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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
   A01D 45/10 20060101AFI20220228BHJP
【FI】
A01D45/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020021939
(22)【出願日】2020-02-12
(62)【分割の表示】P 2016223576の分割
【原出願日】2016-11-16
(65)【公開番号】P2020072749
(43)【公開日】2020-05-14
【審査請求日】2020-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福元 健氏
(72)【発明者】
【氏名】北岡 治正
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-337036(JP,A)
【文献】特許第6662756(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0135365(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 45/10
A01D 57/00-57/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取装置と、刈取装置によって刈り取った茎幹を横倒し姿勢で搬送する搬送装置と、搬送装置で搬送された茎幹を所定寸法で切断する処理部を備えた収穫機であって、
機体フレームの前部に昇降リンク機構を介して引起し装置が昇降可能に配置され、
前記昇降リンク機構は、前リンク機構と後リンク機構を有し、
前記前リンク機構は、前記後リンク機構に対して揺動規制部によって所定角度内で昇降自在に取り付けられ、
前記前リンク機構のうち、前記揺動規制部によって揺動が規制される前記前リンク機構のリンクは最下端位置のとき前上がり傾斜の状態で前記揺動規制部によって揺動が規制される
ことを特徴とする収穫機。
【請求項2】
前記後リンク機構は、昇降駆動手段により昇降される
ことを特徴とする請求項1に記載の収穫機。
【請求項3】
前記前リンク機構と前記後リンク機構は、同一のフレーム部材をそれぞれ接続し、
前記前リンク機構は、所定角度内で自由揺動可能で、前記後リンク機構は、自由揺動範囲と前記昇降駆動手段による揺動範囲とを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫機の引起し装置の昇降装置に関し、特に、サトウキビ収穫機の引起し装置を更に広い範囲で自由揺動できるようにする昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引起し装置が前リンク機構と後リンク機構からなる昇降装置により支持され、前リンク機構により引起し装置が昇降され、後リンク機構により前後移動可能に構成されたサトウキビ収穫機は公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭58-161425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1における技術の場合、引起し装置の昇降高さが十分ではなく、トラックへ載せたり下したりするときに、引起し装置がアユミや地面と干渉するおそれがあった。そこで、引起し装置を前リンク機構と後リンク機構より構成される昇降リンク機構で昇降可能に支持し、後リンク機構が昇降駆動手段により昇降され、前リンク機構が所定角度内で後リンク機構に対して昇降自在に取り付けられる構造とし、上記不具合を解消するものである。これにより、十分な上昇量が確保でき、引起し装置が地面やアユミに干渉しないサトウキビ収穫機を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、刈取装置と、刈取装置によって刈り取った茎幹を横倒し姿勢で搬送する搬送装置と、搬送装置で搬送された茎幹を所定寸法で切断する処理部を備えた収穫機であって、機体フレームの前部に昇降リンク機構を介して引起し装置が昇降可能に配置され、前記昇降リンク機構は、前リンク機構と後リンク機構を有し、前記前リンク機構は、前記後リンク機構に対して揺動規制部によって所定角度内で昇降自在に取り付けられ、前記前リンク機構のうち、前記揺動規制部によって揺動が規制される前記前リンク機構のリンクは最下端位置のとき前上がり傾斜の状態で前記揺動規制部によって揺動が規制されるものである。
