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特許7030670チューブコネクタ、体外循環回路、及び血液浄化装置
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  • 特許-チューブコネクタ、体外循環回路、及び血液浄化装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】チューブコネクタ、体外循環回路、及び血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20220228BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20220228BHJP
   A61M 60/113 20210101ALI20220228BHJP
   A61M 60/279 20210101ALI20220228BHJP
【FI】
A61M1/36 100
A61M1/16
A61M60/113
A61M60/279
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018198587
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2020065606
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 純明
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-212174(JP,A)
【文献】登録実用新案第3007076(JP,U)
【文献】特開2014-8376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0129705(US,A1)
【文献】国際公開第2014/017604(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 1/16
A61M 60/113
A61M 60/279
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のチューブ状部材からなるメインチューブと、しごき型ポンプのしごき部にて径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体を流動させ得る可撓性のチューブ状部材からなる被しごきチューブとを接続するチューブコネクタであって、
前記メインチューブを接続する第1接続部と、
前記被しごきチューブを接続する第2接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部との間に設けられ、前記第1接続部内で流体が流れる第1流路と、前記第2接続部内で流体が流れる第2流路とを連通する連通流路を有する連通部と、を備え、
前記第1接続部と前記連通部と前記第2接続部とを軸方向に順次設けた本体部を有しており、
前記第1流路及び前記第2流路は、一定の径に形成されると共に、前記本体部の軸方向に沿って延びるように形成されており、かつ、前記第1流路の径が、前記第2流路の径よりも小さく、
前記連通流路は、前記第1流路側から前記第2流路側にかけて徐々に拡径されるよう形成されており、
前記第1流路の中心軸と、前記第2流路の中心軸とが、前記本体部の径方向にずれている、
チューブコネクタ。
【請求項2】
前記第1流路の中心軸が、前記第2流路の中心軸に対して、使用状態における上側にずれている、
請求項1に記載のチューブコネクタ。
【請求項3】
前記メインチューブの内径は、前記被しごきチューブの内径よりも小さく、
前記第1接続部は、前記メインチューブの端部を挿入する第1挿入孔を有し、
前記第1流路は、前記第1挿入孔に挿入された前記メインチューブの中空部であり、
前記第2接続部は、前記被しごきチューブの端部を挿入する第2挿入孔を有し、
前記第2流路は、前記第2挿入孔に挿入された前記被しごきチューブの中空部である、
請求項1または2に記載のチューブコネクタ。
【請求項4】
前記第1流路の内周面の一部と、前記第2流路の内周面の一部とが、前記本体部の径方向において一致した位置に形成されている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のチューブコネクタ。
【請求項5】
前記第1流路は、少なくともその一部が、前記本体部の径方向において前記第2流路よりも外側に配置されている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のチューブコネクタ。
【請求項6】
患者の血液を体外循環するためのメインチューブと、
前記メインチューブの途中に挿入された血液浄化器と、
