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特許7030924自動ジャーテスト装置およびそれを用いた濁水処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】自動ジャーテスト装置およびそれを用いた濁水処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/30 20060101AFI20220228BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20220228BHJP
   C02F 1/52 20060101ALI20220228BHJP
   C02F 1/56 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
B01D21/30 A
B01D21/01 C
B01D21/01 B
C02F1/52 Z
C02F1/56 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020168103
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591168426
【氏名又は名称】菅機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096839
【弁理士】
【氏名又は名称】曽々木 太郎
(72)【発明者】
【氏名】丹保 公仁
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-006346(JP,A)
【文献】特開平11-347599(JP,A)
【文献】中国実用新案第207418356(CN,U)
【文献】特開2007-061800(JP,A)
【文献】特開2012-035241(JP,A)
【文献】特開2019-181318(JP,A)
【文献】国際公開第2013/062003(WO,A1)
【文献】特開2015-171678(JP,A)
【文献】特開平03-284305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
C02F 1/52- 1/56
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャーテストを自動的に行う自動ジャーテスト装置であって、
前記自動ジャーテスト装置は、入力部と、入力処理部と、演算処理部と、電流指令値生成部と、出力処理部と、出力部とを備え、
前記演算処理部は、濁度センサから入力される濁度に基づいて凝集剤の単位添加量を算出する単位添加量算出部と、前記単位添加量算出部により算出された単位添加量および入力された処理水量に基づいて凝集剤添加量を算出する凝集剤添加量算出部とを含み、
前記濁度センサは、原水を貯留する受入槽の濁度を検出するものとされ、
前記電流指令値生成部は、前記凝集剤添加量算出部により算出された凝集剤添加量に基づいて凝集剤添加装置用駆動モータの駆動用電流指令値を生成する
ことを特徴とする自動ジャーテスト装置。
【請求項2】
濁度センサから入力される濁度が基準値内にあるか否かを判定する判定部を有してなることを特徴とする請求項1記載の自動ジャーテスト装置。
【請求項3】
判定部の判定結果が不合格とされた場合、濁度に対する凝集剤の添加量を補正する補正部を有することを特徴とする請求項2記載の自動ジャーテスト装置。
【請求項4】
ジャーテストがなされる受入槽が攪拌装置を有し、
前記攪拌装置が攪拌装置駆動用モータを有し、
電流指令値生成部が、前記攪拌装置駆動用モータの電流指令値を生成するようにされてなることを特徴とする請求項1記載の自動ジャーテスト装置。
【請求項5】
入力装置を付加して備え、
前記入力装置は、処理水量設定部を有してなることを特徴とする請求項1記載の自動ジャーテスト装置。
【請求項6】
入力装置を付加して備え、
前記入力装置は、凝集剤の添加と判定とに切り替える添加/判定切替スイッチを有してなることを特徴とする請求項2記載の自動ジャーテスト装置。
【請求項7】
入力装置を付加して備え、
前記入力装置は、攪拌装置の作動時間を設定するタイマースイッチを有してなることを特徴とする請求項4記載の自動ジャーテスト装置。
