(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】巻取り機
(51)【国際特許分類】
B65H 54/72 20060101AFI20220228BHJP
【FI】
B65H54/72
(21)【出願番号】P 2019554781
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2018058579
(87)【国際公開番号】W WO2018185145
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】102017003425.7
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ヴァルターマン
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン コヴァルスキー
(72)【発明者】
【氏名】ライナルト フォス
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519032(JP,A)
【文献】特開2006-206327(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10060593(DE,A1)
【文献】特開2009-029531(JP,A)
【文献】米国特許第06161790(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/02
B65H 54/42
B65H 54/52
B65H 54/70
B65H 54/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸を複数のボビンに巻き取るための巻取り機であって、少なくとも1つの巻取りスピンドル(3.1,3.2)と、前記巻取りスピンドル(3.1,3.2)に沿って配置された複数の巻取り箇所(2)とが設けられており、前記巻取り箇所(2)のそれぞれの巻取り箇所は、前記糸を往復案内するために複数の綾振りユニット(6)のうちの1つの綾振りユニットを有しており、前記綾振りユニット(6)には、前記ボビンの周囲に前記糸を綾振りするために、前記巻取りスピンドル(3.1,3.2)に平行に保持された圧着ローラ(10)が対応配置されており、前記綾振りユニット(6)および前記圧着ローラ(10)は、機械架台(1)に配置されていて、かつ前記機械架台(1)に、複数のばね緩衝器エレメント(13.1,13.2)を備えた緩衝装置(13)が対応配置されている、巻取り機において、
前記ばね緩衝器エレメント(13.1,13.2)のうちの少なくとも1つのばね緩衝器エレメントが、切換え手段(14)によって選択的に
緊張可能または
弛緩可能であ
り、
前記ばね緩衝器エレメント(13.1,13.2)のうちの1つのばね緩衝器エレメントが、前記機械架台(1)の架台部分(1.2)と、前記架台部分(1.2)に結合されたヨーク保持体(12)との間において挟み込まれており、かつ前記ばね緩衝器エレメント(13.1,13.2)のうちの他のばね緩衝器エレメントが、前記架台部分(1.2)と前記ヨーク保持体(12)との間に配置されていて、かつ前記切換え手段(14)によって緊張可能または弛緩可能である、
ことを特徴とする、巻取り機。
【請求項2】
前記切換え手段(14)は、制御導線(20)を介して、前記糸の巻取り時に前記巻取りスピンドル(3.1,3.2)の巻取り速度を制御する制御機器(9)に接続されている、
請求項1記載の巻取り機。
【請求項3】
前記切換え手段(14)は、回転可能な調節リング(14.1)およびアクチュエータ(14.2)によって形成されていて、前記アクチュエータ(14.2)は、前記ばね緩衝器エレメント(13.1,13.2)を緊張・弛緩させるために、前記調節リング(14.1)を回転させることにより制御する、
請求項
1または2記載の巻取り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載された、複数の糸を複数のボビンに巻き取るための巻取り機に関する。
【0002】
