(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】多端子対コンバータ及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20220228BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M3/28 H
H02M3/28 Q
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021009186
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2021-02-24
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504162361
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】クマール、ミシャ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ユンテク
(72)【発明者】
【氏名】バルボサ、ピーター マントヴァネッリ
(72)【発明者】
【氏名】賈民立
(72)【発明者】
【氏名】孫浩
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-28216(JP,A)
【文献】特開2015-154506(JP,A)
【文献】特開2019-106839(JP,A)
【文献】特開2019-161724(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0212816(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多端子対コンバータであって、
トランスと、1次電力段と、2次電力段と、3次電力段と、制御装置とを備え、
前記トランスは、1次巻線、2次巻線、及び3次巻線を有し、
前記1次電力段は、複数の第1スイッチを有し、前記トランスの第1エネルギー源及び前記1次巻線に電気的に接続されており、
前記2次電力段は、複数の第2スイッチを有し、前記トランスの第2エネルギー源及び前記2次巻線に電気的に接続されており、前記1次電力段及び前記2次電力段は直列共振コンバータを形成し、
前記3次電力段は、複数の第3スイッチを有し、前記トランスの第3エネルギー源及び前記3次巻線に電気的に接続されており、前記1次電力段及び前記3次電力段はデュアルアクティブブリッジコンバータを形成し、
前記制御装置は、前記1次電力段、前記2次電力段、及び前記3次電力段に電気的に接続されており、前記多端子対コンバータの動作状態を測定し、制御信号を前記複数の第1スイッチ、前記複数の第2スイッチ、及び前記複数の第3スイッチに提供する、多端子対コンバータ。
【請求項2】
請求項1に記載の多端子対コンバータであって、
前記制御装置は、位相遅延制御を使用して、前記第1及び第2エネルギー源との間でエネルギーを転送するために、前記制御信号を前記複数の第1スイッチ及び前記複数の第2スイッチに送信するように構成される制御ロジックを備える、多端子対コンバータ。
【請求項3】
請求項1に記載の多端子対コンバータであって、
前記制御装置は、位相遅延制御及び遅延時間制御の両方を使用して、前記第1及び第2エネルギー源との間でエネルギーを転送するために、前記制御信号を前記複数の第1スイッチ及び前記複数の第2スイッチに送信するように構成される制御ロジックを備える、多端子対コンバータ。
【請求項4】
請求項1に記載の多端子対コンバータであって、
前記制御装置は、位相遅延制御を使用して、前記第1エネルギー源から前記第2エネルギー源へエネルギーを転送するため、及び、位相シフト制御を使用して、前記第1エネルギー源から前記第3エネルギー源へエネルギーを転送するため、前記制御信号を前記複数の第1スイッチ、前記複数の第2スイッチ、及び前記複数の第3スイッチに送信するように構成される制御ロジックを備える、多端子対コンバータ。
【請求項5】
請求項4に記載の多端子対コンバータであって、
前記制御装置の前記制御ロジックは、前記2次電力段に転送されるエネルギー量を変調するために前記制御信号のスイッチング周波数を変化させるように構成され、前記位相シフト制御は、前記3次電力段に転送されるエネルギー量を変調する、多端子対コンバータ。
【請求項6】
請求項5に記載の多端子対コンバータであって、
前記スイッチング周波数は、前記1次電力段、前記2次電力段、及び前記3次電力段で同じである、多端子対コンバータ。
【請求項7】
請求項1に記載の多端子対コンバータであって、
前記制御装置は、第1及び第2制御信号を前記複数の第1スイッチに送信し、第3及び第4制御信号を前記複数の第2スイッチに送信するように構成される制御ロジックを有し、
前記第3制御信号は、位相遅延を持つ前記第1制御信号と実質的に同じであり、
前記第4制御信号は、位相遅延を持つ前記第2制御信号と実質的に同じである、多端子対コンバータ。
【請求項8】
請求項1に記載の多端子対コンバータであって、
前記2次電力段は、前記トランスの前記2次巻線に対して直列になっている第1コンデンサ及び第1インダクタを有する、多端子対コンバータ。
【請求項9】
請求項8に記載の多端子対コンバータであって、
前記3次電力段は、前記トランスの前記3次巻線に対して直列になっている第2インダクタを有する、多端子対コンバータ。
【請求項10】
請求項9に記載の多端子対コンバータであって、
前記1次電力段は、前記トランスの前記1次巻線に対して直列になっている第2コンデンサを有し、
前記3次電力段は、前記トランスの前記3次巻線に対して直列になっている第3コンデンサを有する、多端子対コンバータ。
【請求項11】
請求項1に記載の多端子対コンバータであって、
前記制御装置は、位相遅延制御及び遅延時間制御を使用して、前記第2エネルギー源から前記第1エネルギー源へエネルギーを転送するため、及び、位相シフト制御を使用して、前記第1エネルギー源から前記第3エネルギー源へエネルギーを転送するため、前記制御信号を前記複数の第1スイッチ、前記複数の第2スイッチ、及び前記複数の第3スイッチに送信するように構成される制御ロジックを備える、多端子対コンバータ。
【請求項12】
請求項1に記載の多端子対コンバータであって、
前記3次電力段は、前記多端子対コンバータの複数の3次電力段のうちの第1の3次電力段であり、
前記複数の3次電力段のそれぞれは、前記トランスのそれぞれの巻線及びそれぞれのエネルギー源に接続され、
前記複数の3次電力段のそれぞれは、前記1次電力段と共にそれぞれのデュアルアクティブブリッジコンバータを形成する、多端子対コンバータ。
【請求項13】
第1、第2、及び第3段を含む複数の段階を有するDC/DCコンバータの制御方法であって、
前記DC/DCコンバータの複数の電気的特性を測定し、
前記測定された複数の電気的特性に少なくとも部分的に基づいて、スイッチング周波数、位相遅延、及び位相シフトを決定し、
前記スイッチング周波数において、前記第1段の複数の第1スイッチをスイッチングし、
前記スイッチング周波数において、前記第2段の複数の第2スイッチのうち少なくとも2つをスイッチングし、前記複数の第1スイッチのうち少なくとも1つをスイッチングすることに対し前記位相遅延によって時間シフトされ、
前記スイッチング周波数において、前記第3段の複数の第3スイッチのうち少なくとも2つをスイッチングし、前記複数の第1スイッチのうち少なくとも1つをスイッチングすることに対し位相シフトによって時間シフトされる、ことからなる方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、更に、
前記測定された複数の電気的特性に少なくとも部分的に基づいて、遅延時間を決定し、
前記スイッチング周波数において、前記第2段の複数の第2スイッチのうち少なくとも2つの他のものをスイッチングし、少なくとも2つの第2スイッチをスイッチングすることに対し遅延時間によって時間シフトされる、ことからなる方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、
前記複数の段の1つに接続されたエネルギー源の電圧、及び前記複数の段の1つにおける電流からなるグループのうち少なくとも1つを測定する、方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、更に、
第1巻線が第1段に配線され、第2巻線が第2段に配線され、第3巻線が第3段に配線されたトランスを介して前記複数の段を電気的に結合する、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記第2段の共振周波数は、前記トランスの前記第2巻線と直列である第2段インダクタ及び第2段コンデンサによって実質的に決定される、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、
前記第3段は、前記トランスの前記第3巻線と直列に第3段インダクタを有している、方法。
【請求項19】
多端子対コンバータであって、
第1巻線、第2巻線、及び第3巻線を有するトランスと、
第1電力段及び第2電力段によって形成された直列共振コンバータと、
前記第1電力段及び第3電力段によって形成されたデュアルアクティブブリッジコンバータとを備え、
前記第1電力段は前記第1巻線に配線され、前記第2電力段は前記第2巻線に配線され、前記第3電力段は前記第3巻線に配線される、多端子対コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多端子対双方向DC/DCコンバータ及びその制御方法に関する。より具体的には、本開示は、双方向制御を有する集積された1つ以上の双方向共振コンバータ及び1つ以上のデュアルアクティブブリッジ(DAB)コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
必要不可欠なアプリケーションで使用される機器のための高可用性電力システムは、高い信頼性で実現されなければならない。通常、電力システムの信頼性の向上は、本質的な信頼性の高い電力システム成分を使用すること、及びエネルギー源の冗長性を含む冗長性の高い電力システムアーキテクチャを実装することによって実現される。エネルギー源は、一般的に、交流電力線、下流負荷の有無にかかわらず沢山の電池、又は超コンデンサで構成されている。複数の電力経路を提供することにより、複数のエネルギー源を備えた冗長電力システムの可用性を最大化することができる。複数のエネルギー源を使用するアプリケーションでは、全てのエネルギー源が単一のエネルギー源によって充電され、同時に各エネルギー源が個々の負荷に結合され途切れることなく電力を供給する。しかしながら、信頼性を高めるためには、エネルギー源の1つが他方のエネルギー源にエネルギーを供給できなければならなく、逆もまた然りである。その結果、高可用性システムでは、エネルギー源間で充電及び放電を行うために、複数の双方向のコンバータが必要となる。直列共振コンバータトポロジとデュアルアクティブブリッジ(DAB)コンバータトポロジを備えた双方向コンバータが知られている。
【0003】
一般に、共振コンバータは、共振タンク回路を使用してスイッチの電圧及び/又は電流波形を形成し、スイッチング損失を最小限に抑え、変換効率を低下させることなく、高周波動作を可能にする。更に、共振コンバータはトランスの漏れ及び/又は磁化インダクタンスなどの寄生成分を共振タンク回路に吸収するため、電池充電システム用の高電圧及び/又は大電流の絶縁電源など、これらの寄生成分が顕著であるようなアプリケーションで必然的に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】U.S. Patent No. 9,490,704 to Jang and Jovanovic issued November 8, 2016
【文献】A. K. Jain, R. Ayyanar, (Nov. 19, 2013). U.S. Patent No. 8,587,975.
