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特許7030774電気アクチュエータおよび電気アクチュエータを有する最終減速比制御装置
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  • 特許-電気アクチュエータおよび電気アクチュエータを有する最終減速比制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】電気アクチュエータおよび電気アクチュエータを有する最終減速比制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/10 20060101AFI20220228BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20220228BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20220228BHJP
   F16K 31/53 20060101ALI20220228BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20220228BHJP
   H02K 7/114 20060101ALI20220228BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20220228BHJP
   F16D 59/00 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
H02K7/10 C
F16H1/28
F16K31/04 A
F16K31/53
H02K7/116
H02K7/114
F16D7/02 C
F16D59/00 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019501992
(86)(22)【出願日】2017-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017067366
(87)【国際公開番号】W WO2018011188
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-01-28
(31)【優先権主張番号】102016113117.2
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517074680
【氏名又は名称】サムソン アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン、クラウゼ
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10134428(DE,A1)
【文献】米国特許第03028726(US,A)
【文献】特開2015-177558(JP,A)
【文献】特開2007-225091(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10256534(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第19519638(DE,A1)
【文献】米国特許第9162094(US,B2)
【文献】米国特許第3028726(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第02177801(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/10
F16H 1/28
F16K 31/04
F16K 31/53
H02K 7/116
H02K 7/114
F16D 7/02
F16D 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス技術プラントの作動要素を位置決めするための安全制御機能を有する最終減速比制御装置用の電気アクチュエータ(1)であって、前記作動要素を作動させるトルクを提供する電気モータ(5)であって、前記トルクを出力するモータシャフト(21)を有する電気モータ(5)と、前記電気モータ(5)から前記作動要素に前記トルクを伝達する出力シャフト(3)と、前記モータシャフト(21)と前記出力シャフト(3)との間のトルク伝達接続を提供または遮断する継手(11)とを備え、
前記出力シャフト(3)、前記モータシャフト(21)、および前記継手(11)は、互いに同軸に配置され、
前記電気アクチュエータはさらに前記電気モータ(5)から前記出力シャフト(3)に前記トルクを伝達し、前記出力シャフト(3)と同軸に配置されるプラネタリギヤ(7)を備え、
前記モータシャフト(21)は、前記電気モータ(5)から前記ギヤに前記トルクを提供
前記プラネタリギヤ(7)のリングギヤ(75)は、前記継手(11)の回転可動部(12)に対して回転自在に固定される、ことを特徴とする電気アクチュエータ(1)。
【請求項2】
前記ギヤは、減速ギヤ段として構成されている厳密に1つのギヤ段を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の電気アクチュエータ(1)。
【請求項3】
前記減速ギヤ段は前記プラネタリギヤ(7)として構成されており、前記出力シャフト(3)は前記ギヤのプラネタリブリッジ(73)として少なくとも部分的に実現され、または、前記プラネタリブリッジ(73)はトルクに耐えて力が加えられることでロックされまたはポジティブロックするように前記出力シャフト(3)に直接接続され、または、前記モータシャフト(21)は前記ギヤのサンギヤ(71)にトルクに耐えるように接続される、ことを特徴とする請求項2に記載の電気アクチュエータ(1)。
【請求項4】
前記電気モータ(5)は、少なくとも200rpm、少なくとも500rpm、少なくとも1000rpm、少なくとも3000rpm、または少なくとも6000rpmの不変の公称速度を有する状態で構成されており、または、前記電気モータ(5)の回転方向は、逆転させることができる、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の電気アクチュエータ(1)。