溶融紡糸プロセスにおいて合成糸を製造する場合には、糸をプロセスの終了時に連続的にボビンに巻き取ることが一般的である。このとき均等なプロセスガイドのために、糸を一定の巻取り速度でボビンに巻き取ることが必要である。糸の巻取りのためには、巻取り機が使用され、巻取り機は、好ましくは、回転可能なボビンタレットに長く突出するように保持された2つの巻取りスピンドルを有している。巻取りスピンドルに沿って巻取り機は、複数の巻取り箇所を有しており、これによって溶融紡糸プロセスにおいて製造された糸を、巻取りスピンドルにおいて互いに並行にボビンに巻き取ることができる。このときボビンの直径の増大に連れて、巻取りスピンドルの回転数を連続的に低下させることが必要であり、これによって糸の巻取り速度を一定に保つことができる。したがって、糸を巻き取るために使用される巻取りスピンドルは、比較的大きな回転数範囲を通過することが必要である。このときボビンへの巻取り時には、常に変化する回転振動数が生ぜしめられ、このような回転振動数は、特に機械架台の固有振動数との衝突時に著しく振動を励起させることがある。ゆえにこのような巻取り機の作動範囲は、制限されている。この作動範囲を可能な限り広げるために、従来技術では、機械架台において励起された振動が緩衝装置によって緩衝される巻取り機が公知である。
【0003】
独国特許出願公開第102013008825号明細書に基づいて公知の、冒頭に述べた形式の巻取り機では、巻取り箇所の綾振りユニットを保持する架台部分に、複数の緩衝手段が配置されている。このとき緩衝手段としては、ばね緩衝器特性を有するゴムダンパが使用されている。これによって特に共振の範囲における振動振幅を、ゴムダンパの弾性および剛性に関連して、程度の差こそあれ低減することができる。しかしながらこのとき、ゴムダンパはある一定の共振を緩衝するが、しかしながら剛性に基づいて作動範囲における他の共振を惹起するという問題を発生させることがあり、このような共振は次いで不都合に作用する。
【0004】
独国特許出願公開第102006001041号明細書に基づいて公知の別の巻取り機では、機械架台の架台部分に、架台部分の剛性に関してその固有振動数を変化させるために、切換え可能な硬化装置が対応配置されている。しかしながらこのとき固有振動数の純粋なシフトが、あらゆる不連続の弾性緩衝作用なしに行われる。固有振動数の振動振幅は、振動数スペクトルにおいて単にシフトされ、緩衝されない。
【0005】
さらに独国特許出願公開第4240920号明細書に基づいて、共振現象によって発生する振動を緩衝する振動緩衝器を、機械架台に配置することが公知である。しかしながらこのような振動緩衝器は、通常単に、極めて制限された振動数範囲においてしか機能しない。比較的大きな範囲の臨界回転数をカバーできるようにするためには、振動緩衝器において手間の掛かる調節が必要である。
【0006】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた形式の、複数の糸を複数のボビンに巻き取るための巻取り機を改良して、巻取りスピンドルの可能な限り大きな回転数スペクトルにおいて、糸を巻き取ることができる、巻取り機を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、冒頭に述べた形式の巻取り機をその機械架台において、不都合な励起振動数を確実に通過することができるように構成することである。
【0008】
この課題は、本発明によれば、ばね緩衝器エレメントのうちの少なくとも1つのばね緩衝器エレメントが、切換え手段によって選択的に活性化可能または不活性化可能であることによって解決される。
【0009】
本発明の好適な発展形態は、従属請求項に記載の特徴および特徴の組合せによって生ぜしめられる。
【0010】
本発明は、機械架台のばね緩衝器特性を、それぞれの作動状態もしくは現時点の回転振動数に関連して変化させるという利点を提供する。このとき剛性および緩衝作用を高めることまたは低下させることができ、これによって糸を、臨界的な回転数範囲においても巻取りスピンドルにおいて巻き取ることが可能である。ばね緩衝器エレメントのうちの1つのばね緩衝器エレメントの選択的な活性化または不活性化によって、臨界的な回転振動数を、目的に合わせて作動範囲内にシフトさせることができる。
【0011】
回転振動数は、ボビン直径との関係において巻取りスピンドルのそれぞれ調節された回転数に基づいて直接生ぜしめられるので、好適に構成された本発明の発展形態では、切換え手段は、制御導線を介して、糸の巻取り時に巻取りスピンドルの巻取り速度を制御する制御機器に接続されている。このように構成されていると、糸の巻取り時における作動範囲内において、ばね緩衝器エレメントの、目的に合わせられた活性化および不活性化を、臨界的な回転数への到達直前に実施することができる。本発明のこの構成は、特に、交互に使用される2つの巻取りスピンドルによって、糸を連続的に巻き取る場合に好適である。このようになっていると、それぞれの巻取り過程時に、機械架台における剛性および緩衝作用を目的に合わせて変化させることができる。
