(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】FAU型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法及びNOxの選択的触媒還元におけるその使用方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/24 20060101AFI20220228BHJP
B01J 29/14 20060101ALI20220228BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220228BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20220228BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
C01B39/24 ZAB
B01J29/14 A
B01D53/94 222
B01J20/18 D
F01N3/10 A
(21)【出願番号】P 2019504903
(86)(22)【出願日】2017-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2017069138
(87)【国際公開番号】W WO2018019983
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-10
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】トゥルカン,ナターリア
(72)【発明者】
【氏名】パンチェンコ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ウルリヒ
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05393511(US,A)
【文献】特表2009-519817(JP,A)
【文献】米国特許第05174977(US,A)
【文献】特表2002-528368(JP,A)
【文献】特表2005-516768(JP,A)
【文献】特表2012-500773(JP,A)
【文献】特開2014-155888(JP,A)
【文献】特開平06-292831(JP,A)
【文献】特開2006-219359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 - 39/54
B01J 21/00 - 38/74
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
YO
2及びX
2O
3を含むFAU型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法であって、以下の工程:
(a)1種以上のYO
2源、1種以上のX
2O
3源と、1種以上の構造規定剤(SDA)とを含む混合物を製造する工程、
(b)(a)で得られた前記混合物からの前記ゼオライト材料を結晶化する工程、を含み、
ここで、Yは四価元素であり、Xは三価元素であり、
前記1種以上の構造規定剤がジアミノメチルシクロヘキサンの1種以上の異性体を含む方法。
【請求項2】
Yが、Si、Sn、Ge、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Xが、Al、B、In、Ga、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ジアミノメチルシクロヘキサンの異性体が、65~95質量%の2,4-ジアミノメチルシクロヘキサン及び5~35質量%の2,6-ジアミノメチルシクロヘキサンを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(a)において製造される前記混合物が、1種以上の溶媒を含む溶媒系をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(a)において製造される前記混合物のモル比YO
2:ジアミノメチルシクロヘキサンが0.5~40の範囲にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
以下の工程;
(c)前記ゼオライト材料
を単離する工程、
及び/又は
(d)前記ゼオライト材料を1種以上の溶媒で洗浄する工程、
及び/又は
(e)(c)及び/又は(d)で得られた前記ゼオライト材料を乾燥させる工程、
及び/又は
(f)(c)、(d)、及び/又は(e)で得られた前記ゼオライト材料をか焼する工程のうちの1つ以上の工程をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(c)における前記ゼオライト材料の単離が濾過によりなされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
以下の工程:
(g)(c)、(d)、(e)又は(f)で得られた前記ゼオライト材料をイオン交換操作に付する工程であって、前記ゼオライト材料中に含有される少なくとも1種のイオン性非骨格元素又は化合物を1種以上の金属イオンについてイオン交換する工程をさらに含む、請求項7
または8に記載の方法。
【請求項10】
前記1種以上の金属イオンが、アルカリ土類金属元素及び/又は遷移金属元素のイオンからなる群から選択される請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、YO2及びX2O3を含むFAU型骨格構造を有する、特に選択的触媒還元のための、ゼオライト材料の製造方法、並びに本発明の方法に従って得ることができる及び/又は得られるFAU型骨格構造を有するゼオライト材料に関する。さらに、本発明は、本発明の方法により得ることができる及び/又は得られるFAU型骨格構造を有するゼオライト材料から、被覆基材及び成形体をそれぞれ製造する方法、並びに前述のゼオライト材料を用いて窒素酸化物NOxを選択的に還元する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子ふるいは、ゼオライトの命名法に関するIUPAC委員会の規則に従って、国際ゼオライト協会の構造委員会によって分類される。この分類によると、構造が確立されている、骨格型ゼオライト及び他の結晶微小孔性分子ふるいは、3文字のコードが割り当てられ、Atlas of Zeolite Framework Types,第5版、エルゼビア、20ロンドン、イギリス(2001年)に記載されている。
【0003】
これらのゼオライトのうち、FAU型骨格構造を有するゼオライト材料は、選択的触媒還元(SCR)、芳香族のアルキル化、及びブレンステッド/ルイス中心(Broensted/Lewis centers)によって触媒される他の反応のための重要な触媒となり得るので、特に興味深い。特に、金属含有FAUゼオライト材料は、排ガス中に含有される窒素酸化物(NOx)の選択的触媒還元の分野における使用方法が見出されている。
【0004】
FAU型骨格構造ゼオライトの製造については、H.Robson、Microporous Materials 22(1998)、551-666において、それらが溶媒としての脱イオン水中で、構造規定剤(SDA)、すなわち15-クラウン-5エーテルを用いて製造され得ることが見出されている。しかしながら、この方法は8日間の結晶化と高価なテンプレートを必要とする。それ故、この方法の実施並びにそこで使用されるSDAによってこの手順は長く高価となるので、工業的生産の規模には効率的ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Atlas of Zeolite Framework Types,第5版、エルゼビア、20ロンドン、イギリス(2001年)
【文献】H.Robson、Microporous Materials 22(1998)、551-666
