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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】感光性樹脂用の剥離用溶剤
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20220228BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20220228BHJP
   C09D 9/00 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
G03F7/42
H01L21/30 572B
C09D9/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018514396
(86)(22)【出願日】2016-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2016071695
(87)【国際公開番号】W WO2017046163
(87)【国際公開日】2017-03-23
【審査請求日】2019-08-14
(31)【優先権主張番号】1558739
(32)【優先日】2015-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブールデッテ, アルノー
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/116657(WO,A1)
【文献】特開2005-045070(JP,A)
【文献】国際公開第2014/097633(WO,A1)
【文献】特開2013-076845(JP,A)
【文献】特開平06-051535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00 - 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の溶剤(S1)および(S2):
(S1)下式(I):
OOC-A-CONR (I)
(式中:
は、1~36個の範囲の炭素原子の平均数を含む、飽和もしくは不飽和の、線状もしくは分岐の、任意選択的に環式の、任意選択的に芳香族の、炭化水素ベースの基から選択される基であり;
およびRは、同一であっても異なってもよく、1~36個の範囲の炭素原子の平均数を含む、飽和もしくは不飽和の、線状もしくは分岐の、任意選択的に環式の、任意選択的に芳香族の、任意選択的に置換された、炭化水素ベースの基から選択される基であり、RおよびRは一緒に、任意選択的に置換されているおよび/または任意選択的にヘテロ原子を含む、環を任意選択的に形成することができ、
Aは、2~12個の範囲の炭素原子の平均数を含む、線状もしくは分岐の二価のアルキル基である)
に相当する少なくとも1種のエステルアミド化合物を含む溶剤
(S2)ジメチルスルホキシド DMS
の混合物を含むかまたは混合物からなる溶剤の混合物の、フォトレジストを剥離するための使用。
【請求項2】
Aが、2~4個の範囲の炭素原子の平均数を含む、線状もしくは分岐の二価のアルキル基である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
溶剤(S2)の重量に対する溶剤(S1)の重量のS1/S2重量比が1以上である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
溶剤(S2)の重量に対する溶剤(S1)の重量のS1/S2重量比が1以下である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
溶剤の混合物が、溶剤(S1)、溶剤(S2)および溶剤(S3)シクロペンタノン C の混合物を含むかまたは混合物からなる、請求項1または2に記載の使用。
【請求項6】
S3/(S1+S2)重量比が、10%未満である、請求項に記載の使用。
【請求項7】
S3/(S1+S2)重量比が、2%~7%である、請求項に記載の使用。
【請求項8】
基板の表面の一定域上のみのコーティングの選択的堆積方法であって、
(a)前記表面上へのフォトレジストのフィルムの堆積;次に
(b)一定域上のみの前記フィルムの選択的照射;次に
(c)剥離用溶剤を用いた前記フィルムの剥離
を含み、
