(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】洗浄便座装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
E03D9/08 D
(21)【出願番号】P 2017200239
(22)【出願日】2017-10-16
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂野 優
(72)【発明者】
【氏名】梶野 真一
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-110459(JP,A)
【文献】特開2010-189849(JP,A)
【文献】特開2000-308861(JP,A)
【文献】特開2002-194797(JP,A)
【文献】特開2002-213004(JP,A)
【文献】実開昭61-006582(JP,U)
【文献】特開2002-285617(JP,A)
【文献】特開2012-012873(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0047382(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0085902(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面に親水性層を有し、使用者の局部に向けて洗浄水を吐出する局部洗浄を行う局部洗浄ノズルと、
洗浄水が前記局部洗浄ノズルの外表面の少なくとも上部を伝うように、前記局部洗浄ノズルに向けて洗浄水を吐出するノズル洗浄を行うノズル洗浄器と、
を備え
、
前記局部洗浄ノズルを収容し、収容位置と該収容位置よりも前方の洗浄位置との間で前記局部洗浄ノズルの進退移動が可能となるように前壁に開口が設けられたノズルカバーと、
前記ノズル洗浄器として、前記ノズルカバーの前壁における前記開口の上方に前記進退移動の方向に沿った向きで吐出口が設けられる第1ノズル洗浄器と、
前記局部洗浄ノズルが前記洗浄位置を含む前記ノズルカバーから進出した位置にある状態で前記吐出口から洗浄水を吐出するように前記第1ノズル洗浄器への水供給を制御する制御装置と、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記局部洗浄ノズルによる局部洗浄の終了後に、前記吐出口から洗浄水を吐出するように前記第1ノズル洗浄器への水供給を制御する
洗浄便座装置。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄便座装置であって、
前記ノズル洗浄器は、洗浄水を吐出する吐出口の向きが、鉛直下向きとは異なる向きとなるように設けられる
洗浄便座装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の洗浄便座装置であって、
前記ノズル洗浄器として、前記ノズルカバー内において、前記収容位置にある前記局部洗浄ノズルの外表面の上部の側方となる位置に吐出口が設けられる第2ノズル洗浄器
を備え、
前記制御装置は、前記局部洗浄ノズルが前記収容位置にある状態で前記吐出口から洗浄水を吐出するように前記第2ノズル洗浄器への水供給を制御す
る
洗浄便座装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の洗浄便座装置であって、
前記ノズルカバーは、少なくとも2つの前記局部洗浄ノズルを横並びに収容するように構成され、
前記第2ノズル洗浄器は、隣り合う前記局部洗浄ノズルの間に配置される
洗浄便座装置。
【請求項5】
請求項
3または
4に記載の洗浄便座装置であって、
前記制御装置は、前記局部洗浄ノズルによる局部洗浄の開始前に、前記吐出口から洗浄水を吐出するように前記第2ノズル洗浄器への水供給を制御する
洗浄便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄便座装置としては、使用者の局部に向けて洗浄水を吐出する局部洗浄ノズルと、局部洗浄後に局部洗浄ノズルに向けて洗浄水を吐出する洗浄手段とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この洗浄便座装置では、局部洗浄ノズルの外表面を平滑処理した金属素材で構成することにより、局部洗浄ノズルの外表面に汚れの付着を防止したり、付着した汚れを洗浄手段からの洗浄水により洗い流しやすくしたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した洗浄便座装置では、局部洗浄ノズルの外表面の素材を改質しているものの、その外表面の性状に応じた洗浄水の吐出方法については言及されていない。近年の清潔性に対する使用者の意識の向上により、局部洗浄ノズルの汚れの付着防止や汚れの除去などの要求も高まっていることから、局部洗浄ノズルの清潔性を保つために、なお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、局部洗浄ノズルの外表面の性状に適した洗浄水の吐出を行うことで、局部洗浄ノズルの清潔性を保つことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の洗浄便座装置は、外表面に親水性層を有し、使用者の局部に向けて洗浄水を吐出する局部洗浄を行う局部洗浄ノズルと、洗浄水が前記局部洗浄ノズルの外表面の少なくとも上部を伝うように、前記局部洗浄ノズルに向けて洗浄水を吐出するノズル洗浄を行うノズル洗浄器と、を備えることを要旨とする。
