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特許7031299位置調整装置、これを備えたクレーン及びウェイト結合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】位置調整装置、これを備えたクレーン及びウェイト結合方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/74 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
B66C23/74 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017251009
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019116348
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖弘
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024867(JP,A)
【文献】特開平08-199630(JP,A)
【文献】特開2013-100161(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0049075(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンタウェイトと、前記カウンタウェイトを載せる載置部を有するパレットと、前記載置部の下方に配置される自走式台車とを含むウェイトユニットがクレーンのマストから吊り下げられる際の前記ウェイトユニットの全体の重量バランスを取るために、前記パレットに対する前記自走式台車の相対的な位置を調整する位置調整装置であって、
前記ウェイトユニットの一部として使用される前記自走式台車に関する情報を受け付ける入力部と、
前記自走式台車に関する前記情報に基づいて、前記ウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる前記自走式台車の予定停止位置を決める位置決定部と、
前記載置部の下方に進入する前記自走式台車の前記パレットに対する相対的な位置を検知する検知部と、
前記検知部による検知結果に基づいて、前記自走式台車が前記予定停止位置に近づいたことを表す位置情報及び前記自走式台車が前記予定停止位置に到達したことを表す位置情報の少なくとも一方をオペレーターに知らせる報知部と、を備える位置調整装置。
【請求項2】
前記検知部による検知結果に基づいて、前記自走式台車を停止させる制御を行う台車制御部をさらに備える、請求項1に記載の位置調整装置。
【請求項3】
前記入力部は、前記ウェイトユニットの一部として使用される前記カウンタウェイトに関する情報をさらに受け付けるように構成されており、
前記位置決定部は、前記自走式台車に関する前記情報と、前記カウンタウェイトに関する前記情報との組み合わせに基づいて、前記予定停止位置を決めるように構成されている、請求項1又は2に記載の位置調整装置。
【請求項4】
前記報知部は、前記自走式台車を遠隔操縦する遠隔操縦装置に前記位置情報を表示するように構成されている、請求項1~3の何れか1項に記載の位置調整装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記載置部の下方に進入する前記自走式台車の前記パレットに対する相対的な位置を、前記自走式台車の進入方向に互いに間隔をあけた少なくとも2カ所において検知するように構成されており、
前記報知部は、前記2カ所のうちの一方における前記検知部による検知結果に基づく位置情報と、前記2カ所のうちの他方における前記検知部による検知結果に基づく位置情報とが互いに異なる内容として前記オペレーターに認識されるように、これらの位置情報を前記オペレーターに知らせるように構成されている、請求項1~4の何れか1項に記載の位置調整装置。
【請求項6】
前記報知部は、発音、発光、表示、又はこれらの組み合わせにより、前記位置情報をオペレーターに知らせるように構成されている、請求項1~5の何れか1項に記載の位置調整装置。
【請求項7】
下部走行体と、
この下部走行体の上に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に対して起伏可能に取り付けられたブームと、
前記上部旋回体に取付けられており前記ブームを後方から支持するマストと、
カウンタウェイトと、
前記カウンタウェイトを載置する載置部を有するパレットと、
前記載置部の下方に進入する自走式台車の前記パレットに対する相対的な位置を調整する請求項1~6の何れか1項に記載の位置調整装置と、を備え、
前記カウンタウェイト及び前記パレットは、前記上部旋回体の後方に配置されるとともに、前記自走式台車と結合された状態で、前記ブームとの間でつり合いをとるようにガイラインを介して前記マストから吊り下げられるように構成されている、クレーン。
【請求項8】
カウンタウェイトと、前記カウンタウェイトを載せる載置部を有するパレットと、前記載置部の下方に配置される自走式台車とを結合してクレーン用のウェイトユニットとして用いるためのウェイト結合方法であって、
前記自走式台車に関する情報に基づいて、前記ウェイトユニットがクレーンのマストから吊り下げられたときに前記ウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる前記自走式台車の予定停止位置であって前記自走式台車の前記パレットに対する相対的な位置である予定停止位置を決め、
前記載置部の下方に進入する前記自走式台車が前記予定停止位置に近づいたとき又は前記予定停止位置に到達したときに前記自走式台車を操縦して停止させ、
前記自走式台車が停止した位置において、前記カウンタウェイトと、前記パレットと、前記自走式台車とを一体的に結合するウェイト結合方法。
【請求項9】
前記予定停止位置は、前記自走式台車に関する前記情報と前記カウンタウェイトに関する情報との組み合わせに基づいて前記ウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる位置とされる、請求項8に記載のウェイト結合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウンタウェイトを備えたクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行可能な下部走行体と、下部走行体に対して旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、上部旋回体に対して起伏可能に取り付けられたブームと、上部旋回体に取付けられておりブームを後方から支持するマストと、上部旋回体の後方に配置されておりブームとの間でつり合いをとるようにガイラインを介してマストに接続されたカウンタウェイトと、を備えたクレーンが知られている。このような従来のクレーンにおいて、カウンタウェイトは、クレーンが重量物を吊り上げるために設けられるSHL(Super Heavy Lifting)用ウェイトとして、クレーンのバランスを保つ機能を有する。
【0003】
このようにクレーンをSHLの用途で使用する際には、カウンタウェイト用の台車が必要になる。一般に、クレーンに用いられるカウンタウェイト台車は、そのクレーンに対して専用で設計されたものが使用される。しかし、クレーン毎に専用の台車を設計することは、それを設計開発する時間とコストがかかる。
【0004】
そこで、例えば、重量物を運搬するための汎用の自走式台車である自走式多軸台車、SPMT(Self-Propelled Modular Transporter)などと呼ばれる台車を、カウンタウェイト用の自走式台車として用いることが考えられる。その一例として、特許文献1には、パレットと、自走式台車とを備えたクレーン用カウンタウェイト支持装置が記載されている。
【0005】
特許文献1のカウンタウェイト支持装置では、カウンタウェイトを載置したパレットの載置部(荷台)の下方に自走式台車を進入させた後、自走式台車によってパレットを持ち上げ、この状態で自走式台車をクレーンの近傍に移動させる。そして、ガイラインを介してカウンタウェイトをマストから吊り下げる。このようにSPMTのような汎用の自走式台車をカウンタウェイト用の台車として用いることにより、クレーン毎に専用の自走式台車を設計開発する必要がなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5632818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、SPMTのような汎用の自走式台車が、特許文献1のようにカウンタウェイトをクレーンの近傍に移動させるための台車として用いられるだけでなく、自走式台車自体がウェイトの一部として用いられる場合、すなわち、カウンタウェイトと、これを載置する載置部を有するパレットと、パレットの載置部の下方に配置される自走式台車とが一体的に結合され、これら全体がウェイトユニットとして用いられる場合、次のような問題が生じる。