前記剥離用溶剤が、請求項1~のいずれか一項に記載の溶剤の混合物である方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィー法に使用されるフォトレジストの剥離の分野に関する。
【0002】
フォトレジスト(フォトレジンまたは感光性樹脂としても知られる)は周知の材料であり、その特性は、好適な照射への露光前後で異なる。この照射は典型的には、電磁線、例えば、DNQ(ジアゾナフトキノン)型のフォトレジンについては300~450nmの波長のUV線、または、よりまれには、より特有の樹脂(幅広い意味で、このタイプの樹脂は、光放射が関与しない場合でさえも「感光性」であると本明細書では考えられるであろう)については電子ビームである。
【0003】
典型的には、照射は、「デベロッパー」溶剤と称される溶剤へのフォトレジストの溶解性を変更する。これに関連して、2つのタイプのフォトレジスト、すなわち:
・「ポジ型」フォトレジスト:
露光前に、これらの樹脂は、デベロッパー溶剤に溶けない(あるいは非常にゆっくり溶ける)。逆に、露光後に、それらは可溶性になる(または、典型的にはフィルムの溶解速度が少なくとも100倍だけ増加して、少なくともはるかにより速く溶ける)、および
・「ネガ型」フォトレジスト:
露光前に、これらの樹脂は、デベロッパー溶剤に溶け、照射後に、それらは溶けないようになる(または、典型的にはフィルムの溶解速度が少なくとも100倍だけ低下して、少なくともはるかによりゆっくり溶ける)
がある。
【0004】
フォトレジストは、オープンワーク・コーティングを基板の表面上に形成することを特に可能にし、これは、マイクロエレクトロニック構成要素(チップ、ダイオード、トランジスタ、スクリーンなど)の製造を可能にするフォトリソグラフィーを特に含む、多くの工業プロセスに用いられている。
【0005】
本質的に公知の一方法によれば、フォトリソグラフィーに使用されるフォトレジストは典型的には、基板(例えばシリコンまたは酸化ケイ素)の表面上に薄膜の形態で堆積させられ、次にそれは、その溶解性変更を誘導する放射光に、一定域上でのみ、露光される。選択的な照射はそのとき樹脂を、それが露光された場所でのみ改質し、このようにして2つのタイプの域、すなわち、デベロッパー溶剤で除去することができる、「可溶性」域と、デベロッパー溶剤によって除去することができない、あるいはデベロッパー溶剤が除去するのがより困難である「不溶性」域とを表面上に形成する。デベロッパー溶剤の作用によって、可溶性域が次に、「フォトレジストを剥離すること」と本記載で示され得る工程において除去される。
【0006】
ポジ型フォトレジストを使って、デベロッパー溶剤で「フォトレジストを剥離する」工程は、光増感された(照射された)樹脂を除去することを実際に可能にする。
【0007】
ネガ型フォトレジストの場合には、フォトレジストを剥離する工程は、逆に、光増感されなかった(照射されなかった)樹脂を除去することを可能にする。
【0008】
フォトレジストの剥離は、ポジ型樹脂の場合には非照射域のみをマスクし、そしてネガ型樹脂の場合には照射域のみをマスクするパターンで表面上に堆積させられたフィルムを後に残す。(実際には、処理される表面がオープンワークマスクを通して照射される。ポジ型樹脂の使用は、照射および溶剤の作用後に、マスクの正確な生き写しである保護樹脂のフィルムを表面上に再現することを可能にする。ネガ型樹脂は、逆に、マスクのネガを表面上に形成する)。この選択的なマスキングは、表面の選択的な保護を可能にし、それは典型的には、フィルムの下に置かれているものをそのままの状態に保ちながら、非保護域をエッチすることを可能にする。
【0009】
本発明は、上述のタイプのフォトレジストの剥離を行うのに好適な新しいタイプのデベロッパー溶剤に関する。
【0010】
現時点では、フォトレジスト剥離は通常、N-メチルピロリドン(1-メチル-2-ピロリドン、本明細書では以下、「NMP」と言われる)を用いて実施される。
【0011】
NMPは、フォトリソグラフィーにおいて通常使用される多数のフォトレジストを剥離するのに有効であることが知られている。NMPはまた、溶解した樹脂を溶液中に保つこと、そして有機不純物を除去することを可能にする強力な溶剤である。
【0012】
しかし、NMPに関連する問題はその毒性にある。欧州においては、例えば、この溶剤は、European Chemicals Agency(ECHA)(欧州化学品庁)のSVHC(「非常に高い懸念の物質(Substances of Very High Concern)」についての)リストにあり、生殖毒性である物質に相当する、危険な化学薬品CMR 1Bとして分類されている。
