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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】キッチン用排水トラップ
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/284 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
E03C1/284
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021059887
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2021-09-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽介
(72)【発明者】
【氏名】松崎 裕也
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-066640(JP,A)
【文献】特開2020-176481(JP,A)
【文献】特開2018-188857(JP,A)
【文献】特開2016-050446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンクと排水管との間に設けられ、先端にノズルを備えた排水管洗浄ホースがシンクの排水口から排水管まで挿入され、排水管洗浄ホースのノズルから噴射される高圧洗浄水により排水管が洗浄されるキッチン用排水トラップであって、
上記シンクの排水口の下方に配置され、上記シンクの排水口から流入した排水が下方に流れる第1管路と、
この第1管路の横方向に配置され、上記第1管路から流入した排水が上方に流れる第2管路と、
この第2管路の上記第1管路の反対側の横方向に配置され、上記第2管路から流入した排水が下方に流れる第3管路と、
上記第2管路の下流端と上記第3管路の上流端の間に配置され、上記第2管路と第3管路を接続する連通室と、を有し、
上記連通室の内側面には上記排水管洗浄ホースのノズルを第2管路側から第3管路側に誘導するノズル誘導部が形成され、
上記ノズル誘導部は、上記第2管路から上記連通室内に進入したノズルの先端をその進入部位からその進入部位の上記連通室の横方向幅の中心に対して対角方向に位置する退出部位に誘導する第1誘導路を備え、
上記ノズル誘導部は、複数の面が組み合わされて形成され且つこれらの複数の面同士により形成される谷線により構成されている、キッチン用排水トラップ。
【請求項2】
上記ノズル誘導部は、さらに、上記排水管洗浄ホースが上記連通室内に進入する際に受ける力を上記ノズルが進行する方向に変換して上記ノズルの先端を上記第1誘導路に沿って進行させる加圧方向変換部を備えている、請求項1に記載のキッチン用排水トラップ。
【請求項3】
上記ノズル誘導部の上記加圧方向変換部は、上記谷線により構成されている、請求項2に記載のキッチン用排水トラップ。
【請求項4】
上記ノズル誘導部は、さらに、上記第1誘導路からノズルが進行する方向に延びる第2誘導路を備え、この第2誘導路は、ノズルが進行する方向の左側と右側に谷線を持つ1つ又は複数の面により形成されている、請求項1乃至の何れか1項に記載のキッチン用排水トラップ。
【請求項5】
上記第2管路は、その水平方向の流路断面において、横方向幅(W)が縦方向幅(H)よりも大きく形成されている、請求項1乃至の何れか1項に記載のキッチン用排水トラップ。
【請求項6】
上記第1管路の入口幅(W1)、第2管路の入口幅(W2)、第2管路の出口幅(W3)のうち、第2管路の入口幅(W2)が最も小さい、請求項1乃至の何れか1項に記載のキッチン用排水トラップ。
【請求項7】
上記キッチン用排水トラップは、流路の幅方向において左右対称に構成されている、請求項1乃至の何れか1項に記載のキッチン用排水トラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチン用排水トラップに係り、特に、シンクと排水管との間に設けられ、先端にノズルを備えた排水管洗浄ホースがシンクの排水口から排水管まで挿入され、排水管洗浄ホースのノズルから噴射される高圧洗浄水により排水管が洗浄されるキッチン用排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、キッチンのシンクと排水管との間には、封水により排水管からの臭気が室内に進入することを防止する排水トラップが設けられている。
