(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】壁構造、及び壁構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20220228BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
E04B2/56 604F
E04H9/02 321E
E04B2/56 643A
E04B2/56 611D
E04B2/56 632B
E04B2/56 632R
E04B2/56 632C
E04B2/56 601A
E04B2/56 642F
E04B2/56 605Z
E04B2/56 621N
(21)【出願番号】P 2019184651
(22)【出願日】2019-10-07
【審査請求日】2020-09-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207780
【氏名又は名称】大豊建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】特許業務法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】菊池 紀惠
(72)【発明者】
【氏名】酒匂 紘子
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-220303(JP,A)
【文献】特開平09-242222(JP,A)
【文献】実開平06-020608(JP,U)
【文献】特開2019-065685(JP,A)
【文献】特開2018-197474(JP,A)
【文献】特開2015-040402(JP,A)
【文献】特開2009-102940(JP,A)
【文献】特開2019-100057(JP,A)
【文献】特開平04-108966(JP,A)
【文献】特開2015-040401(JP,A)
【文献】特開2008-280747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56-2/70
E04H 9/00-9/16
E04B 1/00-1/36
E04B 1/38-1/61
E04G 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の
RC造、又はSRC造の架構と、
前記架構内に配置される木質パネル壁体であって、複数のパネルユニットが互いに連結されて構成される、木質パネル壁体と、を備え、
前記パネルユニットの前記架構に対向する端面には接合孔が設けられ、前記接合孔にアンカーボルトが挿入されて接着剤で固定されて、前記アンカーボルトが前記パネルユニットに固定されるとともに、
前記アンカーボルトが前記架構の型枠内に突出されてコンクリートが打設されて、前記アンカーボルトを介して前記架構と前記木質パネル壁体が接合
され、
前記パネルユニットの隣接する前記パネルユニットに対向する端面には、隣接する前記パネルユニットが並設された状態で互いに連通する連結孔が設けられ、連通する一対の前記連結孔に共通するアンカーボルトが挿入されて接着剤で固定されて、隣接する前記パネルユニットが互いに連結される、壁構造。
【請求項2】
複数の前記パネルユニットは、直交集成板又は単板積層材から構成される、
請求項1に記載された壁構造。
【請求項3】
新設の
RC造、又はSRC造の架構内における壁構造の構築方法であって、
直交集成板又は単板積層材から構成される複数のパネルユニットを準備する工程と、
複数の前記パネルユニットを前記架構を構成する梁上に建込む工程と、
複数の前記パネルユニットを互いに連結して木質パネル壁体を構築する工程と、
前記木質パネル壁体と前記架構を接合する工程と、
をこの順に備える、壁構造の構築方法。
【請求項4】
複数の前記パネルユニットを準備する工程は、前記パネルユニットの前記架構に対向する端面に接合孔を削孔する工程を有し、
前記木質パネル壁体と前記架構を接合する工程は、前記接合孔にアンカーボルトが挿入された状態で接着剤を充填する工程と、前記アンカーボルトが前記架構の型枠内に突出した状態でコンクリートを打設する工程と、有する、
請求項3に記載された壁構造の構築方法。
【請求項5】
複数の前記パネルユニットを準備する工程は、前記パネルユニットの隣接する前記パネルユニットに対向する端面に、隣接する前記パネルユニットが並設された状態で互いに連通する連結孔を削孔する工程を有し、
前記木質パネル壁体を構築する工程は、連通する一対の前記連結孔に共通するアンカーボルトを挿入する工程と、前記連結孔に接着剤を充填する工程と、を有する、
請求項3又は