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特に自動車の排ガス排出の分野において、NOx排出に対する排出規制がますます制限されていることを考慮すると、現在及び将来の要件及び規制を満たすために、新しい状態及び老化した状態の双方において活性であるより効率的な触媒材料の提供に対する継続的な必要性がある。従って、大規模な工業的生産に好適な一方で、非常に費用効果が高いFAU型骨格構造を有するゼオライト材料を製造するための、新規で改善された方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の目的は、FAU型骨格構造を有する、特に選択的触媒還元のためのゼオライト材料の、大規模な工業的生産に好適な一方で非常に費用効果が高い、改善された製造方法、及び前述の方法によって得ることができる及び/又は得られるFAU型骨格構造を有する改善されたゼオライト材料を提供することである。よって驚くべきことに、構造規定剤としてジアミノメチルシクロヘキサンの1種以上の異性体を使用することにより、改善されたFAU型ゼオライトが得られ得ることが見出された。さらに、全く予想外に、ジアミノメチルシクロヘキサンの1種以上の異性体の使用により、特に、安価な前駆体化合物から出発する本発明のゼオライト材料の簡便な合成を考慮して達成され得る費用効果における相当な高まりに関して、FAU型骨格構造を有するゼオライト材料の非常に改善された製造方法が示されることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の方法から得られ、実施例1に記載するNa-Yゼオライト生成物のX線回折パターンを示す。
【
図2】
図2は、本発明によらない、比較例2に記載のように得られたNa-Yゼオライト生成物のX線回折パターンを示す。
【
図3】
図3は、本発明によらない、比較例3に記載のように得られたNa-Yゼオライト生成物のX線回折パターンを示す。
【
図4】
図4は、実施例4に記載の成形体に成形した後に、実施例3による銅交換ゼオライト材料について行われた、NOx転化及びN
2O収率における触媒試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
従って、本発明は、YO2及びX2O3を含むFAU型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法であって、以下の工程:
(a)1種以上のYO2源、1種以上のX2O3源と、1種以上の構造規定剤(SDA)とを含む混合物を製造する工程、
(b)(a)で得られた混合物からのゼオライト材料を結晶化する工程、
を含み、
ここで、Yは四価元素であり、Xは三価元素であり、
その1種以上の構造規定剤がジアミノメチルシクロヘキサンの1種以上の異性体を含む方法に関する。
【0010】
よって驚くべきことに、構造規定剤として本発明の方法によるジアミノメチルシクロヘキサンの1種以上の異性体を使用することにより、費用効果が高い方法が提供され、前述の方法は、大規模な工業的生産にも好適であることが見出された。よって先行技術のゼオライト合成に使用される多数の費用集中的な構造規定剤と比較して、ジアミノメチルシクロヘキサンの異性体は非常に競争力のある価格を有する。
【0011】
1種以上のYO2源に関して、このYは四価元素を表し、本発明による好ましい四価元素は、Si、Sn、Ge並びにそれらの混合物を含む。本発明によれば、YがSiであることが特に好ましい。
本発明において、1種以上のYO2源が、ヒュームドシリカ、コロイドシリカ、シリカゲル、固体シリカ、ケイ酸ナトリウム、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。好ましくは、1種以上のYO2源はコロイドシリカを含む。本発明によれば、コロイドシリカが1種以上のYO2源として用いられることが特に好ましい。
【0012】
1種以上のX2O3源に関して、Xは三価元素を表し、本発明による好ましい三価元素は、Al、B、In、Ga、並びにそれらの2種以上の混合物を含む。本発明によれば、XがAl、B、並びにそれらの混合物を含むことが特に好ましく、XがAlであることがより好ましい。
【0013】
本発明において、1種以上のX2O3源は、アルミナ、アルミン酸塩、アルミニウム塩及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、好ましくはアルミナ、アルミン酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。より好ましくは、1種以上のX2O3源は、1種以上のアルミニウム塩、好ましくはアルカリ金属のアルミン酸塩及び/又は水酸化アルミニウム、好ましくは水酸化アルミニウムを含み、より好ましくは1種以上のX2O3源はアルカリ金属のアルミン酸塩及び/又は水酸化アルミニウムであり、好ましくはアルカリ金属のアルミン酸塩である。ここで、アルカリ金属は、好ましくはLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択され、より好ましくはアルカリ金属はNa及び/又はKであり、さらにより好ましくは、アルカリ金属はNaである。本発明によれば、アルミン酸ナトリウムを1種以上のX2O3源として用いることが特に好ましい。
【0014】
本発明の方法の(a)で提供されるジアミノメチルシクロヘキサンの1種以上の異性体に関しては、(a)で提供されるその種類及び/又は量が、(b)におけるFAU型骨格構造を有するゼオライト材料の結晶化を可能にするのであれば、その量に関して特に制限は無い。よって、本発明の方法の(a)で提供されるジアミノメチルシクロヘキサンの異性体は、65~95質量%の2,4-ジアミノメチルシクロヘキサン及び5~35質量%の2,6-ジアミノメチルシクロヘキサン、好ましくは70~90質量%の2,4-ジアミノメチルシクロヘキサン及び10~30質量%の2,6-ジアミノメチルシクロヘキサン、より好ましくは75~85質量%の2,4-ジアミノメチルシクロヘキサン及び15~25質量%の2,6-ジアミノメチルシクロヘキサンを含み、より好ましくは78~82質量%の2,4-ジアミノメチルシクロヘキサン及び18~22質量%の2,6-ジアミノメチルシクロヘキサンを含む。本発明によれば、ジアミノメチルシクロヘキサンの異性体が、80質量%の2,4-ジアミノメチルシクロヘキサン及び20質量%の2,6-ジアミノメチルシクロヘキサンを含むことが特に好ましい。
【0015】
本発明による(a)において、混合物は任意の考えられる手段によって製造することができ、ここで振とう(agitation)による混合、好ましくは撹拌(stirring)の手段による混合が好ましい。
【0016】
本発明の方法において、(a)で提供される混合物が、1種以上の溶媒を含む溶媒系をさらに含むことが好ましい。本発明の方法によれば、1種以上の溶媒の種類及び/又は数も、本発明の方法において使用され得る量に関しても、何であれ、FAU型骨格構造を有するゼオライト材料が(b)において結晶化され得るのであれば、特に制限は無い。しかしながら、本発明の方法によれば、1種以上の溶媒は、極性プロトン性溶媒及びその混合物からなる群から選択され、さらに好ましくはn-ブタノール、イソプロパノール、プロパノール、エタノール、メタノール、水及びそれらの混合物からなる群から、より好ましくはエタノール、メタノール、水及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましく、ここでより好ましくは、溶媒系は水を含む。本発明の方法によれば、溶媒系として水を使用することが特に好ましく、脱イオン水を溶媒系として使用することがさらにより好ましい。
【0017】
溶媒系が(a)で好ましく提供される本発明の方法に関して、溶媒系が使用され得る量、又は溶媒系の種類に関して特に制限は無いが、水が特に好ましく、脱イオン水がさらにより好ましい。よって例えば、(a)で提供される溶媒系の量に対して、(a)で製造される混合物のモル比H2O:YO2は、1~25、好ましくは4~20、より好ましくは6~18、より好ましくは8~17、より好ましくは10~16、さらに好ましくは12~14の範囲にあり得る。
【0018】
1種以上のX2O3源が(a)で提供される本発明の方法に関して、1種以上のX2O3源の種類に関しても、それが使用される量に関しても、本発明によれば特に制限は適用されない。よって例えば、(a)の混合物中に提供される1種以上のX2O3源の量に対して、混合物のYO2:X2O3モル比は、0.5~4、好ましくは2~14、好ましくは4~12、好ましくは6~10、好ましくは7~9の範囲にあり得る。本発明によれば、(a)で提供される混合物のYO2:X2O3モル比は、7.5~8.5の範囲に含まれることが特に好ましい。
【0019】