【0008】
本発明の洗浄便座装置では、局部洗浄ノズルが外表面に親水性層を有しており、その局部洗浄ノズルの外表面の少なくとも上部を伝うようにノズル洗浄器の吐出口から局部洗浄ノズルに向けて洗浄水を吐出する。これにより、局部洗浄ノズルの外表面の上部を十分に濡らして親水性層の親水性能を適切に発揮させることができるから、局部洗浄ノズルの外表面に汚れが付着しにくいものとしたり、汚れが付着しても落ちやすいものとしたりすることができる。このように、外表面の親水性層が親水性能を発揮するのに適した洗浄水の吐出を行うことで、局部洗浄ノズルの清潔性を保つことができる。
【0009】
本発明の洗浄便座装置において、前記ノズル洗浄器は、洗浄水を吐出する吐出口の向きが、鉛直下向きとは異なる向きとなるように設けられるものとしてもよい。こうすれば、局部洗浄ノズルの外表面に汚れが付着している場合に、鉛直上方から洗浄水を吐出することにより、汚れが外表面から剥がれずに留まったり、外表面から剥がれるまでに時間が掛かったりするのを防止することができる。このため、親水性層を有する局部洗浄ノズルの外表面の性状により適した洗浄水の吐出を行うことができる。
【0010】
本発明の洗浄便座装置において、前記局部洗浄ノズルを収容し、収容位置と該収容位置よりも前方の洗浄位置との間で前記局部洗浄ノズルの進退移動が可能となるように前壁に開口が設けられたノズルカバーと、前記ノズル洗浄器として、前記ノズルカバーの前壁における前記開口の上方に前記進退移動の方向に沿った向きで吐出口が設けられる第1ノズル洗浄器と、前記局部洗浄ノズルが前記洗浄位置を含む前記ノズルカバーから進出した位置にある状態で前記吐出口から洗浄水を吐出するように前記第1ノズル洗浄器への水供給を制御する制御装置と、を備えるものとしてもよい。こうすれば、ノズルカバーの前壁に第1ノズル洗浄器の吐出口を設けるコンパクトな構成で、ノズルカバーから進出した位置にある局部洗浄ノズルに洗浄水をかけて親水性能を発揮させることができる。
【0011】
この態様の本発明の洗浄便座装置において、前記制御装置は、前記局部洗浄ノズルによる局部洗浄の終了後に、前記吐出口から洗浄水を吐出するように前記第1ノズル洗浄器への水供給を制御するものとしてもよい。こうすれば、局部洗浄中に局部洗浄ノズルの外表面に汚れが付着した場合でも、第1ノズル洗浄器から吐出されて外表面の上部を伝う洗浄水が、外表面に付着した汚れと外表面の親水性層との間に入り込んで、汚れを外表面から浮かして除去することができる。
【0012】
本発明の洗浄便座装置において、前記局部洗浄ノズルを収容し、収容位置と該収容位置よりも前方の洗浄位置との間で前記局部洗浄ノズルの進退移動が可能となるように構成されたノズルカバーと、前記ノズル洗浄器として、前記ノズルカバー内において、前記収容位置にある前記局部洗浄ノズルの外表面の上部の側方となる位置に吐出口が設けられる第2ノズル洗浄器と、前記局部洗浄ノズルが前記収容位置にある状態で前記吐出口から洗浄水を吐出するように前記第2ノズル洗浄器への水供給を制御する制御装置と、を備えるものとしてもよい。こうすれば、ノズルカバー内に第2ノズル洗浄器の吐出口を設けるコンパクトな構成で、収容位置にある局部洗浄ノズルに洗浄水をかけて親水性能を発揮させることができる。
【0013】
この態様の本発明の洗浄便座装置において、前記ノズルカバーは、少なくとも2つの前記局部洗浄ノズルを横並びに収容するように構成され、前記第2ノズル洗浄器は、隣り合う前記局部洗浄ノズルの間に配置されるものとしてもよい。こうすれば、ノズルカバー内に第2ノズル洗浄器を設ける場合でも、高さを抑えたコンパクトな構成とすることができる。
【0014】
この態様の本発明の洗浄便座装置において、前記制御装置は、前記局部洗浄ノズルによる局部洗浄の開始前に、前記吐出口から洗浄水を吐出するように前記第2ノズル洗浄器への水供給を制御するものとしてもよい。局部洗浄の開始前に局部洗浄ノズルの外表面を濡らして親水性能を適切に発揮させることができるから、局部洗浄中に局部洗浄ノズルに汚れが付着しにくいものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】洗浄便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図である。
【
図2】洗浄便座装置10の構成の概略を示す構成図である。