【0008】
上記のSPMTのような自走式台車は、荷台、走行ユニットなどを有する台車本体と、この台車本体の長手方向の一端に設けられたパワーパックと、を備えている。このパワーパックはエンジンなどの動力発生機を有しているので重量が大きい。このため、自走式台車の重心は自走式台車の長手方向の一端側に偏っている。そして、自走式台車の台車本体とパワーパックの重量は、自走式台車ごとに異なっている。したがって、使用される自走式台車が変わると、カウンタウェイト、パレット及び自走式台車を一体としたウェイトユニットの全体の重心の位置も変わることになる。
【0009】
そして、上記ウェイトユニットがガイラインを介してマストに吊り下げられた状態で、クレーンがそのフックに掛けた吊り荷を吊り上げていくと、ウェイトユニットが地面から次第に浮き上がる。このようにウェイトユニットが浮き上がったときに、ウェイトユニットの重量バランス、すなわち、カウンタウェイト、パレット及び自走式台車の全体の重量バランスがうまく取れないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、カウンタウェイト、パレット及び自走式台車を一体のウェイトユニットとして用いる場合において、これら全体の重量バランスを取るために、パレットに対する自走式台車の相対的な位置を調整する位置調整装置、これを備えたクレーン、及びウェイト結合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の位置調整装置は、カウンタウェイトと、前記カウンタウェイトを載せる載置部を有するパレットと、前記載置部の下方に配置される自走式台車とを含むウェイトユニットがクレーンのマストから吊り下げられる際の前記ウェイトユニットの全体の重量バランスを取るために、前記パレットに対する前記自走式台車の相対的な位置を調整する装置である。前記位置調整装置は、前記ウェイトユニットの一部として使用される前記自走式台車に関する情報を受け付ける入力部と、前記自走式台車に関する前記情報に基づいて、前記ウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる前記自走式台車の予定停止位置を決める位置決定部と、前記載置部の下方に進入する前記自走式台車の前記パレットに対する相対的な位置を検知する検知部と、前記検知部による検知結果に基づいて、前記自走式台車が前記予定停止位置に近づいたことを表す位置情報及び前記自走式台車が前記予定停止位置に到達したことを表す位置情報の少なくとも一方をオペレーターに知らせる報知部と、を備える。
【0012】
本発明の位置調整装置によれば、自走式台車をパレットの載置部の下方に進入させるときに、自走式台車を予定停止位置又はその近傍に停止させることができるので、カウンタウェイト、パレット及び自走式台車がウェイトユニットとして一体的にクレーンのマストから吊り下げられる際の当該ウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる。これにより、吊り荷やウェイトユニットを大きく揺らすことなく作業を行うことができる。具体的には次の通りである。
【0013】
本発明の位置調整装置では、入力部が受け付けた自走式台車に関する情報に基づいて、位置決定部が、ウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる自走式台車の予定停止位置を決める。そして、オペレーターがパレットの載置部の下方に自走式台車を進入させると、検知部が自走式台車のパレットに対する相対的な位置を検知し、その検知結果に基づいて、報知部がオペレーターに対して自走式台車の位置情報を知らせる。これにより、オペレーターは、自走式台車が停止すべき位置に近づいたこと又は到達したことを知ることができる。
【0014】
そして、実際に自走式台車を予定停止位置又はその近傍において停止させるステップは、例えば、オペレーターによる自走式台車の操縦によって行われる。この場合、自走式台車が予定停止位置に近づいたこと又は到達したことを報知部によって知らされたオペレーターは、自走式台車を操縦して自走式台車を予定停止位置又はその近傍において停止させることができる。自走式台車の操縦は、オペレーターが実際に自走式台車の運転室で行ってもよく、オペレーターが自走式台車の外で遠隔操縦等によって行ってもよい。なお、自走式台車をパレットの載置部の下方に進入させる作業において、オペレーターは、自走式台車を非常に低い速度で徐行運転する。このため、自走式台車が予定停止位置に近づいたこと又は到達したことを報知部によって知らされたときに、オペレーターが自走式台車の停止操作を行えば、自走式台車を予定停止位置又はその近傍で停止させることができる。
【0015】
また、前記位置調整装置は、前記検知部による検知結果に基づいて、前記自走式台車を停止させる制御を行う台車制御部をさらに備えていてもよい。この場合、実際に自走式台車を予定停止位置又はその近傍において停止させるステップは、自走式台車が予定停止位置に近づいたとき又は到達したときに、検知部による検知結果に基づいて台車制御部による自動操縦によって行われる。これにより、自走式台車を予定停止位置又はその近傍で停止させることができる。
【0016】
このような台車制御部による自動操縦の場合であっても、オペレーターは、自走式台車が予定停止位置に近づいたこと又は到達したことを報知部によって知らされる。したがって、オペレーターは、報知部による報知のタイミングと、自走式台車の自動停止のタイミングとがほぼ一致していることを、目視で確認することができる。すなわち、オペレーターは、自走式台車が適正な位置(予定停止位置又はその近傍)で自動停止したことを目視で確認することができる。言い換えると、オペレーターは、自走式台車の自動停止が例えば故障などによる不具合を原因とするものではなく、自走式台車が適正な位置に到達したことを原因とするものであることを、報知部からの位置情報によって認識することができる。
【0017】
前記位置調整装置において、前記入力部は、前記ウェイトユニットの一部として使用される前記カウンタウェイトに関する情報をさらに受け付けるように構成されており、前記位置決定部は、前記自走式台車に関する前記情報と、前記カウンタウェイトに関する前記情報との組み合わせに基づいて、前記予定停止位置を決めるように構成されていてもよい。
【0018】
この構成は、使用されるカウンタウェイトが変わることによってウェイトユニットの全体の重心の位置が変わる場合に適している。かかる場合の具体例としては、パレットの載置部における前側の部分と載置部における後側の部分のそれぞれに、カウンタウェイトが個別に積載される場合であって、前側の部分に積載されるカウンタウェイトの積載枚数と、後側の部分に積載されるカウンタウェイトの積載枚数とが異なる場合を挙げることができる。なお、ここでいう前側とは、パレットの載置部の下方に自走式台車が進入する進入方向における前側をいう。
【0019】
上記のように使用されるカウンタウェイトが変わることによってウェイトユニットの全体の重心の位置が変わる場合であっても、入力部が受け付けたカウンタウェイトに関する情報と、自走式台車に関する情報との組み合わせに基づいて、位置決定部が、ウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる予定停止位置を決めることができる。これにより、自走式台車をパレットの載置部の下方に進入させるときに、自走式台車を予定停止位置又はその近傍に停止させることができる。
【0020】
前記位置調整装置において、前記報知部は、前記自走式台車を遠隔操縦する遠隔操縦装置に前記位置情報を表示するように構成されていてもよい。
【0021】
この構成では、オペレーターは、手元の遠隔操縦装置(リモートコントローラー)に表示される位置情報に基づいて、自走式台車が予定停止位置に近づいたこと又は到達したことを迅速、容易、確実に把握することができる。
【0022】
前記位置調整装置において、前記検知部は、前記載置部の下方に進入する前記自走式台車の前記パレットに対する相対的な位置を、前記自走式台車の進入方向に互いに間隔をあけた少なくとも2カ所において検知するように構成されており、前記報知部は、前記2カ所のうちの一方における前記検知部による検知結果に基づく位置情報と、前記2カ所のうちの他方における前記検知部による検知結果に基づく位置情報とが互いに異なる内容として前記オペレーターに認識されるように、これらの位置情報を前記オペレーターに知らせるように構成されていてもよい。
【0023】
