(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】心棒の角運動に関連する少なくとも1つのパラメータを決定するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G04G 21/00 20100101AFI20220228BHJP
G01D 5/347 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
G04G21/00 304G
G04G21/00 304D
G01D5/347 110C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019220113
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2019-12-05
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ピエルパスクワーレ・トルトーラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィットリオ・ゼネスコ
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-017011(JP,A)
【文献】特開2011-174800(JP,A)
【文献】特開2018-091835(JP,A)
【文献】米国特許第05748111(US,A)
【文献】特表2016-526714(JP,A)
【文献】国際公開第2018/103914(WO,A1)
【文献】特開昭57-026757(JP,A)
【文献】米国特許第6232594(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 21/00
G01D 5/26-5/40
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心棒(4
)の角運動に関係する少なくとも1つのパラメータを決定する
決定システム(6)であって、前記
決定システム(6)は、
-心棒(4)であって、前記心棒(4)自体が、長手方向(D1)回りに回転することができるように構成する心棒(4);
-前記心棒(4)上で前記心棒(4)の周囲に組み付けた回転反射器(8);
-2つの発光器/検出器対(10A、10B)であって、前記2つの対(10A、10B)は、前記回転反射器に面して、前記回転反射器(8)の両側に配設し、各前記発光器/検出器対(10A、10B)は、前記回転反射器(8)の一部を照明することを目的とする1つの光源(16)、及び前記回転反射器(8)から反射した光ビーム(24)を受光し、前記ビーム(24)を表現する電気信号(26A、26B)を生成することを目的とする1つの光検出器(18)を含む、発光器/検出器対(10A、10B);並びに
-前記検出器(18)が生成した前記電気信号のそれぞれを処理し、処理結果に応じて、前記心棒(4)の角運動に関連する前記少なくとも1つのパラメータを決定するように構成したプロセッサ
を備える、
決定システム(6)において、前記回転反射器(8)は、前記心棒(4
)の最大外径より小さな外径をもつ旋回円筒体の形態であり、吸光点構成は、前記旋回円筒体の反射外側表面(12)の周囲全体にわたり作製し、前記外側表面(12)上の前記吸光点構成は、前記回転反射器(8)自体が規則的に同じ回転方向(S1、S2)で回転すると、前記各対(10A、10B)の前記各検出器(18)が生成した表現的な電気信号(26A、26B)が、実質的に正弦曲線形状を有するようなものであることを特徴とする、
決定システム(6)。
【請求項2】
前記2つの発光器/検出器対(10A、10B)は、前記回転反射器(8)に対して、前記2つの発光器(16)及び前記2つの検出器(18)のそれぞれが互いに対して頭-尾配置されるように構成することを特徴とする、請求項1に記載の決定システム(6)。
【請求項3】
前記2つの発光器/検出器対(10A、10B)は、前記回転反射器(8)の両側で、中心が実質的に前記回転反射器(8)の中心(22)である円周上に配設し、180°以外の値を有する角度だけ互いにずれることを特徴とする、請求項1又は2に記載の決定システム(6)。
【請求項4】
前記2つの発光器/検出器対(10A、10B)及び前記回転反射器(8)は、実質的にY字形状空間構成を画定するように構成し、前記回転反射器(8)は、前記Y字形状の中心に配設し、第1の発光器/検出器対(10A)は、前記Y字形状の短腕部の自由端に配設し、もう一方の発光器/検出器対(10B)は、前記Y字形状の長腕部の自由端に配設することを特徴とする、請求項3に記載の決定システム(6)。
【請求項5】
各前記発光器/検出器対(10A、10B)において、前記発光器(16)及び前記検出器(18)は、互いに光学的に隔離することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の決定システム(6)。
【請求項6】
前記回転反射器(8)は、金属から作製し、前記回転反射器の前記外側表面(12)は、研磨されかつこの研磨された表面上に前記吸光点構成が設けられていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の決定システム(6)。
【請求項7】
前記旋回円筒体の前記外側表面(12)の周囲全体にわたる吸光点構成の点は、決定した画像に基づき制御するレーザーを使用するエッチングによって得られ、前記決定した画像は、点又は画素のマトリックスを画定し、前記吸光点の密度は、正弦曲線状に変化することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の決定システム。
【請求項8】
前記旋回円筒体の前記外側表面(12)の周囲全体にわたる前記吸光点構成の点は、決定した画像に基づき、デジタル印刷機による黒色インクの点を沈着することによって得られ、前記決定した画像は、点又は画素のマトリックスを画定し、前記吸光点の密度は、正弦曲線状に変化することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の決定システム。
【請求項9】
前記外側表面の周囲全体にわたりエッチング又は印刷した前記吸光点の前記密度は、正弦関数における2つの周期で変化することを特徴とする、請求項7又は8に記載の決定システム(6)。
【請求項10】
心棒(4)の角運動に関連する少なくとも1つのパラメータを決定する
決定システム(6)を備える計時器(1)において、前記
決定システム(6)は、請求項1から9のいずれか一項に記載の決定システム(6)に適合することを特徴とする、計時器(1)。
【請求項11】
前記計時器(1)は、時間設定りゅうず(2)を備える水晶時計であり、前記心棒(4)は、前記りゅうず(2)と一体である巻真(4)であることを特徴とする、請求項10に記載の計時器(1)。
【請求項12】
前記心棒は、計時器(1)のりゅうず(2)と一体である巻真(4)であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の決定システム(6)。
【請求項13】
請求項1から9および12のいずれか一項に記載の決定システム(6)により、心棒(4)の角運動に関連する少なくとも1つのパラメータを決定する方法であって、前記方法は、前記プロセッサによって実施する、
-2つの光検出器(18)から2つの電気信号(26A、26B)を受光するステップ(32)であって、前記電気信号(26A、26B)のそれぞれは、前記回転反射器(8)から反射した光ビーム(24)を表現し、前記電気信号(26A、26B)のそれぞれは、実質的に正弦曲線形状を有する、ステップ(32);
-前記受信した2つの電気信号(26A、26B)のそれぞれの周波数を決定するステップ(34);
-前記プロセッサによって決定した前記周波数と、前記決定システム(6)のメモリ手段内に事前に保存した対応表との間の比較によって、前記心棒(4)の回転速度を決定するステップ(36)
を含む、方法。
【請求項14】
前記決定システム(6)が請求項3に従属する場合、前記方法は、前記プロセッサによって実施されるステップ(38)を更に含み、前記ステップ(38)は、前記2つの受信した電気信号(26A、26B)を同じ関数の正弦及び余弦として表現し、変数が前記2つの信号の間の比率である逆正接関数(39)を計算することから構成されることを特徴とする、請求項13に記載の決定方法。
【請求項15】
前記方法は、前記プロセッサによって実施されるステップ(40)を更に含み、前記ステップ(40)は、前記計算した逆正接関数(39)の勾配の標示に従って、前記心棒(4)の回転方向を決定することから構成されることを特徴とする、請求項14に記載の決定方法。
【請求項16】