【請求項5】
前記出力シャフト(3)と同軸に配置される遠心ブレーキ(13)は、前記ギヤまたは前記継手(11)に回転不能に接続され、前記遠心ブレーキ(13)は、前記ギヤの前記リングギヤ(75)に、回転不能に接続される、ことを特徴とする請求項に記載の電気アクチュエータ(1)。
【請求項6】
前記モータシャフト(21)は、その軸方向(A)に変速機から前記電気モータ(5)まで前記継手(11)を貫通して延び、かつ前記遠心ブレーキ(13)を任意で貫通して延び、または、前記リングギヤ(75)を任意で貫通して延びる、ことを特徴とする請求項に記載の電気アクチュエータ(1)。
【請求項7】
前記モータシャフト(21)の軸部分は、中空シャフト(27)によって前記径方向に囲まれ、前記中空シャフト(27)は、前記モータシャフト(21)に対して回転可能に運動可能でありまたは滑り軸受で前記モータシャフト(21)に取り付けられ、前記中空シャフト(27)は、前記リングギヤ(75)に回転不能に接続される、ことを特徴とする請求項に記載の電気アクチュエータ(1)。
【請求項8】
前記モータシャフト(21)は、前記電気モータ(5)のステータまたはロータを貫通して延び、前記モータシャフト(21)は、前記電気モータ(5)の両側で軸方向に回転可能に取り付けられ、各々で、玉軸受(23,25)を用いる、ことを特徴とする請求項1に記載の電気アクチュエータ(1)。
【請求項9】
プロセス技術プラントのプロセス流体流を調節する制御バルブ(113)を含む作動要素と、請求項1に記載の前記電気アクチュエータ(1)と、前記出力シャフト(3)によって動作可能であり前記アクチュエータを直線的に作動させる偏心体(103)またはスピンドル駆動体と、を備える安全制御機能、を有する最終減速比制御装置(101,102)。
【請求項10】
前記最終減速比制御装置(101,102)は、前記継手(11)または前記電気モータ(5)が無通電状態にされるときに、前記作動要素を安全位置に動かす回転的バネ機構(105)を備え、前記バネ機構(105)は、前記出力シャフト(3)と同軸に配置されまたは前記出力シャフト(3)と同軸に配置されたギヤ(7)に対して前記出力側に配置される、ことを特徴とする請求項に記載の最終減速比制御装置(101,102)。
【請求項11】
前記プロセス技術プラントの前記作動要素は、プロセス技術プラントのバルブ要素である、ことを特徴とする請求項1に記載の電気アクチュエータ(1)。
【請求項12】
前記継手(11)は、電磁または無電流非連結継手である、ことを特徴とする請求項1に記載の電気アクチュエータ(1)。
【請求項13】
前記トルクは、駆動トルクである、ことを特徴とする請求項2に記載の電気アクチュエータ(1)。
【請求項14】
前記中空シャフト(27)は、任意で前記遠心ブレーキ(13)または前記継手(11)の前記回転可動部(12)に回転不能に接続される、ことを特徴とする請求項に記載の電気アクチュエータ(1)。
【請求項15】
前記モータシャフト(21)は、前記継手(11)を貫通している、ことを特徴とする請求項1に記載の電気アクチュエータ(1)。
【請求項16】
前記出力シャフト(3)の軸方向に沿った長さは、前記モータシャフト(21)の前記軸方向に沿った長さよりも短い、ことを特徴とする請求項1に記載の電気アクチュエータ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ部材などの作動要素の位置決め、化学プラント、たとえば石油化学プラントなどのプロセス技術プラント、発電プラント、食品加工工場、建物、建物の一部(アパートまたは建物の部屋など)の暖房設備などの暖房設備などの安全制御機能を有する最終減速比制御装置(final controlling device)用の電気アクチュエータに関する。また、本発明は、プロセス技術プラントのバルブ要素などの作動要素と、本発明に係る電気アクチュエータと、を備える安全制御機能を有する最終減速比制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、電気アクチュエータを有する最終減速比制御装置はDE19519638A1により公知である。周知の最終減速比制御装置は、バルブを作動させるための安全制御機能を有するバルブアクチュエータを備える。周知の制御バルブには、回転方向を逆転させることができ、その駆動力がギヤを介してプランジャに作用してバルブを作動させることができる駆動モータが設けられている。最終減速比制御装置は、電磁ブレーキまたは継手と、最終減速比制御装置の通常の動作中に電磁ブレーキまたは継手の作用によって駆動モータに連結されるプランジャに作用するバネ機構も含むものとする。電源不具合の場合には、既知の最終減速比制御装置のバルブは、安全上の理由から、規定のバルブ位置、一般的には閉位置に動かされ、これは、電気モータとプランジャとの間の電気的連結を解放することで、バネ機構がプランジャに作用してバルブを規定の(閉)位置にすることによって行なわれる。既知の最終減速比制御装置およびフェイルセーフ動作を行なう他のクラスコンプライアントな(class-compliant)最終減速比制御装置の場合には、バルブを閉位置に向かって付勢するバネ機構が絶えず作用するのに抗して、作動要素を設定箇所の位置に作動させるのに十分な最小トルクを提供するように電気モータを構成することが不可欠である。既知の最終減速比制御装置が実用化されることがそれ自体によって実証されており、きわめて好評である。しかしながら、アクチュエータの入手および保守コストを可能な限り低く保ちつつ、周知のアクチュエータの機能を小スペースで実現することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】DE19519638A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、好ましくは、同時に入手コストおよび運用コストを維持または低減しつつ、最新技術の欠点を克服する、特に、必要な設置スペースを削減する、安全制御機能を有する最終減速比制御装置または安全制御機能を有する最終減速比制御装置のための電気作動要素を提供するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は独立請求項1の主題によって解決される。
