(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】画像形成装置、プログラム、および画像形成システム
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20220301BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220301BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20220301BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
G03G21/00 512
G03G15/00 303
G03G15/16 103
G03G15/02 101
(21)【出願番号】P 2017215718
(22)【出願日】2017-11-08
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 暁
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-003538(JP,A)
【文献】特開2009-098279(JP,A)
【文献】特開2012-141484(JP,A)
【文献】特開2006-227520(JP,A)
【文献】特開2001-154512(JP,A)
【文献】特開平09-179383(JP,A)
【文献】特開2017-122850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0141903(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
G03G 15/16
G03G 15/02
G03G 21/14
G03G 15/20
G03G 15/08
B41J 29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持するための像担持体と、
前記像担持体に接触または近接して配置される部材と、
前記部材の電気的特性値を測定するためのセンサーと、
前記部材の使用に伴い、前記部材に対して定電流および定電圧のいずれか一方を印加する第1モードから、前記部材に対して前記一方とは異なる他方を印加する第2モードに切り替え可能に構成される電源装置と、
前記第1モードにおける前記部材の使用量と前記電気的特性値との第1対応関係を記憶する記憶装置と、
前記部材の使用可能期間を予測するための制御装置とを備え、
前記第1対応関係は、予め前記記憶装置に記憶されており、
前記制御装置は、
前記センサーにより測定された前記電気的特性値と前記第1モードにおける前記部材の使用量との第2対応関係を取得し、
前記第1対応関係と前記第2対応関係とに基づいて、前記電源装置が前記第2モードに切り替えられた場合の前記部材の使用可能期間を予測する、画像形成装置。
【請求項2】
前記電源装置は、前記電気的特性値が第1値に到達したことに基づいて、前記第1モードから、前記第2モードに切り替え可能に構成され、
前記制御装置は、前記第1対応関係と前記第2対応関係とに基づいて、前記電気的特性値が前記第1値よりも大きい第2値に到達するまでの期間を予測する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1対応関係は、前記第1モードにおける前記部材の使用量と前記電気的特性値の変動率との関係を複数保持し、
前記第2対応関係は、前記センサーにより測定された前記電気的特性値の前記第1モードにおける前記部材の使用量に対する変動率を含む、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記センサーにより異なるタイミングで測定された前記電気的特性値の差分と、前記異なるタイミングにおける使用量の差分と、に基づいて前記第2対応関係としての変動率を取得する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記第2対応関係として算出された変動率と、前記第1対応関係から定まる変動率との比率を算出し、
前記比率に基づいて前記使用可能期間を予測する、請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1モードにおいて前記部材に対して定電圧が印加される場合、前記第1対応関係における前記電気的特性値の変動率は、前記部材の使用量に対して対数関数的に変化するように規定され、
前記第1モードにおいて前記部材に対して定電流が流される場合、前記第1対応関係における前記電気的特性値の変動率は、前記部材の使用量に対して比例して変化するように規定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記部材の電気的特性値は、前記部材の抵抗値を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記センサーは、所定のタイミングで前記部材に定電流が流された場合の前記部材に印加される電圧値または前記所定のタイミングで前記部材に定電圧が印加された場合の前記部材に流れる電流値を取得するように構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
温度および湿度を測定する環境センサーをさらに備え、
前記制御装置は、前記環境センサーの測定結果に基づいて、前記部材の使用可能期間の予測結果を補正する、請求項1~8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記温度が高いほどまたは前記湿度が高いほど前記使用可能期間の予測結果が長くなるように補正し、前記温度が低いほどまたは前記湿度が低いほど前記使用可能期間の予測結果が短くなるように補正する、請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御装置は、1の印字ジョブあたりの平均印字枚数に基づいて、前記部材の使用可能期間の予測結果を補正する、請求項1~10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御装置は、1の印字ジョブあたりの平均印字枚数が多いほど前記使用可能期間の予測結果が短くなるように補正し、1の印字ジョブあたりの平均印字枚数が少ないほど前記使用可能期間の予測結果が長くなるように補正する、請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記部材は、前記像担持体に形成されたトナー像を転写するための1次転写ローラーを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記電源装置は、前記1次転写ローラーに対して定電圧を印加する前記第1モードから、前記1次転写ローラーに定電流を印加する前記第2モードに切り替えるように構成され
る、請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記部材は、前記像担持体に残留するトナーを回収するためのクリーニングブラシを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記電源装置は、前記クリーニングブラシに対して定電流を印加する前記第1モードから、前記クリーニングブラシに定電圧を印加する前記第2モードに切り替えるように構成される、請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記部材は、前記像担持体を帯電するための帯電ローラーを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項18】
画像形成装置に含まれる像担持体に接触または近接して配置される部材の使用可能期間を予測するためにコンピュータで実行されるプログラムであって、
前記画像形成装置は、
前記部材の電気的特性値を測定するためのセンサーと、
前記部材の使用に伴い、前記部材に対して定電流および定電圧のいずれか一方を印加する第1モードから、前記部材に対して前記一方とは異なる他方を印加する第2モードに切り替え可能に構成される電源装置とを含み、
前記プログラムは前記コンピュータに、
前記センサーにより測定された前記電気的特性値と前記第1モードにおける前記部材の使用量との第1対応関係を取得するステップと、
記憶装置に記憶された前記第1モードにおける前記部材の使用量と前記電気的特性値との第2対応関係と、前記取得された第1対応関係とに基づいて、前記電源装置が前記第2モードに切り替えられた場合の前記部材の使用可能期間を予測するステップとを実行さ
せ、
前記第2対応関係は、予め前記記憶装置に記憶されている、プログラム。
【請求項19】
画像形成装置と
、前記画像形成装置と通信可能なサーバー
とを備える画像形成システムであって、
前記画像形成装置は、
トナー像を担持するための像担持体と、
前記像担持体に接触または近接して配置される部材と、
前記部材の電気的特性値を測定するためのセンサーと、
前記部材の使用に伴い、前記部材に対して定電流および定電圧のいずれか一方を印加する第1モードから、前記部材に対して前記一方とは異なる他方を印加する第2モードに切り替え可能に構成される電源装置とを含み、