前記メインチューブの途中に挿入されたしごき型ポンプからなり、しごき部にて径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体を流動させ得る可撓性のチューブ状部材からなる被しごきチューブを有する血液ポンプと、
前記被しごきチューブの両端部を前記メインチューブに接続するための一対のチューブコネクタと、を備え、
少なくとも、血液の流れにおける上流側に設けられる前記チューブコネクタが、請求項1乃至5の何れか1項に記載のチューブコネクタである、
体外循環回路。
【請求項7】
第1流路の中心軸が、前記第2流路の中心軸に対して、使用状態において上側にずれるように、前記チューブコネクタの取り付け方向を規制する取り付け方向規制手段を有する、
請求項6に記載の体外循環回路。
【請求項8】
請求項6または7に記載の体外循環回路と、
前記血液浄化器に透析液を供給する透析液供給回路と、を備えた、
血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブコネクタ、体外循環回路、及び血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析に用いられる血液浄化システムでは、電動式のしごき型ポンプからなる血液ポンプが用いられている。この血液ポンプに用いられている被しごきチューブ(ポンプチューブ)と、体外循環回路に用いられているメインチューブとを接続するために、チューブコネクタが用いられている。
【0003】
特許文献1に記載のチューブコネクタでは、第1流路の径が第2流路よりも大きく、連通流路を第1流路側から第2流路側へと徐々に拡径するように形成しており、第1流路と第2流路とは同軸状に(両者の中心軸が一致するよう)形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-212174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、血液透析時には、まず、生理食塩液等のプライミング液を血液回路内に充填するプライミングと呼称される作業を行う。従来のチューブコネクタでは、軸方向が略水平方向に沿うように配置されると、このプライミング時にチューブコネクタで気泡が滞留し易いという課題があった。そのため、作業者が気泡を抜く作業を行わなければならず、作業性が悪化すると共に、プライミングを自動化することが困難であった。
【0006】
また、血液ポンプの作動時に、血液ポンプの上流側が陰圧になるため、血中の溶存気体が気泡化して、チューブコネクタに滞留してしまう場合がある、といった課題もある。
【0007】
特許文献1では、連通流路をテーパ状に形成すると共に、その拡がり角を小さくすることで、気泡の滞留を抑制している。しかし、この構造では、特に第1流路と第2流路の径の差が大きい場合には、連通部が非常に長くなり、チューブコネクタが大型化してしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、コンパクトでかつ気泡の滞留を抑制可能なチューブコネクタ、体外循環回路、及び血液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、可撓性のチューブ状部材からなるメインチューブと、しごき型ポンプのしごき部にて径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体を流動させ得る可撓性のチューブ状部材からなる被しごきチューブとを接続する筒状のチューブコネクタであって、前記メインチューブを接続する第1接続部と、前記被しごきチューブを接続する第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間に設けられ、前記第1接続部内で流体が流れる第1流路と、前記第2接続部内で流体が流れる第2流路とを連通する連通流路を有する連通部と、を備え、前記第1接続部と前記連通部と前記第2接続部とを軸方向に順次設けた本体部を有しており、前記第1流路及び前記第2流路は、一定の径に形成されると共に、前記本体部の軸方向に沿って延びるように形成されており、かつ、前記第1流路の径が、前記第2流路の径よりも小さく、前記連通流路は、前記第1流路及び前記第2流路と段差なく連結され、かつ、前記第1流路側から前記第2流路側にかけて徐々に拡径されるよう形成されており、前記第1流路の中心軸と、前記第2流路の中心軸とが、前記本体部の径方向にずれている、チューブコネクタを提供する。