【0006】
したがって、プロセス技術プラント、化学プラント、特に石油化学プラント、発電所、食品加工工場、暖房設備などのバルブ部材などの作動要素を位置決めするための安全制御機能を有する最終減速比制御要素用の電気アクチュエータが提供される。電気アクチュエータは、作動要素を作動させるトルクを提供し、トルクを供給するモータシャフトを有する電気モータと、電気モータから作動要素にトルクを伝達する駆動シャフトと、モータシャフトと駆動シャフトとの間のトルク伝達接続を提供および/または遮断する継手とを備える。
【0007】
好ましくは、継手は無電流切断継手として実現される。これは、電源不具合、電気信号の不具合などの場合に安全制御機能を作動させる場合に特に有効となる場合がある。これの代わりにまたはこれに加えて、継手は電磁継手であってもよい。電磁連結は、たとえば2つの軟磁性ケージおよび1つのコイルを用いて実現することができる。好ましくは、ケージの一方とコイルとは静止状態に保たれ(ハウジングに固定)、特に、電気モータの静止部に対して回転自在に固定され、第2のケージはそれに対して回転可能であり、モータシャフトと駆動シャフトとの間のトルク伝達接続部に接続される。電磁継手のコイルに電流が流れると、2つの軟磁性ケージは互いに相互保持トルクを及ぼすことができる。好ましくは、本発明に係る電気アクチュエータは厳密に1つの電気モータを備える。たとえば、電気モータとして50Hz同期モータを用いることができ、これは標準化された欧州の50Hz電力網の電源とともに用いるのに特に適しており、これを用いる場合、外部電源の電流をモータに適合させる追加の変圧器が不要である。これの代わりに、電気モータとしてDCモータを用いることができる。
【0008】
本発明に係れば、駆動シャフト、モータシャフトおよび継手は互いに同軸に配置される。驚くべきことに、継手がモータシャフトおよび駆動シャフトと同軸に配置される場合、本発明に係る電気アクチュエータの必要な設置スペースと個々の構成要素の数とを従来の電気アクチュエータと比較して著しく削減することができることが示された。本発明のアクチュエータの利点は、最先端技術で必要な継手の別々になっている軸を省くことによって、アクチュエータの構成要素を通常よりも少数の軸上に配置することができることである。好ましくは、電気モータおよび/または継手の(外部電源)電流集電部は、特に電気アクチュエータまたは最終減速比制御装置のハウジングと対向して静止していてもよい。このようにして、電気モータ、および場合によっては電磁継手の(外部電源)集電部を配線するためのコストに高額な投資が必要であることが避けられる。
【0009】
本発明の好ましい例に係れば、電気アクチュエータは、電気モータから駆動シャフトにトルクを伝達し、好ましくは駆動シャフトと同軸に配置されるギヤ、特にプラネタリギヤも備え、モータシャフトは電気モータからギヤに伝達されるトルク、特に駆動トルクを提供する。他のギヤも考えられる。好ましくは、ギヤは、トルク入力ギヤ構成要素、トルク出力ギヤ構成要素および/またはトルク伝達ギヤ構成要素もしくはトルク変換構成要素などの、互いに対して関連して動くいくつかのギヤ構成要素から構成されている。モータシャフトは、特に材料型ポジティブまたはノンポジティブロック(material, positive or non-positive locking)を用いて、トルクに耐えるようにトルク入力ギヤ構成要素に接続することができる。減速または変速ギヤが、モータから発してシャフトに直接加えられる入力トルクとは異なる出力トルクを入力シャフトに提供することは明らかである。この点で、ギヤボックスの入力側の入力トルクと、モータから離れたギヤボックスの出力側の出力トルクと区別することができる。ただし、用語トルクが一般的に用いられる場合、この用語は、駆動トルクおよび出力トルクの両方、ならびに必要な場合であっていくつかのギヤ段が存在するときには複数の駆動トルクおよび複数の出力トルクを含む場合があることは明らかである。最終減速比制御装置に供給されるすべての動力は、電気モータの出力部に存在して、そこに存在する駆動速度および駆動トルクを形成し、また、なんらかのオーバーランまたは減速が生じる可能性があることに関係なく、1つ以上の変速段においてこの動力を超えることができず、この動力は、電気モータによって供給されて最終減速比制御装置を作動させる電気モータのトルクを定めることは当業者には明らかである。
【0010】
電気アクチュエータのギヤは好ましくは厳密に1つのギヤ段からなる。好ましくは、電気アクチュエータのギヤは、特に厳密に1つの減速ギヤ段を有する減速ギヤとして設計される。減速ギヤは好ましくは少なくとも2,3,5,7または9の減速比を有する。減速ギヤとして設計されるギヤは、高い入力速度の小さい入力トルクを低い出力速度の大きい出力トルクに変換するのに特に適する。ギヤユニットはセルフロック式でなければ特に好ましい。非セルフロックギヤは、ギヤの出力側のバネ機構と組み合わせて作動要素をフェイルセーフ位置に動かすのに特に適する。
【0011】
本発明に係る電気アクチュエータの好ましいさらなる発展例に係れば、好ましくは減速を行なうギヤはプラネタリギヤとして構成される。プラネタリギヤは、(ギヤ構成要素として)中心の同軸のサンギヤと、外側の内歯付きの同軸リングギヤと、少なくとも1つのプラネットギヤ、好ましくは複数のプラネットギヤ、特に奇数個のプラネットギヤ、たとえば3つまたは5つのプラネットギヤとを備え、プラネットギヤはサンギヤとリングギヤとの間に配置され、リングギヤおよびサンギヤと噛み合う。プラネタリギヤは、(追加ギヤ構成要素として)少なくとも1つのプラネットギヤまたは複数のプラネットギヤに接続されるプラネットブリッジをさらに備え、1つまたは複数のプラネットギヤはプラネットブリッジ上で、プラネットブリッジのプラネットギヤ軸、好ましくはプラネットブリッジのシャフトまたはアクスル本体まわりに回転可能に支持される。特に、出力シャフトはギヤのプラネットブリッジとして少なくとも部分的に実現することができる。これの代わりに、プラネタリギヤのプラネットブリッジは、特に、トルク伝達するように、好ましくは、トルクに耐え、力が加えられることでロックされかつ/またはポジティブロックするように出力シャフトに直接接続することができる。これに加えてまたはこれの代わりに、モータシャフトはプラネタリギヤのサンギヤに回転自在に固定されるようにして連結することができる。駆動されるサンギヤと、好ましくは固定リングギヤによってドリフトするプラネタリギヤとを有するプラネタリギヤとしてのギヤボックスのこのような設計は比較的高い減速比に特に適する。