この構成では、自走式台車の進入方向に互いに間隔をあけた少なくとも2カ所において自走式台車の位置が検知部によって検知され、前記2カ所における検知結果に基づく2つの位置情報が互いに異なる内容としてオペレーターに認識される。したがって、例えば、オペレーターは、2カ所のうちの進入方向の上流側における位置情報に基づいて自走式台車の速度を下げ、その後、下流側における位置情報に基づいて自走式台車の速度をさらに下げるというような操縦を行うことができる。これにより、自走式台車の実際の停止位置と、予定停止位置との差異をより小さくすることができる。
【0024】
前記位置調整装置において、前記報知部は、発音、発光、表示、又はこれらの組み合わせにより、前記位置情報をオペレーターに知らせるように構成されていてもよい。
【0025】
この構成では、発音、発光、表示、又はこれらの組み合わせのように、オペレーターにとって位置情報の認識が容易な報知手段が用いられるので、オペレーターは、自走式台車が予定停止位置に近づいたこと又は到達したことを、容易に把握することができる。
【0026】
本発明のクレーンは、下部走行体と、この下部走行体の上に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に対して起伏可能に取り付けられたブームと、前記上部旋回体に取付けられており前記ブームを後方から支持するマストと、カウンタウェイトと、前記カウンタウェイトを載置する載置部を有するパレットと、前記載置部の下方に進入する自走式台車の前記パレットに対する相対的な位置を調整する上述の位置調整装置と、を備え、前記カウンタウェイト及び前記パレットは、前記上部旋回体の後方に配置されるとともに、前記自走式台車と結合された状態で、前記ブームとの間でつり合いをとるようにガイラインを介して前記マストから吊り下げられるように構成されている。
【0027】
本発明のクレーンによれば、自走式台車をパレットの載置部の下方に進入させるときに、自走式台車を予定停止位置又はその近傍に停止させることができるので、カウンタウェイト、パレット及び自走式台車をウェイトユニットとして一体的にクレーンのマストから吊り下げる際のウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる。
【0028】
本発明のウェイト結合方法は、カウンタウェイトと、前記カウンタウェイトを載せる載置部を有するパレットと、前記載置部の下方に配置される自走式台車とを結合してクレーン用のウェイトユニットとして用いるための方法である。前記ウェイト結合方法は、前記自走式台車に関する情報に基づいて、前記ウェイトユニットがクレーンのマストから吊り下げられたときに前記ウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる前記自走式台車の予定停止位置であって前記自走式台車の前記パレットに対する相対的な位置である予定停止位置を決め、前記載置部の下方に進入する前記自走式台車が前記予定停止位置に近づいたとき又は前記予定停止位置に到達したときに前記自走式台車を操縦して停止させ、前記自走式台車が停止した位置において、前記カウンタウェイトと、前記パレットと、前記自走式台車とを一体的に結合する。
【0029】
本発明のウェイト結合方法によれば、ウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる位置において自走式台車を停止させ、その位置においてカウンタウェイト、パレット及び自走式台車を一体的に結合できる。これにより、ウェイトユニットの全体の重量バランスが取られた状態で、カウンタウェイト、パレット及び自走式台車をウェイトユニットとして一体的にクレーンのマストから吊り下げることができる。これにより、吊り荷やウェイトユニットを大きく揺らすことなく作業を行うことができる。
【0030】
前記ウェイト結合方法において、前記予定停止位置は、前記自走式台車に関する前記情報と前記カウンタウェイトに関する情報との組み合わせに基づいて前記ウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる位置とされてもよい。
【0031】
この方法では、使用されるカウンタウェイトが変わることによってウェイトユニットの全体の重心の位置が変わる場合であっても、カウンタウェイトに関する情報と、自走式台車に関する情報との組み合わせに基づいて、ウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる予定停止位置が決めされる。したがって、かかる場合においても、ウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる位置において自走式台車を停止させ、その位置においてカウンタウェイト、パレット及び自走式台車を一体的に結合できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、自走式台車をパレットの載置部の下方に進入させるときに、自走式台車を予定停止位置又はその近傍に停止させることができるので、カウンタウェイト、パレット及び自走式台車をウェイトユニットとして一体的にクレーンのマストから吊り下げる際のウェイトユニットの全体の重量バランスを取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態に係る位置調整装置を備えたクレーンと、自走式台車とを含むクレーンシステムを示す側面図である。
図2図1のクレーンにおけるカウンタウェイト及びパレットと、図1の自走式台車の概略を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る位置調整装置の機能的構成を示すブロック図である。
図4】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係る位置調整装置の概略を示す側面図である。
図5】実施形態に係る位置調整装置及びウェイト結合方法を示すフローチャートである。
図6】(A)及び(B)は、実施形態の変形例1に係る位置調整装置の概略を示す側面図である。
図7】実施形態の変形例2に係る位置調整装置の検知部と、これを取り付けたパレット及び自走式台車の一部とを示す側面図である。
図8】(A)~(C)は、変形例2に係る位置調整装置の概略を示す側面図である。
図9】変形例2に係る位置調整装置及びウェイト結合方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る位置調整装置、これを備えたクレーン、及びウェイト結合方法について説明する。図1は、本実施形態に係るクレーン10を備えたクレーンシステム1を示す側面図である。なお、図には、「上」、「下」、「前」および「後」の方向が示されていることがあるが、当該方向は、本発明の実施形態に係るクレーンシステム1、クレーン10などの構造を説明するために便宜上示すものであり、クレーン10や自走式台車80の移動方向や使用態様などを限定するものではない。
【0035】
図1に示すように、クレーンシステム1は、クレーン10と、自走式台車80とを備える。クレーン10は、クレーン本体11と、1つ又は複数のカウンタウェイト31と、パレット40と、位置調整装置50(図3参照)とを備える。1つ又は複数のカウンタウェイト31と、パレット40と、自走式台車80とは、ウェイトユニット30を構成する。
【0036】
[クレーン本体]
クレーン本体11は、下部走行体12と、上部旋回体13と、ブーム14と、ラチスマスト15(マスト15)と、箱マスト16とを備える。
【0037】
下部走行体12は、地面Gを走行可能に構成されており、例えば左右一対のクローラ121を備える。
【0038】
上部旋回体13は、下部走行体12に取り付けられている。上部旋回体13は、下部走行体12が走行する地面Gに垂直な方向に延びる軸回りに下部走行体12に対して旋回可能に構成されている。上部旋回体13は、クレーン10のオペレーターが搭乗する運転室131を有する。上部旋回体13の後部にはクレーン10のバランスを調整するためのカウンタウェイト132が配置されている。このカウンタウェイト132は必須のものではない。
【0039】
ブーム14は、上部旋回体13に対して起伏可能に取り付けられている。ブーム14は、上部旋回体13に回動可能に支持されるブーム基端部と、長手方向においてブーム基端部とは反対側に配置されるブーム先端部とを有する。なお、図1に示されるブーム14は、いわゆるラチス型であるが、ブームの具体的な構造は限定されない。
【0040】
ブーム14のブーム基端部側には左右一対のバックストップ141が設けられる。これらのバックストップ141は、ブーム14が起立姿勢の時に上部旋回体13に当接する。この当接によって、ブーム14が強風等で後方に煽られることが規制される。
【0041】
マスト15は、上部旋回体13に取付けられておりブーム14を後方から支持する。マスト15は、マスト基端部と、マスト先端部とを有する。マスト基端部は、ブーム14の後側の位置でブーム14の回動軸と平行な回動軸回りに上部旋回体13に回動可能に支持される。マスト15は、ブーム14の起伏方向と同方向に回動可能である。マスト15のマスト先端部には、第1マストシーブ151と、第2マストシーブ152とが配置されている。第1マストシーブ151および第2マストシーブ152には、後述するブーム起伏用ロープ22が掛けられる。