本発明によれば、本発明の方法の(a)の混合物中に提供され得るジアミノメチルシクロヘキサンの1種以上の異性体の量に関して、FAU型骨格構造を有するゼオライト材料を(b)で結晶化することが可能であれば、制限は無い。よって例えば、(a)で提供されるジアミノメチルシクロヘキサンの1種以上の異性体の量に対して、(a)で製造される混合物のYO2:ジアミノメチルシクロヘキサンのモル比は、0.5~40、好ましくは2~20、好ましくは3~14、好ましくは4~12、好ましくは5~10、好ましくは6~8の範囲にあり得る。本発明によれば、(a)で提供される混合物のYO2:ジアミノメチルシクロヘキサンのモル比は、6.5~7.5の範囲に含まれることが特に好ましい。
【0020】
(b)における結晶化の温度及び/又は期間に関して、(a)で得られる混合物が効果的に結晶化され得るのであれば、好適な温度及び/又は期間が選択され得るように、特に制限は適用されない。よって例えば、(b)における結晶化は、50~250℃、好ましくは60~200℃、より好ましくは70~150℃、より好ましくは90~130℃、より好ましくは100~120℃の範囲の温度で行い得る。しかしながら、本発明の方法によれば、(b)における結晶化が105~115℃の範囲の温度で行われることが特に好ましい。さらに、例えば、(b)における結晶化は、6~120時間の期間、好ましくは12時間~84時間の期間、好ましくは24時間~72時間の期間、好ましくは30時間~66時間、好ましくは36時間~60時間、好ましくは42時間~54時間、好ましくは46時間~50時間で行うことが特に好ましい。しかしながら、本発明の方法によれば、(b)における結晶化を47時間~49時間の期間、好ましくは48時間で行うことが特に好ましい。
【0021】
さらに、本発明の方法は、以下の工程;
(c)ゼオライト材料を、好ましくは濾過により単離する工程、
及び/又は
(d)250μS/cm3より低い電気伝導率を好ましくは得るために、ゼオライト材料を1種以上の溶媒で洗浄する工程であって、好ましくは前述の1種以上の溶媒が水を含み、より好ましくはゼオライト材料を脱イオン水で洗浄する工程、
及び/又は
(e)(c)及び/又は(d)で得られたゼオライト材料を乾燥させる工程、
及び/又は
(f)(c)、(d)、及び/又は(e)で得られたゼオライト材料をか焼する工程
のうちの1つ以上をさらに含むことが好ましく、ここで、互いに独立して、(c)、(d)、(e)、及び/又は(f)を、好ましくは1回以上繰り返す。
【0022】
(e)における乾燥の温度及び/又は期間に関して、(c)及び/又は(d)で得られる混合物が効果的に乾燥され得るのであれば、好適な温度及び/又は期間が選択され得るように、特に制限は適用されない。よって例えば、(e)における乾燥は、90~150℃の、好ましくは100~140℃の、より好ましくは110~130℃の範囲の温度で行う。しかしながら、本発明の方法によれば、(e)における乾燥を115~125℃の範囲の温度で行うことが特に好ましい。
【0023】
(c)、(d)及び/又は(e)で得られる混合物が効果的にか焼され得るのであれば、原則として任意の好適な温度及び/又は期間が選択され得るように、(f)におけるか焼に関しても同じことが適用される。よって例えば、(f)におけるか焼は、400~700℃の範囲、好ましくは430~650℃の範囲、より好ましくは460~620℃の範囲、より好ましくは490~590℃の範囲の温度で行う。しかしながら、本発明の方法によれば、(f)におけるか焼は、520~560℃の範囲、より好ましくは530~550℃の範囲の温度で行うことが特に好ましい。よって例えば、(f)におけるか焼は、2時間~12時間、好ましくは4時間~8時間、好ましくは5時間~7時間の期間で行う。しかしながら本発明の方法によれば、(f)におけるか焼を5.5時間~6.5時間の期間、より好ましくは6時間で行うことが特に好ましい。
【0024】
さらに、本発明の方法は、以下の工程:
(g)(c)、(d)、(e)又は(f)で得られたゼオライト材料をイオン交換手順に付する工程であって、ゼオライト材料に含有される少なくとも1種のイオン性非骨格元素又は化合物が1種以上の金属イオンに対してイオン交換される工程
をさらに含むことが好ましい。
【0025】
さらに、本発明の方法の(g)は、
(g.i)(c)、(d)、(e)又は(f)で得られたゼオライト材料をイオン交換手順に付する工程であって、ゼオライト材料中に含有される少なくとも1種のイオン性非骨格元素又は化合物がNH4
+に対してイオン交換される工程、
(g.ii)(g.i)で得られたイオン交換ゼオライト材料をか焼してゼオライト材料のH形を得る工程、
(g.iii)(g.ii)で得られたゼオライト材料をイオン交換手順に付する工程であって、イオン性非骨格元素としてゼオライト材料中に含まれるH+が1種以上の金属イオンに対してイオン交換される工程
を含むことが好ましい。
【0026】
(g)におけるイオン交換手順に関して、1種以上の金属イオンは、アルカリ土類金属元素及び/又は遷移金属元素のイオンからなる群から、より好ましくは元素周期表の第4族及び第6~11族からなる群から、好ましくは第4族及び第8~11族から選択される。より好ましくは、1種以上の金属イオンは、Mg、Ti、Cu、Co、Cr、Ni、Fe、Mo、Mn、Ru、Rh、Pd、Ag、Os、Ir、Pt、Au、及びそれらの2種以上の混合物のイオンからなる群から、より好ましくは、Ti、Cu、Fe、Rh、Pd、Pt、及びそれらの2種以上の混合物のイオンからなる群から選択され、より好ましくはゼオライト材料中に含有される少なくとも1種のイオン性非骨格元素又は化合物は、Cu及び/又はFeに対してイオン交換される。しかしながら、本発明の方法によれば、ゼオライト材料がCuに対してイオン交換されることが特に好ましい。
【0027】
本発明によれば、(g)においてイオン交換されたゼオライト材料が、ゼオライト材料中に含有されるYO2の100質量%に対して元素として計算して、0.1~15質量%の、好ましくは0.5~25質量%の、より好ましくは1~20質量%の、より好ましくは3~17質量%の、より好ましくは5~15質量%の、より好ましくは7~13質量%の、より好ましくは8~12質量%の、より好ましくは9~11質量%の範囲で、ゼオライト材料中に1種以上の金属イオンを含むようなものであることが好ましい。本発明によれば、(g)において、ゼオライト材料が、ゼオライト材料中に1種以上の金属イオンを9.5~10.5質量%の範囲で含むようなものであることが特に好ましく、ゼオライト材料中にCuを9.5~10.5質量%の範囲で含むようなものであることがさらにより好ましい。
【0028】
さらに、本発明は、本発明の方法によって得ることができる及び/又は得られるYO2及びX2O3を含むFAU型骨格構造を有するゼオライト材料に関し、Yは4価元素であり、Xは3価元素である。
【0029】
本発明の方法によって得られる及び/又は得ることができるFAU型骨格構造を有するゼオライト材料は、9.5~10.5質量%の範囲の1種以上の金属を含むことが好ましく、9.5~10.5質量%の範囲のCuを含むことがさらにより好ましい。
【0030】
本発明によるFAU型骨格構造を有するゼオライト材料は、フォージャサイト、[Al-Ge-O]-FAU、[Co-Al-PO]-FAU、[Ga-Al-Si-O]-FAU、[Ga-Ge-O]-FAU、[Ga-Si-O]-FAU、ベリロホスフェートX、脱水Na-X、脱水US-Y、LZ-210、Li-LSX、SAPO-37、ケイ質Na-Y、ゼオライトX(リンデX)、ゼオライトY(リンデY)、リン酸亜鉛X(zincophosphate X)、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択されることが好ましく、好ましくはフォージャサイト、[Al-Ge-O]-FAU、[Co-Al-P-O]-FAU、[Ga-Al-Si-O]-FAU、[Ga-Si-O]-FAU、Li-LSX、SAPO-37、ゼオライトX(リンデX)、ゼオライトY(リンデY)、リン酸亜鉛X、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、さらにより好ましくは[Co-Al-P-O]-FAU、[Ga-Al-Si-O]-FAU、[Ga-Si-O]-FAU、Li-LSX、SAPO-37、ゼオライトX(リンデX)、ゼオライトY(リンデY)、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。本発明によるFAU型骨格構造を有するゼオライト材料がゼオライトX(リンデX)、ゼオライトY(リンデY)及びそれらの混合物から選択されることが特に好ましく、FAU型骨格構造を有するゼオライト材料がゼオライトY(リンデY)であることがより好ましい。
