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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】固定方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/20 20060101AFI20220228BHJP
   B23K 9/073 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
B23K9/20 Z
B23K9/073 550
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020520101
(86)(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018076739
(87)【国際公開番号】W WO2019072629
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】17195387.0
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】スタヘル, シモン
(72)【発明者】
【氏名】ポップ, ウーヴェ
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101143402(CN,A)
【文献】特開平10-128543(JP,A)
【文献】特表2015-531039(JP,A)
【文献】特開2003-062670(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0263434(US,A1)
【文献】特開2000-141045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/20
B23K 9/073
B23K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層を有する基板にスタッドを固定するための方法であって、
a) 端部側にスタッド直径を有するスタッドを提供するステップと、
b) 内径及び外径を有する環状の被覆要素を提供するステップと、
c) 表面直径を有する規定された表面領域において前記表面層の一部分および前記基板の一部分を除去することによって、表面層および基板に凹部を形成するステップであって、前記表面直径は、前記スタッド直径よりも大きく且つ前記外径よりも小さい、表面層および基板に凹部を形成するステップと、
d) 前記端部側、及び/又は、前記基板を前記凹部において液化するステップと、
e) 前記端部側、又は、前記基板を前記凹部において凝固することを可能にするステップと、
f) 凝固の間、前記端部側を前記基板と前記凹部において接触させるステップと、
g) 前記基板に固定された前記スタッド周囲の前記凹部を前記被覆要素によって被覆するステップと、を備える方法。
【請求項2】
前記端部側、及び/又は、前記被覆要素、及び/又は、前記規定された表面領域が円形である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記凹部は盲穴である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記凹部はドリル加工工具によって穿孔される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記凹部はセンタリング輪郭を有し、前記端部側は嵌合輪郭を有し、前記センタリング輪郭及び前記嵌合輪郭は、前記スタッドが前記凹部において所望の位置に配置されたときに互いに係合する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記センタリング輪郭は凸状であり、前記嵌合輪郭は凹状である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記センタリング輪郭は凹状であり、前記嵌合輪郭は凸状である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記嵌合輪郭は、前記端部側の全体を含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記被覆要素は、シールリング内径及びシールリング外径を有するシールリングを備え、前記シールリング内径は前記スタッド直径以下であり、前記シールリング外径は前記表面直径より大きい、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記被覆要素は、前記ステップd)、e)及びf)が実施された後に、前記スタッドに固定される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記被覆要素は、前記スタッドに螺合されるか、又は差し込まれる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記被覆要素は、前記ステップd)、e)及びf)が実施される前に、前記スタッドに予め取り付けられる、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記ステップd)、e)及び/又はf)の間、前記被覆要素は、部分的又は完全に液化され、前記スタッド及び/又は前記基板と一体的に接合された結合部を形成する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記被覆要素は、前記ステップd)、e)及びf)が実施された後に変形される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記被覆要素は、前記ステップd)、e)及びf)が実施された後に、前記スタッドにおけるその位置が変更される、請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、基材にスタッドを固定するための装置、方法、そのようなスタッドに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの装置及び方法が知られており、当該装置及び方法によって、様々なスタッドが様々な用途において基材に固定される。例えば、スタッドを基材に接触させ、それに電流を流す。スタッドと基材との間を電流が流れるとすぐに、スタッドは基材から吊上げられ、アークが形成される。放出されるエネルギーにより、スタッド及び基材の材料が部分的に液化する。次いで、電流はオフにされ、この材料が冷却され凝固する間、スタッドは液化した材料に浸漬されている。次いで、スタッドは、基材に、一体的に接合される手段により結合される。
【0003】
スタッドの材料及び基材の材料を十分に短時間で液化するために必要なエネルギーを供給するために、非常に高い強度の電流を発生させ、対応する定格の電気ケーブルを介してその電流をスタッドに供給する装置が知られている。液化した材料の酸化を回避するために、スタッドと基材との間の接触領域を不活性ガスで囲むことが知られている。
【0004】
例えば、建設又は造船における用途では、様々なサイズのねじ山付きスタッドが使用され、このスタッドに物品が螺合され、当該物品を基材に締結する。固定方法に関する幾つかのパラメータ、例えば、電流の持続時間及び電力は、ユーザによって装置に設定される必要があり、使用されるスタッドに適応させる必要がある。最後に、使用者は、目視検査によって、スタッドと基材との間の結合の質を評価する。したがって、結合の品質は、使用者の経験及び能力にも依存する。
【0005】
基材が例えばコーティング、防食又は汚れ層のような表面層を有する場合、この表面層は、スタッドを固定する前に、通常、広い面積にわたって接地される。スタッドを固定した後、接地領域を洗浄し、及び/又は新しいコーティング又は防食層を設けるが、これは時間がかかる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、基材へのスタッドの固定を容易にし、且つ/又は改善する装置及び/又は方法を提供することである。
【0007】
この目的は、表面層を有する基板にスタッドを固定するための方法において達成される。端部側にスタッド直径を有するスタッドと、内径及び外径を有する環状の被覆要素が提供される。表面直径を有する規定された表面領域において表面層を除去することによって基板に凹部が形成される。表面直径はスタッド直径よりも大きく、外径よりも小さい。端部側及び/又は基板は液化され、凹部内で凝固し得る。端部側は、凝固中に凹部内で基板と接触する。スタッドの周りの凹部は、被覆要素によって覆われる。規定された表面領域の表面層は、機械加工によって除去されることが好ましい。表面層が除去された位置で基板が覆われるという事実によって、表面層の修理は、特定の状況下では必要とされないか、又は少なくとも単純化される。
【0008】
1つの有利な実施形態は、端部側及び/又は被覆要素及び/又は規定された表面領域は円形であることを特徴とする。
【0009】
さらなる有利な実施形態は、凹部は盲穴であることを特徴とする。
【0010】
さらなる有利な実施形態は、好ましくは手動操作されるドリル加工工具によって、凹部が穿孔されることを特徴とする。
【0011】
さらなる有利な実施形態は、凹部がセンタリング輪郭を有し、端部側が嵌合輪郭を有しており、スタッドが凹部内の所望の位置に配置されると、センタリング輪郭と嵌合輪郭が互いに係合することを特徴とする。好ましくは、センタリング輪郭は凸状であり、嵌合輪郭は凹状である。また、センタリング輪郭は凹状であり、嵌合輪郭は凸状である。特に好ましくは、嵌合輪郭は端部側の全体を含む。
