(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】中性種に対する反応性イオンの比を増大させる方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/505 20060101AFI20220228BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20220228BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20220228BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220228BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20220228BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20220228BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20220228BHJP
H01J 27/16 20060101ALI20220228BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20220228BHJP
【FI】
C23C16/505
C23C16/455
C23C16/52
H01L21/31 C
H01L21/318 B
H01J37/317 C
H01J37/08
H01J27/16
H05H1/46 A
(21)【出願番号】P 2018531239
(86)(22)【出願日】2016-11-28
(86)【国際出願番号】 US2016063840
(87)【国際公開番号】W WO2017112352
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-11-26
(32)【優先日】2015-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500239188
【氏名又は名称】ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】ズン リアン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ホータラ
(72)【発明者】
【氏名】シュロン リアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ オルソン
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0038393(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0234554(US,A1)
【文献】特表2014-515061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 -16/56
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/318
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
H01J 37/317
H01J 37/08
H01J 27/16
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性種に対する反応性イオンの比を増大させる方法であって、該方法が、
第1のガスを供給する第1のガス入口を有するプラズマ源室と、このプラズマ源室に結合された堆積室であって、この堆積室内に配置された基板に近接する領域にポイントオブユース(POU)ガスを供給する第2のガス入口及び第3のガス入口を有する当該堆積室とを具える処理装置を設けるステップであって、
前記プラズマ源室は前記堆積室内の前記基板に対向する位置に設けられ、前記POUガスは前記第1のガスと異なり、前記POUガスは、前記第2のガス入口から及び前記第3のガス入口から、
前記プラズマ源室を基準として、前記第1のガス入口の反対側に供給され、前記POUガスは、前記第2のガス入口から及び前記第3のガス入口から、前記基板に対して直交する同じ方向に、供給される、ステップと、
前記基板に供給するためのイオンビームを発生させるステップと、
前記堆積室内で前記基板に近接する領域における圧力を調整して、前記イオンビームを前記基板に供給する際に前記基板に衝突させるために存在する反応性イオンの量を増大させるようにするステップであって、前記圧力は、前記堆積室と流体連結する堆積室ポンプ及び前記プラズマ源室と流体連結するプラズマ源室ポンプの各々により、調整することができる、ステップと
を具え