【請求項8】
出力装置を付加して備え、
前記出力装置は、判定結果を出力するようにされてなることを特徴とする請求項2記載の自動ジャーテスト装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の自動ジャーテスト装置を用いた濁水処理方法であって、
原水を受入槽に貯留しその濁度を検出してジャーテストをすることを特徴とする濁水処理方法。
【請求項10】
ジャーテストを濁水処理を停止してすることを特徴とする請求項9記載の濁水処理方法。
【請求項11】
処理水量は、ジャーテスト中に濁水処理が停止されて処理されなった処理水量を補償する処理水量とすることを特徴とする請求項10記載の濁水処理方法。
【請求項12】
請求項3記載の自動ジャーテスト装置を用いた濁水処理方法であって、
原水を受入槽に貯留して濁度の検出がなされ、その検出された濁度および入力された処理水量に基づいて凝集剤添加量の算出がなされ、
判定部の判定結果が合格の場合には濁水処理し、
判定部の判定結果が不合格の場合には、濁度の程度に応じて単位添加量算出部の単位添加量の添加割合を補正し、
前記補正された単位添加量に基づいて凝集剤添加量を算出し、前記算出された凝集剤添加量により濁水処理することを特徴とする濁水処理方法。
【請求項13】
請求項4記載の自動ジャーテスト装置を用いた濁水処理方法であって、
原水を受入槽に貯留して濁度の検出がなされ、
受入槽に貯留した原水を攪拌した後にジャーテストをすることを特徴とする濁水処理方法。
【請求項14】
凝集剤はポリ塩化アルミニウムであることを特徴とする請求項9記載の濁水処理方法。
【請求項15】
凝集剤は高分子凝集剤であることを特徴とする請求項9記載の濁水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ジャーテスト装置およびそれを用いた濁水処理方法に関する。さらに詳しくは、ジャーテストを利用した濁水処理システムにおいて原水の性状にマッチした処理がなし得る自動ジャーテスト装置およびそれを用いた濁水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場や工事現場等における濁水を所定規制値内に収めて放流するため、凝集剤やpH調整剤(以下、単に添加剤ということもある)の添加が原水に対してなされている。
【0003】
しかるに、原水の水質は季節的な要因などにより一定ではないため、凝集剤やpH調整剤の添加量は、原水の水質変動に応じて調整する必要がある。
【0004】
この添加量の調整は、多くの場合オペレータの勘や経験に基づいてなされている。そのため、水質変動に応じた添加剤の適切な添加がなされていないという問題がある。
【0005】
かかるオペレータの勘と経験に基づいた添加量の調整から脱すべく、添加量の調整をフィードフォワード制御(以下、FF制御という)によりなされる場合がある。このFF制御においては、原水の濁度から演算処理により添加量を算出し、その算出された添加量が原水に添加されている。
【0006】
しかしながら、演算処理に用いられる演算式は過去の水質データに基づいて作成されているため、現状の水質にマッチしていない場合がある。その結果、添加剤の適切な添加がなされず、添加剤の添加が過多となったり、その逆に過少となったりする。
【0007】
なお、浄水場の汚濁物質処理方法については、特許文献1に提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-223690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、濁水処理システムにおいて原水の性状にマッチした添加剤の添加がなし得る自動ジャーテスト装置およびそれを用いた濁水処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の自動ジャーテスト装置は、ジャーテストを自動的に行う自動ジャーテスト装置であって、前記自動ジャーテスト装置は、入力部と、入力処理部と、演算処理部と、電流指令値生成部と、出力処理部と、出力部とを備え、前記演算処理部は、濁度センサから入力される濁度に基づいて凝集剤の単位添加量を算出する単位添加量算出部と、前記単位添加量算出部により算出された単位添加量および入力された処理水量に基づいて凝集剤添加量を算出する凝集剤添加量算出部とを含み、前記濁度センサは、原水を貯留する受入槽の濁度を検出するものとされ、前記電流指令値生成部は、前記凝集剤添加量算出部により算出された凝集剤添加量に基づいて凝集剤添加装置用駆動モータの駆動用電流指令値を生成することを特徴とする。
