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  • 特許-ピンタック織物及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】ピンタック織物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 11/00 20060101AFI20220228BHJP
【FI】
D03D11/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020187094
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】517052781
【氏名又は名称】ソンウォルビナジェイエスシー
【氏名又は名称原語表記】SONGWOL VINA JSC.
【住所又は居所原語表記】LOT 36―38―40,ROAD NO.7,TAN DUC IP,DUC HOA DIST.,LONG AN PROVINCE,VIETNAM
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】パク ビョンデ
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンファン
(72)【発明者】
【氏名】越智 次男
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-243847(JP,A)
【文献】特開平08-246286(JP,A)
【文献】実開昭59-137984(JP,U)
【文献】国際公開第2011/142037(WO,A1)
【文献】特開2013-104161(JP,A)
【文献】特開2003-089946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のテンションがかけられた複数の地経糸と、前記地経糸を境に浮沈可能な複数のパイル経糸と、前記地経糸及び前記パイル経糸に組織される複数の緯糸と、により全体が形成され、前記各パイル経糸と前記各緯糸とが組織されることで、ピンタック状の突出部分であるピンタック本体が部分的に形成されるピンタック織物であって、
ピンタック組織部を備え、
前記ピンタック組織部は、前記地経糸が延びる方向に所定の間隔を空けて設けられ、表裏の何れか一面から突出する複数の前記ピンタック本体と、前記各ピンタック本体の端部に設けられた境界部と、を有し、
前記ピンタック本体は、前記緯糸が、前記パイル経糸にのみ組織されることにより形成される多層組織であり、
前記境界部は、前記緯糸が、前記地経糸及び前記パイル経糸に組織されることにより形成される単層組織である、ピンタック織物。
【請求項2】
前記ピンタック本体と前記地経糸とは、前記パイル経糸に所定のテンションがかけられることにより、前記地経糸が延びる方向に沿って、互いに接している、請求項1に記載のピンタック織物。
【請求項3】
所定のテンションがかけられた複数の地経糸と、前記地経糸を境に浮沈可能な複数のパイル経糸と、前記地経糸及び前記パイル経糸に組織される複数の緯糸と、により全体が形成され、前記各パイル経糸と前記各緯糸とが組織されることで、ピンタック状の突出部分であるピンタック本体が部分的に形成されるピンタック織物の製造方法であって、
前記緯糸を前記パイル経糸にのみ組織させた多層組織を、前記地経糸が延びる方向に所定の間隔を空けて設け、表裏の何れか一面から突出する複数の前記ピンタック本体を形成し、
前記緯糸を前記地経糸及び前記パイル経糸に組織させた単層組織を、前記各ピンタック本体の端部に設け、境界部を形成することにより、ピンタック組織部を形成する、ピンタック織物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンタック織物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピンタック織物とは、その表面に直線状の複数の縫いヒダ(ピンタック)を形成することで、意匠性を高めた織物のことである。
【0003】
このようなピンタック織物は、例えばブラウスやワンピースといった女性用衣服や、タオル等に頻繁に用いられている。
【0004】
従来から、上記したピンタック織物に関する発明が種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ヒダを立体的に膨らませて形成することで、肌触りが柔らかく、保温性にも優れた多重ガーゼ織物を製織できるガーゼ織物の製織方法に関する発明が記載されている。
【0006】
この製織方法により製織されるガーゼ織物は、基礎地、基礎地の一方側又は他方側に隆起する第一幅広ヒダ、基礎地の他方側又は一方側に隆起する第二幅広ヒダを備えており、基礎地を一層と数えると三層構造の多重ガーゼ織物となされている。
また、第一及び第二幅広ヒダが基礎地と結節される部分は結節部となる。
【0007】
第一幅広ヒダは、第一上経糸及び第三上経糸と緯糸とをガーゼ織により織り込んで形成される組織であり、第二幅広ヒダは、第二上経糸及び第四上経糸と緯糸とをガーゼ織により織り込んで形成される組織である。
基礎地は、第一下経糸及び第二下経糸の一部を緯糸とガーゼ織により織り込んで形成される組織である。