請求項1から9および12のいずれか一項に記載の決定システム(6)のメモリ手段内に保存した、プログラム命令を含むコンピュータ・プログラム製品であって、前記決定システム(6)プロセッサによって実施すると、請求項13から15のいずれか一項に記載の心棒(4)の角運動に関連する少なくとも1つのパラメータを決定する方法を実施することができるコンピュータ・プログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心棒の角運動に関連する少なくとも1つのパラメータを決定するシステム及び方法に関し、この心棒自体、回転することができる。そのようなパラメータは、例えば、心棒の角度位置又は回転速度又は回転方向である。
【0002】
本発明は、この決定システムを備える計時器にも関する。計時器は、例えば、水晶時計であり、心棒は、時間設定りゅうずと一体である巻真である。
【背景技術】
【0003】
時計、例えば水晶時計が電子りゅうずを備えることは公知であり、電子りゅうずにより、ユーザは、時計の歯車列に接触せずに、時間、したがって針の位置を設定することができる。そのようにするために、電子デバイス又は光学デバイス又は電気光学デバイスを時計の内部に配置し、これにより、りゅうずと一体である心棒の角運動に関連する少なくとも1つのパラメータを決定し、したがって、ユーザが望む位置で針を位置決めすることを可能にする。より詳細には、ユーザによって行われるりゅうずの回転動作は、デバイスによって、時計プロセッサのための電子パルスに変換され、何段階、どの方向に針を回転させなければならないかについて時計プロセッサと通信するようにする。この種類の符号化は、例えば、ガルバニック接触、ホール効果を使用する磁気コイル、静電容量デバイス、又は光信号の送信及び検出を実施する電気光学デバイスを介して達成することができる。
【0004】
そのような、特に、時計りゅうずと一体である心棒の角度位置及び/又は回転方向を決定する電気光学デバイスは、例えば欧州特許文献第3015925A1号(特許文献1)に開示されている。りゅうずと一体である巻真は、その外周部上に反射表面を有する。デバイスは、反射表面を照明することを目的とする光源、及び反射表面から反射した光ビームを受光し、ビームを表現する電気信号を生成することを目的とする光検出器を有する。デバイスは、検出器から受信した電気信号から、2つの異なる瞬間で少なくとも2つの画素パターンを形成するように構成したプロセッサを更に含む。プロセッサは、連続する画素パターンを比較し、画素パターンの間に変化が生じた場合、これらの画素パターンから、巻真の角運動に関係する少なくとも1つのパラメータを推測するようにも構成される。
【0005】
しかし、特許文献1で提案される電気光学デバイスの1つの欠点は、このデバイスが、取得したデータ量のために、プロセッサに対して比較的長い処理時間を生じさせることである。したがって、この解決策は、十分な電力をプロセッサに供給することを必要とし、これにより、プロセッサの全体サイズ及びデバイスの電力消費量の両方に影響を与える。時計内で利用可能な空間及びエネルギーが特に制限されることを考慮すると、このことは、システムの全体寸法及びその自律性に関して問題があることがわかる。
【0006】
米国特許文献第9,797,753B1号(特許文献2)は、時計機能を設定する光学符号器を開示している。符号器は、パターン化された表面を有する回転シャフト、パターン化表面を照明する光源、パターン化表面上の反射光の一部分を受光する光学センサ・アレイ、及び光学センサからの情報を処理するプロセッサを含む。単一光源が設けられていることは、回転シャフトの全ての角運動を正確、簡単に決定することが可能ではないことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許文献第3015925A1号
【文献】米国特許文献第9,797,753B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、心棒の角運動に関連する少なくとも1つのパラメータを決定する電気光学システムを提供することが本発明の目的であり、この心棒自体、回転することができ、これにより、限られた量の取得データで動作し、必要な処理電力を低減する一方で、パラメータ(複数可)の正確で迅速な決定を保証することが可能である。
【0009】
この目的で、本発明は、独立請求項1に記載の特徴を含む、心棒、特に時計りゅうずと一体である心棒の角運動に関連する少なくとも1つのパラメータを決定するシステムに関する。
【0010】
システムの特定の実施形態は、従属請求項2から9で定義される。
【0011】