【0006】
請求項2においては、前記後リンク機構は、昇降駆動手段により昇降されるものである。
請求項3においては、前記前リンク機構と前記後リンク機構は、同一のフレーム部材をそれぞれ接続し、前記前リンク機構は、所定角度内で自由揺動可能で、前記後リンク機構は、自由揺動範囲と前記昇降駆動手段による揺動範囲とを有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
本発明によれば、収穫機が圃場に入るときや出るときやトラックに積み込むときに、地面やアユミに干渉しないように、引起し装置の前部を上昇させることができる。
【0008】
また、同一のフレーム部材を共有するようになるため、引起し装置が前から荷重がかかったとき前リンク機構が昇降範囲の上昇限度になった以降の荷重が同一のフレーム部材を通して後リンク機構にかかるので、前リンク機構で回避しきれない荷重を後リンク機構の自由揺動で回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】サトウキビ収穫機の全体構成を示した側面図。
図2】サトウキビ収穫機の全体構成を示した正面図。
図3】引起し装置と昇降リンク機構の側面図。
図4】引起し装置と昇降リンク機構の斜視図。
図5】メインリンクの側面図。
図6】前四節リンクと後四節リンクによる自由揺動範囲を示す図。
図7】分草具の側面図。
図8】分草具の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、図1図2より、収穫機をサトウキビ収穫機1とした実施例の全体構造について説明する。なお、F方向を前方として、前後方向を規定して説明する。サトウキビ収穫機1は、走行部としてクローラ式走行装置10上に機体フレーム30を支持し、該機体フレーム30に刈取装置や搬送装置や処理部や風選装置7や排出部80が取り付けられる。該機体フレーム30の前部の左右に刈取部取付フレーム31が上下方向に固設され、該刈取部取付フレーム31の上部に平行リンク機構32を介してトップカッター17が取り付けられ、刈取部取付フレーム31に後述する昇降リンク機構12を介して左右一対の引起し装置となるクロップデバイダ2・2が取り付けられる。なお、走行部はホイル式であってもかまわない。
【0011】
前記クロップデバイダ2は左右対称に構成されるため左右一方について説明する。クロップデバイダ2は後傾して配設される分草フレーム2aの前部にオーガ2b・2cが分草フレーム2aと略平行に配置して回転可能に支持され、分草フレーム2aの上部に設けた油圧モータ2d・2eにより駆動されるようにしている。分草フレーム2aの下部から前方に側面視略三角形状の分草具40が突設されている。こうして、サトウキビを引き起こしながら機内に引き込む。
【0012】
前記トップカッター17は前記クロップデバイダ2の前上方に昇降可能に配置され、平行リンク機構32が油圧シリンダの伸縮により高さ調節可能に昇降される。トップカッター17は下部の左右中央に切断刃を備え、切断刃の左右両側からサトウキビの上部を左右中央へ寄せるように左右外側方へ突出するガイド棒33やガイド板34等を備える。こうして、サトウキビの上部の不要な葉部分を機体左右中央に寄せて切断刃により切断するようにしている。
【0013】
左右のクロップデバイダ2・2の間の後方には、掻込ロータ13と刈取装置となるベースカッター3と前搬送装置4が前搬送フレーム14に支持されている。該前搬送フレーム14は左右一対設けられて、後部が後搬送装置5の前端位置で機体フレーム30に上下回動自在に枢支される。該前搬送フレーム14の前部と機体フレーム30との間には油圧シリンダが介装されて、油圧シリンダを伸縮させることによりベースカッター3や掻込ロータ13を昇降して高さを調節可能としている。
【0014】