【0012】
上述のものと組み合わせることができる本発明の好ましいさらなる発展例の場合、プラネタリギヤとして構成することができるギヤボックスのギヤ構成要素、好ましくはリングギヤは、継手の回転可動部に回転自在に固定されている。好ましくは、電気アクチュエータのこの好ましい構成では、継手は電気モータおよび/またはアクチュエータハウジングに対する固定継手部を備える。継手は、モータシャフトと駆動シャフトとの間のトルク伝達接続部の少なくとも一部とともに回転運動を行なうことができる回転可動部と、好ましくは静止しかつ/またはハウジング固定される静止継手部とに機能的に細分することができる。特にプラネタリギヤとして実現される上述のギヤと組み合わせると、このような継手は、モータシャフトと出力シャフトとの間の動力伝達接続を提供するために、ギヤのギヤ構成要素、特にプラネタリギヤのリングギヤを任意に静止させることができ、あるいはこれに代わって、継手が開いているときにはギヤ要素、特にリングギヤは遊動状態になることができ、その結果、サンギヤとリングギヤとの間のプラネットギヤなどの他のギヤ構成要素が遊動することで、モータシャフトと出力シャフトとの間で事実上トルクが伝達されないという利点をもたらす。
【0013】
本発明に係るアクチュエータの好ましい例では、電気モータは、少なくとも200rpm、少なくとも500rpm、少なくとも1000rpm、少なくとも3000rpmまたは少なくとも6000rpmの適切な不変の公称速度を用いて設計されている。本発明に係るアクチュエータの好ましい例では、電気モータの回転方向を逆転させることができる。好ましくは、電気モータは、50ヘルツの外部電源での動作用に設計される同期モータである。代替の好ましい設計に係れば、電気モータはDCモータであってもよい。
【0014】
本発明に係る電気アクチュエータの好ましい例では、好ましくは駆動シャフトと同軸に配置される遠心ブレーキがギヤおよび/または継手に回転不能に接続される。特に、遠心ブレーキは、ギヤユニットのギヤ構成要素、特にリングギヤに回転自在に固定することができる。安全制御機能を有する最終減速比制御装置の一部として本発明に係る電気アクチュエータを用いる場合、遠心ブレーキを設けることが有効であることが分かった。遠心ブレーキは、作動中、すなわち作動要素が電気モータによって作動されるときに制動力を発生しないことが好ましい。安全制御機能が最終減速比制御装置によって発揮されるとき、遠心ブレーキが制動力、好ましくは出力シャフトの加速度に依存する制動力を提供するように構成されていることが有効であることも示された。最終減速比制御装置は、過度に大きい加速度の結果生じる最終減速比制御装置の損傷を防ぐために、加速限界値を超えてその制動機能を発揮することが好ましい。好ましくは、電気アクチュエータは、遠心ブレーキと協働するブレーキポットを備え、遠心ブレーキはハウジングに固定され、かつ/または継手もしくは電気モータの静止部に対して動かないようにされる。
【0015】
本発明に係る電気アクチュエータの好ましい構成では、モータシャフトは、軸方向にギヤ、特にギヤ入力構成要素またはトルク入力構成要素、特にプラネタリギヤのサンギヤから電気モータまで、好ましくは電気モータの静止部内でかつ/または静止部を貫通して延びる。モータシャフトは、継手、その静止部および/もしくは回転部ならびに/または該当する場合には遠心ブレーキ、その回転部および/もしくはそのブレーキポットを完全に貫通して延びることが好ましい。この構成では、モータシャフトは継手、および必要な場合には遠心ブレーキを軸方向に貫く。この好ましい配置によってアクチュエータの特にコンパクトな設計が可能になる。
【0016】
本発明に係る電気アクチュエータの好ましい構成では、モータシャフトの軸部分がスリーブまたは中空シャフトによって径方向に好ましくは完全に囲まれる。特に、中空シャフトは、モータシャフトに対して回転運動可能であり、かつ/またはモータシャフトに取り付けられる。モータシャフト上の中空シャフトの軸受は好ましくは平軸受として実現することができる。中空シャフトは、ギヤ構成要素、好ましくはトルク伝達構成要素またはトルク変換構成要素、特にリングギヤ、遠心ブレーキの回転可動部および/または継手の回転可動部に回転不能に接続されることが好ましい。ギヤ構成要素、特にリングギヤ、特にプラネタリギヤとして設けられているギヤと、継手、および該当する場合には遠心ブレーキとの間のトルク伝達にモータシャフトを囲む中空シャフトを用いることで、回転部品の支持の安定性、すなわち作動動作中のモータシャフトの支持の安定性が向上し、安全作動機能が起動された場合には、中空シャフト上に取り付けられている継手、および該当する場合には遠心ブレーキをともなう中空シャフトの回転運動の安定性が向上する。
【0017】
先のものと組み合わせることができる本発明の電気アクチュエータの好ましい構成では、モータシャフトは電気モータのステータおよび/またはロータを少なくとも部分的に貫通して延び、モータシャフトは電気モータの両側で軸方向に回転可能に取り付けられることが好ましい。好ましくは、モータシャフトを軸方向に回転可能に支持するために電気モータの各側には1つのローラ軸受、特に1つの玉軸受が設けられる。電気モータからアクチュエータにトルクを伝達するのにモータシャフトとして特に長尺な特殊なシャフトを用いることにより、さらなる構成要素、特にクラッチを、電気モータと、アクチュエータまたはアクチュエータの上流に接続されるギヤユニット、たとえばプラネタリギヤユニットなどの減速ギヤユニットとの間に省スペース化するように配置するができる。好ましい電気アクチュエータ設計では、モータシャフトの少なくとも25%、少なくとも33%、少なくとも40%または少なくとも50%がモータの軸方向外側に延びる。先のものと組み合わせることができる本発明の電気アクチュエータの好ましい例では、モータシャフトの軸方向の長さは、電気モータの軸方向の長さよりも少なくとも25%、少なくとも33%、少なくとも40%または少なくとも50%長い。驚くべきことに、このような特別に長い特殊なシャフトを用いる場合、シャフトの安定性およびその回転運動の観点から、電気モータのハウジングに接続される静止部を有することが好ましい軸受を設けることが有効であることが分かった。毎分数百~千回転以上のきわめて高い速度がたとえば適切な同期モータまたはDCモータによって実現される場合があるので、軸受には玉軸受などの転がり軸受が特に適する。
【0018】
本発明は、化学プラント、たとえば石油化学プラントなどのプロセス技術プラント、食品加工工場、発電プラント、暖房設備、たとえば床暖房またはセントラルヒーティングなどのプロセス流体流を調節するバルブ部材などの作動要素を備える、安全制御機能を有する最終減速比制御装置と、上記のような電気アクチュエータとにも関する。特に、最終減速比制御装置は、バルブ部材の直線作動のために出力シャフトによって作動される偏心体を有してもよい。これの代わりに、最終減速比制御装置は、バルブ部材の直線作動のためにネジ付きスピンドルなどの出力シャフトによって作動させることができるスピンドル駆動体を有してもよい。
【0019】
本発明に係る最終減速比制御装置の好ましい構成は、最終減速比制御装置は、特に、継手および/または電気モータが無通電状態にされるときに、作動要素を安全位置に動かすバネ機構、特にロータリバネ機構を備えており、好ましくはバネ機構は出力シャフトおよび/またはモータシャフトと同軸に配置される。好ましくは、バネ機構を上述のギヤの両側に配置することができる。
【0020】
本発明に係る最終減速比制御装置の好ましい構成は、2つのハウジング半体を備える最終減速比制御装置ハウジングを有する。特に、本体シェルの第1の半体に本発明に係る完備状態の電気アクチュエータを入れることが好ましい。好ましくは、最終減速比制御装置のすべての動力接続部をハウジングシェルの第1の半体に設けてもよい。好ましくは、特にモータシャフトと同軸の出力偏心体、および必要な場合にはバネ機構をハウジングシェルの第2の半体に収容する。このような構成では、最終減速比制御装置は、駆動軸を定めるモータシャフトと、出力偏心体の回転軸を定める支持シャフトとを備え、出力偏心体の回転軸は駆動軸と同軸である。このような構成により、特に小型のアクチュエータを実現することができる。
【0021】
本発明に係る最終減速比制御装置の代替構成に係れば、アクチュエータと出力偏心体とは、偏心体の回転軸と駆動軸とが平行に配置される状態で設けられ、特に、同じハウジングシェル内に収容されてもよく、ハウジングシェルは分かれている複数の室を有して、一方で本発明に係るアクチュエータを受け入れ、他方で出力偏心体を受け入れることが好ましい。最終減速比制御装置の第2の代替構成では、偏心体の回転軸を決めるベアリング軸を最終減速比制御装置ハウジングに偏心体の両側で支持することができるので、特に安定した偏心体支持を実現することができ、これにより、特に、最終減速比制御駆動体の出力シャフトに偏心体の不均衡異常が伝わることが防止される。本発明に係る最終減速比制御装置の本代替構成では、スパーギヤなどの少なくとも1つのトルク伝達構成要素をアクチュエータの出力シャフトと出力偏心体との間に設けることができる。好ましくは、このようなスパーギヤは2段減速スパーギヤとして構成される。
【0022】
本発明に係る最終減速比制御装置の好ましい構成では、追加ギヤ、特にプラネタリギヤおよび/または減速ギヤ、好ましくは多段プラネタリギヤ、特に、駆動される1つ以上のサンギヤおよび/または駆動される1つ以上のプラネットギヤブリッジを有するプラネタリギヤを出力偏心体の上流に設けてもよい。最終減速比制御装置ハウジングを第2の代替例にしたがって実現する場合、ハウジングの偏心体室内に追加ギヤを配置することが好ましい。好ましくは、追加ギヤはプラネタリギヤ、特に多段、好ましくは2段のプラネタリギヤである。特に、アクチュエータの減速のためにいくつかのギヤユニットを用いることができ、すなわちアクチュエータのギヤユニットに加えて追加ギヤユニットを用いることができ、これにより、たとえば、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも2000、さらには少なくとも5000の高い全体減速比を実現することができ、好ましくは500~3000、特に1000~2000の高い全体減速比を実現することができる。
【0023】
本発明のさらなる利点、特徴および特性は、添付の図面に係る本発明の好ましい実施の形態の以下の説明によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】電気アクチュエータの典型的な実施の形態の断面図を示す。
図1a図1に係るアクチュエータの分解図を示す。
図2図1に係る発明に係るアクチュエータを有する本発明に係る最終減速比制御装置の第1の実施の形態を示す。
図3図1に係る発明に係るアクチュエータを有する本発明に係る第2の代替最終減速比制御装置の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1および図1aに示されている本発明に係るアクチュエータ1の好ましい構成は、主要構成要素として、モータシャフト21を有する電気モータ5と、出力シャフト3と、通電時にモータシャフト21から出力シャフト3へのトルク伝達接続を提供する電磁継手11とを備える。モータシャフト21と出力シャフト3とは互いに同軸に配置されている。それらのそれぞれの回転軸、すなわち共通の回転軸はモータ軸Aを規定する。
【0026】