【
図6】前方洗浄器50を前方から見た説明図である。
【
図8】側方洗浄器55を前方から見た説明図である。
【
図9】ノズルユニット作動処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】前方洗浄器50からの洗浄水で汚れDiを除去する様子の説明図である。
【
図11】比較例の吐出口101から洗浄水を吐出する様子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
図1は洗浄便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図であり、
図2は洗浄便座装置10の構成の概略を示す構成図であり、
図3はノズルユニット20の外観斜視図であり、
図4はノズルユニット20の分解斜視図である。また、
図5は局部洗浄ノズル21,22の断面図であり、
図6は前方洗浄器50を前方から見た説明図であり、
図7は側方洗浄器55の外観斜視図であり、
図8は側方洗浄器55を前方から見た説明図である。本実施形態において、左右方向、前後方向及び上下方向は、各図に示した通りとする。
【0018】
便器1は、洋式便器であり、便器1の上面に洗浄便座装置10が設置されている。洗浄便座装置10は、
図1に示すように、便器1の後方に設置される便座装置本体11と、便座装置本体11に回動自在に支持された便座12と、便座装置本体11に回動自在に支持された便蓋13と、使用者により操作される操作パネル14と、を備える。
【0019】
便座装置本体11は、
図2,
図3に示すように、2つの局部洗浄ノズルとしておしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22とを有するノズルユニット20と、洗浄便座装置10全体を制御する制御装置60とを備える。ノズルユニット20は、給水源からの給水を所定の給水圧に減圧する給水減圧弁23と、給水減圧弁23を通過した洗浄水を加熱するヒータや温度センサが設けられた熱交換ユニット25と、洗浄水の流量を調整する流量調整弁27と、流量調整弁27から出力された洗浄水の供給先を切り替える流路切替弁29とを備える。また、ノズルユニット20は、
図2~
図4に示すように、おしり洗浄ノズル21を前後方向に進退移動させるおしり洗浄ノズル駆動部31と、ビデ洗浄ノズル22を前後方向に進退移動させるビデ洗浄ノズル駆動部32と、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の外周全体を覆うノズルカバー40と、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の外表面を洗浄する前方洗浄器50(
図4では図示略)および側方洗浄器55とを備える。
【0020】
おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22は、伸縮しない単段式の軸状ノズル部材である。おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22は、それぞれ、
図5に示すように、例えばステンレス鋼などの金属素材を円筒状に加工することで内部に洗浄水の流路が形成された中空円筒状のノズル本体21a,22aと、ノズル本体21a,22aの外表面に親水塗膜をコーティングすることなどにより形成された親水性層21b,22bとにより構成されている。なお、このような親水性層の形成は、例えば特開2000-308861号公報などに開示されている。また、
図5では断面が円形状(円環形状)のものを例示したが、断面が楕円形状など上部(上面)に汚れが堆積しにくく落下しやすい曲面状に形成されるものであればよい。また、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22を、複数段のノズル部材により伸縮可能に構成してもよい。
【0021】
おしり洗浄ノズル駆動部31は、図示は省略するが、駆動源としてのモータと、モータにより回転するピニオンギヤと、ピニオンギヤに噛み合うと共におしり洗浄ノズル21に先端部が接続されピニオンギヤの回転に伴って移動可能なラック(フレキシブルラック)とを備え、モータの正回転または逆回転によりおしり洗浄ノズル21を前方または後方に移動させる。また、ビデ洗浄ノズル駆動部32も同様に構成されている。なお、制御装置60は、おしり洗浄ノズル駆動部31やビデ洗浄ノズル駆動部32の各モータの回転量や図示しない位置センサなどから、おしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22の位置を検出可能である。
【0022】
ノズルカバー40は、
図3,