【0042】
マスト15は、バックストップ153によって後方から支持されている。バックストップ153の基端部は、マスト15の基端部よりも後方において上部旋回体13に取り付けられており、バックストップ153の先端部は、マスト15の長手方向における一部分に取り付けられている。
【0043】
箱マスト16は、断面視で矩形形状を有する。箱マスト16の基端側の部分は、マスト15の後側で上部旋回体13に回動可能に連結される。箱マスト16の回動軸は、ブーム14の回動軸と平行に配置されており、箱マスト16は、ブーム14の起伏方向と同方向に回動可能である。
【0044】
クレーン本体11は、下部スプレッダ18と、上部スプレッダ19と、ガイライン20と、ブーム起伏用ロープ22と、ブーム起伏用ウインチW1とをさらに備える。
【0045】
下部スプレッダ18は、マスト先端部の軸支部回りに回動可能に支持される。下部スプレッダ18は、左右方向に配列された複数の第1シーブ181を有する。
【0046】
上部スプレッダ19は、下部スプレッダ18の前方に所定の間隔をおいて配置される。上部スプレッダ19は、ガイライン20を介してブーム先端部に接続される。上部スプレッダ19は、左右方向に配列された複数の第2シーブ191を有する。
【0047】
ガイライン20は、左右方向に一対配置されている。ガイライン20の後端部は、上部スプレッダ19に接続され、ガイライン20の前端部は、ブーム先端部に接続される。
【0048】
ブーム起伏用ロープ22は、ブーム起伏用ウインチW1から引き出され、マスト先端部の第1マストシーブ151と第2マストシーブ152に掛けられた後、第1シーブ181と第2シーブ191との間で複数回掛け回される。なお、第1シーブ181および第2シーブ191に掛け回された後のブーム起伏用ロープ22の先端部は、マスト15のマスト先端部に固定される。
【0049】
ブーム起伏用ウインチW1は、マスト15のマスト基端部側に配置される。ブーム起伏用ウインチW1は、ブーム起伏用ロープ22の巻き取りおよび繰り出しを行うことで第1シーブ181と第2シーブ191との間の距離を変化させ、ブーム14をマスト15に対して相対的に回動させながらブーム14を起伏させる。
【0050】
クレーン本体11は、ガイライン23と、マスト起伏用ロープ26と、マスト起伏用ウインチW2とをさらに備える。
【0051】
ガイライン23は、左右方向に一対配置されている。ガイライン23は、マスト15のマスト先端部と箱マスト16の先端部とを接続する。この接続は、マスト15の回動と箱マスト16の回動とを連携させる。
【0052】
マスト起伏用ロープ26は、上部旋回体13に配置され複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック24と、箱マスト16の先端部に配置され複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック25との間で複数回掛け回される。
【0053】
マスト起伏用ウインチW2は、箱マスト16の基端部側に配置される。マスト起伏用ウインチW2は、マスト起伏用ロープ26の巻き取りおよび繰り出しを行う。マスト起伏用ウインチW2の巻き取り、繰り出し動作によって、箱マスト16の先端部のシーブブロック25と上部旋回体13の後端部のシーブブロック24との間の距離が変化し、上部旋回体13に対して箱マスト16およびマスト15が一体的に回動しながら、マスト15が起伏する。なお、マスト15および箱マスト16の回動は、主にクレーン10の組立分解時に行われ、クレーン10の使用時にはマスト15および箱マスト16の位置(対地角)はほぼ固定されている。
【0054】
クレーン本体11には、前述のマスト起伏用ウインチW2およびブーム起伏用ウインチW1以外に、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うための主巻用ウインチW3及び補巻用ウインチW4が搭載される。
【0055】
主巻用ウインチW3は、主巻ロープ28による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この主巻について、ブーム14のブーム先端部には不図示の主巻用ガイドシーブが回転可能に設けられ、さらに主巻用ガイドシーブに隣接する位置に複数の主巻用ポイントシーブが幅方向に配列された主巻用シーブブロックが設けられている。主巻用シーブブロックから垂下された主巻ロープ28には、吊り荷用の主フック17が連結されている。そして、主巻用ウインチW3から引き出された主巻ロープ28が主巻用ガイドシーブに順に掛けられ、かつ、主巻用シーブブロックのシーブと、主フック17に設けられたシーブブロックのシーブとの間に掛け渡される。従って、主巻用ウインチW3が主巻ロープ28の巻き取りや繰り出しを行うと、主フック17の巻上げ及び巻下げが行われる。
【0056】
同様にして、補巻用ウインチW4は、補巻ロープ29による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この補巻については、上記の主巻と同様の不図示の構造が備えられている。そして、補巻用ウインチW4が補巻ロープ29の巻き取りや繰り出しを行うと、補巻ロープ29の末端に連結された図略の吊荷用の補フックが巻上げられ、または巻下げられる。
【0057】
[ウェイトユニット]
図2は、図1のクレーン10におけるカウンタウェイト31及びパレット40、並びに、図1の自走式台車80の概略を示す斜視図である。図1及び図2に示すように、ウェイトユニット30は、1つ又は複数のカウンタウェイト31と、パレット40と、自走式台車80とによって構成されている。ウェイトユニット30は、クレーン本体11が重量物を吊り上げるために備えられるSHL用ウェイトとして、クレーン10のバランスを保つ機能を有する。1つ又は複数のカウンタウェイト31と、パレット40と、自走式台車80とは、ウェイトとして使用される際には、連結ピンなどの固定手段によって複数箇所において固定されることによって結合され、一体化される。
【0058】
図1に示すように、ウェイトユニット30は、上部旋回体13の後方に配置されている。ウェイトユニット30は、剛性を有する棒状のサポート部材Sによって上部旋回体13の後部に接続されている。ウェイトユニット30は、ブーム14との間でつり合いをとるようにガイライン27(ウェイトライン27)を介してマスト15のマスト先端部に接続されている。ガイライン27の下端は、カウンタウェイト31及びパレット40の少なくとも一方に取り付けられる。
【0059】
ガイライン27の下端がパレット40に取り付けられる場合には、ガイライン27の下端の取付位置は、パレット40単体がガイライン27を介してマスト15から吊り下げられたときに、パレット40のバランスを取ることができる位置とするのが好ましい。
【0060】
また、ガイライン27の下端がカウンタウェイト31に取り付けられる場合には、ガイライン27の下端の取付位置は、互いに固定されたカウンタウェイト31とパレット40がガイライン27を介してマスト15から吊り下げられたときに、カウンタウェイト31及びパレット40の全体のバランスを取ることができる位置とするのが好ましい。
【0061】
パレット40は、カウンタウェイト31が載せられる載置部41と、複数(例えば4つ)の脚部42とを有する。載置部41は、平面視で長方形状を有する板状を呈している。載置部41の上面は平面である。複数の脚部42は、載置部41(例えば載置部41の四隅)から下方に延びている。
【0062】
カウンタウェイト31は、例えば平板形状を有しているが、カウンタウェイト31の形状はこれに限られない。カウンタウェイト31が複数用いられる場合には、複数のカウンタウェイト31は、例えばパレット40の載置部41の上に上下方向に重ねられる。
【0063】
自走式台車80は、例えば、重量物を運搬するための自走式多軸台車、SPMTなどと呼ばれる汎用の台車を用いることができる。図2に示すように、自走式台車80は、台車本体81と、パワーパック82とを備える。
【0064】
台車本体81は、荷台83と、荷台83の下部に設けられた複数の走行ユニット84とを備える。荷台83は、平面視で長方形状を有する板状を呈している。荷台83の上面は平面である。自走式台車80がウェイトユニット30の一部として用いられるときには、荷台83は、その上面がパレット40の載置部41の下面と対向するように配置される。
【0065】
複数の走行ユニット84は、荷台83の幅方向の両側において、荷台83の長手方向に沿って並ぶように配置されている。各走行ユニット84は、鉛直方向の中心軸を中心に荷台83に対して回転可能に荷台83の下部に取り付けられている。各走行ユニット84が当該中心軸の軸回りに回転することによって後述のタイヤ842の向きが変更される。