この排水トラップには、管体をS字形状に屈曲させたSトラップや、封水筒を設けたボトルトラップ等がある。
【0003】
キッチンの排水には食物、油分、ごみ等が含まれているので、これらにより、排水管内部の流路が狭くなり、さらに、排水管が詰まってしまうことがある。このような場合には、キッチンのシンクの排水口から排水トラップを経由して排水管まで排水管洗浄ホースを通し、排水管洗浄ホースのノズルから高圧の洗浄水を噴射して、排水管を洗浄している。
【0004】
最近、キッチンキャビネット内に広い収納空間を確保するために、排水トラップがコンパクトな構造となっている。この場合、Sトラップは管体が屈曲しているので、屈曲部の曲がりの曲率半径Rが小さくなり、排水管洗浄ホースが排水トラップの途中で通せなくなる。これを解決するために、排水トラップの封水よりも下流側に挿入口を設けて、排水管洗浄ホースを挿入することも考えられるが、この場合には、洗浄作業中に、臭気が室内に漏れるという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するため、例えば、特許第6488456号公報には、Sトラップを構成する第1下降部と上昇部との間に、洗浄機具をガイドする側面視円弧形状のガイド面を備えた蓋部材を設け、この蓋部材のガイド面により、洗浄機具を下流側まで挿入させることができるようにした排水トラップが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6488456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載された排水トラップは、排水管からの臭気を封水で遮断した状態で、排水管の洗浄作業ができるので有効なものである。
しかしながら、Sトラップがよりコンパクト化された場合には、屈曲部の曲がりの曲率半径Rもより小さくなり、洗浄機具が曲がり切れなくなり、洗浄機具(排水管洗浄ホース)を排水管まで到達させることができない場合がある。このように、Sトラップに単にガイド面を設けても、不十分であり、より改良された排水トラップが要望されている。
【0008】
そこで、本発明は、コンパクトなSトラップであっても、排水管からの臭気を封水で遮断した状態で、排水管洗浄ホースのノズルを排水管まで容易に挿入することができるキッチン排水トラップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、シンクと排水管との間に設けられ、先端にノズルを備えた排水管洗浄ホースがシンクの排水口から排水管まで挿入され、排水管洗浄ホースのノズルから噴射される高圧洗浄水により排水管が洗浄されるキッチン用排水トラップであって、シンクの排水口の下方に配置され、シンクの排水口から流入した排水が下方に流れる第1管路と、この第1管路の横方向に配置され、第1管路から流入した排水が上方に流れる第2管路と、この第2管路の第1管路の反対側の横方向に配置され、第2管路から流入した排水が下方に流れる第3管路と、第2管路の下流端と第3管路の上流端の間に配置され、第2管路と第3管路を接続する連通室と、を有し、連通室の内側面には排水管洗浄ホースのノズルを第2管路側から第3管路側に誘導するノズル誘導部が形成され、ノズル誘導部は、第2管路から連通室内に進入したノズルの先端をその進入部位からその進入部位の対角方向に位置する部位に誘導する第1誘導路を備えている。
本発明のキッチン用排水トラップは、第1管路、第2管路、第3管路、連通室からなるSトラップであり、この排水トラップの洗浄に用いられる先端にノズルを備えた排水管洗浄ホースは、大きな曲率半径Rで曲げることができるようになっている。このため、本発明のキッチン用排水トラップにおいては、排水管洗浄ホースのノズルがシンクの排水口から挿入され、第1管路を通り、第2管路から連通室を通って第3管路に進む際に、第2管路の下流端と第3管路の上流端の間に配置された連通室の内側面に形成されたノズル誘導部において、ノズルの先端が、第1誘導路により、進入部位からその進入部位の対角線方向に位置する部位に誘導されるので、排水トラップの途中でひっかかることなく、排水管洗浄ホースのノズルの先端を容易に排水管まで到達させることができる。その結果、本発明のキッチン用排水トラップによれば、排水管洗浄ホースのノズルから噴出される高圧洗浄水により、排水管を容易且つ確実に洗浄することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、ノズル誘導部は、さらに、排水管洗浄ホースが連通室内に進入する際に受ける力をノズルが進行する方向に変換してノズルの先端を第1誘導路に沿って進行させる加圧方向変換部を備えている。