前記ベースカッター3は前搬送フレーム14の前部から下方に垂設する左右の支持筒3a・3aと、支持筒3a・3aの下端に固設される支持円板の外周に固設される複数の刈刃3b・3b・・・と、前記支持円板上に固設され棒状の螺旋3c・3cと、刈刃3b及び螺旋3cを回転駆動する油圧モータ等からなる。前記掻込ロータ13は、前記左右の前搬送フレーム14の前端に左右方向に軸心を有し回転自在に支持される回動軸と、該回動軸上に固設される羽根体からなり、回動軸は油圧モータにより回転駆動される。
【0015】
前搬送装置4は、左右方向に軸心を有し上下一対の送りローラが前後方向に複数組配置され、送りローラのローラ軸の両側が左右の搬送ケースに回転自在に支持され、上側のローラ軸はチェーンにより動力伝達可能に構成され、下側のローラ軸はギヤにより動力伝達可能に構成され、それぞれ油圧モータと連結されている。
【0016】
こうして、掻込ロータ13の回転によりサトウキビの茎幹が掻き込まれて、株元がベースカッター3の刈刃3b・3bの回転により切断され、同時に螺旋3c・3cの回転により茎幹の下端(根元)が跳ね上げられる。跳ね上げられたサトウキビは、その直後に配置された前搬送装置4に根元から引き込まれ、前搬送装置4の送りローラで斜め後上方に送られる。
【0017】
前搬送装置4の後部は後搬送装置5の前部に位置される。該後搬送装置5は上側と下側にそれぞれ適宜間隔をあけて後方へ送るローラ式コンベアから構成される。こうして、ベースカッター3により切断された後のサトウキビは前搬送装置4により後方へ送られて後搬送装置5に受け継がれて斜め後上方に搬送される。こうして、前搬送装置4と後搬送装置5により搬送装置を構成している。
【0018】
前記後搬送装置5の後部には処理部となるチョッピング装置6が配設される。チョッピング装置6はカッターからなる。カッターは左右方向に軸心を有する上下一対のカッター軸上にブレード刃が固定され、サトウキビが回転する上下のブレード刃の間を通過するときに所定寸法で切断されながら後方へ飛ばされるようにしている。
【0019】
風選装置7は、チョッピング装置6の後上部に設けられるブロワケース7aと、ブロワケース7a内に収納されるブロワからなる。ブロワケース7aは下方と上側方が開口され、ブロワケース7aの下部はチョッピング装置6と連通され、上側方が葉や塵等の排出口としている。ブロワケース7aは上下方向の軸心を中心に回動可能とされ、排出方向を変更可能としている。ブロワは上下方向を軸心としてブロワケース7a内に収納され、ブロワを回転駆動することにより、下から上方への高速空気流が発生されて前記拡散ロータの回転により拡散され、細断後の葉や塵を上方へ吸い込んで側方または後方に排出できるようにし、重い茎幹は下方の排出コンベア8の下部に設けたホッパー18上に落下する。
【0020】
排出コンベア8は、下部が機体フレーム30の後部に設けた旋回台20上に支持され、該旋回台20は上下方向を軸心として左右回動可能に支持されている。該排出コンベア8を左右回動して、排出方向を変更可能に構成している。但し、本実施形態では、機体フレーム30の後部に排出コンベア8を取り付けているが、機体フレーム30の後部に収納袋を取り付けて落下するサトウキビを収納する構成とすることもできる。
【0021】
前記機体フレーム30の前部左右中央上には操縦部が配置され、該操縦部はキャビン19により覆われている。該キャビン19内には座席やステリングハンドルや変速レバー等が配設される。前記キャビン19の後方の前搬送装置4の上方に駆動源となるエンジンが配置され、該エンジンには走行用や搬送装置駆動用の油圧モータや昇降用の油圧シリンダ等を作動させるための油圧ポンプが連結されて駆動される。
【0022】
前記昇降リンク機構12は、左右一対の前四節リンク50と後四節リンク60と昇降駆動手段となる油圧シリンダ70等を備える。昇降リンク機構12は左右対称に構成されるため、左側について説明する。図3図4に示すように、後四節リンク60は上リンク61と下リンク62と支持軸63・64・65・66と前リンク67等を備える。
【0023】