【0012】
特に、すべての巻取り箇所にわたって延びている架台部分において、特に好適な本発明の発展形態では、ばね緩衝器エレメントのうちの1つのばね緩衝器エレメントが、機械架台の架台部分と、架台部分に結合されたヨーク保持体との間において緊締されており、かつばね緩衝器エレメントのうちの他のばね緩衝器エレメントが、架台部分とヨーク保持体との間に配置されていて、かつ切換え手段によって緊締可能である。このように構成されていると、一方では、架台部分の基本剛性をヨーク保持体によって得ることができ、このときばね緩衝器エレメントのうちの1つのばね緩衝器エレメントは、架台部分の緩衝作用を永続的に確定している。緩衝作用および剛性を変化させるためには、切換え可能なばね緩衝器エレメントが設けられている。これによって架台部分における緩衝作用および架台部分における剛性を、目的に合わせて変化させることができる。
【0013】
架台部分とヨーク保持体との間において引張り荷重または押圧荷重時に無関係に、最大の緩衝作用を得るために、特に好適であることが判明している、本発明の発展形態では、ばね緩衝器エレメントのうちの少なくとも1つのばね緩衝器エレメントが、インナスリーブとアウタスリーブとの間におけるゴムダンパを備えたスリーブ緩衝器によって、形成されている。このときインナスリーブまたはアウタスリーブは、端面側において架台部分に、かつアウタスリーブまたはインナスリーブは、ヨーク保持体に支持されている。
【0014】
切換え可能なばね緩衝器エレメントを活性化または不活性化するためには、調節手段として、回転可能な調節リングが好適であることが判明しており、この調節リングは、アクチュエータによって回転により、ばね緩衝器エレメントを緊張・弛緩させるために制御させられる。このとき調節リングは、ばね緩衝器エレメントを連結するための伝達手段として直接使用することができる。
【0015】
スリーブ緩衝器の使用時には、調節リングは、好ましくはインナスリーブまたはアウタスリーブに対応配置されていて、かつ架台部分またはヨーク保持体に保持されている。
【0016】
極めてコンパクトな実施形態を得ることができる、本発明の発展形態では、スリーブ緩衝器は、センタスリーブの両側にそれぞれ1つのゴムダンパを有しており、このときゴムダンパは、インナスリーブおよびアウタスリーブによってセンタスリーブに固定されており、かつこのときインナスリーブおよびセンタスリーブは、端面側で、架台部分とヨーク保持体との間において保持されており、かつこのとき調節リングは、アウタスリーブに対応配置されている。このように構成されていると、緩衝作用および剛性を変化させるために、複数のばね緩衝器特性を備えたスリーブ緩衝器を使用することができる。
【0017】
ばね緩衝器エレメントを周囲から遮蔽するために、架台部分は、インナスリーブを貫通するピンを、かつヨーク保持体は、ポット形状のハウジングを有しており、ピンとハウジングとは、スリーブ緩衝器を収容するために互いに内外に係合していることが提案されている。このように構成されていると、例えば糸の周囲からの油剤ミストを、特にゴムダンパから遠ざけることができる。
【0018】
2000m/分~2500m/分の範囲における低い巻取り速度で糸を巻き取る場合には、特に、綾振りユニットを収容するために使用される架台部分が、共振現象を惹起することがある臨界的な固有振動数を有する。したがって特に好適な本発明の発展形態では、架台部分は、綾振りユニットを収容するためにプレート形状に形成されており、ヨーク保持体は、架台プレートのほぼ全長にわたって延びていて、かつ緩衝装置は、複数の切換え可能なばね緩衝器エレメントおよび切換え不能なばね緩衝器エレメントを有していて、これらのばね緩衝器エレメントは、架台プレートに分配されて配置されている。
【0019】
このとき好ましくは、架台プレートは、端部で、それぞれ1つの旋回軸受を介して機械フレームに保持される。
【0020】
旋回軸受は、機械架台の可動のローラ保持体に形成されていて、このとき架台プレートは、ローラ保持体に支持されていて、かつこのときローラ保持体は、圧着ローラを保持している。このように構成されていると、ボビン直径の変化時における圧着ローラの可動性が可能である。綾振りユニットと圧着ローラとの間において予め設定された間隔は、糸を案内するために、圧着ローラのそれぞれの位置とは無関係に一定のままである。
【0021】