ている方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、この方法が更に、前記堆積室と前記プラズマ源室との間の圧力勾配を高めるステップを具えている方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、この方法が更に、前記堆積室内で前記基板に近接する前記領域における前記圧力を、前記第1のガス入口のガス流量と、前記第2のガス入口のガス流量と、前記第3のガス入口のガス流量と、前記基板及び前記プラズマ源室間の距離とのうちの少なくとも1つを調整することにより増大させるステップを具えている方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、この方法が更に、前記堆積室内で前記基板に近接する前記領域における前記圧力を、前記基板及び前記プラズマ源室間の距離を減少させることにより増大させるステップを具えている方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、この方法が更に、制御装置を用いて、前記第1のガス入口のガス流量と、前記第2のガス入口のガス流量と、前記第3のガス入口のガス流量とを独立して制御するステップを具えている方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法において、この方法が更に、前記第2のガス入口及び前記第3のガス入口を介して前記堆積室に反応ガスを供給するステップを具えている方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、この方法が更に、前記堆積室内で前記基板に近接する前記領域における前記圧力を、前記堆積室ポンプのポンプ速度又は前記プラズマ源室ポンプのポンプ速度を調整することにより増大させるステップを具えている方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、この方法が更に、前記第1のガス入口を介して、前記プラズマ源室に不活性ガスを導入するステップを具えている方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、この方法が更に、前記堆積室内で前記基板に近接する前記領域における前記圧力を増大させることにより前記イオンビームの中性種を減少させるステップを具えている方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、この方法が更に、前記中性種に対する反応性イオンの量の比を増大させるステップを具えている方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、この方法が更に、前記イオンビームを用いて前記基板上にフィルム層を形成するステップを具えている方法。
【請求項12】
中性種に対する反応性イオンの比を増大させる方法であって、該方法が、
第1のガスを供給する第1のガス入口を有するプラズマ源室と、このプラズマ源室に結合された堆積室であって、この堆積室内に配置された基板に近接する領域にポイントオブユース(POU)ガスを供給する第2のガス入口及び第3のガス入口を有する当該堆積室とを具える処理装置を設けるステップであって、
前記プラズマ源室は前記堆積室内の前記基板に対向する位置に設けられ、前記POUガスは前記第1のガスと異なり、前記POUガスは、前記第2のガス入口から及び前記第3のガス入口から、
前記プラズマ源室を基準として、前記第1のガス入口の反対側に供給され、前記POUガスは、前記第2のガス入口から及び前記第3のガス入口から、前記基板に対して直交する同じ方向に、供給される、ステップと、
前記堆積室内で前記基板に近接する領域における圧力を増大させて、イオンビームを前記基板に供給する際に前記基板に衝突させるために存在する反応性イオンの量を増大させ、この場合、前記圧力は、前記堆積室と流体連結する堆積室ポンプのポンプ速度と、前記プラズマ源室と流体連結するプラズマ源室ポンプのポンプ速度と、前記基板及び前記プラズマ源室間の距離との各々により増大することができるステップと、
前記基板に供給するための前記イオンビームを発生させるステップと
を具えている方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、この方法が更に、前記堆積室と前記プラズマ源室との間の圧力勾配を増大させることにより、前記イオンビームを前記基板に供給する際に存在する中性種の量を減少させるステップを具えている方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、この方法が更に、前記基板と前記プラズマ源室との間の前記距離を減少させることにより、前記堆積室内で前記基板に近接する前記領域における前記圧力を増大させるステップを具えている方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法において、この方法が更に、前記プラズマ源室の第1のガス入口のガス流量又は前記堆積室の少なくとも1つのガス入口のガス流量を調整することにより、前記堆積室内で前記基板に近接する前記領域における前記圧力を増大させるステップを具えている方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板堆積に関するものであり、特にプラズマ源から放出されるイオン/ニュートラル(中性)比を制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの寸法が小さくなるにつれ、基板をパターン化するのに使用されるフォトレジスト(レジスト)の特徴部(フィーチャ)の寸法及び形状をより一層正確に規定及び制御する必要性が生じる。共形(コンフォーマル)で均一な誘電体フィルムには、半導体製造において多くの用途がある。サブミクロン(1ミクロン未満)の集積回路(IC)を製造する場合に、幾つかの誘電体フィルムの層が堆積される。例えば、4つのこのような層は、シャロ―トレンチアイソレーション(STI)と、プリメタル誘電体(PMD)と、インターメタル誘電体(IMD)と、インターレイヤー誘電体(ILD)とである。これらの4つの層の全ては、様々な寸法の特徴部を満足させる二酸化シリコンのフィルムを必要とするとともに、ウエハ全体に亘って均一な膜厚を有する。
【0003】
自己整合ドーピングのような用途には、ICトレンチ(溝)の上部をハードマスクで覆って、フィンの底部だけがドーパント源に曝されるようにすることを含めることができる。他の用途には、ボイド/シームのないトレンチ分離を達成するために、ボトムアップ式のフィルム堆積を必要とするギャップの充填を含めることができる。
【0004】
化学蒸着(CVD)は二酸化シリコンフィルムを堆積する1つの方法である。しかし、設計基準が小型化するにつれ、特徴部のアスペクト比(深さ対幅)が増大し、従来のCVD技術によっては、これらの高アスペクト比の特徴部においてボイドの無い空隙充填をもはや達成できなくなる。CVDに代わるものとしては、原子層堆積(ALD)がある。ALD法は、反応性ガスの自己制限吸着を含んでおり、高アスペクト比の特徴部内に薄肉で共形な誘電体フィルムを提供することができる。ALDに基づく誘電体堆積技術には、金属含有前駆体を基板表面上に吸着させ、次いで第2の処置でシリコン酸化物の前駆体ガスを導入する処置を含ませることができる。
【0005】
しかし、現在の薄肉フィルム(薄膜)堆積法では、堆積を行う個所を適切に制御することができない。LPCVD(低圧CVD)及びALDのような処理の場合、フィルムの堆積は共形である。LPCVDは表面上の熱反応に依存しており、ALDは逐次の化学的暴露(chemical exposure )を介する層処理である。プラズマ強化化学蒸着(PECVD)処理の場合、この蒸着はイオン誘起堆積による“ブレッドローフ(bread-loaf)”状となるおそれがある。
【0006】
ある手法では、ALDは、基板表面上への前駆体気体の交互のパルス化と、その後のこの前駆体の表面反応とに依存する。ALDはプラズマ環境内でも達成しうる(PEALD)。その理由は、表面が反応処理中にプラズマにより発生される活性種に曝される為である。しかし、代表的なALD化学反応は、堆積の共形作用を与える地域選択性を有さない自己制限的なものである。
【0007】
更に、プラズマイオンはフィルムの改質に影響を与えるが、表面反応に対する制御は最小となる。例えば、PECVDの場合、フィルムの形成は表面上のラジカル反応によるものであり、方向性のあるイオンビームの堆積を達成するために反応位置を制御することは困難である。ある従来技術による手法では、特定の位置での堆積レートを高めるために方向性のあるイオン衝撃を利用する可能性が存在する。しかし、流量に応じて発生されるイオン/ニュートラル比は少ない為に効果は最小となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したことを考慮するに、堆積又は他の種類の化学反応に対するイオン衝撃を最大にするためにプラズマ源から生じる中性種(例えば、中性原子及び中性分子の双方又は何れか一方)の量を積極的に制御する技術が必要となる。特に、本発明の代表的な手法は、第1のガス入口を有するプラズマ源室と、このプラズマ源室に結合された堆積室であって、この堆積室内に配置された基板に近接する領域にポイントオブユース(POU)ガスを供給する第2のガス入口を有する当該堆積室とを有する処理装置を設けるステップを具える。これらの代表的な手法は更に、基板に供給するためのイオンビームを発生させるステップと、堆積室内で基板に近接する領域における圧力を調整して、イオンビームを基板に供給する際に基板に衝突させるために存在する反応性イオンの量を増大させるようにするステップとを具える。この場合、方向性のあるイオンビームの堆積を行う際に、有利なことに、基板に近接する圧力を高くすることにより基板に供給されるニュートラルの総量を減少させて、イオン注入によるイオンエネルギー衝突効果を最大にする。
