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特許7030664情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20220228BHJP
   G06Q 30/08 20120101ALI20220228BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q30/08
H02J3/00 180
H02J3/00 130
H02J3/00 170
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018171851
(22)【出願日】2018-09-13
(65)【公開番号】P2020042738
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】波田野 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】進 博正
(72)【発明者】
【氏名】柿元 満
(72)【発明者】
【氏名】志賀 慶明
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝裕
(72)【発明者】
【氏名】清島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 伊知郎
【審査官】田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-077573(JP,A)
【文献】特開2008ー225755(JP,A)
【文献】特開2016-053925(JP,A)
【文献】特開2018-064454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
H02J3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力取引市場における過去の電力取引情報に基づいて、未来の電力取引の約定価格及び前記約定価格の確度情報を推定する約定価格推定部と、
現在時刻から電力取引終了時刻までの間に取引すべき電力取引量を決定する取引量決定部と、
前記推定された約定価格及び前記確度情報と、前記決定された電力取引量と、に基づいて、現在時刻から電力取引終了時刻までの間の複数の時間区間における電力取引配分を最適化する最適化部と、
前記複数の時間区間における前記最適化された電力取引配分と、前記複数の時間区間における許容価格と、に基づいて、前記複数の時間区間のうち入札を行う時間区間と、前記入札を行う時間区間での入札価格及び入札量と、を含む売買計画を策定する売買計画策定部と、を備える、情報処理装置。
【請求項2】
現在時刻までの入札情報及び約定情報を含む前記過去の電力取引情報を記録する入札約定記録部を備え、
前記売買計画策定部は、最終的な売買計画を策定する前に、暫定的な売買計画を策定し、
前記約定価格推定部は、前記入札約定記録部に記録された入札情報及び約定情報と、前記売買計画策定部で策定された前記暫定的な売買計画とに基づいて、前記複数の時間区間での約定価格を推定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取引量決定部は、過去の消費電力と、気象予測を考慮に入れた電力需要予測情報とに基づいて、現在時刻から電力取引終了時刻までの間に取引すべき電力取引量を決定する、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記最適化部は、前記約定価格推定部で推定された約定推定価格と、約定推定価格の変動幅と、前記取引量決定部で決定された電力取引量と、に基づいて算出される効用値が最大になるように、前記複数の時間区間における電力取引配分を最適化する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記最適化部は、前記複数の時間区間における約定推定価格の平均価格及び分散に応じて前記効用値を算出する、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記最適化部は、過去の電力取引における所定の時間帯の約定価格の値動きに基づいて、対応する時間帯における約定推定価格の平均価格及び分散を算出する、請求項4又は5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記最適化部は、価格変動リスクに対する感度を表すリスク重視度パラメータに基づいて重み付けされた前記効用値が最大になるように、前記複数の時間区間における電力取引配分を最適化する、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記売買計画策定部で策定された前記売買計画上の入札価格と、実際に売買した価格との差異に応じて、前記リスク重視度パラメータを更新するリスクパラメータ更新部を備え、