【0012】
さらなる有利な実施形態は、被覆要素は、シールリング内径及びシールリング外径を有するシールリングを備え、シールリング内径はスタッド直径以下であり、シールリング外径は表面直径より大きいことを特徴とする。次いで、シーリングリングは、スタッドに対して半径方向に、かつ、規定された表面領域の外側で基板に対して軸方向にシールし、その結果、スタッドと基板との間の結合部は周囲との関係で完全にシールされる。
【0013】
さらなる有利な実施形態は、スタッドが基板に固定された後に、被覆要素がスタッドに固定されることを特徴とする。被覆要素は、好ましくは、スタッドに螺合されるか又は差し込まれる。別の実施形態は、スタッドが基板に固定される前に、被覆要素がスタッドに予め取り付けられることを特徴とする。
【0014】
さらなる有利な実施形態は、スタッドの材料又は基板の材料の液化中及び/又は凝固中に、被覆要素が同様に部分的又は完全に液化され、スタッド及び/又は基板と一体的に接合された結合を形成することを特徴とする。
【0015】
さらなる有利な実施形態は、スタッドが基板に固定された後に、被覆要素が変形されることを特徴とする。
【0016】
さらなる有利な実施形態は、スタッドが基板に固定された後、被覆要素がスタッドにおけるその位置が変更されることを特徴とする。
【0017】
以下、本発明は、図面を参照しつつ例示的な実施形態に基づいて詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】溶接装置を概略的に示す。
図2】固定装置を断面図で示す。
図3】別の固定装置を断面図で示す。
図4】溶接スタッドを縦断面図で示す。
図5】別の溶接スタッドを縦断面図で示す。
図6】別の溶接スタッドを縦断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、溶接スタッド20を基板30に溶接するための溶接装置10を概略的に示す。溶接スタッド20の材料及び基板30の材料は、導電性、特に金属性である。この溶接装置10は、押しボタンスイッチとして形成されたトリガースイッチ41を有する溶接ガン40と、溶接ユニット50と、第1電気ケーブル61と、接続端子63を有する第2電気ケーブル62と、例えば電力ケーブルとして形成された電気供給ケーブル64と、電気通信ライン65と、ガスボンベとして形成されたガス貯蔵器70と、管状のガス供給ライン71と、ガスホース72とを備えている。
【0020】
第1ケーブル61は、溶接ユニット50を介して溶接スタッド20に電流を供給する役割を果たす。第2ケーブル62は、接続端子63が基板30にクランプされているときに、基板30を溶接ユニット50に電気的に接続する役割を果たす。溶接スタッド20が基板30と接触すると回路が閉じ、これにより、例えば直流又は交流の形態の溶接電流を溶接ユニット50によって溶接スタッド20に印加することができる。この目的のために、溶接ガン40は、図1には示されていない溶接電流接触要素を備える。溶接ユニット50は、供給ケーブル64からの電流を溶接電流に変換するための装置(図示せず)を含み、当該装置は、溶接電流を所望の電圧及び電流強度で供給するために、例えば電気コンデンサ、サイリスタ、絶縁ゲート電極又はパワーエレクトロニクスが提供する他の構成要素を備えたバイポーラトランジスタ、及びマイクロプロセッサを備えた関連する制御ユニットを含む。
【0021】
ガス供給ライン71及びガスホース72は、溶接スタッド20と基板30との間の接触領域にガス貯蔵器70からの不活性ガスを提供する役割を果たし、これにより、溶接作業中の周囲領域の酸素による酸化から当該接触領域を保護する。当該接触領域へのガスの流れを制御するために、ガス貯蔵器70、ガス供給ライン71、溶接ユニット50、ガスホース72又は溶接ガン40は、図示されていないバルブ特に制御可能なバルブを備える。
【0022】
溶接ユニット50は、作動要素52を有する入力装置51と、視覚表示要素54及び無線伝送ユニットを有する出力装置53とを有する。入力装置51は、溶接装置10のユーザによって、例えば、電圧、電流強度、電力、溶接電流の持続時間、スタッドの位置及び速度などの、溶接装置10によって実施される溶接プロセスのパラメータを入力する役割を果たす。出力装置53は、例えば、溶接プロセスのパラメータに関する情報、溶接プロセスにおいて検出された排出物又は他の変数に関する情報、溶接作業の品質に関する情報、溶接作業を改善するための手段に関する情報、溶接スタッドにおいて検出された特性に関する情報、又は前述の変数から導出された情報、及び/又は溶接装置10特に溶接ガン40を洗浄及び/又はメンテナンスするための推奨又は指示などの情報を使用者に出力する役割を果たす。