回転反射器の円筒表面上に作製した吸光点パターンのために、本発明のシステムの光検出器はそれぞれ、表現的な電気信号を生成し、電気信号は、反射器自体が同じ回転方向で回転する際、実質的に正弦曲線形状を有する。より正確には、反射器自体が規則的に回転すると、各発光器/検出器対から見える反射器の外側表面上の吸光点の構成が変化し、このため、各検出器によって生成した表現的な電気信号は、実質的に正弦曲線形状を有する。検出器が生成する信号が実質的に正弦曲線形状であるため、心棒の角運動に関連するパラメータ(複数可)を決定するためにシステム・プロセッサが実施する処理は、低減される。このことにより、パラメータ(複数可)を正確、確実に決定し、限られた量の取得データで、プロセッサの迅速な処理時間、小型化及び最小のエネルギー消費を可能にする。
【0012】
有利には、2つの発光器/検出器対は、回転反射器に対して、2つの発光器及び2つの検出器のそれぞれが互いに対して頭-尾配置されるように構成する。このことにより、反射器自体が回転すると、2つの光検出器が生成する信号の間に位相のずれを導入することが可能である。そのような位相のずれは、システムのメモリ手段内で実施されるコンピュータ・プログラムが、心棒の回転方向又は回転速度を決定することを可能にする。更に、2つの発光器/検出器対に対するこの空間構成のために、光検出器のいずれも、反射器から反射した光ビームを逃さない。
【0013】
有利には、2つの発光器/検出器対は、回転反射器の両側に配置され、中心が実質的に回転反射器の中心である円周上に置かれ、180°以外の値を有する角度だけ互いにずれる。この特徴により、反射器自体が回転すると、2つの光検出器が生成する信号の間に位相のずれを導入する、及び/又は既存の位相のずれを向上させることが可能である。実際、2つの発光器/検出器対は、同じ角度では反射器が見えず、これにより、生成する信号の間に位相のずれを導入する。好ましくは、2つの信号の間にもたらされる位相のずれの合計は、少なくとも25°であり、より更に好ましくは、実質的に90°に等しい。
【0014】
本発明の特定の技術的特徴によれば、回転反射器は、旋回円筒体から形成される。吸光点構成は、レーザー・エッチング、又はデジタル印刷機による黒点(インク)の沈着により作製することができる。
【0015】
この目的で、本発明は、独立請求項10で述べる上記の特徴を含む決定システムを備える計時器にも関する。
【0016】
計時器の特定の実施形態は、従属請求項11で定義される。
【0017】
この目的で、本発明は、上記の決定システムにより、独立請求項12に記載の特徴を含む、心棒、特に時計りゅうずと一体である心棒の角運動に関連する少なくとも1つのパラメータを決定する方法にも関する。
【0018】
方法の特定の実施形態は、従属請求項13から15で定義される。
【0019】
有利には、方法は、プロセッサによって実施される、2つの受信電気信号を同じ関数の正弦及び余弦として表し、変数が2つの信号の間の比率である逆正接関数を計算することから構成されるステップを更に含む。このことにより、心棒の角度位置を任意の時間で明確に決定することが可能である。
【0020】
有利には、方法は、プロセッサによって実施される、計算した逆正接関数の傾斜の標示に従って、心棒の回転方向を決定することから構成されるステップを更に含む。
【0021】
有利には、方法は、プロセッサによって実施される、光源のそれぞれの照明を交互に制御することから構成されるステップを更に含む。このことにより、発光器/検出器対の一方の検出器が、もう一方の発光器/検出器対の発光器からの光に影響を受けないようにする。
【0022】
この目的で、本発明は、上記の決定システムのメモリ手段内に保存した、プログラム命令を含むコンピュータ・プログラムにも関し、コンピュータ・プログラムは、システム・プロセッサによって実行されると、上記の決定方法を実施することができ、独立請求項16に述べる特徴を含む。
【0023】
本発明による決定システム及び方法、並びにシステムを収容する計時器の目的、利点及び特徴は、図示する少なくとも1つの非限定的な実施形態に基づく以下の説明においてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】時間設定りゅうずを備える時計、及び本発明による、りゅうずと一体である心棒の角運動に関連する少なくとも1つのパラメータを決定するシステムの斜視図である。
【
図2】
図1のシステムの斜視図であり、システムは、回転反射器及び2つの発光器/検出器対を備える。
【
図5】正弦関数において反射器表面の反射率を調整するため、反射器壁上にエッチング又は印刷される黒/白画素マトリックスの計算図である。
【