【0031】
FAU型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法、及び前述の方法により得ることができる及び/又は得られるゼオライト材料に加え、本発明はさらに、以下の工程:
(1)溶媒系と、本発明によるFAU型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法から得ることができる及び/又は得られるゼオライト材料とを含む混合物を製造する工程であって、ゼオライト材料をイオン交換する工程、
(1.a)(1)で得られた混合物を均質化する工程、
(1.b)支持基材を提供する工程、
(1.c)(1.b)で提供された支持基材を、(1.a)で得られた均質な混合物で被覆する工程、
(1.d)(1.c)で得られた被覆支持基材を任意に乾燥させる工程、
(2)(1.c)又は(1.d)で得られた被覆支持体をか焼する工程、
を含む、被覆基材の製造方法に関する。
【0032】
本発明によれば、(1)における混合物は、ゼオライト材料と溶媒系との均質な混合物が得られるのであれば、任意の好適なやり方で製造し得る。よって、本発明によれば、(1)における混合物の製造は、撹拌、混練、振とう、振動又はそれらの2種以上の組み合わせによって、好ましくは撹拌及び/又は振とうによって、より好ましくは撹拌によって、混合物を均質化することを含む。
【0033】
(1.d)における任意の乾燥の温度及び/又は期間に関して、(1.c)で得られる混合物がある程度まで乾燥され得るのであれば、好適な温度及び/又は期間が選択され得るように、特に制限は適用されない。よって例えば、(1.d)における乾燥は、50~220℃の範囲、好ましくは70~180℃の範囲、より好ましくは80~150℃、より好ましくは90~130℃、より好ましくは100~125℃、より好ましくは110~120℃の温度で行い得る。それとは無関係に、(1.d)における任意の乾燥の期間は1~7時間の範囲であってよく、ここで前述の乾燥は4~6時間の範囲の、より好ましくは4.5~5.5時間の範囲の期間で行うことが好ましい。
【0034】
被覆支持基材が効果的にか焼され得るのであれば、(2)におけるか焼について原則として任意の好適な温度及び/又は期間が選択され得るように、(1.c)又は(1.d)で得られる被覆支持基材の(2)におけるか焼に関しても同じことが適用される。よって例えば、(1.c)又は(1.d)で得られる被覆支持基材の(2)におけるか焼は、300~750℃の範囲で行い得る。好ましくは、(2)におけるか焼は、325~650℃、より好ましくは350~600℃、より好ましくは375~550℃、より好ましくは400~500℃の範囲の温度で行う。しかしながら本発明の方法によれば、(2)におけるか焼を425~475℃の範囲の温度で行うことが特に好ましい。それとは無関係に、(1.c)又は(1.d)で得られる被覆支持基材の(2)におけるか焼の期間は、選択されたか焼温度で被覆支持基材が効果的にか焼され得るのであれば、やはりいずれにしろ制限は無い。よって例えば、(1.c)又は(1.d)で得られる被覆支持基材の(2)におけるか焼は、3~7時間の範囲のいずれかの温度で行い得、好ましくは、被覆支持基材の(2)におけるか焼の期間は4~6時間の範囲である。本発明の方法によれば、(2)におけるか焼は、4.5~5.5時間の範囲の期間、より好ましくは5時間の期間で行うことが特に好ましい。
【0035】
本発明によれば、(1.c)における被覆は、好ましくはスプレーコーティング及び/又はウォッシュコーティング、好ましくはウォッシュコーティングによって行う。
【0036】
さらに、(1.c)における被覆は、1回以上、好ましくは1~5回、より好ましくは1~4回、より好ましくは1~3回、より好ましくは1回又は2回、より好ましくは1回繰り返すことが好ましい。
【0037】
被覆基材を製造するための本発明の方法によれば、(1.b)で提供される支持基材は、顆粒、ペレット、メッシュ、リング、球、円柱、中空円柱、モノリス及びそれらの2種以上の混合物及び/又は組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、支持基材はモノリス、より好ましくはハニカムモノリスであり、そのハニカムモノリスは好ましくはウォールフローモノリス又はフロースルーモノリスである。本発明によれば、(1.b)で提供される支持基材がウォールフローモノリスであることが特に好ましい。
【0038】
本発明によれば、(1.b)で提供される支持基材は、セラミック及び/又は金属物質、好ましくはセラミック物質、より好ましくはアルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、コージエライト、ムライト、ジルコニウム、スピネル、マグネシア、チタニア及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはアルミナ、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、コージエライト及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはAl2TiO5、SiC、コージエライト、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1種以上のセラミック物質を含むことが好ましい。より好ましくは、支持基材はSiCを含む。さらに、(1.b)で提供される支持基材がSiCからなることが特に好ましい。
【0039】
本発明はさらに、以下の工程:
(1)溶媒系と、本発明によるFAU型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法から得ることができる及び/又は得られるゼオライト材料とを含む混合物を製造する工程であって、ゼオライト材料をイオン交換する工程、
(1.A)(1)で得られた混合物に耐火性支持材料を添加し、任意にペースト化剤を添加する工程、
(1.B)(1.A)で得られた混合物を均質化する工程、
(1.C)(1.B)で得られた混合物を成形する工程、
(2’)(1.C)で得られた成形混合物をか焼する工程
を含む、成形体の製造方法に関する。
【0040】
(1.A)で使用する耐火性支持材料に関しては、支持材料の種類に関しても前述の支持材料の量に関しても特に制限は無い。よって例えば、耐火性支持材料は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択し得る。本発明によれば、耐火性支持材料はアルミナ、さらにより好ましくはガンマアルミナであることが特に好ましい。
【0041】
(1.C)における成形は、押出により行うことが好ましい。
【0042】
さらに、本発明の成形体の製造方法は、(1)において、
(1.D)(1.C)で得られた混合物を、(2’)におけるそのか焼の前に乾燥させる工程を、さらに含む。
【0043】
(1.d)における乾燥の温度及び/又は期間に関して、(1.C)で得られる混合物がある程度まで乾燥され得るのであれば、好適な温度及び/又は期間が選択され得るように、特に制限は適用されない。よって例えば、(1.D)における乾燥は、80~160℃の範囲、好ましくは100~140℃の範囲の温度で行い得る。本発明によれば、(1.D)における乾燥を、110~130℃の範囲、好ましくは120℃で行うことがさらに好ましい。それとは無関係に、(1.D)における任意の乾燥の期間は1~7時間の期間、好ましくは4~6時間の期間、より好ましくは4.5~5.5時間の期間で行い得る。
【0044】