【0023】
通信ライン65は、溶接ガン40、特に溶接ガン40の制御装置(図1には図示せず)と、溶接ユニット50、特に制御ユニット及び/又は入力装置51及び/又は出力装置53との間で通信を行う役割を果たす。この通信によって、例えば、溶接作業のパラメータに関する情報の交換が行われ、これにより、例えば、溶接スタッド20の移動に伴う溶接電流の同期を達成し、又はこれを容易にする。図示されていない例示的な実施形態では、溶接ガンと溶接ユニットとの間の通信は、無線を用いてワイヤレスに行われるか、又は溶接電流を伝達する第1電気ケーブルを用いて行われる。
【0024】
溶接ガン40は、開口部46を有するハウジング42と、トリガースイッチ41を有し且つ当該ハウジング42から突出するハンドル43とを有する。溶接ガン40はまた、溶接作業中に溶接スタッド20が保持されるスタッドホルダ44を有する。この目的のために、スタッドホルダは、例えば、2つ、3つ、4つ又はそれ以上の弾性アーム(詳細には示されていない)を備え、これらのアームの間に、溶接スタッド20が挿入され、締め付け嵌め(clamping fit)によって保持される。溶接ガン40はまた、溶接スタッド20に溶接電流を印加するための溶接電流接触要素を有し、当該溶接電流接触要素は、例えば、1つ又はそれ以上の弾性アームの形態でスタッドホルダ44に一体化される。
【0025】
また、溶接ガン40は、当該溶接ガン及び溶接ユニット50の種々の構成要素及び装置を制御するための制御装置99を有する。制御装置99は、溶接作業における1つ又は複数のパラメータを制御するために設けられる。この目的のために、制御装置99は、様々な電子部品、例えば、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、1つ又は複数の一時的又は恒久的なデータメモリなどを備える。
【0026】
また、溶接ガン40は、第1リフティングマグネットとして形成されるスタッド吊上げ装置を有し、当該スタッド吊上げ装置が作動されると、スタッドホルダ44は、開口部46から後方に(図1において上方に)離れる力を受ける。信号ライン(図示せず)を介して、制御装置99はスタッド吊上げ装置と通信し、当該スタッド吊上げ装置を制御、特に起動及び停止させる。
【0027】
また、溶接ガン40は、ばね要素又は第2リフティングマグネットとして形成されたスタッド浸漬装置を有し、当該スタッド浸漬装置が作動されると、スタッドホルダ44は、開口部46に向かって前方(図1では下方)に力を受ける。信号ライン(図示せず)を介して、制御装置99は、スタッド浸漬装置と通信し、当該スタッド浸漬装置を制御、特に起動及び停止させる。スタッド浸漬装置がバネ要素の形態である場合、このバネ要素は、スタッド吊上装置によってスタッドホルダが後方に動かされるときに張力付与されることが好ましく、これにより、スタッド吊上装置が停止するとすぐに、バネ要素がスタッドホルダを前方に動かす。
【0028】
溶接装置10を用いた溶接工程では、まず基板30及びスタッド20が提供される。さらなるステップでは、例えば、次の溶接作業における所望のパラメータに関する情報が、入力装置を介してユーザによって入力される。更なる工程において、溶接スタッド20と基板30との間の溶接電流が、第1ケーブル61及び第2ケーブル62を用いて溶接ユニット50によって溶接スタッド20に印加される。さらなるステップでは、溶接電流の流れが溶接スタッド20と基板30との間に維持されたまま、溶接スタッド20がスタッド吊上装置によって基板から吊上げられ、この場合、溶接スタッド20と基板30との間にアークが形成される。特に、アークによって発生した熱により、溶接スタッド20の材料及び/又は基板30の材料は部分的に液化される。さらなるステップでは、溶接スタッド20は、スタッド浸漬装置によって、溶接スタッド20の液化した材料又は基板30の液化した材料に浸漬される。次に、溶接スタッド20の液化した材料又は基板30の液化した材料が凝固し、これにより、溶接スタッド20が基板30に、一体的に接合される手段により結合される。
【0029】
図2は、溶接作業中の溶接スタッド120及び基板130を有する固定装置を示す。基板130は、例えば、特に腐食に対する保護層、酸化物層特に金属酸化物層、又は汚れ層を含む表面層140を有する。溶接スタッド120の端部側121において、溶接スタッドは、例えば8mmのスタッド直径122を有し、当該端部側121は、凸状であり、薄い(変化の少ない)円錐側面の形態を有し、及び/又は円形状の断面を有する。表面直径132を有する規定の円形の表面領域131において、基板130は、盲穴深さ134を有する盲穴の形態の凹部133を有する。表面直径132は、例えば20mmであり、スタッド直径122よりも大きい。
【0030】