【非特許文献】
【0005】
【文献】G. Liu, Y. Jang, M. M. Jovanovic and J. Q. Zhang, "Implementation of a 3.3-kW DC-DC Converter for EV On-Board Charger Employing the Series-Resonant Converter With Reduced-Frequency-Range Control," in IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 32, no. 6, pp. 4168-4184, June 2017, doi: 10.1109/TPEL.2016.2598173.
【文献】Y. Jang, M. M. Jovanovic, M. Kumar, J. M. Ruiz, R. Lu and T. Wei, "Isolated, Bi-Directional DC-DC Converter for Fuel Cell Electric Vehicle Applications," 2019 IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition (APEC), Anaheim, CA, USA, 2019, pp. 1674-1681, doi: 10.1109/APEC.2019.8722067.
【文献】G. G. Oggier, R. Leidhold, G. O. Garcia, A. R. Oliva, J. C. Balda and F. Barlow, "Extending the ZVS operating range of dual active bridge high-power DC-DC converters," 2006 37th IEEE Power Electronics Specialists Conference, Jeju, 2006, pp. 1-7, doi: 10.1109/pesc.2006.1712142.
【文献】M. M. Jovanovic (1994) Invited paper. "Resonant, quasi-resonant, multi-resonant and soft-switching techniques-merits and limitations," International Journal of Electronics, 77:5, 537-554, DOI: 10.1080/00207219408926086
【文献】M. N. Kheraluwala, R. W. Gascoigne, D. M. Divan and E. D. Baumann, "Performance characterization of a high-power dual active bridge DC-to-DC converter," in IEEE Transactions on Industry Applications, vol. 28, no. 6, pp. 1294-1301, Nov.-Dec. 1992, doi: 10.1109/28.175280.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1A及び
図1Bはそれぞれ、典型的な絶縁共振コンバータトポロジとその理想的な動作波形を示している。
図1Aに示すように、このトポロジでは、共振成分は共振インダクタL
R及び共振コンデンサC
Rである。共振インダクタL
Rは共振コンデンサC
Rと直列に接続されているため、
図1Aの回路は、直列共振コンバータ(SRC)と呼ばれる。変換効率を最大化するために、2次側ダイオード整流器は通常、同期整流器によって実装されることに注意されたい。
【0007】
図1Bは、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)で動作する、
図1Aの直列共振コンバータ(SRC)のスイッチ制御信号の典型的なタイミング図を示している。
図1A及び
図1B両方を参照すると、全てのスイッチS
P1,S
P2,S
P3,S
P4,S
S1,S
S2,S
S3,及びS
S4は、同じ約50%の同一のデューティ比で動作し、同じレッグにある1次段スイッチ(つまり、S
P1,S
P2,及びS
P3,S
P4)は、相互伝導を回避するために相補的に動作する。1次スイッチの周波数は、出力を調整するために使用されるフィードバック制御ループによって決定される(「可変周波数制御」)。2次側同期整流スイッチの位相遅延制御動作は、共振電流i
Pのゼロ交差とスイッチングを同期させることによって実現される。つまり、1次段スイッチ(S
P1,S
P2,S
P3,及びS
P4)の波形に関する位相遅延(例えば、T
0~T
1)が、2次段スイッチ(S
S1,S
S2,S
S3,及びS
S4)の波形に導入される。
【0008】
具体的には、
図1Bに示すように、2次側同期整流器スイッチS
S1及びS
S3のスイッチングは、共振電流i
Pの正周期と同期し、2次側同期整流器スイッチS
S2及びS
S4のスイッチング、共振電流i
Pの負周期と同期する。実際の実装でZVSを実現するために、1次スイッチのデューティ比は、相補的に動作する同じレッグのスイッチのオフ/オンの間に、短い遅延(又はデッドタイム)を導入することで、50%よりわずかに小さい値に設定される。このデッドタイムの間に、電流はオフになっているデバイスのスイッチから、続いて起こるZVSがオンになる条件が作られる他のデバイスの逆並行ダイオードへ整流される。2次側同期整流スイッチも50%より小さいデューティ比で動作する。
図1Aに示すように、可変周波数制御を有する直列共振コンバータは入力と出力端子の間で対称構造になっているが、降圧コンバータとしてのみ動作するため、双方向動作には適していない(つまり、V
IN>(N
1/N
2)V
o)。
【0009】
例えば、特許文献1は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれているが、共振コンバータの2次側スイッチを制御するためのシステム及び制御方法を記載している。具体的には、特許文献1に開示されている制御方法は、スイッチング周波数範囲を大幅に縮小することにより、広い入力電圧及び/又は出力電圧範囲で動作する直列共振器コンバータ(SRC)の性能を改善する。さらに、トランスの両側にある制御可能なスイッチによって電力が両方向に流れるようになり、提案された「遅延時間制御」により、直列共振コンバータが出力電圧を増大させることができるようになるため(つまり(N1/N2)・Vo≧VIN)、この実装によりコンバータは双方向になる。可変周波数制御と遅延時間制御の組み合わせで出力を制御することにより、スイッチング周波数範囲の低減、及び昇圧/降圧動作を実現している。可変周波数制御は1次スイッチを制御するために使用され、遅延時間制御は2次側整流器スイッチを制御するために使用される。
【0010】
図2A及び
図2Bは、それぞれ、別の典型的な絶縁共振コンバータトポロジとその理想的な動作波形を示している。
図2Aに示すように、このトポロジでは、共振成分は共振インダクタL
R及び共振コンデンサC
Rである。
図2Bに示すように、1次スイッチS
P1,S
P2,S
P3,及びS
P4は、同じスイッチング周波数で動作し、デューティサイクルはほぼ50%同じである。相補的に動作する同じレッグの1次スイッチのゼロ電圧スイッチングを実現するために、これらの相補式スイッチのオン/オフの瞬間に僅かなデッドタイムが設けられる。2次スイッチS
S1,S
S2,S
S3,及びS
S4は、1次スイッチと同じスイッチング周波数で動作する。但し、2次スイッチS
S2及びS
S3は、
図2Bに示すように、遅延時間を提供する拡張されたデューティサイクルで動作する。トランスTRの2次巻線は、遅延時間の間に2次スイッチS
S2及びS
S3によって短絡される(例えば、T
1~T
2及びT
4~T
5)。遅延時間制御の主な機能は、直列共振コンバータが出力電圧を増大できるようにして、コンバータのスイッチング周波数の範囲を縮小できるようにすることである。また、可変周波数制御と遅延時間制御を組み合わせて出力を制御することで実現される電圧の昇圧/降圧動作によって、双方向の電力潮流を必要とするアプリケーションに適したコンバータが作られる。
【0011】
図3A及び
図3Bは、それぞれDABコンバータの回路図とその理想的な動作波形を示している。DABコンバータが双方向コンバータトポロジを有することは当技術分野でよく知られている。