また、結節部では、第一乃至第四上経糸と第一及び第二下経糸とを絡めながら緯糸と織り込んでおり、第一及び第二幅広ヒダの前後が基礎地と結節されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-1847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のピンタック織物は、表面及び裏面、それぞれの面を形成する組織が、独立した一重組織となされている。
そして、特許文献1に記載のピンタック織物は、各組織の経糸を、一方の面で共存しないように、表面・裏面間を行き来させることで、各面での模様を表現している。
このような構成の場合、表面及び裏面で独立した模様を表現することができず、一方の面の模様の色味を反転させた模様が、他方の面に表現されることとなる。
【0010】
また、特許文献1に記載のピンタック織物は、各面において、一定間隔で経糸のテンションを緩めることで、内部が空洞となされた、断面U字状のピンタックを形成している。
このような構成の場合、ガーゼ織物としての柔らかい手触りの良さは得られるが、層間のずれが生じやすく、摩擦等の外力に対する堅牢性に乏しい。
【0011】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、一定の堅牢性を確保しつつ、両面に異なる模様を自在に表現することが可能なピンタック織物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、所定のテンションがかけられた複数の地経糸と、前記地経糸を境に浮沈可能な複数のパイル経糸と、前記地経糸及び前記パイル経糸に組織される複数の緯糸と、により形成されるピンタック織物であって、
ピンタック組織部を備え、
前記ピンタック組織部は、前記地経糸が延びる方向に所定の間隔を空けて設けられ、表裏の何れか一面から突出する複数のピンタック本体と、前記各ピンタック本体の端部に設けられた境界部と、を有し、
前記ピンタック本体は、前記緯糸が、前記パイル経糸にのみ組織されることにより形成される多層組織であり、
前記境界部は、前記緯糸が、前記地経糸及び前記パイル経糸に組織されることにより形成される単層組織である。
【0013】
本発明によれば、ピンタック本体を多層組織とすることで、表現したい柄に合わせて、緯糸とパイル経糸との組織状態を変更することで、複数の色を用いたカラフルな模様を、各ピンタック本体において、独立して自在に表現することが可能となる。
また、境界部を単層組織とすることで、境界部における層間のずれが起きることがなく、一定の堅牢性を確保することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記ピンタック本体と前記地経糸とは、前記パイル経糸に所定のテンションがかけられることにより、前記地経糸が延びる方向に沿って、互いに接している。
【0015】
このような構成とすることで、ピンタック本体と地経糸との隙間がなくなり、パイル経糸のテンションによりピンタック本体の形態が強固に保持されることで、ピンタック本体と地経糸との間或いはピンタック本体内部において、層間のずれが抑制され、さらに堅牢性が向上する。
【0016】
また、本発明は、所定のテンションがかけられた複数の地経糸と、前記地経糸を境に浮沈可能な複数のパイル経糸と、前記地経糸及び前記パイル経糸に組織される複数の緯糸と、により形成されるピンタック織物の製造方法であって、
前記緯糸を前記パイル経糸にのみ組織させた多層組織を、前記地経糸が延びる方向に所定の間隔を空けて設け、表裏の何れか一面から突出する複数のピンタック本体を形成し、
前記緯糸を前記地経糸及び前記パイル経糸に組織させた単層組織を、前記各ピンタック本体の端部に設け、境界部を形成することにより、ピンタック組織部を形成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一定の堅牢性を確保しつつ、両面に異なる模様を自在に表現することが可能なピンタック織物及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るピンタック織物の表面図である。
図2】本発明の実施形態に係るピンタック織物の裏面図である。
図3】本発明の実施形態に係るピンタック織物の斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るピンタック織物の断面図である。
図5】本発明の実施形態に係るピンタック織物の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係るピンタック織物について説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、これらの図において、符号Xは、本実施形態に係るピンタック織物を示す。
【0020】
図1及び図2に示すように、ピンタック織物Xは、所定のテンションがかけられた複数の地経糸Gと、地経糸Gを境に浮沈可能な複数のパイル経糸Pと、地経糸G及びパイル経糸Pに組織される複数の緯糸Wと、により形成されており、ピンタック組織部1を備えている。
なお、図2は、図1に示すピンタック組織部1を、その最も右方のパイル経糸P(以下、パイル経糸P1と称する)を軸として、180度回転させた際の図である。