このように構成された本発明によれば、加圧方向変換部により、排水管洗浄ホースが連通室内に進入する際に受ける力(排水管洗浄ホースを押し込む力)をノズルが進行する方向に変換されるので、排水管洗浄ホースを排水トラップ内に押し込むときの力が軽くても、ノズルの先端を第1誘導路に沿って進行させることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、ノズル誘導部は、複数の面が組み合わされて形成され且つこれらの複数の面同士により形成される谷線を備え、この谷線が第1誘導路を構成している。
このように構成された本発明においては、ノズル誘導部が複数の面同士により形成される谷線を備え、この谷線が第1誘導路を構成しているので、この谷線に沿ってノズルの先端が移動するので、ノズルの先端が横方向にぶれにくくなり、排水管洗浄ホースを容易に排水管に誘導することができる。なお、排水管洗浄ホースを誘導するための深い溝等を形成する必要がないので排水トラップ内に汚れが残存し難くなる。
【0012】
本発明において、好ましくは、ノズル誘導部は、複数の面が組み合わされて形成され且つこれらの複数の面同士により形成される谷線を備え、この谷線が加圧方向変換部を構成している。
このように構成された本発明においては、ノズル誘導部が複数の面が組み合わされて形成され且つこれらの複数の面同士により形成される谷線を備え、この谷線が加圧方向変換部を構成しているので、この谷線に沿って排水管洗浄ホースが移動するので、排水管洗浄ホースが横方向にぶれにくくなり、排水管洗浄ホースに作用する力をノズルが進行する方向に適切に変換して伝達し、排水管洗浄ホースを排水管に誘導することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、ノズル誘導部は、さらに、第1誘導路からノズルが進行する方向に延びる第2誘導路を備え、この第2誘導路は、ノズルが進行する方向の左側と右側に谷線を持つ1つ又は複数の面により形成されている。
このように構成された本発明においては、ノズルの先端は、第1誘導路により対角方向に誘導されるので、第1誘導路を通過した後、第2誘導路を進行する。ノズルが第2誘導路を進行するとき、第2誘導路はノズルが進行する方向の左側と右側に首を振っても、右側と左側に設けられた谷線により、ノズルの先端が左右方向に大きく曲がるのが防止され、ノズルを第3管路に向けてスムーズに通すことができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、第2管路は、その水平方向の流路断面において、横方向幅(W)が縦方向幅(H)よりも大きく形成されている。
このように構成された本発明においては、第2管路の水平方向の流路断面において、横方向幅が縦方向幅よりも大きく形成されている、即ち、第2管路の水平方向の流路断面が扁平形状となっているので、第2管路のノズルが入ってくる位置から出て行く位置までの距離が長くなり、大きな曲率半径で曲がる排水管洗浄ホースであっても、第2管路内を進入し易くなる。
【0015】
本発明において、好ましくは、第1管路の入口幅(W1)、第2管路の入口幅(W2)、第2管路の出口幅(W3)のうち、第2管路の入口幅(W2)が最も小さい。
このように構成された本発明においては、第1管路の入口幅(W1)、第2管路の入口幅(W2)、第2管路の出口幅(W3)のうち、第2管路の入口幅(W2)が最も小さいので、大きな曲率半径で曲がる排水管洗浄ホースであっても、第1管路の入口から第2管路の入口に向けて挿入された排水管洗浄ホースのノズルが、第2管路内で流路の横幅方向の左右端に向かい易くなり、第2管路の出口において、ノズル誘導部に当接し易くなる。
【0016】
本発明において、好ましくは、キッチン用排水トラップは、流路の幅方向において左右対称に構成されている。
このように構成された本発明のキッチン用排水トラップにおいては、流路の幅方向において左右対称に構成されているので、大きな曲率半径で曲がる排水管洗浄ホースのノズルであっても、第2管路の出口において、排水管洗浄ホースのノズルが左右のどちらに振られても、ノズル誘導部に当接し易くなり、排水管洗浄ホースが挿入し易くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のキッチン用排水トラップによれば、コンパクトなSトラップであっても、排水管からの臭気を封水で遮断した状態で、排水管洗浄ホースのノズルを排水管まで容易に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態によるキッチン用排水トラップが取り付けられたキッチンキャビネットを示す正面図である。