上リンク61はメインリンク61a・61aと補強リンク61bと連結ロッド61cからなり、上リンク61の後部は前記刈取部取付フレーム31の上部に支持軸63を介して回転自在に枢支される。上リンク61の前部は支持軸65を介して前リンク67の上部に回転自在に支持されるとともに、前四節リンク50の上リンク51後部も回転自在に支持される。また、上リンク61の前上部に油圧シリンダ70の一端(本実施形態ではロッド先端)が支持軸68を介して連結される。該油圧シリンダ70の先端には後四節リンク60の揺動規制部71が配設されて、他端は刈取部取付フレーム31の下部に枢支されている。揺動規制部71は本実施形態では、ロッド先端に伸縮方向と平行に長孔が形成され、該長孔に前記支持軸68が貫通され、長孔内で摺動自在としている。こうして、後四節リンク60、つまり、分草装置となるクロップデバイダ2は揺動規制部71となる長孔内で上下揺動自在となっている。こうして、図6(a) で示すように、油圧シリンダ70を伸縮させることで、クロップデバイダ2を大きく昇降することができる。また、図6(b)から図6(c)のように、揺動規制部71で規制される範囲で揺動自在としている。
【0024】
前記メインリンク61aは図4図5に示すように、前部は略三角形状に形成されており、左右のメインリンク61a・61aの後部は軸受パイプ69を挿入固定支持するための支持孔61a1・61a1が開口され、前記軸受パイプ69に支持軸63が挿入されて、該支持軸63の両側が刈取部取付フレーム31に連結支持される。メインリンク61aの前後中途部には連結ロッド61cを挿入固定する固定孔61a2が開口され、前上部に油圧シリンダ70と連結する支持軸68を挿入支持する支持孔61a3が開口されている。左右のメインリンク61a・61aの前下部には軸受パイプ73を挿入固定する支持孔61a4・61a4が開口され、前記軸受パイプ73に支持軸65が挿入され、支持軸65の両側に上リンク51の後部が支持される。メインリンク61aの前辺の下部には前四節リンク50の揺動規制部72が形成されている。
【0025】
揺動規制部72は後四節リンク60の上リンク61の前部に凹部が形成され、該凹部内に後述する前四節リンク50の上リンク51に固定した連結ロッド55が揺動可能に配置されて、この凹部の範囲内で前四節リンク50が上下方向に揺動自在としている。但し、凹部の代わりに長孔とすることも可能である。揺動規制部72により規制されるときの前四節リンク50の最下端位置、つまり、クロップデバイダ2を最下降させた状態での上リンク51及び下リンク52の角度は、前上がりの傾斜となるように設定され、前方より荷重がかかると、上リンク51及び下リンク52は上方へ回動して、衝撃荷重を逃がすようにしている。こうして、図6(a) から図6(b)のように揺動規制部72で規制される範囲で揺動自在としている。
【0026】
前記下リンク62は後部が支持軸64により刈取部取付フレーム31の下部に回動自在に枢支され、前部が前リンク67の下部に支持軸66により回転自在に支持されるとともに、前四節リンク50の下リンク52の後部支持軸66により回転自在に支持されている。なお、下リンク62は二本のメインリンクと補強リンクとにより上リンク61と略同じ構成としているが、一本のリンクで構成することも可能である。
【0027】
そして、上リンク61と下リンク62の長さを同じ長さとし、支持軸63と支持軸64の間隔と支持軸65と支持軸66の間隔を同じ長さとすることにより、平行リンクを構成している。但し、支持軸65と支持軸66の間隔を支持軸63と支持軸64の間隔よりも短く構成して台形のリンク構成として、昇降範囲を規制する構成とすることもできる。こうして、後四節リンク60は上リンク61と下リンク62により平行リンクを構成して、油圧シリンダ70を伸縮させることで昇降可能とし、揺動規制部71の範囲内で上下揺動自在としている。
【0028】
前四節リンク50は、上リンク51と下リンク52と支持軸53・54と、前リンク67と分草フレーム2aと支持軸65・66等を備える。前リンク67と支持軸65・66は後四節リンク60と共用させている。上リンク51は左右のリンク部材51a・51aと、該リンク部材51a・51を連結する連結ロッド55からなる。上リンク51の後部が前リンク67の上部に支持軸65を介して上下揺動自在に支持され、上リンク51の前部が支持軸53を介して分草フレーム2aの上部に上下揺動自在に枢支される。連結ロッド55は前記揺動規制部72の凹部内に揺動可能に配置され、前四節リンク50の上下揺動可能範囲が規制される。なお、前四節リンク50の上昇限界は下リンク52の連結ロッド55が前リンク67の前面に当接させて規制することも可能である。