図3Aに示すように、このトポロジでは、直列インダクタL
Sは、1次スイッチS
P1,S
P2,S
P3,及びS
P4を含む1次側アクティブブリッジと、2次スイッチS
S1,S
S2,S
S3,及びS
S4を含む2次側アクティブブリッジの間に配置される。通常、1次スイッチS
P1,S
P2,S
P3,及びS
P4は一定のスイッチング周波数で動作する。このスイッチング周波数は、2次スイッチS
S1,S
S2,S
S3,及びS
S4と一致する。さらに、位相シフト制御は、1次スイッチングと2次スイッチングの間の位相シフトの量を決定するために使用される。
図3Bに示すように、全てのスイッチS
P1,S
P2,S
P3,S
P4,S
S1,S
S2,S
S3,及びS
S4は、同じスイッチング周波数で動作し、デューティサイクルはほぼ50%同じである。2次スイッチS
S1,S
S2,S
S3,及びS
S4のオン/オフの瞬間は、
図3Bに示すように、1次スイッチS
P1,S
P2,S
P3,及びS
P4のオン/オフの瞬間から積極的にシフトされることに注意されたい(例えば、T
0~T
1へ、及びT
2~T
3へ)。2次スイッチのゲート信号を積極的にシフトすることにより、インダクタL
Sの両端の誘導電流i
Pが制御される。DABコンバータもまた、トランスの両側にある制御可能なスイッチにより、電力が両方向に流れることができ、位相シフト制御によりコンバータは電圧の昇圧及び降圧モードで動作するため、双方向コンバータとして機能する。
【0012】
本開示では、多端子対双方向DC/DCコンバータの様々な実施形態とその制御方法が開示されており、単一の多端子対双方向DC/DCコンバータが多数の一方向又は双方向コンバータを置き換えることができるので、成分の総数が大幅に削減され、成分の利用率が向上する。
なお、上述の参考文献(特許文献2及び非特許文献1-5)は、参照により本明細書に組み込まれ、これらにより技術分野におけるいくつかの追加の背景を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様では、本開示は、多端子対コンバータであって、トランスと、1次電力段と、2次電力段と、3次電力段と、制御装置とを備え、前記トランスは、1次巻線、2次巻線、及び3次巻線を有し、前記1次電力段は、複数の第1スイッチを有し、前記トランスの第1エネルギー源及び前記1次巻線に電気的に接続されており、前記2次電力段は、複数の第2スイッチを有し、前記トランスの第2エネルギー源及び前記2次巻線に電気的に接続されており、前記1次電力段及び前記2次電力段は直列共振コンバータを形成し、前記3次電力段は、複数の第3スイッチを有し、前記トランスの第3エネルギー源及び前記3次巻線に電気的に接続されており、前記1次電力段及び3次電力段はデュアルアクティブブリッジコンバータを形成し、前記制御装置は、前記1次電力段、前記2次電力段、及び前記3次電力段に電気的に接続されており、前記多端子対コンバータの動作状態を測定し、制御信号を前記複数の第1スイッチ、前記複数の第2スイッチ、及び前記複数の第3スイッチに提供する、多端子対コンバータを提供する。
【0014】
一実施形態では、前記制御装置は、位相遅延制御を使用して、前記第1及び第2エネルギー源との間でエネルギーを転送するために、前記制御信号を前記複数の第1スイッチ及び前記複数の第2スイッチに送信するように構成される制御ロジックを備える。
【0015】
一実施形態では、前記制御装置は、前記位相遅延制御及び遅延時間制御の両方を使用して、前記第1エネルギー源と第2エネルギー源との間でエネルギーを転送するために、前記制御信号を前記第1の第1スイッチ及び前記複数の第2スイッチに送信するように構成される制御ロジックを備える。
【0016】
一実施形態では、前記制御装置は、位相遅延制御を使用して、前記第1エネルギー源から前記第2エネルギー源へエネルギーを転送するため、及び、位相シフト制御を使用して、前記第1エネルギー源から前記第3エネルギー源へエネルギーを転送するため、前記制御信号を前記複数の第1スイッチ、前記複数の第2スイッチ、及び前記複数の第3スイッチに送信するように構成される制御ロジックを備える。
【0017】
一実施形態では、前記制御装置の前記制御ロジックは、前記2次電力段に転送されるエネルギー量を変調するために前記制御信号のスイッチング周波数を変化させるように構成され、前記位相シフト制御は、前記3次電力段に転送されるエネルギー量を変調する。
【0018】
一実施形態では、前記スイッチング周波数は、前記1次電力段、前記2次電力段、及び前記3次電力段で同じである。
【0019】
一実施形態では、前記制御装置は、第1及び第2制御信号を前記複数の第1スイッチに送信し、第3及び第4制御信号を前記複数の第2スイッチに送信するように構成される制御ロジックを有し、前記第3制御信号は、位相遅延を持つ前記第1制御信号と実質的に同じであり、前記第4制御信号は、位相遅延を持つ前記第2制御信号と実質的に同じである。
【0020】
一実施形態では、前記2次電力段は、前記トランスの前記2次巻線に対して直列になっている第1コンデンサ及び第1インダクタを有する。
【0021】
一実施形態では、前記3次電力段は、前記トランスの前記3次巻線に対して直列になっている第2インダクタを有する。
【0022】
一実施形態では、前記1次電力段は、前記トランスの前記1次巻線に対して直列になっている第2コンデンサを有し、前記3次電力段は、前記トランスの前記3次巻線に対して直列になっている第3コンデンサを有する。
【0023】
一実施形態では、前記制御装置は、位相遅延制御及び遅延時間制御を使用して、前記第2エネルギー源から第1エネルギー源へエネルギーを転送するため、及び、位相シフト制御を使用して、前記第1エネルギー源から第3エネルギー源へエネルギーを転送するため、前記制御信号を前記複数の第1スイッチ、前記複数の第2スイッチ、及び前記複数の第3スイッチに送信するように構成される制御ロジックを備える。
【0024】
一実施形態では、前記3次電力段は、前記多端子対コンバータの複数の3次電力段のうちの第1の3次電力段であり、前記複数の3次電力段のそれぞれは、前記トランスのそれぞれの巻線及びそれぞれのエネルギー源に接続され、前記複数の3次電力段のそれぞれは、前記1次電力段と共にそれぞれのデュアルアクティブブリッジコンバータを形成する。
【0025】
実施形態の別の観点によれば、本開示は、第1、第2、及び第3段を含む複数の段階を有するDC/DCコンバータの制御方法であって、前記DC/DCコンバータの複数の電気的特性を測定し、前記測定された複数の電気的特性に少なくとも部分的に基づいて、スイッチング周波数、位相遅延、及び位相シフトを決定し、前記スイッチング周波数において、前記第1段の複数の第1スイッチをスイッチングし、前記スイッチング周波数において、前記第2段の複数の第2スイッチのうち少なくとも2つをスイッチングし、前記複数の第1スイッチのうち少なくとも1つをスイッチングすることに対し前記位相遅延によって時間シフトされ、前記スイッチング周波数において、前記第3段の複数の第3スイッチのうち少なくとも2つをスイッチングし、前記複数の第1スイッチのうち少なくとも1つをスイッチングすることに対し位相シフトによって時間シフトされる、ことからなる方法を提供する。
【0026】
一実施形態では、制御方法は、更に、前記測定された複数の電気的特性に少なくとも部分的に基づいて、遅延時間を決定し、前記スイッチング周波数において、前記第2段の複数の第2スイッチのうち少なくとも2つの他のものをスイッチングし、少なくとも2つの第2スイッチをスイッチングすることに対し遅延時間によって時間シフトされる、ことからなる。
【0027】
一実施形態では、測定は、前記複数の段の1つに接続されたエネルギー源の電圧、及び前記複数の段の1つにおける電流からなるグループのうち少なくとも1つを測定する、ことからなる。
【0028】
一実施形態では、制御方法は、更に、第1巻線が第1段に配線され、第2巻線が第2段に配線され、第3巻線が第3段に配線されたトランスを介して前記複数の段を電気的に結合する、ことからなる。
【0029】
一実施形態では、前記第2段の共振周波数は、前記トランスの前記第2巻線と直列である第2段インダクタ及び第2段コンデンサによって実質的に決定される。
【0030】
一実施形態では、前記第3段は、前記トランスの前記第3巻線と直列に第3段インダクタを有している。
【0031】
