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特許7031027鉄道車両用ドア装置、鉄道車両用ドア装置を備えた鉄道車両及び非常用ドア解錠装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】鉄道車両用ドア装置、鉄道車両用ドア装置を備えた鉄道車両及び非常用ドア解錠装置
(51)【国際特許分類】
   B61D 19/00 20060101AFI20220228BHJP
【FI】
B61D19/00 C
B61D19/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021001511
(22)【出願日】2021-01-07
(62)【分割の表示】P 2017027029の分割
【原出願日】2017-02-16
(65)【公開番号】P2021049994
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】山口 敦仁
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-097124(JP,A)
【文献】特開2002-089109(JP,A)
【文献】特開2003-237568(JP,A)
【文献】特開2009-001189(JP,A)
【文献】特開2005-213984(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0162279(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0126335(KR,A)
【文献】特開2003-269029(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02495381(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 19/00-19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロック機構によって閉鎖された状態に施錠された鉄道車両のドア本体を解錠するためのドア解錠装置であって、
ドア本体を解錠するために操作される操作部材と、
前記操作部材の動作を検出して電気信号を送出する動作検出センサと、
前記操作部材の動作を、前記ロック機構に伝達する伝達手段と、
前記操作部材から前記伝達手段への動作の伝達および遮断を切り替えるクラッチ機構と、を備える、ドア解錠装置。
【請求項2】
前記クラッチ機構は、電力供給を受けている状態において前記操作部材から前記伝達手段への動作の伝達を遮断し、電力供給を受けていない状態において前記操作部材から前記伝達手段への動作を伝達する、請求項1に記載のドア解錠装置。
【請求項3】
前記クラッチ機構は、ソレノイドアクチュエータを含む、請求項1又は2に記載のドア解錠装置。
【請求項4】
前記ソレノイドアクチュエータは、前記操作部材及び前記伝達手段の一方に支持されたアクチュエータ本体部と、前記アクチュエータ本体部に対して動作可能な可動部と、を有し、
前記可動部は、前記ソレノイドアクチュエータが消磁した状態において、前記アクチュエータ本体部から突出して前記操作部材及び前記伝達手段の他方と係合する、請求項3に記載のドア解錠装置。
【請求項5】
前記操作部材及び前記伝達手段の他方は、消磁した前記ソレノイドアクチュエータの前記可動部を受ける受け部を有する、請求項4に記載のドア解錠装置。
【請求項6】
前記操作部材は、非操作時に位置する非操作位置と、前記動作検出センサから電気信号が送出され得る操作位置及び前記ロック機構により前記ドア本体を解錠し得る第2操作位置と、の間を動作可能であり、
前記非操作位置から前記操作位置または第2操作位置まで移動した際に、前記操作位置または第2操作位置から前記非操作位置に戻ることを規制する保持機構を、さらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のドア解錠装置。
【請求項7】
前記保持機構は、ラッチ機構であり、前記操作部材が前記非操作位置から離間するよう前記操作位置または第2操作位置から動作することを許容する、請求項6に記載のドア解錠装置。
【請求項8】
前記非操作位置から前記操作位置及び第2操作位置を経由して第3操作位置まで移動可能に前記操作部材を保持するケーシングをさらに備え、
前記ケーシングは、第2操作位置から第3操作位置まで移動する前記操作部材との接触により変形する、請求項7に記載のドア解錠装置。
【請求項9】
前記ケーシングは、第2操作位置から第3操作位置まで移動する前記操作部材と接触して変形する部分に、当該部分の強度を低下させるための強度低下構成を有する、請求項8に記載のドア解錠装置。
【請求項10】
前記クラッチ機構は、ソレノイドアクチュエータを含み、
前記ソレノイドアクチュエータは、前記操作部材及び前記伝達手段の一方に支持されたアクチュエータ本体部と、前記アクチュエータ本体部に対して動作可能な可動部と、を有し、
前記可動部は、前記ソレノイドアクチュエータが消磁した状態において、前記アクチュエータ本体部から突出して前記操作部材及び前記伝達手段の他方と係合し、
前記操作部材及び前記伝達手段の他方は、前記操作部材が非操作時に位置する非操作位置に位置する場合に、消磁した前記ソレノイドアクチュエータの前記可動部を受ける受け部と、前記操作部材が第2操作位置に位置する場合に、消磁した前記ソレノイドアクチュエータの前記可動部を受ける第2受け部と、を有する請求項4~9のいずれか一項に記載のドア解錠装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のドア解錠装置を備える、ドア装置。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載のドア解錠装置を備える、鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に用いられるドア装置及び鉄道車両用ドア装置を備えた鉄道車両に関する。また、本発明は、非常時にドア本体を解錠するためのドア解錠装置及びロック機構により施錠されたドア本体を解錠する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両のドア装置は、ドア本体とドア本体を閉鎖した状態に施錠するロック機構とを備えている。車両本体の走行中、ドア装置は、ドア本体がロック機構によって施錠されて不意に開放されることのないよう、乗客の安全が図られている。このような施錠されたドア本体を、非常時に乗客が開放する方法として、以下のような方法が知られている。
【0003】