図4に示すように、下カバー部材41と、上カバー部材43と、前壁部材45とにより構成されている。下カバー部材41は、前方に向かって斜め下方に傾斜する上面におしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22がそれぞれ載置される。また、下カバー部材41は、その幅方向両側縁に複数の係合爪42を有しており、複数の係合爪42が上カバー部材43の対向する位置に設けられた複数の係合溝44と係合することにより、上カバー部材43が下カバー部材41に取り付けられる。また、前壁部材45は、下カバー部材43の前方端に配設されている。前壁部材45には、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22がそれぞれ進退移動するための開口45a,45bが形成されている。これにより、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22は、下カバー部材41と上カバー部材43と前壁部材45とにより囲まれて、ノズルカバー40に収容される。また、上カバー部材43は、
図4に示すように、左右方向中央に、前後方向に沿って矩形状(帯状)に形成された開口43aを有する。
【0023】
前方洗浄器50は、
図3,
図6に示すように、ノズルカバー40の前壁部材45に形成され前方に向けて開口した複数の吐出口51と、洗浄水が供給される供給口52と、供給口52から各吐出口51まで連通するように前壁部材45内に形成された供給流路53とが設けられている。吐出口51は、前壁部材45における開口45a,45bの上方位置に、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の進退移動方向(軸方向)に沿った向きで設けられている。なお、吐出口51から吐出された洗浄水がおしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22の外表面に到達しやすくなるように、吐出口51がノズル進退方向に対して若干斜め下方を向くように形成されていてもよい。前方洗浄器50は、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22がノズルカバー40から進出している状態(
図3ではおしり洗浄ノズル21が進出)で、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の根元側に洗浄水を吐出する。おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22は先端側が下がるようにノズルカバー40から傾斜して進出するから、根元側に吐出された洗浄水はおしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の外表面の上部(洗浄ノズル断面における上側)を伝うように先端側に向かって流れるものとなる。
【0024】
側方洗浄器55は、
図3,
図4に示すように、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の間に配置されるように、上カバー部材43の開口43aに取り付けられる。側方洗浄器55は、
図7,
図8に示すように、左右方向(側方)に向けて左右両側が開口した複数の吐出口56と、洗浄水が供給される供給口57と、供給口57から各吐出口56まで連通する供給流路58とが設けられている。吐出口56は、水平方向(左右方向)で且つ収容位置にあるおしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の外表面の上部に側方から洗浄水を吐出する向きとなるように設けられている。また、吐出口56は、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の長手方向(軸方向)に沿って、略全長に亘って複数並んで設けられている。このため、各吐出口56から吐出された洗浄水は、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の外表面の上部を周方向に伝わると共に斜め下方に傾斜するおしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の外表面の上部を下方に向けて伝わるように流れるものとなる。これにより、側方洗浄器55は、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の外表面の上部を略全長に亘って濡らすことができる。
【0025】
おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22と前方洗浄器50(供給口52)と側方洗浄器55(供給口57)とは、
図2に示すように、流路切替弁29に接続されている。流路切替弁29は、供給先をおしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22と前方洗浄器50(供給口52)と側方洗浄器55(供給口57)のいずれかに切り替えるものであり、図示しないモータにより駆動されるロータリバルブやディスクバルブなどとして構成されている。