図2図1のII―II線に沿って見た断面図である。
図3】本発明の実施形態によるキッチン用排水トラップを示す側面図である。
図4図3の上面図である。
図5図4のV-V線に沿って見た断面図である。
図6】排水管洗浄ホースを示す外形図である。
図7図3のVII―VII線に沿って見た断面図である。
図8A】ノズル誘導部を示す上面図である。
図8B】ノズル誘導部を示す正面図である。
図8C】ノズル誘導部を示す背面図である。
図8D】ノズル誘導部を示す右側面図である。
図8E】ノズル誘導部を示す左側面図である。
図8F】ノズル誘導部を示す下面図である。
図9図8AのIX-IX線に沿って見た断面図である。
図10】排水管洗浄ホースのノズル誘導部における動作を説明するためのノズル誘導部を示す上面図である。
図11】排水管洗浄ホースのノズル誘導部における動作を説明するためのノズル誘導部を示す上面図である。
図12A】排水管洗浄ホースのノズル誘導部における進行動作を順番に示す上面図である。
図12B】排水管洗浄ホースのノズル誘導部における進行動作を順番に示す上面図である。
図12C】排水管洗浄ホースのノズル誘導部における進行動作を順番に示す上面図である。
図12D】排水管洗浄ホースのノズル誘導部における進行動作を順番に示す上面図である。
図12E】排水管洗浄ホースのノズル誘導部における進行動作を順番に示す上面図である。
図12F】排水管洗浄ホースのノズル誘導部における進行動作を順番に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるキッチン用排水トラップを説明する。先ず、図1及び図2により、キッチン用排水トラップが取り付けられるキッチンキャビネットを説明する。図1は本発明の実施形態によるキッチン用排水トラップが取り付けられたキッチンキャビネットを示す正面図であり、図2図1のII―II線に沿って見た断面図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、符号1はキッチンキャビネットを示し、このキッチンキャビネット1には、水を流すためのシンク2が取り付けられている。このシンク2の底面2aの後方の右側端部には、排水口4が設けられている。シンク2の後方の左側にはシンク2へ水(湯水)を吐水する水栓装置6が設けられている。
【0021】
シンク2の排水口4には、排水トラップ8が接続され、さらに、この排水トラップ8の下流端には、排水管10が接続されている。
また、キッチンキャビネット1の内部は、収納空間12として利用されており、この収納空間12をなるべく広くするため、排水トラップ8はコンパクな形状となっている。
【0022】
次に、図3乃至図5により、排水トラップ8について説明する。図3は本発明の実施形態によるキッチン用排水トラップを示す側面図であり、図4図3の上面図であり、図5図4のV-V線に沿って見た断面図であり、図6は排水管洗浄ホースを示す外形図である。ここで、排水トラップ8において、排水口4から排水が流入する側を「前方」、排水が排水管10ヘ流出する側を「後方」とよぶ。
ここで、図5に、破線で記載されたAは、後述する排水管洗浄ホース24のノズル26の軌跡を表している。
【0023】
図3乃至図6(主に図5)に示すように、排水トラップ8の上流端には封水形成部材14が設けられ、この封水形成部材14が、シンク2の排水口4に接続されている。封水形成部材14の下端には、排水トラップ8の第1管路16の入口部16aが接続され、この第1管路16には、シンク2の排水口4から流入した排水が下方に流れるようになっている。
【0024】
封水形成部材14における封水WOの位置は、後述する第2管路18の頂部18cの高さ位置により規定される。
さらに、第1管路16の出口部16bの底面16cには、超音波発信装置17が取り付けられている。この超音波発信装置17は、所定の周波数の超音波を封水に向けて照射することにより、封水が満たされた第1管路16内に生じる汚れを洗浄するようになっている。なお、この超音波発信装置17は、上述した水栓装置6から水が吐水されていることを検知したとき、この水の検知と連動して、超音波の照射が開始される。
【0025】