実施形態の更に別の観点によれば、本開示は、多端子対コンバータであって、第1巻線、第2巻線、及び第3巻線を有するトランスと、第1電力段及び第2電力段によって形成された直列共振コンバータと、前記第1電力段及び第3電力段によって形成されたデュアルアクティブブリッジコンバータとを備え、前記第1電力段は前記第1巻線に配線され、前記第2電力段は前記第2巻線に配線され、前記第3電力段は前記第3巻線に配線される、多端子対コンバータを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】典型的な絶縁共振コンバータトポロジとその理想的な動作波形を示している。
【
図1B】典型的な絶縁共振コンバータトポロジとその理想的な動作波形を示している。
【
図2A】別の典型的な絶縁共振コンバータトポロジとその理想的な動作波形を示している。
【
図2B】別の典型的な絶縁共振コンバータトポロジとその理想的な動作波形を示している。
【
図3A】DABコンバータの回路図とその理想的な動作波形を示している。
【
図3B】DABコンバータの回路図とその理想的な動作波形を示している。
【
図4】本開示の一実施形態による、3端子対双方向DC/DCコンバータを示している。
【
図5】本開示の実施形態による、エネルギー源V
INからエネルギー源V
B1及びV
B2への電力転送のためのスイッチ作動制御信号波形及び対応する電流を示している。
【
図6】本開示の実施形態による、エネルギー源V
INからエネルギー源V
B1及びV
B2への電力転送のためのスイッチ作動制御信号波形及び対応する電流を示している。
【
図7】本開示の実施形態による、エネルギー源V
INからエネルギー源V
B1及びV
B2への電力転送のためのコンバータ制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の実施形態による、エネルギー源V
B1からエネルギー源V
IN及びV
B2への電力転送のためのスイッチ作動制御信号波形及び対応する電流を示している。
【
図9】本開示の実施形態による、エネルギー源V
B1からエネルギー源V
IN及びV
B2への電力転送のためのスイッチ作動制御信号波形及び対応する電流を示している。
【
図10】本開示の実施形態による、エネルギー源V
B1からエネルギー源V
IN及びV
B2への電力転送のためのコンバータ制御方法を示すフローチャートである。
【
図11】本開示の実施形態による、エネルギー源V
B1からエネルギー源V
B2への電力転送のためのスイッチ作動制御信号波形及び対応する電流を示している。
【
図12】本開示の実施形態による、エネルギー源V
B1からエネルギー源V
B2への電力転送のためのスイッチ作動制御信号波形及び対応する電流を示している。
【
図13】本開示の実施形態による、エネルギー源V
B1からエネルギー源V
B2への電力転送のためのコンバータ制御方法を示すフローチャートである。
【
図14】本開示の実施形態による、エネルギー源V
B2からエネルギー源V
B1への電力転送のためのスイッチ作動制御信号波形及び対応する電流を示している。
【
図15】本開示の実施形態による、エネルギー源V
B2からエネルギー源V
B1への電力転送のためのスイッチ作動制御信号波形及び対応する電流を示している。
【
図16】本開示の実施形態による、エネルギー源V
B2からエネルギー源V
B1への電力転送のためのコンバータ制御方法を示すフローチャートである。
【
図17】本開示の別の実施形態による、3端子対双方向DC/DCコンバータを示している。
【
図18】本開示の更に別の実施形態による、3端子対双方向DC/DCコンバータを示している。
【
図19】本開示の実施形態による、4端子対双方向DC/DCコンバータを示している。
【
図20】本開示の実施形態による、多端子対双方向DC/DCコンバータ2000を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、以下の実施形態を参照しながら、本開示についてより具体的に説明する。本開示の好ましい実施形態の以下の説明は、例示及び説明のみを目的として本明細書に提示されていることに留意されたい。網羅的であること、又は開示された正確な形式に限定されることを意図するものではない。
【0034】
複数の電力経路を提供することにより、複数のエネルギー源を備えた冗長電力システムの可用性を最大化することができる。その結果、高可用性システムでは、エネルギー源間で充電及び放電するために複数の双方向コンバータが必要になる。但し、システムに複数の双方向コンバータを使用することは、費用効果が高くない場合がある。例えば、3つのエネルギー源間で任意の方向にエネルギーを供給するために、システムは6つの単方向コンバータ又は3つの双方向コンバータを必要とする。従って、新しい多端子対(つまり、3つ以上の端子対)双方向DC/DCコンバータとその制御方法について説明する。このようなコンバータは、コスト効率が高く、サイズを縮小して実装することができる。
【0035】
図4は、本開示の実施形態による3端子対双方向DC/DCコンバータ400を示している。
図4に示すように、3端子対双方向DC/DCコンバータ400の電力段は、3つの巻線と3つの電力段を持つ絶縁トランス402(又はTR)を使用している。具体的には、コンバータ400でエネルギーを供給し、下流の電圧又は電流を任意の方向に調整するため、コンバータ400は、トランス402と、第1段回路410と、第2段回路420と、第3段回路430と、制御装置404とを備えている。トランス402は、互いに磁気的に結合されている(磁気コアの有無にかかわらず)、第1巻線441、第2巻線442、及び第3巻線443を有している。第1段回路410は、第1巻線441に電気的に結合されており、第2段回路420は、第2巻線442に電気的に結合されており、第3段回路430は、第3巻線443に電気的に結合されている。制御装置404は、第1段回路410、第2段回路420、及び第3段回路430に電気的に結合されている。第1巻線441の巻き数はN
1であり、第2巻線442の巻き数はN
2であり、第3巻線443の巻き数はN
3であり、N
1、N
2、及びN
3は、正の整数である。N
1とN
2の比率はn
1(つまり、n
1=N
1/N
2)として、N
1とN
3の比率はn
2(つまり、n
2=N
1/N
3)として、N
2とN
3の比率はn
3(つまり、n
3=N
2/N
3)として定義される。第1段回路410は電圧源で示され、第2段回路420及び第3段回路430は電池で示されているが、各段回路は任意の適切なエネルギー源に接続できることが理解されるだろう。いくつかの実施形態では、段回路410、420、及び430は、
図4に示されるように配線することによって、トランス402のそれぞれの巻線に電気的に結合される。制御装置404はまた、段回路410、420、及び430へ配線することによって電気的に結合されることができる。電気的結合の他の形態は、他の実施形態で使用されることができる。
【0036】
一実施形態では、コンバータ400の第1段回路410は、複数のスイッチSP1,SP2,SP3,及びSP4を備え、エネルギー源VIN(例えば、家庭用AC電源コンセントから変換されたDC電源)と第1巻線441の間で結合される。コンバータ400の第2段回路420は、複数のスイッチSP1,SP2,SP3,及びSP4、共振コンデンサCR、共振インダクタLRを備える。第3段回路430は、複数のスイッチST1,ST2,ST3,及びST4、直列インダクタLTを備える。第2段回路420は、エネルギー源VB1(例えば、出力電圧が約250~500Vの高電圧電池)と第2巻線442の間に結合され、第3段回路430は、エネルギー源VB2(例えば、出力電圧が約5~50Vの低電圧電池)と第3巻線443の間に結合される。共振コンデンサCR及び共振インダクタLRは、SI単位系の静電容量とインダクタンスの積の平方根の逆数としてラジアンで計算される共振周波数を持つ(例えば、下記式1)。段回路のスイッチは、MOSFET、リレー、バイポーラ接合トランジスタ、ダーリントントランジスタ、又は任意の適切なスイッチング技術として実装できる。
【0037】
【0038】
第1段回路410又は第3段回路430は、第2段回路420と組み合わせて直列共振コンバータとして動作することができる。つまり、形態的には、残りの段回路(第3段回路430又は第1段回路410)が無視される場合、第1段回路410及び第2段回路420(又は第2段回路420及び第3段回路430)によって形成される回路は、直列共振コンバータ回路である。直列共振コンバータは、互いに直列に接続された実効静電容量と実効インダクタンスによって決定される共振周波数を持つコンバータである。ここで「実効」とは、集中定数等価を指す。様々なインダクタ及びコンデンサは、集中定数素子、集中定数素子のネットワーク、分布定数素子(又は「寄生」効果)、又は他の適切な方法又は方法の組み合わせとして実装できる。いくつかの実施形態では、直列共振コンバータは、約40kHzから300kHz(例えば、80kHz)の間の共振周波数を有するが、この範囲は例示的であり、任意の適切な共振周波数を使用できる。