【0021】
ピンタック組織部1は、地経糸Gが延びる方向(以下、経糸方向と称する)に所定の間隔を空けて設けられ、表裏の何れか一面から突出する複数のピンタック本体11と、各ピンタック本体11の端部に設けられた境界部12と、を有している。
なお、以下、表面に突出すピンタック本体11をピンタック本体11a、裏面に突出すピンタック本体11をピンタック本体11bと称し、図1及び図2において、下方の境界部12を境界部12a、上方の境界部12を境界部12bと称する。
【0022】
地経糸Gとパイル経糸Pとは、緯糸Wが延びる方向(以下、緯糸方向と称する)に沿って、交互に10本ずつ配置されている。
なお、本実施形態では、説明の便宜上、地経糸Gとパイル経糸Pとを上記の本数で示しているが、実際には、地経糸Gとパイル経糸Pとは、ピンタック組織部1が緯糸方向に沿って所望の長さとなるように、緯糸方向に沿って、さらに複数本配置されている。
【0023】
また、各図において、地経糸Gは、その外形線を実線で、パイル経糸Pは、その外形線を点線で、それぞれ示している。
また、図1及び図2において、地経糸G及びパイル経糸Pは、内部を白色で塗りつぶしているが、実際には、表現したい柄に合わせて、各地経糸G及び各パイル経糸Pに任意の色が着色されている。
なお、以下、各地経糸Gは、図1の最も右方に配置されている地経糸Gから順番に、地経糸G1、G2、・・・、G10と称し、各パイル経糸Pは、図1の最も右方に配置されているパイル経糸Pから順番に、パイル経糸P1、P2、・・・、P10と称する。
【0024】
緯糸Wは、経糸方向に沿って、30本配置されている。
なお、本実施形態では、説明の便宜上、緯糸Wを上記の本数で示しているが、実際には、緯糸Wは、ピンタック本体11及び境界部12が所望の数形成されるように、経糸方向に沿って、さらに複数本配置されている。
【0025】
また、図1及び図2において、緯糸Wは、内部を灰色で塗りつぶしているが、実際には、表現したい柄に合わせて、各緯糸Wに任意の色が着色されている。
なお、以下、ピンタック本体11における緯糸Wを緯糸W1、境界部12における緯糸Wを緯糸W2と称する。特に、境界部12aにおける緯糸W2を、図1及び図2における下方から順に緯糸W2a、W2b、W2cと称し、境界部12bにおける緯糸W2を、図1及び図2における下方から順に緯糸W2d、W2e、W2fと称する
【0026】
ここで、図1図4に示す、ピンタック組織部1において、説明の便宜上、複数の緯糸Wは、パイル経糸Pのテンションを緩めることにより、経糸方向に一定の間隔を空けて配置されているが、実際には、パイル経糸Pに所定のテンションをかけることにより、図5に示す態様となされている。
即ち、各ピンタック本体11における緯糸Wは、境界部12における緯糸Wよりも、高密度となされ、各ピンタック本体11は二層構造となされている。
【0027】
各ピンタック本体11は、緯糸Wが、パイル経糸Pにのみ組織されることにより形成される多層組織である(図5参照)。
なお、本実施形態では、各ピンタック本体11は、緯糸Wが12本設けられる12picの組織となされているが、pic数はこれに限定されず、任意のpic数とすることで、ピンタック本体11の太さ(経糸方向の長さ)を変更することができる。
【0028】
各境界部12は、緯糸Wが、地経糸G及びパイル経糸Pに組織されることにより形成される単層組織である(図5参照)。
なお、本実施形態では、各境界部12は、緯糸Wが3本設けられる3picの組織となされているが、pic数はこれに限定されず、任意のpic数とすることで、境界部12の太さ(経糸方向の長さ)を変更することができる。
【0029】
上記のように、各ピンタック本体11及び各境界部12、それぞれのpic数を変更することで、ピンタック組織部1を、所望の手触りを有するものとすることができる。
【0030】
地経糸G1、G3、G5、G7、G9は、緯糸W2に対して、同一の浮沈状態で組織されている。
即ち、地経糸G1、G3、G5、G7、G9は、緯糸W2a、W2bの裏面側を通り、緯糸W2b、W2cの間から表面側に出る。
また、地経糸G1、G3、G5、G7、G9は、緯糸W2d、W2eの裏面側を通り、緯糸W2e、W2fの間から表面側に出る。
【0031】
地経糸G2、G4、G6、G8、G10は、緯糸W2に対して、同一の浮沈状態で組織されている。
即ち、地経糸G2、G4、G6、G8、G10は、緯糸W2a、W2bの表面側を通り、緯糸W2b、W2cの間から裏面側に出る。
また、地経糸G2、G4、G6、G8、G10は、緯糸W2d、W2eの表面側を通り、緯糸W2e、W2fの間から裏面側に出る。
【0032】
以上より、地経糸G1、G3、G5、G7、G9と地経糸G2、G4、G6、G8、G10とは、緯糸W2に対して反転した浮沈状態となされ、緯糸W2に組織されている。
【0033】
また、地経糸G1~G10は、緯糸W1に対して、同一の浮沈状態となされている。
即ち、地経糸G1~G10は、ピンタック本体11aにおける緯糸W1の裏面側を通り、ピンタック本体11bにおける緯糸W1の表面側を通っている。これにより、各ピンタック本体11は、地経糸Gに組織されていない。
【0034】
パイル経糸P1、P3、P5、P7、P9は、緯糸W2に対して、同一の浮沈状態で組織されている。
