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特許7031136構造物の切断装置及びそれを用いた切断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】構造物の切断装置及びそれを用いた切断方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20220301BHJP
   B23K 7/00 20060101ALN20220301BHJP
【FI】
E04G23/08 H
B23K7/00 501F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017077126
(22)【出願日】2017-04-07
(65)【公開番号】P2018178450
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 善伸
(72)【発明者】
【氏名】村岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆典
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-002688(JP,A)
【文献】特開2017-008542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
B23K 7/00-10/02
B23K 26/38
B26D 5/00-11/00
B23D 36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の被切断物を切断する際に用いられる構造物の切断装置において、
上記被切断物を把持する第1把持部及び第2把持部と、
上記第1把持部及び上記第2把持部の少なくとも一方を、相対的に接近又は離間する開閉方向に移動させる駆動機構と、
上記第1把持部及び上記第2把持部に並んで設けられ、上記被切断物を切断する切断部と、
上記開閉方向に沿って上記切断部を移動させる送り機構と、
上記第1把持部及び上記第2把持部で上記被切断物を把持した状態の該第1把持部及び該第2把持部の少なくとも一方の位置の情報を検出する検出部とを備え、
上記切断部を上記送り機構によって上記開閉方向に沿って移動させながら上記被切断物を切断し、
上記検出部からの位置情報に基づいて、上記第1把持部と上記第2把持部とで上記被切断物を把持した状態の上記第1把持部の位置を切断の開始位置とし、上記第2把持部の位置を切断の終了位置とするようにしたことを特徴とする構造物の切断装置。
【請求項2】
請求項1の切断装置において、
上記開閉方向に沿った上記切断部の移動を規制するストッパを上記第1把持部及び上記第2把持部の少なくとも一方に設けるようにしたことを特徴とする構造物の切断装置。
【請求項3】
請求項1又は2の切断装置において、
上記開閉方向に沿った上記切断部の移動方向と交差する方向で、且つ該切断部が上記被切断物に接近又は離間する方向に該切断部を変位させる変位機構を備えることを特徴とする構造物の切断装置。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1つの切断装置において、
上記開閉方向に沿った上記切断部の移動方向と直角に交差する方向を基軸として、該切断部の先端を該基軸から離れるように且つ該切断部の移動方向に傾ける傾動機構を備えることを特徴とする構造物の切断装置。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1つの切断装置において、
上記駆動機構は、上記第1把持部を上記開閉方向に移動させる第1駆動機構と、上記第2把持部を上記開閉方向に移動させる第2駆動機構とを備えることを特徴とする構造物の切断装置。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1つの切断装置において、
上記第1把持部及び上記第2把持部で上記被切断物を把持した状態で、該第1把持部及び該第2把持部の少なくとも一方を、該第1把持部と該第2把持部とが相対的に接近する閉じ方向に向けて付勢する付勢手段を備えることを特徴とする構造物の切断装置。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか1つの切断装置において、
上記第1把持部及び上記第2把持部を旋回可能に支持する旋回機構を備えることを特徴とする構造物の切断装置。
【請求項8】
構造物の切断装置を用いた切断方法において、
上記切断装置が、上記構造物の被切断物を把持する第1把持部及び第2把持部と、上記第1把持部及び上記第2把持部の少なくとも一方を、相対的に接近又は離間する開閉方向に移動させる駆動機構と、上記第1把持部及び上記第2把持部に並んで設けられ、上記被切断物を切断する切断部と、上記開閉方向に沿って上記切断部を移動させる送り機構とを備え、
上記第1把持部と上記第2把持部との間に上記被切断物が介在するように上記切断装置を移動させる第1ステップと、
上記第1把持部及び上記第2把持部を相対的に接近する閉じ方向に移動させて上記被切断物を把持させる第2ステップと、
上記被切断物を把持した時の上記第1把持部の位置を切断の開始位置とし、上記第2把持部の位置を切断の終了位置として設定する第3ステップと、
上記送り機構によって、上記切断部を上記開閉方向に沿って移動させながら上記切断の開始位置に送る第4ステップと、
上記送り機構によって、上記切断部を上記切断の開始位置から上記切断の終了位置まで移動させて、上記被切断物を切断する第5ステップと、
を備え、
上記第3ステップで、上記第1把持部及び上記第2把持部で上記被切断物を把持した時の該第1把持部及び該第2把持部の位置のうち、少なくとも一方の位置を検出して、該検出された位置に基づいて、上記第1把持部の位置を上記切断の開始位置とし、上記第2把持部の位置を上記切断の終了位置として設定する
ことを特徴とする構造物の切断装置を用いた切断方法。
【請求項9】
請求項に記載の構造物の切断装置を用いた切断方法において、
上記第4ステップと上記第5ステップとの間で、上記開閉方向に沿った上記切断部の移動方向と交差する方向で、且つ該切断部が上記被切断物に接近又は離間する方向に該切断部を変位させる第4―1ステップを備えることを特徴とする構造物の切断装置を用いた切断方法。
【請求項10】
請求項に記載の構造物の切断装置を用いた切断方法において、
上記第4ステップと上記第5ステップとの間で、上記開閉方向に沿った上記切断部の移動方向と直角に交差する方向を基軸として、該切断部の先端を、該基軸から離れるように且つ該切断部の移動方向に傾ける第4―2ステップを備えることを特徴とする構造物の切断装置を用いた切断方法。
【請求項11】
請求項ないし1のいずれか1つに記載の構造物の切断装置を用いた切断方法において、
