(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】複数の領域を含む光学素子、該光学素子を備えた光学系、及び該光学系を使用する方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20220228BHJP
G02B 27/48 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B27/48
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019194250
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2019-12-18
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502151820
【氏名又は名称】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Viavi Solutions Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】タッソ アール エム セールス
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ マイケル モリス
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-033203(JP,A)
【文献】特開2017-083815(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0153974(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0376220(US,A1)
【文献】特開2019-152753(JP,A)
【文献】特表2009-530604(JP,A)
【文献】特開2007-033578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0302479(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0320532(US,A1)
【文献】特開2007-108400(JP,A)
【文献】特開2005-084341(JP,A)
【文献】特表2008-546151(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1826962(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B27/09
G02B27/42-27/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子であって、
表面を有する本体
を備え、前記表面はモザイク分割で周期的に配置された複数の領域を有し、
該複数の領域の各領域が幾何学的外側境界を有し、前記複数の領域のうち2つ以上の領域が多角形形状の異なる幾何学的外側境界を有し、前記複数の領域の各領域の幾何学的外側境界が、当該領域に隣接する領域の幾何学的外側境界と当接し、且つ
前記複数の領域の各領域が微細構造のランダム空間分布を有し、前記微細構造は鞍形である光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光学素子において、各領域が2つの直交次元で繰返し順で配置され得る光学素子。
【請求項3】
請求項1に記載の光学素子において、前記複数の領域の各領域が微細構造の同一のランダム空間分布を有する光学素子。
【請求項4】
請求項1に記載の光学素子において、前記複数の領域のうち2つ以上の領域が微細構造の異なるランダム空間分布を有する光学素子。
【請求項5】
請求項1に記載の光学素子において、表面を有する前記本体は第1表面及び第2表面を含む光学素子。
【請求項6】
請求項
5に記載の光学素子において、前記第2表面は前記第1表面と反対の向きである光学素子。
【請求項7】
請求項1に記載の光学素子において、前記本体は第2表面も有し、該第2表面は第2モザイク分割で周期的に配置された複数の領域を有し、且つ該複数の領域の各領域が微細構造のランダム空間分布を有する光学素子。
【請求項8】
光学系であって、
光源と、