請求項4に記載された壁構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交集成板(CLT)や単板積層材(LVL)を用いた耐震性に優れた壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、木造では木質の壁を耐震要素とし、鉄筋コンクリート造(RC造)では鉄筋コンクリートの壁を耐震要素として架構を形成している。さらに、RC造では、鋼製パネルによる耐震補強技術があり、鉄骨造では、減衰性能を付加した鋼製パネルの制震部材の技術がある。
【0003】
また、既設のRC造に対して、耐震改修時の補強部材として、直交集成材(CLT)や単板積層材(LVL)を採用する工法が現存している。例えば、特許文献1には、RC耐震壁を室内空間側から覆うようにして、木質板部材を架構内に配置する壁構造が開示されている。このような構成によって、室内空間側に耐震部材が露出されることをなくして美観を向上させるとともに、せん断力を木質板部材に分担させることで、耐震性を向上させることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の壁構造を含む従来の技術は、既設架構(コンクリート構造物)に対する補強部材として、RC壁に付加するようにCLTやLVLを使用している。そのため、RC壁が存在することで躯体重量が大きく、地震時の水平力が大きい、という問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、きわめて軽量で耐震性に優れた壁構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の壁構造は、構造物の架構と、前記架構内に配置される木質パネル壁体であって、複数のパネルユニットが互いに連結されて構成される、木質パネル壁体と、を備えている。
【0008】
また、本発明の壁構造の構築方法は、新設の架構内における壁構造の構築方法であって、直交集成板又は単板積層材から構成される複数のパネルユニットを準備する工程と、複数の前記パネルユニットを前記架構を構成する梁上に建込む工程と、複数の前記パネルユニットを互いに連結して木質パネル壁体を構築する工程と、前記木質パネル壁体と前記架構を接合する工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明の壁構造は、構造物の架構と、架構内に配置される木質パネル壁体であって、複数のパネルユニットが互いに連結されて構成される、木質パネル壁体と、を備えている。このような構成であれば、軽量化が図れることによって水平力も軽減されるため、耐震性に優れた壁構造となる。
【0010】
また、本発明の壁構造の構築方法は、新設の架構内における壁構造の構築方法であって、直交集成板又は単板積層材から構成される複数のパネルユニットを準備する工程と、複数のパネルユニットを架構を構成する梁上に建込む工程と、複数のパネルユニットを互いに連結して木質パネル壁体を構築する工程と、木質パネル壁体と架構を接合する工程と、を備えている。このような構成であれば、パネルユニットから構成されることで輸送や施工の際に取扱いが容易であり、軽量化が図れることによって水平力も軽減されるため、耐震性に優れた壁構造を構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】架構とパネルユニットの接合部の構成を示す断面図である。
【
図5】パネルユニット間の連結部の構成を示す断面図である。
【
図6】壁構造の構築手順を示す説明図である。(a)はパネルユニットを準備する工程であり、(b)はパネルユニットを連結する工程である。
【
図7】壁構造の構築手順を示す説明図である。(a)は接合孔に接着剤を充填する工程であり、(b)はコンクリートを打設する工程である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施例では、鉄筋コンクリート造(RC造)の架構に対して本発明の壁構造を適用する場合について説明するが、これに限定されるものではなく、S造、SRC造、PC造にも本発明の壁構造を適用することができる。
【実施例】
【0013】
(壁構造の全体構成)
まず、
図1、
図2を用いて本発明の壁構造1の全体構成を説明する。
【0014】
本発明の壁構造1は、
図1、
図2に示すように、主に、構造物の架構としての鉄筋コンクリート造(RC造)の架構2と、この架構2内に配置される木質パネル壁体3であって複数のパネルユニット4、・・・が互いに(水平方向に)連結されて構成される、木質パネル壁体3と、から構成される。そして、本実施例の壁構造1では、木質パネル壁体3は、RC造の架構2を新設で構築する際に、RC造の架構2に一体化されつつ構築される。
【0015】
鉄筋コンクリート造(RC造)の架構2は、柱21a、21bと、梁22a、22bと、他の要素(例えば基礎23a、23b)と、から構成される、いわゆるラーメン構造である。すなわち、架構2は、後述するように、鉄筋24を配筋し、鉄筋24の回りに型枠25を設置し、型枠25内にコンクリート26を打設することによって構築される。
【0016】