上記第1ステップと上記第2ステップとの間で、上記第1把持部及び上記第2把持部を旋回させる第1-1ステップを備えることを特徴とする構造物の切断装置を用いた切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の鉄骨等の被切断物を切断する際に用いられる構造物の切断装置及びこの切断装置を用いた切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構造物の鉄骨等の被切断物を切断する際には、例えば、油圧ショベル等の建設機械に搭載した油圧カッターで切断する工法が知られている。しかしこの工法では、切断できる鉄骨等のサイズに限界があり、大規模な構造物に用いられる大型の鉄骨の場合等においては、完全に切断できていないことがある。このような場合には、油圧カッターで可能な限り切断する、或いは、作業員が手動でガス切断機により切断後に、油圧カッター等でねじ切っている。前者の場合は、十分な切り込みを入れることができず、その後鉄骨等をねじ切る際に油圧カッターに過大な負荷が掛かり、作業機器の寿命を縮めるおそれがある。後者の場合は、高所且つ不安定な場所で作業員が作業することとなるために、危険性が高いという問題を有していた。
【0003】
それらの問題を解決すべく、鉄骨等の被切断物を確実に切断でき、且つ安全な場所から遠隔操作により鉄骨を切断できるように工夫された切断装置が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、切断する鉄骨を支持する鉄骨クランプ(把持部)が軸方向に間隔を開けて設けられるとともに、複数の切断装置が設けられている。また、スライドフレームに切断装置(切断部)の移動手段が設けられている。そして、予め鉄骨の寸法等が入力された制御装置を用いて、切断装置を鉄骨の軸方向や横断方向や高さ方向に、遠隔操作によって動かして鉄骨を切断できるようにした構成が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、建設機械のブーム先端に保持装置(把持部)を設け、保持装置のアームに移動装置を添設して、この移動装置にトーチ(切断部)を有する切断装置を設け、保持装置で鉄骨を挟んだ状態で、切断装置で切断するようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-146571号公報
【文献】特開2005-002688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1又は2の切断装置によると、遠隔操作により鉄骨を切断できる構成とされているので、作業員が高所に上がる必要がなく、安全性の向上が期待できる。
【0008】
しかし、上記特許文献1のものでは、予め切断装置の動きを制御する制御装置に鉄骨の寸法等を入力する必要があり、また、複数の切断装置に個々に別々の動きをさせるので操作が困難であり、複雑な機構及び構造になっている。
【0009】
上記特許文献2のものでは、移動装置で切断装置を移動させる際に、まず、切断装置を鉄骨に大まかに接近した位置まで移動させ、その後、切断装置を鉄骨に更に接近した位置に移動させる二段階の操作を必要としており、切断装置の移動操作及びその制御が複雑である。
【0010】
本発明の目的は、切断対象となる被切断物を効率よく切断できる切断装置を複雑な構造を要せずに提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、この発明では、把持部で被切断物を把持することで被切断物の位置を把握し、それを切断部の位置付けに活用するようにした。
【0012】
具体的には、第1の発明では、構造物の被切断物を切断する際に用いられる構造物の切断装置を前提とする。そして、上記被切断物を把持する第1把持部及び第2把持部と、上記第1把持部及び上記第2把持部の少なくとも一方を、相対的に接近又は離間する開閉方向に移動させる駆動機構と、上記第1把持部及び上記第2把持部に並んで設けられ、上記被切断物を切断する切断部と、上記開閉方向に沿って上記切断部を移動させる送り機構とを備え、上記切断部を上記送り機構によって上記開閉方向に沿って移動させながら上記被切断物を切断し、上記第1把持部と上記第2把持部とで上記被切断物を把持した状態の上記第1把持部の位置を切断の開始位置とし、上記第2把持部の位置を切断の終了位置とするようにした。なお、本発明でいう「切断の開始位置」とは、切断作業を開始する位置、即ち切断部を稼働させる位置をいうものとする。例えば、「上記第1把持部の位置を切断の開始位置とし、上記第2把持部の位置を切断の終了位置とする」とは、第1把持部の位置と切断の開始位置、及び第2把持部の位置と切断の終了位置がそれぞれ完全に一致するもののみならず、第1把持部の少し手前から切断部が稼働するものや、第2把持部を少し過ぎたところで切断部の稼働が止まるものも含む。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、上記第1把持部及び上記第2把持部で上記被切断物を把持した状態の該第1把持部及び該第2把持部の少なくとも一方の位置の情報を検出する検出部を備え、上記検出部からの上記位置情報に基づいて、上記被切断物を把持した状態の上記第1把持部の位置を切断の開始位置とし、上記第2把持部の位置を切断の終了位置とするようにした。
【0014】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記開閉方向に沿った上記切断部の移動を規制するストッパを上記第1把持部及び上記第2把持部の少なくとも一方に設けるようにした。
【0015】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記開閉方向に沿った上記切断部の移動方向と交差する方向で、且つ該切断部が上記被切断物に接近又は離間する方向に該切断部を変位させる変位機構を備えるようにした。
【0016】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、上記開閉方向に沿った上記切断部の移動方向と直角に交差する方向を基軸として、該切断部の先端を該基軸から離れるように且つ該切断部の移動方向に傾ける傾動機構を備えるようにした。
【0017】
第6の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明において、上記駆動機構は、上記第1把持部を上記開閉方向に移動させる第1駆動機構と、上記第2把持部を上記開閉方向に移動させる第2駆動機構とを備えるようにした。
【0018】
第7の発明では、第1~第6のいずれか1つの発明において、上記第1把持部及び上記第2把持部で上記被切断物を把持した状態で、該第1把持部及び該第2把持部の少なくとも一方を、該第1把持部と該第2把持部とが相対的に接近する閉じ方向に向けて付勢する付勢手段を備えるようにした。
【0019】