表面を有する本体を含む光学素子であり、前記表面はモザイク分割で周期的に配置された複数の領域を有し、該複数の領域の各領域が幾何学的外側境界を有し、前記複数の領域のうち2つ以上の領域が多角形形状の異なる幾何学的外側境界を有し、前記複数の領域の各領域の幾何学的外側境界が、当該領域に隣接する領域の幾何学的外側境界と当接し、前記複数の領域の各領域が微細構造のランダム空間分布を有し、前記微細構造は鞍形である光学素子と
を備えた光学系。
【請求項9】
請求項8に記載の光学系において、前記光源はコヒーレント光源である光学系。
【請求項10】
請求項9に記載の光学系において、前記コヒーレント光源はレーザである光学系。
【請求項11】
請求項9に記載の光学系において、前記光学素子は、微細構造のランダム空間分布に従ってターゲットパターンを投影する光学系。
【請求項12】
請求項11に記載の光学系において、前記ターゲットパターンは、指定の角度範囲にわたるランダムスポット分布である光学系。
【請求項13】
請求項11に記載の光学系において、前記ターゲットパターンは2つの垂直方向で異なる光学系。
【請求項14】
請求項8に記載の光学系において、ターゲットパターンのコントラストを向上させ且つスペックルを固定するために、前記周期的配置を規定する周期が、前記光源からの入力ビームのサイズよりも小さい光学系。
【請求項15】
光学系を使用する方法であって、
光源から光学素子に入力ビームを投影するステップであり、前記光学素子は表面を有する本体を含み、前記表面はモザイク分割で周期的に配置された複数の領域を有し、該複数の領域の各領域が幾何学的外側境界を有し、前記複数の領域のうち2つ以上の領域が多角形形状の異なる幾何学的外側境界を有し、前記複数の領域の各領域の幾何学的外側境界が、当該領域に隣接する領域の幾何学的外側境界と当接し、前記複数の領域の各領域が微細構造のランダム空間分布を有し、前記微細構造は鞍形であるステップと、
前記入力ビームをターゲットパターンに整形するステップと
を含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記微細構造のランダム空間分布からのスペックルを前記光学素子に対する前記入力ビームの移動に伴って変わらないよう固定するステップをさらに含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、2018年10月26日に出願された米国仮出願第62/751,337号の優先権を主張し、当該出願の全開示を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、表面を有する本体を備えた光学素子であって、表面はモザイク分割で周期的に配置された複数の領域を有し、複数の領域の各領域が微細構造のランダム空間分布を有する光学素子に関する。光学系が、光源及び上記光学素子を備える。上記光学素子及び光学系を作製及び使用する方法も開示される。
【背景技術】
【0003】
3D走査及びジェスチャ認識に関する用途では、光学コンポーネントを利用して、通常は約700nm~約1000nmの範囲の波長を有するレーザに関連して、プロービング中のシーンにわたって光パターンを投影する。光パターンは、プロービング技術に応じて変わり、スポット、ライン、ストライプ、市松等の周期的格子等の種々の形態をとり得る。
【0004】
光パターンの投影に用いられる現在の技術は、1つ又は複数の回折光学素子が特定の回折次数分布を発生させることに依存する。回折光学素子(DOE)は、当然ながら回折パターン等の光パターンを生成するのに適している。DOEは、干渉及び/又は回折により光パターンを生成することができる、通常は光の1波長分の薄い表面構造として表され得る。したがって、DOEから出力される光円錐は、逆比例関係にあるその最小構造により規定される。すなわち、広がり角度が大きくなるほど必要となる構造が小さくなる。しかしながら、DOEは、設計波長からのずれ又は製造誤差の影響を非常に受けやすく、その結果として主に、0次の回折が他の次数の回折よりもはるかに強くなり、これは3Dセンシング用途で許容不可能なアイセーフ問題を引き起こす。
【0005】