前記サーバーは、
前記第1モードにおける前記部材の使用量と前記電気的特性値との第1対応関係を記憶する記憶装置と、
前記部材の使用可能期間を予測するための制御装置とを備え、
前記第1対応関係は、予め前記記憶装置に記憶されており、
前記制御装置は、
前記センサーにより測定された前記電気的特性値と前記第1モードにおける前記部材の使用量とを前記画像形成装置から受信し、
前記受信した電気的特性値と使用量との第2対応関係を取得し、
前記第1対応関係と前記第2対応関係とに基づいて、前記電源装置が前記第2モードに切り替えられた場合の前記部材の使用可能期間を予測し、
前記予測結果を前記画像形成装置に送信する、
画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、画像形成装置に関し、より特定的には、画像形成装置を構成する部材の使用可能期間を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮等を理由として電化製品の長寿命化が要求されている。これは、画像形成装置においても同様である。画像形成装置を長寿命化するために、例えば、特開2004-184601号公報は、「転写電流値と前記転写電圧値とから求めた転写ローラーの実測抵抗値と基準抵抗値とを比較し、当該実測抵抗値が前記基準抵抗値より大であるときに前記転写ローラーの寿命と判断する検知器を備える」画像形成装置を開示している(「要約」参照)。
【0003】
また、特開2006-003538号公報は、「転写ローラーの抵抗値が限界基準値を上回っていないと判定した場合には印刷動作の動作モードを第1印刷モードにして印刷動作を行なう。一方、転写ローラーの抵抗値が限界基準値を上回っていると判定した場合には、印刷動作の動作モードを第2印刷モードにして印刷動作を行なう」構成を開示している(「要約」参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-184601号公報
【文献】特開2006-003538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成装置は、長寿命化だけでなく、精度よく部材の寿命を予測する構成も必要とされている。部材の寿命を精度よく予測することにより、画像形成装置のユーザーは、予め当該部材の代替品を用意することができ、またはサービスマンがタイミング良く部材の交換に伺うことができる。
【0006】
ところで、特許文献1に開示される画像形成装置は、転写ローラーの抵抗値を用いて当該部材の寿命を判断する構成である。特許文献2に開示される画像形成装置は、転写ローラーに定電圧を印加する第1印刷モードから転写ローラーに定電流を流す第2印刷モードに切り替える。当該構成によれば、転写ローラーの抵抗値は、第1モードでは非線形に変化していくのに対して第2モードではリニアに変化していく。
【0007】
上記のようにモードに応じて部材の電気的特性値(例えば抵抗値)の挙動が異なる場合、単に第1モードにおける転写ローラーの電気的特性値の推移から転写ローラーの寿命を予測した場合、実際の寿命と大きくずれる場合がある。したがって、モードに応じて部材の電気的特性値の推移の挙動が異なるような画像形成装置において、当該部材の寿命を精度よく推定する技術が必要とされている。
【0008】
本開示は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、ある局面における目的は、画像形成装置を構成する部材の寿命を精度よく予測できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある実施形態に従うと、トナー像を担持するための像担持体と、像担持体に接触または近接して配置される部材と、部材の電気的特性値を測定するためのセンサーと、部材の使用に伴い、部材に対して定電流および定電圧のいずれか一方を印加する第1モードから、部材に対して一方とは異なる他方を印加する第2モードに切り替え可能に構成される電源装置と、第1モードにおける部材の使用量と電気的特性値との第1対応関係を記憶する記憶装置と、部材の使用可能期間を予測するための制御装置とを備える画像形成装置が提供される。制御装置は、センサーにより測定された電気的特性値と第1モードにおける部材の使用量との第2対応関係を取得し、第1対応関係と第2対応関係とに基づいて、電源装置が第2モードに切り替えられた場合の部材の使用可能期間を予測する。
【0010】
好ましくは、電源装置は、電気的特性値が第1値に到達したことに基づいて、第1モードから、第2モードに切り替え可能に構成される。制御装置は、第1対応関係と第2対応関係とに基づいて、電気的特性値が第1値よりも大きい第2値に到達するまでの期間を予測する。
【0011】
好ましくは、第1対応関係は、第1モードにおける部材の使用量と電気的特性値の変動率との関係を複数保持する。第2対応関係は、センサーにより測定された電気的特性値の第1モードにおける部材の使用量に対する変動率を含む。
【0012】
さらに好ましくは、制御装置は、センサーにより異なるタイミングで測定された電気的特性値の差分と、異なるタイミングにおける使用量の差分と、に基づいて第2対応関係としての変動率を取得する。
【0013】
好ましくは、制御装置は、第2対応関係として算出された変動率と、第1対応関係から定まる変動率との比率を算出し、比率に基づいて使用可能期間を予測する。
【0014】
好ましくは、第1モードにおいて部材に対して定電圧が印加される場合、第1対応関係における電気的特性値の変動率は、部材の使用量に対して対数関数的に変化するように規定される。第1モードにおいて部材に対して定電流が流される場合、第1対応関係における電気的特性値の変動率は、部材の使用量に対して比例して変化するように規定される。
【0015】
好ましくは、部材の電気的特性値は、部材の抵抗値を含む。
好ましくは、センサーは、所定のタイミングで部材に定電流が流された場合の部材に印加される電圧値または所定のタイミングで部材に定電圧が印加された場合の部材に流れる電流値を取得するように構成される。
【0016】
好ましくは、画像形成装置は、温度および湿度を測定する環境センサーをさらに備える。制御装置は、環境センサーの測定結果に基づいて、部材の使用可能期間の予測結果を補正する。
【0017】
さらに好ましくは、制御装置は、温度が高いほどまたは湿度が高いほど使用可能期間の予測結果が長くなるように補正し、温度が低いほどまたは湿度が低いほど使用可能期間の予測結果が短くなるように補正する。
【0018】
好ましくは、制御装置は、1の印字ジョブあたりの平均印字枚数に基づいて、部材の使用可能期間の予測結果を補正する。
【0019】
さらに好ましくは、制御装置は、1の印字ジョブあたりの平均印字枚数が多いほど使用可能期間の予測結果が短くなるように補正し、1の印字ジョブあたりの平均印字枚数が少ないほど使用可能期間の予測結果が長くなるように補正する。
【0020】
好ましくは、部材は、像担持体に形成されたトナー像を転写するための1次転写ローラーを含む。
【0021】
さらに好ましくは、電源装置は、1次転写ローラーに対して定電圧を印加する第1モードから、1次転写ローラーに定電流を印加する第2モードに切り替えるように構成される。
【0022】
好ましくは、部材は、像担持体に残留するトナーを回収するためのクリーニングブラシを含む。
【0023】
さらに好ましくは、電源装置は、クリーニングブラシに対して定電流を印加する第1モードから、クリーニングブラシに定電圧を印加する第2モードに切り替えるように構成される。
【0024】
好ましくは、部材は、像担持体を帯電するための帯電ローラーを含む。
他の局面に従うと、画像形成装置に含まれる像担持体に接触または近接して配置される部材の使用可能期間を予測するためにコンピュータで実行されるプログラムが提供される。画像形成装置は、部材の電気的特性値を測定するためのセンサーと、部材の使用に伴い、部材に対して定電流および定電圧のいずれか一方を印加する第1モードから、部材に対して一方とは異なる他方を印加する第2モードに切り替え可能に構成される電源装置とを含む。プログラムはコンピュータに、センサーにより測定された電気的特性値と第1モードにおける部材の使用量との第1対応関係を取得するステップと、記憶装置に記憶された第1モードにおける部材の使用量と電気的特性値との第2対応関係と、取得された第1対応関係とに基づいて、電源装置が第2モードに切り替えられた場合の部材の使用可能期間を予測するステップとを実行させる。
【0025】
さらに他の局面に従うと、画像形成装置と通信可能なサーバーが提供される。画像形成装置は、トナー像を担持するための像担持体と、像担持体に接触または近接して配置される部材と、部材の電気的特性値を測定するためのセンサーと、部材の使用に伴い、部材に対して定電流および定電圧のいずれか一方を印加する第1モードから、部材に対して一方とは異なる他方を印加する第2モードに切り替え可能に構成される電源装置とを含む。サーバーは、第1モードにおける部材の使用量と電気的特性値との第1対応関係を記憶する記憶装置と、部材の使用可能期間を予測するための制御装置とを備える。制御装置は、センサーにより測定された電気的特性値と第1モードにおける部材の使用量とを画像形成装置から受信し、受信した電気的特性値と使用量との第2対応関係を取得し、第1対応関係と第2対応関係とに基づいて、電源装置が第2モードに切り替えられた場合の部材の使用可能期間を予測し、予測結果を画像形成装置に送信する。