【0013】
本発明の目的は、NMPと同じ毒性問題を示さないフォトレジスト剥離を実施するための効率的な手段を提供することである。言い換えれば、本発明は、NMPの非毒性代替物であり、そしてNMPで使用することができるフォトレジストの、全部ではないが、ほとんどを剥離することを可能にするデベロッパーを提供することに狙いを定めている。
【0014】
この趣旨で、本発明は、本発明者らがこれから実証する、溶剤の特有の混合物による剥離を実施することを提案し、フォトレジスト、特に、NMPが剥離することを可能にするフォトレジストのほとんどの効率的な剥離を提供する。
【0015】
より具体的には、第1態様によれば、本発明の主題は、下記の溶剤(S1)、(S2)および(S3):
(S1)下式(I):
OOC-A-CONR (I)
(式中:
は、1~36個の範囲の炭素原子の平均数を含む、飽和もしくは不飽和の、線状もしくは分岐の、任意選択的に環式の、任意選択的に芳香族の、炭化水素ベースの基から選択される基であり;
同一であっても異なってもよい、RおよびRは、1~36個の範囲の炭素原子の平均数を含む、飽和もしくは不飽和の、線状もしくは分岐の、任意選択的に環式の、任意選択的に芳香族の、任意選択的に置換された、炭化水素ベースの基から選択される基であり、RおよびRは一緒に、任意選択的に置換されているおよび/または任意選択的にヘテロ原子を含む、環を任意選択的に形成することができ、
Aは、2~12個、好ましくは2~4個の範囲の炭素原子の平均数を含む、線状もしくは分岐の二価のアルキル基である)
に相当する少なくとも1種のエステルアミド化合物を含む溶剤
(S2)ジメチルスルホキシド DMSO
(S3)シクロペンタノン C
の、少なくとも2つ、または3つさえを含む溶剤の混合物の、フォトレジストを剥離するための使用である。
【0016】
炭素原子の「平均数」という概念は、それが本明細書で用いられる意味では、その最も一般的な定義で理解される。したがって、式(I)の単一化合物を含有する溶剤(S1)については、R、R、RおよびA基中の炭素原子の「平均数」は、これらの基のそれぞれ中の炭素の数に厳密に等しい。いくつかの状況では、溶剤(S1)は、それらのRおよび/またはRおよび/またはRおよび/またはA基によって互いに異なることができる式(I)のいくつかの化合物を含有することができる。この場合には、各基中の炭素原子の平均数は典型的には、式(I)の化合物の総集団における所与の基中の炭素原子の数の数平均表示N(number average denoted N)によって定義される。例として、別個のR基を示す式(I)の化合物の集団についてR基中の炭素原子の平均数N(R)は、次の通り:
(式中:
・IminおよびImaxは、問題になっている集団の化合物のR基中の炭素原子の最小数におよび最大数にそれぞれ等しく;
・Imin~Imaxの範囲のiの各値について、Niは、R基がi個の炭素原子を正確に含む集団の化合物の数に等しい整数である)
計算することができる。
【0017】
別の態様によれば、本発明の主題は、基板の表面の一定域上のみのコーティングの選択的堆積方法であって、(a)前記表面上へのフォトレジストのフィルムの堆積;次に(b)一定域上のみの前記フィルムの選択的照射;次に(c)剥離用溶剤を用いた前記フィルムの剥離を含み、ここで、前記剥離用溶剤は、上述のタイプの溶剤である。
【0018】
本発明の方法は、特に、プリント回路の、マイクロエレクトロニクス構成部品のまたはスクリーンの製造のための、フォトリソグラフィーで特に用いることができる。
【0019】
本発明との関連で実施された研究は、上述のタイプの混合物が許容できる剥離、いくつかの場合にはフォトレジスト、特にNMPを使用して従来剥離されているものの非常に効率的な剥離を可能にすることを示すことを今可能にした。
【0020】
加えて、本発明による溶剤の混合物は、水で簡単に洗浄することによって、剥離後に簡単で効率的なリンスを可能にする、水溶性であるという利点を有する。
【0021】
本発明の第1の可能な実施形態によれば、使用される溶剤の混合物は、溶剤(S1)および溶剤(S2)を含む(または実にそれらからなる)。
【0022】
この実施形態において、溶剤(S2)の重量に対する溶剤(S1)の重量のS1/S2重量比は好ましくは0.1~10である。例えば、溶剤(S1)および(S2)を以下のそれぞれの重量割合:10:90;20:80;30:70;40:60;50:50;60:40;70:30;80:20または90:10で含む混合物が、この実施形態に従って、使用されてもよい。