凹部133は、その半径方向外縁領域において一定の深さを有し、この深さは表面層140の厚さに等しい。半径方向内側の中央領域において、凹部133は凹状の形態であり、同様に凹状のセンタリング輪郭135を有する。溶接スタッド120の円錐形の端部側121の先端は、凸状の嵌合輪郭125を形成しており、その結果、溶接スタッド120が凹部133内の所望の位置に配置されると、センタリング輪郭135と嵌合輪郭125とが互いに係合する。図示されていない例示的な実施形態では、センタリング輪郭は凸状であり、嵌合輪郭は凹状である。凹部133における凹状の構成は、凹部133に向かう溶接スタッドの方向を感じることによって、所望の溶接点を探しやすくする。
【0031】
凹部133を形成するために、表面層140は、ドリル加工工具によってドリル加工によって機械加工され、規定の表面領域131内で除去される。ドリル加工工具は、好ましくは、周縁段付き部を有する段付きドリルであって、段付きドリルのドリル先端部からの、当該周縁段付き部の軸方向距離は、所望の盲穴深さ134に等しい。
【0032】
溶接スタッド120は、周縁で窪んだ形態の支持手段150を有しており、当該支持手段150は、溶接スタッド120が基板130に固定された後、被覆要素が溶接スタッド120に固定されるとき、基板130に対して被覆要素(図示せず)を支持する。被覆要素は、例えば、図4乃至図6に示される被覆要素の1つとして設計されており、当該被覆要素は、例えば30mmの外径を有し、これは表面直径132よりも大きく、これにより、溶接スタッド120と基板130との結合部、及び、溶接スタッド120の周囲の凹部133が被覆要素によって完全に覆われる。被覆要素は、溶接スタッド120に螺合される。
【0033】
図3は、溶接作業中の別の例示的な実施形態における、溶接スタッド220及び基板230の固定装置を示す。基板230は、例えば、特に腐食に対する保護層、酸化物層特に金属酸化物層、又は汚れ層を含む表面層240を有する。溶接スタッド220の端部側221において、溶接スタッドは、例えば6mmのスタッド直径222を有し、端部側221は平面であり、円形の断面を有する。表面直径232を有する規定された円形の表面領域231において、基板230は、盲穴深さ234を有する盲穴の形態の凹部233を有する。表面直径232は、例えば18mmであり、スタッド直径222よりも大きい。
【0034】
凹部233は、その半径方向外縁領域において一定の深さを有し、この深さは、表面層240の厚さに等しい。半径方向内側の中央領域において、凹部233は凹状の形態であり、同様に凹状のセンタリング輪郭235を有し、当該凹部233の直径はスタッド直径222と実質的に同じ大きさである。その結果、溶接スタッド220が凹部233内の所望の位置に配置されると、センタリング輪郭235と端部側221が互いに係合する。これにより、凹部233に向かう溶接スタッドの方向を感じることによって、所望の溶接点を探しやすくなる。
【0035】
溶接スタッド220は、周縁で窪んだ形態の支持手段250を有しており、当該支持手段250は、溶接スタッド220が基板230に固定された後、被覆要素が溶接スタッド220に固定されるとき、基板230に対して被覆要素(図示せず)を支持する。被覆要素は、例えば25mmの外径を有し、これは表面直径232よりも大きく、これにより、溶接スタッド220と基板230との間の結合部、及び、溶接スタッド220の周囲の凹部233が被覆要素によって完全に覆われる。被覆要素は、溶接スタッド220に差し込まれる。
【0036】
図4は、被覆要素300を有する溶接スタッド320を縦断面で示す。溶接スタッド320は、凹状の端部側321を有し、当該端部側321は、薄い(変化の少ない)円錐側面の形態を有し、かつ円形の断面を有する。さらに、溶接スタッドは、追加要素を溶接スタッド320に取り付けるための所定のねじ径を有する雄ねじの形態の取付手段390を有する。さらに、溶接スタッド320は、周辺で窪んだ形態の支持手段350を有し、当該支持手段350は、溶接スタッド320が基板に固定されるときに、基板(図示せず)に対して被覆要素300を支持する。
【0037】
被覆要素300は、シールリング内径361及びシールリング外径を有する円形のシールリング360と、同様に円形環状のカバーディスク370と備える。シールリング内径361は、取付手段390のねじ径よりも大きく、これにより、シールリング360は取付手段390の全体に亘って及び取付手段390を越えて移動することができる。被覆要素300特にカバーディスク370は、嵌合支持手段380を有し、当該嵌合支持手段380は、被覆要素300を基板に対して支持するために、溶接スタッド320の支持手段350と係合する。嵌合支持手段380は、円周に沿って配置され、カバーディスク370から半径方向内側に突出する1つ又は複数の突起部を備える。
【0038】