前記最適化部は、前記更新されたリスク重視度パラメータに基づいて重み付けされた前記効用値が最大になるように、前記複数の時間区間における電力取引配分を最適化する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記売買計画策定部は、現在時刻から電力取引終了時刻までの間に、前記許容価格での約定電力量が目標量に到達しない場合には、前記約定電力量が前記目標量に到達するように前記許容価格を変更する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記売買計画策定部で策定された前記売買計画に基づいて、前記複数の時間区間のうち少なくとも一つの時間区間に入札を行う入札実行部を備える、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
コンピュータにて、
電力取引市場における過去の電力取引情報に基づいて、未来の電力取引の約定価格及び前記約定価格の確度情報を推定するステップと、
現在時刻から電力取引終了時刻までの間に取引すべき電力取引量を決定するステップと、
前記推定された約定価格及び前記確度情報と、前記決定された電力取引量と、に基づいて、現在時刻から電力取引終了時刻までの間の複数の時間区間における電力取引配分を最適化するステップと、
前記複数の時間区間における前記最適化された電力取引配分と、前記複数の時間区間における許容価格と、に基づいて、前記複数の時間区間のうち入札を行う時間区間と、前記入札を行う時間区間での入札価格及び入札量と、を含む売買計画を策定するステップと、を実行させる、情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータを、
電力取引市場における過去の電力取引情報に基づいて、未来の電力取引の約定価格及び前記約定価格の確度情報を推定する約定価格推定部と、
現在時刻から電力取引終了時刻までの間に取引すべき電力取引量を決定する取引量決定部と、
前記推定された約定価格及び前記確度情報と、前記決定された電力取引量と、に基づいて、現在時刻から電力取引終了時刻までの間の複数の時間区間における電力取引配分を最適化する最適化部と、
前記複数の時間区間における前記最適化された電力取引配分と、前記複数の時間区間における許容価格と、に基づいて、前記複数の時間区間のうち入札を行う時間区間と、前記入札を行う時間区間での入札価格及び入札量と、を含む売買計画を策定する売買計画策定部と、として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力自由化により、電力取引市場において電力取引が行われている。電力取引市場では、例えば一日を30分ごとの48の時間区間に分割して、時間区間ごとに電力取引が行われている。電力取引市場には、スポット市場と時間前市場が設けられている。スポット市場は、一日前市場とも言われており、翌日の48の時間区間を1入札単位として、電力取引を行う市場である。時間前市場は、当日市場とも言われており、当日の時間単位ごとに電力取引を行う市場である。
【0003】
時間前取引市場では、価格と電力量の対で入札を行うが、売りと買いを同一の時間単位で行わなければ、何度でも入札を行ってよいことになっている。したがって、時間前取引市場では取引の値動きを見て入札が行われている。
【0004】
時間前市場において、利用者が適正な価格で適正量を取引するためには、売買価格、売買量及び入札のタイミングを決める必要がある。現状は、過去何日かの価格変動や、市場での値動きから価格の目安を決めて、少しずつ目標量に到達するまで入札を繰り返すことが多い。また、取引量を重視して予想平均価格だけに基づいて緩めの売買価格を決めることで実質的な「成行注文」を行うこともある。この場合、取引の平均価格は目標価格範囲を満たしていても、取引価格の変動が大きい場合には、予想外の価格で約定してしまうおそれもある。
【0005】
目標価格が不適切な場合、買い手は市場が閉じるまでに必要量を確保できず、売り手は約定できなかった電力が残ることになる。これらは後日インバランス価格で清算することになり多くの場合損失を生じる
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-170468号公報
【文献】特開2016-62191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、決められた時間内に、最適な条件で電力を取引可能な情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態によれば、電力取引市場における過去の電力取引情報に基づいて、未来の電力取引の約定価格及び前記約定価格の確度情報を推定する約定価格推定部と、
現在時刻から電力取引終了時刻までの間に取引すべき電力取引量を決定する取引量決定部と、
前記推定された約定価格及び前記確度情報と、前記決定された電力取引量と、に基づいて、現在時刻から電力取引終了時刻までの間の複数の時間区間における電力取引配分を最適化する最適化部と、