【0023】
本説明の目的のためには、「溶媒(S1)および(S2)をそれぞれの重量割合10:90で含む混合物」は、他の可能な溶剤の中で、溶剤(S1)および(S2)を含む溶剤の混合物であって、溶剤(S1)の重量対溶剤(S1)および(S2)の重量の合計の比が10%である(溶剤(S1)および(S2)の重量の合計に対する溶媒(S2)の重量の比がそれ自体90%である)混合物を示す。
【0024】
第1実施形態によれば、(S1)/(S2)重量比は好ましくは、できるだけ高い、例えば1以上である。これは、DMSOがすごく不快な、特別な臭いを有し、その含有量を減らすことが多くの場合好ましいからである。特にこういう訳で、溶剤(S1)および(S2)を以下のそれぞれの重量割合:50:50;60:40;70:30;80:20または90:10で含む混合物が好ましくは使用されてもよい。
【0025】
しかし、本発明者らは、この第1実施形態による混合物が、DMSO含有量が増加する場合により良好な剥離効率を示すことを観察している。この観点から、(S1)/(S2)比がより低い、例えば1以下である混合物が有利であることが判明している。特にこういう訳で、それ故、溶剤(S1)および(S2)を以下のそれぞれの重量割合:10:90;20:80;30:70;40:60;50:50で含む混合物が好ましくは使用されてもよい。
【0026】
この第1実施形態の第1の可能な変形によれば、本発明に従って使用される溶剤の混合物は、有利には上述の割合での、溶媒(S1)および(S2)のみからなる。
【0027】
例として、本発明による溶剤の有利な混合物は、40:60~60:40の重量割合での、特に重量割合50:50での溶剤(S1)および(S2)からなる。
【0028】
本発明による溶剤の有利な混合物の別の例は、20:80~40:60の重量割合での、特に重量割合30:70での溶剤(S1)および(S2)からなる。
【0029】
本発明による溶剤の有利な混合物のその上別の例は、5:85~20:80の重量割合での、特に重量割合10:90での溶剤(S1)および(S2)からなる。
【0030】
第1実施形態の第2の可能な変形によれば、本発明に従って使用される溶剤の混合物は、溶剤(S1)および(S2)に加えて1つ以上の他の溶剤、特に溶剤(S3)を含むことができる。
【0031】
特定の一変形によれば、本発明による溶剤の混合物は、溶剤(S1)、(S2)および(S3)を含む。本発明による溶剤の混合物は典型的には、溶剤(S1)、(S2)および(S3)のみからなってもよい。
【0032】
本発明による溶剤の混合物が溶剤(S1)、(S2)および(S3)を含む場合、溶剤(S3)の重量対他の溶剤の重量の合計のS3/(S1+S2)重量比は好ましくは、50%未満、通常25%未満、または実に15%未満である。溶剤S3の存在は一般に、溶剤の引火点の低下を誘導し、高い引火点を得ることを追求する場合、その含有量を下げることがそれ故有利であり得る。
【0033】
通常、溶剤S1およびS2が一緒に存在するかどうかに関わりなく、本発明による混合物中で、S3/(S1+S2)重量比が10%未満、例えば2%~7%、典型的には約5%であることが好ましい。
【0034】
例として、本発明による溶剤の有利な混合物は、重量割合35:60:5での溶剤(S1)、(S2)および(S3)からなる。
【0035】
本発明による溶剤の有利な混合物の別の典型的な例は、重量割合30:65:5での溶剤(S1)および(S2)からなる。
【0036】
本発明による溶剤の有利な混合物の別の典型的な例は、重量割合25:70:5での溶剤(S1)および(S2)からなる。
【0037】
本発明による溶剤の有利な混合物のその上別の例は、重量割合20:75:5での溶剤(S1)および(S2)からなる。
【0038】
本発明による溶剤の有利な混合物のその上別の例は、重量割合15:80:5での溶剤(S1)および(S2)からなる。
【0039】
本発明による溶剤の有利な混合物のその上別の例は、重量割合10:85:5での溶剤(S1)および(S2)からなる。
【0040】
本発明による溶剤の有利な混合物のその上別の例は、重量割合5:90:5での溶剤(S1)および(S2)からなる。
【0041】
本発明の第2の可能な実施形態によれば、使用される溶剤の混合物は、溶剤(S1)および溶剤(S3)を含む(または実にそれらからなる)。
【0042】