特許文献1は、例えばスポットパターンを発生させるDOEを記載している。ランダムなスポットパターンは、シーンの大きな部分を捕捉することができるように広い角度範囲に対応しなければならないことが多い。広角シーンを照明するために、DOEは非常に小さな構造を有するパターンを必要とする。例えば、波長850nmのレーザで60°の範囲を照射するためには、1.7μmの最小構造を有するDOEが必要となる。角度範囲が広くなるほど、必要となる構造はさらに小さくなる。最大効率のためには、DOEをグレースケールの連続位相プロファイルとして設計し製造する必要がある。しかしながら、そのような小さな構造を有するグレースケールDOEの作製は困難であり得る。その代わりに、グレースケールDOEは概して、最大でも80%の効率を有する2値位相プロファイルで作製される。残りのエネルギーは、主光パターン外の高次の回折次数に奪われる。特許文献1に開示されるような複数のDOEの使用は、0次回折に対処するのに役立つ。しかしながら、複数のDOEの使用は、悪化的な効果があり、実際の効果は約50%~60%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、表面を有する本体を備えた光学素子であって、表面はモザイク分割で周期的に配置された複数の領域を有し、複数の領域の各領域が微細構造のランダム空間分布を有する光学素子が開示される。
【0008】
別の態様では、光源と、表面を有する本体を含む光学素子であり、表面はモザイク分割で周期的に配置された複数の領域を有し、複数の領域の各領域が微細構造のランダム空間分布を有する光学素子とを備えた光学系も開示される。
【0009】
別の態様では、光学系を使用する方法であって、光源から光学素子に入力ビームを投影するステップであり、光学素子は表面を有する本体を含み、表面はモザイク分割で周期的に配置された複数の領域を有し、複数の領域の各領域が微細構造のランダム空間分布を有するステップと、入力ビームをターゲットパターンに整形するステップとを含む方法がさらに開示される。
【0010】
種々の実施形態のさらなる特徴及び利点は、以下の説明に一部記載されると共に説明から一部明らかであり、又は種々の実施形態の実施により知ることができる。種々の実施形態の目的及び他の利点は、本明細書の説明で特に指摘される要素及び組み合わせにより実現及び達成される。
【0011】
本開示のその複数の態様及び実施形態は、詳細な説明及び添付図面からより十分に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2A】本発明の一態様によるモザイク分割で周期的に配置された複数の領域の図である。
【
図2B】モザイク分割の正方形の幾何学的外側境界を有する、2つの直交次元で繰返し順で周期的に配置された4つの微細構造領域を示す。
【
図2C】市松格子状の正方形の幾何学的外側境界を有する2つの微細構造領域の図である。
【
図3】本発明の別の態様によるモザイク分割で周期的に配置された複数の領域の図である。
【
図4】本発明の別の態様によるモザイク分割で周期的に配置された複数の領域の図である。
【
図5】本発明の別の態様によるモザイク分割で周期的に配置された複数の領域の図である。
【
図6】本発明の別の態様によるモザイク分割で周期的に配置された複数の領域の図である。
【
図7】本発明の一態様による光学素子を含む光学系の図である。
【
図8】正方形、円形、六角形、及び五角形の幾何学的外側境界を有する種々の微細構造に関する輪郭プロットの図である。
【
図9】鞍形プロファイルにより規定された種々の微細構造及びそれらの組み合わせに関する輪郭プロットの図である。
【
図10】本発明の一態様による光学素子で生成されたスペックルを有するターゲットパターンを示す。
【
図11】微細構造が焦点距離により特徴付けられ且つ光学素子間の分離が焦点距離と一致する、連続した光学素子10の図である。
【
図12】微細構造が焦点距離により特徴付けられ、且つモザイク分割表面間の本体の厚さが上記焦点距離と一致する、光学素子の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び図面を通して、同様の参照符号は同様の要素を示す。
【0014】
上記の概要及び以下の詳細な説明の両方が説明的なものにすぎず、本教示の種々の実施形態の説明を提供するためのものであることを理解されたい。
【0015】
したがって、本発明の目的は、表面を有する本体を備え得る光学素子であって、表面はモザイク分割で周期的に配置された複数の領域を有し、複数の領域の各領域が微細構造のランダム空間分布を有する改良された光学素子を提供することである。光学系は、光源2及び光学素子10を備え得る。
