、C分子から生成されたプラズマを用いて絶縁層4や犠牲層3がエッチングされる。具体的には、プラズマに含まれ堆積に寄与するラジカルにより保護膜7が堆積され、プラズマに含まれエッチングに寄与するラジカルおよびイオンにより絶縁層4や犠牲層3の側面がエッチングされる。
【0026】
図3は、C分子から生成される28種類のラジカルを示している。これらのうちのどのラジカルが保護膜7の堆積に寄与するかを、図4を参照して説明する。
【0027】
図4は、Cガスについて説明するための別のグラフである。
【0028】
図4は、エッチングガスに対する希ガスの添加量を変化させた場合の、Cラジカルのラジカル密度と、保護膜7の堆積速度とを示している。Cのラジカル密度は、希ガスの添加量がゼロの場合の密度を基準に規格化されている。
【0029】
ここで、C分子は、CF=CF-CF=CFという構造を有している。CFとCFとの間の二重結合は弱いことから、C分子からCラジカルとCFラジカルが生成されやすいと考えられる。そこで、Cラジカルのラジカル密度と保護膜7の堆積速度との関係を調べてみたところ、Cラジカルのラジカル密度と保護膜7の堆積速度との間には相関関係があることが分かった(図4)。この結果から、保護膜7の堆積にはCラジカルが寄与していると考えられる。
【0030】
図5は、第1実施形態のエッチングガスの成分を説明するための図である。本実施形態のエッチングガスは、炭素・フッ素含有ガスの分子として、第1または第2分子を含んでいる。
【0031】
図5(a)は、第1分子の構造式を示している。第1分子は、C基と、C基内の炭素原子に二重結合により結合したR1基とを有している。第1分子内の炭素原子の総数は、4個または5個である。R1基は、炭素を含んでおり、かつ、塩素、臭素、ヨウ素、または酸素を含んでいる。R1基はさらに、水素またはフッ素を含んでいてもよい。
【0032】
図5(b)は、第2分子の構造式を示している。第2分子は、C基と、C基内の炭素原子に単結合により結合したR2基と、C基内の炭素原子に単結合により結合したR3基とを有している。第2分子内の炭素原子の総数は、4個または5個である。R2基およびR3基の少なくとも一方は、炭素を含んでおり、かつ、R2基およびR3基の各々は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、または酸素を含んでいる。
【0033】
本実施形態の絶縁層4や犠牲層3は、図1(b)の工程にて、第1または第2分子から生成されたプラズマを用いてエッチングされる。具体的には、プラズマに含まれ堆積に寄与するラジカルにより保護膜7が堆積され、プラズマに含まれエッチングに寄与するラジカルおよびイオンにより絶縁層4や犠牲層3の側面がエッチングされる。この際のプラズマの電子密度は、例えば5.0×10~2.0×1011個/cmである。
【0034】
第1分子と第2分子は、いずれもC基を有している。よって、第1または第2分子からプラズマを生成すると、C分子からプラズマを生成する場合と同様に、Cラジカルを含むプラズマを生成することができる。本実施形態によれば、第1または第2分子から生成されたCラジカルにより、保護膜7の堆積速度を速くすることや、高いマスク選択比を実現することが可能となる。別言すると、本実施形態によれば、第1または第2分子により、Cガスの代替ガスとなる好適な炭素・フッ素含有ガスを実現することが可能となる。
【0035】
本実施形態のエッチングガスは、第1または第2分子とその他の分子とを含む混合ガスでもよいし、2種類以上の第1分子、2種類以上の第2分子、または第1分子と第2分子との両方を含む混合ガスでもよい。例えば、本実施形態のエッチングガスは、第1または第2分子のほかに、酸素分子、希ガス分子(単原子分子)、またはC(フルオロカーボン)分子を含んでいてもよい。ただし、a、bは1以上の整数を表す。
【0036】
なお、本実施形態の第1分子内の炭素原子の総数は、上述のように、4個または5個に設定されている。理由は、第1分子内の炭素原子の総数が6個以上になると、第1分子から生成されるCラジカル以外のラジカルの影響が大きくなり、エッチングの特性が低下する可能性があるからである。同様の理由から、本実施形態の第2分子内の炭素原子の総数も、4個または5個に設定されている。
【0037】