【0029】
下リンク52は左右のリンク部材52a・52aと連結ロッド55からなり、前記上リンク51と同じ構成として、共通部品としてコスト低減化を図っている。こうして、前四節リンク50は上リンク51と下リンク52とにより平行リンクを構成し、引起し装置となるクロップデバイダ2や分草部となる分草具40を所定の範囲内で上下揺動自在としている。但し、前四節リンク50は台形の四節リンクとすることも可能である。このように、前四節リンク50と後四節リンク60は、クロップデバイダ2を下降させて分草部の下端を接地させた状態では、自重により揺動規制部71では支持軸68が長穴の最下降位置に位置し、揺動規制部72では支持軸63が凹部の最下降位置に位置させており、地面の凹凸に追従できるように、揺動規制部71・72の規制範囲内で揺動自在となっている。なお、作業時にクロップデバイダ2が軽くて飛び跳ねるような場合には、ウエイトを分草部に取り付けたり、バネ等の付勢部材を取り付けて下方へ押しつける構成としても構わない。
【0030】
以上のように、刈取装置となるベースカッター3と、ベースカッター3によって刈り取った茎幹を横倒し姿勢で搬送する搬送装置となる前搬送装置4と後搬送装置5と、搬送装置で搬送された茎幹を所定寸法で切断する処理部となるチョッピング装置6とを備えたサトウキビ収穫機1であって、機体フレーム30の前部に昇降リンク機構12を介して引起し装置となるクロップデバイダ2が昇降可能に配置され、該昇降リンク機構12は、前四節リンク50と後四節リンク60より構成され、後四節リンク60は昇降駆動手段となる油圧シリンダ70により昇降され、前四節リンク50は揺動規制部72で規制される所定角度内で後四節リンク60に対して昇降自在に取り付けられるので、前後二つの四節リンク50・60により従来よりも昇降範囲を拡大することができ、圃場へ入るときや出るとき、トラックへの積み込みや積み下ろしのとき、圃場に大きな凸部が存在する時などで、引起し装置となるクロップデバイダ2は前端に配置される分草具40が地面やアユミに突っ込んで破損することを防止できるようになった。また、前四節リンク50と後四節リンク60を別々に昇降することが可能となり、作業状態に合わせて引起し装置の高さを上下動できる。
【0031】
また、前記前四節リンク50は揺動規制部72により所定角度内で自由揺動可能で、前記後四節リンク60は揺動規制部71による自由揺動範囲と昇降手段となる油圧シリンダ70の伸縮による揺動範囲とを有するので、突き上げ量が大きい場合には、前四節リンク50と後四節リンク60の両方が上方回動し、従来よりも更に高い障害物等に対しても回避動作が可能となり、干渉しなくなる範囲を拡大できる。
【0032】
また、前記引起し装置となるクロップデバイダ2へ後ろ向き荷重が入力された場合に、前記前四節リンク50はクロップデバイダ2が上昇する方向に自由揺動するので、クロップデバイダ2が圃場の凸部に至ると、図6(a) から図6(b)(c)順に揺動規制部72・71において自由揺動してクロップデバイダ2が上昇され、凸部に突っ込むことなく上方に逃げることになり、引起し装置の破損を防止できる。
【0033】
そして、前記クロップデバイダ2の下部、即ち、分草フレーム2aの下端からは前方へ分草具40が突設して設けられている。図7図8に示すように、分草具40は前記分草フレーム2aの下端に取り付けられる固定分草部41と、該固定分草部41の前部に取り付けられる可動分草部42からなる。
【0034】
固定分草部41は平面視三角形状に形成される底板41aの後部が分草フレーム2aの下端に固設され、底板41aの前部に、半円錐状の後ろ上がり、かつ、後ろ横広がりのガイド面41bが形成され、該ガイド面41bの左右中央前部に取付溝部41cが前後方向に形成される。該取付溝部41cは二枚のプレートを左右所定間隔をあけて底板41a上に固設して形成している。該取付溝部41cに可動分草部42が上下回転可能に取り付けられる。
【0035】