混合物が効果的にか焼され得るのであれば、(2’)におけるか焼について原則として任意の好適な温度及び/又は期間が選択され得るように、(1.C)又は(1.D)で得られる混合物の(2’)におけるか焼に関しても同じことが適用される。よって例えば、(1.C)又は(1.D)で得られる混合物の(2’)におけるか焼は、250~700℃の範囲、好ましくは400~600℃の範囲、より好ましくは450~590℃の範囲の温度で行い得る。(1.C)又は(1.D)で得られる混合物の(2’)におけるか焼は、520~560℃の範囲、より好ましくは530~550℃の範囲の温度で、さらにより好ましくは540℃で行うことが特に好ましい。それとは無関係に、選択されたか焼温度で混合物が効果的にか焼され得るのであれば、(1.C)又は(1.D)で得られる混合物の(2’)におけるか焼の期間も、やはりいずれにしろ制限は無い。よって例えば、(1.C)又は(1.D)で得られる混合物の(2’)におけるか焼は、1~8時間の期間、好ましくは3~7時間の期間、より好ましくは4~6時間行い得る。本発明の方法によれば、(2’)におけるか焼は、4.5~5.5時間の範囲の期間、より好ましくは5時間の期間で行うことが特に好ましい。
【0045】
本発明の方法において、(1)で提供される溶媒系が、1種以上の溶媒を含むことが好ましい。本発明の方法によれば、1種以上の溶媒の種類及び/又は数も、本発明の方法において使用され得る量に関しても、何であれ、特に制限は無い。しかしながら、本発明の方法によれば、1種以上の溶媒が、極性プロトン性溶媒及びその混合物からなる群から選択され、より好ましくはn-ブタノール、イソプロパノール、プロパノール、エタノール、メタノール、水及びそれらの混合物からなる群から、より好ましくはエタノール、メタノール、水及びそれらの混合物からなる群から選択され、さらにより好ましくは溶媒系が水を含むことが好ましい。本発明の方法によれば、溶媒系として水を使用することが特に好ましく、好ましくは脱イオン水を使用する。
【0046】
FAU型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法、及び本発明により得られる及び/又は得ることができるゼオライト材料から被覆基材と成形体を製造する方法のそれぞれに加え、本発明はさらに、窒素酸化物NOxを選択的に還元する方法であって、NOxを含有するガス流を、本発明の方法から得ることができる及び/又は得られるゼオライト材料と接触させることを含む方法に関し、この方法において、ゼオライト材料中に含有される少なくとも1種のイオン性非骨格元素又は化合物は、Cu及び/又はFeに対してイオン交換される。
【0047】
NOxを含有するガス流は1種以上の還元剤をさらに含み、1種以上の還元剤は好ましくは尿素及び/又はアンモニアを含むことが好ましい。本発明によれば、1種以上の還元剤がアンモニアを含むことが特に好ましい。
【0048】
さらに、ガス流は1種以上のNOx含有排ガス、好ましくは1種以上の工業プロセスからの1種以上のNOx含有排ガスを含むことが好ましく、より好ましくはNOx含有排ガス流は、アジピン酸、硝酸、ヒドロキシルアミン誘導体、カプロラクタム、グリオキサール、メチル-グリオキサール、グリオキシル酸を製造するプロセスにおいて、又は窒素含有材料(nitrogeneous material)を燃焼するプロセスにおいて得られる1種以上の排ガス流(前述のプロセスの2つ以上からの排ガス流の混合物を含む)を含む。
【0049】
本発明の方法によれば、ガス流が、内燃機関からの、好ましくは希薄燃焼条件下で作動する内燃機関からの、より好ましくは希薄燃焼ガソリン機関又はディーゼル機関からのNOx含有排ガス流を含むことが好ましい。
【0050】
最後に、本発明はまた、本発明によるFAU型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法から得ることができる及び/又は得られるゼオライト材料の、分子ふるいとしての、吸着剤としての、イオン交換のための、触媒及び/又は触媒担体としての、好ましくは触媒及び/又は触媒担体としての、より好ましくは排ガス中のNOxの選択的触媒還元(SCR)のための触媒及び/又は触媒担体としての、あるいは芳香族のアルキル化のための触媒としての、より好ましくはNOxを選択的に還元するための触媒及び/又は触媒担体としての、使用方法に関する。
【0051】
本発明はさらに、下記記載(各記載事項の組合せ及び実施形態(それぞれの項の引用を含む)、特に好ましい実施形態によって特徴付けられる。
【0052】
1.YO2及びX2O3を含むFAU型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法であって、以下の工程:
(a)1種以上のYO2源、1種以上のX2O3源と、1種以上の構造規定剤(SDA)とを含む混合物を製造する工程、
(b)(a)で得られた前記混合物からの前記ゼオライト材料を結晶化する工程、
を含み、
ここで、Yは四価元素であり、Xは三価元素であり、
前記1種以上の構造規定剤がジアミノメチルシクロヘキサンの1種以上の異性体を含む方法。
【0053】
2.Yが、Si、Sn、Ge、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、好ましくはYがSiである、実施形態1に記載の方法。
【0054】
3.前記1種以上のYO2源が、ヒュームドシリカ、コロイドシリカ、シリカゲル、固体シリカ、ケイ酸ナトリウム、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含み、好ましくは、前記1種以上のYO2源はコロイドシリカを含み、より好ましくは、コロイドシリカが前記YO2源として用いられる、実施形態1又は2に記載の方法。
【0055】
4.Xが、Al、B、In、Ga及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、好ましくはAl、B及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはXがAlである、実施形態1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0056】
5.前記1種以上のX2O3源が、アルミナ、アルミン酸塩、アルミニウム塩及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、好ましくはアルミナ、アルミン酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含み、より好ましくは、前記1種以上のX2O3源が、1種以上のアルミニウム塩、好ましくはアルカリ金属のアルミン酸塩及び/又は水酸化アルミニウム、好ましくは水酸化アルミニウムを含み、より好ましくは前記1種以上のX2O3源はアルカリ金属のアルミン酸塩及び/又は水酸化アルミニウムであり、好ましくはアルカリ金属のアルミン酸塩であり、ここで、アルカリ金属は、好ましくはLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択され、より好ましくはアルカリ金属はNa及び/又はKであり、さらにより好ましくは、アルカリ金属はNaである、実施形態1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
6.前記ジアミノメチルシクロヘキサンの異性体が、65~95質量%の2,4-ジアミノメチルシクロヘキサン及び5~35質量%の2,6-ジアミノメチルシクロヘキサン、好ましくは70~90質量%の2,4-ジアミノメチルシクロヘキサン及び10~30質量%の2,6-ジアミノメチルシクロヘキサン、より好ましくは75~85質量%の2,4-ジアミノメチルシクロヘキサン及び15~25質量%の2,6-ジアミノメチルシクロヘキサンを含み、より好ましくは78~82質量%の2,4-ジアミノメチルシクロヘキサン及び18~22質量%の2,6-ジアミノメチルシクロヘキサンを含む、実施形態1から5のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
7.(a)において製造される前記混合物が、1種以上の溶媒を含む溶媒系をさらに含み、前記溶媒系が、極性プロトン性溶媒及びその混合物からなる群から、
さらに好ましくはn-ブタノール、イソプロパノール、プロパノール、エタノール、メタノール、水及びそれらの混合物からなる群から、
より好ましくはエタノール、メタノール、水及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の溶媒を含むことが好ましく、
より好ましくは、前記溶媒系は水を含み、より好ましくは前記溶媒系として水を、好ましくは脱イオン水を使用する、実施形態1から6のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