【0066】
各走行ユニット84は、水平方向に延びる車軸841と、車軸841に固定されたタイヤ842と、車軸841を回転させるための油圧モータ843と、車軸841と荷台83との上下方向の距離を変えることにより地面Gからの荷台83の上面の高さを変えるための油圧シリンダ844とを有する。
【0067】
パワーパック82は、台車本体81の長手方向の一端811に設けられている。このパワーパック82は重量が大きいため、自走式台車80の重心が自走式台車80の一端811側に偏っている。パワーパック82は、エンジン821などの動力発生機と、エンジン821によって駆動される油圧ポンプ822,823と、これらを制御する制御部824と、運転室825とを有する。制御部824は、油圧ポンプ822を制御することにより、油圧モータ843を制御して自走式台車80を走行させる。また、制御部824は、油圧ポンプ823を制御することにより、油圧シリンダ844を制御して荷台83の上面の高さを調節する。
【0068】
自走式台車80は、オペレーターが遠隔操縦を行うための遠隔操縦装置85(リモートコントローラー85)を有する。オペレーターは、遠隔操縦装置85を操作することにより、制御部824を介して、油圧モータ843、油圧シリンダ844などを動作させ、これにより、自走式台車80を走行させ、停止させ、走行速度を調節することができ、荷台83の高さを調節することができる。なお、遠隔操縦装置85と制御部824との通信は、無線によるものであってもよく、有線によるものであってもよい。
【0069】
なお、自走式台車80としては、例えば特許第5632818号公報に開示されている「トランスポーター100」と同様の台車を用いることができる。
【0070】
[位置調整装置]
実施形態に係る位置調整装置50は、カウンタウェイト31、パレット40及び自走式台車80を含むウェイトユニット30がクレーン10のマスト15から吊り下げられる際のウェイトユニット30の全体の重量バランスを取るために、パレット40に対する自走式台車80の相対的な位置を調整する装置である。
【0071】
位置調整装置50は、クレーン10(例えば、クレーン10における上部旋回体13の運転室131)に設けられていてもよく、自走式台車80に設けられていてもよく、これら以外のところに設けられていてもよい。また、位置調整装置50の一部がクレーン10に設けられ、残りが自走式台車80に設けられていてもよい。ただし、汎用の台車であるSPMTなどの自走式台車80に位置調整装置50を設ける場合には、当該位置調整装置50を自走式台車80に取り付けることが必要になるため、自走式台車80の汎用性が低下する。したがって、位置調整装置50は、自走式台車80以外のクレーン10に設けられるのが好ましい。
【0072】
図3は、実施形態に係る位置調整装置50の機能的構成を示すブロック図である。位置調整装置50は、制御装置60を備えており、制御装置60は、中央処理装置(Central Processing Unit)、種々の制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)などから構成される。
【0073】
位置調整装置50は、主に、入力部51と、位置決定部52と、検知部53と、報知部54と、台車制御部55と、記憶部56とを機能として備える。制御装置60は、CPUが前記制御プログラムを実行することにより、入力部51、位置決定部52、検知部53、報知部54、台車制御部55、記憶部56などを機能的に構成するように動作する。
【0074】
入力部51は、自走式台車80に関する情報と、カウンタウェイト31に関する情報とを受け付ける。自走式台車80に関する情報とは、位置決定部52が自走式台車80の予定停止位置を決めるときに必要な自走式台車80の重量バランスに関係する情報である。カウンタウェイト31に関する情報とは、位置決定部52が自走式台車80の予定停止位置を決めるときに必要なカウンタウェイト31の重量バランスに関係する情報である。
【0075】
自走式台車80に関する情報としては、例えば、自走式台車80のパワーパック82の重量を挙げることができる。上述したようにパワーパック82は、重量が大きく、しかも台車本体81の長手方向の一端811に設けられているため、自走式台車80の重心が自走式台車80の一端811側に偏る主な要因となっている。したがって、パワーパック82の重量に関する情報に基づいて、位置決定部52は、ウェイトユニット30の全体のおおよその重量バランスを取ることができる自走式台車80の予定停止位置を決めることができる。
【0076】
また、自走式台車80に関する情報としては、例えば、自走式台車80の型番などのように自走式台車80を具体的に特定することができる特定情報であってもよい。この場合、記憶部56には、例えば、型番などの特定情報に対応するパワーパック82の重量が予め記憶されており、位置決定部52は、記憶部56に記憶された当該重量に基づいて、ウェイトユニット30の全体のおおよその重量バランスを取ることができる自走式台車80の予定停止位置を決めることができる。
【0077】
カウンタウェイト31に関する情報としては、例えば、実際に使用される1つ又は複数のカウンタウェイト31の全体の重量を挙げることができる。また、カウンタウェイト31に関する情報は、例えば、実際に使用されるカウンタウェイト31の種類、実際に使用されるカウンタウェイト31の枚数(パレット40の載置部41に積載される枚数)などであってもよい。この場合、記憶部56には、例えば、カウンタウェイト31の種類毎に一枚あたりの重量が予め記憶されており、位置決定部52は、記憶部56に記憶された一枚あたりの重量と入力部51が受け付けた枚数とに基づいて、ウェイトユニット30の全体のおおよその重量バランスを取ることができる自走式台車80の予定停止位置を決めることができる。
【0078】
また、カウンタウェイト31の枚数がパレット40の載置部41における前側と、載置部41における後側とで異なる場合のように、カウンタウェイト31の重心位置がパレット40の重心位置に対して前後方向にずれることもある。このような場合には、カウンタウェイト31に関する情報は、前側に載置されるカウンタウェイト31の情報(枚数や重量)と、後側に載置されるカウンタウェイト31の情報(枚数や重量)とを含んでいてもよい。なお、ここでいう前側とは、パレット40の載置部41の下方に自走式台車80が進入する進入方向Dにおける前側をいう。
【0079】
位置決定部52は、入力部51が受け付けた情報、すなわち、上述のような自走式台車80に関する情報と、カウンタウェイト31に関する情報に基づいて、ウェイトユニット30の全体の重量バランスを取ることができる自走式台車80の予定停止位置を決める。位置決定部52の詳細については後述する。
【0080】
検知部53は、パレット40の載置部41の下方に進入する自走式台車80のパレット40に対する相対的な位置を検知する。検知部53の詳細については後述する。
【0081】
報知部54は、検知部53による検知結果に基づいて、自走式台車80が予定停止位置に近づいたことを表す位置情報及び自走式台車80が予定停止位置に到達したことを表す位置情報の少なくとも一方を含む位置情報をオペレーターに知らせる。本実施形態では、位置調整装置50は、発音部541、発光部542及び表示部543の少なくとも1つを有していている。報知部54は、当該位置情報を発音部541、発光部542、表示部543などを通じてオペレーターに知らせる。
【0082】
発音部541、発光部542又は表示部543は、オペレーターが認識しやすいところに設けられる。発音部541、発光部542又は表示部543は、例えば、クレーン本体11、自走式台車80、カウンタウェイト31、パレット40などに設けられていてもよく、これら以外のところに設けられていてもよい。具体的には、発音部541、発光部542、表示部543は、クレーン10の運転室131、自走式台車80の運転室825、自走式台車80の遠隔操縦装置85などに設けられていてもよく、また、これらの以外の室内、室外などに設けられていてもよい。発音部541、発光部542、表示部543がクレーン10の運転室131に設けられている場合には、クレーン10のオペレーターが自走式台車80を目視しにくい位置にいても、自走式台車80の位置を把握できる。発音部541、発光部542、表示部543が屋外に設けられている場合には、自走式台車80の位置情報を屋外の作業者にも報知することができる。
【0083】
発音部541は、聴覚を通じてオペレーターが認識できる音を発する機能を有する。例えば、発音部541は、図略の警報ブザー、スピーカーなどを有する。発音部541は、音を発することにより、オペレーターに対して、自走式台車80が予定停止位置に近づいたこと、自走式台車80が予定停止位置に到達したことなどの位置情報を知らせる。
【0084】