前記複数の時間区間における前記最適化された電力取引配分と、前記複数の時間区間における許容価格と、に基づいて、前記複数の時間区間のうち入札を行う時間区間と、前記入札を行う時間区間での入札価格及び入札量と、を含む売買計画を策定する売買計画策定部と、を備える、情報処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】情報処理装置の概略構成を示すブロック図。
図2図1の情報処理装置が行う処理動作の一例を示すフローチャート。
図3図2の処理動作をより具体化した詳細なフローチャート。
図4図3のステップS11の詳細な処理動作を示すフローチャート。
図5図3のステップS13の詳細な処理動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態では、情報処理装置内の特徴的な構成および動作を主に説明するが、情報処理装置には以下の説明で省略した構成および動作が存在しうる。
【0011】
図1は情報処理装置1の概略構成を示すブロック図である。図1の情報処理装置1は、電力取引市場での電力取引を行う機能を備えている。電力取引市場には、上述したように、スポット市場と時間前市場が設けられている。以下では、図1の情報処理装置1が時間前市場で電力の取引を行う例を主に説明する。電力の取引とは、電力の販売と購入を含む概念である。時間前市場での電力の取引は、例えば一日を48の時間区間に分割した時間区間ごとに個別の商品として取り扱われる
【0012】
図1の情報処理装置1は、約定価格推定部2と、取引量決定部3と、最適化部4と、売買計画策定部5とを備えている。
【0013】
約定価格推定部2は、電力取引市場6における過去の電力取引情報に基づいて、未来の電力取引の約定価格及び約定価格の確度を推定する。確度は信頼区間、推定値の分散であってもよい。過去の電力取引情報は、例えば入札約定情報データベース(入札約定情報DB、入札約定情報記録部)7から取得される。過去の電力取引情報は、過去の入札情報と約定情報を含んでおり、入札約定情報DB7には、過去の電力取引情報が時系列で記録されている。
【0014】
約定価格推定部2は、最も単純には、過去の取引情報を時系列に並べて、ある時間区間での約定価格の平均値と分散を計算し、計算された平均値と分散に基づいて約定価格を推定する。また、約定価格推定部2は、電力需要予測と現在時刻までの約定量とに基づいて、将来の約定価格を補正してもよい。さらに、約定価格推定部2は、過去の取引情報と売買計画策定部5で策定された暫定的な売買計画とに基づいて、複数の時間区間での約定価格を推定してもよい。
【0015】
取引量決定部3は、現在時刻から電力取引終了時刻までの間に取引すべき電力取引量を決定する。より具体的には、取引量決定部3は、電力需要予測に基づいて算出された電力取引目標量から、現在時刻までに約定が決まった取引量を差し引いた残りの取引残量を、電力取引量として決定する。
【0016】
図1の情報処理装置1は、需要家ごとに設けられてもよい。この場合、取引量決定部3は、需要家の過去の消費電力等を記憶する需要家情報DB8から過去の消費電力を読み出して、過去の消費電力に基づいて電力取引量を決定してもよい。需要家が太陽光発電、風力発電などの発電手段を持ち、発電量に余裕があると見込まれて電力の売り手にもなる場合、需要家情報DB8には過去の消費電力に加え、発電電力の情報も蓄積しておき、過去の発電量と消費量から取引量を決定してもよい。
【0017】
また、図1の情報処理装置1は、電力取引市場における全体的な電力需要を予測する全体需要予測部9を備えているのが望ましい。全体需要予測部9は、例えば、気象予測部10で予測した気象予測結果に基づいて全体的な電力需要を予測してもよい。取引量決定部3は、全体需要予測部9で予測した全体的な需要予測結果を考慮に入れて、電力取引量を決定するのが望ましい。全体需要予測部9が予測する全体的な電力需要は、約定価格に影響する。一般に、需要が大きいときには約定価格は高くなり、需要が小さいときには約定価格は低くなる。図1は電力の買い手側から見たブロック図である。この場合、需要家情報DB8は、需要家が調達すべき電力量を推定するために用いられる。また、電力の売り手側から見ると、需要家情報DB8は、発電情報になる。太陽光や風力発電の電力を売る場合、発電量の予測をしなければならず、火力発電でも余剰分を売る場合が多いため、その余剰分の量を推定することが必要になる。
【0018】
最適化部4は、約定価格推定部2で推定された約定価格と、取引量決定部3で決定された電力取引量とに基づいて、現在時刻から電力取引終了時刻までの間の複数の時間区間における電力取引配分を最適化する。例えば、最適化部4は、約定価格推定部2で推定された約定価格に応じた約定推定価格と、約定推定価格の変動幅と、取引量決定部3で決定された電力取引量と、に基づいて算出される効用値が最大になるように、複数の時間区間における電力取引配分を最適化する。より具体的には、最適化部4は、複数の時間区間における約定推定価格の平均価格及び分散に応じて効用値を算出する。あるいは、最適化部4は、過去の電力取引における所定の時間帯の約定価格の値動きに基づいて、対応する時間帯における約定推定価格の平均価格及び分散を算出する。