【0016】
光学素子は、レーザ等の光源2からの入力ビーム5を受光することができる。光学素子は、入力ビーム5をランダムなスポット分布等のターゲットパターン7として投影することができる。光学素子は、高効率での入力ビーム5の投影、及び/又は0次回折光強度が高くないスペックルを有するターゲットパターン7、9の投影等、いくつかの特性を示し得る。一態様では、光学素子は、光学素子に対して光源2が移動しても変化しないスペックルを有するターゲットパターン7、9として入力ビーム5を投影することができる。
【0017】
図1は、第1表面12a及び第2表面12b等の表面12を有する本体11を含む、本発明の一態様による光学素子10を示す。
図7は、本発明の別の態様による、第1光学素子10a及び第2光学素子10bを連続で含む光学系100を示す。第1光学素子10a及び第2光学素子10bのそれぞれの説明は同様とすることができる。例えば、第1光学素子10aは、第1表面12a及び第2表面12b等の表面12を有する第1本体11aを含むことができ、第2光学素子10bは、第1表面12a及び第2表面12b等の表面12を有する第2本体11bを含むことができる。簡単のために、光学素子(10、10a、及び10b)、本体(11、11a、及び11b)、及び表面(12、12a、及び12b)に関連する本明細書の開示は、別段の指示のない限りは各コンポーネントに等しく適用可能である。
【0018】
光学素子10の本体11は、光学材料を含み得る。本体11としての使用に適した光学材料の非限定的な例として、ガラス又はプラスチック、例えば、紫外線硬化ポリマー、ポリカーボネート、アクリル、石英ガラス、シリコン、又はアモルファスシリコン等のその変種が挙げられる。他の光学材料を用いることもできる。さらに、本体11は、複数の層に単一の光学材料又は結合された複数の光学材料を含むことができ、これらの層は機械的支持用の基板と他の層とを含むことができ、他の層とは、反射防止コーティング用の層又はITO及び金属コーティング等の他の目的の他の層等である。
【0019】
光学素子10の本体11は、第1表面12a及び第2表面12b等の表面12を含み得る。第1表面12aは、第2表面12bと反対の向きであり得る。一態様では、光学素子10は、任意の数の表面12、例えば、1つの表面、2つの表面、3つの表面等を含むことができる。光学素子10の表面12の数は、光学素子10の形状に応じて変わり得る。
【0020】
本体11の第1表面12a及び/又は第2表面12b等の表面12は、モザイク分割で周期的に配置された複数の領域22を有し得る。複数の領域22の各領域20は、複数の領域22の隣接領域の外側境界と(隙間なく)当接し得る幾何学的外側境界を有し得る。
図2Aに示すように、複数の領域22は、例えば3×3配列で周期的に配置される。
図2Bに示すように、A、B、C、及びD等で示すような各領域20を、複数の領域22の2つの直交次元で繰返し順で配置することができる。
図2Cは、市松状に配置された異なるパターンで示す2つの領域を示す。
【0021】
複数の領域20の各領域22の幾何学的外側境界は、任意の多角形、例えば三角形、正方形、矩形、五角形、六角形、七角形、八角形等であり得る。一態様では、複数の領域の各領域が同じ幾何学的外側境界を有し得る。
図2Aに示すように、各領域20は正方形を有することができ、複数の領域22も同じく正方形の形状でモザイク分割の周期的な配置を形成することができる。一態様では、幾何学的外側境界は任意形状であり得る。各領域20は、鞍形微細構造等の微細構造のランダム空間分布を含み得る。
図3に示すように、各領域20は六角形を有することができ、複数の領域22は任意形状でモザイク分割の周期的な配置を形成することができる。一例では、各領域20は、鞍形微細構造のランダム空間配分布を含み得る。
【0022】
一態様では、複数の領域22のうち2つ以上の領域20がモザイク分割で異なる幾何学的外側境界を有し得る。
図4に示すように、複数の領域22のうち第1領域20aは、六角形の幾何学的外側境界を有し得る。複数の領域22のうち第2領域20bは、細長い菱形の幾何学的外側境界を有し得る。複数の領域22は、第1領域20a及び第2領域20bを含み、第1領域及び第2領域の幾何学的外側境界は異なる。
図5は、第1領域20aが五角形の幾何学的外側境界を有する複数の領域22を示す。複数の領域22のうち第2領域20bは、六角形の幾何学的外側境界を有する。
