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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】屋上防水施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/14 20060101AFI20220228BHJP
   E04D 11/00 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
E04D5/14 P
E04D5/14 T
E04D11/00 J
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020201075
(22)【出願日】2020-12-03
(62)【分割の表示】P 2016096933の分割
【原出願日】2016-05-13
(65)【公開番号】P2021036129
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰之
(72)【発明者】
【氏名】関根 治之
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-012123(JP,A)
【文献】特開2007-315169(JP,A)
【文献】特開2001-193229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/00-12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物屋上における既存防水層又は断熱層に、さらに新規の防水シートを被覆し新規防水層を形成する、屋上防水施工方法であって、
前記既存防水層又は断熱層の所定の施工部位を除去して下地を露出させる除去工程と、
前記露出した下地に、前記新規の防水シートを固定する固定手段を接着による固定方法によって設置する固定手段設置工程と、
前記固定手段周囲の前記既存防水層又は断熱層の除去箇所を埋め戻す工程と、
前記既存防水層又は断熱層に、前記新規の防水シートを被覆し、前記固定手段に前記新規の防水シートを固定する、新規防水シート設置工程と、
を具備することを特徴とする屋上防水施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上の露出防水層を改修する際に、既存の防水層をそのままに、新たに防水層を施工する屋上防水施工方法に関する。
【0002】
従来、露出防水層を改修する際には、既存防水層を除去し、新たに防水層を施工する方法と、既存防水層を除去せずに、そのまま上から新規防水層を施工する方法がある。
【0003】
改修防水層の種別は、アスファルト防水、ウレタン防水、高分子系シート防水などと多岐に亘るが、既存防水層への固定方法は接着剤による非機械的固定方法と、機械的固定方法(例えば特許文献1)に大別される。
【0004】
接着剤による固定方法では、接着剤の性能に負うところが大きく、特性上、強度を得るまでの接着剤の反応時間、乾燥時間が必要であり、直ちに所望の強度を得ることは困難である。
【0005】
一方、機械的固定方法では、即座に所望強度を得ることは可能であるが、躯体へビスなどを用いて固定するため、躯体側の損傷や、施工時の騒音、振動などの発生が課題であった。
【0006】
また、下地の種類、施工環境によっては、上記固定方法のうち、いずれかの固定方法に限定されてしまうことがある。なお、下地の例として、デッキ下地(例えば波形、あるいはフラット型の薄鋼板を用いて、鉄骨造りの床スラブの型枠を兼ねた床材)の防水工法は、そのほとんどがシート防水の機械的固定方法、すなわち、下地の穴あけ加工箇所に、固定金具を介してビスやボルトで締め付けて固定する方法による固定方法が多い。
【0007】
デッキ下地の防水層を改修する場合、既存の防水層の固定方法はシート防水機械的固定方法が大多数となるため、既存の防水層上より、再度、固定位置をずらし、機械的固定手段によりデッキ下地への固定が必須のものとなる。
【0008】
デッキ構造の建物の用途は、工場及び商業施設がほとんどであるが、固定の際には、金属粉、騒音などの発生により、屋内側の厳重な養生処置が要求されるか、もしくは施設の稼働、営業停止を余儀なくされる。
【0009】
RC下地への機械的固定方法による改修工事は、既存防水層の固定方法が機械的固定手段による方式が多いが、既存の機械的固定の箇所を避けて、別の箇所にその都度、ビスなどにより固定せざるを得ないため、躯体の損傷は増大してしまう。