【発明の効果】
【0026】
ある実施形態に従う画像形成装置は、当該画像形成装置を構成する部材の寿命を精度よく予測できる。
【0027】
開示された技術的特徴の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】部材に定電圧を印加する定電圧モードから、部材に定電流を流す定電流モードに切り替える様子を表す図である。
【
図2】定電圧モードから定電流モードに切り替えた場合における部材の抵抗値の推移を表す図である。
【
図3】定電流モードから定電圧モードに切り替える様子を表す図である。
【
図4】定電流モードから定電圧モードに切り替えた場合における部材の抵抗値の推移を表す図である。
【
図5】本開示に従う技術思想を説明するための図である。
【
図6】実施形態1に従う画像形成装置の構造の一例を表す図である。
【
図7】実施形態1に従う作像ユニットの構成を表す図である。
【
図8】実施形態1に従う画像形成装置の電気的な構成の一例を表す図である。
【
図9】記憶装置に記憶されている基準対応関係を説明するための図である。
【
図10】1次転写ローラーの使用可能期間を予測する処理を説明するための図である。
【
図11】1次転写ローラーの寿命(使用可能期間)を算出する処理を表すフローチャートである。
【
図12】1次転写ローラーの使用可能期間の通知態様の一例を表す図である。
【
図13】定電流モードに移行した後に1次転写ローラーの使用可能期間を予測する処理を説明するための図である。
【
図14】枚数補正テーブルのデータ構造の一例を表す図である。
【
図15】環境補正テーブルのデータ構造の一例を表す図である。
【
図16】実施形態2に従う画像形成装置における作像ユニットの構造を表す図である。
【
図17】実施形態2に従う画像形成装置の電気的な構成の一例を表す図である。
【
図18】実施形態2に従う基準対応関係を説明するための図である。
【
図19】クリーニングブラシの使用可能期間を予測する処理を説明するための図である。
【
図20】クリーニングブラシの寿命(使用可能期間)を算出する処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この技術的思想の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0030】
[導入]
電子写真方式に従う画像形成装置は、トナー像を担持する像担持体(例えば、感光体、中間転写体)と、当該像担持体に接触または近接して配置される部材(例えば、帯電ローラー、1次転写ローラー、2次転写ローラー)とを備える。画像形成装置は、部材に電圧を印加して当該部材を帯電させる。
【0031】
関連技術に従う画像形成装置は、像担持体に接触または近接して配置される部材の電気的特性値(例えば、抵抗値、電圧値、電流値)に基づいて、当該部材への電力供給の方法を切り替える。
【0032】
図1は、部材に定電圧を印加する定電圧モードから、部材に定電流を流す定電流モードに切り替える様子を表す。
図1の横軸は部材に流す電流値を表し、縦軸は部材に印加する電圧値を表す。
【0033】
画像形成装置は、部材に印加する電圧および電流を領域105(破線と一点鎖線で囲まれる領域)の範囲内で制御する。その理由は、電圧値または電流値を領域105の範囲外に設定した場合、何らかの画像不良が生じるためである。部材が1次転写ローラーである場合について説明する。1次転写ローラーに印加される電圧値または電流値が下限値以下である場合、感光体に形成されたトナー像を中間転写体に十分に転写できなくなる。また、1次転写ローラーに印加される電圧値または電流値が上限値以下である場合、1次転写ローラーと感光体との間で放電が生じ、トナー像上に斑点状のノイズが生じる。
【0034】
初期値110は部材に印加される初期電圧値および初期電流値を表す。一例として、初期値110は、領域105の中央に設定される。
【0035】
図1に示される例において、画像形成装置はまず最初に、部材に対して定電圧を印加する。部材に電圧を印加すると、部材の抵抗値が徐々に上昇する。そのため、部材に流れる電流値が徐々に小さくなる。画像形成装置は、部材に流れる電流値が下限値に達すると、部材に対して定電流を印加する。この場合、部材の抵抗値の上昇に伴い、部材に印加される電圧値が徐々に大きくなる。画像形成装置は、部材に印加される電圧値が上限値に達すると、部材の寿命であると判断する。
【0036】
図2は、定電圧モードから定電流モードに切り替えた場合における部材の抵抗値の推移を表す。
図2の横軸は部材を用いた累計印字枚数を、縦軸は部材の抵抗値をそれぞれ表す。
【0037】
図2に示されるように、部材の抵抗値は、定電圧モードにおいて曲線210に従い非線形に変化する。画像形成装置は、抵抗値が第1抵抗値に到達したことに基づいて、定電圧モードから定電流モードに切り替える。部材の抵抗値は、定電流モードにおいて直線220に従い変化する。画像形成装置は、抵抗値が第2抵抗値(>第1抵抗値)に到達したことに基づいて、部材の寿命であると判断する。
【0038】
関連技術に従う画像形成装置は、定電圧モードにおいて部材の寿命を予測する。より具体的には、関連技術に従う画像形成装置は、異なる累計印字枚数における部材の抵抗値を取得し、取得結果から抵抗値が第2抵抗値に到達するときの累計印字枚数を予測する。係る場合、関連技術に従う画像形成装置は、定電流モードにおいても曲線210(破線部)に従い部材の抵抗値が変化すると予測してしまうため、部材の寿命を実際の寿命(累計印字枚数N2)よりも長く予測してしまう。寿命を迎えた部材を用いて印字された場合、画像不良が生じ得る。
【0039】
図3は、定電流モードから定電圧モードに切り替える様子を表す。
図3に示される例では、画像形成装置はまず最初に、部材に対して定電流を流す。画像形成装置は、部材の抵抗値の上昇に伴い部材に流れる電流値が上限値に達すると、部材に対して定電圧を印加する。また、画像形成装置は、部材の抵抗値の上昇に伴い部材に流れる電流値が下限値に達すると、部材の寿命であると判断する。
【0040】
図4は、定電流モードから定電圧モードに切り替えた場合における部材の抵抗値の推移を表す。
図4に示されるように、部材の抵抗値は、定電流モードにおいて直線410に従い変化する。画像形成装置は、抵抗値が第1抵抗値に到達したことに基づいて、定電流モードから定電圧モードに切り替える。部材の抵抗値は、定電
圧モードにおいて曲線420に従い変化する。画像形成装置は、抵抗値が第2抵抗値(>第1抵抗値)に到達したことに基づいて、部材の寿命であると判断する。
【0041】
関連技術に従う画像形成装置は、定電流モードにおいて測定された抵抗値の挙動に基づいて部材の寿命を予測する。この場合、関連技術に従う画像形成装置は、定電圧モードにおいても直線410(破線部)に従い部材の抵抗値が変化すると予測してしまうため、部材の寿命を実際の寿命(累計印字枚数N2)よりも短く予測してしまう。このように、関連技術に従う画像形成装置は、部材の制御を定電圧モードおよび定電流モードの一方から他方に切り替える場合において、部材の寿命を正確に予測できない。以下、このような課題を解決し得る実施形態に従う画像形成装置の制御概要について説明する。
【0042】
[技術思想]
図5は、本開示に従う技術思想を説明するための図である。
図5に示される例において、実施形態に従う画像形成装置は部材の制御を定電圧モードから定電流モードに切り替える。
【0043】
実施形態に従う画像形成装置は、曲線210に対応する関数またはテーブルを予め記憶装置に記憶している。曲線210は、定電圧モードにおける部材の使用量を表す累計印字枚数と部材の抵抗値との基準対応関係を表す。画像形成装置は、図示しないセンサーに基づいて異なる累計印字枚数における部材の抵抗値を取得する。
図5に示される例において、画像形成装置は、累計印字枚数N3,N4における部材の抵抗値R3,R4を取得する。画像形成装置は、これらの実測値から累計印字枚数と抵抗値との実際の対応関係を取得する。
【0044】
画像形成装置は、取得された実際の対応関係(第2対応関係)と、記憶装置に記憶された基準対応関係(第1対応関係)とに基づいて、部材の使用可能期間(寿命)である累計印字枚数N6を予測する。
【0045】
より具体的には、画像形成装置は、実際の対応関係として、部材を用いた累計印字枚数に対する抵抗値の変動率(つまり、傾き)を取得する。画像形成装置は、取得された変動率と、基準対応関係から導出される累計印字枚数N3-N4間における抵抗値の変動率との比率を算出する。画像形成装置は、算出された比率を用いて基準対応関係を補正し、当該補正された基準対応関係に基づいて抵抗値が第1抵抗値に到達するときの(つまり、定電圧モードから定電流モードに切り替わるときの)累計印字枚数N5を算出する。
図5に示される例において、実際に取得された抵抗値の変動率は基準対応関係に規定される変動率よりも大きい。そのため、補正前の基準対応関係に基づいて抵抗値が第1抵抗値に到達するときの累計印字枚数N1よりも、補正後の基準対応関係から算出される累計印字枚数N5は少ない。
【0046】