発光部542は、視覚を通じてオペレーターが認識できる光を発する機能を有する。例えば、発光部542は、図略の表示灯、回転灯、信号灯などを有する。発光部542は、光を発することにより、オペレーターに対して、自走式台車80が予定停止位置に近づいたこと、自走式台車80が予定停止位置に到達したことなどの位置情報を知らせる。
【0085】
表示部543は、視覚を通じてオペレーターが認識できる文字、図形などを表示する機能を有する。例えば、表示部543は、図略の液晶ディスプレイなどのモニターを有する。表示部543は、文字、図形などを表示することにより、オペレーターに対して、自走式台車80が予定停止位置に近づいたこと、自走式台車80が予定停止位置に到達したことなどの位置情報を知らせる。
【0086】
台車制御部55は、検知部53による検知結果に基づいて、自走式台車を停止させる制御を行う。具体的には、台車制御部55は、自走式台車80が予定停止位置に近づいたことを示す信号、又は自走式台車80が予定停止位置に到達したことを示す信号を検知部53から受けると、自走式台車80を停止させる制御を行う。
【0087】
記憶部56は、予定停止位置を決めるためのデータやプログラムなどが予め記憶されている。具体的に、当該データとしては、上述したようなカウンタウェイト31に関する情報、パレット40に関する情報、自走式台車80に関する情報などが挙げられる。
【0088】
次に、位置調整装置50の具体的な動作について説明する。図4(A)及び図4(B)は、実施形態に係る位置調整装置50の概略を示す側面図である。具体的に、図4(A)は、自走式台車80が進入方向Dに移動している途中の状態を示しており、図4(B)は、自走式台車80が前記予定停止位置に近づいた状態、又は自走式台車80が前記予定停止位置に到達した状態を示している。
【0089】
本実施形態に係る位置調整装置50では、検知部53は、リミットスイッチによる検知を行う。具体的に、図4(A)に示すように、位置調整装置50の検知部53は、複数のリミットスイッチ531~534と、リミットスイッチを動作させるストライカ535とを含む。
【0090】
図4(A)に示す位置調整装置50では、複数のリミットスイッチ531~534は、パレット40の載置部41に設けられており、自走式台車80が載置部41の下方に進入する進入方向Dに沿って並んでいる。実施形態では、複数のリミットスイッチ531~534は、等間隔に配置されているが、これに限られない。
【0091】
ストライカ535は、自走式台車80の台車本体81に設けられている。ストライカ535は、自走式台車80が進入方向Dに移動してストライカ535がリミットスイッチに対応する位置に到達すると、リミットスイッチを作動させる(リミットスイッチをONにする)。なお、リミットスイッチ531~534及びストライカ535が設けられる位置は、図4(A)に示す具体例に限定されない。例えば、リミットスイッチ531~534は、自走式台車80の台車本体81に設けられ、ストライカ535は、パレット40の載置部41に設けられていてもよい。
【0092】
図5は、実施形態に係る位置調整装置50及びウェイト結合方法を示すフローチャートである。
【0093】
本実施形態では、記憶部56には、使用される1つ又は複数のカウンタウェイト31と、使用される自走式台車80との種々の組み合わせ毎に、ウェイトユニット30の全体としてのバランスを取ることができる自走式台車80の予定停止位置が予め記憶されている。記憶部56に記憶されている各予定停止位置は、カウンタウェイト31と、パレット40と、自走式台車80とを結合したウェイトユニット30がガイライン27を介してマスト15から吊り下げられたときにバランスが取れるように、カウンタウェイト31、パレット40及び自走式台車80のそれぞれの重量、寸法などを考慮して予め算出されたものである。なお、本実施形態では、ガイライン27の下端をウェイトユニット30に取り付ける位置は変えることなく一定であるという前提で、予定停止位置が算出される。
【0094】
本実施形態では、上記のような予定停止位置に関するデータは、記憶部56に予めプリセットされている。記憶部56に記憶されている複数の予定停止位置に関するデータは、複数のリミットスイッチ531~534が設けられている位置とそれぞれ対応している。すなわち、記憶部56にプリセットされている複数の予定停止位置に対応するように、リミットスイッチ531~534がパレット40に予め取り付けられ、ストライカ535が自走式台車80に取り付けられている。
【0095】
そして、オペレーターは、使用するカウンタウェイト31に関する情報、及び使用する自走式台車80に関する情報を入力する。入力部51は、オペレーターによって入力されたこれらの情報を受け付け、記憶部56は、これらの情報を記憶する(ステップS1)。これらの情報の入力方法は特に限定されないが、例えば次のようにして行われる。
【0096】
すなわち、当該入力方法としては、オペレーターが、例えばクレーン10などに設けられた操作パネルに表示されているカウンタウェイト31とパワーパック82の複数の組み合わせの中から、実際に使用する組み合わせを選択するという方法を採用することができる。また、他の入力方法としては、オペレーターが、操作パネルを用いて実際に使用するカウンタウェイト31の枚数、重量などを直接入力したり、パワーパック82の重量、種類などを直接入力したりするという方法を採用することができる。
【0097】
パレット40の載置部41における前側の部分と載置部41における後側の部分のそれぞれに、カウンタウェイト31が個別に積載される場合には、前側の部分に積載されるカウンタウェイト31の積載枚数と、後側の部分に積載されるカウンタウェイト31の積載枚数とが、カウンタウェイト31に関する情報として入力されてもよい。
【0098】
なお、パレット40は、通常、毎回同じものが用いられる。このため、記憶部56に記憶されている予定停止位置が、当該パレット40の重量、寸法などを考慮して算出されていれば、オペレーターは、パレット40に関する情報を入力する必要はない。
【0099】
次に、位置決定部52は、使用されるカウンタウェイト31に関する情報、及び使用される自走式台車80に関する情報に基づいて、ウェイトユニット30の全体の重量バランスを取ることができる自走式台車80の予定停止位置を決める。具体的に、位置決定部52は、記憶部56に予め記憶されている複数の組み合わせに対応する複数の予定停止位置から、オペレーターによって入力された組み合わせに対応する予定停止位置を選択することにより、予定停止位置を決める(ステップS2)。
【0100】
なお、予定停止位置の決定は、オペレーターによって入力されたカウンタウェイト31に関する情報及びパワーパック82に関する情報に基づいて、ウェイトユニット30の全体の重心位置が最適となるように、位置決定部52がその都度算出することによって行われてもよい。
【0101】
そして、位置決定部52は、複数のリミットスイッチ531~534のうちから、上記のようにして決定された予定停止位置に対応するリミットスイッチを選択し、当該リミットスイッチを有効にする(ステップS3)。具体的に、図4(A)に示す4つのリミットスイッチ531~534のうち、例えばリミットスイッチ533が有効にされ、残りのリミットスイッチ531,532,534は無効とされる。
【0102】
次に、オペレーターは、自走式台車80を操縦して自走式台車80をパレット40の載置部41の下方に進入させる。図2及び図4(A)に示すように、自走式台車80は、パワーパック82が設けられている側の台車本体81の一端811とは反対側の他端812を先頭にして進入方向Dに載置部41の下方に進入する。自走式台車80の操縦は、オペレーターが実際に自走式台車80の運転室825で行ってもよく、オペレーターが自走式台車80の外で遠隔操縦等によって行ってもよい。
【0103】
そして、報知部54は、検知部53による検知結果、すなわちリミットスイッチ531~534の動作に基づいて、自走式台車80が予定停止位置に到達したことを表す位置情報をオペレーターに知らせる。具体的には、次の通りである。
【0104】
自走式台車80が図4(A)に示す位置に達したとき、自走式台車80に設けられたストライカ535は、進入方向Dにおける最も上流側のリミットスイッチ531に対向する位置に達する。しかし、当該リミットスイッチ531は無効とされているので、報知部54は、上記の位置情報をオペレーターに知らせない(ステップS4でNO)。この場合、報知部54は、発音部541、発光部542、表示部543によるアラームの出力を停止している状態(アラームの出力をOFFにしている状態)を維持(ステップS5)する。そして、報知部54は、位置決定部52によって有効にされたリミットスイッチ533が動作したか否かの判断を繰り返す(ステップS4)。
【0105】
報知部54は、位置決定部52によって有効にされたリミットスイッチ533が動作した場合、すなわちリミットスイッチ533がON状態となった場合にのみ(ステップS4でYES)、上記の位置情報をオペレーターに知らせる。
【0106】