図6】回転反射器の角度位置を関数とする、2つの発光器/検出器対の検出器が生成する2つの電気信号の発展を表すグラフである。
【
図7】
図1のシステムによって実施される、心棒の角運動に関連する少なくとも1つのパラメータを決定する方法ステップを表すフロー・チャートである。
【
図8】
図2のシステム・プロセッサによって計算した、回転反射器の角度位置を関数とする逆正接関数の発展を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、時間設定りゅうず2を備える時計1の一部を表す。りゅうず2は、時計1の内側、特に時計ケースの内側に部分的に延在する心棒4に接合される。例えば水晶時計である時計1は、りゅうず2と一体である心棒4の角運動に関係する少なくとも1つのパラメータを決定するシステム6を更に備える。
【0026】
心棒4は、それ自体が長手方向D1回りに回転することができる。より正確には、ユーザが時間を設定するためにりゅうず2を回転させると、心棒4自体が方向D1回りに回転駆動される。任意選択で、りゅうず2は、心棒4を長手方向に並進駆動することによって、ユーザが引き出す及び/又は押し込むように構成し得ることに留意されたい。
図1から
図4の例示的例のケースのように心棒4を時計1に取り付ける場合、心棒4の直径は、典型的には、0.5から2mmの範囲内に含まれる。
【0027】
図2及び
図3に示すように、心棒4に加えて、システム6は、回転反射器8、及び2つの発光器/検出器対10A、10Bを含む。システム6は、プロセッサ及びメモリ手段も含むが、これらの要素は、明確にするために図示しない。
【0028】
回転反射器8は、心棒4上にその周囲に組み付ける。したがって、回転反射器8は、心棒4と一体である。回転反射器8は、例えば、心棒4の端部分上に組み付けるが、心棒4上の反射器8のこの特定の構成は、本発明の文脈では限定されない。反射器8及び心棒4は、一体部品で作製することができる。回転反射器8は、反射器8自体が規則的に、特にほぼ一定速度で回転する際、回転反射器8の可視外側表面が変化するような形状を有し、この可視外側表面は、各発光器/検出器対10A、10Bから見え、各対10A、10Bのための反射器8の有効反射部分12を形成するものである。
【0029】
図2から
図4で示すように、回転反射器8は、好ましくは、旋回円筒体から形成される。反射器8の外周表面12は、一定の光反射率を有するように、鏡のように最初に完全に研磨されている。この一定の反射率は、材料特性及び表面の質によってのみ与えられる。この円筒形反射器8は、例えば、1.3mmの直径及び0.77mmの長さを有する。これらの寸法は、単に例示のために与えられ、他の値に対する限定ではない。
【0030】
回転反射器8は、例えば金属である。反射器8の金属は、好ましくは、研磨表面12が、発光器によって放出される光の波長を十分に反射するように選択される。例えば、赤外光発光器の場合、反射器8のために選択する金属は、金蒸着物としてもよい。したがって、反射器8の金属の選択は、選択する発光器の種類によって左右され、製品の制約条件に従って調節することができる。
【0031】
次の動作では、吸光点構成は、例えば、旋回円筒体の研磨表面12の周囲全体にわたり、エッチング、又は特に印刷によって沈着されるように構成される。簡単にする目的で、この点構成は、
図1から
図4では完全に図示していないが、以下で説明するように、
図5に示す。この吸光点構成を研磨表面上に作製する前に、吸光点パターン(黒点)を生成しなければならない。このことは、例えば2Dコンピュータ画像、より正確には黒/白画素マトリックスの形態で得られる。
【0032】
図5は、値が常に正であるように、1のずれを加えることができる周波数の正弦関数2を表す。この正弦関数は、1と0との間で変動する。周波数2は、反射器8の完全な旋回にわたり、各正弦波周期ごとに、反射光ビームの2つの完全な正弦波、即ち180°が検出器によって検出されることを意味する。円筒体の研磨表面上に作製する点マトリックスは、正弦関数グラフ内に2D画像で示す。この2D画像は、旋回円筒体の研磨表面の周囲P全体に、円筒体長さLにわたって再現しなければならない。
【0033】
この2D画像は、円柱体で作製される。関数が1である点では、鏡の反射率は最大でなければならない。したがって、この円柱体内に吸光画素(黒)は作製されない。しかし、関数が0である場合、鏡の反射率は最小でなければならない。したがって、この円柱体の全ての画素は黒である。
【0034】
画素の観点において、