【0011】
本発明の自動ジャーテスト装置においては、濁度センサから入力される濁度が基準値内にあるか否かを判定する判定部を有してなるのが好ましく、判定部の判定結果が不合格とされた場合、濁度に対する凝集剤の添加量を補正する補正部を有するのがさらに好ましい。
【0012】
また、本発明の自動ジャーテスト装置においては、ジャーテストがなされる受入槽が攪拌装置を有し、前記攪拌装置が攪拌装置駆動用モータを有し、電流指令値生成部が、前記攪拌装置駆動用モータの電流指令値を生成するようにされてなるのが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の自動ジャーテスト装置の好ましい第1態様においては、入力装置を付加して備え、前記入力装置は、処理水量設定部を有してなることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の自動ジャーテスト装置の好ましい第2態様においては、入力装置を付加して備え、前記入力装置は、凝集剤の添加と判定とに切り替える添加/判定切替スイッチを有してなることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の自動ジャーテスト装置の好ましい第3態様においては、入力装置を付加して備え、前記入力装置は、攪拌装置の作動時間を設定するタイマースイッチを有してなることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の自動ジャーテスト装置の好ましい第4態様においては、出力装置を付加して備え、前記出力装置は判定結果を出力するようにされてなることを特徴とする。
【0017】
一方、本発明の濁水処理方法の第1態様は、前記いずれかに記載の自動ジャーテスト装置を用いた濁水処理方法であって、原水を受入槽に貯留しその濁度を検出して自動的にジャーテストをすることを特徴とする。その場合、ジャーテストを濁水処理を停止してするのが好ましく、処理水量はジャーテスト中に濁水処理が停止されて処理されなかった処理水量を補償する処理水量とするのがさらに好ましい。
【0018】
本発明の濁水処理方法の第2態様は、判定部を有する自動ジャーテスト装置を用いた濁水処理方法であって、原水を受入槽に貯留して濁度の検出がなされ、その検出された濁度および入力された処理水量に基づいて凝集剤添加量の算出がなされ、判定部の判定結果が合格の場合には濁水処理し、判定部の判定結果が不合格の場合、濁度の程度に応じて単位添加量算出部の単位添加量の添加割合を補正することを特徴とする。その場合、補正された単位添加量に基づいて凝集剤添加量を算出し、前記算出された凝集剤添加量により濁水処理するのが好ましい。
【0019】
本発明の濁水処理方法の第3態様は、受入槽が攪拌装置を有する自動ジャーテスト装置を用いた濁水処理方法であって、原水を受入槽に貯留して濁度の検出がなされ、前記受入槽に貯留した原水を攪拌した後にジャーテストをすることを特徴とする。
【0020】
しかして、本発明の濁水処理方法においては、凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウムが単独で用いられたり、あるいはポリ塩化アルミニウムと高分子凝集剤の両者が用いられたりする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の自動ジャーテスト装置は、前記の如く構成されているので、濁水処理を効率的になし得るという優れた効果を奏する。
【0022】
また、本発明の自動ジャーテスト装置の好ましい態様においては判定部を有するので、ジャーテストの判定が自動的になされるという優れた効果を奏する。
【0023】
一方、本発明の濁水処理方法は、自動ジャーテスト装置を用いてジャーテストしているので、ジャーテストにおける省力化が図られるという優れた効果を奏する。
【0024】