電気モータ5の静止部に対してモータシャフト21を回転運動可能に取り付けるために、電気モータ5のハウジングのモータ軸Aの方向の両側に玉軸受23,25が取り付けられている。モータシャフト21は、電気モータ5の静止部を完全に貫通してギヤまで軸方向Aに延びている。図1に示されている本発明に係る1の好ましい構成では、ギヤはプラネタリギヤ7として実現され、ギヤ構成要素として、サンギヤ71、3つのプラネットギヤ76、リングギヤ75およびプラネットギヤブリッジ73を備える。プラネタリギヤ7のサンギヤ71はモータシャフト21に回転自在に固定し、ギヤ入力構成要素として機能する。モータ5によってモータシャフト21に加えられる駆動トルクは、プラネタリギヤ7を介して出力シャフト3に伝達され、そこからさらに図1に示されていない作動要素の方向に伝達されるために、サンギヤ71を介してプラネタリギヤ7に伝達される。
【0027】
アクチュエータ1の電磁継手11に通電すると、プラネタリギヤ7のリングギヤ75が停止する。プラネタリギヤ7のリングギヤ75は、中空シャフト27を介して電磁継手11の回転部12に接続されている。電磁継手11の通電状態では、電磁石10が電磁継手11の静止部15と可動部12との間で保持力を発生する。電磁継手11の静止部15および可動部12は軟磁性クローとして実現されている。静止部15としても理解されている静止部は、電気モータ5の静止部とアクチュエータのハウジング35とに回転不能に接続されている。アクチュエータハウジング35は、以下に示されているように、最終減速比制御装置ハウジング(135,135’)に回転自在に固定されるように、たとえばフランジ取り付けがされるように設計されている。アクチュエータハウジング35は、取り付け部またはアクチュエータフランジとも称する。電磁石10は電磁継手11の静止部15の一部である。継手11の電磁石10と電気モータ5との両方には、回転運動の必要のない静止している電力線によって電力を供給することができる。
【0028】
中空シャフト27はモータシャフト21を径方向に完全に囲む。中空シャフト27とモータシャフト21との間で滑り嵌めを行なうことができる。中空シャフト27上には遠心ブレーキ13が設けられ、軸方向Aにリングギヤ75と電磁クラッチ11の回転部12との間にある。遠心ブレーキ13は中空シャフト27に回転不能に接続されている。モータ軸Aの軸方向について径方向に、遠心ブレーキ13の周囲において、アクチュエータハウジング35にブレーキポット17が設けられており、これと遠心ブレーキ13とが摩擦接触して制動力を発生させることができる。遠心ブレーキ13は、互いに回転対称に配置されている2つのブレーキアームを備え、その径方向外側部分には、ウェイト、たとえば金属製、特に鉛製の円筒ピンを収容する凹部、たとえば孔が設けられている。好ましくはポット17はアクチュエータハウジング35に圧入され、取り付け部35に特に回転自在に固定して保持することができる。中空シャフト27を、径方向外側に配置された構成要素、すなわち、回転運動可能な継手部12、遠心ブレーキ13および/またはリングギヤ75と回転自在に固定して接続するのに、たとえば、スプラインシャフト接続、非円形接続、プレス接続、歯付きシャフト接続などを行なうことができる。
【0029】
図1および図1aに示されているアクチュエータ1のプラネタリギヤ7のリングギヤ75が静止するとき、これはハウジングおよび電気モータ5に対して電流制御クラッチ11によって静止状態に保たれるので、プラネットギヤ76はサンギヤ71の動きによって駆動されてリングギヤ75内で転動することができる。リングギヤ75およびプラネットギヤ76はトルク伝達ギヤ構成要素として機能する。プラネットギヤ76の転動運動によって、プラネットギヤ76を回転可能に支持するプラネットギヤブリッジ73も動かされる。図1aに示されているプラネットギヤブリッジ73は、2つの部分で構成されており、組み立てられると、プラネットギヤ76を保持するケージ構造を形成する。プラネットギヤブリッジ73の2つの半部は、スナップ嵌め込みまたはスナップ嵌め込み接続によって堅固に接続することができる。プラネットギヤブリッジ73はプラネットギヤ76を搭載するためのピンを有する。出力シャフト3はプラネットギヤキャリア73と一体的に設計され、外側にギヤ形状を有する。出力シャフト3はその歯車外形を介してプラネタリギヤ7の出力トルクを伝達することができる。プラネットギヤキャリア73によってギヤ出力構成要素すなわちトルク出力構成要素が実施される。
【0030】
アクチュエータ1の継手11を開く(図示の好ましい実施の形態では電磁継手11を無通電にすることによって実現することができる)と、継手11のロータリ部12は電磁継手11の静止部15と独立して動くことができる。電磁継手11は、回転クラッチ部12にいかなる保持力または制動力も及ぼさない。これにより、リングギヤ75を静止状態に保つ保持力もなくなる。リングギヤ75が継手11によって静止状態に保たれない場合、リングギヤ75は自由に回転することができる。リングギヤ75が自由に回転可能である場合、プラネタリギヤ76はリングギヤ75内で転動しない。継手11を非連結状態にすることにより、出力シャフト3の回転運動をプラネットギヤブリッジ73およびプラネットギヤ76を介して直接リングギヤ75に伝達することができる。継手11が切断されると、リングギヤ75は出力シャフト3とともに回転する。
【0031】
リングギヤ75が固定されない場合、サンギヤ71からプラネットギヤ76を介してプラネットギヤブリッジ73にまったくトルクが伝達されないか、極小のトルクしか伝達されない。リングギヤ75が遊動する場合、プラネットギヤ76はリングギヤ75内で遊動することができるので、サンギヤ71の動きによってプラネットギヤブリッジ73の回転運動はまったく生じないか、極小の回転運動しか生じない。
【0032】
モータから離れたギヤの側の出力シャフト3にたとえばアクチュエータリターンスプリングによってトルクが加えられる場合、このトルクは、継手11が切断されているときに電気モータ5の入力トルクによって出力シャフト3に抵抗なく(unhindered)加えることが可能である。ここに示されている電磁継手11の代わりに、モータシャフト21と出力シャフト3との間のトルク伝達接続を提供および/または遮断するのに異なるタイプのクラッチ、たとえば、摩擦クラッチ、クロークラッチなどを用いてもよいことは明らかである。