第8の発明では、第1~第7のいずれか1つの発明において、上記第1把持部及び上記第2把持部を旋回可能に支持する旋回機構を備えるようにした。
【0020】
第9の発明では、上第1~第8のいずれか1つの発明において、上記第1把持部及び上記第2把持部を相対的に接近する閉じ方向に移動させて上記被切断物を把持する際に、該両把持部が移動する前の該両把持部間の上記開閉方向における中央位置と、把持した状態の該両把持部間の上記開閉方向における中央位置とが一致するように、該両把持部の移動を調整する位置調整機構を備えるようにした。
【0021】
第10の発明では、構造物の切断装置を用いた切断方法を前提とする。そして、上記切断装置が、上記構造物の被切断物を把持する第1把持部及び第2把持部と、上記第1把持部及び上記第2把持部の少なくとも一方を、相対的に接近又は離間する開閉方向に移動させる駆動機構と、上記第1把持部及び上記第2把持部に並んで設けられ、上記被切断物を切断する切断部と、上記開閉方向に沿って上記切断部を移動させる送り機構とを備え、上記第1把持部と上記第2把持部との間に上記被切断物が介在するように上記切断装置を移動させる第1ステップと、上記第1把持部及び上記第2把持部を相対的に接近する閉じ方向に移動させて上記被切断物を把持させる第2ステップと、上記被切断物を把持した時の上記第1把持部の位置を切断の開始位置とし、上記第2把持部の位置を切断の終了位置として設定する第3ステップと、上記送り機構によって、上記切断部を上記開閉方向に沿って移動させながら上記切断の開始位置に送る第4ステップと、上記送り機構によって、上記切断部を上記切断の開始位置から上記切断の終了位置まで移動させて、上記被切断物を切断する第5ステップと、を備えるようにした。
【0022】
第11の発明では、第10の発明において、上記第4ステップと上記第5ステップとの間で、上記開閉方向に沿った上記切断部の移動方向と交差する方向で、且つ該切断部が上記被切断物に接近又は離間する方向に該切断部を変位させる第4―1ステップを備えるようにした。
【0023】
第12の発明では、第10の発明において、上記第4ステップと上記第5ステップとの間で、上記開閉方向に沿った上記切断部の移動方向と直角に交差する方向を基軸として、該切断部の先端を、該基軸から離れるように且つ該切断部の移動方向に傾ける第4―2ステップを備えるようにした。
【0024】
第13の発明では、第10~12のいずれか1つの発明において、上記第3ステップで、上記第1把持部及び上記第2把持部で上記被切断物を把持した時の該第1把持部及び該第2把持部の位置のうち、少なくとも一方の位置を検出して、該検出された位置に基づいて、上記第1把持部の位置を上記切断の開始位置とし、上記第2把持部の位置を上記切断の終了位置として設定するようにした。
【0025】
第14の発明では、第10~12のいずれか1つの発明において、上記第3ステップで、上記切断部の上記開閉方向への移動を規制するストッパを上記第1把持部及び上記第2把持部の少なくとも一方に設け、該ストッパによって規制された位置に基づいて、上記第1把持部の位置を上記切断の開始位置とし、上記第2把持部の位置を上記切断の終了位置として設定するようにした。
【0026】
第15の発明では、第10~14のいずれか1つの発明において、上記第1ステップと上記第2ステップとの間で、上記第1把持部及び上記第2把持部を旋回させる第1-1ステップを備えるようにした。
【発明の効果】
【0027】
この第1の発明によると、第1把持部及び第2把持部に並んで設けられた切断部を両把持部の開閉方向に沿って移動させながら被切断物が切断され、被切断物を把持した状態の第1把持部及び第2把持部の位置を、それぞれ切断の開始位置及び切断の終了位置とするようになっているので、複雑な構造を要することなく、効率よく切断作業を行うことができる。
【0028】
第2の発明によると、検出部で、第1把持部及び第2把持部のうち少なくとも一方の位置を検出し、その位置情報に基づいて、第1把持部及び第2把持部の位置をそれぞれ切断の開始位置と切断の終了位置とするようになっているので、複雑な構造を要することなく、より効率よく切断作業を行うことができる。
【0029】
第3の発明によると、第1把持部及び第2把持部の少なくとも一方に設けたストッパにより、把持部の開閉方向に沿った切断部の移動が規制されるので、切断部の無駄な移動を規制することができ、より効率よく切断作業を行うことができる。
【0030】
第4の発明によると、被切断物との距離を調整することができるため、より効率よく切断作業を行うことができる。
【0031】
第5の発明によると、被切断物に対する切断部の傾きを調整することができるため、より効率よく切断作業を行うことができる。
【0032】
第6の発明によると、第1把持部と第2把持部とを各々個別に動かすことができるので、被切断物を効率よく確実に把持することができる。
【0033】
第7の発明によると、付勢手段によって、第1把持部と第2把持部とが相対的に離間する開き方向に動くことを防止できるので、より確実に被切断物を把持することができる。
【0034】
第8の発明によると、被切断物の向き、例えば鉄骨等の延びる方向等に合わせて第1把持部及び第2把持部を旋回させることができるので、様々な向きの被切断物に対応することができる。
【0035】
第9の発明によると、例えば、第1把持部と第2把持部とが被切断物に接触するタイミングが異なるような場合でも、移動前後の両把持部間の中央位置がずれないように第1把持部と第2把持部の移動を調整することができるので、切断装置に偏った負荷が掛かることを防止でき、両把持部で安定して被切断物を把持できる。
【0036】
第10の発明によると、被切断物を把持した時の第1及び第2把持部の位置によって切断の開始位置及び切断の終了位置が設定されて、設定された切断の開始位置から切断の終了位置まで、両把持部の開閉方向に沿って切断部を移動させながら被切断物が切断されるので、複雑な構造を要することなく、効率よく切断作業を行うことができる。
【0037】
第11の発明によると、被切断物との距離を調整することができるため、より効率よく切断作業を行うことができる。
【0038】
第12の発明によると、被切断物に対する切断部の傾きを調整することができるため、より効率よく切断作業を行うことができる。
【0039】
第13の発明によると、第1把持部及び第2把持部のうち少なくとも一方の位置を検出し、その位置情報に基づいて、第1把持部及び第2把持部の位置がそれぞれ切断の開始位置と切断の終了位置として設定されるので、より効率よく切断作業を行うことができる。
【0040】
第14の発明によると、第1把持部及び第2把持部の少なくとも一方に設けたストッパにより、把持部の開閉方向に沿った切断部の移動が規制されるので、切断部の無駄な移動を規制することができ、より効率よく切断作業を行うことができる。
【0041】