この実施形態において、溶剤(S3)の重量に対する溶剤(S1)の重量のS1/S3重量比は、好ましくは0.1~100であり、それは典型的には1~20である。例えば、溶剤(S1)および(S3)を以下のそれぞれの重量割合:50:50;60:40;70:30;75:25;80:20;85:15;90:10;または95:5で含む混合物が、この実施形態に従って、使用されてもよい。高い引火点を得ることが探求される場合、溶媒(S3)の量を制限することが一般に適切である。これは、その含有量が高ければ高いほど、混合物の引火点がより低下する傾向があるからである。この趣旨で、溶剤(S1)および(S3)を、有利には70:30~95:5の重量割合で含む混合物が使用されてもよい。
【0043】
この第1実施形態の1つの可能な変形によれば、本発明に従って使用される溶剤の混合物は、有利には上述の割合で、溶剤(S1)および(S3)のみからなる。例として、本発明による溶剤の有利な混合物は、例えば、80:20~95:5の重量割合での、特に85:15~95:5の重量割合での溶剤(S1)および(S3)からなる。
【0044】
本発明の第3の可能な実施形態によれば、使用される溶剤の混合物は、溶剤(S2)および溶剤(S3)を含む(または実にそれらからなる)。
【0045】
この実施形態において、溶剤(S3)の重量に対する溶剤(S2)の重量のS2/S3重量比は好ましくは、0.1~100、典型的には1~20である。例えば、溶剤(S1)および(S2)を以下のそれぞれの重量割合:50:50;60:40;70:30;75:25;80:20;85:15;90:10;または95:5で含む混合物が、この実施形態に従って、使用されてもよい。
【0046】
(S2)/(S3)比は好ましくは、DMSOの存在に関連した臭いを下げることが望まれる場合、できるだけ低い。特にこういう訳で、溶剤(S1)および(S2)を以下のそれぞれの重量割合:30:70;40:60;50:50;60:40;または70:30で含む混合物が使用されてもよい。
【0047】
しかし、引火点の観点から、(S2)/(S3)比がより高い混合物が多くの場合より有利であることが判明している。さらに、特にこれらの理由で、溶剤(S2)および(S3)を以下のそれぞれの重量割合:75:25;80:20;85:15;90:10;または95:5で含む混合物がそれ故好ましくは使用されてもよい。
【0048】
この第1実施形態の1つの可能な変形によれば、本発明に従って使用される溶剤の混合物は、有利には上述の割合で、溶剤(S2)および(S3)のみからなる。
【0049】
例として、本発明による溶剤の有利な混合物は、80:20~95:5の重量割合での、特に85:15~95:5の重量割合での溶剤(S2)および(S3)からなる。
【0050】
本発明の様々な特徴および優先的な実施形態は、以下に詳細に記載される。
【0051】
溶剤(S1)
本発明との関連で、特に上述の第1および第2実施形態にとって有用である(S1)型の溶剤は好ましくは、上に定義されたような式(I)(式中、A、R、RおよびRは、上述の意味を有する)の化合物の混合物を含む。したがって、それは有利には、そのような混合物を含む、Solvay社から入手可能な市販溶剤Rhodiasolv(登録商標)Polarcleanであってもよい。
【0052】
本発明に従って有用である式(I)の組成において、同一であっても異なってもよい、R、RおよびR基は特に、典型的にはC~C12基、またはフェニル基である、アルキル、アリール、アルカリールおよびアリールアルキル基から選択される基であり得る。RおよびR基は、特にヒドロキシル基で、任意選択的に置換されていることができる。
【0053】
基は特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、イソペンチル、イソアミル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、2-エチルブチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシルおよびトリデシル基から選択することができる。
【0054】
同一であっても異なってもよい、RおよびR基は特に、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル)、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、シクロヘキシルおよびヒドロキシエチル基から選択することができる。RおよびR基はまた、それらが、窒素原子と一緒に、モルホリン、ピペラジンまたはピペリジン基を形成するようなものであってもよい。