【0009】
本発明の代表的な方法は、第1のガス入口を有するプラズマ源室と、このプラズマ源室に結合された堆積室であって、この堆積室内に配置された基板に近接する領域にポイントオブユース(POU)ガスを供給するための第2のガス入口を有する当該堆積室とを含む処理装置を設けるステップを具える。この方法は更に、基板に供給するためのイオンビームを発生させるステップと、堆積室内で基板に近接する領域における圧力を調整して、イオンビームを基板に供給する際に基板に衝突させるために存在する反応性イオンの量を増大させるようにするステップとを具える。
【0010】
中性種に対する反応性イオンの比を増大させる本発明の代表的な方法は、堆積室内で基板に近接する領域における圧力を増大させて、イオンビームを基板に供給する際に基板に衝突させるために存在する反応性イオンの量を増大させ、この場合、圧力は、プラズマ源室の第1のガス入口のガス流量と、堆積室の少なくとも1つのガス入口のガス流量と、基板及びプラズマ源室間の距離とのうちの少なくとも1つを調整することにより増大させるようにするステップとを具える。この方法は更に、基板に供給するためのイオンビームを発生させるステップを具える。
【0011】
中性種に対する反応性イオンの比を増大させる本発明の他の代表的な方法は、堆積室内で基板に近接する領域における圧力を増大させて、イオンビームを基板に供給する際に基板に衝突させるために存在する反応性イオンの量を増大させ、この場合、圧力は、プラズマ源室の第1のガス入口のガス流量と、堆積室の少なくとも1つのガス入口のガス流量と、基板及びプラズマ源室間の距離と、堆積室ポンプのポンプ速度と、プラズマ源室ポンプのポンプ速度とを最適化することにより増大させるようにするステップを具える。この方法は更に、基板に供給するためのイオンビームを発生させるステップを具え、基板に近接する領域における圧力の増大により、イオンビームを基板に供給する際に基板に衝突する中性種に対する反応性イオンの量の比を増大させるようにし、イオンビームは基板に対し垂直でない角度で基板に供給するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施例による処理装置を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例による
図1の処理装置内に存在する複数の反応性イオン及び中性種を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例による基板の一組の特徴部上にフィルム層を形成する手法を示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例による基板の一組の特徴部上にトレンチ材料を形成する手法を示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例による代表的な方法を示す流れ図である。
【0013】
図面は必ずしも実際の物に正比例して描いていない。図面は単に説明上のものであり、本発明の特定のパラメータを描写することを意図するものではない。又、図面は本発明の代表的な実施例を示すことを意図するものであり、従って、本発明の範囲を限定するものとしてみなされるものではない。これらの図面においては、同じ符号は同様な要素を表すものである。
【0014】
更に、ある図面におけるある要素は省略するか、又は説明を明瞭とするために実際の物に正比例して示さないようにしうる。上述した断面図は、説明を明瞭とするために“真”の断面図では見られるある種の背景ラインを省略した“スライス”又は“ニアーサイテッド(near-sighted)”断面図の形態とすることができる。更に、明瞭化のために、ある図においてある参照符号を省略しうる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例を示す添付図面を参照して本発明による方法を以下に詳細に説明する。これらの本発明の方法は多くの異なる形態で実施できるものであり、ここに開示した実施例に限定されるものとして解釈されるものではない。むしろ、これらの実施例は、本発明の開示が完全無欠となるように提供するものであるとともに、本発明のシステム及び方法の範囲を当業者に完全に伝達するものである。
【0016】
便宜上及び明瞭化のために、“上部”、“底部”、“上側”、“下側”、“縦方向”、“水平方向”、“横方向”及び“長手方向”のような用語は、図面中に表した半導体製造デバイスの構成要素の配置及び向きに対する上述した構成要素及びこれらの構成部品の相対的な配置及び向きを記述するためにここで用いられるものである。専門用語には、具体的に述べた用語、その派生語及び同様な意味の用語が含まれるものである。
【0017】