第15の発明によると、被切断物の向き、例えば鉄骨等の延びる方向等に合わせて第1把持部と第2把持部を旋回させることができるので、様々な向きの被切断物に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る切断装置が取り付けられた解体機を示す概略側面図である。
図2図2は、実施形態1に係る切断装置の要部を示す正面図である。
図3図3は、実施形態1に係る切断装置の要部を示す側面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線断面図である。
図5図5は、実施形態1に係る切断装置の一部を示す斜視図である。
図6図6は、実施形態1に係る切断装置の他の部分を示す斜視図である。
図7図7は、実施形態1に係る切断装置で被切断物を切断する際の状態を説明するための斜視図である。
図8図8は、実施形態1に係る切断装置の把持部の拡大斜視図である。
図9図9は、図8のIX―IX線断面図である。
図10図10は、実施形態1に係る切断装置の切断部の斜視図である。
図11図11は、実施形態2に係る切断装置の切断部の部分拡大斜視図である。
図12図12は、実施形態3に係る切断装置の切断部の部分拡大斜視図である。
図13図13は、実施形態4に係る切断装置の把持部及び切断部を示す正面図である。
図14図14は、実施形態4に係る切断装置の把持部及び切断部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0044】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る解体機1は、例えば、図1に示すように、下部走行体2と、この下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備える。この上部旋回体3の上に運転室4や、機械室5等が搭載されている。ブーム6が、上部旋回体3の前部に起伏可能に装着されている。このブーム6の先端部に破砕装置7が、着脱可能に装着されている。なお、本発明では、特に言及しない限り、解体機1の運転室4にオペレータが着座して前を向いた場合の前後方向、上下方向及び左右方向を、そのまま前後方向、上下方向及び左右方向と称す。
【0045】
ブーム6は、例えば、基部が上部旋回体3の前部に起伏可能に装着される第1ブーム6aと先端部に破砕装置7が着脱可能に装着される第2ブーム6bと、第1ブーム6aと第2ブーム6bとを起伏可能に連結する連結部材6cとを備える。第1ブーム6a及び第2ブーム6bはそれぞれ、第1ブームシリンダ8a、第2ブームシリンダ8bの伸縮動作によって起伏し、破砕装置7は、作動シリンダ8cの伸縮動作によって水平軸回りに上下方向に回動する。
【0046】
破砕装置7は、例えば、第2ブーム6bの先端部に着脱可能に装着される破砕本体部9と、この破砕本体部9に図示しない回転機構を介して連結された油圧シリンダ10,10と、軸J1回りに回転可能に支持された一対の破砕爪11とを備えている。破砕爪11は、油圧シリンダ10の伸縮動作によってそれぞれの基端部が接近又は離間することにより、先端部が開閉するようになっている。この破砕爪11で、被切断物Tの鉄骨等を挟む、或いは挟んだ状態でねじ切る等して破砕するようになっている。
【0047】
そして、構造物の鉄骨等の被切断物T(図7参照)を切断する際に用いられる切断装置20は、その基端部が第2ブーム6bに起伏可能に接続されたアーム12の先端部に取り付けられている。なお、実施形態1では、被切断物Tの例として、ウェブ部とフランジ部を備えたH鋼を挙げて説明するが、被切断物TはH鋼に限られるものではなく他の鋼材でもよいし、鉄骨に限られるものでもない。
【0048】
アーム12は、例えば、テレスコピック構造の4本の筒状部材12a~12dを備え、先端側から12a~12dの順に筒の径が太くなっている。図示を省略する駆動手段によって、これらの筒状部材12a~12dが順次連接した筒内に収納されて短くなり、順次出てきて長くなるようになっている。後端側の一番太い筒状部材12dの後端部が第2ブーム6bの下面側にピン等(図示省略)で回転可能に接続されている。
【0049】
筒状部材12dの後端部には、アームシリンダ14のロッド14aが接続されている。アームシリンダ14はその後端部が第2ブーム6bに回転可能に接続されている。
この構成とすることで、アームシリンダ14の伸縮により、アーム12が起伏するようになっている。
【0050】
筒状部材12dの下面側に設けられた符号17は、詳細を後述する切断装置20を収納状態とする際に、切断装置20の下端に設けられた係合部20aを引っかけるフック部である。
【0051】
図1に示すように、先端側の一番細い筒状部材12aの先端には、吊り下げ支持部13が筒状部材12aに対して略直角に下方に延びて一体に接続されている。吊り下げ支持部13は、その上端が筒状部材12aに接続され、その下端に吊り下げ接続部13aが設けられている。
【0052】
吊り下げ支持部13の吊り下げ接続部13aに、方向変換機構16を介して、切断装置20が吊り下げられている。
【0053】
図2図3、及び図7に示すように、本体部21は、縦長形状のプレートからなる吊り下げプレート22と、この吊り下げプレート22の側面に、吊り下げプレート22に対して略直角に交差して左右に延びるように設けられた板状の本体プレート23と、この本体プレート23に、旋回機構26を介して旋回可能に接続された断面略コ字状の支持ブラケット24とを有する。なお、図7においては、構成を分かりやすくするために、支持ブラケット24の一部を切り欠いた状態で示す。
【0054】
図1図3図5及び図7に示すように、吊り下げプレート22の上端部は、略L字状に湾曲して形成され、この上端部に吊り下げ孔22aが設けられている。この吊り下げ孔22aと方向変換機構16とにピン等を挿入して、吊り下げプレート22(切断装置20)が方向変換機構16の下部に連結される。また、方向変換機構16の上部は、吊り下げ接続部13aに図示しないピン等で、吊り下げ支持部13に対して水平軸回りに回転可能に接続されている。
【0055】
図3及び図7に示すように、本体プレート23の後面側(支持ブラケット24が取り付けられた面の反対側の面)に、旋回機構26の旋回モータ26aが取り付けられている。この旋回モータ26aを駆動することによって、支持ブラケット24が所定角度回転するようになっている。詳細は後述するが、支持ブラケット24が所定角度回転することによって、把持部40による被切断物Tに対する把持方向を変更できるようになっている。
【0056】
図5に示すように、支持ブラケット24の長手方向(図5の上下方向)両端部に、第1及び第2ガイド片25a、25bが溶着されて一体に設けられている。
【0057】
図4及び図6に示すように、断面略コ字状の支持ブラケット24の内側を、第1及び第2ガイドシャフト41a、41bが、それぞれ上下方向に延びて設けられている。第1ガイドシャフト41aが第1ガイド片25aに設けられた孔を、第2ガイドシャフト41bが第2ガイド片25bに設けられた孔を貫通して、支持ブラケット24の上下方向の長さよりも長く延びて設けられている。