【0055】
特定の実施形態によれば、R=R=メチル、またはR=R=エチル、またはR=R=ヒドロキシエチルである。
【0056】
特定の一実施形態によれば、Aが、式-CH-CH-のおよび/または式-CH-CH-CH-CH-のおよび/または線状である、式-(CH-の基を含む場合、それは、基Aの混合物である。特定の一実施形態によれば、Aが線状である場合、それは、基Aの混合物、例えば-CH-CH-(エチレン);-CH-CH-CH-(n-プロピレン);および-CH-CH-CH-CH-(n-ブチレン)基の2つまたは3つの混合物である。
【0057】
特定の一実施形態によれば、基Aは、次式:-CH-CH-(エチレン);-CH-CH-CH-(n-プロピレン);-CH-CH-CH-CH-(n-ブチレン)、およびそれらの混合物を有する基から選択される二価の線状アルキル基である。
【0058】
この第1実施形態での1つの特定の変形において、本発明に従って有用である化合物(I)は、以下の化合物(ここで、Meはメチル基を表す):
- MeOOC-CH-CH-CONMe
- MeOOC-CH-CH-CH-CONMe
- MeOOC-CH-CH-CH-CH-CONMeとのおよび/またはMeOOC-CH-CH-CONMeとの混合物としての、MeOOC-CH-CH-CH-CONMe
から選択される。
【0059】
本発明の第2の特定の実施形態によれば、基Aは、下式(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IIIa)および(IIIb)の1つ、または式(IIa)、(IIb)および(IIc)の基からもしくは式(IIIa)および(IIIb)の基から選択される少なくとも2つの基の混合物、または1つが式(IIa)、(IIb)および(IIc)の基から選択され、他が式(IIIa)および(IIIb)の基から選択される、少なくとも2つの基の混合物を有する二価の分岐アルキレン基:
-(CHR-(CHR-(CHR-CH-CH- (IIa)
-CH-CH-(CHR-(CHR-(CHR- (IIb)
-(CHR-CH-(CHR-CH-(CHR- (IIc)
-(CHR-(CHR-(CHR-CH- (IIIa)
-CH-(CHR-(CHR-(CHR- (IIIb)
(式中:
- xは、0よりも大きい整数であり、
- yは、0以上の平均整数であり、
- zは、0以上の平均整数であり、
- 出現ごとに同一であっても異なってもよい、Rは、C~C、好ましくはC~C、アルキル基であり、
- 出現ごとに同一であっても異なってもよい、Rは、水素原子またはC~C、好ましくはC~C、アルキル基である)
である。
【0060】
この第2の特定の実施形態において、基Aは好ましくは、
y=z=0
であるような基である。
【0061】
好ましくは、式(IIa)においておよび/または式(IIb)において:
- x=1;y=z=0;R=メチルである。
【0062】
好ましくは、式(IIa)においておよび/または式(IIb)において:
- x=1;y=z=0;R=エチルである。
【0063】
第2の特定の実施形態の1つの特定の変形において、本発明に従って有用である式(I)の化合物は、以下の化合物:
- MeOOC-AMG-CONMe
- MeOOC-AES-CONMe
- PeOOC-AMG-CONMe
- PeOOC-AES-CONMe
- CycloOOC-AMG-CONMe
- CycloOOC-AES-CONMe
- EhOOC-AMG-CONMe
- EhOOC-AES-CONMe
- PeOOC-AMG-CONEt
- PeOOC-AES-CONEt
- CycloOOC-AMG-CONEt
- CycloOC-AES-CONEt
- BuOOC-AMG-CONEt
- BuOOC-AES-CONEt
- BuOOC-AMG-CONMe
- BuOOC-AES-CONMe
- EtBuOOC-AMG-CONMe
- EtBuOOC-AES-CONMe
- nHE-OOC-AMG-CONMe
- nHE-OOC-AES-CONMe
(式中:
- Meはメチル基を表し
- AMGは、式-CH(CH)-CH-CH-のMG基;もしくは式-CH-CH-CH(CH)-のMG基;または上述のMG基とMG基との混合物を表し
- AESは、式-CH(C)-CH-のES基;もしくは式-CH-CH(C)-のES基;またはES基とES基との混合物を表し