図5に示す例では、反射率1は、例えば、円柱体の39の画素が全て白であることを意味する。反射率0は、例えば、円柱体の39の画素が全て黒であることを意味する。中間のケースは以下のように処理される。特定の点で、関数値が0.6である場合、このことは、画素の60%が白のままでなければならならず(23の画素)、画素の40%は黒でなければならない(16の画素)ことを意味する。図示の非限定的な例では、円筒体は、4mmに等しい周囲P及び0.77mmに等しい長さLを有する。最初の画像は、4mm×0.77mmの長方形から構成され、したがって、200×39画素である。そのようなケースにおけるこれらの画素又は点は、20μm×20μmである。
【0035】
反射器8上の点構成の目的は、発光器/検出器対の各検出器18による光の検出時、信号、特に正弦曲線信号を得るためである。この目的で、反射器8自体は、光反射率の変動に基づき、規則的、とりわけほぼ一定速度で同じ回転方向に回転する。
【0036】
図5に示す画像は、旋回円筒体の形態の反射器8の研磨表面上にエッチング又は印刷することができる。吸光点は、例えばレーザー・ビームによってエッチングすることができる。各(黒色)吸光点が20μm×20μmのサイズを有する場合、エッチングするレーザー・ビームは、20μmスポットとすることができ、制御ユニットによってコンピュータから制御される。この2D画像をレーザー制御ユニットにアップロードし、次に、レーザー発光と同期する回転台を使用して円筒壁上にエッチングする。
【0037】
レーザー・ビーム作用の使用により、材料表面の光学特性を修正可能であることは、周知であることに留意されたい。したがって、レーザーを使用し、反射器表面上の吸光点を局所的にエッチングすることができる。レーザーの設定は、構成要素を機械加工する間、各黒点が均一な効率で吸光するように一定に保持される。そのような条件において、反射率の変動は、
図5に示す黒点の密度のみによる。反射器が発光器に面して徐々に回転するにつれて、吸光点の密度は変化し、このことにより、反射され、対応する検出器に送られる光の変動がもたらされる。図示するように、この反射光の変動により検出信号が生成され、この検出信号は、それ自体が同じ回転方向で回転する反射器上に作製した吸光点構成に応じて、正弦曲線とすることができる。例えば、PVD処理を使用して、吸光表面を有することを想定することもでき、例えば、レーザーによってエッチングすると、吸光点ではなく、反射点が露出される。
【0038】
図1から
図3に示し、部分的に上記で説明したように、各発光器/検出器対10A、10Bは、1つの光源16及び1つの光検出器18を含む。光源16は、典型的には、例えば赤外光を放出することができる1つ又は複数の発光ダイオードから形成される。光源16及び光検出器18は、保護ケース20内に配置され、好ましくは、例えば分離壁により互いに光学的に隔離される。各発光器/検出器対10A、10Bは、例えば、近接センサ・ユニット・デバイスを形成する。
【0039】
2つの発光器/検出器対10A、10Bは、反射器8に面して、回転反射器8の両側に配設される。
図3に示す好ましい実施形態では、2つの発光器/検出器対10A、10Bは、回転反射器8に対して、2つの発光器16及び2つの検出器18がそれぞれ、互いに対して頭-尾で配置されるように構成する。好ましくは、
図3に示すように、2つの発光器/検出器対10A、10Bは、中心が実質的に回転反射器8の中心22である円周上に置かれ、180°以外の値を有する角度だけ互いにずれる。
【0040】
また、好ましくは、
図3で見えるように、2つの発光器/検出器対10A、10B及び回転反射器8は、実質的にY字形状の空間構成を画定するように構成される。より正確には、回転反射器8は、Yの中心に配設され、第1の発光器/検出器対10Aは、Yの短腕の自由端に配設され、もう一方の発光器/検出器対10Bは、Yの長腕の自由端に配設される。言い換えれば、
図3からわかるように、2つの発光器/検出器対10A、10Bは、回転反射器8の両側に配設され、互いに軸方向にずれる。
【0041】
各光源16は、反射器8の一部を照明することを目的とする。各光検出器18は、反射器8から反射した光ビーム24を受光し、ビーム24を表現する電気信号を生成することを目的とする。各検出器18が生成した表現的な電気信号は、反射器8自体が同じ回転方向S1、S2で回転すると、実質的に正弦曲線形状を有する。そのような信号26A、26Bは、例えば、
図6で見ることができる。
【0042】