そして、本実施例の架構2の内部には、木質パネル壁体3が配置される。架構2の柱21a、21b及び梁22a、22bと、木質パネル壁体3の左右の端面31a、31b及び上下の端面32a、32bと、は、後述するようにアンカーボルト5を介して一体に接合されている。
【0017】
(木質パネル壁体の構成)
木質パネル壁体3は、
図1に示すように、複数のパネルユニット4、・・・が互いに(水平方向に)連結されて構成されている。木質パネル壁体3を構成するパネルユニット4は、直交集成板(CLT)又は単板積層材(LVL)から構成されることが好ましい。木質パネル壁体3は、これらに限定されるものではなく、板を積層した構成を備えるものであれば、広く本発明の木質パネル壁体3に含まれる。
【0018】
このうち、直交集成板(CLT、Cross Laminated Timber)は、ひき板(ラミナ)の繊維方向を、交互に直交するようにして積層・接着した木質構造用材料である。直交集成板は、厚みのある大きな板であり、建築の構造材の他、土木用材、家具などにも使用されている。
【0019】
また、単板積層材(LVL、Laminated Veneer Lumber)は、単板(Veneer)の繊維方向(木理)を、すべて平行となるようにして積層・接着した木質構造用材料である。単板積層材には、幅方向の反りを防止するために、直交層(クロスバンド)を数層挿入する場合がある。
【0020】
パネルユニット4は、
図3に示すように、上述した直交集成板又は単板積層材から構成される長方形の板材であり、複数のパネルユニット4を水平方向に連結することで、より大きな断面をなす木質パネル壁体3を構成する。パネルユニット4の本体部40の大きさは、架構2の床面から梁下までの高さ寸法や搬送性(幅2400mm以下)を考慮して決めることができ、例えば2850×1800×210(t)とすることができる。また、都市部での施工の場合は、タワークレーンでの施工を勘案して、1000kg未満とすることが好ましい。
【0021】
パネルユニット4の本体部40の左右の端面41a、41bには、架構2の左右の柱21a、21bと接合するための複数の接合孔43、・・・や隣接するパネルユニット4と連結するための複数の連結孔44、・・・が設けられている。接合孔43は、例えば、400mm間隔で深さ200mmで配置することができる。同様に、連結孔44は、例えば、250mm間隔で深さ200mmで配置することができる。なお、ここで説明したパネルユニット4の寸法は一例であり、どのような寸法に定めることもできる。
【0022】
また、パネルユニット4の上下の端面42a、42bには、架構2の上下の梁22a、22bと接合するための接合孔45が設けられている。接合孔45は、例えば、400mm間隔で深さ200mmで配置することができる。なお、連結孔44や接合孔43、45の間隔・深さは、必要とされる耐力に応じて決めることができる。さらに、接合孔43、45や連結孔44の末端には、接着剤排出用の排出孔(不図示)が削孔されることが好ましい。
【0023】
(架構と木質パネル壁体との接合の構成)
架構2と木質パネル壁体3の接合部は、
図4に示すように、いわゆるGIR接合を用いて、架構2と木質パネル壁体3とが接合されている。すなわち、パネルユニット4(木質パネル壁体3)の架構2に対向する端面には接合孔43、・・・、45、・・・が設けられ、接合孔43、・・・、45、・・・にアンカーボルト5が挿入された状態で接着剤(例えば、エポキシ樹脂)6が充填されて、アンカーボルト5がパネルユニット4に固定される。アンカーボルト5としては、鋼棒又は異形鉄筋を用いることができる。なお、アンカーボルト5のパネルユニット4への固定は、工場での取付けであってもよいし、現場での取付けであってもよい。
【0024】
そして、パネルユニット4に固定されたアンカーボルト5が架構2の型枠内に突出した状態でコンクリート26が打設されて、アンカーボルト5を介して架構2と木質パネル壁体3が接合されるようになっている。アンカーボルト5の架構2側への固定は、埋込みの他、鋼製プレートや鋼材などを使用することもできる。
【0025】
上述したように、接着剤6の付着力とアンカーボルト5を介して、応力伝達を行うことができる。具体的には、架構2と木質パネル壁体3の間の引張力とせん断力を伝達することができる。この他、引張力のみ、又は、せん断力のみを伝達するように構成することも可能である。また、木質パネル壁体3と架構2の摩擦による応力伝達も可能である。
【0026】
(パネルユニット間の連結の構成)
パネルユニット4どうしの連結部は、
図5に示すように、アンカーボルトを用いて、パネルユニット4どうしが連結されている。すなわち、パネルユニット4の隣接するパネルユニット4に対向する端面41a、41bには、隣接するパネルユニットが並設された状態で互いに連通する連結孔44、・・・が設けられ、連通する一対の連結孔44、・・・に共通するアンカーボルト5が挿入された状態で接着剤6が充填されて、隣接するパネルユニット4、4が水平方向に互いに連結されるようになっている。
【0027】