【0010】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、患者の血液を体外循環するためのメインチューブと、前記メインチューブの途中に挿入された血液浄化器と、前記メインチューブの途中に挿入されたしごき型ポンプからなり、しごき部にて径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体を流動させ得る可撓性のチューブ状部材からなる被しごきチューブを有する血液ポンプと、前記被しごきチューブの両端部を前記メインチューブに接続するための一対のチューブコネクタと、を備え、少なくとも、血液の流れにおける上流側に設けられる前記チューブコネクタが、本発明のチューブコネクタである、体外循環回路を提供する。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、本発明の体外循環回路と、前記血液浄化器に透析液を供給する透析液供給回路と、を備えた、血液浄化装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型でかつ気泡の滞留を抑制可能なチューブコネクタ、体外循環回路、及び血液浄化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係る体外循環回路を示す概略構成図である。
図2図1の体外循環回路に用いるチューブコネクタを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)はメインチューブ及び被しごきチューブを接続した際の被しごきチューブの接続側から見た断面図、(d)は(c)のA-A線断面図である。
図3】チューブコネクタの一変形例を示す断面図である。
図4】血液ポンプの配置とチューブコネクタの向きの一例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は要部を拡大した側面図である。
図5】血液ポンプの配置とチューブコネクタの向きの一例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は要部を拡大した側面図である。
図6】(a),(b)は、取り付け方向規制手段の一例を説明する図である。
図7】一対のチューブコネクタを一体とした場合の斜視図である。
図8】(a)は比較例のチューブコネクタを示す断面図であり、(b),(c)は本発明の実施例及び比較例における気泡の排出性能の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0015】
(体外循環回路の説明)
図1は、本実施の形態に係る体外循環回路を示す概略構成図である。図1に示すように、体外循環回路10は、患者の血液を体外循環するためのメインチューブ11と、メインチューブ11の途中に挿入された血液浄化器12、血液ポンプ13を備えている。
【0016】
メインチューブ11は、可撓性のチューブ状部材からなる。メインチューブ11の一端には、動脈側穿刺針14が取り付け可能とされている。また、メインチューブ11の他端には、静脈側穿刺針15が取り付け可能とされている。
【0017】
動脈側穿刺針14と静脈側穿刺針15間のメインチューブ11には、一端側から他端側にかけて、血液ポンプ13、動脈側エアトラップチャンバ16、血液浄化器12、及び静脈側エアトラップチャンバ17が順次設けられている。血液透析時には、患者の血液は、動脈側穿刺針14からメインチューブ11に導入され、静脈側穿刺針15から患者に戻される。
【0018】
動脈側穿刺針14と血液ポンプ13との間のメインチューブ11には、T字管18が挿入されており、このT字管18を介して生理食塩液等のプライミング液を供給するためのプライミング液供給ライン19が接続されている。プライミング液供給ライン19は可撓性のチューブ状部材からなり、そのT字管18と反対側の端部には、プライミング液を収容する収容バッグ20が接続されている。これにより、収容バッグ20に収容されたプライミング液を、プライミング液供給ライン19及びT字管18を介してメインチューブ11内に供給可能となっている。プライミング液供給ライン19は、図示しない流路閉塞機構にて任意に開閉可能とされている。
【0019】
血液ポンプ13は、電動式のしごき型ポンプからなり、しごき部13aにて径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体を流動させ得る被しごきチューブ13bを有する。被しごきチューブ13bは、可撓性のチューブ状部材からなり、その外径及び内径がメインチューブ11よりも大きい。被しごきチューブ13bの外径は例えば12mmであり、メインチューブ11の外径は例えば6mmである。被しごきチューブ13bの両端部は、本実施の形態に係るチューブコネクタ1を介してメインチューブ11にそれぞれ接続されている。チューブコネクタ1の詳細については後述する。
【0020】
動脈側エアトラップチャンバ16は、血液ポンプ13から吐出された血液の除泡をおこなうためのものである。同様に、静脈側エアトラップチャンバ17は、血液浄化器12を通過した血液の除泡を行うためのものである。
【0021】