また、本発明の濁水処理方法は、原水を受入槽に貯留してジャーテストを行っているので、原水の性状にマッチした濁水処理がなし得るという優れた効果を奏する。
【0025】
さらに、本発明の濁水処理方法の好ましい態様においては、ジャーテストにより濁水処理が中断されても、その後にその中断された処理水量を補償するように処理水量の設定がなされるので、ジャーテストが濁水処理を中断してなされても処理に遅れを生じさせることはないという優れれた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態1に係る自動ジャーテスト装置の概略図である。
図2】同装置の演算処理部の概略図である。
図3】同実施形態の自動ジャーテスト装置が配設された濁水処理システムの要部概略図である。
図4】本発明の実施形態2に係る自動ジャーテスト装置の概略図である。
図5】同自動ジャーテスト装置に付加された入力装置の概略図である。
図6】同装置の演算処理部の概略図である。
図7】同実施形態の自動ジャーテスト装置が配設された濁水処理システムの要部概略図である。
図8】同システムの処理の流れを示すフローチャートの一例である。
図9】本発明の実施形態3に係る自動ジャーテスト装置の概略図である。
図10】同装置の演算処理部の概略図である。
図11】同演算処理部の凝集剤添加量算出部の概略図である。
図12】同装置の電流指令値生成部の概略図である。
図13】同実施形態の自動ジャーテスト装置が配設された濁水処理システムの要部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0028】
実施形態1
図1に、本発明の実施形態1に係る自動ジャーテスト装置Aを概略図で示す。なお、本実施形態では、凝集剤としてPAC(ポリ塩化アルミニウム)を例に取り説明されている。
【0029】
自動ジャーテスト装置Aは、図1に示すように、入力部10と、入力処理部20と、演算処理部30と、電流指令値生成部40と、出力処理部50と、出力部60とを備えてなるものとされる。なお、かかる処理部を有する自動ジャーテスト装置Aは、例えばマイコンにより構成される。
【0030】
入力部10は、入力装置(図示省略)から入力される処理水量とセンサ(図3参照)から入力される原水の濁度とを入力処理部20に送出するものとされる。
【0031】
入力処理部20は、入力部10から入力される処理水量と原水の濁度とを入力処理して演算処理部30に送出するものとされる。
【0032】
演算処理部30は、図2に示すように、単位処理水量に対するPAC添加量を算出する単位添加量算出部31と、前記単位添加量算出部31により算出された単位添加量に基づいて前記入力される処理水量に対するPAC添加量を算出するPAC添加量算出部32とを含むものとされる。
【0033】
単位添加量算出部31は、図2に示すように、濁度と単位添加量との関係を示すグラフをデータとして有し、入力処理部20から入力される濁度に応じた単位処理水量当たりのPAC添加量を前記グラフに基づいて算出し、ついで算出された単位処理水量当たりのPAC添加量をPAC添加量算出部32に送出するものとされる。なお、前記グラフは、例えば事前になされるジャーテストに基づいて作成される。
【0034】
PAC添加量算出部32は、前記単位添加量算出部31から入力される単位処理水量当たりのPAC添加量と、入力装置から入力される処理水量に基づいてPAC添加量を算出し、ついでその算出したPAC添加量を電流指令値生成部40に送出するものとされる。
【0035】
電流指令値生成部40は、メモリ(図示省略)に格納されているPAC供給ポンプ(図3参照)の流量・電流特性に基づいて前記PAC添加量算出部32から入力されるPAC添加量に対応した電流指令値を生成して出力処理部50に送出するものとされる。ここで、PAC供給ポンプは、例えばダイヤフラムポンプとされる。
【0036】
出力処理部50は、入力された電流指令値を出力処理して出力部60に送出するものとされる。
【0037】
出力部60は、出力処理部50から入力される電流指令値を濁水処理システムの制御装置(図3参照)に送出するものとされる。
【0038】
次に、図3を参照しながら、かかる構成とされた自動ジャーテスト装置Aを用いた濁水処理について説明する。なお、図3中の線路は、信号線、電力線、管路などを示す。
【0039】
ステップ1:原水を受入槽Rに一定時間貯留する。