画像形成装置は、補正された基準対応関係に基づいて、抵抗値が第1抵抗値に到達したときの、累計印字枚数に対する抵抗値の変動率(つまり、直線220の傾き)を算出する。画像形成装置は、当該算出された変動率と、累計印字枚数N1とに基づいて、抵抗値が第2抵抗値に到達するときの累計印字枚数N6(寿命)を算出する。
【0047】
上記によれば、実施形態に従う画像形成装置は、実際に測定された部材の使用量と電気的特性値との対応関係(第2対応関係)に基づいて、基準対応関係(第1対応関係)を補正することにより、モードの切り替え時を正確に予測できる。その結果、実施形態に従う画像形成装置は、モードの切り替え後における使用量に対する電気的特性値の挙動を正確に予測できる。したがって、実施形態に従う画像形成装置は、モードが切り替わる場合であっても部材の寿命を正確に予測できる。以下、実施形態に従う画像形成装置の具体的な構成および処理について説明する。
【0048】
[実施形態1]
(画像形成装置の構造)
図6は、画像形成装置600の構造の一例を表す。画像形成装置600は、レーザプリンタやLEDプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置である。
図6に示されるように、画像形成装置600は、内部のほぼ中央部にベルト部材として中間転写ベルト1を備えている。中間転写ベルト1の下部水平部の下には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色にそれぞれ対応する4つの作像ユニット2Y,2M,2C,2Kが中間転写ベルト1に沿って並んで配置される。これらの作像ユニット2Y,2M,2C,2Kは、トナー像を担持可能に構成される感光体3Y,3M,3C,3Kをそれぞれ有している。
【0049】
像担持体である各感光体3Y,3M,3C,3Kの周囲には、その回転方向に沿って順に、対応する感光体を帯電するための帯電ローラー4Y,4M,4C,4Kと、露光装置5Y,5M,5C,5Kと、現像装置6Y,6M,6C,6Kと、中間転写ベルト1を挟んで各感光体3Y,3M,3C,3Kと対向する1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kがそれぞれ配置されている。1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kは、対応する感光体3Y,3M,3C,3Kに近接して配置されている。
【0050】
中間転写ベルト1の中間転写ベルト駆動ローラー8で支持された部分には、2次転写ローラー9が圧接されている。2次転写ローラー9と中間転写ベルト駆動ローラー8とが接する領域において2次転写が行なわれる。2次転写領域後方の搬送経路R1の下流位置には、定着ローラー10と加圧ローラー11とを含む定着装置20が配置されている。
【0051】
画像形成装置600の下部には、給紙カセット30が着脱可能に配置されている。給紙カセット30内に積載収容された用紙Pは、給紙ローラー31の回転によって最上部の用紙から1枚ずつ搬送経路R1に送り出されることになる。
【0052】
また、画像形成装置600の上部には、操作パネル90が配置されている。操作パネル90は、一例として、タッチパネルとディスプレイとが互いに重ね合わせられた画面と、物理ボタンとから構成される。
【0053】
なお、上記の例において画像形成装置600は、タンデム式の中間転写方式を採用しているがこれに限定されるものではない。
【0054】
(画像形成装置の概略動作)
次に、以上の構成からなる画像形成装置600の概略動作について説明する。外部装置(たとえば、パソコン等)から後述するCPU810に画像信号が入力される。CPU810は、この画像信号をイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックに色変換したデジタル画像信号を作成する。また、CPU810は、作成したデジタル信号に基づいて、各作像ユニット2Y,2M,2C,2Kの各露光装置5Y,5M,5C,5Kを発光させて露光を行なう。
【0055】
これにより、各感光体3Y,3M,3C,3K上に形成された静電潜像は、各現像装置6Y,6M,6C,6Kによりそれぞれ現像されて各色のトナー画像となる。各色のトナー画像は、各1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kの作用により、図6中の矢印A方向に移動する中間転写ベルト1上に順次重ね合わせて1次転写される。
【0056】
このようにして中間転写ベルト1上に形成されたトナー画像は、2次転写ローラー9の作用により、用紙Pに一括して2次転写される。用紙Pに2次転写されたトナー画像は、定着装置20に達する。トナー画像は、加熱された定着ローラー10、および加圧ローラー11の作用により用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、排紙ローラー50を介して排紙トレイ60に排出される。
【0057】
(作像ユニット)
以下、作像ユニットの具体的な構成を説明する。なお、各作像ユニット2Y,2M,2C,2Kの構成は同じであるので、一例として作像ユニット2Yの構成について説明する。
【0058】
図7は、作像ユニット2Yの構成を表す図である。
図7を参照して、作像ユニット2Yは、上述の感光体3Y、帯電ローラー4Y、露光装置5Y、現像装置6Y、1次転写ローラー7Yに加え、電源装置710Yと、電圧センサー720Yとをさらに有する。
【0059】
電源装置710Yは、定電圧モードと定電流モードとを切り替え可能に構成される。電源装置710Yは、定電圧モードにおいて1次転写ローラー7Yに対して定電圧を印加し、定電流モードにおいて1次転写ローラー7Yに対して定電流を流す。
【0060】
電圧センサー720Yは、1次転写ローラー7Yの電気的特性値を測定するためのセンサーとして機能する。一例として、電圧センサー720Yは、電源装置710Yが1次転写ローラー7Yに対して定電流(例えば30μA)を流したときの、1次転写ローラー7Yに印加される電圧値を測定するように構成される。
【0061】
以下では、上述の各色毎に設けられた構成要素からイエロー「Y」、マゼンタ「M」、シアン「C」、およびブラック「K」の符号を省略する場合がある。そのような構成要素は、4色の各構成要素の総称を表す。例えば、感光体3は、感光体3Y、3M、3C、3Kの総称を表す。
【0062】
(画像形成装置の電気的な接続関係)
図8は、実施形態1に従う画像形成装置600の電気的な構成の一例を表す図である。画像形成装置600は、画像形成装置600の制御装置として機能するCPU(Central Processing Unit)810を有する。CPU810は、RAM(Random Access Memory)820と、ROM(Read Only Memory)830と、記憶装置440と、電源装置850と、電源装置710と、操作パネル90と、環境センサー860と、通信I/F(インターフェイス)870とにそれぞれ電気的に接続されている。CPU810は、ROM830に格納される制御プログラム832を読み込んで実行することにより、接続される各デバイスの動作を制御する。
【0063】
RAM820は、CPU810が制御プログラム832を実行するためのワーキングメモリーとして機能する。記憶装置840は、ハードディスクドライブなどの不揮発性メモリーによって実現される。記憶装置840は、基準対応関係841と、使用量テーブル842と、抵抗値履歴テーブル843と、平均印字枚数テーブル844と、枚数補正テーブル845と、平均環境テーブル846と、環境補正テーブル847とを記憶している。
【0064】
使用量テーブル842は、各色の1次転写ローラー7の使用量を記憶する。使用量は、例えば、1次転写ローラー7を用いて印字された累計印字枚数(以下、「累計枚数」とも言う)、1次転写ローラー7の回転数、走行距離などを含む。使用量テーブル842に格納される各色毎の使用量は、1次転写ローラー7が使用されるごとにCPU810によって更新される。
【0065】
抵抗値履歴テーブル843は、1次転写ローラー7の抵抗値の履歴を各色毎に記憶する。より具体的には、CPU810は、所定のタイミングで取得された電圧センサー720の測定結果に基づいて、1次転写ローラー7の抵抗値を算出する。CPU810は、算出された抵抗値と上記所定のタイミングにおける累計枚数とを互いに関連付けて抵抗値履歴テーブル843に保存する。記憶装置840に格納されるその他の各データについては後述する。
【0066】
電源装置850は、帯電ローラー4に所定電圧を印加する。これにより感光体3は、帯電ローラー4によって帯電される。
【0067】
電源装置710は、上述の通り1次転写ローラー7に定電圧または定電流を印加する。電圧センサー720は、1次転写ローラーに印加される電圧を検出して、検出結果をCPU810に出力する。
【0068】
操作パネル90は、ユーザーから受け付けた操作内容(例えばタッチパネルにおける座標位置)をCPU810に出力する。
【0069】
環境センサー860は、画像形成装置600の機内の温度および湿度を測定し、測定結果をCPU810に出力する。
【0070】