【0026】
制御装置60は、図示は省略するが、CPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,入出力ポートなどを備える。制御装置60には、
図2に示すように、操作パネル14からの操作信号や着座センサ15からの検知信号などが入力ポートを介して入力される。また、制御装置60からは、給水減圧弁23への駆動信号や熱交換ユニット25への駆動信号,流量調整弁27への駆動信号,流路切替弁29への駆動信号,おしり洗浄ノズル駆動部31への駆動信号、ビデ洗浄ノズル駆動部32への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、操作パネル14には、おしり洗浄を指示するおしり洗浄スイッチやビデ洗浄を指示するビデ洗浄スイッチ、洗浄の強さを調整する洗浄強さ調整スイッチ、洗浄の停止を指示する停止スイッチなどが設けられている。
【0027】
次に、こうして構成された洗浄便座装置10(ノズルユニット20)の動作について説明する。
図9は、ノズルユニット作動処理の一例を示すフローチャートである。制御装置60は、着座センサ15により使用者の便座12への着座を判定した場合に、この処理を実行する。また、図示は省略するが、制御装置60は、着座センサ15により使用者の着座が検知されなくなった場合などに、この処理を終了する。
【0028】
このノズルユニット作動処理では、制御装置60は、まず、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22がいずれも収容位置にある収容状態であるか否かを判定する(S100)。着座センサ15により使用者の便座12への着座を判定してノズルユニット作動処理を開始した場合には、収容状態であると判定される。制御装置60は、S100で収容状態であると判定すると、局部洗浄(おしり洗浄またはビデ洗浄)の開始が指示されるのを待つ(S110)。S110の判定は、着座センサ15からの検知信号により使用者が便座12に着座していると判定している状態で、操作パネル14からの操作信号によりおしり洗浄スイッチやビデ洗浄スイッチが操作されたか否かに基づいて行われる。
【0029】
制御装置60は、S110で局部洗浄の開始が指示されたと判定すると、流路切替弁29を切り替えて流量調整弁27から出力された洗浄水を側方洗浄器55の吐出口51から吐出させておしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の外表面を洗浄するノズル洗浄を開始して(S120)、ノズル洗浄の終了タイミングとなるのを待つ(S130)。S120のノズル洗浄により、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22のいずれかが収容位置から洗浄位置への移動を開始する前即ち局部洗浄の開始直前に、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の外表面を洗浄水で濡らすことができる。このため、局部洗浄中にノズル外表面の上部に汚れが付着しようとしても、その汚れを滑り落ちやすくすることができる。また、制御装置60は、S120でノズル洗浄を開始してから予め定められた局部洗浄前のノズル洗浄時間が経過したときに、S130でノズル洗浄の終了タイミングとなったと判定する。
【0030】
制御装置60は、S130でノズル洗浄の終了タイミングとなったと判定すると、ノズル洗浄を終了して局部洗浄を行う洗浄ノズル(おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22のいずれか)をノズルカバー40から進出させ(S140)、流路切替弁29を切り替えて流量調整弁27から出力された洗浄水を局部洗浄を行う洗浄ノズルから吐出させて局部洗浄を開始して(S150)、S100に戻る。おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22のいずれかがノズルカバー40から進出していると、制御装置60は、S100で収容状態にないと判定し、局部洗浄(おしり洗浄またはビデ洗浄)の停止が指示されるのを待つ(S160)。S160の判定は、操作パネル14の停止スイッチが操作されたか否かに基づいて行われる。制御装置60は、局部洗浄の停止が指示されたと判定すると、局部洗浄を終了し(S170)、流路切替弁29を切り替えて流量調整弁27から出力された洗浄水を前方洗浄器50の吐出口51から吐出させることにより洗浄位置にあるおしり洗浄ノズル21またはビデ洗浄ノズル22の外表面を洗浄するノズル洗浄を開始する(S180)。これにより、局部洗浄の終了直後に、前方洗浄器50から吐出した洗浄水を、洗浄位置にあるおしり洗浄ノズル21またはビデ洗浄ノズル22の外表面に伝わせて外表面を洗浄することができる。こうしてノズル洗浄を行うと、制御装置60は、ノズル洗浄の終了タイミングとなったときに(S190)、ノズル洗浄を終了して洗浄位置にあるおしり洗浄ノズル21またはビデ洗浄ノズル22をノズルカバー40内(収容位置)に収容して(S200)、ノズルユニット作動処理を終了する。なお、制御装置60は、S180でノズル洗浄を開始してから予め定められた局部洗浄後のノズル洗浄時間が経過したときに、S190でノズル洗浄の終了タイミングとなったと判定する。