【0040】
ステップ2:受入槽Rに貯留されている貯留水濁度、つまり撹拌中の濁度を濁度センサSで検出する。
【0041】
ステップ3:検出された濁度を自動ジャーテスト装置Aに入力する。
【0042】
ステップ4:自動ジャーテスト装置Aは、入力された処理水量および濁度に基づいてPAC添加量を算出する。
【0043】
ステップ5:自動ジャーテスト装置Aは、算出したPAC添加量に基づいてPAC供給ポンプ用駆動モータMPの電流指令値を生成する。
【0044】
ステップ6:自動ジャーテスト装置Aは、生成した電流指令値を制御装置Cに送出する。
【0045】
ステップ7:制御装置Cは、入力された電流指令値をPAC供給ポンプ用駆動モータドライバ(以下、PACドライバという)DPに送出する。
【0046】
ステップ8:PACドライバDPは、入力された電流指令値に基づいて駆動電流を生成する。
【0047】
ステップ9:PACドライバDPは、生成した駆動電流をPAC供給ポンプ用駆動モータMPに送給する。
【0048】
ステップ10:PAC供給ポンプ用駆動モータMPは、入力された駆動電流により駆動されてPAC供給ポンプPPを所定期間駆動する。
【0049】
ステップ11:PACを所定量添加する。
【0050】
なお、この処理においては、指定される処理水量は、ジャーテスト中に処理が中断されて処理できなかった処理水量を補償する処理水量とされている。つまり、ブースト処理がなされる。また、当然のことながら、ブースト処理により中断分が解消された後は通常の処理がなされる。
【0051】
このように、本実施形態によれば、原水を受け入れる受入槽Rにおいて一定時間貯留した貯留水の濁度を測定し、その濁度に応じたPAC添加をなしているので、原水の性状にマッチした濁水処理がなし得る。
【0052】
また、受入槽Rにおいて濁度を測定しているので、タイムラグを最小限に抑えることができる。
【0053】
さらに、ブースト処理がなされるので、一定時間受入槽Rに貯留してジャーテストをしたとしても、濁水処理に遅れを生じさせることはない。
【0054】
さらにまた、PAC添加量の適否の判定を受入槽Rにおいて一定時間撹拌した後の貯留水上部の上澄にて行っているので、実情に即したPAC添加がなされる。
【0055】
実施形態2
図4に、本発明の実施形態2に係る自動ジャーテスト装置A1を概略図で示す。
【0056】
自動ジャーテスト装置A1は、実施形態1を改変してなるものであって、図4に示すように、入力部10と、入力処理部20と、演算処理部30と、判定部70と、電流指令値生成部40と、出力処理部50と、出力部60とを備えるとともに、入力装置IPおよび出力装置OPを付加して備えてなるものとされる。なお、実施形態1と同一または類似の構成要素は、同一符号を付してその図示説明は省略する。
【0057】
入力装置IPは、図5に示すように、PAC添加と判定とに切り替える添加/判定切替スイッチI1と、処理水量を設定する処理水量設定部I2と、攪拌装置(図7参照)の攪拌時間を設定するタイマースイッチI3とを含むものとされる。
【0058】
攪拌速度は、例えば360rpmの一定回転速度とされている。
【0059】
演算処理部30は、図6に示すように、単位処理水量に対するPAC添加量を算出する単位添加量算出部31と、前記単位添加量算出部により算出された単位添加量に基づいて入力される処理水量に対するPAC添加量を算出するPAC添加量算出部32と、判定部70の判定結果が不合格の場合に単位添加量算出部31における濁度と単位添加量との関係を補正する補正部33とを含むものとされる。
【0060】
判定部70は、判定基準値をデータとして有し、濁度センサSから入力された上澄の濁度が基準値をクリアしているか否か判定し、クリアしていれば合格の判定結果を出力処理部50に送出する一方、クリアしていなければ不合格の判定結果を演算処理部30および出力処理部50に送出するものとされる。
【0061】
補正部33は、例えば、PAC添加後に測定された濁度に対する単位処理水量に対するPAC添加量を、当初にPAC添加量の算出に用いられた濁度と単位処理水量に対するPAC添加量との関係に基づいて算出するものとされる。
【0062】