本明細書で用いられるように、単数で記載され、及び、単語「1つの」で始められる、1つの要素又は動作は、そのような除外が明記されるまでは、複数の要素又は動作を含むものとして解釈すべきである。本発明の“一実施例”に関する言及はこの実施例に限定されるものではない。ここに列挙した特徴事項は追加の実施例にも導入しうるものである。
【0018】
本発明で用いる用語“原子層堆積”すなわち“ALD”は、堆積サイクル、好ましくは複数の順次の堆積サイクルを処理室(すなわち、堆積室)内で行う蒸着を言及しうる。前駆体はこれらのサイクル中に、堆積表面(例えば、基板アセンブリ表面か、又は前のALDサイクルによる材料のような以前に堆積された下側の表面)に化学吸着され、追加の前駆体と容易に反応しない(すなわち、自己制御(self-limiting)反応する)単分子層又はサブ単分子層を形成するようにしうる。その後、化学吸着された前駆体を堆積表面上の所望の材料に変換するのに用いるようにするために、反応物(例えば、他の前駆体又は反応性ガス)を処理室内に導入することができる。代表的には、この反応物は既に化学吸着された前駆体と反応しうるものとする。更に、必要に応じ、化学蒸着された前駆体の変換後に、処理室から余分な前駆体を除去することと、処理室から余分な反応物を除去することと、処理室から反応副生成物を除去することとの何れか又はこれらの任意の組合せを達成するサイクル中にパージング処理を用いることもできる。
【0019】
1つの処理であるCVD処理と比較して、持続時間がより一層長いマルチサイクルのALD処理は自己制御の層成長により層の厚さ及び組成の制御を改善するとともに、反応成分の分離による有害な気相反応の最少化を達成する。ALDの自己制御の性質上、不規則な表面形状(トポグラフィ)やCVDで得られるよりも良好な範囲を有する表面を含む多種多様な反応表面上にフィルムを堆積する方法、或いはエバポレーション又は物理蒸着(PVD又はスパッタリング)のような他の“ラインオブサイト(line of sight )”堆積法が得られる。以下に更に詳細に説明するように、ALD処理は指向性イオンビーム活性化を用いることにより更に強化される。
【0020】
図1を参照するに、この
図1は、処理装置100の断面図と、基板104に指向されるイオンビーム102における反応性イオン対中性種の比を増大させて本発明の種々の実施例によるデバイス(例えば、半導体デバイス)を形成する手法とを示している。処理装置100は、ビームラインイオン注入装置、プラズマドーピングツール(PLAD)、プラズマシース修正器を有するプラズマツール又はイオンを生成して基板104に供給しうる他のツールとすることができる。
【0021】
処理装置100は、
図1及び2に示すように、第1のガス入口107を有するプラズマ源室106と、このプラズマ源室106に結合され、イオンビーム102(例えば、リボンビーム)を発生させる堆積室108とを具えている。堆積室108は、以下に詳細に説明するように、第1及び第2のポイントオブユース(POU)ガス116及び118を堆積室108内に配置された基板104に近接する領域130にそれぞれ供給する第2のガス入口110及び第3のガス入口112を有する。この堆積室108は更に、第4のガス入口120と、この堆積室108内のガス流及び圧力を調整する堆積室ポンプ122とを具えている。更に図示しているように、処理装置100は、RF発生器124と、プラズマ源室106からイオンビーム102を抽出するのに用いる抽出電圧を発生させるパルス直流電源126とを具えている。堆積室108にはバイアス電源128を電気的に結合させることもできる。
【0022】
処理装置100は、動作に際し、基板104に近接する領域130において堆積室130内の圧力Psubstrate
を変更して、イオンビーム102を基板104に供給する際にこの基板104に衝突させる反応性イオン132の量の増大及び中性種136(例えば、中性原子/分子)の個数の減少の双方又は何れか一方を達成するようにする。より詳細には、プラズマ源室106と堆積室108との間の圧力勾配を高めることにより、基板104に供給される中性種136の総量を減少させて、斜め方向のイオンビーム注入により与えられるイオンのエネルギーインパクト(衝撃)を最大にすることができる。
【0023】
代表的な実施例では、圧力Psubstrate
及びPsource 間のこの増大する圧力差分は、処理装置100の以下のパラメータの少なくとも1つ、すなわち第1のガス入口107のガス流量と、第2のガス入口110のガス流量と、第3のガス入口112のガス流量と、第4のガス入口120のガス流量と、基板104及びプラズマ源室106間の距離“z”との何れか1つ又は任意の組合せを最適化/調整することにより得るようにすることができる。一実施例では、1つ以上の制御弁(図示せず)を用いて処理装置100のガス入口の様々なガス流量を調整するようにすることができる。更に、基板104及びプラズマ源室106間の距離(z)を減少させて圧力Psubstrate
を更に増大させることができる。
【0024】
他の種々の実施例では、堆積室ポンプ122及びプラズマ源室ポンプ138の双方又は何れか一方のポンピング速度を調整することにより、圧力Psubstrate