【0010】
上記の課題を解決するために、特許文献2には、既存の防水層上に外装板材を敷設して、これらの外装板材状に防水シートを被覆して防水シートを被覆し、平坦な新規防水層を形成する、屋上防水施工方法において、既存防水層の所定の施工部位を除去して下地を露出させ、露出した下地に既存の防水層上に敷設される外装板材を連結して締め付け固定する締付式固定手段を設置する、屋上防水施工方法が開示されている。
【0011】
特許文献2に示す屋上防水施工方法では、風によるシート膨れを、既存の防水層上に外装板材を敷設することで、防水シートにかかる水平力を減少させていた。しかしながら、外装板材を敷設することで屋根にかかる荷重が増加するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平09-151574号公報
【文献】特開2012-031567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、例えば新たに防水層を施工するにあたり、機械的固定方法のように躯体を損傷することなく施工することができ、機械的固定方法並みの初期強度が得られると共に屋根にかかる荷重を低減する、屋上防水施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の屋上防水施工方法は、建物屋上における既存防水層又は断熱層に、さらに新規の防水シートを被覆し新規防水層を形成する、屋上防水施工方法であって、既存防水層又は断熱層の所定の施工部位を除去して下地を露出させる除去工程と、露出した下地に、新規の防水シートを固定する固定手段を接着による固定方法によって設置する固定手段設置工程と、固定手段周囲の既存防水層又は断熱層の除去箇所を埋め戻す工程と、既存防水層又は断熱層に、新規の防水シートを被覆し、固定手段に新規の防水シートを固定する、新規防水シート設置工程と、を具備する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、既存の防水層をそのままに、新たに防水層を施工するにあたり、新たな防水シートを固定するために、接着による固定方法により下地に設置される固定手段を採用している。そのため躯体の損傷、並びに騒音、切り粉、金属粉などが発生することはない。従って、屋内施設の使用を中断することなく、改修工事を進めることが可能となり、作業の効率化、及び工期の短縮化につながる。また、外装板材を敷設せず、固定手段により新規の防水シートを固定するため、屋根の荷重を軽減しつつ新規防水層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態にかかる屋上防水施工方法によって、防水処理を施す際の屋上構造物の一例を示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態にかかる屋上防水施工方法によって、防水処理を施した屋上構造物と、その屋上構造物の要部の一例を示す、断面図である。
図3a図1に示す屋上防水施工方法に用いられる締付式固定手段を示す外観斜視図である。
図3b図1に示す屋上防水施工方法に用いられる締付式固定手段の下地側固定部材を示す平面図である。
図3c図3aのIII-III線に沿った締付式固定手段の断面図である。
図3d】締付式固定手段の別例を示す断面図である。
図4a】本発明の実施形態にかかる屋上防水工法施工方法において、既存防水層除去工程を説明するための工程説明図である。
図4b】本発明の実施形態にかかる屋上防水施工方法において、下地側固定部材を接着によって固定する締付式固定手段の下地側固定部材の設置工程を説明するための工程説明図である。
図4c】本発明の実施形態にかかる屋上防水施工方法において、既存防水層の除去箇所を埋め戻す工程を説明するための工程説明図である。
図4d】本発明の実施形態にかかる屋上防水施工方法において、締付式固定手段のシート側固定部材を設置する工程を説明するための工程説明図である。
図5】本発明の実施形態にかかる屋上防水施工方法により、新規の防水層を設置した場合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面に基づいて、本実施形態である、屋上構造物に対し、防水処理を施す屋上防水施工方法について説明する。
【0018】
本実施形態の屋上防水施工方法は、防水処理対象が鉄骨造(S)の屋上の構造物を対象としている。防水対処理対象は、いわゆるコンクリート構造物、例えば、鉄筋コンクリート構造(RC)、鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC)、コンクリート充填鋼管構造(CFT)、補強コンクリートブロック造(CB)の屋上の構造物であってもよい。