第1管路16の出口部16bには、第2管路18の入口部18aが接続され、この第2管路18には、第1管路16から流入した排水が上方に流れるようになっている。さらに、第2管路18の出口部18bには、第2管路18と第3管路22の間に配置された連通室19により、第3管路22の入口部22aが接続され、第2管路18から第3管路22に流入した排水が下方に流れるようになっている。この連通室19の内側面(裏面)には、詳細は後述するノズル誘導部20(図5参照)が形成されている。
【0026】
これらの第1管路16、第2管路18及び第3管路22は、前方から見たとき、キッチンキャビネット1の前方側から後方側に向けて一列に配置されている。
また、第3管路22の出口部22bは、上述した排水管10に接続され、シンク2から流れ出る排水が、排水トラップ8を通って、排水管10へ流出し、排水が外部に排出されるようになっている。
さらに、排水トラップ8は、図4から理解できるように、流路の幅方向において左右対称に形成されている。
【0027】
次に、図6により、排水管洗浄ホースについて説明する。図6は排水管洗浄ホースを示す外形図である。
排水管洗浄ホース24は、排水管10の内部を高圧の洗浄水により洗浄するためのものであり、シンク2の排水口4から挿入され、排水トラップ8の第1管路16、第2管路18、ノズル誘導部20及び第3管路22を通って、排水管10まで到達するようになっている。
排水管洗浄ホース24は、その先端に取り付けられた金属製のノズル26と、このノズル26に接続されるホース本体28とを備えている。
【0028】
図6に示すように、排水管洗浄ホース24には、「すずらんノズル」と呼ばれる形式のノズルを使用している。排水管洗浄ホース24には、「ロケットノズル」等の他の形式のノズルを使用してもよい。
排水管洗浄ホース28は、長手方向には伸縮せず、ノズル26及びホース本体28の両方において、横方向に比較的大きな曲率半径で曲がることができるようになっている。
【0029】
次に、図7により、排水トラップ8の流路形状について説明する。図7図3のVII―VII線に沿って見た断面図である。
図7に示すように、第2管路18の入口部18aを除く部分の水平方向の流路断面は、前後方向に直交する横方向幅Wが前後方向に平行な縦方向幅Hよりも大きく形成されている。横方向幅Wと縦方向幅Hは、W:H=2:1に設定されている。
ここで、本実施形態において、WとHは、W:H=3:1~3:2の範囲の値に設定されることが好ましい。
【0030】
さらに、図7に示すように、第1管路16の入口部16aの前後方向に直交する横方向幅はW1であり、第2管路18の入口部18aの前後方向に直交する横方向幅はW2であり、第2管路18の出口部18bの前後方向に直交する横方向幅はW3である。
これらの横方向幅W1、W2、W3は、W1:W2:W3=3:2:4に設定されている。
ここで、横方向幅W1、W2、W3は、W1:W2:W3=3:2:3~2:1:2の範囲の値に設定されることが好ましい。
【0031】
このように、本実施形態の排水トラップ8においては、これらの横方向幅W1、W2、W3のうち、第2管路18の入口の横方向幅W2が最も小さく形成されている。
【0032】
次に、図8A乃至図8F及び図9により、連通室19の内側面(裏面)に形成されたノズル誘導部20について詳細に説明する。図8Aはノズル誘導部を示す上面図であり、図8Bはノズル誘導部を示す正面図であり、図8Cはノズル誘導部を示す背面図であり、図8Dはノズル誘導部を示す右側面図であり、図8Eはノズル誘導部を示す左側面図であり、図8Fはノズル誘導部を示す下面図であり、図9図8AのIX-IX線に沿って見た断面図である。ここで、図8A乃至図8Eは、外側から見た図であり、連通室19の内側面に形成されたノズル誘導部20は外側からは見えないので、理解を容易とするために、ノズル誘導部20を仮想線(二点鎖線)で表している。
【0033】
本実施形態による排水トラップ8の連通室19は、上述したように、第2管路18の出口部18bと、第3管路22の入口部22aを接続するものである。本実施形態においては、この連通室19の内側面(裏面)に、ノズル誘導部20を設け、このノズル誘導部20を特定の形状とすることにより、排水管洗浄ホース24を第2管路18から第3管路22にスムーズに通すことができるようになっている。
【0034】
先ず、ノズル誘導路20は、多数の多角形の面20a~20oが組み合わさって構成され、これらの多角形の面同士が谷線30によって接続されている。以下、具体的に説明する。