プロセッサは、検出器18が生成した電気信号26A、26Bのそれぞれを処理するように構成される。プロセッサは、以下で詳細に説明するように、処理結果に従って、心棒4の角運動に関連する少なくとも1つのパラメータを決定するようにも構成される。決定されるパラメータ(複数可)は、例えば、心棒4の角度位置又は回転速度又は回転方向である。
【0043】
図6は、異なる角度における検出器18からの2つの実際の信号26A、26Bを表し、回転反射器8自体の回転に対応する。各信号26A、26Bは、発光器/検出器対10A、10Bの一方のそれぞれの検出器18からのものである。各信号26A、26Bは、実質的に正弦曲線形状を有する。更に、
図6の例示的な例では、信号26A、26Bの位相は、互いに約25°ずれる。好ましくは、信号26A、26Bの位相は、少なくとも25°、及び好ましくは約90°ずれる。
【0044】
次に、システム6のプロセッサによって実施される、心棒4の角運動に関連する少なくとも1つのパラメータを決定する本発明による方法を、
図7及び
図8を参照して説明する。最初に、ユーザが、例えばりゅうず2を操作することによって、心棒4を操作し、心棒4自体を長手方向D1回りに回転させ、時計1の時間を設定すると仮定する。この心棒4の回転により、回転反射器8の長手方向D1回りの回転を生じさせる。
【0045】
好ましくは、方法は、最初のステップ30を含み、ステップ30の間、プロセッサは、光源16のそれぞれの照明を交互に制御する。
【0046】
最初のステップ、又はその後のステップ32の間、プロセッサは、2つの光検出器18から2つの電気信号26A、26Bを受信する。電気信号26A、26Bのそれぞれは、反射器8から反射された光ビーム24を表現し、実質的に正弦曲線形状を有する。
【0047】
次のステップ34の間、プロセッサは、2つの受信した正弦曲線信号26A、26Bのそれぞれの周波数を決定する。
【0048】
次のステップ36の間、プロセッサは、ステップ34の間に決定した周波数と、システム・メモリ手段内に事前に保存した対応表との間を比較することによって、心棒4の回転速度を決定する。
【0049】
好ましくは、方法は、並行ステップ又は次のステップ38を含み、ステップ38の間、プロセッサは、2つの受信した電気信号26A、26Bを同じ関数の正弦及び余弦として表現し、次に、変数が2つの信号の間の比率である逆正接関数を計算する。
図6に示す信号26A、26Bの特定の例示的実施形態に対するこの計算結果を
図8に表す。180°に対応する回転反射器8の半旋回周期に対して、得られる曲線39は直線であることに留意されたい。したがって、計算した逆正接関数の所与の値にアクセスするプロセッサは、この値から、心棒4の角度位置を明確に推測することができる。更に、得られる直線勾配の標示は、心棒4の回転方向の関数である。したがって、方法は、並行ステップ又は次のステップ40を含むことができ、ステップ40の間、プロセッサは、得られた直線勾配の標示を関数として、心棒4の回転方向を決定する。
【0050】
図8に示す曲線39の形状を得るために、信号26A、26Bの位相は、好ましくは少なくとも25°ずれなければならないことに留意されたい。そのような位相のずれは、上記の発光器/検出器対10A、10Bの頭-尾構成、及び/又は上記の回転反射器8の両側の2つの発光器/検出器対10A、10Bの非対称構成によって得られる。したがって、信号26A、26Bの間で得られる位相のずれは、
図8で表す曲線39の形状を得ることを可能にし、したがって、プロセッサが、心棒4の角度位置及び回転方向を正確に決定することを可能にする。
【0051】
メモリ手段は、プログラム命令を含むコンピュータ・プログラム製品を保存し、コンピュータ・プログラム製品は、システム6によって実施されると、上記の方法を実施することができる。
【0052】
上記の反射率画像を生成するアルゴリズムは、円筒形反射器上のパターンをレーザー以外の技法で作製した場合であっても、一般に依然として有効であることに留意されたい。したがって、例えば黒色画素は、デジタル印刷機により吐出される黒色インクを使用して作製することができる。
【0053】
同じアルゴリズムを使用し、他の反射率画像を作製し、検出器内に方形波又はランプ波等の他の信号を生成し得ることにも留意されたい。しかし、りゅうずと一体である心棒又は巻真の回転速度を容易に決定するのはより困難である。
【符号の説明】
【0054】
1 計時器
2 りゅうず
4 心棒
6 システム
8 回転反射器
10A 発光器/検出器対
10B 発光器/検出器対
16 光源
18 光検出器
24 ビーム
26A 電気信号
26B 電気信号