【0019】
時間前市場で取引時刻n回に分けて、時刻t1~tnに入札を行い、電力取引総量をxにしたい場合、時刻tiでの電力取引量をxiとすると、xi≧0(i=1,2,…,n)で、以下の(1)式が成り立つ。
x1+x2+…+xn=x …(1)
【0020】
時刻tiでの単位取引量当たりの予想価格をμi、その分散をViとすると、時刻tiでxiだけ電力を取引した場合の電力取引金額は、μi・xiになる。
【0021】
時刻tiでの価格変動リスクを分散で評価する効用関数Uiは、以下の(2)式で表される。
U(xi,λ)=-μi・xi-λ・Vi・xi2 …(2)
【0022】
この(2)式は、電力取引市場6から電力を購入する場合の式であり、λは価格変動リスクに対する感度を表すパラメータ(リスク重視度パラメータ)である。λはユーザによって指定される。例えば、価格変動リスクを無視したければλ=0とする。価格変動リスクを回避したければ、λ>0として電力の購入量を減らす。一方、λ<0とすれば、購入価格が下がる方向に変動する可能性に賭けることになる。
【0023】
なお、時刻tiで電力を販売する場合の効用関数Uiは、以下の(3)式で表される。
U(xi,λ)=μi・xi-λ・Vi・xi2 …(3)
【0024】
最適化部4は、例えば動的計画法を用いて、上記(2)式又は(3)式の効用関数U(xi,λ)の和であるΣU(xi,λ)が最大になるx1、…、xnを求める。入札をかけても必要量の電力が約定しないこともありえる。この場合、現在時刻以降の入札量が変わってくるため、取引量の再計算が必要になる。また、時間の経過とともに電力の需要量や発電量が変わることもあり、その場合も再計算が必要となる。
【0025】
売買計画策定部5は、複数の時間区間における最適化された電力取引量の最適配分および推定価格に基づき、時間区間での入札価格及び入札量を含む売買計画を策定する。最適化部4で策定された取引量に対する入札価格は、予想約定価格と変動幅から決定する。買い手の場合には予想約定価格よりも高い価格、売り手の場合には低い価格が入札価格となるが、どの程度予想価格に上乗せ/値引きするかは、約定価格予測の確度および経済的条件から決定される。経済的条件とは、売り手の場合には燃料費用などの発電コストであり、買い手の場合には資金の上限などから決まる許容価格である。許容価格は、例えば許容価格入力部11にて入力される。
【0026】
図1の情報処理装置1は、入札実行部12を備えていてもよい。入札実行部12は、売買計画策定部5が策定した売買計画に従って入札を自動実行する。
【0027】
入札約定情報DB7内の情報は、新たな取引情報が得られるたびに逐次更新される。約定価格推定部2は、約定価格の推定を、入札約定情報DB7の更新内容を踏まえて行う。約定価格推定部2にて新たな約定価格の推定が行われると、取引量決定部3にて時刻t1までの約定量から取引残量が改めて算出され、最適化部4と売買計画策定部5の各処理も改めて行われる。
【0028】
電力取引市場6での電力取引量と比べて、取引するべき電力量が大きい場合には、約定によって将来の電力取引価格に影響を与えるおそれがある。そこで、売買計画策定部5が現在時刻での売買計画を策定した後、入札実行部12にて入札を実行する前に、売買計画策定部5が策定した売買計画を与えて、約定価格の予測の更新と最適化部4による処理とを繰り返してもよい。また、売買計画策定部5は、現在時刻から電力取引終了時刻までの間に、許容価格での約定電力量が目標量に到達しない場合には、約定電力が目標量に到達するように許容価格を変更してもよい。
【0029】
図2図1の情報処理装置1が行う処理動作の一例を示すフローチャートである。まず、必要量の電力取引が完了したか否かを判定する(ステップS1)。このステップS1の処理は、例えば取引量決定部3が行う。必要量の電力取引が完了できた場合は、図2の処理を終了する。
【0030】
ステップS1で必要量の電力の取引がまだ完了していないと判定されると、現在時刻までの入札情報と約定情報を含む過去の電力取引情報を収集して、入札約定情報DB7に記録する(ステップS2)。
【0031】
次に、過去の電力取引情報から未来の約定価格を推定する(ステップS3)。このステップS3の処理は、約定価格推定部2が行う。次に、推定された約定価格と、必要とされる電力取引量とに基づいて算出される効用値が最大になるように、現在時刻から電力取引終了時刻までの複数の時間区間における電力取引配分を最適化する(ステップS4)。このステップS4の処理は、最適化部4が行う。
【0032】
次に、最適化された電力取引配分に基づいて、入札価格、入札量、入札時刻を含む売買計画を策定する(ステップS5)。このステップS5の処理は売買計画策定部5が行う。次に、策定された売買計画に基づいて入札を行う(ステップS6)。このステップS6の処理は、入札実行部12が行う。ステップS6の処理が終了すると、電力取引が完了するまで、ステップS1以降の処理を繰り返す。
【0033】