本発明に係る巻取り機は、機械架台の緩衝特性および剛性が作動範囲内において可変であるという特別な利点を有している。
【0022】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明に係る巻取り機の実施形態について詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る巻取り機の第1実施形態を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1に示された実施形態を概略的に示す横断面図である。
【
図3】
図3.1および
図3.2は、
図1に示された実施形態の緩衝装置の一部を、異なった状態において概略的に示す図である。
【
図4】
図4.1および
図4.2は、緩衝装置の別の実施形態の一部を、異なった状態において概略的に示す図である。
【
図5】緩衝装置のさらに別の実施形態を概略的に示す横断面図である。
【0024】
図1および
図2には、本発明に係る巻取り機の第1実施形態が複数の見方で概略的に示されている。
図1には側面図が、かつ
図2には横断面図が示されている。以下における記載は、図面のうちの1つの図面を特に強調していない限りにおいて、すべての図面に対するものである。
【0025】
巻取り機の実施形態は、機械架台1に、回転可能に支持されたボビンタレット4を有しており、このボビンタレット4には、長く突出する2つの巻取りスピンドル3.1,3.2が保持されている。巻取りスピンドル3.1,3.2は、互いに180°ずらされてボビンタレット4に配置されていて、かつスピンドル駆動装置5.1,5.2に連結されており、これらのスピンドル駆動装置5.1,5.2は、ボビンタレット4の、反対に位置している側に保持されている。ボビンタレット4は、タレット駆動装置16に連結されている。スピンドル駆動装置5.1,5.2およびタレット駆動装置16は、制御機器9に接続されている。
【0026】
巻取りスピンドル3.1,3.2の上には、機械架台の機械フレーム1.1に複数の巻取り箇所2が互いに並んで形成されている。巻取り箇所2は、巻取りスピンドル3.1,3.2の突出する長さにわたって均等に分配されて配置されていて、かつそれぞれ1つのヘッド糸ガイド11と、ヘッド糸ガイド11の下に配置された綾振りユニット6とを有している。本実施形態では、8つの巻取り箇所2が互いに並んで配置されている。巻取り箇所2の数は、一例であり、かつ6、10、12、13または16の箇所を含むこともできる。
【0027】
図2における図面から分かるように、綾振りユニット6は巻取り箇所2において、互いに逆方向に回転するそれぞれ1つの羽根対7によって形成されており、これらの羽根対7の羽根先端は、糸を巻取り箇所2の内部においてガイド定規8に沿って往復案内させる。このような羽根式綾振りユニットは、以前から公知であるので、これについてのさらなる記載は行わない。
【0028】
図1および
図2から分かるように、巻取り箇所2の綾振りユニット6は、機械架台のプレート形状の架台部分1.2に一緒に保持されている。以下において架台プレートと呼ぶ架台部分1.2は、ローラ保持体1.3に支持されており、このローラ保持体1.3は、綾振りユニット6と巻取りスピンドル3.1,3.2との間に配置された圧着ローラ10を保持している。圧着ローラ10のローラ保持体1.3は、旋回軸受1.4を介して機械フレーム1.1に連結されている。圧着ローラ10は、巻取りスピンドル3.1,3.2にほぼ平行に巻取り箇所2の全巻取り領域にわたって延びている。架台プレート1.2は、旋回軸受1.5を介してローラ保持体1.3に保持されている。
【0029】
架台プレート1.2の上側には、縦長のヨーク保持体12が延びており、このヨーク保持体12はその端部で、架台プレート1.2に不動に結合されている。ヨーク保持体12の端部の間には、特に架台プレート1.2の中央領域には、緩衝装置13が配置されている。緩衝装置13は、複数のばね緩衝器エレメント13.1,13.2を含んでおり、ばね緩衝器エレメント13.1,13.2は、互いに間隔をおいて、ヨーク保持体12と架台プレート1.2との間に配置されている。ばね緩衝器エレメント13.1は、ヨーク保持体12と架台プレート1.2との間において緊締されている。隣接したばね緩衝器エレメント13.2は、ヨーク保持体12との接触なしに、架台プレート1.2の上側に保持されている。ヨーク保持体12には切換え手段14が設けられており、この切換え手段14は、ばね緩衝器エレメント13.2に対応配置されている。切換え手段14は、制御導線20を介して制御機器9に接続されている。