また、R1基内のフッ素原子および炭素原子のF/C比や、R2およびR3基内のフッ素原子および炭素原子のF/C比は、2以下に設定することが望ましい。R1基のF/C比は、R1基内のF原子の個数を、R1基内のC原子の個数で割った値である。例えば、R1基内のC原子の個数が2の場合には、R1基内のF原子の個数は4以下に設定することが望ましい(0でもよい)。同様に、R2およびR3基のF/C比は、R2基内のF原子とR3基内のF原子の合計個数を、R2基内のC原子とR3基内のC原子の合計個数で割った値である。理由は、これらのF/C比が2よりも大きくなると、マスク選択比が低くなるからである。
【0038】
図6図9は、第1実施形態のエッチングガスの成分の例を説明するための図である。
【0039】
図6は、第1分子の例について説明するための図であり、様々な分子の構造式を示している。本実施形態の第1分子は、図6に示す各分子の少なくとも一部のH原子またはF原子を、Cl原子、Br原子、またはI原子に置換することで得られる。ただし、F原子をCl原子、Br原子、またはI原子に置換する場合には、C基以外に含まれるF原子が置換対象となる。
【0040】
図7図9は、第2分子の例について説明するための図であり、様々な分子の構造式を示している。図7図9は、本実施形態の第2分子の様々な例を示している。さらに、本実施形態の第2分子は、図7図9に示す各分子の少なくとも一部のH原子またはF原子を、Cl原子、Br原子、またはI原子に置換することでも得られる。ただし、F原子をCl原子、Br原子、またはI原子に置換する場合には、C基以外に含まれるF原子が置換対象となる。
【0041】
なお、本実施形態の第1分子や第2分子は、これらの分子に限定されるものではなく、その他の組成や構造を有していてもよい。
【0042】
図10は、第1実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。
【0043】
図10は、本実施形態の方法で製造される半導体装置の一例を示している。図10は、3次元メモリのメモリセル部と階段コンタクト部とを示している。図10では、下部層2が、第1絶縁膜2a、ソース側導電層2b、および第2絶縁膜2cにより構成され、上部層5が、カバー絶縁膜5a、ドレイン側導電層5b、第1層間絶縁膜5c、および第2層間絶縁膜5dにより構成されている。チャネル半導体層14は、基板1内の拡散層Lに電気的に接続されている。犠牲層3は、タングステン(W)層などを含む電極層3’に置き換えられている。電極層3’は第1膜の例である。
【0044】
図10はさらに、上部層5のコンタクトホールH内に形成されたコンタクトプラグ16を示している。各コンタクトプラグ16は、対応する電極層3’に電気的に接続されるように形成されている。
【0045】
以上のように、本実施形態のメモリホールMは、C基を有する第1または第2分子を含むエッチングガスを用いて形成される。よって、本実施形態によれば、好適な炭素・フッ素含有ガスにより絶縁層4や犠牲層3をエッチングすることが可能となる。例えば、単価の高いCガスを使用せずに、Cガスと同様に好適なエッチングを実行することが可能となる。本実施形態によれば、例えば10以上という高いアスペクト比を有するメモリホールMも好適な形状に形成することが可能となる。
【0046】
なお、図1(a)の工程では、下部層2上に複数の犠牲層3と複数の絶縁層4とを交互に形成する代わりに、下部層2上に複数の電極層3’と複数の絶縁層4とを交互に形成してもよい。この場合、犠牲層3を電極層3’に置き換える工程が不要となる。
【0047】
また、本実施形態のドライエッチングは、メモリホールMの加工以外の工程にも適用可能であり、例えばメモリホールM以外の凹部を加工する工程にも適用可能である。
【0048】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な方法およびガスは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した方法およびガスの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0049】
1:基板、2:下部層、2a:第1絶縁膜、2b:ソース側導電層、
2c:第2絶縁膜、3:犠牲層、3’:電極層、4:絶縁層、
5:上部層、5a:カバー絶縁膜、5b:ドレイン側導電層、
5c:第1層間絶縁膜、5d:第2層間絶縁膜、6:マスク層、7:保護膜、
11:ブロック絶縁膜、12:電荷蓄積層、13:トンネル絶縁膜、
14:チャネル半導体層、15:コア絶縁膜、16:コンタクトプラグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10