【0039】
第1段回路410及び第3段回路430は、デュアルアクティブブリッジ(DAB)コンバータとして組み合わせて動作することができる。つまり、形態的には、第2段回路420が無視される場合、第1段回路410及び第3段回路430によって形成される回路は、DABコンバータである。DABコンバータは、2つの絶縁されたスイッチング段との間に実効直列インダクタンスを持つコンバータである。ここで「実効」とは、集中定数等価を指す。様々なインダクタは、集中定数素子、集中定数素子のネットワーク、分布定数素子(又は「寄生」効果)、又は他の適切な方法又は方法の組み合わせとして実装できる。
【0040】
有利なことに、コンバータ400によって、直列共振コンバータトポロジの1つ及びDABコンバータトポロジを同時に動作でき、いくつかの実施形態では、直列共振コンバータ及びDABコンバータの従来の動作と本質的に同一又は非常に類似した方法で動作できる。コンバータ400の更に他の動作モードでは、コンバータ400の任意の端子対の間で電力転送を可能にする。コンバータ400の制御については、制御装置404及び
図5~
図16を使用して更に説明する。
【0041】
制御装置404は、コンバータ400の現在の状態を測定し、制御された動作を容易にするために使用される。制御装置404は、例えば、コンバータ回路の様々なポイントで電圧及び電流を測定するための回路を含む。制御装置404は、可変周波数制御、位相遅延制御、遅延時間制御、位相シフト制御、及びコンバータ400を制御するための他の形態の制御又は制御アルゴリズムの組み合わせを実装するための制御ロジックを含む。制御装置404は、中央処理装置(CPU)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、汎用又は特殊目的のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又は任意の適切なデバイス又はコンバータ400を制御できるデバイスの組み合わせとして実装できる。いくつかの実施形態では、制御装置404は、信号レベルをサンプリングするためにアナログ-デジタルコンバータ(ADC)を利用し、スイッチングを制御するためにパルス幅変調器(PWM)を利用できる。但し、制御装置404は、任意の適切な方法で実装できる。
【0042】
いくつかの実装形態では、制御装置400の各エネルギー源と各電力段の間に電磁干渉(EMI)フィルタを結合する必要があることに注意されたい。EMIフィルタは、本開示のコンバータの動作とは無関係であるため、図面や関連する説明を簡略化するため、
図4には示されていない。
【0043】
一実施形態では、コンバータ400は、エネルギー源V
B1及びV
B2への電荷電流を独立して制御する単一の制御装置404によって、エネルギー源V
IN(第1段)からエネルギー源V
B1及びV
B2(第2及び第3段)へ電気エネルギーを供給できる。同様に、エネルギー源V
B1(第2段)の電気エネルギーをエネルギー源V
IN(第1段)及びエネルギー源V
B2(第3段)へ供給することができる。同様に、エネルギー源V
B2(第3段)の電気エネルギーを、独立して制御される電荷電流によってエネルギー源V
IN(第1段)及び電池V
B1(第2段)へ供給することができる。電気エネルギーが残りの2つの端子対の間で転送される間に、それぞれのスイッチを全て開くことにより、任意の段(つまり、任意の段回路と対応するエネルギー源)は電力転送から効果的に切断される。例えば、エネルギー源V
INは、スイッチS
P1,S
P2,S
P3,及びS
P4を開くことによって切断され、エネルギー源V
B1からエネルギー源V
B2へ、又はその逆に供給できる。つまり、
図4に示されている3端子対双方向DC/DCコンバータ400は、電気エネルギーを供給し、下流の電圧又は電流を任意の方向に調整できる。複数の出力電圧又は電流を独立して調整するために、可変周波数制御、遅延時間制御、位相シフト制御、又は2つか3つの制御の組み合わせが用いられる。
【0044】
3端子対双方向DC/DCコンバータ400は、
図1A、2A、及び3Aに示すタイプのように6つの単方向又は3つの双方向コンバータを必要とする従来の解決方法と比較して、段の間で電気エネルギーを任意に転送するために必要な要素の数を大幅に削減できることが理解されるだろう。
【0045】
図5及び
図6は、
図4の3端子対双方向DC/DCコンバータ400のスイッチ作動制御信号波形及び対応する電流を示している。具体的には、
図5及び
図6の両方は、本開示のいくつかの実施形態による、エネルギー源V
INからエネルギー源V
B1及びV
B2への電力転送を示している。このタイプの動作では、第1段回路410及び第2段回路420は、V
INからV
B1にエネルギーを転送するために直列共振コンバータとして動作し、第1段回路410及び第3段回路430は、V
INからV
B2にエネルギーを転送するためにDABとしてコンバータとして動作する。
図5では、エネルギー源V
INの電圧がエネルギー源V
B1の電圧のn
1倍より大きい(つまり、V
IN>n
1V
B1)。
図6では、エネルギー源V
INの電圧は、エネルギー源V
B1の電圧のn
1倍以下である(すなわち、V
IN≦n
1V
B1)。
【0046】
図5を参照すると、第1段回路410のスイッチ(S
P1~S
P4)の波形、第2段回路420のスイッチ(S
S1~S
S4)の波形、第3段回路430のスイッチ(S
T1~S
T4)の波形が示されている。可変周波数制御は、第1段回路410のスイッチS
P1~S
P4のスイッチング周波数を制御するために使用される。第2段回路420及び第3段回路430のスイッチは、第1段回路410のスイッチと同じ周波数で動作し、全てのスイッチのデューティサイクルはほぼ50%同じである。同じレッグの相補式スイッチのゼロ電圧スイッチング(例えば、時点T
1での電流i
S=0)を実現するため、相補式スイッチのオン/オフの瞬間の間に、僅かなデッドタイムが導入される。いくつかの実施形態では、デッドタイムは、スイッチング周期よりも1桁以上短い場合がある(スイッチング周波数の逆)。例えば、時点T
1において、スイッチS
S1がオンになる少し前にスイッチS
S2がオフになり、その結果、第2段回路420のレッグにあるS
S1及びS
S2の両方のスイッチが一時的に同時にオフになる。第1段回路410のスイッチS
P1~S
P4を動作するために使用される可変周波数制御によって、エネルギー源V
B1の電荷電流I
B1を決定する共振電流i
Sが誘導される。
【0047】
位相遅延制御は、第2段回路420のスイッチSS1~SS4を同期整流器として動作するために使用される。つまり、共振電流iSが正の場合(例えば、時点T1とT4の間)、スイッチSS1及びSS3はオンになり、共振電流iSが負の場合(例えば、時点T4とT7の間)、スイッチSS2及びSS4はオンになる。これによって、スイッチSP1~SP4の波形に対して、スイッチSS1~SS4の波形に位相遅延(例えば、時点T0~時点T1まで)が効果的に導入される。
【0048】
位相シフト制御は、第3段回路430のスイッチST1~ST4のオン/オフの瞬間を制御するために使用される。スイッチングは、第1段回路410のスイッチSP1~SP4のオン/オフの瞬間から位相シフトの追加と同期する。位相シフトの量(例えば、時点T0~時点T2まで)によって、エネルギー源VB2の電荷電流IB2に比例する電流iTの大きさが決定される。
【0049】
図6を参照すると、第2段回路420のスイッチS
S1~S
S4を能動的に制御するために遅延時間(例えば、時点T
1~時点T
3まで)が追加される。遅延時間の間、トランス402の巻線442は、第2段回路420のスイッチS
S1及びS
S4によって短絡され、
図6に示すように共振電流i
Sを増大させる。その結果、エネルギー源V
B1の電荷電流I
B1は、スイッチング周波数だけでなく遅延時間によっても調整することができる。共振電流i