通信I/F870は、一例として、無線LAN(Local Area Network)カードにより実現される。CPU810は、通信I/F870を介してLANまたはWAN(Wide Area Network)に接続されたサーバー800と通信可能に構成される。サーバー800は、例えば、画像形成装置600の製造元または販売元が画像形成装置600を管理するために、画像形成装置600の状態を表す情報の入力を受け付ける。
【0071】
(第1対応関係)
図9は、記憶装置840に記憶されている基準対応関係841を説明するための図である。
図9(A)は、ある局面に従う基準対応関係841のデータ構造の一例を表す。
図9(B)は、基準対応関係841を視覚的に表す図である。
【0072】
図9(A)を参照して、基準対応関係841は、定電圧モードにおける1次転写ローラー7の使用量と、1次転写ローラー7の電気的特性値の変動率との関係を複数保持している。
図9(A)に示される例において、1次転写ローラー7の使用量は当該1次転写ローラーを用いて印字された累計枚数を、変動率は使用量に対する1次転写ローラー7の抵抗値の傾きをそれぞれ表す。
【0073】
図9(A)に示されるように、変動率は累計枚数が増えるに従い小さくなる。また、
図9(B)に示されるように、1次転写ローラー7の抵抗値は定電圧モードにおいて、累計枚数が増えるに従い対数関数的に変化している。基準対応関係841に保持される各変動率は、予め定められた条件下の実験により予め算出された値である。予め定められた条件は、予め定められた温湿度、予め定められた1次転写ローラー7に印加する電圧値、予め定められた印字ジョブあたりの印字枚数を含む。
【0074】
なお、上記の例において、記憶装置840は、テーブル形式の基準対応関係841を記憶するように構成されているが、他の実施形態において、
図9(B)に示される曲線を表す関数を記憶するように構成されてもよい。
【0075】
(1次転写ローラー7の寿命予測)
次に、基準対応関係841を用いて1次転写ローラー7の使用可能期間(寿命)を予測する処理について具体例を用いて説明する。
【0076】
図10は、1次転写ローラー7の使用可能期間を予測する処理を説明するための図である。横軸は1次転写ローラー7を用いて印字された累計枚数を、縦軸は1次転写ローラー7の抵抗値をそれぞれ表す。一例として、1次転写ローラー7の抵抗値は、累計枚数が0枚のときに6.8logΩであって、累計枚数が10k枚(kは1000を意味する)のときに6.821logΩであって、累計枚数が29.7k枚のときに6.862logΩであったとする。これらの値は、電圧センサー720の出力結果に基づいて、CPU810によって算出される。
【0077】
まず、CPU810は、累計枚数が10k枚-29.7k枚のときの1次転写ローラー7の抵抗値の変動率P1=(6.862-6.821)/(29.7-10)*100=0.205[logΩ/100k枚]を算出する。
【0078】
また、CPU810は、基準対応関係841を参照して、累計枚数が10k枚-29.7k枚のときの、抵抗値の基準変動率P1Aが0.16[logΩ/100k枚]であると特定する。基準変動率P1Aは、基準対応関係841から推定される変動率である。これに対して変動率P1は、電圧センサー720の測定結果に基づいて算出された実際の変動率である。
【0079】
次に、CPU810は、基準変動率P1Aに対する変動率P1の比率RAを算出する。上記の例では、比率RA=0.205/0.16≒1.3となる。
【0080】
CPU810は、基準対応関係841に保持される各基準変動率に比率RAを乗じて補正し、補正後の対応関係1010に基づいて、定電流モードに切り替えるときの累計枚数N1を算出する。
【0081】
より具体的には、CPU810は、第1抵抗値(7.2logΩ)に到達する前の200k枚時点の1次転写ローラー7の抵抗値R200kを次の式(1)に従い算出する。
【0082】
<式1>
R200k=初期抵抗値+比率RA×(基準変動率PA1+基準変動率PA2)
=6.8+1.3×(0.16+0.12)
=7.16[logΩ]
基準変動率PA2は、基準対応関係841から推定される累計枚数100k枚-200k枚のときの変動率である。CPU810は、累計枚数200k枚と累計枚数N1との差分D1を次の式(2)に従い算出する。
【0083】
<式2>
D1=(第1抵抗値-R200k)/(基準変動率PA3×比率RA)×100
=(7.2-7.16)/(0.08×1.3)×100
=38.5[k枚]
基準変動率PA3は、基準対応関係841から推定される累計枚数200k枚-300k枚のときの変動率である。上記の結果から、CPU810は、定電流モードに切り替えるとき、つまり、抵抗値が第1抵抗値に到達するときの累計枚数が238.5k枚であると算出する。
【0084】
次に、CPU810は、定電流モードにおける変動率P3(つまり、直線1020における傾き)=基準変動率PA3×比率RA=0.104を算出する。CPU810は、1次転写ローラー7の使用可能期間に対応する累計印字枚数N2を、変動率P3と、累計枚数N1とに基づいて次の式(3)に従い算出する。
【0085】
<式3>
N2=(第2抵抗値-第1抵抗値)/変動率P3×100+累計枚数N1
=(7.35-7.2)/0.104×100+238.5k枚
=382.7k枚
(制御構造)
図11は、上記一連の1次転写ローラー7の寿命(使用可能期間)を算出する処理を表すフローチャートである。
図11に示される各処理は、CPU810が制御プログラム832を実行することにより実現される。
【0086】
ステップS1110にて、CPU810は、所定のタイミングであるか否かを判断する。所定のタイミングは、例えば、画像形成装置600に電源供給が開始されたタイミング、1次転写ローラー7を用いた累計印字枚数が所定枚数(例えば10k枚毎)に到達したタイミング、操作パネル90を介して入力されたユーザーから指定されたタイミングなどを含む。CPU810は、所定のタイミングであると判断した場合、ステップS1120の処理を実行する。
【0087】
ステップS1120にて、CPU810は、電圧センサー720の測定結果に基づいて、1次転写ローラー7の電気的特性値として抵抗値を取得する。CPU810は、取得した抵抗値と、当該抵抗値を取得したタイミングにおける累計枚数とを対応付けて抵抗値履歴テーブル843に格納する。
【0088】
ステップS1130にて、CPU810は、抵抗値履歴テーブル843を参照して、1次転写ローラー7の使用量に対する抵抗値の実際の変動率を算出する。
【0089】
ステップS1140にて、CPU810は、基準対応関係841を参照して、現在の使用量(使用量テーブル842に記憶されている累計枚数)に対応する基準変動率を特定する。一例として、現在の累計枚数が250k枚である場合、対応する基準変動率は0.08[logΩ/100k枚]となる。
【0090】
ステップS1150にて、CPU810は、基準変動率に対する実際の変動率の比率RAを算出する。ステップS1160にて、CPU810は、基準対応関係841と比率RAとに基づいて、1次転写ローラー7の抵抗値が第1抵抗値に到達するときの累計枚数N1(第1使用量)を推定する。
【0091】
ステップS1170にて、CPU810は、基準対応関係841を参照して、累計枚数N1のときの基準変動率(以下、「切替変動率」とも言う)を特定する。
【0092】
ステップS1180にて、CPU810は、切替変動率に比率RAを乗じた値に基づいて、抵抗値が第1抵抗値から第2抵抗値に到達するまでの印字枚数(第2使用量)を算出する。
【0093】
ステップS1190にて、CPU810は、第1使用量と第2使用量との積算値を、累計枚数N2(つまり、1次転写ローラー7の使用可能期間)として算出する。CPU810はさらに、算出された1次転写ローラー7の使用可能期間を、操作パネル90に表示する。
【0094】
上記によれば、実施形態に従う画像形成装置600は、実際に測定された1次転写ローラー7の抵抗値と1次転写ローラー7を用いて印字された累計枚数との対応関係(第2対応関係)に基づいて、予め記憶された基準対応関係841(第1対応関係)を補正することにより、モードの切り替え時を正確に予測できる。その結果、画像形成装置600は、モードの切り替え後における1次転写ローラー7の抵抗値の挙動を正確に予測できる。したがって、画像形成装置600は、モードが切り替わる場合であっても1次転写ローラー7の使用可能期間を正確に予測できる。
【0095】
また、画像形成装置600の使用条件が変化したことに応じて、1次転写ローラー7の使用量に対する抵抗値の変動率が変化する場合がある。このような場合においても、実施形態に従う画像形成装置600は、ステップS1110に示される所定のタイミングごとに、1次転写ローラー7の使用可能期間を算出する。そのため、画像形成装置600は、仮に1次転写ローラー7の使用量に対する抵抗値の変動率が変化した場合であっても、当該変化に応じた1次転写ローラー7の使用可能期間をその都度算出できる。
【0096】
なお、上記の例において、画像形成装置600は、抵抗値履歴テーブル843に格納される抵抗値のうち、直近2つの抵抗値に基づいて変動率を算出するように構成されているが、3つ以上の抵抗値に基づいて変動率を算出するように構成されてもよい。
【0097】