まず、車両への電力供給が正常である場合、乗客は、ドア本体付近に設けられたボタン等を押すことによって、ドア本体の解錠を要求する要求信号を、運転席等にいる乗務員に送る。そして、乗務員によってドア本体の開放が可能であることが確認された後、乗客は、ドア本体付近に設けられたレバー等を用いて、ドア本体を機械的に解錠する。このようにドア本体を解錠する前に乗務員の確認を得る理由は、電力供給が正常である場合は一般に車両本体は走行中であるため、ドア本体を解錠する前に車両本体の速度が一定速度以下であること等を確認して、乗客の安全を確保する必要があるからである。この場合、ドア本体を解錠するためのレバーは、乗務員の確認が得られるまでは、操作することができないようになっている。
【0004】
一方、ドア本体を開放するための電力供給に異常がある場合、一般に車両は停止している。このため、上述の確認作業を行う必要はなく、乗客はレバーを操作するだけでドア本体を解錠することができるようになっている。
【0005】
あるいは、上述のレバーによって、ドア本体の解錠操作だけでなく、ドア本体の解錠を要求する要求信号を送る場合もある。この場合、レバーは2段階操作されるようになっており、電力供給が正常であれば、レバーは、乗務員の確認が得られるまでは第1段階までの操作のみができるようになっている。そして、電力供給が正常である場合には、乗客は、レバーを第1段階まで操作することによってドア本体の解錠を要求する要求信号を送り、乗務員の確認が得られた後、レバーを第2段階まで操作してドア本体を解錠する。一方、電力供給に異常がある場合、乗客はレバーを一気に第2段階まで操作してドア本体を解錠する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平07-096834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のようなドア本体の解錠操作を行うのは一般の乗客であり、また、このような解錠操作が行われるのは非常時である。このため、ドア本体の解錠操作は、乗客により直感的に把握されるよう、単純で工程数が少ないことが望ましい。
【0008】
しかしながら、電力供給が正常である場合のドア本体の解錠操作は、上述のように複雑であり、レバーから直感的に把握される操作とは異なる。すなわち、ドア本体を解錠するためには、レバーを引く前にボタンを押す必要があり、あるいは、レバーを2段階で操作する必要がある。
【0009】
また、電力供給が正常である場合と異常である場合とで、操作対象あるいは操作方法が異なると、乗客はドア本体を解錠するために複数の操作方法を試さねばならず、非常時における速やかな解錠の妨げとなる。
【0010】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、非常時に単純且つ直感的にドア本体の解錠操作を行うことが可能なドア装置及び当該ドア装置を備えた鉄道車両を提供することを目的とする。また、本発明は、非常時に単純且つ直感的にドア本体の解錠操作を行うことが可能なドア解錠装置及びドア本体を解錠する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるドア装置は、
鉄道車両に用いられるドア装置であって、
開閉可能なドア本体と、
前記ドア本体を閉鎖した状態に施錠するロック機構と、
前記ドア本体を解錠するために操作される操作部材と、を備え、
前記車両の電源が正常である場合、前記操作部材を操作することによって、前記ドア本体の開放が可能であるかが判断され且つ前記ドア本体の開放が可能であると判断された場合に限り前記ロック機構により前記ドア本体が解錠され、
前記車両の電源に異常がある場合、前記操作部材を操作することによって、ロック機構により前記ドア本体が解錠される。
【0012】
本発明によるドア装置は、前記操作部材が操作された後に起動するタイマーを更に備え、前記タイマーが起動して所定の時間が経過すると、前記ドア本体の開放が可能であると判断されてもよい。
【0013】
本発明による鉄道車両は、
上述のドア装置と、
前記ドア装置が取り付けられた車両本体と、を備える。
【0014】
本発明による鉄道車両は、
上述のドア装置と、
前記ドア装置が取り付けられた車両本体と、
前記車両本体の速度を計測する速度センサと、を備え、
前記速度センサでの計測結果から前記車両本体が停止していること或いは前記車両本体の速度が所定の速度以下または未満であることが検出されると、前記ドア本体の開放が可能であると判断される。
【0015】
本発明による鉄道車両は、
上述のタイマーを備えるドア装置と、
前記ドア装置が取り付けられた車両本体と、
前記車両本体の速度を計測する速度センサと、を備え、
前記速度センサでの計測結果から前記車両本体は停止していること或いは前記車両本体の速度が所定の速度以下または未満であることが検出され、且つ、前記タイマーが起動して所定の時間が経過すると、前記ドア本体の開放が可能であると判断される
【0016】
本発明によるドア本体を解錠する方法は、
ロック機構によって閉鎖された状態に施錠された鉄道車両のドア本体を解錠する方法であって、
前記ドア本体を解錠するために操作部材を操作する工程と、
前記車両の電源が正常である場合には、前記操作部材が操作された後に、前記ドア本体の開放が可能であるかが判断され且つ前記ドア本体の開放が可能であると判断された場合に限り前記ロック機構により前記ドア本体を解錠し、前記車両の電源に異常がある場合には、前記操作部材が操作された後に、前記ドア本体の開放が可能であるかが判断されることなく前記ロック機構により前記ドア本体を解錠する工程と、を備える。
【0017】
本発明によるドア本体を解錠する方法は、前記操作部材が操作された後に所定の時間が経過すると、前記ドア本体の開放が可能であると判断されてもよい。
【0018】
本発明によるドア本体を解錠する方法は、前記車両が停止しているとき或いは前記車両の速度が所定の速度以下または未満であるとき、前記ドア本体の開放が可能であると判断されてもよい。
【0019】
本発明によるドア本体を解錠する方法は、前記車両が停止している或いは前記車両の速度が所定の速度以下または未満であり且つ前記操作部材が操作された後に所定の時間が経過すると、前記ドア本体の開放が可能であると判断されてもよい。
【0020】
本発明によるドア解錠装置は、
ロック機構によって閉鎖された状態に施錠された鉄道車両のドア本体を解錠するためのドア解錠装置であって、
ドア本体を解錠するために操作される操作部材と、
前記操作部材の動作を検出して電気信号を送出する動作検出センサと、
前記操作部材の動作を、前記ロック機構に伝達する伝達手段と、
前記操作部材から前記伝達手段への動作の伝達および遮断を切り替えるクラッチ機構と、を備える。