【0019】
すなわち、ここでは、屋上の構造物として、図1に示すように、躯体である鉄骨梁上に橋渡されたデッキ下地(一例として波形をした薄鋼板を用いて、鉄骨造りの床スラブの型枠を兼ねた床材、デッキプレートと称する場合がある)に被覆形成された防水層を想定している。かかる防水層、すなわち既存防水層2は、硬質のポリウレタンフォームやポリスチレンフォームを素材とする断熱材21(断熱層とも呼ぶ)と、かかる断熱材21に塩化ビニールシート等の防水シート22を被覆して構成している(図2参照)。
【0020】
デッキプレート1は、上述のように波形をした薄鋼板であり、所定幅の平坦な底部の谷部11と、平坦な頂部の山部12とを有し、山部12に防水層2における断熱材21が、機械固定手段であるビス3によって固定されている。ビス3は、頭部に樹脂で被覆されたディスクを介して断熱材21及びデッキプレート1の山部12を貫通させている。そして、断熱材21がデッキプレート1の山部12上にビス3で固定された上から、防水シート22が覆うように被覆されている。
【0021】
以上のようなデッキプレート1上の既存防水層2に対し、本実施形態では後述する施工方法によって施工された、既存防水層2を被覆する新規の防水シート4が積層される。
【0022】
図2及び図3aに示すように締付式固定手段5(固定手段の一例)は、実質的に下地側固定部材51とシート側固定部材52とを具備する。
【0023】
下地側固定部材51は、板状の接着固定基盤51aと接着固定基盤51aに立設した締付調節手段を構成する連結ロッド51bとからなる(図3a参照)。接着固定基盤51aは、後述するが、デッキプレート1の山部12に接着剤6によって固定するようにしている。接着固定基盤51aは、接着強度を得るために、適切な底面面積を有している。また、図3cに示すように連結ロッド51bは、接着固定基盤51aに例えば溶接によって溶着されている。そして連結ロッド51bには、軸方向に沿って内側にめねじが螺刻されている。
【0024】
また、接着固定基盤51aには、図3a~図3bに示すように、連結ロッド51bの周囲に4つの穴部51cが形成されている。図2に示すように下地側固定部材51は、接着剤6によりデッキプレート1の山部12に固定されるが、接着剤6により必要な接着力を発現させるためには、接着剤6が接着固定基盤51aの裏面に満遍なく広がって塗布されている必要がある。作業者は穴部51cを通して接着剤6を視認することで、接着固定基盤51aの裏面に接着剤6が満遍なく塗布されていることを確認することができる。
【0025】
次に、シート側固定部材52は、図3a、図3cに示すように、例えば円盤形状のトッププレート52aと、中心軸に沿って垂下する、締付調節手段を構成するボルト52bとを有している。ボルト52bには、締付調節手段を構成する連結ロッド51bに螺入して締付固定できるように先端側に外ねじが螺刻されている。
【0026】
また、トッププレート52aは樹脂により被覆されており、新規の防水シート4を樹脂の溶着により固定することができる。
【0027】
締付式固定手段5は、図2に示すように隣接する既存防水層2を挟みつけるとともに、新規の防水シート4をシート側固定部材52に溶着することで固定する。別の固定方法として、シート側固定部材52のボルト52bを新規の防水シート4に貫通させ、新規の防水シート4を表面側(上側)からシート側固定部材52のトッププレート52aにより押圧することで、新規の防水シート4をシート側固定部材52で固定してもよい。
【0028】
また、本実施形態では接着固定基盤51aの直径R1を60mm、連結ロッド51bの直径R2を15mm、高さHを20mm、ボルト52bのボトル径をM10として作製している(図3c参照)。これは一例であり、それぞれの寸法は既存防水層の厚さや必要な強度に応じて変更されてよい。
【0029】
また、図3dに示す締付式固定手段5aように、ボルト51dを用いて連結ロッド51bを接着固定基盤51aに固定してもよい。連結ロッド51bを接着固定基盤51aに溶接するほうが、ボルト51dで締結する場合よりも、ボルト52bを連結ロッド51bに螺入可能な範囲である、ねじ込み許容深さD(図3c、図3d参照)をより大きくすることができる。そのため、連結ロッド51bが溶接により固定された締付式固定手段5の方がより多くの既存の防水層の厚さに対応することができる。
【0030】