また、上記の例において、画像形成装置600は、1次転写ローラー7の抵抗値に基づいて1次転写ローラー7の使用可能期間を予測するように構成されているが、他のパラメーターによって予測してもよい。例えば、画像形成装置600は、1次転写ローラー7に定電流を流したときに1次転写ローラー7に印加される電圧値を実質的に抵抗値として見なしても良い。
【0098】
他の例として、画像形成装置600は、1次転写ローラー7に定電圧を印加したときに1次転写ローラー7に流れる電流値に基づいて1次転写ローラー7の使用可能期間を予測しても良い。係る場合、電流値と抵抗値とは逆数の関係にあるため、画像形成装置600は、測定された電流値が予め定められた電流値よりも小さくなるときの累計枚数を1次転写ローラー7の使用可能期間として予測する。
【0099】
また、上記の例において、1次転写ローラー7の使用可能期間を予測する構成について説明したが、画像形成装置600は、同様の手法を用いて他の部材の使用可能期間も予測できる。他の部材としては、帯電ローラー4、2次転写ローラー9などが挙げられる。例えば、帯電ローラー4の使用可能期間を予測する場合、画像形成装置600は、帯電ローラー4の抵抗値を測定するためのセンサーと有し、記憶装置840は帯電ローラー4の使用量と電気的特性値(例えば抵抗値)との対応関係を記憶している。また、電源装置850は、電源装置710と同様、定電圧モードと定電流モードとを切り替え可能に構成される。
【0100】
図12は、1次転写ローラー7の使用可能期間の通知態様の一例を表す図である。ある局面においてCPU810は、操作パネル90に1次転写ローラー7の使用可能期間を表示する。
【0101】
図12に示される例において、CPU810は、メッセージ1210,1220と、メーター1230とを操作パネル90に表示する。メッセージ1210は、累計枚数N2から現在の累計枚数を差し引いた印字枚数、つまり、1次転写ローラー7を用いて印字できる残りの印字枚数を表す。メッセージ1220は、累計枚数N2に対する現在の累計枚数の割合を表す。メーター1230は、メッセージ1220に示される割合を視覚的に表す。
【0102】
上記によれば、ユーザーは、1次転写ローラー7を今までどれだけ使って、あとどれだけ使うことができるのかを視覚的に容易に理解できる。
【0103】
なお、他の局面においてCPU810は、1次転写ローラー7の寿命を時間(例えば、あと3か月)を用いて操作パネル90に表示してもよい。
【0104】
また、画像形成装置600は、メッセージ1220に示される割合が所定割合(例えば90%)を超えた場合に、画像形成装置600を管理するサーバー800に対してその旨を通知するように構成されてもよい。これにより、サービスマンは、間もなく寿命を迎える部材を含む画像形成装置に対して効率的に部材の交換を行なうことができる。また、画像形成装置600は、部材が寿命を迎えることにより印字できない期間(ダウンタイム)が長期にわたり発生することを抑制できる。
【0105】
(定電流モードに移行した後の寿命予測)
実施形態に従う画像形成装置600は、定電圧モードから定電流モードに移行した後にも、1次転写ローラー7の使用可能期間を算出できる。
【0106】
図13は、定電流モードに移行した後に1次転写ローラー7の使用可能期間を予測する処理を説明するための図である。横軸は1次転写ローラー7を用いて印字された累計枚数を、縦軸は1次転写ローラー7の抵抗値をそれぞれ表す。
【0107】
図10に示された例では、定電圧モードにおいて累計枚数が29.7k枚のときに1次転写ローラー7の使用可能期間が382.7k枚であると予測された。
図13では、一例として、定電流モードにおいて累計枚数が300k枚のときに1次転写ローラー7の使用可能期間を改めて算出する。
【0108】
CPU810は、電圧センサー720の測定結果に基づいて、累計枚数300k枚のときの1次転写ローラー7の抵抗値R300kが7.3logΩであると算出する。
【0109】
CPU810は、定電流モードにおける、1次転写ローラー7の使用量に対する1次転写ローラー7の抵抗値の変動率P3を以下の式(4)に従い算出する。
【0110】
<式4>
P3=(R300k-第1抵抗値)/{(現在の累計枚数-累計枚数N1)/100}
=(7.3-7.2)/{(300k-238.5k)/100}
=0.163[logΩ/100k枚]
定電流モードにおいて、上記変動率P3は原則変動しない。そのため、CPU810は、上記算出された変動率P3と、累計枚数N1(238.5k枚)とに基づいて、累計枚数N2を以下の式(5)に従い改めて算出する。
【0111】
<式5>
N2=(第2抵抗値-第1抵抗値)/変動率P3×100+累計枚数N1
=(7.35-7.2)/0.163×100+238.5k枚
=330.5k枚
上記によれば、実施形態に従う画像形成装置600は、定電流モードにおいて実際に測定された1次転写ローラー7の抵抗値に基づいて、1次転写ローラー7の使用可能期間を修正できる。
【0112】
[変形例]
(印字ジョブあたりの平均印字枚数に基づく補正)
変形例に従う画像形成装置600の帯電ローラー4、1次転写ローラー7、2次転写ローラー9は、電荷(キャリア)がイオンであるイオン導電材によって構成される。イオン導電材は、単位時間当たりの使用量が多いほど使用可能期間が短くなる。その理由は、イオン導電材は、単位時間あたりの使用量が多いほど、内部のイオン分布が偏る(つまり抵抗が高くなる)ためである。
【0113】
そこで、変形例に従う画像形成装置600は、イオン導電材の単位時間当たりの使用量の指標として、1つの印字ジョブあたりの平均印字枚数を用いて、イオン導電材により構成される部材の使用可能期間を補正する。一例として、1次転写ローラー7の使用可能期間を補正する処理について説明する。
【0114】
変形例に従う画像形成装置600は、記憶装置840に記憶されている平均印字枚数テーブル844と枚数補正テーブル845とに基づいて、1次転写ローラー7の使用可能期間を補正する。
【0115】
平均印字枚数テーブル844は、1つの印字ジョブあたりの平均印字枚数を各色毎に記憶している。CPU810は、印字ジョブが入力されるごとに平均印字枚数テーブル844を更新する。
【0116】
図14は、枚数補正テーブル845のデータ構造の一例を表す。
図14に示されるように、枚数補正テーブル845は、1つの印字ジョブあたりの平均印字枚数と、補正係数とを互いに関連付けて保持している。より具体的には、枚数補正テーブル845は、平均印字枚数が多くなるほど、補正係数が小さくなるように構成されている。
【0117】
所定のタイミングにおいて、CPU810は、上述の方法に従って1次転写ローラー7の使用可能期間が330.5k枚であると予測する。CPU810はさらに、平均印字枚数テーブル844と枚数補正テーブル845とを参照して、当該所定のタイミングにおける平均印字枚数に対応する補正係数を特定する。一例として、平均印字枚数が5.0枚である場合、CPU810は、補正係数が1.2であると特定する。
【0118】
CPU810は、上述の方法で算出された1次転写ローラー7の使用可能期間330.5k枚に、特定された補正係数1.2を乗じて、補正された使用可能期間396.6k枚を取得する。変形例に従うCPU810は、当該補正された1次転写ローラー7の使用可能期間を操作パネル90に表示するように構成される。
【0119】
上記によれば、変形例に従う画像形成装置600は、イオン導電材で形成される部材の使用可能期間を予測する場合に、当該部材の単位時間当たりの使用量を考慮することで、より正確な使用可能期間を予測できる。
【0120】
なお、他の局面において、画像形成装置600は、直近の所定期間(例えば1か月間)における単位時間当たりの使用量に基づいて、イオン導電材で形成される部材の使用可能期間を補正するように構成されてもよい。
【0121】
(環境に基づく補正)
イオン導電材の抵抗値の上昇率は、温度が低いほど、または湿度が低いほど大きい。その理由は、温度が低いほど、または湿度が低いほど、イオンの移動度が低くイオン導電材の内部のイオン分布が偏る(つまり抵抗が高くなる)ためである。
【0122】
そこで、変形例に従う画像形成装置600は、環境センサー860により検出される温湿度に基づいて、イオン導電材により構成される部材の使用可能期間を補正する。
【0123】
より具体的には、変形例に従う画像形成装置600は、記憶装置840に記憶されている平均環境テーブル846と、環境補正テーブル847とに基づいて使用可能期間を補正する。
【0124】
平均環境テーブル846は、イオン導電材により構成される部材ごとに、当該部材が画像形成装置600に装着されている期間における平均温度および平均湿度を記憶している。CPU810は、所定時間間隔(例えば、10分)ごとに環境センサー860により温度および湿度を測定し、平均環境テーブル846に保持される平均温度および平均湿度を更新する。
【0125】
図15は、環境補正テーブル847のデータ構造の一例を表す。
図15に示されるように、環境補正テーブル847は、平均環境と補正係数とを互いに関連付けて保持している。より具体的には、5つの平均環境「HH環境」「NN-HH環境」「NN環境」「NN-LL環境」「LL環境」と、これらの各々に関連付けられた補正係数とを保持している。
【0126】