前記可動分草部42は側面視略三角形状のプレートで構成し、上面は後ろが徐々に高くなるように傾斜面42cが形成され、傾斜面42cが固定分草部41の取付溝部41cの上辺に合せた形状に形成され、可動分草部42の前後中途部の上部に支持孔42aが開口され、該支持孔42aと取付溝部41cのプレートに回転軸43を挿入して、可動分草部42を回転自在に支持している。該支持孔42aは側面視略三角形状として前部が上下方向に広くなるように形成し、回転軸43に支持された状態ではガタを有している。可動分草部42の後部は位置決め部材44により固定分草部41に連結される。位置決め部材44は可動分草部42に対して前方から後方へ設定値以上の荷重がかかると開放するように構成される。
【0036】
位置決め部材44は本実施形態では、可動分草部42の後部に固定孔42bを開口し、固定分草部41に開口した固定孔と前記固定孔42bにシャーボルトを挿入して構成している。こうして、前方より設定値以上の荷重が可動分草部42にかかると、シャーボルトが破断し可動分草部42が回転自在となるようにしている。なお、位置決め部材44はシャーボルトに限定するものではなく、固定分草部41または可動分草部42のいずれか一方にノッチ等の凸部を形成し、他方に該ノッチに嵌合する凹部を形成し、両者が嵌合する方向に付勢部材で付勢することにより、設定値以上の荷重がかかると該凸部と凹部の嵌合が開放されるように構成することもできる。
【0037】
このような構成において、前方から可動分草部42に設定値以上の荷重がかかると、シャーボルトが破断し、図7に示すように、可動分草部42は後方へ移動する。この状態で可動分草部42は回転軸43により回転自在となる。次に、可動分草部42の先端は回転軸43よりも下方に位置するため、その荷重により可動分草部42は前部が下がるように回転軸43を中心に回動し、可動分草部42底辺が取付溝部41cの前下部41dに当接することによって停止する。この状態では、可動分草部42の上前部の傾斜面42cは前上がりの斜面となっている。従って、分草具40が凸部等の障害物に当接したときには、可動分草部42が回転して傾斜面42cの前上がり傾斜にガイドされて引起し装置となるクロップデバイダ2は上昇され、分草具40が凸部に突っ込んで機体を破損させることを防止している。
【0038】
以上のように、刈取装置と、刈取装置によって刈り取った茎幹を横倒し姿勢で搬送する搬送装置4・5と、搬送装置4・5で搬送された茎幹を所定寸法で切断する処理部となるチョッピング装置6を備えたサトウキビ収穫機1であって、機体フレーム30の前部には、引起し装置となるクロップデバイダ2が昇降可能に配置され、クロップデバイダ2の前端に後ろ上がりのガイド面を有する分草具40が設けられ、該分草具40は、前側の可動分草部42と固定分草部41からなり、可動分草部42は、回転軸43を中心に前端が下がるように回転する構成とされるので、分草具40前端に、荷重がかかると可動分草部42が下方に回転して、クロップデバイダ2に大きな荷重がかかることを回避できる。
【0039】
前記可動分草部42は、固定分草部41に対して、位置決め部材44により設定値以上の荷重がかかるまでは回動しないように固定されているので、通常作業時には、可動分草部42と固定分草部41とが一体的に分草してガイドすることができる。
【0040】
また、前記可動分草部42は固定分草部41に対して、回転軸43と位置決め部材44とで連結され、設定値以上の荷重がかかると、位置決め部材44が開放状態となるので、障害物に衝突するような異常負荷に対して置決め部材44が開放されて、可動分草部42が回転軸43を中心に回動して、衝撃を低減することができる。
【0041】
前記可動分草部42は、回転後に、後ろ下がりの傾斜面42cを下部に有するので、障害物と衝突したときには、可動分草部42が回転して傾斜面42cによって障害物に乗り上げ、分草具40が障害物に突っ込んで破損することを防止できる。
【符号の説明】
【0042】
1 サトウキビ収穫機
2 クロップデバイダ
3 ベースカッター
4 前搬送装置
5 後搬送装置
6 チョッピング装置
12 昇降リンク機構
30 機体フレーム
50 前四節リンク
60 後四節リンク
70 油圧シリンダ
71・72 揺動規制部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8