【0031】
ここで、
図10は前方洗浄器50からの洗浄水で汚れDiを除去する様子の説明図であり、
図11は比較例の吐出口101から洗浄水を吐出する様子の説明図である。なお、
図10では、前方洗浄器50の吐出口51は図示するが、他の構成要素の図示は省略する。また、
図11では、比較例の洗浄器として鉛直下向きに吐出口101が設けられたものを示す。
図10,
図11では、局部洗浄を行ったおしり洗浄ノズル21の外表面に汚れDiが付着している。なお、おしり洗浄ノズル21は、図中右側が先端側で斜め下方に傾斜しているものである。
図10に示すように、前方洗浄器50の吐出口51から吐出された洗浄水Waは、おしり洗浄ノズル21の外表面の上部を伝うように流れて(
図10(a),(b))、汚れDiの下面とおしり洗浄ノズル21の外表面との間に入り込んで汚れDiを浮かせるように剥がして外表面から除去することができる(
図10(c),(d))。一方、比較例のように、鉛直下向きに設けられた吐出口101から洗浄水Waを吐出するものでは(
図11(a),(b))、汚れDiと外表面の間に洗浄水Waが入り込みにくいものとなり、汚れDiが剥がれずに留まったり(
図11(c))、剥がれるまでに時間が掛かったりしやすいものとなる。
【0032】
以上説明した洗浄便座装置10では、局部洗浄ノズルとしてのおしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22が外表面に親水性層21a,22aを有しており、その局部洗浄ノズルの外表面の少なくとも上部を伝うように前方洗浄器50や側方洗浄器55から洗浄水を吐出する。これにより、親水性層21a,22aを有する局部洗浄ノズルの外表面を十分に濡らして、親水性層21a,22aの親水性能を適切に発揮させることができる。このため、局部洗浄ノズルの外表面に汚れが付着しにくくなり、汚れが付着しても落ちやすいものとすることができるから、局部洗浄ノズルの清潔性を保つことができる。
【0033】
また、洗浄便座装置10では、前方洗浄器50の吐出口51や側方洗浄器55の吐出口56の向きが、鉛直下向きとは異なる向きとなるから、鉛直上方から洗浄水を吐出することで汚れが除去しにくくなるのを防止することができる。
【0034】
また、洗浄便座装置10では、ノズルカバー40の前壁部45に前方洗浄器50の吐出口51を設けるコンパクトな構成で、ノズルカバー40から進出しているおしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22に洗浄水をかけて親水性能を発揮させることができる。
【0035】
また、洗浄便座装置10では、局部洗浄の終了後に前方洗浄器50の吐出口51から洗浄水を吐出するから、局部洗浄中に外表面に付着した汚れと外表面の親水性層21a,22aとの間に洗浄水が入り込むように流れて汚れを除去することができる。
【0036】
また、洗浄便座装置10では、ノズルカバー40内に側方洗浄器55の吐出口51を設けるコンパクトな構成で、収容位置にあるおしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22に洗浄水をかけて親水性能を発揮させることができる。また、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の間に側方洗浄器55が配置されるから、ノズルユニット20の高さを抑えたコンパクトな構成とすることができる。
【0037】
また、洗浄便座装置10では、局部洗浄の開始前に側方洗浄器55の吐出口51から洗浄水を吐出するから、外表面の親水性層21a,22aを十分に濡らして親水性能を適切に発揮させて、局部洗浄中に付着した汚れが落ちやすいものとすることができる。
【0038】
上述した実施形態では、局部洗浄の開始前に側方洗浄器55から洗浄水を吐出し、局部洗浄の終了後に前方洗浄器50から洗浄水を吐出するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、局部洗浄の開始前だけでなく、局部洗浄の終了後におしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22がノズルカバー40内の収容位置まで移動したときに側方洗浄器55から洗浄水を吐出してもよい。また、局部洗浄の終了後だけでなく、おしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22が洗浄位置へ移動しているときや収容位置へ移動しているとき(ノズル移動中)、洗浄位置で局部に向けて洗浄水を吐出しているとき(局部洗浄中)に、前方洗浄器50から洗浄水を吐出してもよい。局部洗浄用の洗浄水とノズル洗浄用の洗浄水とを同時に吐出することができるように、おしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22への洗浄水の供給路と、前方洗浄器50や側方洗浄器55への洗浄水の供給路とを別々に設けるものとしてもよい。