【0023】
モザイク分割は、例えば
図2A~
図3に示すように、複数の領域22の各領域20が同じ幾何学的外側境界を有するような単純なものであり得る。一態様では、モザイク分割は、例えば
図4~
図6に示すように複雑なものであってもよく、複数の領域22のうち2つ以上の領域20(20a、20b、20c、20d)が異なる幾何学的外側境界を有し得る。
図6に示すように、複数の領域22は、五角形の幾何学的外側境界を有する第1領域20aと、六角形の幾何学的外側境界を有する第2領域20bと、細長い菱形の幾何学的外側境界を有する第3領域20cと、星形等の任意形状の幾何学的外側境界を有する第4領域20dとを含む。
【0024】
任意の数の領域20を複数の領域22において用いることができる。追加として又は代替として、複数の領域22の各領域20は、微細構造のランダム空間分布が同じであっても異なっていてもよい。複数の領域22の領域20は、ターゲットパターン7、9で最良のコントラストを得るモザイク分割を形成するよう周期的配置で配置され得る。
【0025】
各領域20は、相互に異なるランダム空間分布を有し得る。明確に言うと、各領域20は、領域20内の微細構造のランダム空間分布により形成され得る。微細構造のランダム分布は、領域のサイズ、微細構造のサイズ、他の変数、及びそれらの組み合わせに基づき得る。各領域20内の微細構造のランダム空間分布は、ターゲットパターン7、9の周期的なアーチファクトを最小化することができ、且つターゲットパターン7、9のランダムスポット分布をもたらすことができる。
【0026】
図1を再度参照すると、光学素子10は、第1モザイク分割等のモザイク分割で周期的に配置された複数の領域22を有する第1表面12aを有する本体11を含み得る。本体11は、第1表面12aの第1モザイク分割と同じ又は異なる第2モザイク分割等のモザイク分割で周期的に配置された複数の領域22を有する第2表面12bを含み得る。
【0027】
図7を再度参照すると、光学系100が開示されている。光学系100は、光源2と光学素子10a、10bとを含み得る。
図7に示すように、光学素子10aは第1本体11aを含むことができ、光学素子10bは第2本体11bを含むことができる。第1本体11a及び第2本体11bのそれぞれは、
図1の光学素子10に関して上述した通りであり得る。例えば、第1本体11aは、第1モザイク分割等のモザイク分割で周期的に配置された複数の領域22を有する表面12aを有することができ、複数の領域22の各領域20が微細構造のランダム空間分布を有する。別の例として、第2本体11bは、第2モザイク分割等のモザイク分割で周期的に配置された複数の領域を有する表面12bを有することができ、複数の領域22の各領域20が微細構造のランダム空間分布を有する。このように、第1本体11aは、光源2から入力ビーム5を受光して第1モザイク分割に基づくターゲットパターン7を出力することができる。第2本体11bは、ターゲットパターン7を受光して第2モザイク分割に基づく第2ターゲットパターン9を出力することができる。
【0028】
単一の本体11に2つの表面12a、12bがある場合(
図1)、又は第1本体11aに第1表面12aがあり第2本体11bに第2表面12bがある場合(
図7)、ターゲットパターン7、9の角度範囲を広げることが可能であり得る。この場合、表面12a、12bの一方がマイクロレンズアレイの形態をとり得る。
【0029】
図2Aを再度参照すると、破線の正方形は複数の領域22の領域20を示し、各領域20が微細構造のランダム空間分布を有する。一態様では、複数の領域22の各領域20は、微細構造の同一のランダム空間分布を有する。別の態様では、複数の領域22のうち2つ以上の領域が微細構造の異なるランダム空間分布を有する。微細構造のランダム空間分布は、
図7に示すように、コヒーレント光源等の光源2からの入力ビーム5をターゲットパターン7、9に整形することができる。微細構造は、例えば米国特許第6,410,213号に記載のように、マイクロレプリケーション、熱エンボス加工、射出成形、反応性イオンエッチング、又はイオンビームミリング、又はシングルポイントレーザ描画等のさまざまな方法により形成され得る。
【0030】