即ち、パイル経糸P1、P3、P5、P7、P9は、緯糸W2a、W2bの間から表面側に出て、緯糸W2b、W2cの間から裏面側に出る。
また、パイル経糸P1、P3、P5、P7、P9は、緯糸W2d、W2eの間から表面側に出て、緯糸W2e、W2fの間から裏面側に出る。
【0035】
パイル経糸P2、P4、P6、P8、P10は、緯糸W2に対して、同一の浮沈状態で組織されている。
即ち、パイル経糸P2、P4、P6、P8、P10は、緯糸W2a、W2bの間から裏面側に出て、緯糸W2b、W2cの間から表面側に出る。
また、パイル経糸P2、P4、P6、P8、P10は、緯糸W2d、W2eの間から裏面側に出て、緯糸W2b、W2cの間から表面側に出る。
【0036】
以上より、パイル経糸P1、P3、P5、P7、P9とパイル経糸P2、P4、P6、P8、P10とは、緯糸W2に対して反転した浮沈状態となされ、緯糸W2に組織されている。
【0037】
また、パイル経糸P1~P10は、緯糸W1に対して、表現したい柄に合わせて、任意の浮沈状態で組織されている。
【0038】
図3は、図1に示すピンタック織物Xを、図1の矢印p方向から見た際の概略斜視図である。
なお、図3において、図1及び図2と同様に、地経糸Gは、その外形線を実線で、パイル経糸Pは、その外形線を点線で、それぞれ示している。
【0039】
図4は、図1におけるQQ´線断面図である。
また、図4(a)では、パイル経糸P1~P10の内、パイル経糸P1のみ示し、図4(b)では、パイル経糸P1~P10の内、パイル経糸P2のみ示している。
なお、図4において、地経糸G1、G3、G5、G7、G9は、まとめて1本の太線で示し、地経糸G2、G4、G6、G8、G10は、まとめて1本の細線で示し、パイル経糸P1、P2は、それぞれ1本の点線で示している。
【0040】
図5は、上記したように、図1図4に示したピンタック織物X(ピンタック組織部1)の緯糸Wの間隔を調整し、実製品として用いるための形態とした際の、QQ´線断面図である。
即ち、図5では、地経糸G及びパイル経糸Pに所定のテンションをかけることで、各緯糸Wが、地経糸G或いはパイル経糸Pを介して、相互に接しており、境界部12と比較して、ピンタック本体11の緯糸Wの密度が大きくなっている。
【0041】
詳述すれば、本実施形態では、図5に示す断面視において、ピンタック本体11における単位面積当たりの緯糸Wの本数が、境界部12における単位面積当たりの緯糸Wの本数の倍となされている。
これにより、ピンタック本体11aは、表面側に突出する二層構造、ピンタック本体11bは、裏面側に突出する二層構造となされている。
なお、各ピンタック本体11は、何れも表面側又は裏面側から突出する構成としても良い。
【0042】
また、図5に示すように、各ピンタック本体11と地経糸Gとは、パイル経糸Pに所定のテンションがかけられることにより、地経糸Gが延びる方向(経糸方向)に沿って、互いに接している。
【0043】
なお、各ピンタック本体11は、必ずしも二層構造とする必要はなく、三層以上とし、突出の程度をより大きいものとしすることで、特徴的な手触りや外観とすることができるし、また、層数を増大させることで、より複雑な色合いの模様を表現することもできる。
【0044】
本実施形態によれば、各ピンタック本体11を二層組織とすることで、表現したい柄に合わせて、緯糸W1とパイル経糸Pとの組織状態を変更することで、複数の色を用いたカラフルな模様を、各ピンタック本体11において、独立して自在に表現することが可能となる。
【0045】
また、境界部12を単層組織とすることで、境界部12における層間のずれが起きることがなく、一定の堅牢性を確保することができる。
【0046】
また、各ピンタック本体11と地経糸Gとの隙間がなくなり、パイル経糸Pのテンションにより各ピンタック本体11の形態が強固に保持されることで、各ピンタック本体11と地経糸Gとの間或いは各ピンタック本体11内部において、層間のずれが抑制され、さらに堅牢性が向上する。
【0047】
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
X ピンタック織物
1 ピンタック組織部
11(11a、11b) ピンタック本体
12(12a、12b) 境界部
P(P1~P10) パイル経糸
G(G1~G10) 地経糸
W(W1、W2) 緯糸
【要約】
【課題】一定の堅牢性を確保しつつ、両面に異なる模様を自在に表現することが可能なピンタック織物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】所定のテンションがかけられた複数の地経糸Gと、地経糸Gを境に浮沈可能な複数のパイル経糸Pと、地経糸G及びパイル経糸Pに組織される複数の緯糸Wと、により形成されるピンタック織物Xであって、ピンタック組織部1を備え、ピンタック組織部1は、地経糸Gが延びる方向に所定の間隔を空けて設けられ、表裏の何れか一面から突出する複数のピンタック本体11と、各ピンタック本体11の端部に設けられた境界部12と、を有し、ピンタック本体11は、緯糸Wが、パイル経糸Pにのみ組織されることにより形成される多層組織であり、境界部12は、緯糸Wが、地経糸G及びパイル経糸Pに組織されることにより形成される単層組織である。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5