血液浄化器12は、ダイアライザとも呼称されるものであり、微小孔が形成された複数の中空糸を筐体内に収容してなり、その筐体部に血液導入ポート12a、血液導出ポート12b、透析液導入ポート12c、及び透析液導出ポート12dがそれぞれ設けられている。血液導入ポート12aには動脈側穿刺針14側のメインチューブ11が接続され、血液導出ポート12bには静脈側穿刺針15側のメインチューブ11が接続される。また、透析液導入ポート12c及び透析液導出ポート12dは、透析液を供給する透析液供給回路21に接続される。この透析液供給回路21と本実施の形態に係る体外循環回路10とを備えたものが、本実施の形態に係る血液浄化装置100である。
【0022】
血液浄化器12に導入された患者の血液は、内部の中空糸内を通過する。また、血液浄化器12に導入された透析液は、中空糸外を通過する。これにより、中空糸を介して、血液中の老廃物等を透析液側に透過させて、血液を清浄化することができる。清浄化された血液は、静脈側エアトラップチャンバ17にて除泡された後、静脈側穿刺針15を介して患者の体内に戻される。
【0023】
(チューブコネクタ1の説明)
図2は、図1の体外循環回路10に用いるチューブコネクタ1を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)はメインチューブ11及び被しごきチューブ13bを接続した際の被しごきチューブ13bの接続側から見た断面図、(d)は(c)のA-A線断面図である。なお、図2(c)は、図2(d)のB-B線断面図に相当する。
【0024】
図2(a)~(d)に示すように、チューブコネクタ1は、樹脂成形部品であり、メインチューブ11と被しごきチューブ13bとを接続するための部材である。チューブコネクタ1は、全体として筒状に形成された本体部2を有している。
【0025】
チューブコネクタ1は、メインチューブ11を接続する第1接続部3と、被しごきチューブ13bを接続する第2接続部4と、第1接続部3と第2接続部4との間に設けられ、第1接続部3内で流体が流れる第1流路3aと、第2接続部4内で流体が流れる第2流路4aとを連通する連通流路5aを有する連通部5と、を備えている。本体部2は、第1接続部3と連通部5と第2接続部4とを軸方向に順次設けて構成されている。
【0026】
第1流路3a及び第2流路4aは、略一定の径に形成され、本体部2の軸方向に沿って延びるように形成されている。また、第1流路3aの径は、第2流路4aの径よりも小さい。本実施の形態では、第1接続部3は、メインチューブ11の端部を挿入する第1挿入孔3bを有しており、第1挿入孔3bに挿入されたメインチューブ11の中空部が第1流路3aとなる。同様に、第2接続部4は、被しごきチューブ13bの端部を挿入する第2挿入孔4bを有しており、第2挿入孔4bに挿入された被しごきチューブ13bの中空部が第2流路4aとなる。本実施の形態では、第1挿入孔3bへのメインチューブ11の挿入を容易とするため、第1挿入孔3bの開口側の端部には、開口側ほど拡径されるテーパ部3cが形成されている。同様に、第2挿入孔4bへの被しごきチューブ13bの挿入を容易とするため、第2挿入孔4bの開口側の端部には、開口側ほど拡径されるテーパ部4cが形成されている。
【0027】
なお、これに限らず、例えば図3に示すように、第1接続部3及び第2接続部4に軸方向外方に突出するように接続凸部3d,4dを設け、当該接続凸部3d,4dをメインチューブ11内あるいは被しごきチューブ13b内に挿入するようにチューブコネクタ1を構成することもできる。ただし、この場合、接続凸部3d,4dの先端部近傍で流れが淀みやすくなり、気泡の滞留の原因となる場合が考えられる。よって、気泡の滞留をより抑制するという観点から、本実施の形態のように、メインチューブ11や被しごきチューブ13bの端部を挿入孔3b,4b内に挿入する構成とすることがより望ましい。
【0028】
図2に戻り、連通流路5aは、第1流路3a及び第2流路4aと略段差なく連結されている。つまり、本実施の形態では、連通流路5aは、第1挿入孔3bに挿入されたメインチューブ11の中空部、及び第2挿入孔4bに挿入された被しごきチューブ13bの中空部と略段差なく連結されている。ただし、連通流路5aと第1流路3a及び第2流路4aとの間には、製造公差等に起因するわずかな段差が存在してもよい。なお、当該段差が大きくなると、流体(血液やプライミング液)の流れの滞留の原因となり気泡が滞留しやすくなるため、段差はなるべく小さくすることが望まれる。
【0029】
また、連通流路5aは、第1流路3a側から第2流路4a側にかけて徐々に拡径されるよう形成されている。本実施の形態では、第1流路3a側から第2流路4a側にかけて徐々に拡径されるテーパ状に連通流路5aを形成したが、これに限らず、例えば、側面視で内周面の一部が丸みを帯びた(湾曲した)形状となっていてもよい。なお、連通流路5aに段差が存在する場合には、当該段差に気泡が滞留してしまうため、連通流路5aは段差のない滑らかな形状とされる。
【0030】