8.(a)において製造される前記混合物のモル比H2O:YO2が、1~25、好ましくは4~20、より好ましくは6~18、より好ましくは8~17、より好ましくは10~16、及びさらに好ましくは12~14の範囲にある、実施形態8に記載の方法。
【0060】
9.(a)において製造される前記混合物のモル比YO2:X2O3が、0.5~40、好ましくは2~14、好ましくは4~12、好ましくは6~10、好ましくは7~9、好ましくは7.5~8.5の範囲にある、実施形態1から8のいずれか一項に記載の方法。
【0061】
10.(a)において製造される前記混合物のモル比YO2:ジアミノメチルシクロヘキサンが、0.5~40、好ましくは2~20、好ましくは3~14、好ましくは4~12、好ましくは5~10、好ましくは6~8、好ましくは6.5~7.5の範囲にある、実施形態1から9のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
11.(b)における結晶化が、50~250℃、好ましくは60~200℃、より好ましくは70~150℃、より好ましくは90~130℃、より好ましくは100~120℃、より好ましくは105~115℃の範囲の温度での前記混合物の加熱を伴う、実施形態1から10のいずれか一項に記載の方法。
【0063】
12.(b)における結晶化が、6~120時間の期間、好ましくは12時間~84時間の期間、好ましくは24時間~72時間の期間、好ましくは30時間~66時間、好ましくは36時間~60時間、好ましくは42時間~54時間、好ましくは46時間~50時間での前記混合物の加熱を伴う、実施形態11に記載の方法。
【0064】
13.以下の工程;
(c)前記ゼオライト材料を、好ましくは濾過により単離する工程、
及び/又は
(d)250μS/cm3より低い電気伝導率を好ましくは得るために、前記ゼオライト材料を1種以上の溶媒で洗浄する工程であって、好ましくは前述の1種以上の溶媒が水を含み、より好ましくは前記ゼオライト材料を脱イオン水で洗浄する工程、
及び/又は
(e)(c)及び/又は(d)で得られた前記ゼオライト材料を乾燥させる工程、
及び/又は
(f)(c)、(d)、及び/又は(e)で得られた前記ゼオライト材料をか焼する工程
のうちの1つ以上をさらに含み、ここで、互いに独立して、(c)、(d)、(e)、及び/又は(f)を好ましくは1回以上繰り返す、実施形態1から12のいずれか一項に記載の方法。
【0065】
14.e)における乾燥を、90~150℃、好ましくは100~140℃、より好ましくは110~130℃、より好ましくは115~125℃の範囲の温度で行う、実施形態13に記載の方法。
【0066】
15.(f)におけるか焼を、400~700℃の範囲、好ましくは430~650℃の範囲、より好ましくは460~620℃の範囲、より好ましくは490~590℃の範囲、より好ましくは520~560℃の範囲の温度で行う、実施形態13又は14のいずれか一項に記載の方法。
【0067】
16.(f)におけるか焼を、2時間~12時間、好ましくは4時間~8時間、好ましくは5時間~7時間、好ましくは5.5時間~6.5時間の期間で行う、実施形態13から15のいずれか一項に記載の方法。
【0068】
17.以下の工程:
(g)(c)、(d)、(e)又は(f)で得られた前記ゼオライト材料をイオン交換手順に付する工程であって、前記ゼオライト材料中に含有される少なくとも1種のイオン性非骨格元素又は化合物が1種以上の金属イオンに対してイオン交換される工程
をさらに含む、実施形態13から16のいずれか一項に記載の方法。
【0069】
18.前記ゼオライト材料をイオン交換手順に付する工程(g)が、以下の工程、
(g.i)(c)、(d)、(e)又は(f)で得られた前記ゼオライト材料をイオン交換手順に付する工程であって、前記ゼオライト材料中に含有される少なくとも1種のイオン性非骨格元素又は化合物がNH4
+に対してイオン交換される工程、
(g.ii)(g.i)で得られた前記イオン交換ゼオライト材料をか焼して前記ゼオライト材料のH形を得る工程、
(g.iii)(g.ii)で得られた前記ゼオライト材料をイオン交換手順に付する工程であって、イオン性非骨格元素として前記ゼオライト材料中に含まれるH+が1種以上の金属イオンに対してイオン交換される工程
をさらに含む、実施形態17に記載の方法。
【0070】
19.前記1種以上の金属イオンが、アルカリ土類金属元素及び/又は遷移金属元素のイオンからなる群から、より好ましくは元素周期表の第4族及び第6~11族、好ましくは第4族及び第8~11族から選択される金属のイオンからなる群から選択され、より好ましくは、前記1種以上の金属イオンは、Mg、Ti、Cu、Co、Cr、Ni、Fe、Mo、Mn、Ru、Rh、Pd、Ag、Os、Ir、Pt、Au、及びそれらの2種以上の混合物のイオンからなる群から、より好ましくは、Ti、Cu、Fe、Rh、Pd、Pt、及びそれらの2種以上の混合物のイオンからなる群から選択され、より好ましくは前記ゼオライト材料中に含有される少なくとも1種のイオン性非骨格元素又は化合物をCu及び/又はFeについてイオン交換し、好ましくはCuについてイオン交換する、実施形態17又は18に記載の方法。
【0071】
20.(g)においてイオン交換された前記ゼオライト材料が、前記ゼオライト材料中に含有されるYO2の100質量%に対して元素として計算して、0.1~15質量%の、好ましくは0.5~25質量%の、より好ましくは1~20質量%の、より好ましくは3~17質量%の、より好ましくは5~15質量%の、より好ましくは7~13質量%の、より好ましくは8~12質量%の、より好ましくは9~11質量%の、より好ましくは9.5~10.5質量%の範囲で、前記ゼオライト材料中に1種以上の金属イオンを含むようなものである、実施形態17から19のいずれか一項に記載の方法。
【0072】
21.実施形態1から20のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる及び/又は得られるYO2及びX2O3を含むFAU型骨格構造を有するゼオライト材料であって、Yは4価元素であり、Xは3価元素であるゼオライト材料。
【0073】
22.以下の工程:
(1)溶媒系と、本発明によるFAU型骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法から得ることができる及び/又は得られるゼオライト材料とを含む混合物を製造する工程であって、ゼオライト材料をイオン交換する工程、
(1.a)(1)で得られた前記混合物を均質化する工程、
(1.b)支持基材を提供する工程、
(1.c)(1.b)で提供された前記支持基材を、(1.a)で得られた前記均質な混合物で被覆する工程、
(1.d)(1.c)で得られた前記被覆支持基材を任意に乾燥させる工程、
(2)(1.c)又は(1.d)で得られた前記被覆支持体をか焼する工程、
を含む、被覆基材の製造方法。
【0074】
23.(1.d)における任意の乾燥を、50~220℃の範囲、好ましくは70~180℃の範囲、より好ましくは80~150℃、より好ましくは90~130℃、より好ましくは100~125℃、より好ましくは110~120℃の温度で行う、実施形態22に記載の方法。
【0075】
24.(2)におけるか焼を、300~750℃、より好ましくは325~650℃、より好ましくは350~600℃、より好ましくは375~550℃、より好ましくは400~500℃、より好ましくは425~475℃の範囲の温度で行う、実施形態又は23に記載の方法。
【0076】
25.(1.a)における均質化を、撹拌、混練、振とう、振動又はそれらの2種以上の組み合わせによって、好ましくは撹拌及び/又は振とうによって、より好ましくは撹拌によって行う、実施形態22から24のいずれか一項に記載の方法。
【0077】
26.(1.c)における被覆を、スプレーコーティング及び/又はウォッシュコーティングによって、好ましくはウォッシュコーティングによって行う、実施形態22から25のいずれか一項に記載の方法。
【0078】
27.(1.c)を1回以上、好ましくは1~5回、より好ましくは1~4回、より好ましくは1~3回、より好ましくは1回又は2回、より好ましくは1回繰り返す、実施形態22から26のいずれか一項に記載の方法。
【0079】