電流指令値生成部40は、実施形態1の電流指令値生成部40と同様にPAC供給ポンプ用駆動モータMPの電流指令値を生成するとともに、メモリに格納されている攪拌装置AJの攪拌装置用駆動モータMAの電流特性および指定された速度に基づいて、タイマースイッチI3により指定された駆動期間の電流指令値を生成して出力処理部50に送出するものとされる。
【0063】
出力処理部50は、入力された判定結果を出力部60に送出するとともに、生成された電流指令値を出力部60に送出するものとされる。
【0064】
出力部60は、入力された判定結果を出力装置OPに送出するとともに、生成された電流指令値を濁水処理システムの制御装置(図7参照)Cに送出するものとされる。
【0065】
出力装置OPは、例えば画像表示装置やプリンターとされて、入力された判定結果を出力するものとされる。例えば、画像表示装置に判定結果を表示するものとされる。
【0066】
次に、図7および図8を参照しながら、かかる構成とされた自動ジャーテスト装置A1による濁水処理について説明する。なお、図7中の線路は、信号線、電力線、管路などを示す。
【0067】
まず、PAC添加について説明する。
【0068】
ステップ21:入力装置IPの添加/判定切替スイッチI1を添加にセットする。
【0069】
ステップ22:入力装置IPの処理水量設定部I2により処理水量を設定する。
【0070】
ステップ23:入力装置IPは、設定された処理水量を自動ジャーテスト装置A1に入力する。
【0071】
ステップ24:濁度センサSから濁度を自動ジャーテスト装置A1に入力する。
【0072】
ステップ25:自動ジャーテスト装置A1は入力された処理水量および濁度に基づいてPAC添加量を算出する。
【0073】
ステップ26:自動ジャーテスト装置A1は算出したPAC添加量に対応したPAC供給ポンプ用駆動モータMPの電流指令値を生成するとともに、攪拌装置用駆動モータMAの電流指令値を生成する。
【0074】
ステップ27:自動ジャーテスト装置A1は、生成したPAC供給ポンプ用駆動モータMPの電流指令値および攪拌装置用駆動モータMAの電流指令値を制御装置Cに送出する。
【0075】
ステップ28:制御装置Cは、PAC供給ポンプ用駆動モータMPの電流指令値をPACドライバDPに入力するとともに、攪拌装置用駆動モータMAの電流指令値を攪拌装置ドライバDAに入力する。
【0076】
ステップ29:PACドライバDPは、電流指令値に基づいてPAC供給ポンプ用駆動モータMPの駆動用電流を生成するとともに、攪拌装置ドライバDAは攪拌装置用駆動モータMAの駆動用電流を生成する。
【0077】
ステップ30:PACドライバDPは、生成した駆動用電流をPAC供給ポンプ用駆動モータMPに送給するとともに、攪拌装置ドライバDAは生成した駆動用電流を攪拌装置用駆動モータMAに送給する。
【0078】
ステップ31:PAC供給ポンプ用駆動モータMPは、供給された駆動用電流によりPAC供給ポンプPPを所定時間駆動するとともに、攪拌装置用駆動用モータMAは、供給された駆動電流により攪拌装置AJを所定時間一定回転数で駆動する。
【0079】
ステップ32:PACを所定量添加する。
【0080】
次に、判定について説明する。
【0081】
ステップ41:入力装置IPの添加/判定切替スイッチI1を判定にセットする。
【0082】
ステップ42:濁度センサSから濁度を自動ジャーテスト装置A1に入力する。
【0083】
ステップ43:自動ジャーテスト装置A1は、入力された濁度に対し基準値に基づいて合否を判定する。
【0084】
ステップ44:自動ジャーテスト装置A1は、判定結果を出力装置OPに送出し、ステップ46に移行する。
【0085】
ステップ45:自動ジャーテスト装置A1は、判定結果が不合格であれば、その程度に応じて濁度と単位添加量との関係を補正し、ステップ47に移行する。
【0086】
ステップ46:出力装置OPは、入力された判定結果を例えば画像表示装置に出力する。
【0087】
ステップ47:自動ジャーテスト装置A1は補正されたPAC添加量に対応したPAC供給ポンプ用駆動モータMPの電流指令値を生成するとともに、攪拌装置用駆動モータMAの電流指令値を生成する。
【0088】
ステップ48:自動ジャーテスト装置A1は、生成したPAC供給ポンプ用駆動モータMPの電流指令値および攪拌装置用駆動モータMAの電流指令値を制御装置Cに送出する。
【0089】