- Peは、ペンチル基、好ましくはイソペンチル基、またはイソアミル基を表し
- Cycloはシクロヘキシル基を表し
- Ehは2-エチルヘキシル基を表し
- Buはブチル基、好ましくはn-ブチル基またはtert-ブチル基を表し
- Etはエチル基を表し、EtBuはエチルブチル基を表し
- nHEはn-ヘキシル基を表す)
およびそれらの混合物から選択される。
【0064】
有利な一実施形態によれば、本発明に従って使用される式(I)の化合物は、20℃以下、好ましくは5℃以下、好ましくは0℃以下の融点を有する。
【0065】
本発明に従って有用である式(I)の化合物は、本質的に公知の任意の方法によって製造することができる。特に、下式(I’)に相当する酸無水物を、式R-OHのアルコールおよび/または式HNRのアミンと反応させる工程を実施することが可能である。
【0066】
酸無水物は、式HOOC-A-COOHの二酸を、好ましくは二酸を無水酢酸と反応させることによって環化する先行工程a)中に製造されてもよい。特に、過剰の無水酢酸中で還流を実施することが可能である。式(I’)の生成物の縮合は、そのとき実施することができる。
【0067】
以下の反応シーケンス1)または2)の1つを特に実施することができる:
シーケンス1):
工程1b):式(I’)酸無水物が、式(I’’)R-OOC-A-COOHのエステル-酸化合物を得るために、式R-OHのアルコールと反応させられ、
工程1c):式(I’’)の化合物が、式HNRのアミンを用いて式(I)の化合物へ転化され、
シーケンス2):
工程2b):式(I’)の酸無水物が、式(II’’)
HOOC-A-CONR(II’)
のアミド-酸化合物を得るために、式HNRのアミンと反応させられ、
工程2c):式(II’’)の化合物が、式R-OHのアルコールを用いて式(I)の化合物へ転化される。
【0068】
工程1b)は好ましくは、酸無水物に対して、少なくとも1モル当量のアルコールを用いて実施される。大過剰、例えば2~20当量、特に5~15当量のアルコールを使用することができる。アルコールは特に、反応溶媒として使用することができる。
【0069】
特定の一実施形態によれば、工程1c)は、(同時または順次、好ましくは順次であってもよい)以下の工程を含む:
1c1) 式(I’’)の化合物が、好ましくは塩化チオニルとの反応によって、下式(I’’’)のアシルクロリドに転化され、
-OOC-A-COCl(I’’’)
1c2) 式(I’’’)の化合物が、式(I)の化合物を得るために式HNRのアミンと反応させられる。
【0070】
工程1c2)には塩酸の形成が伴う。塩基、例えばトリエタノールアミンまたはトリエチルアミン(TEA)を、それを捕捉するために使用することできる。この工程は、少なくとも0.8モル当量のアミンを使って、好ましくは少なくとも1当量を使って実施することができる。1.05~1.4モル当量の過剰を特に使用することができる。
【0071】
本発明の化合物を製造するために有用である別の方法によれば、式ROOC-A-COORのジエステルを式HNRのアミンと反応させる工程、次に任意選択的に式R1’-OH(式中、R1’は、上述のR基、しかしジエステルのR基とは異なる基から選択される基である)のアルコールとの反応の工程が実施される。この方法は、ジエステルが大量に製造されており、そして容易に入手可能であるので、特に有利であり、商業的である。このようにして、製造プロセスを最適化することが可能である。以下の反応シーケンス3)を例えば実施することができる:
シーケンス3)
工程3a):式ROOC-A-COORの、好ましくは式MeOOC-AMG-COOMeまたはMeOOC-AES-COOMeのジエステルが、式:
OOC-A-CONR
(好ましくはROOC-AMG-CONRまたはROOC-AES-CONR、好ましくはMeOOC-AMG-CONRまたはMeOOC-AES-CONR)のエステルアミドを含む生成物を得るために式HNRのアミンと反応させられ、
工程3b):任意選択的に、反応が、式
1’OOC-A-CONR
(好ましくはR1’OOC-AMG-CONRまたはR1’OOC-AES-CONR)のエステルアミドを含む生成物を得るために式R1’-OHのアルコールと実施され、
ここで、R1’は、上述のR基から選択されるが、ジエステルのR基とは異なる基である。
【0072】
出発ジエステルが化合物の所望のR基を示す場合、工程3b)は一般に不必要である。もしそうでないなら、この工程は典型的には実施されるであろう。好ましくは、所望のR基を示すジエステルが出発点として使用される。