【0021】
本発明によるドア解錠装置において、前記クラッチ機構は、電力供給を受けている状態において前記操作部材から前記伝達手段への動作の伝達を遮断し、電力供給を受けていない状態において前記操作部材から前記伝達手段への動作を伝達してもよい。
【0022】
また、本発明によるドア解錠装置において、前記クラッチ機構は、ソレノイドアクチュエータを含んでもよい。
【0023】
この場合、前記ソレノイドアクチュエータは、前記操作部材及び前記伝達手段の一方に支持されたアクチュエータ本体部と、前記アクチュエータ本体部に対して動作可能な可動部と、を有し、前記可動部は、前記ソレノイドアクチュエータが消磁した状態において、前記本体部から突出して前記操作部材及び前記伝達手段の他方と係合してもよい。
【0024】
この場合、前記操作部材及び前記伝達手段の他方は、消磁した前記ソレノイドアクチュエータの前記可動部を受ける受け部を有していてもよい。
【0025】
本発明によるドア解錠装置において、前記操作部材は、非操作時に位置する非操作位置と、前記動作検出センサから電気信号が送出され得る操作位置及び前記ロック機構により前記ドア本体を解錠し得る第2操作位置と、の間を動作可能であり、前記非操作位置から前記操作位置または第2操作位置まで移動した際に、前記操作位置または第2操作位置から前記非操作位置に戻ることを規制する保持機構を、さらに備えていてもよい。
【0026】
この場合、前記保持機構は、ラッチ機構であり、前記操作部材が前記非操作位置から離間するよう前記操作位置または第2操作位置から動作することを許容してもよい。
【0027】
この場合、ドア解錠装置は、前記非操作位置から前記操作位置及び第2操作位置を経由して第2操作位置まで移動可能に前記操作部材を保持するケーシングをさらに備え、前記ケーシングは、第2操作位置から第3操作位置まで移動する前記操作部材との接触により変形してもよい。
【0028】
この場合、前記ケーシングは、第2操作位置から第3操作位置まで移動する前記操作部材と接触して変形する部分に、当該部分の強度を低下させるための強度低下構成を有していてもよい。
【0029】
本発明によるドア解錠装置において、
前記クラッチ機構は、ソレノイドアクチュエータを含み、
前記ソレノイドアクチュエータは、前記操作部材及び前記伝達手段の一方に支持されたアクチュエータ本体部と、前記アクチュエータ本体部に対して動作可能な可動部と、を有し、
前記可動部は、前記ソレノイドアクチュエータが消磁した状態において、前記本体部から突出して前記操作部材及び前記伝達手段の他方と係合し、
前記操作部材及び前記伝達手段の他方は、前記操作部材が非操作時に位置する非操作位置に位置する場合に、消磁した前記ソレノイドアクチュエータの前記可動部を受ける受け部と、前記操作部材が第2操作位置に位置する場合に、消磁した前記ソレノイドアクチュエータの前記可動部を受ける第2受け部と、を有していてもよい。
【0030】
本発明によるドア装置は、上述のドア解錠装置を備える。
【0031】
本発明による鉄道車両は、上述のドア解錠装置を備える。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ドア本体を解錠するために操作者に求められる動作が一つである。このため、ドア本体を解錠するための操作方法が操作者によって直感的に把握される、ということを促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施の形態を説明する図であって、鉄道車両の構成を示す概略図。
図2図1に示すドア解錠装置を示す正面図。
図3図2に示すドア解錠装置を示す断面図。
図4図2に示すドア解錠装置の操作部材と、伝達手段と、クラッチ機構と、を示す斜視図。
図5】クラッチ機構を説明するための断面図。
図6】解錠状態にあるロック機構を示す平面図。
図7】施錠状態にあるロック機構を示す平面図。
図8】施錠状態にあるロック機構を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0035】
図1は、本実施の形態による鉄道車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。図1に示すように、鉄道車両10は、ドア装置20と、ドア装置20が取り付けられた車両本体25と、を備える。車両10の各部には、車両本体25に設けられた電源40から、電力が供給なされるようになっている。また、車両本体25には、車両本体25の速度を計測する速度センサ26が設けられている。
【0036】
図1に示すように、ドア装置20は、開閉可能なドア本体(ドアパネル)50と、ドア本体50を閉鎖した状態に施錠するロック機構60と、非常時に鉄道車両10のドア本体50をロック機構60により解錠するためのドア解錠装置200と、を有する。ロック機構60は、ロック機構60内を後述する解錠方向にスライドすることによってドア本体50を解錠可能な可動部材(ロックスライダ)30と、ロックスライダ30を駆動するモータ35と、を有している。ロックスライダ30には、ワイヤ31の一端が接続されている。ドア解錠装置200は、電源40からの電力供給が正常な場合(以下、「電源が正常である場合」あるいは「電源正常時」ともいう。)には、後述する制御部210を介してロック機構60のモータ35を駆動させることによって、ロックスライダ30を解錠方向へスライドさせることができるようになっている。一方、電源40からの電力供給に異常がある場合(以下、「電源に異常がある場合」あるいは「電源異常時」ともいう。)には、ワイヤ31を引っ張ることによって、ロックスライダ30を解錠方向へスライドさせることができるようになっている。
【0037】
ドア装置20は、また、電源40からの電力供給が正常である場合にドア本体50の解錠を制御する制御部210を有している。
【0038】
以下、図2乃至図5を参照して、本実施の形態のドア解錠装置200について詳述する。図2は、非操作時のドア解錠装置200を示す正面図であり、図3は、図2に示すドア解錠装置200のIII-III線断面図である。図4は、操作時のドア解錠装置200を示す斜視図である。図5は、図3に示すドア解錠装置200のV-V線断面図である。
【0039】
図2及び図3に示すように、ドア解錠装置200は、非常時にドア本体50を解錠するために操作される操作部材230と、操作部材230を回動可能に保持するケーシング236と、を有している。また、ドア解錠装置200は、操作部材230の動作を検出する動作検出センサ260と、操作された操作部材230の移動を規制する保持機構235と、を有している。また、図4に示すように、ドア解錠装置200は、操作部材230の動作をロック機構60に伝達する伝達手段270と、操作部材230から伝達手段270への動作の伝達および遮断を切り替えるクラッチ機構280と、を有している。