Sの大きさは遅延時間によって制御できるため、遅延時間制御の主な機能は、制御周波数範囲を縮小することによって動作効率を改善すること、及び/又はコンバータ400の電圧利得を増加させることである。第2段回路420及び第3段回路430のスイッチは、第1段回路410(可変周波数制御によって制御される)のスイッチと同じ周波数で動作し、全てのスイッチのデューティサイクルはほぼ50%同じであることに注意されたい。また、この構成で遅延時間制御を導入しても、DABコンバータが第1段から第3段に電力を転送する性能は実質的に変わらない。第3段回路430のスイッチS
T1~S
T4のタイミングは、第2段回路420のスイッチS
S1~S
S4ではなく、第1段回路410のスイッチS
P1~S
P4を基準にしている。
【0050】
図7は、本開示の実施形態による、エネルギー源V
INからエネルギー源V
B1及びV
B2への電力転送のためのコンバータ400の制御方法を示すフローチャートである。
【0051】
ステップ710では、制御装置404の第1段制御装置は、制御装置400の様々な素子の両端の電圧及び/又は流れる電流を検出又は推定することから始まる。推定され検出される特定の電圧及び電流は、可変周波数制御、位相遅延制御、遅延時間制御、及び位相シフト制御を実装するために使用される特定の技術に依存する。例えば、エネルギー源VIN、VB1及びVB2の電圧並びに電流iS,iT,IB1、及びIB2が測定又は推定される。間接測定を含む電圧及び電流を測定又は推定するために、任意の適切な技術が使用できる。例えば、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)が使用できる。
【0052】
ステップ720では、制御装置404は、電流I
B1及び/又はエネルギー源V
B1の電圧を調整するために使用される可変周波数制御のスイッチング周波数を決定する。可変周波数制御を実装するための適切な方法により、スイッチング周波数が決定される。例示的であり、限定的ではないが、非特許文献1、2及び4を参照されたい。本開示のいくつかの実施形態では、可変周波数制御は、
図1A及び
図2Aに示す回路のような従来の共振コンバータトポロジに対して実装されるのと本質的に同じ方法で実装される。
【0053】
ステップ730では、位相遅延制御に必要な位相遅延が決定できる。位相遅延は、共振電流iSのゼロ交差瞬間を検出又は推定することにより決定できる。このタイミングを用いて位相遅延を決定し、それにより、第2段回路420のスイッチSS1~SS4のオン及びオフ時間を決定し、それによって位相遅延を計算する。位相遅延の時間は、1次段でのスイッチのスイッチングから共振電流iSのゼロ交差瞬間までの時間として決定できる。但し、位相遅延は適切な方法で決定できる。例示的であり、限定的ではないが、非特許文献1及び2を参照されたい。
【0054】
ステップ740では、遅延時間制御の実装に必要な遅延時間が決定される。遅延時間は、第2段回路420のスイッチS
S1~S
S4の追加制御を実現するために、エネルギー源V
IN及びV
B1の電圧、電流i
S及びI
B1に基づく。
図5の実施形態では、遅延時間はゼロに設定され、
図6の実施形態では、遅延時間が追加されることに留意されたい。本開示のいくつかの実施形態では、遅延時間制御は、特許文献1、非特許文献1及び2に記載されている同様の方法で実装される。
【0055】
ステップ750では、電流I
B2又はエネルギー源V
B2の電圧を調整するように、位相シフト制御に必要な位相シフトが決定される。位相シフト制御は任意の適切な方法で実装できる。例示的であり、限定的ではないが、非特許文献3、5及び特許文献2を参照されたい。いくつかの実施形態では、位相シフトは、エネルギー源V
INの電圧、電流I
B2、直列インダクタンスL
T、及びスイッチング周波数に基づく。
図5及び
図6の位相シフトは、第1段回路410の1つ又は複数のスイッチに対する相対的なものであり、これは電力が発生している段であることに注意されたい。
【0056】
ステップ760では、制御装置404は、スイッチング周波数、位相遅延、遅延時間、及び位相シフトを更新する。これらは、対応するパルス幅変調器(PWM)レジスタに適切な値を書き込むことによって実装できる。
【0057】
ステップ760の後、コンバータ400は、最初から動作を継続してもよい。このようにして、必要な電力転送を効率的に達成するために、可変周波数制御、位相遅延制御、遅延時間制御、及び位相シフト制御は、制御スイッチのタイミングを継続的に調整することができる。
【0058】
コンバータ400の制御方法は、可変周波数制御、遅延時間制御、及び位相シフト制御の組み合わせを含む。一実施形態では、全てのスイッチが同じスイッチング周波数で動作し、約50%の同一のデューティ比を有する。相補式1次スイッチのZVSを実現するために、これらのスイッチのオンとオフの間に小さなデッドタイムが設けられる。複数の出力の電圧や電流を独立して調整するために、可変周波数制御、遅延時間制御、位相シフト制御、及び/又はこれらの2つ又は3つの制御の組み合わせを使用できる。例えば、第1段回路410及び第2段回路420との間の荷電電流を調整するために、全てのスイッチのスイッチング周波数を変化させることができる。更に、スイッチング周波数を同じにしながら、第1段回路410と第3段回路430との間の荷電電流を調整するために、スイッチST1~ST4の位相シフトを変化させることができる。
【0059】
方法700のいくつかの実施形態は、特定のステップを除外する、又は異なる順序でステップを実行してもよいことが理解されるだろう。一例として、いくつかの実施形態では、遅延時間を決定するためのステップ740をスキップしてもよい。
【0060】
図8及び
図9は、本開示の実施形態による、エネルギー源V
B1からエネルギー源V
IN及びV
B2への電力転送ためのスイッチ作動制御信号波形及び対応する電流を示している。
図8及び
図9では、V
B1からV
INへエネルギーを転送するために第1段回路410及び第2段回路420は直列共振コンバータとして動作し、V
B2からV
INへエネルギーを転送するために第1段回路410及び第3段回路430はDABコンバータとして動作する。動作上、エネルギーはV
B1からV
B2へ直接転送されるのではなく、V
B1からV
INへ転送され、V
INへ供給されるエネルギーの一部がV
B2へ供給されることに注意されたい。これは、第2段回路420から第3段回路430への直接転送は、これらの段回路を直列共振コンバータとして動作させる必要があるためである。但し、この回路トポロジを使った直列共振コンバータを使用して、第2段から第1段への電力転送及び第2段から第3段への電力転送の両方を同時に動作することはできない。
【0061】
最後に、
図8及び
図9を説明する前に、第2及び第3段回路を直列共振コンバータとして動作させるのではなく、第1及び第2段回路を直列共振コンバータとして動作させるという選択は任意であったことに注意されたい。第2及び第3段回路を直列共振コンバータとして動作させることは、制御装置404の動作を適切に変更することによって実装できることが理解されるだろう。
【0062】
図8の実施形態では、エネルギー源V
B1の電圧は、エネルギー源V
INの電圧をn
1で割った値(すなわち、V
B1>V
IN/n
1)よりも大きい。
図8は、第1段回路410のスイッチ(S
P1~S
P4)、第2段回路420のスイッチ(S
S1~S
S4)、及び第3段回路のスイッチ(S
T1~S
T4)の波形を示している。可変周波数制御は、第2段回路420のスイッチS
S1~S
S4のスイッチング周波数を制御するために使用される。第1段回路410及び第3段回路430のスイッチは、第2段回路420のスイッチと同じ周波数で動作し、全てのスイッチのデューティサイクルはほぼ50%同じである。第2段回路420のスイッチS
S1~S
S4を動作するために使用される可変周波数制御によって、エネルギー源V
INの電荷電流I
INを決定する共振電流i
Sが誘導される。
【0063】
位相遅延制御は、第1段回路410のスイッチSP1~SP4を同期整流器として動作するために使用される。つまり、共振電流iSが正の場合(例えば、時点T4とT7の間)、スイッチSP2及びSP4はオンになり、共振電流iSが負の場合(例えば、時点T1とT4の間)、スイッチSP1及びSP3はオンになる。これによって、スイッチSS1~SS4の波形に関して、スイッチSP1~SP4の波形に位相遅延(例えば、時点T0~時点T1まで)が効果的に導入される。
【0064】