【0058】
第1及び第2ガイドシャフト41a、41bの中間部分にはそれぞれ、第1ブロック42a及び第2ブロック42bが両ガイドシャフト41a、41bの長手方向(上下方向)にスライド可能に設けられている。この第1ブロック42aと第2ブロック42bとは、第1及び第2ガイドシャフト41a、41bの軸方向にずれて、且つ高さを異にして位置している。そして、第1及び第2ブロック42a、42bは一体に連結して設けられている。第1ガイド片25aと第1ブロック42aとの間、及び第2ガイド片25bと第2ブロック42bとの間に、第1スプリング43a及び第2スプリング43bが、それぞれ第1及び第2ガイドシャフト41a、41bに外挿されて設けられている。詳細は後述するが、この第1及び第2スプリング43a、43bで、第1及び第2把持部50a、50b間の中央位置を調整する位置調整機構43を構成している。両ガイドシャフト41a、41bの両端は、取付プレート44に取り付けられている。
【0059】
第1及び第2ガイドシャフト41a、41bと平行に延びるように、後述する把持部40を動かすための第1油圧シリンダ45a及び第2油圧シリンダ45bが、両ガイドシャフト41a及び41bの前方に並設されている。第1油圧シリンダ45a及び第2油圧シリンダ45bはそれぞれ、第1ブロック42a及び第2ブロック42bに接続されている。具体的には、第1及び第2ブロック42a、42bにそれぞれ、第1及び第2油圧シリンダ45a、45bの方向(前方)に向けて一対の第1ブラケット47a及び第2ブラケット47bが突出して設けられている。そして、これらの一対のブラケット47a、47bに、第1油圧シリンダ45aの上端部及び第2油圧シリンダ45bの下端部にそれぞれ設けられた第1接続部48a及び第2接続部48bが挟まれて、ピン等を挿通することで回転可能に接続されている。
【0060】
第1油圧シリンダ45aの第1ロッド46aの長手方向外側端部に、把持部40を構成する第1把持部50aが連結されている。また、第2油圧シリンダ45bの第2ロッド46bの長手方向外側端部に、把持部40を構成する第2把持部50bが連結されている。第1及び第2把持部50a、50bはそれぞれ、被切断物Tを把持する際に被切断物Tに当接するように、お互いが平行に対面するように延びて設けられた第1及び第2把持プレート51a、51bを有する。
【0061】
図6図8に示すように、第1及び第2把持プレート51a、51bはそれぞれ、第1及び第2ベースプレート58a、58bを備える。第1及び第2ベースプレート58a、58bの長手方向の中間部分にはそれぞれ、第1及び第2挿入止め壁57a、57bが、第1及び第2ベースプレート58a、58bから立ち上がるように設けられている。被切断物Tを把持部40で把持する際に、被切断物Tが、この第1及び第2挿入止め壁57a、57bに当接することで、第1及び第2油圧シリンダ45a、45bや第1及び第2ロッド46a、46bに接触することを未然に防止している。
【0062】
第1及び第2ベースプレート58a、58bの後端部(図7の紙面における奥側)にそれぞれ、第1及び第2ガイドシャフト41a、41bがスライド可能に挿入される第1孔55a及び第2孔55bが設けられている。
【0063】
第1挿入止め壁57aと第1孔55aとの間、及び第2挿入止め壁57bと第2孔55bとの間にそれぞれ、第1ロッド46aと連結される第1突出部56a、及び第2ロッド46bと連結される第2突出部56bが、第1及び第2ベースプレート58a、58bから立ち上がるように設けられている。
【0064】
また、図8及び図9に示すように、第1及び第2把持プレート51a、51bにはそれぞれ、第1及び第2把持補強部材52a、52bが、被切断物Tに当接する側に設けられている。第1及び第2把持補強部材52a、52bは、例えば耐熱性の樹脂等で形成されている。なお、図8及び図9においては、第1把持部50aのみを図示して説明するが、第2把持部50bも同様の構成となっている。
【0065】
第1及び第2把持補強部材52a、52bは、付勢手段としてのバネ53を介して第1及び第2ベースプレート58a、58bに取り付けられることによって、相対的に接近する閉じ方向に付勢される。このことによって、第1及び第2把持部50a、50bを構成する第1及び第2把持補強部材52a、52bが相対的に離間する開き方向に動くことを防止できるので、より確実に且つ安定して被切断物Tを把持することができる。また、第1及び第2把持補強部材52a、52bの表面にはそれぞれ、微細な凹凸(図示省略)が設けられ、把持した被切断物Tに対して滑りにくくなっている。符号54は、第1及び第2把持補強部材52a、52bをそれぞれ、第1及び第2ベースプレート58a、58bに連結している連結ピンである。
【0066】
図7に示すように、第1油圧シリンダ45aの第1ロッド46aの伸縮により第1把持部50aが開閉方向(上下方向)に移動する際には、第1ガイドシャフト41aに案内されて移動し、第2油圧シリンダ45bの第2ロッド46bの伸縮により第2把持部50bが開閉方向に移動する際には、第2ガイドシャフト41bに案内されて移動するようになっている。
【0067】
第1及び第2把持部50a、50bを移動させる駆動機構49として、第1油圧シリンダ45a及び第1ロッド46aで第1把持部50aの第1駆動機構49aを構成し、第2油圧シリンダ45b及び第2ロッド46bで第2把持部50bの第2駆動機構49bを構成している。本実施形態では、第1把持部50aを移動させる第1駆動機構49aと、第2把持部50bを移動させる第2駆動機構49bとを備えることで、第1及び第2把持部50a、50bを個別に動かすことができるので、被切断物Tを効率よく確実に把持することができる。なお、別々に移動させる必要がない場合には、1つの駆動機構49で第1及び第2把持部50a、50bを移動させるようにしてもよい。
【0068】
第1及び第2油圧シリンダ45a、45bの第1及び第2ロッド46a、46bが伸びて第1及び第2把持部50a、50bがそれぞれ開き方向に移動すると、第1及び第2把持部50a、50bが取付プレート44に当接するようになっている。このことによって第1及び第2把持部50a、50bの開き方向への移動が規制されている。なお、図7では、取付プレート44の形状を簡略化して示す。
【0069】
図2図6及び図7に示すように、検出部70は、第1及び第2把持部50a、50bによって被切断物Tを把持した状態における、第1及び第2把持部50a、50bの位置に関する情報を検出するためのものであって、第1油圧シリンダ45aの上端部及び第2油圧シリンダ45bの下端部にそれぞれ設けられた第1接続部48a及び第2接続部48bにそれぞれ設けられている。
【0070】