【0040】
図2乃至図5に示すように、操作部材230は、全体として板状の部材である。操作部材230の一方の面の端部には、軸受け232が設けられている。
【0041】
ケーシング236は、操作部材230の軸受け232に通された軸233を回動可能に支持する支持部237を有している。ケーシング236は、操作部材230を、非操作時に位置する非操作位置Aから、操作位置B、更に第2操作位置Cを経由して、第3操作位置Dまで移動可能に保持している。非常時においても操作者が操作部材230を非操作位置Aから第2操作位置Cまで操作する、ということを直感的に把握することができるよう、ケーシング236の一部238は、操作部材230が第2操作位置Cまで移動されると、操作部材230と接触するようになっている。当該一部238は、必要があれば操作部材230を第3操作位置Dまでさらに移動させることができるよう、変形するようになっている。すなわち、当該一部238は、操作部材230が第2操作位置Cから第3操作位置Dまで移動する間、操作部材236と接触することによって変形するようになっている。具体的には、ケーシング236は、当該操作部材236との接触により変形する部分238には、当該部分の強度を低下させるための強度低下構成としての切り欠き239が設けられている。強度を低下させるためのその他の構成として、薄肉化や貫通孔の形成などを例示することができる。
【0042】
動作検出センサ260は、操作部材230が操作位置Bまで移動されると、電気信号を送出するようになっている。動作検出センサ260は、例えば、磁気センサから構成され、操作部材230の接近を検出することができる。
【0043】
保持機構235は、操作部材230が非操作位置Aから操作位置Bあるいは第2操作位置Cまで移動した際に、操作位置Bまたは第2操作位置Cから非操作位置Aに戻ることを規制するようになっている。本実施の形態においては、保持機構235は、ラッチ機構であり、操作部材230が非操作位置Aからさらに離間するよう操作位置B及び第2操作位置Cから動作することを許容する。このような保持機構235によって、いったん操作位置Bまたは第2操作位置Cまで操作される操作部材230が、非操作位置Aに戻ることを規制し、必要であれば操作部材230を操作位置Bから第2操作位置Cまで、あるいは第2操作位置Cから第3操作位置Dまでさらに移動させることができるようになっている。
【0044】
クラッチ機構280は、電源40からの電力供給が正常である場合に、操作部材230から伝達手段270への動作の伝達を遮断するようになっている。一方、電源40からの電力供給に異常がある場合には、クラッチ機構280は、操作部材230から伝達手段270への動作を伝達するようになっている。
【0045】
図4及び図5に示すように、クラッチ機構280は、電源40から電力供給を受けて励磁するソレノイドアクチュエータ281を含んでいる。ソレノイドアクチュエータ281は、伝達手段270に支持されたアクチュエータ本体部282と、アクチュエータ本体部282に対して動作可能な可動部283と、を有している。可動部283は、ソレノイドアクチュエータ281が励磁した状態において、例えば電源40からの電力供給が正常である場合、本体部282内に収容されている。また、可動部283は、ソレノイドアクチュエータ281が消磁した状態において、例えば電源40からの電力供給に異常がある場合、本体部282から突出して、操作部材230と係合することができるようになっている。具体的には、操作部材230には、消磁したソレノイドアクチュエータ281の突出した可動部283を受ける受け部283aが設けられている。受け部283aは、操作部材230が非操作位置Aに位置する場合に、突出した可動部283を受容可能な位置に設けられている。さらに、操作部材230には、操作部材230が第2操作位置Cまで移動されてしまった後であっても可動部283と係合することができるよう、突出した可動部283を受ける第2受け部283bが設けられている。具体的には、第2受け部283bは、操作部材230が第2操作位置Cに位置する際に、突出した可動部283を受容可能な位置に設けられている。
【0046】
なお、図3に示す例においては、操作位置Bと第2操作位置Cとは、異なる位置にあるが、同じ位置にあってもよい。すなわち、動作検出センサ260が電気信号を送るようになる操作部材230の操作位置(図3に示す例では操作位置B)と、クラッチ機構280の可動部283が操作部材230の第2受け部283bと係合することができる操作位置(図3に示す例では第2操作位置C)と、は、同じであってもよい。
【0047】
また、アクチュエータ本体部282は、操作部材230に支持されていてもよい。その場合、受け部283a及び第2受け部283bは伝達手段270に設けられ、本体部282から突出した可動部283は、伝達手段270と係合する。
【0048】
伝達手段270は、ピニオン271とラック273と、を含む。ピニオン271は、クラッチ機構280の可動部283が操作部材230と係合すると、操作部材230の回動にともなって回動するようになっている。ラック273は、ピニオン271の回動にともなって上下方向に移動するようになっている。ラック273の先端部には、ロック機構60のロックスライダ30に接続されたワイヤ31の他端が接続されている。これにより、ラック273の動きをワイヤ31を介してロック機構60のロックスライダ30に伝達することができるようになっている。
【0049】
図1に戻って、制御部210について説明する。図1に示すように、制御部210は、ドア本体50の開放が可能であるかを判断する判断部212と、電源40とロック機構60のモータ35とを電気的に接続あるいは断絶するスイッチ(SW)部213と、を有している。
【0050】
判断部212は、電源40からの電力供給が正常である場合にドア解錠装置200が操作されると、ドア本体50の開放が可能であるかを判断するようになっている。図1に示すように、判断部212は、タイマー215を有している、タイマー215は、動作検出センサ260から送出される電気信号を受け取った後に起動するようになっている。
【0051】
判断部212は、以下の第1条件及び第2条件を満たした場合にのみ、ドア本体50の開放が可能であると判断するようになっている。第1条件は、上述の速度センサ26での計測結果から車両本体25が停止していること或いは車両本体25の速度が所定の速度以下または未満であることが検出されたことである。また、第2条件は、タイマー215が起動して所定の時間が経過したことである。もちろん、判断部212は、第1条件及び第2条件のいずれか一方が満たされた場合に、ドア本体50の開放が可能であると判断するようになっていてもよい。
【0052】