28.前記支持基材が、顆粒、ペレット、メッシュ、リング、球、円柱、中空円柱、モノリス及びそれらの2種以上の混合物及び/又は組み合わせからなる群から選択され、好ましくは前記支持基材がモノリス、より好ましくはハニカムモノリスであり、前記ハニカムモノリスは好ましくはウォールフローモノリス又はフロースルーモノリスであり、好ましくはウォールフローモノリスである、実施形態22から27のいずれか一項に記載の方法。
【0080】
29.前記支持基材は、セラミック及び/又は金属物質、好ましくはセラミック物質、より好ましくはアルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、コージエライト、ムライト、ジルコニウム、スピネル、マグネシア、チタニア及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはα-アルミナ、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、コージエライト及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはAl2TiO5、SiC、コージエライト、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1種以上のセラミック物質を含み、より好ましくは、前記支持基材はSiCを含み、より好ましくは前記支持基材がSiCからなる、実施形態22から28のいずれか一項に記載の方法。
【0081】
30.以下の工程:
(1)溶媒系と、実施形態21によるゼオライト材料とを含む混合物を製造する工程、
(1.A)(1)で得られた前記混合物に耐火性支持材料を添加し、任意にペースト化剤を添加する工程、
(1.B)(1.A)で得られた前記混合物を均質化する工程、
(1.C)(1.B)で得られた前記混合物を成形する工程、
(2’)(1.C)で得られた前記成形混合物をか焼する工程
を含む、成形体の製造方法。
【0082】
31.前記耐火性支持材料は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、好ましくは前記耐火性支持材料はアルミナ、さらにより好ましくはガンマアルミナである、実施形態30に記載の方法。
【0083】
32.(1.C)における成形を押出により行う実施形態30又は31に記載の方法。
【0084】
33.(1)が以下の工程:
(1.D)(1.C)で得られた前記混合物を、(2’)におけるそのか焼の前に乾燥させる工程
をさらに含む、実施形態30から32のいずれか一項に記載の方法。
【0085】
34.(1.D)における乾燥を、80~160℃の範囲、好ましくは100~140℃の範囲、より好ましくは110~130℃の範囲の温度で行う、実施形態33に記載の方法。
【0086】
35.(1.D)における乾燥を、1~7時間の期間、好ましくは4~6時間の期間、より好ましくは4.5~5.5時間の期間で行う、実施形態33又は34に記載の方法。
【0087】
36.(2’)におけるか焼を、250~700℃の範囲、好ましくは400~600℃の範囲、より好ましくは450~590℃の範囲、より好ましくは520~560℃の範囲の温度で行う、実施形態30から35のいずれか一項に記載の方法。
【0088】
37.(2’)におけるか焼を、1~8時間の期間、好ましくは3~7時間の期間、より好ましくは4~6時間、より好ましくは4.5~5.5時間の期間で行う、実施形態30から36のいずれか一項に記載の方法。
【0089】
38.前記溶媒系が1種以上の溶媒を含み、前記溶媒系が好ましくは、極性プロトン性溶媒及びその混合物からなる群から、より好ましくはn-ブタノール、イソプロパノール、プロパノール、エタノール、メタノール、水及びそれらの混合物からなる群から、より好ましくはエタノール、メタノール、水及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の溶媒を含み、
より好ましくは前記溶媒系は水を含み、より好ましくは前記溶媒系として水を、好ましくは脱イオン水を使用する、実施形態22から37のいずれか一項に記載の方法。
【0090】
39.窒素酸化物NOxを選択的に還元する方法であって、
NOxを含有するガス流を、実施形態21によるゼオライト材料と接触させることを含み、前記ゼオライト材料中に含有される少なくとも1種のイオン性非骨格元素又は化合物を、Cu及び/又はFeについてイオン交換する方法。
【0091】
40.前記ガス流が1種以上の還元剤をさらに含み、前記1種以上の還元剤は好ましくは尿素及び/又はアンモニア、好ましくはアンモニアを含む、実施形態39に記載の方法。
【0092】
41.前記ガス流が1種以上のNOx含有排ガス、好ましくは1種以上の工業プロセスからの1種以上のNOx含有排ガスを含み、より好ましくは前記NOx含有排ガス流は、アジピン酸、硝酸、ヒドロキシルアミン誘導体、カプロラクタム、グリオキサール、メチル-グリオキサール、グリオキシル酸を製造するプロセスにおいて、又は窒素含有材料を燃焼するプロセスにおいて得られる1種以上の排ガス流(前述のプロセスの2つ以上からの排ガス流の混合物を含む)を含む、実施形態39又は40に記載の方法。
【0093】
42.前記ガス流が、内燃機関からの、好ましくは希薄燃焼条件下で作動する内燃機関からの、より好ましくは希薄燃焼ガソリン機関又はディーゼル機関からのNOx含有排ガス流を含む、実施形態39から40のいずれか一項に記載の方法。
【0094】
43.実施形態21に記載のゼオライト材料の、分子ふるいとしての、吸着剤としての、イオン交換のための、触媒及び/又は触媒担体としての、好ましくは触媒及び/又は触媒担体としての、より好ましくは排ガス中のNOxの選択的触媒還元(SCR)のための触媒及び/又は触媒担体としての、あるいは芳香族のアルキル化のための触媒としての、より好ましくはNOxを選択的に還元するための触媒及び/又は触媒担体としての、使用方法。
【0095】
図面の説明
図に示すX線回折(XRD)パターンは、それぞれCuKアルファ-1線を使用して測定した。それぞれの回折図において、回折角度2シータを横軸に沿って°で示し、強度を縦軸に沿ってプロットする。
【0096】
図1は、本発明の方法から得られ、実施例1に記載するNa-Yゼオライト生成物のX線回折パターンを示す。
【0097】
図2は、本発明によらない、比較例2に記載のように得られたNa-Yゼオライト生成物のX線回折パターンを示す。
【0098】
図3は、本発明によらない、比較例3に記載のように得られたNa-Yゼオライト生成物のX線回折パターンを示す。
【0099】
図4は、実施例4に記載の成形体に成形した後に、実施例3による銅交換ゼオライト材料について行われた、NOx転化及びN
2O収率における触媒試験の結果を示す。この図では、横軸に沿って温度を℃で示し、縦軸に沿ってNOx転化率及びN
2O収率を%で示す。
【実施例】
【0100】
実施例1:ジアミノメチルシクロヘキサンをSDAとして用いるNa-Yの製造
4.9gのNaOHフレークを、室温で攪拌しながらプラスチックビーカー中で63gの脱イオン水に溶解した。そこに10gのアルミン酸ナトリウム(30質量%のNa、28.6質量%のAl)を添加して溶解させた。その後続いて7.7gのジアミノメチルシクロヘキサンを添加した。最後に、64.4gのLudox AS40をこれに添加し、次いで混合物を室温で1時間撹拌した。次いで混合物を室温で25時間放置した。得られた混合物のpHは13であった。バッチ組成:3 Na2O:10 SiO2:1.23 Al2O3:1.4 ジアミノメチルシクロヘキサン:131 H2O。
【0101】
得られた混合物147.9gを、テフロン(登録商標)ビーカーを使用してスチール製オートクレーブに入れた。オートクレーブを乾燥機内に置き、110℃の温度に1時間の間加熱し、次いで110℃で48時間(2日間)放置した。得られた懸濁液のpHは12.5であった。
【0102】
得られた固体147.6gを、磁器製吸引フィルターを使用して濾別し、3リットルの脱イオン水で200μS/cm3未満の伝導率まで洗浄した。
【0103】
固体生成物を磁器製のボウルに入れ、120℃で5時間乾燥し、その後続いて2℃/分の割合で徐々に540℃まで加熱温度を上昇することによりか焼し、その温度で6時間保持して、白色粉末23.6gを得た。
【0104】
生成物の元素分析により、<0.1質量%の炭素、9.8質量%のAl、7.8質量%のNa及び26質量%のSiが示された。
【0105】
生成物は、696m2/gのBET表面積及び907m2/gのラングミュア表面積を示した。