を圧力Psource に対して増大させることができる。例えば、堆積室ポンプ122のポンピング速度を減少させると、堆積室108の圧力を全体的に増大させる為に圧力Psubstrate
は増大する。又、プラズマ源室ポンプ138のポンピング速度を増大させるとともに、堆積室ポンプ122のポンピング速度を減少させると、堆積室108内の圧力はプラズマ源室106内の圧力よりも高くなる。幾つかの実施例では、絞り弁(図示せず)を用いてポンピングコンダクタンスを変更させることにより圧力調整を行うようにすることもできる。
【0025】
幾つかの実施例では、処理装置100の構成要素の1つ以上を、これに結合された又はこれと通信する制御装置140により自動的に又は半自動的に動作させるようにすることができる。この制御装置140は、所望の入力/出力機能を実行するようにプログラミングされた1つの汎用コンピュータ又は複数の汎用コンピュータの回路網とするか或いはこれを含むようにすることができる。例えば、一実施例では、この制御装置140は、基板104に供給するイオンビーム102を発生させ、このイオンビーム102と一緒に基板104にPOUガス116及び/又はPOUガス118を供給し、堆積室108内で基板104に近接する領域において圧力を変更して、POUガス116及び/又はPOUガス118及びイオンビーム102を基板に供給する際に基板104に衝突する反応性イオンの量を増大するようにプログラミングしうる。又、幾つかの実施例では、制御装置140は1つ以上のセンサ(図示せず)とともに動作させて、圧力Psubstrate
及びPsource 間の圧力勾配の指示値を受信するとともに、第1のガス入口107、第2のガス入口110、第3のガス入口112、第4のガス入口120のガス流量と、堆積室ポンプ122及びプラズマ源室ポンプ138の双方又は何れか一方のポンピング速度と、基板104及びプラズマ源室106の出口間の距離“Z”との何れか又は任意の組合せのような上述したパラメータの1つ以上を変更して圧力Psubstrate
を増大させるようにする。
【0026】
制御装置140は、通信デバイス、データ記憶デバイス及びソフトウェアをも有するようにしうる。ユーザインターフェースシステムには、タッチスクリーン、キーボード、ユーザポインティングデバイス、ディスプレイ、プリンタ、等のようなデバイスを設けて、ユーザが、命令及びデータの双方又は何れか一方を入力させることと、制御装置140を介してプラズマドーピング装置を監視することとの双方又は何れか一方を達成しうるようにすることができる。本発明の実施例はこの関係に限定されるものではない。
【0027】
本発明の代表的な実施例では、処理装置100が、Ar 又はHe のような不活性プラズマガス142を、第1のガス入口107を介してプラズマ源室106に供給してこのプラズマ源室内でプラズマ144を生成するようにする。一方、第2のガス入口110及び第3のガス入口112はそれぞれ、Si H4及びNH3のような第1のPOUガス116及び第2のPOUガス118を、基板104に近接する領域130に供給する。この実施例では、第1のPOUガス116及び第2のPOUガス118がプラズマ源室106を回避して堆積室108内に直接注入される。このように構成すると、基板104に近接する圧力Psubstrate
が増大することにより基板104に対する中性原子/分子136の照射を減少させ、その結果、主として反応性イオン132により伝達されるエネルギーとのガス反応に依存してフィルム層150を成長させる。このことにより斜め方向のイオン注入をもたらす。その理由は、処理が方向性のないニュートラル優位(neutral-dominated )堆積とは異なるイオン活性化堆積となる為である。
【0028】
他の実施例では、不活性ガスを第2のガス入口110及び第3のガス入口112の双方又は何れか一方を介して供給しうるようにするのと、反応性ガスを第1のガス入口107を介して供給しうるようにするのとを意味するガスの供給のスワッピングを行い得るようにしうる。このような場合、基板104に近接する圧力Psubstrate
が高くなると、中性表面反応によるフィルム層150の成長は制限されるとともに、主として反応性イオン132(例えば、Si H3
+、Si H+、Si H2
+、等)に依存して基板104上に注入又は堆積される。このことによっても、斜め方向のイオン注入をもたらす。その理由は、処理が方向性のないニュートラル優位堆積とは異なるイオン活性化堆積となる為である。
【0029】
一実施例では、図示するように、第1のPOUガス116及び第2のPOUガス118をイオンビーム102と一緒に基板104に供給している。他の実施例では、
第1の反応POUガス116
及び第2の反応POUガス118
並びにイオンビーム102の照射を別々に行うことができる。何れの実施においても、イオンビーム102は、例えば、