また、判断部212を設ける代わりに、乗員が速度センサ26、タイマー215及びその他の計器に基づいてドア本体50の開放が可能であるか否かの判断を行ってもよい。
【0053】
スイッチ部213は、判断部212がドア本体50の開放が可能であると判断した場合に限り、電源40からモータ35へ電力を供給するように切り替えられる。もちろん、スイッチ部213は、乗員の判断によって切り替えられてもよい。
【0054】
次に、図6乃至図8を参照して、本実施の形態のロック機構60について説明する。図6は、解錠状態にあるロック機構60を示す平面図であり、図7は、施錠状態にあるロック機構60を示す平面図である。また、図8は、施錠状態にあるロック機構60を示す側面図である。図6乃至図8に示す例では、ドア本体50は、引分け式の左右一対のドアパネル50A,50Bを有している。
【0055】
図8に示すように、ロック機構60は、ドア本体50の上方において車両本体25に固着された基体5によって支持されている。基体5は、ドア本体50の開閉方向に沿って延びている。図6乃至図8に示すように、ロック機構60は、水平面内で直線状態と屈曲状態に変形可能なリンク機構61と、水平面内で作動するリンク保持機構65と、を有する。リンク機構61は、3つのリンク62a,62b,62cを連結して形成されている。中央のリンク62aは、その長手方向中央部において連結ピン63aにより、基体5に対して回動自在に固定されている。当該中央のリンク62aの一端には、連結ピン63bにより、リンク62bの一端が連結している。また、リンク62aの他端には、ガイド用連結ピン63cにより、リンク62cの一端が連結している。リンク62b及びリンク62cにおけるリンク62aとの連結点と逆側の端部には、それぞれ、ピン63d,63eが設けられている。
【0056】
また、ロック機構60は、ロック機構60を施錠状態と解錠状態とに切り替えるための可動部材であるロックスライダ30を有している。ロックスライダ30は、基体5によって支持されており、ドア本体50の開閉方向に沿ってスライドすることができるようになっている。ロックスライダ30は、モータ35からの駆動力を受けてスライドするようになっている。図8に示すように、ロックスライダ30の一端には、ワイヤ31の一端が接続されており、ワイヤ31からの引張力によっても、スライドすることができるようになっている。
【0057】
図6乃至図8に示すように、リンク機構61の端部に位置するピン63d,63eは、それぞれ、基体5においてロックスライダ30の移動方向と平行な直線状に形成されたガイド溝80A、80B(図6図7においては二点鎖線で示す)に端部を挿入されて、当該ガイド溝80A、80Bに沿って移動可能に設置されている。即ち、ピン63d,63eの動きはガイド溝80A,80Bによってそれぞれ規制されている。
【0058】
また、リンク機構61のガイド用連結ピン63cのロックスライダ30側の端部は、ロックスライダ30のスリット30eに挿入されている。したがって、ロックスライダ30の位置により、ガイド用連結ピン63cの位置が規制されることになる。これより、ロックスライダ30の移動により、リンク機構61の直線状態と屈曲状態とを切り換えることが可能となる。
【0059】
リンク保持機構65は、当該リンク機構61の両端部近傍において、リンク機構61に対して(連結ピン63aに対して)対称に、水平面内で回動自在に設置された一対の係合部材66A,66Bと、当該一対の係合部材同士を連結する連結バネ69と、を備えて構成されている。当該係合部材66A,66Bはそれぞれ、その周縁部に、凹状に形成された第1係合部67A,67B及び第2係合部68A,68Bを備えており、この係合部材66A,66Bの回動軸81A,81Bは、基体5に対して固定設置されている(図8参照)。尚、当該一対の回動軸81A,81Bには、掛渡し部材82が固定されており、リンク機構61の中央のリンク62aを回動自在に固定するための連結ピン63aは、当該掛渡し部材82によって支持される。
【0060】
リンク保持機構65は、外部から力を受けていない状態においては、係合部材66A,66Bが連結バネ69から力を受け、図6に示す状態に保持される。このとき、係合部材66A,66Bは、リンク機構61が直線状態に延びる動きを外縁部(図6において矢印P1で示す部分)によって拘束している。このように、リンク機構61が、係合部材66A,66Bにより屈曲状態に保持されているときは、ロックスライダ30は、スリット30e及びガイド用連結ピン63cを介して、施錠方向(図6において矢印で示す方向)への移動を拘束されることになる。
【0061】
一方、係合部材66A,66Bは、ドアパネル50A,50Bに対してそれぞれ固定されているロックピン55A,55Bが閉鎖方向(図5において矢印で示す方向)に移動することにより、第1係合部67A,67Bの縁部(図6においてP2で示す部分)を付勢され、連結バネ69の付勢力に逆らって第2係合部68A,68Bをリンク機構61に近づける方向(図6において矢印R1で示す方向)に回動できるように形成されている。ドアパネル50A,50Bが全閉位置にある状態においては、図7に示すように、ロックピン55A,55Bと第1係合部67A,67Bとが係合し、第2係合部68A,68Bの位置が、リンク機構61の端部に位置するピン63d,63eと係合することができる位置となる。即ち、係合部材66A,66Bはリンク機構61の変形を拘束しない状態に移行する。このとき、ロックスライダ30が施錠方向に移動すれば、スリット30eに沿ってガイド用連結ピン63cが移動することにより、リンク機構61は、屈曲状態から直線状態に移行する。そして、リンク機構61の端部に位置するピン63d,63eが係合部材66A,66Bの第2係合部68A,68Bと係合する。これにより、係合部材66A,66Bの回動が拘束される。したがって、ロックピン55A,55Bの開放方向(図7において矢印で示す)への移動が第1係合部67A,67Bにより拘束されることになる。
【0062】
次に、本実施の形態のドア装置20を有する鉄道車両10の作用について説明する。
【0063】
まず、操作者がドア本体50を開放しようとする際、ドア本体50は、ロック機構60によって閉鎖された状態に施錠されている。すなわち、ロック機構60のリンク機構61は、図7に示す直線状態になっている。また、ドア解錠装置200の操作部材230は、図2及び図3に示す非操作位置Aにある。また、スイッチ部213は、電源40からロック機構60のモータ35への電力の供給を遮断する位置に切り替えられている。
【0064】