溶接スタッド320を基板に固定する前に、被覆要素300は既に溶接スタッド320に予め取り付けられており、この場合、シールリング360はシールリングリング内径361で溶接スタッド320に当接する。図示されていない例示的な実施形態では、被覆要素は、実際には固定前に溶接スタッドに予め取り付けられるが、例えば、締結方向に移動させることによって、固定後にその最終位置にもたらされる。溶接スタッド320を基板に固定した後、シールリング360は、溶接スタッド320に対して半径方向に、かつ基板に対して軸方向にシールし、その結果、溶接スタッド320と基板との間の結合部は周囲に対して完全にシールされる。
【0039】
基板に対する軸方向のシールを改善するために、シールリング360は、スタッドが基板に固定されると変形する2つの周辺軸方向突起部362を有する。追加的に又は代替的に、シールリング360の材料は、溶接スタッド320の材料又は基板の材料の液化中及び/又は凝固中に同様に部分的に又は完全に液化され、凝固時に、溶接スタッド320及び/又はカバーディスク370及び/又は基板と一体的に接合された結合部を形成する。
【0040】
図5は、被覆要素400を有する溶接スタッド420を縦断面で示す。溶接スタッド420は、薄い(変化の少ない)円錐側面の形態で、かつ円形断面を有する凹状の端部側421を有する。さらに、溶接スタッドは、追加要素を溶接スタッド420に取り付けるための所定のねじ径を有する雄ねじの形態の取付手段490を有する。さらに、溶接スタッド420は、溶接スタッド420が基板に固定されるときに、基板(図示せず)に対して被覆要素400を支持する周辺で窪んだ形態の支持手段450を有する。
【0041】
被覆要素400は、シールリング内径461及びシールリング外形を有する円形のシールリング460と、カバーディスク470とを含む。被覆要素400、特にカバーディスク470は、被覆要素400から半径方向内方に突出する周辺突起の形態の嵌合支持手段480を有し、当該嵌合支持手段480は、被覆要素400を基板に対して支持するために、溶接スタッド420の支持手段450と係合する。
【0042】
溶接スタッド420を基板に固定する前に、被覆要素400は既に溶接スタッド420に予め取り付けられており、この場合、シールリング460はシールリングリング内径461で溶接スタッド420に当接する。溶接スタッド420を基板に固定した後、シールリング460は、溶接スタッド420に対して半径方向に、かつ基板に対して軸方向にシールし、その結果、溶接スタッド420と基板との間の結合部は周囲に対して完全にシールされる。
【0043】
基板に対する軸方向のシールを改善するために、シールリング460は、スタッドが基板に固定されると変形する2つの周辺軸方向突起部462を有する。追加的に又は代替的に、シールリング460の材料は、溶接スタッド420の材料又は基板の材料の液化中及び/又は凝固中に同様に部分的に又は完全に液化され、凝固時に、溶接スタッド420及び/又はカバーディスク470及び/又は基板と一体的に接着された接続を形成する。
【0044】
図6は、被覆要素500を有する溶接スタッド520を縦断面で示す。溶接スタッド520は、円形断面を有する平坦な端部側521を有する。さらに、溶接スタッドは、追加要素を溶接スタッド520に取り付けるためのねじ径を有する雄ねじの形態の取付手段590を有する。さらに、溶接スタッド520は、溶接スタッド520が基板に固定されるときに、基板(図示せず)に対して被覆要素500を支持する周辺で窪んだ形態の支持手段550を有する。被覆要素500は、円形のシールリング560と、同様に円形の環状のカバーディスク570とを有している。
【0045】
被覆要素500は、図6の左側に図示された位置で、溶接スタッド520に既に取り付けられており、その後、溶接スタッド520は基板に固定される。固定後、被覆要素500は図6の右側に図示されている最終位置に、例えば、締結方向に折り畳まれたり、他の何らかの方法で変形されたりすることによって、もたらされる。この変形は、例えば、特に工具の助けを借りて、又は特に熱変形の結果として固定作業中に既に、又はこの目的のために溶接ガンに設けられた装置によって、ユーザによって達成される。
【0046】
1つ又は複数の例示的な実施形態では、シールリングはエラストマーから製造され、カバーディスクは金属又はセラミックから製造される。
【0047】
本発明は、第1のアイテムを第2のアイテムに固定するための装置及びそのような装置の製造方法の例に基づいて説明されてきた。記載された実施形態の特徴は、単一の固定装置又は単一の製造方法の範囲内で、所望に応じて互いに組み合わせることもできる。本発明による装置及び本発明による方法は他の目的にも適していることが指摘される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6