位相シフト制御は、第3段回路430のスイッチST1~ST4のオン/オフの瞬間を制御するために使用される。スイッチングは、第1段回路410のスイッチSP1~SP4のオン/オフの瞬間に関して、位相シフトの追加と同期される。位相シフトの量(例えば、時点T1~時点T2まで)によって、エネルギー源VB2の電荷電流IB2に比例する電流iTの大きさが決定される。ここで、第3段回路430のスイッチの位相シフトは、転送されたエネルギーが発生している第2段回路420のスイッチではなく、第1段回路410のスイッチに関連していることを強調することが重要である。これは、第1段回路410及び第2段回路420を直列共振コンバータとして動作し、第1段回路410及び第3段回路430をDABコンバータとして動作することを選択したためである。
【0065】
図9の実施形態では、エネルギー源V
B1の電圧は、エネルギー源V
INの電圧をn
1で割った値(すなわち、V
B1≦V
IN/n
1)以下である。
図9を参照すると、第1段回路410のスイッチS
P1~S
P4を能動的に制御するために、遅延時間(例えば、時点T
1~時点T
2まで)が追加される。遅延時間の間、トランス402の第1巻線441は、第1段回路410のスイッチによって短絡され、
図9に示すように、それは共振電流i
Sを増大させる。その結果、エネルギー源V
INの電荷電流I
INは、スイッチング周波数だけでなく遅延時間によっても調整することができる。第1段回路410及び第3段回路430のスイッチは、第2段回路420(可変周波数制御によって制御される)のスイッチと同じ周波数で動作し、全てのスイッチのデューティサイクルはほぼ50%同じであることに注意されたい。
【0066】
第3段回路430のスイッチS
T1~S
T4の位相シフト制御は、第1段回路410のスイッチS
P1~S
P4の遅延時間制御の影響を受ける。具体的には、遅延時間が第1段回路410のスイッチを制御するために使用される場合、スイッチS
T1及びS
T2の波形は、スイッチS
P1及びS
P2と本質的に同一である(すなわち、S
P1、S
P2、S
T1及びS
T2は、ほぼi
Sのゼロ交差で状態を変化させる)。第3段回路430のスイッチの位相シフト制御は、第1段回路410のスイッチS
P1及びS
P2に対しスイッチS
T3及びS
T4の位相シフトを引き起こす。
図9での位相シフト制御に対する
図5、
図6及び
図8で説明されている従来の位相シフト制御との違いは
図9に示されているように、第1段回路410のスイッチS
P1~S
P4の遅延時間制御の間、インダクタL
Tの両端の電圧はゼロであることである。
【0067】
図9を参照すると、第1段回路410のスイッチの遅延時間の間(例えば、時点T
1~時点T
2まで)、第3段回路430のスイッチが位相シフトすると、電流i
Tは一定であり、この間、エネルギーはインダクタL
Tに蓄積されず、出力にも供給されない。従って、この動作によって、実効位相シフト(例えば、時点T
2~時点T
3へ)は位相シフトと遅延時間の差であり、エネルギー源V
B2の荷電電流I
B2に比例する電流i
Tの大きさが決定される。
【0068】
図10は、本開示のいくつかの実施形態による、エネルギー源V
B1からエネルギー源V
IN及びV
B2への電力転送のためのコンバータ400の制御方法1000を示すフローチャートである。制御方法1000の特定のステップは、制御方法700(
図7)に関連して説明したのと同様の方法で実行できることが理解されるだろう。但し、制御方法1000は任意の適切な方法で実行可能である。
【0069】
ステップ1010では、制御装置404は、エネルギー源VIN、VB1及びVB2の電圧、並びに電流iS、iT、IB1、及びIB2を検出又は推定することから始まる。
【0070】
ステップ1020では、制御装置404は、電流IIN及び/又はエネルギー源VINの電圧を調整するためにスイッチング周波数を決定する。
【0071】
ステップ1030では、第1段回路410のスイッチSP1~SP4のオン/オフ時間を決定するために、共振電流isのゼロ交差瞬間が検出又は推定される。それにより、位相遅延を計算する。
【0072】
ステップ1040では、遅延時間は、第1段回路410のスイッチS
P1~S
P4の追加制御を実現するために、エネルギー源V
INとV
B1の電圧、及び電流i
sとI
INに基づいて決定される。
図8の実施形態では遅延時間はゼロに設定され、
図9の実施形態では遅延時間が追加されることに注意されたい。
【0073】
ステップ1050では、制御装置404は、電流IB2又はエネルギー源VB2の電圧を調整するために位相シフトの量を決定する。
【0074】
ステップ1060では、制御装置404は、パルス幅変調器(PWM)レジスタのスイッチング周波数、位相遅延、遅延時間、位相シフトを更新し、コンバータ400は最初から動作を再開する。
【0075】
図11及び
図12は、本開示の実施形態による、エネルギー源V
B1からエネルギー源V
B2への電力転送のためのスイッチ作動制御信号波形及び対応する電流を示している。
図11及び
図12の実施形態では、エネルギー源V
INは、第1段回路410のスイッチS
P1~S
P4の全てをオフにすることによって分離される。従って、第2段回路420及び第3段回路430は、単一の入力及び単一の出力コンバータとして動作する。具体的には、2段及び3段が直列共振コンバータとして機能する。
図11の実施形態では、エネルギー源V
B1の電圧は、エネルギー源V
B2の電圧のn
3倍よりも大きい(すなわち、V
B1>n
3V
B2)。
図12の実施形態では、エネルギー源V
B1の電圧は、エネルギー源V
B2の電圧のn
3倍以下である(すなわち、V
B1≦n
3V
B2)。
【0076】
図11を参照すると、スイッチS
S1~S
S4及びスイッチS
T1~S
T4の波形は、同じスイッチング周波数で動作し、デューティサイクルはほぼ50%同じである。可変周波数制御は第2段回路420のスイッチS
S1~S
S4を動作するために使用され、従ってこれによりエネルギー源V
B2の電荷電流I
B2を決定する共振電流i
S及びi
Tが誘導される。
【0077】
第3段回路430のスイッチST1~ST4は同期整流器として動作する。つまり、共振電流iTが正の場合(例えば、時点T1とT4の間)、スイッチST1及びST3はオンになり、共振電流iTが負の場合(例えば、時点T4とT7の間)、スイッチST2及びST4はオンになる。これにより、スイッチSS1~SS4の波形に対して、スイッチST1~ST4の波形に位相遅延(例えば、時点T0~時点T1まで)が効果的に導入される。
【0078】
図12を参照すると、第3段回路430のスイッチS
T1~S
T4を能動的に制御するために、遅延時間(例えば、時点T
1~時点T
2まで)が追加される。遅延時間の間、トランス402の第3巻線443は、第3段回路430のスイッチによって短絡され、
図12に示すように共振電流i
S及びi
Tを増大させる。その結果、エネルギー源V
B2の電荷電流I
B2は、スイッチング周波数だけでなく遅延時間によっても調整される。
【0079】
図13は、本開示の実施形態による、エネルギー源V
B1からエネルギー源V
B2への電力転送のためのコンバータ400の制御方法1300を示すフローチャートである。
【0080】
ステップ1310では、制御装置404は、エネルギー源VB1及びVB2の電圧、並びに電流iS及びIB2を検出又は推定することから始まる。
【0081】
ステップ1320では、制御装置404は、電流IB2及び/又はエネルギー源VB2の電圧を調整するためにスイッチング周波数を決定する。
【0082】
ステップ1330では、第3段回路430のスイッチST1~ST4のオン/オフ時間を決定するために、共振電流iSのゼロ交差瞬間が検出又は推定され、それによって位相遅延を計算する。
【0083】
ステップ1340では、遅延時間は、エネルギー源のV
B1及びV
B2の電圧、及び電流I
B2に基づいて決定される。
図11の実施形態では遅延時間はゼロに設定され、
図12の実施形態では遅延時間(例えば、時点T
1とT
2の間)が追加されることに注意されたい。
【0084】
ステップ1350では、制御装置404は、第1段回路410のスイッチSP1~SP4を全てオフにし、パルス幅変調器(PWM)レジスタのスイッチング周波数、位相遅延、遅延時間、位相シフトを更新し、コンバータ400は最初から動作を再開する。
【0085】
図14及び
図15は、本開示の実施形態による、エネルギー源V
B2からエネルギー源V
B1への電力転送のためのスイッチ作動制御信号波形及び対応する電流を示している。
図14及び
図15の実施形態では,エネルギー源V
INは、第1段回路410のスイッチS
P1~S
P4の全てをオフにすることによって分離される。従って、第2段回路420及び第3段回路430は、単一の入力及び単一の出力コンバータとして動作する。