まず、操作者が操作部材230の操作を開始する際、電源40から車両10への電力供給が正常である場合について説明する。この場合、ドア解錠装置200のクラッチ機構280のソレノイドアクチュエータ281は、電源40からの電力供給によって励磁されている。このため、クラッチ機構280の可動部283は、本体部282内に収容されたままであり、操作部材230と係合していない。したがって、操作者が操作部材230を操作しても、操作部材230の動作は、伝達手段270へ伝達されない。
【0065】
このような状態において、ロック機構60によって閉鎖された状態に施錠されたドア本体50を解錠するため、操作者は、ドア解錠装置200の操作部材230を、非操作位置Aから操作位置Bへ向けて移動させる。操作部材230が移動されると、動作検出センサ260によって、操作部材230の動作が検出される。操作部材230が操作位置Bまで移動されると、ドア検出センサ260によって、電気信号が送出される。
【0066】
操作位置Bまで移動された操作部材230は、ドア解錠装置200の保持機構235によって保持される。この結果、操作部材230は、非操作位置Aに戻ることなく、操作位置Bに維持される。
【0067】
判断部212が動作検出センサ260から電気信号を受信すると、判断部212において、タイマー215が起動され、ドア本体50の開放が可能であるかが判断される。具体的には、判断部212は、速度センサ26での計測結果から車両本体25が停止していること或いは車両本体25の速度が所定の速度以下または未満であることが検出されたことを確認する(第1条件)。さらに、判断部212は、操作部材230が操作された後に所定の時間が経過したこと、すなわちタイマー215が起動して所定の時間が経過したことを確認する(第2条件)。そして、判断部212は、第1条件及び第2条件が満たされたことを確認した後、ドア本体50の開放が可能であると判断する。なお、タイマー215が起動して所定の時間が経過するまでの間に、車両本体25は、乗員が降車するのに適した場所まで移動され得る。
【0068】
判断部212によってドア本体50の開放が可能であると判断されると、スイッチ部213が切り替えられて、ロック機構60のモータ35に、電源40から電力が供給される。モータ35に電力が供給されると、ロックスライダ30は、モータ35の駆動力を受けて解錠方向にスライドする。
【0069】
ここで、ドア本体50の開放が可能であるか否かの判断は、前述のように速度センサ26、タイマー215及びその他の計器から得られる情報に基づいて乗員が行ってもよい。また、スイッチ部213の切り替え等のロック機構60を解除する操作も、乗員が手作業で行ってもよい。
【0070】
ロックスライダ30の解錠方向への移動に伴い、リンク機構のガイド用連結ピン63cは、スリット30eの縁に沿って第1孔部αから第2孔部βに移動する。この結果、リンク機構61は、直線状態から屈曲状態に移行する。これにより、係合部材66A,66Bの第2係合部68A,68Bと、リンク機構61の端部に位置するピン63d,63eとの係合が外れる。そして、一対の係合部材66A,66Bを連結する連結バネ69の引張りの弾性力により、係合部材66A,66Bは、第1係合部67A・67Bを外側に(リンク機構61と逆側に)向けるように図7においてR2方向に回動させる力を受ける。この結果、第2係合部68A,68Bに対して係合状態にあるロックピン55A,55Bの開放方向への移動が許容され、ドアパネル50A,50Bのロックが解除される。
【0071】
ロックが解除された後、操作者は、ドアパネル50A,50Bを引き分けて、ドア本体50を開放する。
【0072】
次に、操作者が操作部材230の操作を開始する時点において、電源40から車両10への電力供給に異常がある場合について説明する。この場合、クラッチ機構280のソレノイドアクチュエータ281は、電源40から電力供給を受けていないため、消磁している。このため、可動部283は、本体部282から突出している。本体部282から突出した可動部283は、操作部材283aの受け部283aによって受けられており、操作部材283aと係合している。
【0073】
このような状態において、操作者が操作部材230を非操作位置Aから第2操作位置Cに移動させると、操作部材230の動作が、クラッチ機構280によって伝達手段270に伝えられる。伝達手段270のピニオン271は、操作部材230の動作に伴って回動し、ラック273を下方に移動させる。この結果、ラック273の先端にその他端が接続されたワイヤ31が下方に引っ張られる。
【0074】
ワイヤ31が下方に引っ張られると、ロック機構60のロックスライダ30は、ワイヤ31の引張力によって解錠方向へスライドする。この結果、ロック機構60により、ドア本体50が解錠される。
【0075】
次に、操作者が操作部材230の操作を開始した後、具体的には操作者が操作部材230を非操作位置Aから第2操作位置Cまで移動させるまでの間、あるいは第2操作位置Cまで移動させた後に、車両10の電源40に異常が発生した場合について説明する。
【0076】
この場合、電源40に異常が発生したことによって、クラッチ機構280のソレノイドアクチュエータ281は、励磁状態から消磁状態に移行する。この結果、本体部内に収容されていた可動部283は、本体部282に対して動作して、本体部282から突出する。本体部282から突出した可動部283は、操作部材230が第2操作位置Cに移動されると(操作部材230が第2操作位置Cに移動されている場合は、第2操作位置Cにおいて)、操作部材230の第2受け部283bに受けられて、操作部材230と係合する。
【0077】
この状態において、操作者が操作部材230を第3操作位置Dに向けてさらに移動させると、操作部材230の動作は、クラッチ機構280によって伝達手段270に伝えられる。この結果、クラッチ機構280のラック273に接続されたワイヤ31は、下方に引っ張られる。ワイヤ31が下方に引っ張られることにより、ロック機構60のロックスライダ30が解錠方向へスライドし、ロック機構60により、ドア本体50が解錠される。なお、操作部材230の第2操作位置Cから第3操作位置Dまでの移動は、ケーシング236の強度低下構成が設けられた部分238が操作部材230と接触すると変形するため、妨げられない。
【0078】
本実施の形態の鉄道車両10に用いられるドア装置20において、ドア装置20は、開閉可能なドア本体50と、ドア本体50を閉鎖した状態に施錠するロック機構60と、ドア本体50を解錠するために操作される操作部材230と、を備えている。そして、車両10の電源40が正常である場合、操作部材230を操作することによって、ドア本体50の開放が可能であるかが判断され且つドア本体50の開放が可能であると判断された場合に限りロック機構60によりドア本体50が解錠される。一方、車両10の電源40に異常がある場合、操作部材230を操作することによって、ロック機構60によりドア本体50が解錠される。
【0079】