微細構造は、解析的又は数値的な形態で画定することができる。例えば、微細構造は、曲率半径、コーニック定数、及び場合によっては非球面係数を有するレンズの形状をとり得る。A. Betzold、G. M. Morris、及びT. R. M. Salesによる掲載物「Efficient Structured Light Generator」(Frontiers in Optics 2016, OSA Technical Digest (Optical Society of America, 2016), paper FTu5A.4)には、曲率半径及びコーニック定数により実質的に表される円錐プロファイルに基づくマイクロレンズが開示されている。しかしながら、参照により本明細書に援用されるSalesの米国特許第7,813,054号に記載されているような鞍形のレンズ又は微細構造を、単独で又は円錐レンズと組み合わせて用いることで、不均一なスポットパターンを発生させることが可能なことによりさらなる改善が得られることが分かった。各領域20の微細構造は鞍形を含み得る。鞍形以外の微細構造を各領域20で用いてもよい。
【0031】
鞍形の微細構造は、次式として定義されるサグ関数を有し得る。
【0032】
【0033】
式中、αは実定数であり、Rx及びRyは曲率半径を示し、κx及びκyはコーニック定数であり、pは実数であるのが、最も単純な場合である。微細構造は、次式として定義することもできる。
【0034】
s(x,y)=αxy (2)
【0035】
式中、この場合もαは実定数である。それらの外観から、式(1)及び(2)で表される微細構造は鞍形レンズである。
【0036】
図8は、幾何学的外側境界が円形、正方形、六角形、及び五角形である微細構造の輪郭プロットを示す。幾何学的外側境界は、不規則境界、多角形境界、及び任意形状境界を含め、一関数及び一般的な境界関数により数学的に定義することができる。式(1)及び(2)で表されるような鞍形微細構造及び正方形境界とのその組み合わせの輪郭図を、
図9に示す。鞍形微細構造の他の関連特性は、米国特許第7,813,054号に記載されており、その開示を参照により本明細書に援用する。
【0037】
上述のように、光学系100は、ランダムなスポット分布を有するターゲットパターン7、9を発生させることができる。光学系100は、シーン走査及び深さプロファイリング用のセンサ及びコンピュータアルゴリズム等の他のコンポーネントも含み得る。
【0038】
ターゲットパターン7、9は、複数の領域の領域20のそれぞれにおける微細構造のランダム空間分布に従ったランダムなスポット分布であり得る。微細構造のランダム空間分布は、光源2からの入力ビーム5を、スペックルを有するターゲットパターン7、9に整形することができる。ランダムなスポット分布は、特定の角度範囲にわたるものとすることができ、且つ2つの垂直方向で同じであっても異なっていてもよい。0次回折光強度が高くないこのようなランダムなスポット分布と、照明運動に対して固定されたスペックルとが、3Dセンシング用途で構造化光を提供するのに役立ち得る。
【0039】
一態様では、ターゲットパターン7、9のコントラストを高め、且つターゲットパターン7、9におけるスペックルを光学素子10に対する入力ビーム5の移動に伴って変わらないよう固定するために、モザイク分割における各領域20の周期的配置を規定する1周期を、入力ビーム5のサイズよりも小さくすることができる。
【0040】
ターゲットパターン7、9は、0次回折光がランダムなスポット分布における関心の他の次数の回折光と強度の点で区別できないように生成することができる。0次回折光強度は、ランダムなスポット分布における他のいずれのスポットとも同じエネルギー量を提供し得る。このように、アイセーフに関するいかなる問題もなくすことができる。さらに、通常は単一の表面パターンを用いて、高効率を確保するターゲットパーン7、9を発生させることができる。
図7の光学系で示すような連続で用いられる複数の光学素子10a、10bを、入力ビーム5の有効範囲を既存の製造法で製造できる範囲を超えて増加させるため等、他の理由で利用することができる。このような条件では、光学素子10a、10bの一方が単純なマイクロレンズアレイであり得る。
【0041】
複数の領域22の各領域20は、回折格子方程式(垂直入射)により2つのスポット間の角度分離を決定することができる。
【0042】
【0043】
式中、θ
mは次数mの回折角であり、λは入力ビームの波長であり、Λは格子周期である。全体的なモザイク分割ジオメトリは、微細構造のランダム空間分布と直接的な相関があり得る。例えば、正方配列モザイク分割(例えば