次に、デッキプレート1上の既存防水層2に対し、新規の防水シート4を積層して防水処理を施す、屋上構造物の屋上防水施工方法について説明する。
【0031】
先ず、図4aに示すように、施工図を基に既存防水層2を除去して下地、すなわち、デッキプレート1の山部12を露出させる除去工程を行う。この場合、デッキプレート1の山部12上の既存防水層2の断熱材21及び防水シート22を、適宜な工具によってくり抜くように除去し、デッキプレート1の山部12を、下地側固定部材51の接着固定基盤51aに比較して若干広い範囲で露出させる。これによって、締付式固定手段5を設置すべき箇所が確保される。
【0032】
次に、かかる露出した下地に、下地側固定部材51を固定する締付式固定手段の設置工程を接着によって行う(図4b参照)。この場合、デッキプレート1の露出した山部12と、下地側固定部材51の接着固定基盤51aの底面とに接着剤6を塗布し、適度な押圧力をかけて、接着固定基盤51aの底面を露出下地に押し付ける。その後、所定時間維持し、所望の接着強度を得る。これによって、接着固定基盤51aの中心に、締付調節手段を構成する連結ロッド51bを鉛直方向に向って立設状態とすることができる。
【0033】
下地側固定部材51の接着固定基盤51aが露出下地に接着固定されたら、かかる接着固定基盤51a上に、断熱材21を埋め戻す工程を行う(図4c参照)。断熱材21の埋め戻しは、除去した防水層2の断熱材21をそのまま用いるか、別途新規の発泡ウレタンを使用して埋め戻してもよい。この場合、接着固定基盤51a中心の締付調節手段を構成する連結ロッド51bが確認できる状態で収容されるように、断熱材21が埋め戻される。
【0034】
そして、図4dに示すように、下地側固定部材51上に、シート側固定部材52のトッププレート52aを配置し、トッププレート52aの中心穴から中心軸に沿ってボルト52bを挿通する。そして、ボルト52bを、接着固定基盤51a中心の連結ロッド51bにねじ込んでいくことで、トッププレート52aを断熱材21及び既存の防水シート22に向って下降させて、締め付け固定することができる。
【0035】
このとき、トッププレート52a側のボルト52bをさらに、締付け調整することで、トッププレート52aの上面を、既存の防水シート22の上面に合わせることで、既存の防水層2と締付式固定手段5との段差を解消してもよい。
【0036】
既存の防水シート22上に、新規の防水シート4を覆うように被せ、トッププレート52aと新規の防水シート4とを接着し、全体として略平坦な新規防水層を形成し、防水施工工程を完了する(図2参照)。なお、新規の防水シート4を被せる前に、既存の防水シート22にプライマーを塗布してもよい。
【0037】
本実施形態では、下地に接着により固定された締付式固定手段5により新規の防水シート4を固定する。そのため、風による防水シート4の膨れにより垂直力及び水平力が締付式固定手段5にかかる可能性がある。締付式固定手段5をそのような垂直力及び水平力に抗することができるよう、締付式固定手段5を下地に固定する接着剤6に所定の性能を要する。具体的には、(1)耐久性に優れている(設計強度は1kNを基準とする)(2)硬化が早く最低16hで強度発現する(夕方4時~翌朝8時まで)(3)ルーフデッキ上にある油面への接着性がよい、という3つの性能を満たす必要がある。
【0038】
発明者らは上記の性能を満たす接着剤を選定するため、複数の市販のアクリル接着剤及びエポキシ接着剤を用いて、以下の水平繰り返し荷重試験を行った。
<試験機器> サーバルサー(島津製 繰り返し疲労試験機)
<試験条件>荷重 水平方向に5Hz 1kN⇔0knを10.8万回繰り返す。
上記試験の結果、繰り返し荷重に対しては、アクリル接着剤を用いた場合、変性アクリルであり、ゴム分が多く含まれているアクリル接着剤が10.8万回の水平繰り返し荷重試験をクリアした。エポキシ接着剤を用いた場合、弾性エポキシであり、ゴム分が多く含まれているエポキシ接着剤が10.8万回の水平繰り返し荷重試験をクリアした。この試験により、発明者らは、締付式固定手段5を固定するアクリル接着剤として、(1)変性アクリルである、(2)接着剤中にゴム分を多く含むということが有効であるという知見を得た。また、発明者らは、締付式固定手段5を固定するエポキシ接着剤として、(1)弾性エポキシである、(2)接着剤中にゴム分を多く含むということが有効であるという知見を得た。
【0039】
また、発明者らは、上記試験で選定した接着剤に対し、さらに以下の耐久性試験を行い、十分な耐久性能を有することを確認している。