ステップ49:制御装置Cは、入力されたPAC供給ポンプ用駆動モータMPの電流指令値をPACドライバDPに送出するとともに、攪拌装置用駆動モータMAの電流指令値を攪拌装置ドライバDAに送出する。
【0090】
ステップ50:PACドライバDPは、生成した駆動用電流をPAC供給ポンプ用駆動モータMPに送給するとともに、攪拌装置ドライバDAは生成した駆動用電流を攪拌装置用駆動モータMAに送給する。
【0091】
ステップ51:PAC供給ポンプ用駆動モータMPは、供給された駆動用電流によりPAC供給ポンプPPを所定時間駆動するとともに、攪拌装置用駆動用モータMAは、供給された駆動電流により攪拌装置AJを所定時間一定回転数で駆動する。
【0092】
ステップ52:PACを所定量添加する。
【0093】
このように、本実施形態によれば、PAC添加量が適正か否か自動的に判定されるという実施形態1では得られない効果も得られる。
【0094】
また、判定結果が不合格の場合、その程度に応じて濁度と単位添加量との関係が補正されるので、濁水処理の迅速化および省力化が図られる。
【0095】
実施形態3
本発明の実施形態3の要部を図9に示す。
【0096】
実施形態3は、図9に示すように、実施形態1を改変してなるものであって、凝集剤としてPACと高分子凝集剤とを混合して濁水処理をなすものとされる。なお、実施形態1と同一または類似の構成要素は、同一符号を付してその図示説明は省略する。
【0097】
以下、実施形態3の実施形態1と異なる点を中心に説明する。
【0098】
演算処理部80は、図10に示すように、単位添加量算出部81と、凝集剤添加量算出部82とを含むものとされる。
【0099】
単位添加量算出部81は、図10に示すように、濁度と単位添加量との関係を示すグラフをデータとして有し、入力処理部20から入力される濁度に応じた単位処理水量当たりの凝集剤添加量を前記グラフに基づいて算出し、ついで算出された単位処理水量当たりの凝集剤添加量を凝集剤添加量算出部82に送出するものとされる。なお、前記グラフは、例えば事前になされるジャーテストに基づいて作成される。また、PACと高分子凝集剤との添加割合も事前のジャーテストにより決定される。例えば、高分子凝集剤とPAC添加量との混合比が重量比で1対1.5ないし1対10とされる。
【0100】
凝集剤添加量算出部82は、図11に示すように、総添加量算出部82aと、PAC添加量算出部82bと、高分子凝集剤添加量算出部82cとを含むものとされる。
【0101】
総添加量算出部82aは、前記単位添加量算出部81から入力される単位処理水量当たりの凝集剤添加量と、入力装置から入力される処理水量に基づいて総凝集剤添加量を算出し、ついでその算出した総凝集剤添加量をPAC添加量算出部82bおよび高分子凝集剤添加量算出部82cに送出するものとされる。
【0102】
PAC添加量算出部82bは、高分子凝集剤とPACとの混合比に基づいて入力された総凝集剤添加量によりPAC添加量を算出し、その算出したPAC添加量を電流指令値生成部90に送出するものとされる。
【0103】
高分子添加量算出部82cは、高分子凝集剤とPACとの混合比に基づいて入力された総凝集剤添加量により高分子凝集剤添加量を算出し、その算出した高分子凝集剤添加量を電流指令値生成部90に送出するものとされる。
【0104】
電流指令値生成部90は、図12に示すように、PAC供給ポンプ駆動用モータMPの電流指令値を生成するPAC電流指令値生成部91と、高分子凝集剤供給ポンプ駆動用モータMKの電流指令値を生成する高分子凝集剤電流指令値生成部92とを含むのとされ、生成したPAC電流指令値および高分子凝集剤電流指令値を出力処理部50に送出ものとされる。
【0105】
次に、図13を参照しながら、かかる構成とされた自動ジャーテスト装置A2を用いた濁水処理について説明する。なお、図13中の線路は、信号線、電力線、管路などを示す。
【0106】
ステップ61:原水を受入槽Rに一定時間貯留する。
【0107】
ステップ62:受入槽Rに貯留されている貯留水の濁度、つまり撹拌中の濁度を濁度センサSで検出する。
【0108】
ステップ63:検出された濁度を自動ジャーテスト装置A2に入力する。
【0109】
ステップ64:自動ジャーテスト装置A2は、入力された処理水量および濁度に基づいて総添加量を算出する。
【0110】