図3及び4に示すようにある角度を成して基板104に指向させてこの基板上にフィルム層150を形成するようにする。
【0030】
代表的な実施例では、
図4に示すように、イオンビーム102のイオンを基板104の一組の特徴部154(例えば、フォトレジストのパターン化特徴部、基板フィン、等)の1つ以上の側壁面152に注入してその上にフィルム層150を形成する。又、代表的な実施例では、イオンビーム102を側壁面152に対し非平行な角度で基板104に指向させるが、他の実施例では、イオンビーム102を基板104の表面156に対しほぼ垂直な角度で注入することができる。図示するように、イオンビーム102は側壁面152に対しほぼ30°の入射角で(すなわち側壁面152に対し垂直な平面に対しほぼ60°で)イオンを注入して、有機材料及び無機材料内にナノスケールのハードマスクの形成を阻止するようにする。他の実施例では、注入角を+/-15°だけ変えることができる。更に、幾つかの実施例では、イオンビーム102の注入を後のプラズマエッチング処理(図示せず)と組み合わせて作用させてラインエッジの粗さを改善するようにする。
【0031】
代表的な実施例では、フィルム層150を一組の特徴部154の上に堆積した有機材料又は無機材料とし、この堆積は堆積室108(
図1)内で行うことができるとともに、最適には主として一組の特徴部154の側壁面及び上面の双方又は何れか一方の上に行うようにしうる。特定の化学及び処理上のパラメータは、堆積が何れにしても例えばイオンビーム102を示す矢印の角度及び方向においてプラズマ内で均一に生じるように選択しうる。
【0032】
図1及び4を参照するに、他の実施例では、処理装置100を用いてトレンチ材料160(例えば、Si N)を、デバイス168の基板166内に形成したトレンチ164の側壁面162の一部のみに沿って選択的に形成するようにしうる。例えば、堆積室108のガス入口の1つ以上を介して基板166に供給される前駆体にトレンチ164を曝すことができる。この前駆体はトレンチ164の側壁面162に沿って共形的に配置されるようにしうる。一実施例では、前駆体をトレンチ164の表面に化学吸着されてSi Br
3の末端基を形成する反応性前駆体(例えば、Si Br
4)とすることができる。
【0033】
前駆体は、例えば、液体の前駆体溶液を直接気化、蒸留のような通常の気化処理を介して気化するか、又は不活性ガス(例えば、N2、He 、Ar 、等)を前駆体溶液内にバブリング処理するとともに不活性ガスと前駆体との混合体を前駆体蒸気溶液として堆積室108に供給することにより生ぜしめた気体の形態で堆積室108内に導入適用した前駆体とすることができる。不活性ガスを用いたバブリング処理により前駆体溶液中に存在する如何なる溶存酸素をも除去することもできる。
【0034】
次に、前駆体にキャッピング化合物を反応させることによりトレンチ164の一組の側壁面162に沿ってキャッピング層を形成することができる。このキャッピング化合物は、化学吸着された前駆体を堆積表面上の所望の材料に変換するのに用いるために、堆積室108内に導入した
図1の
第1の反応POUガス116
及び第2の反応POUガス118のようなリアクタント(反応物)反応ガスとすることができる。リアクタントは、代表的に、既に化学吸着している前駆体と反応しうるものである。限定されるものではないが一実施例では、キャッピング化合物はエチレンジアミンであり、NH基は前駆体の臭素と反応してHBr を生ぜしめるものであり、Si-NHCH
2CH
2NH-Siのリンケージ(linkage )を形成する。従って、表面をキャッピング層でキャッピングすることにより更なる熱ALD成長を阻止する。更に、キャッピング層は、熱ALD及び低エネルギーでラジカルベースのALDの双方又は何れか一方に対して比較的非反応性であるとともに、キャッピング化合物のキャッピング分子を分解するために高エネルギーイオンに対し反応性であるように構成されている。
【0035】
更に
図4に示してあるように、イオン注入170を実行してトレンチ材料160を形成する。このイオン注入170により、トレンチ164の底面172に対し垂直でなく且つ側壁面162と平行でない角度でイオンをデバイス168内に注入させる。例えば、側壁面162に対し垂直な平面に対し60°の角度でイオンを側壁面162内に注入することができる。他の実施例では、この注入角度を側壁面162に対し垂直な平面に対し+/-15°だけ変えることができる。幾つかの実施例では、トレンチ164の底面172と側壁面162の下側部分174とにイオンが注入されないように選択した角度で、イオンをトレンチ164の側壁面162内に注入させるようにすることができる。
【0036】
一実施例では、イオン注入170は、C‐C結合(炭素‐炭素結合)を分解して反応性部位を生成することによりキャッピング層の上側区分176のみを再活性化させるように実行する高指向性のAr イオン処理とする。その結果、表面に露出されたSi Br