【0073】
工程3a)中に、ジエステルの1モル当たり0.7~1.5、例えば0.8~1.2モル、好ましくは0.9~1.1モル、好ましくはおおよそ1モルのアミンが好ましくは使用される。ジエステルの1モル当たり少なくとも1.05モルのアミン、例えば、ジエステルの1モル当たり1.05~1.1モルのアミンという過剰などの、わずかな過剰で作業することが有利である。
【0074】
工程3a)は、溶液で、例えば水溶液で、またはトルエンもしくはアルコールなどの溶媒中の溶液で実施することができる。水のいかなる存在も回避しながら、非水溶液で作業することが好ましい。この工程の間ずっと、形成されるメタノールを、反応を促進するために徐々に除去することができる。この除去には、例えば共沸混合物での、溶媒の除去が伴う。メタノールの分離後に、除去された溶媒は、プロセスへ再導入することができる。工程3a)は好ましくは、触媒、特に塩基性型の触媒の存在下で実施される。MeONaなどのメトキシド、KCOもしくはNaCOなどの炭酸塩、またはチタネートが例えば使用されてもよい。
【0075】
工程3b)はエステル交換工程である。それは特に、酸または塩基によって、例えばKCO、またはNaCOによって触媒作用を及ぼすことができる。
【0076】
上に述べられたプロセスおよびシーケンスすべてにおいて、任意選択の中間体分離および/または精製工程を、望ましくない副生成物を除去するために実施することができる。副生成物は任意選択的に、他の製品を製造するために使用することができるか、またはプロセスへ再導入するために変換することができる。
【0077】
この反応に、濾過および/または例えば蒸留による精製の工程が続くことができる。
【0078】
適切な場合混合物の形態での、二酸は、適切な場合混合物の形態での、ジニトリル化合物の混合物から特に得ることができる。ジニトリルは特に、ブタジエンの二重のヒドロシアン化によるアジポニトリルの製造方法において製造され、回収されるジニトリルであってもよい。この場合には、それらはジニトリルの混合物であり得る。世界中で消費されるアジポニトリルの大部分を製造するために工業界で大規模に用いられるこの方法は、多数の特許および書物に記載されている。
【0079】
ブタジエンヒドロシアノ化反応は主として、線状ジニトリルの形成をもたらすが、その主な2つがメチルグルタロニトリルおよびエチルスクシノニトリルである、分岐ジニトリルの形成をももたらす。
【0080】
アジポニトリル分離および精製工程において、分岐ジニトリル化合物は、蒸留によって分離され、例えば、蒸留塔の塔頂留分として回収される。
【0081】
有用である二酸は、酸塩を得るための、ジニトリル化合物と無機塩基との間の反応、引き続く酸でのこれらの塩の中和によって得ることができる。有用である二酸はまた、ジニトリル化合物の酸加水分解によっても得ることができる。
【0082】
シーケンス3を実施するために有用である式ROOC-A-COORのジエステルは、特に、参照DBEでInvista社から、または名称Rhodiasolv(登録商標)RPDEでSolvay社から、商業的に入手可能である。
【0083】
二酸および/またはジエステルの製造方法は特に、公文書国際公開第2007/101929号パンフレット、仏国特許第2902095号明細書、国際公開第2008/009792号パンフレットおよび国際公開第2008/062058号パンフレットに記載されている。
【0084】
溶剤(S2)および(S3)
理論的には、本発明に従って使用されるDMSOのおよびシクロペンタノンの正確な性質に関して何の制限もない。
【0085】
それにもかかわらず、溶剤(S2)として、あまり強くない臭いを有する、精製形態でのDMSOを使用することが有利であり得る。米国特許第8076519号明細書に記載されている方法に従って得られるDMSOを例えば使用することができる。
【0086】
本発明の実施の例は、例示の目的で以下に示される。
【実施例
【0087】
下記:
- 50重量%のRhodiasolv Polarclean(登録商標)
(タイプ(S1)の溶剤-Solvay社から入手可能であるような市販製品)
および
- 50重量%のDMSO Evol(登録商標)
(タイプ(S2)の溶剤-Arkema社から入手可能であるような市販製品)
を含む本発明による混合物を試験した。
【0088】
この混合物は、その表面の一部のみの選択的照射後のフォトレジストのフィルムを選択的に剥離し、フィルムの不溶性部分のみを表面上に残すのに有効であることが判明している。