上述したように、接着剤6の付着力とアンカーボルト5を介して、応力伝達を行うことができる。具体的には、パネルユニット4、4の間の引張力とせん断力を伝達することができる。この他、引張力のみ、又は、せん断力のみを伝達するように構成することも可能である。
【0028】
(壁構造の構築方法)
次に、
図6(a)(b)、
図7(a)(b)を用いて、本実施例の壁構造1の構築方法の手順について説明する。以下に示すように、本実施例の壁構造1の構築方法は、木質パネル壁体3が、RC造の架構2を新設で構築する際に、RC造の架構2に一体化されつつ構築される。
【0029】
はじめに、
図6(a)に示す(1)の工程が実施される。
(1)パネルユニット4の制作
本体部40の加工とアンカーボルト5の取付け。工場において、複数のパネルユニット4、・・・を準備する工程である。さらに、準備する工程は、接合孔43、45と連結孔44を削孔する工程を含む。加えて、工場においてパネルユニット4の上下のアンカーボルト5を挿入・接着しておくことが好ましい。
【0030】
次に、
図6(b)に示す(2)~(6)の工程が実施される。
(2)基礎工事及び1階躯体工事
基礎梁(22b)・1階スラブのコンクリートを打設する。
(3)コンクリートの養生
(4)壁構造1の脇にある柱筋の配筋
(5)パネルユニット4の建込み
パネルユニット4、・・・を端部から順に建込んでいく。複数のパネルユニット4、・・・を架構2を構成する梁22b上に建込む工程である。
(6)パネルユニット4、4間の連結
連通する一対の連結孔44、44に共通するアンカーボルト5を挿入し、連結孔44に接着剤6を注入することで、アンカーボルト5を介して、複数のパネルユニット4、・・・を水平方向に互いに連結する。すなわち、木質パネル壁体3を構築する工程は、アンカーボルト5を挿入する工程と、連結孔44に接着剤6を注入する工程と、を含む。
【0031】
次に、
図7(a)に示す(7)~(9)の工程が実施される。
(7)パネルユニット4下、RC立上りコンクリート打設
(8)1階立上り(柱及び壁)配筋
(9)パネルユニット4にアンカーボルト5を固定
パネルユニット4の下方(現場においてパネルユニット4上下のアンカーボルト5を挿入・接着する場合)及び柱際の接合孔45、・・・、43、・・・に接着剤6を注入することで、アンカーボルト5をパネルユニット4に固定する。すなわち接合孔45、・・・、43・・・、にアンカーボルト5が挿入された状態で、接着剤6を充填する工程である。
【0032】
最後に、
図7(b)に示す(10)~(13)の工程が実施される。
(10)型枠(1階立上り・2階床梁)を設置
(11)連層及び隣接するスパンに配置される壁構造1の連結孔44に接着剤を注入
(12)2階床梁22aの配筋
(13)1階コンクリート打設
すなわち、アンカーボルト5が型枠内に突出した状態でコンクリートを打設する工程である。上述した工程(1)、(9)、(13)によって、木質パネル壁体3と架構2が接合される。
なお、上階がある場合は、上述した(3)~(13)の手順を当該階において実施する。
【0033】
なお、上述した工程では、工程(7)において、パネルユニット4の下に立上がりコンクリートを打設するものとしているが、これに限定されるものではなく、立上がりコンクリートは省略することもできる。この場合、例えば、アンカーボルト5を架構2(の梁)に埋設・固定した後に、パネルユニット4の孔にアンカーボルト5を挿し込み、接着・固定することができる。
【0034】
(作用・効果)
次に、本実施例の壁構造1の奏する作用・効果を列挙して説明する。
【0035】
(1)上述してきたように、本実施例の壁構造1は、構造物の架構2と、架構2内に配置される木質パネル壁体3であって、複数のパネルユニット4、・・・が互いに連結されて構成される、木質パネル壁体3と、を備えている。このような構成であれば、軽量化が図れることによって水平力も軽減されるため、耐震性に優れた壁構造となる。さらに、RC造に適用する場合は、軽量化が図れることにより、水平力も軽減され、RC架構の断面サイズを小さくすることが可能になる。加えて、長期の鉛直力と地震時の軸力変動の減少により、基礎の負担も軽減できる。
【0036】
さらに、本実施例の壁構造1は、鉛直力を負担しないので、耐火被覆が不要である。鉛直力は、架構2が負担し、木質パネル壁体3は、その剛性に応じた水平力のみを負担する。そして、水平力は、架構2と木質パネル壁体3のそれぞれが負担するので、それぞれの耐力を加算して評価することができる。
【0037】
また、RC造で、木質パネル壁体3の剛性は、木質パネル壁体3単体の剛性を初期剛性とした場合でも、RC耐震壁の剛性より低くなるので、応力集中の程度が緩和され、剛性のバランスの良い架構の形成が可能になる。S造に対しても、鋼製ブレース程度の剛性で架構計画が可能となる。
【0038】