4が、活性化された表面(頂部及び底部)と反応して頂部及び底部をSi-Br 基で終端処理する。これにより、トレンチ材料160の層をキャッピング層の活性化部分に沿って深さ“D”まで形成し(例えば、成長させ)、その結果
図4に示す構造が得られるようにしうる。
【0037】
図5を参照するに、この
図5には本発明による半導体デバイスをパターン化するための代表的な方法180を示している。この方法180を
図1~4に示す状態と関連して説明する。
【0038】
この方法180には、ブロック182に示すように、堆積室に結合されたプラズマ源室を有する処理装置を設けるステップを含めることができる。幾つかの実施例では、プラズマ源室は第1のガス入口を有し、堆積室は第2及び第3のガス入口を有している。又、幾つかの実施例では、第2及び第3の双方又は何れか一方のガス入口がポイントオブユース(POU)ガスを、堆積室内に配置した基板に近接する領域に供給する。
【0039】
この方法180は更に、ブロック184に示すように、基板に供給するためのイオンビームを発生させるステップを具えている。幾つかの実施例では、イオンビームはプラズマ源室内で発生させたプラズマから抽出するようにする。
【0040】
この方法180は更に、ブロック186に示すように、堆積室内で基板に近接する領域において圧力を変更するステップを具えている。幾つかの実施例では、POUガス及びイオンビームを基板に供給して基板に衝突する反応性イオンの量を増大させることにより圧力を変更するようにする。又、幾つかの実施例では、堆積室とプラズマ源室との間の圧力勾配を増大させて圧力を増大させるようにする。更に、幾つかの実施例では、堆積室内で基板に近接する領域における圧力を、第1のガス入口のガス流量と、第2のガス入口のガス流量と、第3のガス入口のガス流量と、基板及びプラズマ源室間の距離とのうちの少なくとも1つを調整することにより増大させるようにする。更に、幾つかの実施例では、堆積室内で基板に近接する領域における圧力を、基板及びプラズマ源室間の距離を減少させることにより増大させるようにする。更に、幾つかの実施例では、堆積室内で基板に近接する領域における圧力を、堆積室のポンプのポンプ速度とプラズマ源室のポンプ速度との双方又は何れか一方を調整することにより増大させるようにする。更に、幾つかの実施例では、制御装置により、第1のガス入口のガス流量と、第2のガス入口のガス流量と、第3のガス入口のガス流量と、堆積室のポンプのポンプ速度と、プラズマ源室のポンプ速度とを独立的に制御するようにしうる。
【0041】
この方法180には更に、ブロック188に示すように、堆積室内で基板に近接する領域において圧力を増大させる結果として中性種を減少させるステップを含めることができる。幾つかの実施例では、圧力を増大させる結果として中性種に対する反応性イオンの比を増大させるようにする。
【0042】
この方法180には更に、ブロック190に示すように、POUガスをイオンビームと一緒に基板に供給してフィルム層を形成するステップを含めることができる。幾つかの実施例では、イオンビームを基板に供給するステップが斜め方向のイオン注入を実行することを含むようにする。又、幾つかの実施例では、トレンチの側壁に対しほぼ平行でなく且つトレンチの底面に対し平行でない角度でイオンを基板内に注入させるようにする。
【0043】
図示の方法180を一連の動作又は事象として上述したが、本発明の開示は、特に記述しない限り図示したこれらの動作又は事象の順序により限定されるものではない。幾つかの動作は、上述したのとは異なる順序で生ぜしめるか、又は本発明の開示に応じたここでの図示及び記載の双方又は何れか一方の動作又は事象を除いた他の動作又は事象と相俟って生ぜしめるか、或いはこれらの双方を達成するようにしうる。更に、本発明の開示に応じた手段を実行するのに必ずしも図示の動作又は事象の全てを必要とするものではない。更に、本発明の方法180は、ここに図示し且つ説明した構成及び処理の双方又は何れか一方と関連させるとともに図示していない他の構造と関連させて実行することができる。
【0044】
上述したことを考慮するに、ここに開示した実施例により少なくとも以下の利点が達成される。本発明の第1の利点は、イオン/ニュートラル比を調整することによって、従って、イオン注入処理をより大きな“イオン駆動力(ion-driven)”とすることにより、表面化学反応の能動的制御を提供する能力である。本発明の第2の利点には、指向性の堆積に対し強化したプロファイル制御により薄肉フィルムを選択的に成長させる能力が含まれる。
【0045】
本明細書では、本発明の特定の実施例を記載したが、本発明はこれらに限定されるものではない。その理由は、本発明の開示は当業者が許容する範囲内で広範に及ぶものであり、これと同様に本明細書を読むことができる為である。従って、上述した記載は本発明を限定するものと解釈されるものではなく、上述した説明は単に特定の実施例の例示にすぎないものである。当業者は、本発明の請求項の範囲及び精神内での他の変形例を想定するであろう。