ノズル誘導路20は、前方側(第2管路側)から後方側(第3管路側)に向けて、5列に亘って、15個の面が形成されている。
【0035】
前方側から第1列には、5角形の第1誘導面20a、第2列には、左側から右側に向けて、3角形の第2誘導面20b、3角形の第3誘導面20c、3角形の第4誘導面20d、第3列には、左側から右側に向けて、4角形の第5誘導面20e、5角形の第6誘導面20f、6角形の第7誘導面20g、5角形の第8誘導面20h、4角形の第9誘導面20i、第4列には、左側から右側に向けて、5角形の第10誘導面20j、3角形の第11誘導面20k、5角形の第12誘導面20l、第5列には、左側から右側に向けて、5角形の第13誘導面20m、5角形の第14誘導面20n、5角形の第15誘導面20oが、それぞれ、形成されている。
【0036】
これらの15個の第1乃至第15誘導面20a~20oは、それぞれの各辺が、谷線30(図8F参照)により接続されている。
ここで、ノズル誘導部20は、外側(上方)に向かって膨出する形状であり、そのため、谷線30は、面同士を接続する接続線であるので、内側から見て、谷形状の底部に位置する線である。さらに、図8Aに明確に示されているように、これらの谷線20のほとんどは、前方側(第2管路側)から後方側(第3管路側)向かって、真っ直ぐ又は斜めに直線的に延びている。
【0037】
次に、図10及び図11により、排水管洗浄ホースのノズル誘導部における動作を説明する。図10及び図11は、排水管洗浄ホースのノズル誘導部における動作を説明するためのノズル誘導部を示す上面図である。図10及び図11においても、図8A乃至図8Eと同様に、ノズル誘導部20は連通室19の内側面に形成されており外側からは見えないので、理解を容易とするために、ノズル誘導部20を仮想線(二点鎖線)で示している。
【0038】
先ず、図7に示すように、排水管洗浄ホース24は、第2管路18の流路断面が上述したように横方向幅Wが縦方向幅Hよりも長い扁平形状であるため、排水管洗浄ホース24のノズル26は、連通室19内に進入する際、連通室19の内側面に形成されたノズル誘導部20の左右の何れか一方の側の進入部位から進入することになる(図5のA参照)。図10において、破線Bはノズル26の軌跡を示しており、B1がノズル26の進入位置(ノズル誘導部20の進入部位でもある)を示し、B2がノズル26の退出位置(ノズル誘導部20の退出部位でもある)を示している。ここで、退出位置(退出部位)B2は、進入位置(進入部位)B1の対角方向に位置し、ノズル誘導部20によりノズル26が対角方向に向かって進むようにしている。
【0039】
図10には、第7誘導面20gと第20誘導面20lにより形成される谷線30が太線で示されており、ノズル26は、この谷線30に沿って、B1と対角方向の位置である退出位置B2に向かって進む。ノズル26の先端は、谷線30により誘導され、これが、本実施形態における第1誘導路40となる。
【0040】
ここで、本実施形態は、第1誘導路40は、この図10に図示した谷線30に限定されず、対角方向にノズル26の先端を誘導することができれば、他の谷線であってもよい、
また、この第1誘導路40は、谷線に限らず、上述した誘導面であってもよい。ノズル20が誘導面により対角方向に誘導される場合には、ノズル26が首を左右に振っても、両側にある谷線30により大きく曲がることが防止されるので、ノズル20は容易に前進することができる。
【0041】
さらに、図10に示すように、排水管洗浄ホース24のホース本体28及び/又はノズル26が、第8誘導面20hを通過するとき、作業者の排水管洗浄ホース24を押し込む力により、ホース本体28及び/又はノズル26が第8誘導面20hに押し付けられ、これにより、排水管洗浄ホース24は第8誘導面20hから力(反力)を受け、この力がノズル26の進行方向に変換され、ノズル26の先端が、第1誘導路40に沿って移動することができる。
【0042】
上述した図10に示された第8誘導面20hが、本実施形態において、加圧方向変換部42となる。
ここで、本実施形態は、加圧方向変換部42は、この図10に図示した第8誘導面20hに限定されず、排水管洗浄ホース24が受ける力をノズル26が進行する方向に変換してノズル26の先端を第1誘導路40に沿って進行させるものであれば、他の誘導面でもよく、さらに、谷線30であってもよい。
【0043】
次に、図11に示すように、破線Cはノズル26の軌跡を示しており、第1誘導路40を通過したノズル26の先端は、位置C1から位置C2まで移動する。