さらに、RC造において、木質パネル壁体3は、躯体と一体でコンクリート打設されていることから、架構2による拘束効果があり、GIR接合部の降伏以降も、木質パネル壁体3に形成される圧縮ストラッドによって、フレームに生じるせん断力を伝達し、木質パネル壁体3によってせん断力を負担できる。加えて、木質パネル壁体3に圧縮ストラッドが形成され、応力伝達が行われる場合でも、周囲の躯体には著しい損傷が生じない設計としている。
【0039】
(2)また、パネルユニット4の架構2に対向する端面には接合孔43、・・・、45、・・・が設けられ、接合孔43、・・・、45、・・・にアンカーボルト5が挿入された状態で接着剤6が充填されて、アンカーボルト5がパネルユニット4に固定され、アンカーボルト5が架構2の型枠内に突出した状態でコンクリートが打設されて、アンカーボルト5を介して架構2と木質パネル壁体3が接合される。このように簡単な構成によって、架構2と木質パネル壁体3を接合して、水平力を分担させることができる。この際、GIR接合部は、木質パネル壁体3の外に出てこないので、現しの仕上げとすることも可能である。
【0040】
(3)また、パネルユニット4の隣接するパネルユニット4に対向する端面41a、41bには、隣接するパネルユニット4が並設された状態で互いに連通する連結孔44が設けられ、連通する一対の連結孔44、44に共通するアンカーボルト5が挿入された状態で接着剤6が充填されて、隣接するパネルユニット4、4が互いに連結される。このように簡単な構成によって、パネルユニット4どうしを連結して、水平力を分担させることができる。この際、アンカーボルトは、木質パネル壁体3の外に出てこないので、現しの仕上げとすることも可能である。
【0041】
(4)また、複数のパネルユニット4、・・・は、直交集成板(CLT)又は単板積層材(LVL)から構成されることが好ましい。
【0042】
(5)さらに、本実施例の壁構造の構築方法は、新設の架構内における壁構造の構築方法であって、直交集成板又は単板積層材から構成される複数のパネルユニット4、・・・を準備する工程と、複数のパネルユニット4、・・・を架構2を構成する梁22b上に建込む工程と、複数のパネルユニット4、・・・を互いに連結して木質パネル壁体3を構築する工程と、木質パネル壁体3と架構2を接合する工程と、を備えている。このような構成であれば、軽量化が図れることによって水平力も軽減されるため、耐震性に優れた壁構造となる。さらに、RC造での施工においては、木質パネル壁体3が木質材料であることから、躯体の型枠設置が容易で、一体施工が可能となる。
【0043】
(6)また、複数のパネルユニット4、・・・を準備する工程は、パネルユニット4の架構2に対向する端面41a、41b、42a、42bに接合孔43、・・・、45、・・・を削孔する工程を有し、木質パネル壁体3と架構2を接合する工程は、接合孔43、・・・、45、・・・にアンカーボルト5、・・・が挿入された状態で接着剤6を充填する工程と、アンカーボルト5、・・・が架構2の型枠内に突出した状態でコンクリートを打設する工程と、有している。このように簡単な構成によって、架構2と木質パネル壁体3を接合して、水平力を分担させることができる。この際、GIR接合部は、木質パネル壁体3の外に出てこないので、現しの仕上げとすることも可能である。
【0044】
(7)また、複数のパネルユニット4、・・・を準備する工程は、パネルユニット4の隣接するパネルユニット4に対向する端面41a、41bに、隣接するパネルユニット4が並設された状態で互いに連通する連結孔44、44を削孔する工程を有し、木質パネル壁体3を構築する工程は、連通する一対の連結孔44、44に共通するアンカーボルト5を挿入する工程と、連結孔44、44に接着剤6を充填する工程と、を有している。このように簡単な構成によって、パネルユニット4どうしを連結して、水平力を分担させることができる。この際、アンカーボルトは、木質パネル壁体3の外に出てこないので、現しの仕上げとすることも可能である。
【0045】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0046】
例えば、実施例では、架構2と木質パネル壁体3の接合が、四辺すべてを接合するものとして記載したが、これに限定されるものではなく、二辺(木質パネル壁体3と梁22a、22b)のみを接合するものであってもよい。
【0047】
また、架構2と木質パネル壁体3の接合や、パネルユニット4間の連結では、アンカーボルト5を使用しているが、アンカーボルト5は、必要とされる耐力に応じて、1列(シングル)であってもよいし、2列(ダブル)であってもよいし、さらに多数であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 :壁構造
2 :架構
21a、21b:柱
22a、22b:梁
23a、23b:基礎
24 :鉄筋
25 :型枠
26 :コンクリート
3 :木質パネル壁体
31a、31b:端面
32a、32b:端面
4 :パネルユニット
40 :本体部
41a、41b:端面
42a、42b:端面
43 :接合孔
44 :連結孔
45 :接合孔
5 :アンカーボルト
6 :接着剤