【0030】
緩衝装置13についてさらに説明するために、追加的に
図3.1および
図3.2を参照する。
図3.1および
図3.2において緩衝装置13は、異なった作動状態で示されている。
【0031】
図3.1に示された作動状況においてヨーク保持体12は、単に、架台プレート1.2の上側におけるばね緩衝器エレメント13.1だけによって架台プレート1.2に連結されている。隣接したばね緩衝器エレメント13.2は、機能することなく、架台プレート1.2の上側に保持されている。その限りにおいて単にばね緩衝器エレメント13.1だけが、架台プレート1.2における振動を緩衝するために作用する。
【0032】
図3.2においては、ばね緩衝器エレメント13.2をヨーク保持体12に連結させるために、切換え手段14が制御機器9によって駆動制御されている。そのために切換え手段14は、プッシュピストン14.3とアクチュエータ14.2とを有しており、このアクチュエータ14.2は、ヨーク保持体12に配置されたプッシュピストン14.3を進出させ、ばね緩衝器エレメント13.2と接触させる。これによって緩衝装置13の剛性および緩衝作用が高まる。ヨーク保持体12と架台プレート1.2との間においては、いまや両ばね緩衝器エレメント13.1,13.2が作用する。
【0033】
図1における図面から分かるように、それぞれの巻取り箇所2において巻取りスピンドル3.1,3.2にはそれぞれ1つの巻管17が保持されている。これによって、ヘッド糸ガイド11を介して供給された糸19は、巻取りスピンドル3.1,3.2のうちの1つの巻取りスピンドルの周囲においてボビン18に巻き取られる。巻取りスピンドル3.1,3.2は、ボビン18の、予め設定されたボビン直径に達した場合に、ボビンタレット4の回転によって旋回させられ、これによって巻取り箇所におけるボビン交換を行うことができる。
【0034】
特に
図2から分かるように、架台プレート1.2は、複数の支持体24によってローラ保持体1.3に支持されている。これによってローラ保持体1.3において圧着ローラ10およびボビン18によって導入された位置変化は、架台プレート1.2に伝達される。ローラ保持体1.3との架台プレート1.2の連結によって、綾振りユニット6も同様に、圧着ローラ10に対する同じ関係においてその位置が変化させられる。これによって綾振りユニット6とボビン18のボビン表面との間における間隔は、いかなる作動状況においても一定のままであり、その結果、ボビン18を形成するための均一な綾巻きが可能である。
【0035】
本発明に係る巻取り機の、
図1および
図2に示された実施形態では、糸19は、巻取り箇所2において互いに並行にボビン18に巻き取られる。そのために糸19は、ヘッド糸ガイド11を介して巻取り箇所2に供給される。それぞれの糸19は、ボビン18へと巻き重ねる(Ablegen)ために、綾振りユニット6の羽根対7によって綾振り行程内において往復案内され、かつ圧着ローラ10の周囲における部分巻掛け後に、ボビン18の表面おいて巻き重ねられる。糸19は、一定の巻取り速度でボビン18に巻き取られる。
【0036】
ボビン18への糸19の巻取り中に、巻取りスピンドル3.1のスピンドル駆動装置5.1は制御機器9を介して、巻取り速度がボビン18のいかなる直径においても一定のままであるように制御される。このとき巻取りスピンドル3.1の回転数に関連して常に変化する励起振動数(Erregerfrequenz)によって、機械架台1への巻取りスピンドル3.1を介した振動励起が発生する。いまや巻取り中に、スピンドル回転振動数は連続的に低下する。
【0037】
切換え可能なばね緩衝器エレメント13.2は、投入接続されている。これによって架台プレート1.2におけるすべてのばね緩衝器エレメント13.1,13.2が作用する。これらのばね緩衝器エレメント13.1,13.2は、システムの多くの共振において緩衝作用を生ぜしめる。このようにして架台プレート1.2の第1の固有振動数は、例えばf0の回転振動数になることができる。第1の臨界的な回転振動数を通過するために、ばね緩衝器エレメントによって生ぜしめられた緩衝作用が十分な場合には、緩衝装置13における変更は行われない。臨界的な回転振動数の通過が、調節された緩衝作用に基づいて不可能である場合のためには、臨界的な回転振動数fOへの到達直前に、ばね緩衝器エレメント13.2は切換え手段14を介して不活性化される。これによって架台プレート1.2の剛性および緩衝作用が変化し、その結果臨界的な回転振動数は、比較的低い値fUに低下する。いまや巻取り過程は、難なく、回転振動数fUへの到達直前まで継続することができる。回転振動数fUへの到達直前に、ばね緩衝器エレメント13.2を活性化するために、切換え手段14は制御機器9を介して駆動制御され、これによって架台プレート1.2の剛性および緩衝作用は、再び変化し、かつ架台プレート1.2は再び、値f0の臨界的な固有振動数になる。固有振動数は、いまや、現時点で巻取りスピンドルにおいて調節された回転振動数よりも大きいので、共振はもはや発生し得ない。