<試験機器> オートグラフ(島津製 万能引張試験機AG2000)
<試験条件> 劣化条件 80℃、耐水40℃浸漬 引張速度100mm/分
上記試験の結果、接着剤をミックスノズルにて塗布した場合においては、下地の接着面にやすり掛けを行うことで、3M劣化後(耐水40℃、80℃)まで設計強度1kNの200%である2kN以上の強度を有することが分かった。
【0040】
さらに、発明者らは、締付式固定手段5について、以下の繰り返し疲労試験を行い、性能の評価を行っている。
<試験機器> サーボパルサー(島津製 繰り返し疲労試験機)
<試験条件> 荷重 水平方向に5Hz 1kN⇔0knを10.8万回繰り返す。
<部材> ボルトサイズをM8とM10とした場合と、連結ロッドと接着固定基盤を溶接した場合(図3c参照)及びボルト締結した場合(図3d参照)と、をそれぞれ準備した。
試験結果として、ボルト52bのボルトサイズをM10とした場合、繰り返し疲労試験をクリアした。また、発明者らはこの構成で、垂直、水平疲労試験を行い、引張強度は2kN以上であることを確認している。
【0041】
図1図4dに示す実施形態では既存の防水層2に対し新規の防水シート4を被覆していたが、新規の防水層を設置する際に、屋上防水施工方法を適用しても構わない。図5に新規の防水層2aを設置した場合の断面図を示している。新規の防水層2aを設置する場合、デッキプレート1に断熱材21a(断熱層)を配置した後、断熱材21aの所定の施工部位を除去して下地を露出(除去工程)させる。そして、露出したデッキプレート1の山部12(下地)に、締付式固定手段5を接着による固定方法によって設置する(固定手段設置工程)。その後、締付式固定手段5周囲の断熱層を除去した箇所を埋め戻す。断熱材21aに、新規の防水シート4aを被覆し、締付式固定手段5に新規の防水シート4aを固定する(新規防水シート設置工程)。新規の防水シート4aを締付式固定手段5に固定する方法は、図2に示す屋上防水施工方法と同様、隣接する断熱材21aを挟みつけるとともに、シート側固定部材52に新規の防水シート4aを溶着することで固定する。もしくは、シート側固定部材52のボルト52bを新規の防水シート4aに貫通させ、新規の防水シート4aを表面側(上側)からシート側固定部材52のトッププレート52aにより押圧することで行ってもよい。
【0042】
新規の防水層2aを設置する際、締付式固定手段5の一部を挿入できるよう断熱材21aの一部を予め除去しておき、締付式固定手段5を下地に接着による固定方法によって設置した後に断熱材21aを配置してもよい。この場合、締付式固定手段5を断熱材21より先に設置するため、除去する部分は締付式固定手段5の連結ロッド51b及びボルト52bが挿入可能な大きさでよい。断熱材21aの設置は、除去された部分に締付式固定手段5の連結ロッド51bを挿入して行う(断熱層設置工程)。その後、断熱材21aに新規の防水シート4aを被覆し、締付式固定手段5に新規の防水シート4aを固定する。
【0043】
また、図2及び図5に示す実施形態では、新規の防水シート4、4aを、シート側固定部材52により固定しているが、新規の防水シート4、4aを、既存防水層2又は新規の防水層2aの断熱材21aに接着剤を塗布して固定してもよい。また、新規の防水シート4、4aを、既存防水層2又は新規の防水層2aの断熱材21aに粘着剤付きのシートを貼り付けることで固定してもよい。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、既存の防水層をそのままに、新たに防水層を施工するにあたり、新たな防水層を構成する新規の防水シートを固定するために、機械的固定方法を採用しているわけではないので躯体の損傷、並びに騒音、切り粉、金属粉などが発生することはなく、屋内側への厳重な養生処置をする必要はない。また、外装板材を敷設しないため、屋根に掛かる荷重を軽減させることができる。したがって、屋内施設の使用を中断することなく、改修工事を進めることが可能となり、作業の効率化、及び工期の短縮化につながる。
【符号の説明】
【0045】
1 デッキプレート
11 谷部
12 山部
2 既存防水層
2a 新規の防水層
21、21a 断熱材(断熱層)
22 防水シート
3 ビス
4、4a 新規の防水シート
5、5a 締付式固定手段
51 下地側固定部材
51a 接着固定基盤
51b 連結ロッド
51c 穴部
51d ボルト
52 シート側固定部材
52a トッププレート
52b ボルト
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d
図5