このようなドア装置20によれば、非常時にドア本体50を解錠するために操作者に求められる動作が一つである。このため、ドア本体50の解錠操作方法が操作者によって直感的に把握される、ということを促進することができる。さらに、電源正常時と電源異常時とで、操作対象及び操作方法が同一である。このため、操作者が操作部材230から直感的に把握される一つの操作方法を試みるだけでドア本体50が解錠される、ということを促進することができる。
【0080】
また、ドア装置20は、操作部材230が操作された後に起動するタイマー215を更に備えている。そして、タイマー215が起動して所定の時間が経過すると、ドア本体50の開放が可能であると判断される。このようなドア装置20によれば、操作部材230が操作されてからロック機構60によりドア本体50が解錠されるまでの間に、車両本体25の速度を十分に低下させ、或いは、車両本体25を降車に適した場所まで移動させることができる。この結果、車両10の乗員の安全を確保することができる。
【0081】
本実施の形態の鉄道車両10において、鉄道車両10は、上述のドア装置20と、ドア装置20が取り付けられた車両本体25と、を備えている。
【0082】
このような鉄道車両10によれば、非常時にドア本体50を解錠するために操作者に求められる動作が一つである。このため、ドア本体50の解錠操作方法が操作者によって直感的に把握される、ということを促進することができる。さらに、電源正常時と電源異常時とで、操作対象及び操作方法が同一である。このため、操作者が操作部材230から直感的に把握される一つの操作方法を試みるだけでドア本体50が解錠される、ということを促進することができる。
【0083】
本実施の形態の鉄道車両10において、鉄道車両10は、上述のドア装置20と、ドア装置20が取り付けられた車両本体25と、車両本体25の速度を計測する速度センサ26と、を備えている。そして、速度センサ26での計測結果から車両本体25が停止していること或いは車両本体25の速度が所定の速度以下または未満であることが検出されると、ドア本体50の開放が可能であると判断される。
【0084】
このような鉄道車両10によれば、ドア本体50は、車両本体25が停止してから、或いは、車両本体25の速度が十分に低下してから解錠される。この結果、車両10の乗員の安全を確保することができる。
【0085】
本実施の形態の鉄道車両10において、鉄道車両10は、上述のタイマー215を備えたドア装置20と、ドア装置20が取り付けられた車両本体25と、車両本体25の速度を計測する速度センサ26と、を備えている。そして、速度センサ26での計測結果から車両本体25は停止していること或いは車両本体25の速度が所定の速度以下または未満であることが検出され、且つ、タイマー215が起動して所定の時間が経過すると、ドア本体50の開放が可能であると判断される。
【0086】
このような鉄道車両10によれば、ドア本体50は、車両本体25が停止してから、或いは、車両本体25の速度が十分に低下してから解錠される。また、操作部材230が操作されてからロック機構60によりドア本体50が解錠されるまでの間に、車両本体25を降車に適した場所まで移動させることが可能である。この結果、車両10の乗員の安全を確保することができる。
【0087】
本実施の形態のロック機構60によって閉鎖された状態に施錠された鉄道車両10のドア本体50を解錠する方法において、当該解錠方法は、ドア本体50を解錠するために操作部材230を操作する工程と、車両10の電源40が正常である場合には、操作部材230が操作された後に、ドア本体50の開放が可能であるかが判断され且つドア本体50の開放が可能であると判断された場合に限りロック機構60によりドア本体50を解錠し、車両10の電源40に異常がある場合には、操作部材230が操作された後に、ドア本体50の開放が可能であるかが判断されることなくロック機構60によりドア本体50を解錠する工程と、を備える。
【0088】
このような解錠方法によれば、非常時にドア本体50を解錠するために操作者に求められる動作が一つである。このため、ドア本体50の解錠操作方法が操作者によって直感的に把握される、ということを促進することができる。さらに、電源正常時と電源異常時とで、操作対象及び操作方法が同一である。このため、操作者が操作部材230から直感的に把握される一つの操作方法を試みるだけでドア本体50が解錠される、ということを促進することができる。
【0089】
また、上述した解錠方法において、操作部材230が操作された後に所定の時間が経過すると、ドア本体50の開放が可能であると判断される。このような解錠方法によれば、操作部材230が操作されてからロック機構60によりドア本体50が解錠されるまでの間に、車両本体25の速度を十分に低下させ、或いは、車両本体25を降車に適した場所まで移動させることができる。この結果、車両10の乗員の安全を確保することができる。
【0090】
また、上述した解錠方法において、車両本体25が停止しているとき或いは車両本体25の速度が所定の速度以下または未満であるとき、ドア本体50の開放が可能であると判断される。このような解錠方法によれば、ドア本体50は、車両本体25が停止してから、或いは、車両本体25の速度が十分に低下してから解錠される。この結果、車両10の乗員の安全を確保することができる。
【0091】
また、上述した解錠方法において、車両本体25が停止している或いは車両本体25の速度が所定の速度以下または未満であり且つ操作部材230が操作された後に所定の時間が経過すると、ドア本体50の開放が可能であると判断される。このような解錠方法によれば、ドア本体50は、車両本体25が停止してから、或いは、車両本体25の速度が十分に低下してから解錠される。また、操作部材230が操作されてからロック機構60によりドア本体50が解錠されるまでの間に、車両本体25を降車に適した場所まで移動させることが可能である。この結果、車両10の乗員の安全を確保することができる。
【0092】
本実施の形態のロック機構60によって閉鎖された状態に施錠された鉄道車両10のドア本体50を解錠するためのドア解錠装置200において、ドア解錠装置200は、ドア本体50を解錠するために操作される操作部材230と、操作部材230の動作を検出して電気信号を送出する動作検出センサ260と、操作部材230の動作を、ロック機構60に伝達する伝達手段270と、操作部材230から伝達手段270への動作の伝達および遮断を切り替えるクラッチ機構280と、を備える。
【0093】