ここで、第11誘導面20kは、第1誘導路40である谷線30からノズル26が進行する方向に延びる第2誘導路44となる。
この第2誘導路44である第11誘導面20kのノズル26が進行する右側と左側には谷線30が形成されている。
【0044】
ノズル26が第2誘導路44(第11誘導面20k)を進行するとき、ノズル26が左側と右側に首を振っても、右側と左側に設けられた谷線30により、ノズル26の先端が左右方向に大きく曲がるのが防止されるので、ノズル26は容易に前進することができる。
【0045】
ノズル26は、第2誘導路44である第11誘導面20kを通過した後に、第10誘導面20jに進入する。
ここで、第10誘導面20jも、同様に、第1誘導路40である谷線30からノズル26が進行する方向に延びる第2誘導路44となる。この第2誘導路44である第10誘導面20jのノズル26が進行する右側と左側にも谷線30が形成されている。
【0046】
この第2誘導路44(第10誘導面20j)においても、第11誘導面20kと同様に、ノズル26が第2誘導路44(第10誘導面20j)を進行するとき、ノズルが左側と右側に首を振っても、右側と左側に設けられた谷線30により、ノズルの先端が左右方向に大きく曲がるのが防止されるので、ノズル26は容易に前進することができる。
ここで、第2誘導路44は、上述した第11誘導面20k及び第10誘導面20jに限定されず、他の誘導面であってもよく、さらに、谷線であってもよい。
【0047】
次に、図12A乃至図12Fにより、排水管洗浄ホースのノズル誘導部における進行動作を順番に説明する。図12A乃至図12Fは、いずれも、排水管洗浄ホースのノズル誘導部における進行動作を順番に示す上面図である。なお、図12A乃至図12Fにおいて、ノズル誘導部20全面を、理解を容易とするために、仮想線(二点鎖線)で示している。
【0048】
最初に、図12Aに示すように、排水管洗浄ホース24のノズル26は、右側の第8誘導面20hに沿って上昇する。
次に、図12Bに示すように、ノズル26は、さらに第8誘導面20hに沿って上昇し、後方に位置する第1誘導路40である谷線30に到達する。
【0049】
次に、図12Cに示すように、ノズル26は、さらに第1誘導路40である谷線30に沿って後方左方向に進む。
次に、図12Dに示すように、ノズル26は、さらに第1誘導路40である谷線30に沿って第1誘導路40の終端まで進む。
【0050】
次に、図12Eに示すように、第2誘導路44である第11誘導面20kに到達し、この第2誘導路44を斜め後方に進む。
さらに、図12Fに示すように、ノズル26は、第2誘導路44である第10誘導面20jに到達し、この第2誘導路44を左側後方に向けて下降する。
【0051】
なお、上述したノズル26が通過した誘導面及び谷線は、加圧方向変換部42としても機能しており、これらの加圧方向変換部42により、排水管洗浄ホース24が受ける力をノズル26が進行する方向に変換してノズル26の先端を第1誘導路40に沿って進行させるようにしている。
【0052】
このようにして、排水管洗浄ホース24のノズル26は、ノズル誘導部20の前方右側から進入し、この進入位置(進入部位)の対角方向に位置する後方左側の位置(部位)まで、ノズル第1誘導路40、ノズル第2誘導路44及び加圧方向変換部42により、スムーズに移動することができる。
【0053】
以下、上述した本実施形態による排水トラップの作用効果を説明する。
本実施形態による排水トラップ8は、第1管路16、第2管路18、第3管路22、連通路19からなるSトラップであり、この排水トラップ8の洗浄に用いられる先端にノズル26を備えた排水管洗浄ホース24は、大きな曲率半径Rで曲げることができるようになっている。
このため、本実施形態による排水トラップ8においては、排水管洗浄ホース24のノズル26がシンク2の排水口4から挿入され、第1管路16を通り、第2管路18から連通室19を通って第3管路22に進む際に、第2管路18の下流端と第3管路22の上流端の間に配置された連通室19の内側面に形成されたノズル誘導部20において、ノズル26の先端が、誘導面及び/又は谷線からなる第1誘導路40により、進入部位からその進入部位の対角線方向に位置する部位に誘導されるので、排水トラップ8の途中でひっかかることなく、排水管洗浄ホース24のノズル26の先端を容易に排水管まで到達させることができる。その結果、本実施形態による排水トラップ8によれば、排水管洗浄ホース24のノズル26から噴出される高圧洗浄水により、排水管を容易且つ確実に洗浄することができる。
【0054】