「HH環境」は、例えば、平均温度が25℃以上であって、平均湿度が70%以上の環境を表す。「NN-HH環境」は、例えば、平均温度が25℃以上であって平均湿度が30%以上70%未満である環境、および平均温度が15℃以上25℃未満であって平均湿度が70%以上である環境を表す。「NN環境」は、例えば、平均温度が15℃以上25℃未満であって平均湿度が30%以上70%未満である環境を表す。「NN-LL環境」は、例えば、平均温度が15℃以上25℃未満であって平均湿度が30%未満である環境、および平均温度が15℃未満であって平均湿度が30%以上70%未満である環境を表す。「LL環境」は、例えば、平均温度が15℃未満であって、平均湿度が30%未満の環境を表す。
【0127】
図15に示されるように、環境補正テーブル847は、高温高湿であるほど高い補正係数を保持し、低温低湿であるほど低い補正係数を保持する。
【0128】
所定のタイミングにおいて、CPU810は、上述の方法に従って1次転写ローラー7の使用可能期間が330.5k枚であると予測する。CPU810はさらに、平均環境テーブル846と環境補正テーブル847とを参照して、当該所定のタイミングにおける平均環境に対応する補正係数を特定する。一例として、CPU810は、平均温度が18℃であって平均湿度が25%であることから、「NN-LL環境」に対応する補正係数0.85を特定する。
【0129】
CPU810は、上述の方法で算出された1次転写ローラー7の使用可能期間330.5k枚に、特定された補正係数0.85を乗じて、補正された使用可能期間280.9k枚を取得する。変形例に従うCPU810は、当該補正された1次転写ローラー7の使用可能期間を操作パネル90に表示するように構成される。
【0130】
上記によれば、変形例に従う画像形成装置600は、イオン導電材で形成される部材の使用可能期間を予測する場合に、当該部材の平均環境を考慮することで、より正確な使用可能期間を予測できる。
【0131】
なお、他の局面において、画像形成装置600は、直近の所定期間(例えば1か月間)における平均環境に基づいて、イオン導電材で形成される部材の使用可能期間を補正するように構成されてもよい。
【0132】
(サーバー800が使用可能期間を算出)
上記の例において、画像形成装置600が1次転写ローラー7の使用可能期間を算出するように構成されているが、他の局面において、サーバー800が1次転写ローラー7の使用可能期間を算出するように構成されてもよい。
【0133】
係る場合、サーバー800は、上記の基準対応関係841を図示しない記憶装置において格納している。画像形成装置600は所定のタイミングになると(
図11のステップS1110でYES)、電圧センサー720の測定結果に基づく1次転写ローラー7の抵抗値と当該1次転写ローラー7を用いた累計枚数とをサーバー800に送信する。サーバー800は、受信したデータを図示しない記憶装置の抵抗値履歴テーブルに格納する。
【0134】
サーバー800の制御装置(例えばCPU)は、自身の記憶装置に格納される基準対応関係841と抵抗値履歴テーブルとに基づいて
図11におけるステップS1130-S1180の処理を実行することにより、1次転写ローラー7の使用可能期間を予測する。サーバー800は、予測結果を画像形成装置600に送信する。
【0135】
上記によれば、画像形成装置600は自身で1次転写ローラー7の使用可能期間の予測処理を行なわずともよい。また、サーバー800は、接続される画像形成装置600の部材の使用可能期間を把握することができる。
【0136】
[実施形態2]
上記では、定電圧モードから定電流モードに切り替わる場合における、部材の使用可能期間を予測する構成について説明した。実施形態2では、定電流モードから定電圧モードに切り替わる場合における、部材の使用可能期間を予測する構成について説明する。
【0137】
(画像形成装置の構造)
図16は、実施形態2に従う画像形成装置1600における作像ユニット1610Yの構造を表す図である。画像形成装置1600は、作像ユニット2Y,2M,2C,2Kに替えて作像ユニット1610Y,1610M,1610C,1610Kを有する点において、実施形態1に従う画像形成装置600とは相違する。
【0138】
作像ユニット1610Y,1610M,1610C,1610Kの構成は同じであるので、以下では一例として作像ユニット1610Yの構成について説明する。
【0139】
図16を参照して、作像ユニット1610Yは、感光体3Y、帯電ローラー4Y、露光装置5Y,現像装置6Y、1次転写ローラー7Yに加えて、クリーニングブラシ1620Y,1640Yをさらに有する。
【0140】
クリーニングブラシ1620Yには回収ローラー1622Yが圧接されており、回収ローラー1622Yにはスクレーパー1624Yが当接して配置されている。また、電源装置1630Yは、クリーニングブラシ1620Yに対して正の電圧を印加することにより、クリーニングブラシ1620Yを正に帯電させる。
【0141】
クリーニングブラシ1640Yには回収ローラー1642Yが圧接されており、回収ローラー1642Yにはスクレーパー1644Yが当接して配置されている。また、電源装置1650Yは、クリーニングブラシ1640Yに対して負の電圧を印加することにより、クリーニングブラシ1640Yを負に帯電させる。
【0142】
電源装置1630Yおよび1650Yは、クリーニングブラシ1620Yまたは1640Yの使用に伴い、定電流モードから定電圧モードに切り替わるように構成される。電源装置1630Yおよび1650Yは、定電流モードにおいて対応するクリーニングブラシに対して定電流を流し、定電圧モードにおいて対応するクリーニングブラシに対して定電圧を印加する。
【0143】
感光体3Y上には、1次転写ローラー7Yによって転写されなかったトナー(未転写のトナー)が存在する。この未転写のトナーは、クリーニングブラシ1620Yまたは1640Yによって吸着され、回収ローラー1622Yまたは1642Yを介してスクレーパー1624Yまたは1644Yによって図示しないボックスに回収される。
【0144】
基本的には未転写のトナーは負に帯電しているが、1次転写ローラー7Yから印加された正電圧の影響を受け、一部のトナーは正に帯電している。そのため、正に帯電したクリーニングブラシ1620Yによって負に帯電した未転写のトナーを回収し、負に帯電したクリーニングブラシ1640Yによって正に帯電した未転写のトナーを回収する。
【0145】
また、作像ユニット1610Yは、クリーニングブラシ1620Yの電気的特性値を測定するための電圧センサー1632Yと、クリーニングブラシ1640Yの電気的特性値を測定するための電圧センサー1652Yとをさらに有する。
【0146】
なお、上記の例において、画像形成装置1600は、電圧センサー1632Yおよび1652Yを有するように構成されているが、クリーニングブラシ1620Yおよび1640Yがユニットとして同時に交換される場合、電圧センサー1632Yのみを有する構成でもよい。
【0147】
その理由は、クリーニングブラシ1620Yの使用可能期間がクリーニングブラシ1640Yの使用可能期間よりも短いためである。これは、上述の通り未転写のトナーの大部分は負に帯電しており、クリーニングブラシ1620Yの方がクリーニングブラシ1640Yよりも回収するトナーが多いことに起因する。
【0148】
(画像形成装置の電気的な接続関係)
図17は、実施形態2に従う画像形成装置1600の電気的な構成の一例を表す図である。なお、
図17に示される要素のうち、
図8に示される要素と同じ要素には同じ符号を付している。そのため、その要素についての説明は繰り返さない場合がある。
【0149】
ROM830は、制御プログラム1732を格納している。記憶装置840は、基準対応関係1710と、使用量テーブル842と、抵抗値履歴テーブル843と、係数1720とを記憶している。
【0150】
実施形態2における使用量テーブル842は、各色のクリーニングブラシ1620の使用量を記憶する。使用量は、例えば、クリーニングブラシ1620を用いて印字された累計枚数、クリーニングブラシ1620の回転数、走行距離などを含む。使用量テーブル842に格納される各色毎の使用量は、クリーニングブラシ1620が使用されるごとにCPU810によって更新される。
【0151】
また、実施形態2における抵抗値履歴テーブル843は、クリーニングブラシ1620の抵抗値の履歴を各色毎に記憶する。より具体的には、CPU810は、所定のタイミングで取得された電圧センサー1632の測定結果に基づいて、クリーニングブラシ1620の抵抗値を算出する。CPU810は、算出された抵抗値と上記所定のタイミングにおける累計枚数とを互いに関連付けて抵抗値履歴テーブル843に保存する。
【0152】
以下、基準対応関係1710と係数1720とを利用してクリーニングブラシ1620の使用可能期間を予測する処理について説明する。なお、クリーニングブラシ1640の使用可能期間の予測も同様の方法で実現される。
【0153】
図18は、基準対応関係1710を説明するための図である。
図18(A)は、ある局面に従う基準対応関係1710のデータ構造の一例を表す。
図18(B)は、基準対応関係1710を視覚的に表す図である。
【0154】
図18(A)を参照して、基準対応関係1710は、定電流モードにおけるクリーニングブラシ1620の使用量と、クリーニングブラシ1620の抵抗値の基準変動率との関係を複数保持している。基準対応関係1710に保持される各基準変動率は、予め定められた条件下の実験により予め算出された値である