このようなドア解錠装置200によれば、非常時にドア本体50を解錠するために操作者に求められる動作を一つにすることができる。このため、ドア本体50の解錠操作方法が操作者によって直感的に把握される、ということを促進することができる。また、電源正常時と電源異常時とで、操作対象及び操作方法を同一にすることが可能である。このため、操作者が操作部材230から直感的に把握される一つの操作方法を試みるだけでドア本体50が解錠される、ということを促進することができる。
【0094】
具体的には、クラッチ機構280は、電力供給を受けている状態において操作部材230から伝達手段270への動作の伝達を遮断し、電力供給を受けていない状態において操作部材230から伝達手段270への動作を伝達する。このようなドア解錠装置200によれば、電源正常時と電源異常時とで、操作対象及び操作方法を同一にすることが容易である。このため、操作者が操作部材230から直感的に把握される一つの操作方法を試みるだけでドア本体50が解錠される、ということを促進することができる。
【0095】
さらに具体的には、クラッチ機構280は、ソレノイドアクチュエータ281を含む。また、ソレノイドアクチュエータ281は、操作部材230及び伝達手段270の一方に支持されたアクチュエータ本体部282と、アクチュエータ本体部282に対して動作可能な可動部283と、を有し、可動部283は、ソレノイドアクチュエータ281が消磁した状態において、本体部282から突出して操作部材230及び伝達手段270の他方と係合する。また、操作部材230及び伝達手段270の他方は、消磁したソレノイドアクチュエータ281の可動部283を受ける受け部283aを有する。
【0096】
また、ドア解錠装置200において、操作部材230は、非操作時に位置する非操作位置Aと、動作検出センサ260から電気信号が送出され得る操作位置B及びロック機構60によりドア本体50を解錠し得る第2操作位置Cと、の間を動作可能であり、非操作位置Aから操作位置Bまたは第2操作位置Cまで移動した際に、操作位置Bまたは第2操作位置Cから非操作位置Aに戻ることを規制する保持機構235を、さらに備える。このようなドア解錠装置200よれば、操作位置Bまで移動した操作部材230が非操作位置Aに戻ってしまって、動作検出センサ260から電気信号が十分に送出されない、ということが防止される。あるいは、第2操作位置Cまで移動した操作部材230が非操作位置Aに戻ってしまって、ドア本体50が再び施錠されてしまう、ということが防止される。
【0097】
具体的には、保持機構235は、ラッチ機構であり、操作部材230が非操作位置Aから離間するよう操作位置Bまたは第2操作位置Cから動作することを許容する。このようなドア解錠装置200よれば、操作位置Bまたは第2操作位置Cにある操作部材230を、非操作位置Aから離間するようさらに移動させることができる。これにより、操作部材230の操作中に電源異常が生じた場合に備えて、ロック機構60によりドア本体50を解錠するのに必要となる操作部材230の操作量を確保することができる。
【0098】
また、ドア解錠装置200において、非操作位置Aから操作位置B及び第2操作位置Cを経由して第3操作位置Dまで移動可能に操作部材230を保持するケーシング236をさらに備えている。そして、ケーシング236は、第2操作位置Cから第3操作位置Dまで移動する操作部材230との接触により変形する。このようなドア解錠装置200よれば、操作者は、非常時においても、非操作位置Aから操作位置Bまで操作部材230を操作することを直感的に把握することができ、且つ、非操作位置Aから操作位置Bまで操作部材230を安定して操作することができる。
【0099】
具体的には、ケーシング236は、第2操作位置Cから第3操作位置Dまで移動する操作部材230と接触して変形する部分238に、当該部分238の強度を低下させるための強度低下構成239を有する。
【0100】
また、ドア解錠装置200において、クラッチ機構280は、ソレノイドアクチュエータ281を含み、ソレノイドアクチュエータ281は、操作部材230及び伝達手段270の一方に支持されたアクチュエータ本体部282と、アクチュエータ本体部282に対して動作可能な可動部283と、を有している。可動部283は、ソレノイドアクチュエータ281が消磁した状態において、本体部282から突出して操作部材230及び伝達手段270の他方と係合し、操作部材230及び伝達手段270の他方は、操作部材230が非操作時に位置する非操作位置Aに位置する場合に、消磁したソレノイドアクチュエータ281の可動部283を受ける受け部283aと、操作部材230が第2操作位置Cに位置する場合に、消磁したソレノイドアクチュエータ281の可動部283を受ける第2受け部283bと、を有する。
【0101】
このようなドア解錠装置200によれば、電源正常時と電源異常時で、操作対象及び操作方法を同一にすることが容易である。また、複数の受け部283a,283bの存在により、操作部材230の操作を開始してから電力供給に異常が発生した場合であっても、クラッチ機構280の可動部283を操作部材230あるいは伝達手段270に係合させて、ロック機構60によりドア本体50を解錠することができる。
【0102】
本実施の形態のドア装置20は、上述のドア解錠装置200を備える。このようなドア装置20によれば、非常時にドア本体50を解錠するために操作者に求められる動作を一つにすることができる。このため、ドア本体50の解錠操作方法が操作者によって直感的に把握される、ということを促進することができる。また、電源正常時と電源異常時とで、操作対象及び操作方法を同一にすることが可能である。このため、操作者が操作部材230から直感的に把握される一つの操作方法を試みるだけでドア本体50が解錠される、ということを促進することができる
【0103】
本実施の形態の鉄道車両10は、上述のドア解錠装置200を備える。このようなドア装置20によれば、非常時にドア本体50を解錠するために操作者に求められる動作を一つにすることができる。このため、ドア本体50の解錠操作方法が操作者によって直感的に把握される、ということを促進することができる。また、電源正常時と電源異常時とで、操作対象及び操作方法を同一にすることが可能である。このため、操作者が操作部材230から直感的に把握される一つの操作方法を試みるだけでドア本体50が解錠される、ということを促進することができる
【0104】
本発明の実施の形態を説明したが、上述の実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
10 鉄道車両
20 ドア装置
25 車両本体
26 速度センサ
30 ロックスライダ
35 モータ
50 ドア本体
60 ロック機構
200 ドア解錠装置
212 判断部
230 操作部材
260 動作検出センサ
270 伝達手段
280 クラッチ機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8