ここで、チューブコネクタ1で気泡の滞留が生じる理由について検討する。第1流路3aと第2流路4aとが同軸状に形成された従来のチューブコネクタでは、連通流路5aのテーパ角(拡がり角)を大きくした場合、特に第1流路3a側から第2流路4a側に流体が流れる際に、第2流路4aの連通部5側の端部近傍で流れが淀みやすくなり、気泡の滞留が発生する。滞留した気泡は使用状態における鉛直方向上側に溜まる。
【0031】
そこで、本発明では、この鉛直方向上側に溜まった気泡を、第1流路3a側から流れ込む流体の勢いにより下流側に流すことを考えた。鉛直方向上側において流体の勢いを高めるためには、第1流路3aを鉛直方向上側にずらして形成すればよいことになる。
【0032】
すなわち、本実施の形態に係るチューブコネクタ1では、第1流路3aの中心軸C1と、第2流路4aの中心軸C2とを、本体部2の径方向にずらすようにした。チューブコネクタ1を使用する際には、第1流路3aの中心軸C1が、第2流路4aの中心軸C2に対して、使用状態における鉛直方向上側にずれるように、チューブコネクタ1を配置する。
【0033】
気泡の滞留をより抑制するためには、第1流路3aの鉛直方向上側の部分と第2流路4aの鉛直方向上側の部分とを一致させるか、あるいは、第1流路3aを第2流路4aよりも鉛直方向上側に形成させるとよい。すなわち、第1流路3aの内周面の一部と第2流路4aの内周面の一部とが、本体部2の径方向において一致した位置に形成されているか、あるいは、第1流路3aの一部が、本体部2の径方向において第2流路4aよりも外側に配置されているとよい。換言すれば、本体部2の中心軸C3から第1流路3aの内周面までの本体部2の径方向に沿った最大距離aが、本体部2の中心軸C3から第2流路4aの内周面までの本体部2の径方向に沿った最大距離b以上であるとよい。
【0034】
ただし、上述の距離aが距離bよりも大きい場合、すなわち第1流路3aを第2流路4aよりも鉛直方向上側に形成した場合には、第2流路4a側から第1流路3a側に流体が流れる場合に、第1流路3aの連通部5側の端部に気泡が滞留しやすくなってしまう場合がある。よって、上述の距離aと距離bとは一致していること、すなわち、第1流路3aの鉛直方向上側の部分と第2流路4aの鉛直方向上側の部分とが一致していること(第1流路3aの内周面の一部と第2流路4aの内周面の一部とが、本体部2の径方向において一致した位置に形成されていること)が最も望ましい。これにより、被しごきチューブ13bの上流側と下流側で共通のチューブコネクタ1を用いることが可能となり、部品点数の削減及び低コスト化に寄与する。なお、この場合、図2(c)に示されるように、被しごきチューブ13bの接続側から見ると、第1流路3aの内周面が、第2流路4aの内周面に接した状態になる。なお、本実施の形態では、本体部2の中心軸C3と第2流路の中心軸C2とが一致しているが、本体部2の中心軸C3と第2流路の中心軸C2とは、本体部2の径方向にずれていてもよい。
【0035】
次に、血液ポンプ13の設置姿勢とチューブコネクタ1の向きについて検討する。図4(a)に示すように、血液ポンプ13が基台22の上面に載置されている場合、血液ポンプ13から延出される導入側及び排出側のメインチューブ11は、水平方向に並んで配置されることになる。このような場合、図4(b)に示すように、第1流路3a(中心軸C1)が、第2流路4a(中心軸C2)に対して、メインチューブ11の配列方向に対して垂直な方向にずれるようにチューブコネクタ1を配置することになる。
【0036】
また、図5(a)に示すように、血液ポンプ13が基台22の側面に取り付けられている場合、血液ポンプ13から延出される導入側及び排出側のメインチューブ11は、鉛直方向に並んで配置されることになる。このような場合、図5(b)に示すように、第1流路3a(中心軸C1)が第2流路4a(中心軸C2)に対して、メインチューブ11の配列方向と平行な方向にずれるようにチューブコネクタ1を配置することになる。なお、血液ポンプ13が表面が傾斜した基台22に載置される場合など、斜めに配置される場合もあり得る。この場合も、第1流路3a(中心軸C1)が第2流路4a(中心軸C2)に対して鉛直方向上側にずれるように、適宜チューブコネクタ1の配置方向を調整するとよい。
【0037】
体外循環回路10は、第1流路3aの中心軸C1が、第2流路4aの中心軸C2に対して、使用状態において鉛直方向上側にずれるように、チューブコネクタ1の取り付け方向を規制する取り付け方向規制手段を有していてもよい。取り付け方向規制手段の具体的な構成については特に限定するものではないが、例えば図6(a)に示すように、チューブコネクタ1の両側に幅の異なる溝6を設けると共に、図6(b)に示すように、血液ポンプ13のケース13cに、両溝6に挿入される幅の異なるガイド突起13dを設けることで、チューブコネクタ1の取り付け方向を規制することができる。例えば、被しごきチューブ13bを血液ポンプ13にセッティングするときに、被しごきチューブ13bが捩れてチューブコネクタ1を所望の向きにすることが困難となる場合があるが、取り付け方向規制手段を備えることで、被しごきチューブ13bの捩れ等の影響を抑え、チューブコネクタ1を所望の方向で取り付け易くなる。