図3図2の処理動作をより具体化した詳細なフローチャートである。まず、現在時刻までの約定量と電力需要予測に基づく取引残量を算出する(ステップS11)。図4図3のステップS11の詳細な処理動作を示すフローチャートである。まず、図1の情報処理装置1による電力需要予測に基づいて、電力取引の目標値Qを算出する(ステップS21)。次に、現在時刻までに取引した電力取引総量をQから減じた差分量を取引残量とする(ステップS22)。差分量が負の量であれば、取引残量をゼロとする。
【0034】
図3のステップS11で取引残量が算出されると、次に、取引残量に基づいて、必要量の電力取引が完了したか否かを判定する(ステップS12)。必要量の電力取引が完了した場合には、リスク重視度パラメータを更新し(ステップS13)、図3の処理を終了する。図3のステップS11,S12の処理は取引量決定部3が行い、ステップS13の処理はリスクパラメータ更新部13が行う。
【0035】
図5図3のステップS13の詳細な処理動作を示すフローチャートである。図5の処理は、リスクパラメータ更新部13にて行われる。売買計画上の予定価格よりも高い価格で電力を購入することが多かったか、又は売買計画上の予定価格よりも低い価格で電力を売ることが多かったか否かを判定する(ステップS31)。ステップS31の判定がYESであれば、リスク重視度パラメータλを大きくする(ステップS32)。ステップS31の判定がNOであれば、売買計画上の予定価格よりも低い価格で電力を購入することが多かったか、又は売買計画上の予定価格よりも高い価格で販売することが多かったか否かを判定する(ステップS33)。ステップS33の判定がYESであればリスク重視度パラメータλを小さくする(ステップS34)。ステップS33の判定がNOの場合、又はステップS34の処理が終了すると、図5の処理を終える。
【0036】
このように、リスク重視度パラメータλは、実際の電力取引価格が売買計画上の予定価格から頻繁に逸脱している場合には、電力取引市場6の閉場後に、開場から閉場までの間の約定価格を考慮に入れて更新するのが望ましい。この場合、最適化部4は、更新されたリスク重視度パラメータに基づいて重み付けされた効用値が最大になるように、複数の時間区間における電力取引配分を最適化する。
【0037】
図3のステップS12でまだ必要量の電力取引が完了していないと判定された場合には、現在時刻までの入札情報と約定情報を含む過去の電力取引情報を電力取引市場6から収集して、入札約定情報DB7に記録する(ステップS14)。このステップS14の処理は取引量決定部3が行う。
【0038】
次に、過去の電力取引情報と、図1の情報処理装置1自身の今後の売買計画とに基づいて、今後の約定価格の分布を推定する(ステップS15)。このステップS15の処理は約定価格推定部2が行う。次に、推定された約定価格と、必要とされる電力取引量とに基づいて算出される効用値が最大になるように、現在時刻から電力取引終了時刻までの複数の時間区間における電力取引配分を最適化する(ステップS16)。このステップS16の処理は最適化部4が行う。次に、最適化された電力取引配分に基づいて、入札価格、入札量、入札時刻を含む売買計画を策定する(ステップS17)。
【0039】
次に、ステップS17で策定した売買計画が、以前の売買計画と異なっているか否かを判定する(ステップS18)。異なっている場合には、売買計画が確定していないおそれがあるため、ステップS15以降の処理を繰り返す。ステップS17とS18の処理は売買計画策定部5が行う。ステップS18で異なっていないと判定されると、売買計画に従って入札を実行する(ステップS19)。ステップS19の処理は入札実行部12が行う。その後、ステップS11以降の処理を繰り返す。
【0040】
このように、本実施形態では、未来の約定価格を推定するとともに、電力取引市場6で取引すべき電力取引量を決定する。そして、推定された約定価格と、決定された電力取引量とに基づいて、現在時刻から電力取引終了時刻までの複数の時間区間における電力取引配分を最適化する。そして、最適化された電力取引配分と、許容価格とに基づいて、入札時期、入札価格及び入札量を含む売買計画を策定する。これにより、決められた時間内に、最適な条件で電力を取引可能となり、電力を有効活用できるとともに、電力を最適化条件で売買できることから、無駄な費用を抑制できる。
【0041】
上述した実施形態で説明した情報処理装置1の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、情報処理装置1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0042】
また、情報処理装置1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 情報処理装置、2 約定価格推定部、3 取引量決定部、4 最適化部、5 売買計画策定部、6 電力取引市場、7 入札約定情報DB、8 需要家情報DB、9 全体需要予測部、10 気象予測部、11 許容価格入力部、12 入札実行部
図1
図2
図3
図4
図5