図2A~
図2C参照)は、正方格子上に回折次数を生成する。同様に、六角格子モザイク分割(例えば
図3参照)は、六角格子上に次数を生成する。角度間隔は、異なる方向に沿って同じであっても異なっていてもよい格子周期に応じて変わる。微細構造のランダム空間分布は、モザイク分割を形成するための複数の領域22における各領域20の周期的配置に応じて複雑なランダムスポット分布を発生させることができる。モザイク分割ジオメトリは、スポットジオメトリを決定することができるが、複数の領域22の各領域20は、種々の回折次数間のパワーの分布を決定する。換言すれば、領域20のそれぞれの中の微細構造は、「オン又はオフにされる」ことによりランダムスポットパターンを発生させる回折次数を有する。
【0044】
光学素子を作製する方法は、モザイク分割を形成するよう複数の領域22の周期的配置を選択するステップを含み得る。本方法は、格子周期を形成するよう複数の領域22内の各領域を割り当てるステップも含む。本方法は、複数の領域を形成するよう各領域20内で微細構造をランダムに空間的に分布させるステップも含む。一態様では、各領域内の微細構造は、鞍形微細構造を単独で又は他の形状の微細構造と共に含み得る。
【0045】
米国特許第7,813,054号に記載のような微細構造は、単独での使用時にランダムなスペックルパターンを発生させることができる。換言すれば、微細構造の領域20は、レーザ等の光源2から入力ビーム5を受光すると、スペックルを有する低分解能のターゲットパターン7、9を発生させることができる。入力ビーム5を受光する各領域20の特定の場所に応じて、スペックルパターンは変わり得る。
【0046】
モザイク分割を形成するための複数の領域22の周期的配置により、微細構造に対して光源2が移動する場合にスペックルを有するターゲットパターン7、9の移動を阻止することができる。この場合、ターゲットパターン7、9は所定位置に静止すると言える。さらに、複数の領域22の周期的配置は、3Dセンシング用途に有用なターゲットパターン7、9のコントラストの向上につながり得る。波長633nmのレーザ等の光源2により照明された場合の、光学素子10を実際に実装して得られたスペックルを有するターゲットパターン7、9からの写真を、
図10に示す。
【0047】
各領域20内の微細構造は、特定の焦点距離を有し得る。一態様では、2つの光学素子10a、10b(
図11)の連続使用か単一の光学素子10の使用(
図12)かに関係なく、第1表面12a側の焦点距離は第2表面12b側の焦点距離と一致し得る。鏡面対称なので、相互に対向配置されると、光学素子10の各微細構造は他方の鏡像に面する。
【0048】
光学系100を使用する方法であって、光源2から光学素子10に入力ビーム5を投影するステップであり、光学素子10は表面12を有する本体11を含み、表面12はモザイク分割で周期的に配置された複数の領域22を有し、複数の領域22の各領域20が微細構造のランダム空間分布を有するステップと、入力ビーム5をターゲットパターン7、9に整形するステップとを含む方法も開示される。本方法は、微細構造のランダム空間分布からのスペックルを光学素子10に対する入力ビーム5の移動に伴って変わらないよう固定するステップも含み得る。
【0049】
本範囲開示は広義に解釈されるものとする。本開示は、本明細書に開示される装置、動作、及び機械的作用を達成するための等価物、手段、システム、及び方法を開示することが意図される。開示された各構成、回折光学素子、光学系、方法、手段、機械的要素、又は機構について、本開示は、本明細書に開示された多くの態様、機構、及び構成を実施するための等価物、手段、システム、及び方法をその開示に包含し且つ教示することも意図される。さらに、本開示は、一構成及びその多くの態様、特徴、及び要素を考慮する。このような構成は、その使用及び動作が動的なものとすることができ、本開示は、製造対象の構成及び/又は顔料の使用の等価物、手段、システム、及び方法と、本明細書に開示された動作及び機能の説明及び趣旨と一致するその多くの態様とを包含することが意図される。本願の特許請求の範囲も同様に広義に解釈されるものとする。
【0050】
本明細書中の本発明の説明は、その多くの実施形態が本質的に例示的なものにすぎず、したがって本発明の要旨から逸脱しない変形形態は、本発明の範囲内にあることが意図される。このような変形形態は、本発明の趣旨及び範囲からの逸脱とみなされないものとする。