【0106】
結晶生成物のX線回折パターンを
図1に示す。これはFAU型骨格構造を示す。
【0107】
比較例1:H.Lobson、Microporous Materials 22(1998)、551-666によるSDAとして15-クラウン-5を用いたNa-Yゼオライトの製造
6.1gの15-クラウン-5テンプレートを、テフロン(登録商標)内張りオートクレーブ(Berghof社製)中で48.2gの脱イオン水に溶解した。次いで、4.5gのNaOHフレークを攪拌しながらそこに添加し、室温で溶解した。その後続いて9.9gのアルミン酸ナトリウム(30質量%のNa、28.6質量%のAl)を添加し、溶液に溶解させた。最後に、81.4gのLudox AS40を添加し、室温で1時間撹拌した。バッチ組成:2.1 Na2O:10 SiO2:Al2O3:0.5(15-クラウン-5):100 H2O。混合物を室温で24時間撹拌したところ、懸濁液は増粘し始めた。得られた混合物のpHは13.2であった。
【0108】
得られた混合物146.1gを、テフロン(登録商標)ビーカーを使用してスチール製オートクレーブに入れた。
【0109】
オートクレーブを乾燥機内に置き、110℃の温度に1時間の間加熱し、次いで110℃で192時間(8日間)放置した。得られた懸濁液のpHは11.7であった。
【0110】
得られた固体145.9gを、磁器製吸引フィルターを使用して濾別し、5リットルの脱イオン水で200μS/cm3未満の伝導率まで洗浄した。
【0111】
固体生成物を磁器製のボウルに入れ、乾燥機内で120℃で4日間乾燥し、その後続いて2℃/分で増加する加熱速度で540℃までか焼し、その温度で6時間保持して、40.2gの白色粉末を得た。
【0112】
生成物の元素分析により、<0.1質量%の炭素、8.3質量%のAl、6.8質量%のNa及び31質量%のSiが示された。
【0113】
生成物は、756m2/gのBET表面積及び987m2/gのラングミュア表面積を示した。
【0114】
結晶生成物のX線回折パターンを
図2に示す。これはFAU型骨格構造を示す。
【0115】
比較例2:SDAを用いないNa-Yゼオライトの製造
63gの脱イオン水をプラスチックビーカーに入れた。4.9gのNaOHフレークを撹拌しながら添加し、室温で溶解した。その後続いて10gのアルミン酸ナトリウム(30質量%Na、28.6質量%Al)をそこに添加して溶解させた。最後に、64.4gのLudox AS40を添加し、室温で1時間撹拌した。バッチ組成:3 Na2O:10 SiO2:1.23 Al2O3:131 H2O。次いで混合物を室温で25時間放置した。得られた混合物のpHは13.2であった。
【0116】
得られた混合物140.7gを、テフロン(登録商標)ビーカーを使用してスチール製オートクレーブに入れた。
【0117】
オートクレーブを乾燥機内で最大で110℃まで(約1時間以内)加熱し、110℃で48時間(2日間)保持した。得られた懸濁液のpHは11.6であった。
【0118】
得られた固体140.6gを、磁器製吸引フィルターを使用して濾別し、5リットルの脱イオン水で200μS/cm3未満の伝導率まで洗浄した。
【0119】
固体生成物を磁器製のボウルに入れ、乾燥機内で120℃で一晩乾燥させ、その後続いて2℃/分で増加する加熱速度で540℃までか焼し、その温度で6時間保持して31.9gの白色粉末を得た。
【0120】
生成物の元素分析により、8.7質量%のAl、7.3質量%のNa及び24.9質量%のSiが示された。
【0121】
生成物は、305m2/gのBET表面積及び400m2/gのラングミュア表面積を示した。
【0122】
結晶生成物のX線回折パターンを
図3に示す。これはFAU型骨格構造を示す。
【0123】
実施例2:実施例1のNH4-イオン交換
225gの脱イオン水(一部分)及び12.5gの硝酸アンモニウムを、500mlの4つ口フラスコに入れた。次いで混合物を撹拌しながら最大で80℃まで加熱した。その温度に達した後、実施例1の25gのNa-Yゼオライトを添加し、25gの脱イオン水で洗浄した(残分)。得られた懸濁液を再び最大で80℃まで加熱し、次いでその温度で30分間撹拌した(200rpm)。
【0124】
磁器製吸引フィルターを使用して固体を濾別し、脱イオン水で200μS/cm3未満の電気伝導率まで洗浄した。
【0125】
固体生成物を磁器製のボウルに入れ、乾燥機内で120℃で一晩乾燥させた。
【0126】
実験を繰り返して26.0gの白色粉末を得た。
【0127】
実施例3:実施例2のCu-イオン交換
146gの脱イオン水(一部分)を250mlの4つ口フラスコに入れ、最大で60℃まで加熱した。次いで、8.6gの酢酸銅一水和物(Sigma Aldrich社製)を攪拌しながらそこに添加し、再び最大で60℃まで加熱した。その温度に達した後、実施例2からのゼオライト25.5gを添加して、20gの脱イオン水ですすいだ。懸濁液は再び最大で60℃まで加熱したが、懸濁液のpHは60℃で5.3であり、次いでこの温度で1時間撹拌した(300rpm)。0.5時間後の懸濁液のpHは60℃で5.2であり、1時間後に得られた懸濁液のpHは60℃で5.2であった。
【0128】
得られた懸濁液を磁器製吸引フィルターで濾過し、5リットルの脱イオン水で200μS/cm3未満の電気伝導率まで洗浄した。
【0129】
固体生成物を磁器製吸引フィルターと一緒に乾燥機に入れ、120℃で16時間乾燥させて26.0gの青色粉末を得た。
【0130】
生成物の元素分析により、<0.1質量%の炭素(高温)、9.8質量%のAl、5.7質量%のCu、2.0質量%のNa及び26.4質量%のSiが示された。
【0131】
生成物は、666m2/gのBET表面積及び868m2/gのラングミュア表面積を示した。
【0132】
実施例4:実施例3のSCR(選択的触媒還元)試験
1.成形手順:
試験のために、実施例3のゼオライト試料を予め粉砕したガンマアルミナ(30質量%のAl2O3、70質量%のゼオライト)のスラリーと混合した。スラリーを磁気撹拌プレート上で100℃で撹拌しながら乾燥させ、空気中600℃で1時間か焼した。得られたケーキを粉砕し、試験用に250~500μmの目標画分に篩い分けした。成形粉末の画分を10%の蒸気/空気中、750℃のマッフルオーブン中で5時間老化させた。
【0133】
2.試験手順:
SCR試験は、ABB LIMAS NOx/NH3分析器及びABB URAS N2O分析器を備えた48倍平行試験ユニットで実施した。実施例3のそれぞれの新しい状態の及び老化した触媒試料について、コランダムで全体積1mLに希釈した170mgの粉末を各反応器に入れた。
【0134】
200、300、450及び575℃の温度の等温条件下で、500ppmのNO、500ppmのNH3、5%のO2、10%のH2Oと残部N2からなる供給ガスを、80,000h-1のGHSVで触媒床に通した。各温度での平行反応器を熱平衡化するための30分の平衡化時間に加えて、あらゆる位置を3.5分間平衡化し、続いて30秒のサンプリング時間を置いた。1Hzの周波数で分析器によって記録されたデータをサンプリング間隔について平均し、NO転化率及びN2O収率を計算するために使用した。
【0135】
よって、
図4に示した結果から分かるように、予想外なことに、本発明による新しい状態の触媒は300℃で約99%、450℃で約98%、600℃で約84%の非常に高いNOx転化率を示し、一方でN
2O収率を600℃で20%より低く、及び300及び450℃では10%よりも低く維持することが見出された。よって、高温においてさえ、特に600℃でも、FAU型骨格構造を有するCu含有ゼオライトを含む本発明の試料は、NOxの大きな触媒還元を示す一方、低いN
2O収率を維持する。さらに、驚くべきことに、本発明による老化触媒(750℃で5時間)は、300℃では幾分低いNOx転化率を示すが、450℃で同じNOx転化率を示し、600℃(高温)では新しい状態の触媒よりもより大きな転化率を示す一方で、N
2O収率は低いままであり、すなわち300℃で10%より低く、450℃で20%より低く、600℃で30%より低いことが見出された。よって驚くべきことに、本発明に従って得られた及び/又は得ることができるFAU型骨格構造を有する、すなわち高い触媒活性及び耐老化性を備えた改善されたゼオライト材料は、費用効果が高く、環境にやさしい一方で、大規模生産にさらに適合される方法で製造し得ることが見出された。