本実施形態による排水トラップ8においては、誘導面及び/又は谷線により構成される加圧方向変換部42により、排水管洗浄ホース24が連通室19内に進入する際に受ける力(排水管洗浄ホースを押し込む力)をノズル26が進行する方向に変換されるので、排水管洗浄ホース24を排水トラップ内に押し込むときの力が軽くても、ノズル26の先端を第1誘導路に沿って進行させることができる。
【0055】
本実施形態による排水トラップ8においては、ノズル誘導部20が複数の面同士により形成される谷線30を備え、この谷線30が第1誘導路40を構成しているので、この谷線30に沿ってノズル26の先端が移動するので、ノズル26の先端が横方向にぶれにくくなり、排水管洗浄ホース24を容易に排水管10に誘導することができる。
【0056】
本実施形態による排水トラップ8においては、ノズル誘導部20が複数の面が組み合わされて形成され且つこれらの複数の面同士により形成される谷線30を備え、この谷線30が加圧方向変換部42を構成しているので、この谷線30に沿って排水管洗浄ホース24が移動するので、排水管洗浄ホース24が横方向にぶれにくくなり、排水管洗浄ホース24に作用する力をノズル26が進行する方向に適切に変換して伝達し、排水管洗浄ホース24を排水管10に誘導することができる。
【0057】
本実施形態による排水トラップ8において、ノズル26の先端は、第1誘導路40により対角方向に誘導されるので、第1誘導路40を通過した後、第2誘導路44を進行する。ノズル26が第2誘導路44を進行するとき、第2誘導路44はノズル26が進行する方向の左側と右側に首を振っても、右側と左側に設けられた谷線30により、ノズル26の先端が左右方向に大きく曲がるのが防止され、ノズル26を第3管路22に向けてスムーズに通すことができる。
【0058】
本実施形態による排水トラップ8においては、第2管路18の水平方向の流路断面において、横方向幅Wが縦方向幅Hよりも大きく形成されている、即ち、第2管路18の水平方向の流路断面が扁平形状となっているので、第2管路18のノズル26が入ってくる位置から出て行く位置までの距離が長くなり、大きな曲率半径で曲がる排水管洗浄ホース24であっても、第2管路内を進入し易くなる。
【0059】
本実施形態による排水トラップ8においては、第1管路16の入口幅W1、第2管路18の入口幅W2、第2管路18の出口幅W3のうち、第2管路18の入口幅W2が最も小さいので、大きな曲率半径で曲がる排水管洗浄ホース24であっても、第1管路16の入口から第2管路18の入口に向けて挿入された排水管洗浄ホース24のノズル26が、第2管路18内で流路の横幅方向の左右端に向かい易くなり、第2管路18の出口において、ノズル誘導部20に当接し易くなる。
【0060】
本実施形態による排水トラップ8においては、流路の幅方向において左右対称に構成されているので、大きな曲率半径で曲がる排水管洗浄ホース24のノズル26であっても、第2管路18の出口部18bにおいて、排水管洗浄ホース24のノズル26が左右のどちらに振られても、ノズル誘導部に当接し易くなり、排水管洗浄ホース24が挿入し易くなる。
【符号の説明】
【0061】
2 シンク
4 排水口
8 排水トラップ
10 排水管
16 第1管路
18 第2管路
19 連通室
20 ノズル誘導部
20a~20o 第1乃至第15ノズル誘導面
22 第3管路
24 排水管洗浄ホース
26 ノズル
28 ホース本体
30 谷線
40 第1誘導路
42 加圧方向変換部
44 第2誘導路
【要約】      (修正有)
【課題】コンパクトなSトラップであっても、排水管洗浄ホースのノズルを排水管まで容易に挿入することができるキッチン排水トラップを提供する。
【解決手段】先端にノズルを備えた排水管洗浄ホースが挿入されて高圧洗浄水により排水管が洗浄されるキッチン用排水トラップであって、シンクの排水口の下方に配置され、シンクの排水口から流入した排水が下方に流れる第1管路16と、第1管路16の横方向に配置され、第1管路16から流入した排水が上方に流れる第2管路18と、第2管路18の第1管路16の反対側の横方向に配置され、第2管路18から流入した排水が下方に流れる第3管路22と、第2管路18の下流端と第3管路22の上流端の間に配置され、第2管路18と第3管路22を接続する連通室19とを有し、連通室19の内側面には排水管洗浄ホースのノズルを第2管路18側から第3管路22側に誘導するノズル誘導部20が形成されている。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F