。予め定められた条件は、予め定められた温湿度、予め定められたクリーニングブラシ1620に流す電流値、予め定められた印字ジョブあたりの印字枚数を含む。
【0155】
なお、
図18(B)に示されるように、定電流モードにおいて基準変動率は一定であるため、
図18(A)に示されるように使用量と基準変動率との関係を複数保持せずとも、1の基準変動率(
図18の例では0.1[logΩ/100k枚])を記憶するように構成されてもよい。
【0156】
係数1720は、定電圧モードにおけるクリーニングブラシ1620の使用量に対するクリーニングブラシ1620の抵抗値の変動率の傾きを表す。例えば、係数1720は0.8であり得る。この場合、一例として定電圧モードに切り替わった後の600k-700k枚の間の変動率が0.1[logΩ/100k枚]だった場合、次の700k-800k枚の間の変動率が0.08(=0.1×0.08)[logΩ/100k枚]であって、次の800k-900k枚の間の変動率が0.064(=0.08×0.08)であることを表す。この係数1720は、実験により予め定められている。
【0157】
(クリーニングブラシ1620の寿命予測)
次に、基準対応関係1710および係数1720を用いてクリーニングブラシ1620の使用可能期間(寿命)を予測する処理について具体例を用いて説明する。
【0158】
図19は、クリーニングブラシ1620の使用可能期間を予測する処理を説明するための図である。横軸はクリーニングブラシ1620を用いて印字された累計枚数を、縦軸はクリーニングブラシ1620の抵抗値をそれぞれ表す。一例として、クリーニングブラシ1620の抵抗値は、累計枚数が100k枚のときに7.35logΩであって、累計枚数が150k枚のときに7.39logΩであったとする。これらの値は、電圧センサー1632の出力結果に基づいて、CPU810によって算出される。また、第1抵抗値は7.75logΩで、第2抵抗値は7.9logΩであるとする。
【0159】
まず、CPU810は、累計枚数が100k枚-150k枚のときのクリーニングブラシ1620の抵抗値の変動率P1=(7.39-7.35)/(150-100)*100=0.08[logΩ/100k枚]を算出する。
【0160】
また、CPU810は、基準対応関係1710を参照して、累計枚数が100k枚-150k枚のときの、抵抗値の基準変動率P1Aが0.1[logΩ/100k枚]であると特定する。基準変動率P1Aは、基準対応関係1710から推定される変動率である。これに対して変動率P1は、電圧センサー1632の測定結果に基づいて算出された実際の変動率である。
【0161】
次に、CPU810は、基準変動率P1Aに対する変動率P1の比率RAを算出する。上記の例では、比率RA=0.08/0.1=0.8となる。
【0162】
CPU810は、基準対応関係1710に保持される各基準変動率に比率RAを乗じて補正し、補正後の基準対応関係1910に基づいて、定電圧モードに切り替えるときの累計枚数N1を次の式(6)に従い算出する。
【0163】
<式6>
N1=(第1抵抗値-R150k)/比率RA×100+150k枚
=(7.75-7.39)/0.08×100+150k枚
=600k枚
次にCPU810は、第2抵抗値(7.9logΩ)に到達する前の800k枚時点のクリーニングブラシ1620の抵抗値R800kを次の式(7)に従い算出する。
【0164】
<式7>
R800k=変動率P1×係数1720+変動率P1×係数1720^2+第1抵抗値
=0.08×0.8+0.08×0.8^2+7.75
=7.865
CPU810は、累計枚数800k枚と累計枚数N2との差分D2を次の式(8)に従い算出する。
【0165】
<式8>
D2=(第2抵抗値-R800k)/(変動率P1×係数1720^3)*100
=(7.9-7.865)/(0.08×0.8^3)*100
=85.4k枚
上記の結果から、CPU810は、クリーニングブラシ1620の使用可能期間を885.4k枚であると算出する。
【0166】
(制御構造)
図20は、上記一連のクリーニングブラシ1620の寿命(使用可能期間)を算出する処理を表すフローチャートである。
図20に示される各処理は、CPU810が制御プログラム1732を実行することにより実現される。
【0167】
ステップS2010にて、CPU810は、所定のタイミングであるか否かを判断する。所定のタイミングは、例えば、画像形成装置1600に電源供給が開始されたタイミング、クリーニングブラシ1620を用いた累計印字枚数が所定枚数(例えば50k枚毎)に到達したタイミング、操作パネル90を介して入力されたユーザーから指定されたタイミングなどを含む。CPU810は、所定のタイミングであると判断した場合、ステップS2020の処理を実行する。
【0168】
ステップS2020にて、CPU810は、電源装置1630はクリーニングブラシ1620に対して定電流(例えば30μA)を印加したときにクリーニングブラシ1620に印加される電圧値を電圧センサー1632によって測定する。CPU810は、測定結果に基づいて、クリーニングブラシ1620の電気的特性値として抵抗値を取得する。CPU810は、取得した抵抗値と、当該抵抗値を取得したタイミングにおける累計枚数とを対応付けて抵抗値履歴テーブル843に格納する。
【0169】
ステップS2030にて、CPU810は、抵抗値履歴テーブル843を参照して、クリーニングブラシ1620の使用量に対する抵抗値の実際の変動率を算出する。
【0170】
ステップS2040にて、CPU810は、基準対応関係1710に規定される基準変動率(=0.1[logΩ/100k枚])に対する上記算出した実際の変動率の比率RAを算出する。
【0171】
ステップS2050にて、CPU810は、基準対応関係1710(に規定される基準変動率)と比率RAとに基づいてクリーニングブラシ1620の抵抗値が第1抵抗値に到達するときの累計枚数N1(第1使用量)を推定する。
【0172】
ステップS2060にて、CPU810は、実際の変動率と、比率RAと、係数1720とに基づいて、クリーニングブラシ1620の抵抗値が第1抵抗値から第2抵抗値に到達するまでの印字枚数(第2使用量)を算出する。
【0173】
ステップS2070にて、CPU810は、第1使用量と第2使用量との積算値を、累計枚数N2(つまり、クリーニングブラシ1620の使用可能期間)として算出する。CPU810はさらに、算出されたクリーニングブラシ1620の使用可能期間を、操作パネル90に表示する。
【0174】
上記によれば、実施形態2に従う画像形成装置1600は、実際の変動率に基づいてモードの切り替え時を正確に予測できる。また、画像形成装置1600は、比率RAに基づいて、定電流モードから定電圧モードに切り替わった後のクリーニングブラシ1620の使用量に対するクリーニングブラシ1620の抵抗値の挙動を補正する。これにより、画像形成装置1600は、定電流モードから定電圧モードが切り替わる場合であってもクリーニングブラシ1620の使用可能期間を正確に予測できる。
【0175】
上記説明した各処理は、1つのCPU810によって実現されるものとしてあるが、これに限られない。これらの各種機能は、少なくとも1つのプロセッサのような半導体集積回路、少なくとも1つの特定用途向け集積回路ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのDSP(Digital Signal Processor)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、および/またはその他の演算機能を有する回路によって実装され得る。
【0176】
これらの回路は、有形の読取可能な少なくとも1つの媒体から、1以上の命令を読み出すことにより上記の各種処理を実行しうる。
【0177】
このような媒体は、磁気媒体(たとえば、ハードディスク)、光学媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)、DVD)、揮発性メモリー、不揮発性メモリーの任意のタイプのメモリーなどの形態をとるが、これらの形態に限定されるものではない。
【0178】
揮発性メモリーはDRAM(Dynamic Random Access Memory)およびSRAM(Static Random Access Memory)を含み得る。不揮発性メモリーは、ROM、NVRAMを含み得る。
【0179】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0180】
1 中間転写ベルト、2,1610 作像ユニット、3 感光体、4 帯電ローラー、7 1次転写ローラー、9 2次転写ローラー、90 操作パネル、440,840 記憶装置、600,1600 画像形成装置、710,850,1630,1650 電源装置、720,1632,1652 電圧センサー、800 サーバー、810 CPU、832,1732 制御プログラム、841,1710,1910 基準対応関係、842 使用量テーブル、843 抵抗値履歴テーブル、844 平均印字枚数テーブル、845 枚数補正テーブル、846 平均環境テーブル、847 環境補正テーブル、860 環境センサー、1620,1640 クリーニングブラシ、1720 係数。