ステップ65:自動ジャーテスト装置A2は、算出された総添加量に基づいてPAC添加量および高分子凝集剤添加量を算出する。
【0111】
ステップ66:自動ジャーテスト装置A2は、算出したPAC添加量および高分子凝集剤添加量に基づいてPAC供給ポンプ用駆動モータMPおよび高分子凝集剤供給ポンプ駆動用モータMKの電流指令値を生成する。
【0112】
ステップ67:自動ジャーテスト装置A2は、生成した電流指令値を制御装置Cに送出する。
【0113】
ステップ68:制御装置Cは、入力された各電流指令値をPAC供給ポンプ用駆動モータドライバ(以下、PACドライバという)DPおよび高分子凝集剤供給ポンプ駆動用モータドライバ(以下、高分子ドライバという)DKに送出する。
【0114】
ステップ69:PACドライバDPは、入力された電流指令値に基づいて駆動電流を生成し、ステップ71に移行する。
【0115】
ステップ70:高分子ドライバDKは、入力された電流指令値に基づいて駆動電流を生成し、ステップ73に移行する。
【0116】
ステップ71:PACドライバDPは、生成した駆動電流をPAC供給ポンプ用駆動モータMPに送出する。
【0117】
ステップ72:PAC供給ポンプ用駆動モータMPは、入力された駆動電流により駆動されてPAC供給ポンプPPを所定期間駆動する。
【0118】
ステップ73:高分子凝集剤供給ポンプ用駆動モータMKは、入力された駆動電流により駆動されて高分子凝集剤供給ポンプPKを所定期間駆動する。
【0119】
ステップ74:PACおよび高分子凝集剤を所定量添加する。
【0120】
このように、本実施形態によれば、PACと高分子凝集剤との添加がなされるので、濁水処理を迅速になすことができるという実施形態1では得られない効果も得られる。
【0121】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではなく、種々改変が可能である。
【0122】
例えば、凝集剤としてPACを例にとり説明されているが、適用できる凝集剤はPACに限定されるものではなく、各種凝集剤を好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、水処理産業に適用できる。
【符号の説明】
【0124】
A 自動ジャーテスト装置
C 制御装置
R 受入槽
S 濁度センサ
AJ 攪拌装置
DP PAC供給ポンプ用駆動モータ用ドライバ(PACドライバ)
DK 高分子凝集剤供給ポンプ用駆動モータ用ドライバ(高分子ドライバ)
MP PAC供給ポンプ用駆動モータ
MA 攪拌装置用駆動モータ
MK 高分子凝集剤C供給ポンプ用駆動モータ
PP PAC供給ポンプ
PK 高分子凝集剤C供給ポンプ
IP 入力装置
OP 出力装置
10 入力部
I1 添加/判定切替スイッチ
I2 処理水量設定部
I3 タイマースイッチ
20 入力処理部
30 演算処理部
31 単位添加量算出部
32 PAC添加量算出部
33 補正部
40 電流指令値生成部
50 出力処理部
60 出力部
70 判定部
80 演算処理部
81 単位添加量算出部
82 凝集剤添加量算出部
82a 総添加量算出部
82b PAC添加量算出部
82c 高分子凝集剤添加量算出部
90 電流指令値生成部
91 PAC電流指令値生成部
92 高分子凝集剤電流指令値生成部
【要約】
【課題】濁水処理システムにおいて原水の性状にマッチした添加剤の添加がなし得る自動ジャーテスト装置およびそれを用いた濁水処理方法を提供することを目的としている。
【解決手段】ジャーテストを自動的に行う自動ジャーテスト装置Aであって、前記自動ジャーテスト装置Aは、入力部10と、入力処理部20と、演算処理部30と、電流指令値生成部40と、出力処理部50と、出力部60とを備え、前記演算処理部30は、濁度センサSから入力される濁度に基づいて凝集剤の単位添加量を算出する単位添加量算出部31と、前記単位添加量算出部31により算出された単位添加量および入力された処理水量に基づいて凝集剤添加量を算出する凝集剤添加量算出部32とを含み、前記電流指令値生成部40は、前記凝集剤添加量算出部32により算出された凝集剤添加量に基づいて凝集剤添加装置用駆動モータの駆動用電流指令値を生成するものである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13