具体的には、自走式台車80が図4(B)に示す位置に達したとき、自走式台車80に設けられたストライカ535は、リミットスイッチ531よりも下流側にあるリミットスイッチ533に対向する位置に達する。当該リミットスイッチ533は有効とされているので、報知部54は、例えば、発音部541を制御して図略のスピーカーからアラームの音を発するとともに、表示部543を制御して図略のモニターにアラームの文字、図形等を表示させる(ステップS6)。これにより、オペレーターは、自走式台車80が予定停止位置に到達したことを知ることができる。なお、報知部54は、発音部541及び表示部543だけでなく、発光部542を制御して図略の回転灯などを点灯させてもよい。また、報知部54は、発音部541、発光部542及び表示部543のうちの何れか1つのみを制御してオペレーターに上記の位置情報を知らせるように構成されていてもよい。
【0107】
自走式台車80の位置情報を知らされたオペレーターは、自走式台車80を操縦して自走式台車80を予定停止位置又はその近傍において停止させることができる(ステップS7)。なお、自走式台車80をパレット40の載置部41の下方に進入させる作業において、オペレーターは、自走式台車80を非常に低い速度で徐行運転する。このため、自走式台車80が予定停止位置に到達したことを報知部54によって知らされた後、直ちに、オペレーターが自走式台車80の停止操作を行えば、自走式台車80を予定停止位置又はその近傍で停止させることができる。
【0108】
また、自走式台車80の停止は、台車制御部55によって行われてもよい。この場合、台車制御部55は、有効なリミットスイッチ533が動作したことを示す信号を受けた場合、すなわち、自走式台車80が予定停止位置に近づいたこと又は到達したことを示す信号を受けた場合に、自走式台車80を制御して自走式台車80を停止させる(ステップS7)。
【0109】
次に、オペレーターは、自走式台車80が停止したことを確認した後、自走式台車80の荷台83を操縦することにより、荷台83を上昇させて車高を変える(ステップS8)。荷台83の上昇は、荷台83がパレット40の載置部41を押し上げてパレット40の脚部42が地面Gから離れる位置まで行われる。これにより、自走式台車80の荷台83によってパレット40とカウンタウェイト31とが支持される。
【0110】
その後、オペレーターは、カウンタウェイト31と、パレット40と、自走式台車80とを、連結ピンなどの固定手段によって複数箇所において固定することによって結合し、一体化する(ステップS8)。なお、カウンタウェイト31と、パレット40との連結は、自走式台車80の荷台83を上昇させるステップの前に、予め行われていてもよい。
【0111】
その後、オペレーターは、自走式台車80を操縦して、カウンタウェイト31と、パレット40と、自走式台車80とを含むウェイトユニット30をクレーン本体11の近傍に移動させる。そして、図1に示すように、ウェイトユニット30は、サポート部材Sによって上部旋回体13の後部に接続される。
【0112】
最後に、ガイライン27の下端をウェイトユニット30に固定し(ステップS9)、ガイライン27を介してウェイトユニット30をマスト15から吊り下げる。これにより、クレーン10のバランスを保つためのSHL用ウェイトとして、ウェイトユニット30を用いることができる。
【0113】
上述したように、図4(A)、図4(B)及び図5を参照して説明した前記実施形態において、有効なリミットスイッチ533に基づく位置情報は、自走式台車80が予定停止位置に到達したことを表す位置情報に相当する。例えば、前記実施形態において、リミットスイッチ533だけでなく、それよりも進入方向Dにおける上流側のリミットスイッチ532も有効とした場合、当該リミットスイッチ532に基づく位置情報は、自走式台車80が予定停止位置に近づいたことを表す位置情報に相当する。かかる場合、報知部54は、オペレーターに知らせるリミットスイッチ532に基づく位置情報に係る内容(音、光、表示など)と、リミットスイッチ533に基づく位置情報に係る内容(音、光、表示など)とを異ならせるのが好ましい。
【0114】
[実施形態の変形例1]
図6(A)及び図6(B)は、実施形態の変形例1に係る位置調整装置50の概略を示す側面図である。
【0115】
変形例1に係る位置調整装置50は、検知部53及びこれによる検知方法が図1図5を参照して説明した実施形態とは異なっており、その他の構成は上述の実施形態と同様である。したがって、以下では、当該変形例1については、上述した実施形態と異なる点のみ説明し、同じ構成及び方法については説明を省略する。
【0116】
変形例1に係る位置調整装置50の検知部53は、画像認識カメラによる検知を行う。具体的に、図6(A)に示す変形例1に係る位置調整装置50の検知部53は、画像認識カメラ536と、複数の標識537とを含む。画像認識カメラ536は、パレット40の載置部41に設けられており、複数の標識537は、自走式台車80の台車本体81に設けられているが、画像認識カメラ536及び複数の標識537が設けられる位置は、図6(A)に示す具体例の逆の位置であってもよい。
【0117】
複数の標識537は、自走式台車80の台車本体81において、自走式台車80が載置部41の下方に進入する進入方向Dに沿って並んでいる。当該変形例1では、複数の標識537は、等間隔(例えば100mm間隔)に配置されているが、これに限られない。図6(A)に示す具体例では、標識537は、数字(文字)によって構成されているが、画像認識カメラ536が認識可能なものであればよく、特に限定されるものではない。標識537としては、例えばパターン図などの図形、目盛りなどであってもよい。
【0118】
画像認識カメラ536は、自走式台車80が進入方向Dに移動してパレット40の載置部41の下方に進入すると、パレット40に設けられている複数の標識537を順次スキャニングする。そして、画像認識カメラ536は、図6(B)に示すように、複数の標識537のうち、位置決定部52によって決められた予定停止位置に対応する標識537を認識すると、その認識したことを示す信号に基づいて、報知部54は、自走式台車80が予定停止位置に近づいたことを表す位置情報及び自走式台車80が予定停止位置に到達したことを表す位置情報の少なくとも一方をオペレーターに知らせる。
【0119】
この変形例1では、画像認識カメラ536によって標識537を非接触で検出できるため、簡単な構造で検知部53を構成することができる。
【0120】
[実施形態の変形例2]
図7は、実施形態の変形例2に係る位置調整装置50の検知部53と、これを取り付けたパレット40及び自走式台車80の一部とを示す側面図である。
【0121】
変形例2に係る位置調整装置50は、検知部53及びこれによる検知方法が図1図5を参照して説明した実施形態とは異なっており、その他の構成は上述の実施形態と同様である。したがって、以下では、当該変形例2については、上述した実施形態と異なる点のみ説明し、同じ構成及び方法については説明を省略する。
【0122】
図7に示すように、変形例2に係る位置調整装置50の検知部53は、長さ計538による検知を行う。具体的に、変形例2に係る位置調整装置50の検知部53は、長さ計538と、長さを計測する基準となる基準部材539とを含む。長さ計538は、パレット40の載置部41に設けられており、基準部材539は、自走式台車80の台車本体81に設けられているが、長さ計538及び基準部材539が設けられる位置は、図7に示す具体例の逆の位置であってもよい。
【0123】
ただし、汎用の台車であるSPMTなどの自走式台車80に長さ計538を設ける場合には、当該長さ計538を自走式台車80に取り付けることが必要になり、電源や信号の出力などのための配線も必要となるため、自走式台車80の汎用性が低下する。一方、基準部材539を自走式台車80に取り付けることは容易であり、配線も不要である。したがって、自走式台車80の汎用性の低下を抑制するという観点で、長さ計538は、自走式台車80ではなく、パレット40に設けられるのが好ましい。
【0124】
長さ計538は、例えば、長さ計本体に収容されている糸状の部材538Aの先端が基準部材539に固定され、自走式台車80がパレット40の載置部41の下方を進入方向Dに移動するのに伴って糸状の部材538Aが長さ計本体から引き出されるように構成されている。そして、糸状の部材538Aの引き出された長さが検知されることによって、自走式台車80の移動距離を計測することができる。
【0125】
また、長さ計538は、例えば、長さ計本体から水平方向に基準部材539に向けてレーザー光線538Aを照射し、基準部材539で反射して長さ計538に返って来るまでの時間を測ることができるものであってもよい。これにより、基準部材539との距離の変化、すなわち、自走式台車80の移動距離を計測することができる。
【0126】
上記のような長さ計538を用いることにより、自走式台車80が移動しているときには常時その移動距離を測定することができるので、報知部54は、位置決定部52によって決められた予定停止位置に自走式台車80が到達するまでの残りの距離に関する信号を連続的に取得することができる。