【0038】
本発明に係る巻取り機の、
図1および
図2に示された実施形態では、緩衝装置13は、切換え不能な複数のばね緩衝器エレメント13.1と切換え可能な複数のばね緩衝器エレメント13.2とを有している。形成されたばね緩衝器エレメントの数は、巻取り箇所の数に関連して、ひいては特に、架台部分の長さに関連している。したがって、それぞれ綾振りユニットのただ1つの部分を収容するために、分割された架台部分を使用することも可能である。
【0039】
図1および
図2に示された緩衝装置13では、ばね緩衝器エレメント13.1,13.2は、例えばゴムダンパによって形成されている。ゴムダンパの使用時に可能な限り高い緩衝作用を発生させるためには、特にいわゆるスリーブ緩衝器が好適であることが判明している。
図4.1および
図4.2には、緩衝装置13の1実施形態が複数の作動状況において示されており、この緩衝装置13では、ばね緩衝器エレメント13.1,13.2はそれぞれ、スリーブ緩衝器15によって形成されている。
【0040】
図面のうちの1つの図面を特に強調していない限り、以下の記載は
図4.1および
図4.2に対するものである。
【0041】
ヨーク保持体12と架台プレート1.2との間に配置された、切換え不能なばね緩衝器エレメント13.1および切換え可能なばね緩衝器エレメント13.2は、両者ともそれぞれスリーブ緩衝器15によって形成されている。スリーブ緩衝器15の構造は、基本的に同一である。それぞれのスリーブ緩衝器15は、インナスリーブ15.1と、このインナスリーブ15.1を間隔をおいて同心的に取り囲んでいるアウタスリーブ15.3とを有している。インナスリーブ15.1とアウタスリーブ15.3との間には、ゴムダンパ15.2が配置されている。ゴムダンパ15.2は、インナスリーブ15.1の外周部に不動に、かつアウタスリーブ15.3の内径部に不動に結合されている。
【0042】
切換え不能なばね緩衝器エレメント13.1のスリーブ緩衝器15は、ヨーク保持体12と架台プレート1.2との間において緊締されている。このときインナスリーブ15.1は端面側の接触部で架台プレート1.2の上側に保持される。アウタスリーブ15.3は、端面側でヨーク保持体12に支持されている。これによって力は、インナスリーブ15.1およびアウタスリーブ15.3を介してゴムダンパ15.2を通して導かれる。
【0043】
切換え可能なばね緩衝器エレメント13.2では、スリーブ緩衝器15のアウタスリーブ15.3は、ヨーク保持体12に対して間隔をおいて配置されている。ヨーク保持体12には切換え手段14が配置されている。このとき切換え手段14は、調節リング14.1を有しており、この調節リング14.1は、アクチュエータ14.2を介して回転可能に調節ねじ山14.4内で移動可能である。アクチュエータ14.2は、そのために、調節リング14.1に結合された切換えレバー14.6に係合している。
【0044】
図4.1に示された状況では、ばね緩衝器エレメント13.2は活性化されていない。
図4.2に示された状況では、切換え手段14はばね緩衝器エレメント13.2を活性化している。この状況において調節リング14.1は、スリーブ緩衝器15のアウタスリーブ15.3の端面に接触している。スリーブ緩衝器15は、いまや調節リング14.1を介してヨーク保持体12と架台プレート1.2との間において緊張させられている。
【0045】
このとき架台プレート1.2の緩衝作用および剛性を変化させるための機能は、上に述べた実施形態と同一であるので、ここではさらなる説明を省く。
【0046】
緩衝装置13を可能な限り小さな取付け空間に組み込むことが望まれている場合のためには、切換え可能なばね緩衝器エレメント13.2を、切換え不能なばね緩衝器エレメント13.1と組み合わせるという可能性もある。そのために
図5には、
図1および
図2に示された巻取り機において使用可能である、緩衝装置13の1実施形態が横断面図で示されている。
【0047】