【0033】
アクチュエータ1の電気モータ5の寸法は、電流が印加されていないときであっても、電気モータ5による小トルクがモータシャフト21に作用するように設定することができることが好ましい。このような最小トルクは、たとえば、同期モータまたはDCモータとして構成されている電気モータによってその永久磁石を通じて提供することができる。仮に非通電状態であるのに継手が閉じられるとすれば、ギヤの高い伝達比および速度によるモータの最小トルクは、バネ機構による出力シャフト3の作動に抗してアクチュエータ1をセルフロックさせるのに十分であるおそれがある。このような安全上重大なセルフロックは、継手を非連結状態にしてトルク伝達接続を遮断することによって避けられる。
【0034】
継手11が開いている状態で駆動部から離れた側によるトルクによって出力シャフト3にトルクが加えられる場合、これにより、駆動部から離れたトルクの回転方向に出力シャフト3は加速する。出力シャフト3は、遠心ブレーキ13に回転自在に固定されるようにして接続されている回転リングギヤ75も回転させる。遠心ブレーキ13は、加速度依存型制動効果をもたらすように設計されている。遠心ブレーキ13の加速度が大きくなるほど、遠心ブレーキ13の遠心力を受けたブレーキアームは、遠心ブレーキ13の制動効果を高めるために、設計上設定可能な加速限界値でブレーキドラム17と滑り接触すなわち摩擦接触するまで一層径方向外方に動く。このようにして、大きい加速度による危険な急激な動きが遠心ブレーキ13によって防止される。
【0035】
図2および図3に示されている本発明に係る別のアクチュエータ101,102は各々、上述のようなアクチュエータ1を備える。説明の理解を容易にし、繰り返しを避けるために、同様または同一の構成要素については同様または類似の参照符号を以下で用いる。
【0036】
図2に係る最終減速比制御装置101は、その主要構成要素として、電気モータ5と、モータシャフト21と、出力シャフト3と、モータシャフト21と入力シャフト3との間のトルク伝達接続を提供するかつ/または断つ継手11とを有するアクチュエータ1を備える。
【0037】
さらなる主要構成要素として、図2に示されている最終減速比制御装置101は作動要素を備え、図2に制御バルブ113として単に概略的に示されている。最終減速比制御装置101の制御バルブ113は並進運動を行なうように設計されている。最終減速比制御装置101の制御バルブ113は、偏心体103を介して電気モータのトルクが供給される最終減速比制御装置101のプランジャ111によって作動する。偏心体103は、偏心体支持軸121まわりに回転することができるように取り付けられている。偏心体103は、180°未満、好ましくは135°未満、特に90°未満の最大回転運動振幅を特に実現するように設計されている。偏心体103の回転運動はプランジャ111を介して並進作動要素運動に変換される。
【0038】
偏心体103には回転バネ機構105が常設されて接続されている。バネ機構105は、制御バルブ113が所定のフェイルセーフ位置まで動かされるように偏心体103を動かすように設計されている。このフェイルセーフ位置は、たとえば、全開バルブ位置または全閉バルブ位置であってもよい。バネ機構105は、一方で偏心体ハウジング139によって支持され、他方で偏心体103に堅固に接続されているねじりバネを含む。所定の安全位置で所定の安全バネ力を十二分な状態に維持するようにバネ機構105を構成することができるので、特に安全閉位置で十分な閉止力が保証される。
【0039】
偏心体103は偏心体ハウジング139内に完全に収容されている。偏心体支持軸121はその軸方向で囲まれ、偏心体ハウジング139によって完全に囲まれている。バネ機構105は、その軸方向バネ高さに沿ってかつ周方向に偏心体ハウジング139によって完全に囲まれている。
【0040】
アクチュエータ1は、アクチュエータハウジング135によって囲まれている。モータシャフト21によって規定される駆動軸Aは、図2に係る好ましい構成では、偏心体支持軸121と偏心体支持軸121によって規定される偏心軸Eとに同軸に配置されている。偏心体103の回転軸Eはモータ軸Aと同軸に配置されている。駆動体ハウジング135と偏心体ハウジング139とは互いに同軸に向けられて端面で互いに締結され、たとえば互いに螺合されている。アクチュエータ1の出力シャフト3は、プラネタリギヤ7のプラネットギヤブリッジ73に一体的に接続されるギヤ状の延伸体であり、アクチュエータハウジング135から軸方向Aに突出することができる。
【0041】
アクチュエータ1の出力シャフト3は、トルクを伝達するのに、偏心体103に直接接続することも間接的に接続することもできる。図2に示されているような最終減速比制御装置101の好ましい例では、トルクは、2段プラネタリギヤとして実現されている追加ギヤ107を介して間接的に出力シャフト3から偏心体103に伝達される。相手方ギヤユニット107には、プラネタリギヤが転動する箇所である偏心体ハウジング(139)固定リングギヤが設けられている。出力シャフト3は、第2のギヤ段107の一番目のギヤ段のサンギヤとして機能する。偏心体支持軸121は偏心体ハウジング139から出力シャフト3内まで延びて、偏心体103および第2のギヤ段107を支持する。偏心体支持アクスル121には、中央のプラネットブリッジと、これと一体的に形成され、相手方ギヤユニット107の2つのプラネタリギヤ段を互いに接続するサンギヤとが回転可能にさらに取り付けられている。
【0042】
偏心体103は、追加ギヤ107の第2のプラネットギヤを回転可能に軸受するためのピンを有する。追加ギヤ107はさらなる減速部を有する。電気モータ5の入力トルクはアクチュエータ1のプラネタリギヤ7によって出力シャフト3での出力トルクに変換される。
【0043】