検出部70は、第1接続部48a及び第2接続部48b、即ち第1及び第2ロッド46a、46bが出入りする部分の近傍に取り付けられた検出本体部71a、71bと、この検出本体部71a、71bそれぞれを挿通するように設けられ、長手方向外側端部が第1及び第2油圧シリンダ45a、45bの第1及び第2ロッド46a、46bの長手方向外側端部に固定された長軸状のストロークガイド72a、72bとを有する。そして、ストロークガイド72a、72bが検出本体部71a、71bを通過した時の通過量を検出できるようになっている。
【0071】
検出部70で位置を検出する状態について説明する。第1及び第2把持部50a、50bが相対的に最も離れた状態である取付プレート44にそれぞれ当接した位置から、後述する送り機構65によってそれぞれ閉じ方向に移動する。そして、第1及び第2把持部50a、50bで被切断物Tを把持する状態となった時に、検出部70で、第1及び第2把持部50a、50bの位置を検出する。具体的には、第1及び第2把持部50a、50bの移動距離に相当する量ほど、第1及び第2ロッド46a、46bがそれぞれ第1及び第2油圧シリンダ45a、45b内に入り込む。それとともに、第1及び第2ロッド46a、46bにそれぞれ固定されたストロークガイド72a、72bが、検出本体部71a、71b内を通過する。この時のストロークガイド72a、72bの通過量に基づいて、第1及び第2ロッド46a、46bの第1及び第2油圧シリンダ45a、45bに対する出入量を検出する。この出入量を、第1及び第2把持部50a、50bの移動距離に換算して、第1及び第2把持部50a、50bの位置、及び開閉方向における被切断物Tの寸法を算出する。
【0072】
このように、本実施形態では、把持した状態の第1及び第2把持部50a、50bの位置を直接検出するのではなく、第1及び第2ロッド46a、46bが第1及び第2油圧シリンダ45a、45b内に入り込んだ量から、第1及び第2把持部50a、50bの位置を間接的に検出している。なお、直接、第1及び第2把持部50a、50bの移動量を検出するようにしてもよい。
【0073】
なお、本実施形態1では、検出部70を第1及び第2把持部50a、50bにそれぞれ設けたが、一方だけに設けて、他方の把持部の位置を推測して、切断の開始位置と終了位置とを設定できるようにしてもよい。また、第1及び第2把持部50a、50bにそれぞれ近接センサ等を設けて切断部60が通り過ぎた時を検出するようにして、切断の開始位置と終了位置とを設定するようにしてもよい。
【0074】
図2図4及び図10に示すように、被切断物Tを切断する切断部60が、把持部40に並んで設けられている。本実施形態においては、切断部60として、例えばガスを用いて火を噴出して溶断するトーチを採用した例を挙げて説明する。
【0075】
切断部60は、被切断物Tに相対する一面(前面)が開放した縦長直方体形状のボックス61の中を上下にスライド可能に設けられている。ボックス61はその長手方向両端部が取付プレート44に取り付けられている。なお、図10においては、切断部60等の構成を分かりやすくするためにボックス61の一部を切り欠いた状態で示す。このボックス61の中に、2本のガイドレール62がボックス61の長手方向(把持部40の開閉方向)に延びて設けられている。
【0076】
切断部60は、この2本のガイドレール62に跨がって、把持部40の開閉方向と同じ方向(上下方向)に移動可能に取り付けられたトーチ本体部63を備える。
【0077】
また、切断部60は、火が噴出する火口を有するトーチ部64を備える。トーチ部64は、把持部40の開閉方向と直角に交差する前方に火口を向けて、トーチ本体部63に接続されている。トーチ本体部63をガイドレール62の長手方向に移動させる送り機構(アクチュエータ)65が、トーチ本体部63の内部に設けられている。
【0078】
次に、切断装置20を作動させる状態について、説明する。
【0079】
図1に示すように、解体機1の破砕装置7を後方に回動させて、切断装置20の作業に邪魔にならないような位置に回避させる。なお、作業現場や被切断物Tの構造等によっては、破砕装置7を後方に回動させなくてもよい場合もあり得る。
【0080】
次に、準備ステップとして、切断装置20を、収納状態(図示省略)からブームに吊り下がった状態(図1参照)にする。
【0081】
そして、第1ステップとして、運転室4内からオペレータが操作して切断装置20を被切断物T(図7の二点鎖線参照)に接近させる。この時、切断装置20の前面が被切断物Tに相対するように動かす。その後、第1及び第2把持部50a、50bとの間に被切断物Tが介在するように移動させる。
【0082】
被切断物Tに対する切断装置20の位置を確認できたら、第2ステップとして、第1及び第2駆動機構49a、49bを駆動する。即ち、第1及び第2ロッド46a、46bが第1及び第2油圧シリンダ45a、45b内に収容されるように動かして、第1及び第2把持部50a、50bをそれぞれ閉じ方向に移動させる。この動きによって、第1及び第2把持部50a、50bが被切断物Tに当接し、被切断物Tを把持した状態となる。
【0083】
この時、第1及び第2把持部50a、50bは全く同時のタイミングではなく、いずれか一方が被切断物Tに先に当接し、更に他方が被切断物Tに当接する場合がほとんどである。その場合であっても、位置調整機構43によって、切断装置20に掛かる負荷が吸収されている。具体的には、例えば、第1把持部50aが先に被切断物Tに当接した場合であっても、第1把持部50aに対して閉じ方向に移動させようとする力が働き続ける。そうすると、第1ブロック42aに押されて第1スプリング43aが縮むとともに第2スプリング43bが伸びるが、両スプリング43a、43bは元に戻ろうとする。この元に戻ろうとする力によって、第1把持部50aに対して開き方向に押し戻そうとする力が働く。即ち、第1及び第2把持部50a、50bが支持ブラケット24の長手方向中央位置から同じ距離に位置するように、位置調整される。このように、位置調整機構43の第1及び第2スプリング43a、43bが同じ張力を保とうとする力によって、第1及び第2把持部50a、50bが移動する前の両把持部間の中央位置と、把持した際の両把持部間の中央位置とが一致するように、両把持部の移動が調整されている。そうすることで、先に当接した方の把持部40に偏った負荷が掛かることが防止され、把持部40の破損や切断装置20の破損を防止することができる。
【0084】
次に、第3ステップとして、第1及び第2把持部50a、50bが被切断物Tを把持した時の検出部70からの検出値により、第1及び第2把持部50a、50bの位置、即ち、切断の開始位置及び終了位置が設定される。つまり、検出部70が、第1及び第2把持部50a、50bの位置を、それぞれ切断の開始位置及び終了位置とする設定手段となっている。
【0085】