【0038】
さらに、図7に示すように、被しごきチューブ13bの上流側に接続するチューブコネクタ1と、下流側に接続するチューブコネクタ1とを、一体に構成してもよい。ここでは、板状の連結片7により1対のチューブコネクタ1が連結されている場合を示しているが、これに限らず、例えば、柱状あるいは棒状の連結片により1対のチューブコネクタ1が連結されていてもよいし、チューブコネクタ1とは別途設けられた固定用部材によってチューブコネクタ1が連結されていてもよい。一対のチューブコネクタ1を一体とすることにより、一度の取り付け作業で両チューブコネクタ1を取り付け可能となり、作業性が向上する。
【0039】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るチューブコネクタ1では、第1流路3aの中心軸C1と、第2流路4aの中心軸C2とが、本体部2の径方向にずれている。これにより、第1流路3aが第2流路4aに対して鉛直方向上側にずれるようにチューブコネクタ1を配置して使用することで、第1流路3aから流れ込む流体の勢いにより気泡が下流側に流され易くなる。その結果、プライミング時の気泡抜き作業が不要になり、プライミングの自動化も可能になる。
【0040】
また、血中の溶存気体が気泡化した場合であっても、この気泡を下流側に流しやすくなる。近年、血液透析時の操作の省力化のために、血液透析終了後の返血動作を自動化することが求められている。返血動作の際には、血液ポンプ13が逆回転し逆方向に血液が流れるため、チューブポンプに気泡が溜まっていると、返血動作の際に、溜まった気泡が患者側に移動してしまう可能性がある。血液ポンプ13よりも動脈側穿刺針14側に気泡検出器を設け、気泡検出時に血液回路を遮断して警報を発することで、患者に気泡を送ってしまうことは抑制可能であるが、この場合、警報解除のために医療従事者が作業を行うこととなり、自動化による省力効果は得られなくなってしまう。さらに、警報発生中は返血動作を実施しないため、血液回路内で血液が停止した状態になってしまい、凝血のリスクが高まる。本実施の形態に係るチューブコネクタ1を用いることで、気泡の滞留を抑制し、返血動作時に気泡が患者へと移動することを抑制でき、自動で返血動作を行う際に警報が発生し返血動作が中断してしまうことを抑制可能になる。
【0041】
さらに、本実施の形態では、従来と比べて連通部の軸方向長さを短くすることが可能であり、チューブコネクタ1のコンパクト化が可能である。このように、本実施の形態によれば、コンパクトでかつ気泡の滞留を抑制可能なチューブコネクタ1を実現できる。
【0042】
(気泡の排出性能の評価)
実際にチューブコネクタ1を試作し、気泡の排出性能の評価を行った。比較のために、図8(a)に示すように、第1流路3aの中心軸C1と、第2流路4aの中心軸C2とを一致させた比較例のチューブコネクタ80を作成し、同様に気泡の排出性能の評価を行った。比較例では、連通部5の連通流路5aにおける拡がり角(テーパ角)θを10°とした比較例1のチューブコネクタ80と、拡がり角θを約65°とした比較例2のチューブコネクタ80について評価を行った。比較例1のチューブコネクタ80の軸方向長さLは44.9mmであり、比較例2のチューブコネクタ80の軸方向長さLは27.0mmであった。これに対して、本発明の実施例であるチューブコネクタ1の軸方向長さは、37.0mmであった。気泡の排出性能の評価では、血液を模した液体をチューブコネクタ1,80の第1流路3a側から第2流路4a側に流し、その流量(血流量)を変化させて、チューブコネクタ1,80に残る気泡の残量(吸入残エア)の測定を行った。
【0043】
本発明の実施例、及び比較例1,2における評価結果を図8(b)、(c)に示す。なお、図8(c)は、図8(b)の縦軸を拡大して示したものである。図8(b)、(c)に示すように、拡がり角θを約65°と大きくした実施例2のチューブコネクタ80は、軸方向長さLを小さくできるものの、実施例及び比較例1と比較して気泡の残量が多く、気泡の滞留を十分に抑制することができなかった。
【0044】
実施例及び比較例1では、血流量によらず気泡の残量を非常に小さくすることができた。しかし、比較例1のチューブコネクタ80は、軸方向長さLが44.9mmと長くサイズが大きくなってしまう。実施例のチューブコネクタ1では、軸方向長さが37.0mmと小型であり、かつ気泡の滞留を十分に抑制できることが確認できた。
【0045】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0046】