図14の実施形態では、エネルギー源V
B2の電圧は、エネルギー源V
B1の電圧の(1/n
3)倍よりも大きい。
図15の実施形態では、エネルギー源V
B2の電圧は、エネルギー源V
B1の電圧の(1/n
3)倍以下である。
【0086】
図14を参照すると、スイッチS
S1~S
S4とスイッチS
T1~S
T4の波形は、同じスイッチング周波数で動作し、デューティサイクルはほぼ50%同じである。可変周波数制御は第2段回路420のスイッチS
S1~S
S4を動作するために使用され、従ってこれにより、エネルギー源V
B1の電荷電流I
B1を決定する共振電流i
S及びi
Tが誘導される。
【0087】
第2段回路420のスイッチSS1~SS4は同期整流器として動作する。つまり、共振電流iSが正の場合(例えば、時点T1とT4の間)、スイッチSS1及びSS3はオンになり、共振電流iSが負の場合(例えば、時点T4とT7の間)、スイッチSS2及びSS4はオンになる。これにより、スイッチST1~ST4の波形に対して、スイッチSS1~SS4の波形に位相遅延(例えば、時刻点T0~時刻点T1まで)が効果的に導入される。
【0088】
図15に示すように、第2段回路420のスイッチS
S3及びS
S4を能動的に制御するために、遅延時間(例えば、時点T
1~時点T
2まで)が追加される。遅延時間の間、トランス402の第2の巻線442は、第2段回路420のスイッチによって短絡され、
図15に示すように共振電流のi
Sとi
Tを増大させる。その結果、エネルギー源V
B1の電荷電流I
B1は、スイッチング周波数だけでなく遅延時間によっても調整される。
【0089】
図16は、本開示の実施形態による、制御してエネルギー源V
B2からエネルギー源V
B1への電力転送のためのコンバータ400の制御方法1600を示すフローチャートである。
【0090】
ステップ1610では、制御装置404は、エネルギー源VB1及びVB2の電圧、ならびに電流iS及びIB1を検出又は推定することから始まる。
【0091】
ステップ1620では、制御装置404は、電流IB1及び/又はエネルギー源VB1の電圧を調整するためにスイッチング周波数を決定する。
【0092】
ステップ1630では、第2段回路420のスイッチSS1~SS4のオン/オフ時間を決定するために、共振電流iSのゼロ交差瞬間が検出又は推定され、それによって位相遅延を計算する。
【0093】
ステップ1640では、遅延時間は、エネルギー源のV
B1及びV
B2の電圧、及び電流I
B1に基づいて決定される。
図14の実施形態では遅延時間はゼロに設定され、
図15の実施形態では遅延時間(例えば、時点T
1とT
2の間)が追加されることに注意されたい。
【0094】
ステップ1650では、制御装置404は、第1段回路410のスイッチSP1~SP4を全てオフにし、パルス幅変調器(PWM)レジスタのスイッチング周波数、位相遅延、遅延時間、位相シフトを更新し、コンバータ400は最初から動作を再開する。
【0095】
図17は、本開示の別の実施形態による3端子対双方向DC/DCコンバータ1700を示している。
図17のコンバータ1700は、第1段回路1710の阻止コンデンサC
B1及び第3段回路1730の阻止コンデンサC
B2を含むようにコンバータ1700が実装されていることを除いて、
図4のコンバータ400と実質的に同じである。スイッチの不均一なデューティサイクル及びスイッチ間の不均等な電圧降下に起因するトランス1702に印加される不均等な正及び負のボルト秒によって引き起こされるトランス1702の飽和を防ぐために、阻止コンデンサC
B1及びC
B2はトランス1702の第1巻線1741及び第3巻線1743にそれぞれ直列に結合される。阻止コンデンサC
B1、C
B2、及び第2段回路1720の共振コンデンサC
Rは、巻線1741、1742、及び1743を流れるDC電流を遮断し、トランス1702の飽和を防ぐことができる。但し、阻止コンデンサC
B1及びC
B2の静電容量は、共振コンデンサC
Rの静電容量よりもはるかに大きいので、第2段回路1720と第1段回路1710の間の直列共振コンバータの共振周波数、及び第2段回路1720と第3段回路1730の間の直列共振コンバータの共振周波数は、それの阻止コンデンサがない場合とほぼ同じになることが理解されるだろう。これは、例えば、阻止コンデンサC
B1及びC
B2の静電容量をマイクロファラッドの範囲にし、共振コンデンサC
Rの静電容量をナノファラッドの範囲にすることによって達成できる。一実施形態では、実際の要件によれば、阻止コンデンサC
B2は省略されてもよく、すなわち、第1電力段回路1710のみが阻止コンデンサを有する。その結果、回路構成が簡素化されるか、コストが削減される。
【0096】
スイッチのデューティサイクルの不均一は、ゲート駆動信号の遅延が不均一であること、及びスイッチのオン/オフの遅延が不均一であることに起因していることに注意されたい。最適化された設計手順によって遅延のミスマッチが十分に最小化されている場合、
図4に示すように、阻止コンデンサなしに比較的大きなエアギャップを持つトランスを設計することで、トランスの飽和を防ぐことができる。
【0097】
図18は、本開示の更なる別の実施形態による、3端子対双方向DC/DCコンバータ1800を示している。
図18のコンバータ1800は、
図17の第2段回路1720及び第3段回路1730にそれぞれ元々含まれていたインダクタL
R及びL
Tが、現在では
図18のトランス1802に磁気的に統合されていることを除いて、
図17のコンバータ1700と実質的に同じである。トランス1802の巻線1841、1842、及び1843を適切に配置することにより(例えば、隣り合う巻数N
1、N
2、及びN
3の間に空間/隙間を残すことにより)、これらの巻線の漏れインダクタンスを決定し、直列接続インダクタL
R及びL
Tとして機能させることができる。第1巻線1841の漏れインダクタンスは、第2巻線1842及び第3巻線1843の漏れインダクタンスと比較して最小化されていることに注意されたい。
【0098】
図19は、本開示の実施形態による、4端子対双方向DC/DCコンバータ1900を示している。
図19に示すように、コンバータ1900は、トランス1902を介して互いに磁気的に結合され、制御装置1904によって個別に制御可能な4つのコンバータ段(すなわち、第1段回路1910、第2段回路1920、第3段回路1930、及び第4段回路1940)を含んでいる。
図19に示すように、第1回路1910、第3段回路1930、及び第4段回路1940は、任意に阻止コンデンサを含むことができ、第2段回路1920は、阻止コンデンサよりもはるかに小さい静電容量を有する共振コンデンサを含んでいる。
【0099】
図20は、本開示の実施形態による、多端子対双方向DC/DCコンバータ2000を示している。
図20に示すように、コンバータ2000は、N段回路を含むように一般化されている。N段回路の各々は、阻止コンデンサよりもはるかに小さい静電容量を有する共振コンデンサを代わりに含む第2段回路を除いて、阻止コンデンサを任意に含むことができる。この実施形態では、段回路のうちの1つだけが、SRCとして電気エネルギーを転送するように構成され、残りの段回路が、DABとしてエネルギーを転送するように構成される。いくつかの実施形態では、位相シフト制御は、各DABに対して使用でき、位相シフト量は、各DABに対して独立して決定できる。
【0100】
当業者であれば、本開示の範囲内でコンバータの回路トポロジに様々な変更を加えることが可能であることを理解できるだろう。
【0101】
本開示を説明及び定義する目的で、程度の用語(例えば、「実質的に」、「わずかに」、「約」、「同等」など)は、本明細書では、定量的な比較、値、寸法、又は他の表現に起因する可能性のある固有の不確実性の程度を表すために利用できることに注意されたい。このような程度の用語は、定量的表現が、問題となっている主題の基本的な機能に変化をもたらすことなく、記載された基準(例えば、約10%以下)から変化し得る程度を表すために、本明細書で使用されることもある。本明細書に別段の記載がない限り、本開示に現れる任意の数値は、記載された値と、程度の用語(例えば、「約」)によって代替的に修正された値の両方であるとみなされる。
【0102】
本開示の様々な実施形態が本明細書に詳細に記載されているが、当技術分野の当業者であれば、添付の特許請求の範囲に記載されているように、本開示の趣旨を逸脱することなく、修正及び他の実施形態を容易に理解されるだろう。