この時、位置調整機構43によって、第1及び第2ブロック42a、42bが支持ブラケット24の長手方向中央位置になるように付勢されるので、両ブロック42a、42bに接続された第1及び第2接続部48a、48bにそれぞれ設けられた検出部70も、同様に位置調整される。その結果、第1及び第2ロッド46a、46bの第1及び第2油圧シリンダ45a、45bに対する出入量が均等になるように付勢されていることになる。よって、第1及び第2ロッド46a、46bの出入量を正確に検出することができ、第1及び第2把持部50a、50bで把持した状態の両把持部の位置情報を正確に検出することができる。
【0086】
次に、第4ステップとして、第3ステップで得られた第1把持部50aの位置情報に基づき、送り機構65によって、トーチ部64(切断部60)を把持部40の開閉方向に沿って移動させて切断の開始位置に位置付ける。
【0087】
そして、第5ステップとして、トーチ部64(切断部60)を稼働させて、送り機構65によって、トーチ部64(切断部60)を切断の開始位置から切断の終了位置まで移動させながら、上記被切断物を切断する。この時、切断の開始位置が、切断作業の開始位置、即ち切断部60を稼働させる位置となるので、この切断の開始位置より、トーチ部64の火口から火を噴出させながら、切断の終了位置に向かってトーチ部64を把持部40の開閉方向に沿ってスライドさせて、被切断物Tを溶断する。そして、切断の終了位置が、切断作業の終了位置、即ち切断部60の稼働を止める位置となるので、第2把持部50bの位置情報に基づきトーチ部64が切断の終了位置まで移動すると、トーチ部64の移動及び火の噴出が止まって溶断を終了する。
【0088】
なお、切断をスムーズに開始するために、例えば、第1把持部50aの位置よりも少し手前の位置で切断部60を稼働させて(トーチ部64の火を予め噴出させて)、それから開閉方向に送る場合もあり得る。また、切断を完全に完了するために、第2把持部50bの位置よりも少し進んだ位置まで切断部60を稼働させる(トーチ部64の火の噴出を維持させる)場合もあり得る。本発明には、このような位置も、切断の開始位置及び切断の終了位置として含まれる。
【0089】
また、被切断物Tを溶断している時に、被切断物T自体の荷重が切断装置20に掛かる場合がある。また、例えば被切断物Tの残留歪み等によって、溶断した時に跳ね返りや振動が生じる場合がある。これらによって把持部40が振れたりした場合であっても、第1及び第2スプリング43a、43bでその振動等を吸収できるので、把持の安定性を高めたり、切断装置20の破損を防止することができる。即ち、位置調整機構43を構成する第1スプリング43a及び第2スプリング43bによって、第1及び第2ブロック42a、42bが支持ブラケット24の長手方向中央位置になるように付勢されているので、振動等が発生しても、この振動等が第1スプリング43a及び第2スプリング43bによって吸収され、振動等による切断装置20への影響を最小限に抑制することができる。
【0090】
なお、他の検出部の例として、例えば、第1及び第2油圧シリンダ45a、45bの油圧量で第1及び第2ロッド46a、46bの移動量を算出することも可能なので、直接第1及び第2把持部50a、50bの移動位置を検出しなくても、第1及び第2把持部50a、50bの移動量及び開閉方向における被切断物Tの寸法を検出することも可能である。この検出した情報から切断の開始位置及び終了位置を把握して、切断部60を第1把持部50aの位置、即ち切断の開始位置まで移動させるようにしてもよい。
【0091】
最後に、溶断が完了すると、第6ステップとして、第1及び第2駆動機構49a及び49bによって第1及び第2把持部50a、50bを開き方向に移動させて、被切断物Tの把持状態を解除する。
【0092】
その後、切断装置20を被切断物Tから離して次の作業に移る。この時に、更に他の箇所を溶断する必要があれば、その部分に切断装置20を移動させて、上記と同様の工程により、被切断物Tの他の箇所も溶断する。
【0093】
また、被切断物Tの形状によっては、第1ステップの後に第1-1ステップを入れて、旋回機構26で前後方向に延びる水平軸回り(図7の矢印X方向)に把持部40を旋回させて被切断物Tを把持し、切断することも可能である。具体的には、旋回機構26に取り付けられた旋回モータ26aを駆動して支持ブラケット24を旋回させることで、第1及び第2把持部50a、50b及び切断部60を旋回させる。例えば、上下に延びる柱状の鉄骨の場合には、旋回機構26で把持部40及び切断部60を90度旋回させ、左右から鉄骨を把持して、把持部40の開閉方向である左右方向に切断部60を動かすことで効率よく切断作業を行うことができる。
【0094】
このように、本実施形態では、第1把持部50aで被切断物Tを把持した時の第1把持部50aの位置を切断の開始位置とし、第2把持部50bで被切断物Tを把持した時の第2把持部50bの位置を切断の終了位置として、切断部60を把持部40の開閉方向に沿って移動させながら被切断物Tが切断される。即ち、被切断物Tを一対の把持部50a、50bで把持して、その一対の把持部50a、50bの位置情報に基づいて1つの切断部60を位置付け、その切断部60を両把持部50a、50bの開閉方向に沿って動かして切断できるので、複雑な構造を要することなく、効率よく切断作業を行うことができる。また、シンプルな構造であるため操作しやすく、衝撃や振動に強く耐久性に優れ、強い振動や衝撃が発生しやすい作業現場に好適である。
【0095】
(実施形態2)
実施形態2では、実施形態1と異なる部分のみ説明する。実施形態2では、図11に二点鎖線で示すように、トーチ部64が、ガイドレール62の長手方向に沿ってスライドするとともに、この方向と直角に交差する方向(前後方向)、即ちトーチ部64の火口から火が噴出する方向にトーチ部64の火口の位置を直線的に移動させる変位機構84を設けて、被切断物Tに対する火口の位置を調整できるようになっている。
【0096】
切断方法としては、第4ステップと第5ステップの間に、第4-1ステップとして、トーチ部64の火口の位置を前後方向に直線的に移動させて、トーチ部64の火口と被切断物Tとの距離を調整する。
【0097】
例えば、H鋼を溶断する場合において、H鋼のフランジ部を溶断した後でウェブ部を溶断する時に、フランジ部に対する距離で位置調整されていた切断部60を、ウェブ部に接近させるように前方に動かし、火口をできるだけウェブ部に近づけて溶断する。そうすることで、H鋼を効率よく溶断することができる。
【0098】
この構成とすることによって、被切断物Tに対して切断部60を接近又は離間させることができるので、切断部60に相対する被切断物Tの面が平坦でない場合であっても効率よく溶断することができる。
【0099】
(実施形態3)
実施形態3では、実施形態1と異なる部分のみ説明する。実施形態3では、図12に二点鎖線で示すように、実施形態2のトーチ部64の動きに、更に別の動きを加えたものであり、送り機構65による切断部60の移動方向と直角に交差する方向(前後方向)を基軸として、切断部60の先端が基軸から離れるように傾ける傾動機構85を設けて、トーチ部64の火口を傾ける機能を持たせたものである。具体的には、トーチ部64を回転可能にトーチ本体部63に取り付けて、火口の向きを切断部60の移動方向に傾けることができるようにした。即ち、トーチ部64は、基軸からその先端が離れるよう上下に傾けることができるように、トーチ本体部63に軸支されている。