最終減速比制御装置の出力トルクは、追加ギヤ107に入力トルクとして作用し、追加ギヤ107によって偏心体103に加えられる出力トルクに変換され、この出力トルクで偏心体103はプランジャ111を作動させ、したがってバルブ部材113を作動させる。上述したように、継手11が閉じているときにのみ、アクチュエータ1の電気モータ5から最終減速比制御装置101の偏心体103にトルクが伝達される。継手11が開かれる場合、ここで説明されている好ましい構成では、たとえば、電磁継手11を無通電にして切り替えることで、静止クラッチ部15と回転クラッチ部12との間の電磁保持力をなくすことによって継手11が開かれる場合、回転クラッチ部12に接続されているアクチュエータ1のプラネタリギヤ7のリングギヤ75も、もはや静止せず、したがって、実質的に自由に回転することができる。その際、電気モータ5からのトルクは、サンギヤ71からプラネットギヤブリッジ73には事実上もはや伝達されなくなる。
【0044】
継手11が無通電状態にされて開かれると、バネ機構105はそのトルクを偏心体103に及ぼし続ける。このバネ荷重トルクにより、制御バルブ113は上述のように所定のフェイルセーフ位置に動く。偏心体103の回転軸Eまわりの偏心体103の回転運動により、追加ギヤ107の中空ギヤを支持する偏心体103のピンの運動が生じる。偏心体運動103の結果、追加ギヤ107の運動が生じ、それが出力シャフト3に伝達される。出力シャフト3は、上述のように、プラネタリギヤ7のプラネットギヤブリッジ73のギヤ状の延伸体として構成されており、その回転運動は、継手11が開くと、リングギヤ(75)運動に事実上完全に変換される。遠心ブレーキ13の制動効果は加速度閾値を超える十分に高い加速度で発生する。遠心ブレーキ13の制動トルクはプラネタリギヤ7を介して偏心体103に伝達されるが、その制動トルクは追加ギヤ107のプラネタリギヤ段によって変換され、その回転運動を制動する結果、バルブ部材113の直線運動を制動する。これにより、バルブ部材113が所定の安全位置(通常は閉位置)に急激に移動することが防止されるので、バルブ部材113の損傷が防止される。
【0045】
図3は、本発明に基づく最終減速比制御装置102の別の代替の好ましい構成を示す。最終減速比制御装置102と上述の最終減速比制御装置101との主な差は、アクチュエータ1の駆動軸Aが偏心体回転軸Eと平行に配置されている点である。駆動軸Aと偏心体回転軸Eとの間の径方向距離を埋めるために、出力シャフト3と偏心体回転軸Eとの間でトルクを伝達するように、スパーギヤ109が最終減速比制御装置102のハウジング137に取り付けられている。スパーギヤ109は、最終減速比制御装置102のハウジング137に取り付けられている。駆動軸Aと偏心体回転軸Eとの間の距離を埋める段付きスパーギヤ109に加えて、偏心体103の第2の追加ギヤ107’は、ハウジングに固定されている偏心体支持軸121’まわりに回転可能であるように偏心体回転軸Eと同軸に取り付けられている第2の段付きスパーギヤ119を備える。第2のギヤ107’は上述の最終減速比制御装置101の追加ギヤ107と同様に2段減速プラネタリギヤを備え、その入力段は段付きの第2のスパーギヤ119を形成する。
【0046】
最終減速比制御装置102のハウジングは実質的に2つのハウジング半体135’および137に分けられる。偏心体支持軸121’とモータシャフト21との軸方向延長部を比較すると、137ハウジングである第1の半体の軸方向延長部は、135’ハウジングである第2の半体のものよりもはるかに短い。137ハウジングである第1の半体はハウジングカバーとも称する場合がある。以下、135’ハウジングである第2の半体をハウジングシェルと称する。ハウジングシェル135’は互いに平行に配置されている2つの室を含み、電気モータ5、継手11、任意で用いられる(optional)遠心ブレーキ13および任意で用いられるギヤ7を有するアクチュエータ1が一室内に配置される。偏心体103、バネ機構105および追加ギヤ107のプラネタリギヤ段ならびに任意で用いられる第2のスパーギヤ119は135’ハウジングシェルの第2の室に収容される。偏心体支持シャフト121はその軸方向Eに延びて偏心体103を通って相手方ギヤユニット107’のプラネタリギヤ段を貫通する。支持アクスル121’はハウジング半体135’,137内でその両端で固定されている。
【0047】
プランジャ111および継手11ならびに遠心ブレーキ13のバネ機構105も考慮した偏心体103の機能は、図3に示されている最終減速比制御装置102の場合では、図2に示されている最終減速比制御装置101に関して上述されている機能に本質的に対応する。相手方ギヤユニット107,107’の2段プラネタリギヤも、双方の例で実質的に同様に機能する。
【0048】
双方の最終減速比制御装置101,102では、継手11と電気モータ5とは締結部35を介して回転自在に固定されるようにして互いに接続されている。この取り付け部35は、ハウジング135または135’の一方の半体内でアクチュエータ1を固定するのに用いることもできる。これのために、取り付け部35は、たとえば、最終減速比制御装置101または102のハウジング半体135,135’に取り付けるためのフランジとして構成することができる。
【0049】
上記の説明、図面および請求項で明らかにされている特徴は、その様々な形態の本発明の実現例に個々にまたは任意の組み合わせで関連してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 アクチュエータ
3 出力シャフト
5 電気モータ
7 プラネタリギヤ
10 電磁石
11 電磁クラッチ
12 回転継手部
13 遠心ブレーキ
15 静止継手部
17 ブレーキポット
21 モータシャフト
23,25 玉軸受
27 中空シャフト
35 アクチュエータハウジング
71 サンギヤ
73 プラネットギヤブリッジ
75 リングギヤ
76 プラネットギヤ
101,102 最終減速比制御装置
103 偏心体
105 バネ機構
107,107’ 追加ギヤ
109,119 スパーギヤ
111 プランジャ
113 制御バルブ
121,121’ 偏心体支持軸
135,135’ 駆動体ハウジング
137 ハウジングカバー
139 偏心体ハウジング
A モータ回転軸
E 偏心体回転軸
図1
図1a
図2
図3