[1]可撓性のチューブ状部材からなるメインチューブ(11)と、しごき型ポンプのしごき部(13a)にて径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体を流動させ得る可撓性のチューブ状部材からなる被しごきチューブ(13b)とを接続するチューブコネクタ(1)であって、前記メインチューブ(11)を接続する第1接続部(3)と、前記被しごきチューブ(13b)を接続する第2接続部(4)と、前記第1接続部(3)と前記第2接続部(4)との間に設けられ、前記第1接続部(3)内で流体が流れる第1流路(3a)と、前記第2接続部(4)内で流体が流れる第2流路(4a)とを連通する連通流路(5a)を有する連通部(5)と、を備え、前記第1接続部(3)と前記連通部(5)と前記第2接続部(4)とを軸方向に順次設けた本体部(2)を有しており、前記第1流路(3a)及び前記第2流路(4a)は、一定の径に形成されると共に、前記本体部(2)の軸方向に沿って延びるように形成されており、かつ、前記第1流路(3a)の径が、前記第2流路(4a)の径よりも小さく、前記連通流路(5a)は、前記第1流路(3a)側から前記第2流路(4a)側にかけて徐々に拡径されるよう形成されており、前記第1流路(3a)の中心軸(C1)と、前記第2流路(4a)の中心軸(C2)とが、前記本体部(2)の径方向にずれている、チューブコネクタ(1)。
【0047】
[2]前記第1流路(3a)の中心軸(C1)が、前記第2流路(4a)の中心軸(C2)に対して、使用状態における上側にずれている、[1]に記載のチューブコネクタ(1)。
【0048】
[3]前記メインチューブ(11)の内径は、前記被しごきチューブ(13b)の内径よりも小さく、前記第1接続部(3)は、前記メインチューブ(11)の端部を挿入する第1挿入孔(3b)を有し、前記第1流路(3a)は、前記第1挿入孔(3b)に挿入された前記メインチューブ(11)の中空部であり、前記第2接続部(4)は、前記被しごきチューブ(13b)の端部を挿入する第2挿入孔(4b)を有し、前記第2流路(4a)は、前記第2挿入孔(4b)に挿入された前記被しごきチューブ(13b)の中空部である、[1]または[2]に記載のチューブコネクタ(1)。
【0049】
[4]前記第1流路(3a)の内周面の一部と、前記第2流路(4a)の内周面の一部とが、前記本体部(2)の径方向において一致した位置に形成されている、[1]乃至[3]の何れか1項に記載のチューブコネクタ(1)。
【0050】
[5]前記第1流路(3a)は、少なくともその一部が、前記本体部(2)の径方向において前記第2流路(4a)よりも外側に配置されている、[1]乃至[3]の何れか1項に記載のチューブコネクタ(1)。
【0051】
[6]患者の血液を体外循環するためのメインチューブ(11)と、前記メインチューブ(11)の途中に挿入された血液浄化器(12)と、前記メインチューブ(11)の途中に挿入されたしごき型ポンプからなり、しごき部(13a)にて径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体を流動させ得る可撓性のチューブ状部材からなる被しごきチューブ(13b)を有する血液ポンプ(13)と、前記被しごきチューブ(13b)の両端部を前記メインチューブ(11)に接続するための一対のチューブコネクタ(1)と、を備え、少なくとも、血液の流れにおける上流側に設けられる前記チューブコネクタが、[1]乃至[5]の何れか1項に記載のチューブコネクタ(1)である、体外循環回路(10)。
【0052】
[7]第1流路(3a)の中心軸(C1)が、前記第2流路(4a)の中心軸(C2)に対して、使用状態において上側にずれるように、前記チューブコネクタ(1)の取り付け方向を規制する取り付け方向規制手段を有する、[6]に記載の体外循環回路(10)。
【0053】
[8][6]または[7]に記載の体外循環回路(10)と、前記血液浄化器(12)に透析液を供給する透析液供給回路(21)と、を備えた、血液浄化装置(100)。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0055】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、被しごきチューブ13bの上流側と下流側の両方のチューブコネクタに本発明のチューブコネクタ1を用いる場合を説明したが、少なくとも、血液透析時の血液の流れにおける上流側に設けられるチューブコネクタとして、本発明のチューブコネクタ1を用いればよい。
【符号の説明】
【0056】
1…チューブコネクタ
2…本体部
3…第1接続部
3a…第1流路
3b…第1挿入孔
4…第2接続部
4a…第2流路
4b…第2挿入孔
5…連通部
5a…連通流路
10…体外循環回路
11…メインチューブ
12…血液浄化器
13…血液ポンプ
13a…しごき部
13b…被しごきチューブ
21…透析液供給回路
100…血液浄化装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8