そのために緩衝装置13は、センタスリーブ15.4を備えたスリーブ緩衝器15を有しており、このセンタスリーブ15.4は、内側にゴムダンパ15.2を、かつ外側に第2のゴムダンパ15.5を保持している。ゴムダンパ15.2は、センタスリーブ15.4とは反対の側でインナスリーブ15.1に結合されている。外側のゴムダンパ15.5は、アウタスリーブ15.3によって取り囲まれていて、かつこれによってセンタスリーブ15.4とアウタスリーブ15.3との間において保持されている。スリーブ緩衝器15は、ピン21とポット形状のハウジング22との間において緊張させられている。ピン21は、架台プレート1.2の上側に固定されていて、かつスリーブ緩衝器15を貫通している。ハウジング22は、ヨーク保持体12に固定されていて、かつスリーブ緩衝器15を取り囲んでいる。ハウジング22の突出している端部には、リング形状のハウジング底部22.1が設けられていて、このハウジング底部22.1には、スリーブ緩衝器15がセンタスリーブ15.4でもって保持される。このときインナスリーブ15.1は端面側でピン21のストッパ25に支持されている。
【0048】
ピン21の自由端部には、調節リング14.1の形態の切換え手段14が形成されている。調節リング14.1は、ランプ形状の調節カラー14.5を有していて、この調節カラー14.5は端面側において、アウタスリーブ15.3に向けられている。アウタスリーブ15.3の端面は、複数の隆起したセクタを有している。調節カラー14.5は、アウタスリーブ15.3の端面の隆起したセクタの数と同じ数の間隙を有している。調節カラー14.5における間隙が、アウタスリーブ15.3の端面の隆起したセクタに向かい合っている場合には、外側のゴムダンパ15.5は不活性状態である。この状況は、
図5の右側の図半部に示されている。これに対して
図5の左側の図半部は、外側のゴムダンパ15.5を活性化するために、調節カラー14.5がアウタスリーブ15.3と共働している状態を示している。
【0049】
調節リング14.1には切換えレバー14.6が対応配置されていて、この切換えレバー14.6には、ここでは図示されていないアクチュエータが係合している。
図5の左側の図半部に示された作動状況において、調節リング14.1はアウタスリーブ15.3に接触していて、かつこれによってピン21との結合部を形成している。そのために調節リング14.1は、保持手段23を介して、ピン21の周囲に保持される。
【0050】
緩衝装置13の、
図5に示された実施形態では、切換え不能なばね緩衝器エレメント13.1は、インナスリーブ15.1とセンタスリーブ15.4との間におけるゴムダンパ15.2によって形成される。ヨーク保持体12と架台プレート1.2との間における力伝達は、ハウジング22、センタスリーブ15.4、ゴムダンパ15.2、インナスリーブ15.1、およびピン21を介して行われる。ゴムダンパ15.2によって、架台プレート1.2の恒常的な基本緩衝作用が保証されている。
【0051】
架台プレート1.2における剛性および緩衝作用を変化させるために、調節リング14.1は切換えレバー14.6を介して回転させられ、これによってピン21をアウタスリーブ15.3に結合させることができる。この状況は、
図5の左側の図半部に示されている。いまや追加的な力伝達が、外側のゴムダンパ15.5を介してヨーク保持体12と架台プレート1.2との間において行われる。これによって剛性および緩衝作用が高められる。切換え可能なばね緩衝器エレメント13.2は、センタスリーブ15.4、ゴムダンパ15.5、およびアウタスリーブ15.3によって形成される。
【0052】
緩衝装置13の、
図5に示された実施形態は、これによって極めてコンパクトであり、巻取り機の機械架台内に組み込むことができる。さらにゴムダンパ15.2,15.5はハウジング22の内部において周囲に対して遮蔽されている。
【0053】
本発明に係る巻取り機は、多数の巻取り箇所においても、糸を巻取りスピンドルの比較的大きな回転数範囲においてボビンに巻き取ることができる。このようにして、特に、2500m/分未満の比較的ゆっくりとした巻取り速度をも得ることができる。
【0054】
図面に示された緩衝装置は、ばね緩衝器エレメントにおけるその構造およびデザインに関して一例である。本発明にとって重要なのは、ばね緩衝器エレメントのうちの少なくとも1つのばね緩衝器エレメントが、緩衝作用および剛性を変化させるために活性化可能または不活性化可能であることである。同様に、架台プレートにおける緩衝装置の取付けも一例である。したがって緩衝装置を、巻取り機の他の振動敏感箇所に取り付けることも可能である。