【0100】
切断方法としては、第4ステップと第5ステップの間で第4-1ステップの後に、第4-2ステップとして、トーチ部64の先端(火口)を縦方向に振るように傾ける。
【0101】
例えば、H鋼を溶断する場合において、H鋼のフランジ部とウェブ部との接合部分を溶断する時にウェブ部にトーチ部64の先端が相対していた場合、トーチ部64の先端が接合部分の方を向くように上に傾けて溶断する。このことによって、H鋼のフランジ部とウェブ部の接合部分を効率よく切断することができる。
【0102】
なお、実施形態3では、実施形態2に更に別の動きを加える構成を基に説明したが、実施形態2ではなく、実施形態1に加える構成としてもよい。
【0103】
(実施形態4)
図13及び図14に基づいて、実施形態4を説明する。実施形態4では、実施形態1と異なる部分のみ説明する。実施形態4が、実施形態1と異なるのは、第1及び第2把持部50a、50bで被切断物Tを把持した際の第1及び第2把持部50a、50bの位置を検出部70で検出する代わりに、第1及び第2把持部50a、50bの間において切断部60が移動するように、切断部60の移動範囲を規制するストッパ90a、90bを設けたものである。
【0104】
実施形態1におけるボックス61は設けず、上方に位置するストッパ90aが第1把持部50aに、そして下方に位置するストッパ90bが第2把持部50bに、それぞれ固定されている。ストッパ90aは、2本のガイドレール62の上端部に固定されている。ストッパ90bには、2本のガイドレール62が上下方向に摺動可能に挿通される摺動孔91が2つ設けられている。2本のガイドレール62の下端部は摺動孔91を通って、抜け止め片92に固定されている。この抜け止め片92によって摺動孔91からガイドレール62が抜けることを防ぐようになっている。トーチ本体部63は、実施形態1と同様に、第1及び第2把持部50a、50bの開閉方向に移動可能に、2本のガイドレール62に跨がって設けられている。
【0105】
また、ストッパ90bが第2把持部50bの移動に伴って移動する際に、2本のガイドレール62と第2把持部50bとの間に位置する第1ガイドシャフト41a及び第1油圧シリンダ45aと干渉しないように、第1ガイドシャフト41aが遊嵌する遊嵌孔93、及び油圧シリンダ45aを逃がす切欠き94がストッパ90bに設けられている。
【0106】
これらの構成とすることによって、第1及び第2把持部50a、50bが相対的に接近する閉じ方向に移動すると、ストッパ90a、90bもその動きに伴って移動する。
【0107】
具体的には、図14に示すように、第1把持部50aに固定されたストッパ90aの下降に伴って、ストッパ90aに上端が固定されたガイドレール62がストッパ90bの摺動孔91内を通って下降する。それとともに、第2把持部50bに固定されたストッパ90bは、ガイドレール62に案内されながら上昇する。即ち、ストッパ90bよりも下側に、ガイドレール62が飛び出した状態となる。このようにして、第1及び第2把持部50a、50bの開閉方向における間隔が狭くなると同様に、ストッパ90a、90bの開閉方向における間隔も狭くなる。このストッパ90a、90b間に切断部60が位置しているので、切断部60の移動範囲は、このストッパ90a、90b間、即ち第1及び第2把持部50a、50b間に規制される。即ち、第1及び第2把持部50a、50b間に被切断物Tが位置しているので、切断部60の無駄な動きを抑制することができる。
【0108】
なお、本実施形態では、ストッパ90a、90bを、第1及び第2把持部50a、50bそれぞれに設けたが、いずれか一方だけに設けてもよい。この場合、一方のストッパの位置を切断の開始位置或いは切断の終了位置として、他方の位置を推測するようにすればよい。
【0109】
この構成によって、検出部70を設けなくても、構造的に切断の開始位置と終了位置とを把握することができる。即ち、ストッパ90a、90bが、第1及び第2把持部50a、50bの位置を切断の開始位置及び終了位置とする設定手段となっている。
【0110】
なお、実施形態4では、検出部70を設けることを妨げるものではなく、設けなくても切断の開始位置と終了位置とを把握できることを主旨とするものであって、検出部70を設けて併用するようにしてもよい。
【0111】
(他の実施形態)
上記実施形態では、把持部40の移動距離を検出して、切断部60を移動させる位置、即ち切断の開始位置と切断の終了位置を設定する構成としたが、切断の開始位置と切断の終了位置を設定することができればこの方法に限られることなく、他の方法でもよい。例えば、ガイドレール62に、被切断物Tを把持した状態の第1把持部と第2把持部に対応する位置に切断部60が移動した場合に、切断を開始又は終了する動作を行うスイッチ等を設けてもよい。
【0112】
また、検出部70を設けなくてもよい構成例として実施形態4を示したが、この構成は一例であって他の構成としてもよい。例えば、切断部60が、第1把持部50a及び第2把持部50bと一緒に開閉方向に移動するようにしておき、この第1及び第2把持部50a、50b間では自由に移動できるが、第1及び第2把持部50a、50b間を外れた位置には移動できないような規制手段を設けるようにしてもよい。
【0113】
また、被切断物Tの形状や位置等に応じて、アーム12を左右方向(図1において、紙面の表裏方向)にスイングさせて、被切断物Tを把持しやすい位置に切断装置20を移動させてから、切断装置20を作動させるようにしてもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、切断装置20を解体機1に搭載した例を挙げて説明したが、解体機に限られるものではなく、例えば、クレーン等に搭載してもよいし、切断装置20をブーム6の先端に直接取り付けてもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、運転室4内のオペレータにより切断装置20の操作を行うこととしたが、外部から遠隔操作してもよい。
【0116】
また、切断部60として、ガストーチによる溶断を挙げたが、これに限られるものではなく、プラズマやレーザでもよい。また、溶断に限られるものではなく、高速カッター等の切断機器を用いてもよい。
【符号の説明】
【0117】
T 被切断物
1 解体機
20 切断装置
26 旋回機構
40 把持部
50a 第1把持部
50b 第2把持部
43 位置調整機構
49 駆動機構
49a 第1駆動機構
49b 第2駆動機構
53 バネ(付勢手段)
60 切断部
65 送り機構
70 検出部
90a、90b ストッパ
84 変位機構
85 傾動機構
図1
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