【0127】
したがって、報知部54は、当該信号を連続的に取得することにより、予定停止位置までの残りの距離に応じて、オペレーターに対して知らせる位置情報を連続的に又は断続的に変化させることができる。具体的には、報知部54は、予定停止位置までの残りの距離に応じて、発音部541による音(音量、音程、音色など)を変化させたり、発光部542による光(光の色、光を発する周期、光の強さなど)を変化させたり、表示部543による表示内容を変化させたりすることができる。したがって、短い間隔で複数の異なる自走式台車80の位置情報を知らされたオペレーターは、これらの位置情報に基づいて段階的に自走式台車80の速度を低下させることができる。これにより、自走式台車80をより精度良く予定停止位置又はその近傍において停止させることができる。
【0128】
また、自走式台車80の停止が台車制御部55によって自動的に行われる場合には、台車制御部55は、予定停止位置までの残りの距離に関する信号を連続的に取得することにより、予定停止位置までの残りの距離に応じて、自走式台車80のエンジンなどの出力を絞るなどして段階的に自走式台車80の速度を低下させることができる。これにより、自走式台車80を予定停止位置においてほぼ誤差なく停止させることができる。
【0129】
図8(A)~図8(C)は、変形例2に係る位置調整装置50の概略を示す側面図である。図9は、実施形態の変形例2に係る位置調整装置50及びウェイト結合方法を示すフローチャートである。
【0130】
図8(A)~図8(C)及び図9を参照して、変形例2に係る位置調整装置50及びウェイト結合方法について具体的に説明する。なお、変形例2に係る図9に示すフローチャートはステップS23~S25が上述した実施形態に係る図5に示すフローチャートのステップS3~S5と異なっており、それ以外のステップは、図5に示すフローチャートのステップと同様である。したがって、以下では、相違点のみ説明する。
【0131】
位置決定部52が予定停止位置を決めた後(図9におけるステップS22)、オペレーターは、図8(A)に示すように、自走式台車80を操縦して自走式台車80をパレット40の載置部41の下方に進入させる。そして、検知部53は、長さ計538による距離の計測を開始する(ステップS23)。検知部53によって計測が開始される時点は特に限定されるものではないが、例えば、図8(B)に示すように、自走式台車80の進入方向Dにおいて、パレット40の載置部41における長さの中央部分の位置C1と、自走式台車80の荷台83における長さの中央部分の位置C2とが一致する相対的な位置(以下、中央位置という)に自走式台車80が到達した時点から検知部53による計測を開始することができる。
【0132】
図8(B)に示す自走式台車80とパレット40との相対的な位置が中央位置にあるときには、パワーパック82の重量に起因して、ウェイトユニット30の全体の重量のバランスは取れていない。ここで、図8(B)に示す中央位置から、位置決定部52によって決められた予定停止位置までの自走式台車80の移動距離をΔLとする。この移動距離ΔLは、例えば次の数式を用いて算出することができる。
【0133】
<ΔLの算出方法>
1) まず、算出に用いる変数は次の通りである。なお、以下の変数における長さは、前後方向(進入方向D)における長さとする。
【0134】
L:パレット40の長さ
L1:仮想の原点からパレット40の前端までの長さ
L2:パレット40とパワーパック82の長さ
L3:L1+L2
LG:仮想原点から推定重心までの長さ
LG’:自走式台車80のパワーパック82がないと仮定した場合(台車本体81のみの場合)において、仮想原点から理想重心までの長さ
P:パワーパックの重量
V1:推定重心よりも前側のパレット40の重量
V2:推定重心よりも後側のパレット40の重量
M1:推定重心よりも前側のカウンタウェイト31の重量
M2:推定重心よりも後側のカウンタウェイト31の重量
【0135】
2) カウンタウェイト31、パレット40及び自走式台車80(台車本体81とパワーパック82)を一体としたウェイトユニットの推定重心LGは、前後のモーメントのつり合いの関係から、次のような関係式が得られる。
【0136】
(V1+M1)・g・(LG-L1)=(V2+M2+P)・g・(L3-LG)
この式をLGについて整理すると、次の式Aが得られる。
【0137】
(式A): LG=L3{(V2+M2+P)+L1(V1+M1)}/{(V1+V2)+(M1+M2)+P}
【0138】
3) 自走式台車80のパワーパック82がないと仮定した場合(台車本体81のみの場合)において、カウンタウェイト31、パレット40及び台車本体81を一体としたものの推定重心LGは、前後のモーメントのつり合いの関係から、次のように求められる。
【0139】
(V1+M1)・g・(LG’-L1)=(V2+M2)・g・(L/2)
この式をLG’について整理すると、次の式Bが得られる。
【0140】
(式B): LG’={0.5L(V2+M2)+L1(V1+M1)}/(V1+M1)
【0141】
4) 図8(B)に示す中央位置から、予定停止位置までの自走式台車80の移動距離ΔLは、LGからLG’を引いたもの(LG-LG’)であり、L1(仮想の原点からパレット40の前端までの長さ)をゼロとすると、ΔLは次の通りとなる。
【0142】
ΔL={L2(V2+M2+P)/(V1+V2+M1+M2+P)}-{L(V2+M2)/2(V1+M1)}
以上のようにしてΔLが算出される。
【0143】
そして、報知部54は、検知部53による検知結果、すなわち長さ計538による計測結果に基づいて、自走式台車80の移動距離がΔLに達したか否か、すなわち、自走式台車80が予定停止位置に到達したか否かを判断する(ステップS24)。自走式台車80の移動距離がΔLに到達していない場合、報知部54は、自走式台車80が予定停止位置に到達したことを示す位置情報をオペレーターに知らせない(ステップS24でNO)。この場合、報知部54は、発音部541、発光部542、表示部543によるアラームの出力を停止している状態(アラームの出力をOFFにしている状態)を維持(ステップS25)する。そして、報知部54は、検知部53による検知結果に基づく判断を繰り返す(ステップS24)。
【0144】
一方、自走式台車80の移動距離がΔLに到達した場合、報知部54は、自走式台車80が予定停止位置に到達したことを示す位置情報をオペレーターに知らせる(ステップS24でYES)。以下のステップS26~S29については、説明を省略する。
【0145】
[その他の変形例]
本発明は、以上説明した実施形態に限定されない。本発明は、例えば次のような形態を含む。
【0146】
前記実施形態及び前記変形例1,2では、自走式台車80のパレット40に対する位置の調整が進入方向D(図2における前後方向)において行われる場合を例示したが、これに限られない。上述した自走式多軸台車、SPMTなどと呼ばれる自走式台車80は、前後方向だけでなく、前後方向に直交する左右方向(図2参照)や斜め方向にも自由に走行できるので、本発明に係る位置調整装置50は、進入方向D(前後方向)において自走式台車80のパレット40に対する位置を調整することに加えて、左右方向において自走式台車80のパレット40に対する位置を調整することを含んでいてもよく、さらに、斜め方向において自走式台車80のパレット40に対する位置を調整することを含んでいてもよい。
【0147】
前記実施形態では、位置調整装置50が複数のリミットスイッチ531~534を有する場合を例示したが、これに限られず、位置調整装置50は、単一のリミットスイッチを有していてもよい。この場合、例えば、オペレーターが、当該リミットスイッチを、自走式台車80が予定停止位置に近づいたことを表す位置情報又は自走式台車80が予定停止位置に到達したことを表す位置情報に対応する位置に取り付ける。
【0148】
前記実施形態では、入力部51が自走式台車80に関する情報と、カウンタウェイト31に関する情報とを受け付ける場合を例示したが、これに限られない。使用されるカウンタウェイト31の積載枚数などが変わってもウェイトユニット30の全体の重心の位置が変わらない場合には、入力部51が受け付ける情報は、自走式台車に関する情報のみとすることもできる。
【符号の説明】
【0149】
1 クレーンシステム
10 クレーン
11 クレーン本体
12 下部走行体
13 上部旋回体
14 ブーム
15 マスト
27 ガイライン(ウェイトライン)
30 ウェイトユニット
31 カウンタウェイト
40 パレット
41 載置部
50 位置調整装置
51 入力部
52 位置決定部
53 検知部
54 報知部
55 台車制御部
56 記憶部
80 自走式台車
81 台車本体
82 パワーパック
85 遠隔操縦装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9