【0039】
実施形態では、前方洗浄器50と側方洗浄器55とをいずれも備えるものとしたが、これに限られず、前方洗浄器50と側方洗浄器55のうちいずれか一方のみを備えるものとしてもよい。前方洗浄器50のみを備える場合、局部洗浄の終了後だけでなく、局部洗浄ノズルの移動中や局部洗浄中に洗浄水を吐出してもよい。また、側方洗浄器55のみを備える場合、局部洗浄の開始前だけでなく、局部洗浄の終了後に局部洗浄ノズルのノズルカバー40内への移動中やノズルカバー40内への収容後に洗浄水を吐出してもよい。
【0040】
実施形態では、側方洗浄器55の吐出口56がおしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22の長手方向に沿って略全長に亘って複数並んで設けられるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、収容位置にあるおしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22の先端(前方端)側の位置に設けて、おしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22が洗浄位置に移動しているときなどに洗浄水を吐出してもよい。また、側方洗浄器55をおしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の間の位置に配置するものとしたが、これに限られず、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の間以外の位置に配置するものなどとしてもよい。例えば、おしり洗浄ノズル21の右側方位置とビデ洗浄ノズル22の左側方位置とにそれぞれ配置するものなどとしてもよい。
【0041】
実施形態では、おしり洗浄ノズル21とビデ洗浄ノズル22の2本の洗浄ノズルを備えるものとしたが、これに限られず、3本以上の複数の洗浄ノズルを備えるものとしてもよいし、1本の洗浄ノズルを備えるものとしてもよい。洗浄ノズルを3本以上備える場合には、各洗浄ノズルの間の位置にそれぞれ側方洗浄器を配置するものとしてもよい。洗浄ノズルを1本備える場合には、その洗浄ノズルの右側方位置や左側方位置に側方洗浄器を配置するものとしてもよい。
【0042】
実施形態では、
図5に示すように洗浄ノズルの断面は円形状(円環形状)とし、楕円形状などの曲面状でもよいものとしたが、これに限られず、洗浄ノズルの断面は上部が平坦状(平面状)などとしてもよい。
【0043】
本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。本実施形態では、洗浄便座装置10が「洗浄便座装置」に相当し、おしり洗浄ノズル21やビデ洗浄ノズル22が「局部洗浄ノズル」に相当し、前方洗浄器50と側方洗浄器55とが「ノズル洗浄器」に相当する。また、ノズルカバー40が「ノズルカバー」に相当し、前方洗浄器50が「第1ノズル洗浄器」に相当し、制御装置60が「制御装置」に相当する。また、側方洗浄器55が「第2ノズル洗浄器」に相当する。
【0044】
なお、本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、本実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、本実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0045】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、洗浄便座装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 便器、10 洗浄便座装置、11 便座装置本体、12 便座、13 便蓋、14 操作パネル、15 着座センサ、20 ノズルユニット、21 おしり洗浄ノズル、22 ビデ洗浄ノズル、21a,22a ノズル本体、21b,22b 親水性層、23 給水減圧弁、25 熱交換ユニット、27 流量調整弁、29 流路切替弁、31 おしり洗浄ノズル駆動部、32 ビデ洗浄ノズル駆動部、40 ノズルカバー、41 下カバー部材、42 係合爪、43 上カバー部材、43a 開口、44 係合溝、45 前壁部材、45a,45b 開口、50 前方洗浄器、51 吐出口、52 供給口、53 供給流路、55 側方洗浄器、56 吐出口、57 供給口、58 供給流路、60 制御装置、101 吐出口、Di 汚れ、Wa 洗浄水。